(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】スイッチ分子及びスイッチャブルキメラ抗原受容体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240729BHJP
A61K 35/15 20150101ALI20240729BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240729BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240729BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240729BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240729BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240729BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20240729BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240729BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240729BHJP
C12N 5/0781 20100101ALI20240729BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20240729BHJP
C12N 5/0784 20100101ALI20240729BHJP
C12N 5/0786 20100101ALI20240729BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
A61K35/15
A61K39/395 L
A61K39/395 T
A61K47/68
A61P35/00
A61P37/06
A61P43/00 107
C07K14/705
C07K16/46
C07K19/00
C12N5/0781
C12N5/0783
C12N5/0784
C12N5/0786
C12N5/10
(21)【出願番号】P 2020557989
(86)(22)【出願日】2019-04-18
(86)【国際出願番号】 KR2019004720
(87)【国際公開番号】W WO2019203600
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2020-10-19
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】10-2018-0045228
(32)【優先日】2018-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515286542
【氏名又は名称】アブクロン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ABCLON INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジョン ソ
(72)【発明者】
【氏名】ウーレン,カール エリック マシアス
【合議体】
【審判長】上條 肇
【審判官】中村 浩
【審判官】高堀 栄二
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-534995(JP,A)
【文献】国際公開第2017/172981(WO,A2)
【文献】特表2014-507118(JP,A)
【文献】特表2016-533174(JP,A)
【文献】FEMS Immunology and Medical Microbiology,1998,Vol.20,pp.69-78
【文献】PNAS,2000,Vol.97,No.10,pp.5399-5404
【文献】PNAS,2016,Vol.113,No.4,pp.E450-E468
【文献】Translational Cancer Research,2016,Vol.5,No.S2,pp.S174-S177
【文献】Blood Cancer Journal,2016,Vol.6,No.e458,pp.1-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
A61K
UniProt/GeneSeq
Genbank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)標的細胞上で細胞表面分子に結合する標的化モイアティー(targeting moiety);及び
(b)効果器細胞上でキメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor、CAR)の細胞外ドメインに特異的に結合するアフィボディ
を含むキメラ抗原受容体効果器細胞(chimeric antigen receptor-effector cell)を活性化するためのスイッチ分子(switch molecule)であり、
(i)前記標的化モイアティーはHER2抗原に特異的に結合し、配列番号10の1乃至58番目のアミノ酸配列を含むターゲット結合ポリペプチドである;前記標的化モイアティーはHER2抗原に特異的に結合し、配列番号12の1乃至243番目のアミノ酸配列を含む抗体若しくは抗原結合断片である;前記標的化モイアティーはHER2抗原に特異的に結合して配列番号14の1乃至119番目のアミノ酸配列を重鎖可変領域として含み、配列番号16の1乃至107番目のアミノ酸配列を軽鎖可変領域として含む抗体若しくは抗原結合断片である;または、前記標的化モイアティーはCD19抗原に特異的に結合し、配列番号18の1乃至252番目のアミノ酸配列を含む抗体若しくは抗原結合断片であるか;
(ii)前記アフィボディは配列番号2の1乃至58番目のアミノ酸配列を含む;若しくは、前記アフィボディは配列番号4の1乃至58番目のアミノ酸配列を含むか;または
(iii)前記スイッチ分子は配列番号10のアミノ酸配列を含む;前記スイッチ分子は、配列番号10のアミノ酸配列のうち74-131番目のアミノ酸残基が配列番号4の1乃至58番目のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含む;前記スイッチ分子は配列番号12のアミノ酸配列を含む;前記スイッチ分子は、配列番号12のアミノ酸配列のうち259-316番目のアミノ酸残基が配列番号4の1乃至58番目のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含む;前記スイッチ分子は配列番号14のアミノ酸配列を含む;前記スイッチ分子は、配列番号14のアミノ酸配列のうち466-523番目のアミノ酸残基が配列番号4の1乃至58番目の残基に置換されたアミノ酸配列を含む;または、前記スイッチ分子は配列番号18、配列番号20、配列番号22、若しくは配列番号24のアミノ酸配列を含む;
スイッチ分子。
【請求項2】
前記効果器細胞の活性化は標的細胞に対する細胞毒性、サイトカイン分泌、及びこれらの組み合わせであることを特徴とする、請求項1に記載のスイッチ分子。
【請求項3】
前記効果器細胞は、樹枝状細胞、キラー樹枝状細胞、肥満細胞、自然殺害細胞、Bリンパ球、Tリンパ球、大食細胞,及びこれらの前駆細胞からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載のスイッチ分子。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちのいずれか一項のスイッチ分子を含む、組成物。
【請求項5】
請求項1乃至3のうちのいずれか一項のスイッチ分子及び薬剤学的に許容される担体を含む、免疫治療用薬剤学的組成物。
【請求項6】
次を含む複合体:
(a)請求項1に記載のスイッチ分子(switch molecule):
及び
(b)前記スイッチ分子に特異的に結合するポリペプチドまたは融合蛋白質。
【請求項7】
前記(b)ポリペプチドまたは融合蛋白質は、前記スイッチ分子を標的化する抗体、抗体の抗原結合断片、ターゲット結合ポリペプチドまたはこれらを含むキメラ抗原受容体であることを特徴とする、請求項6に記載の複合体。
【請求項8】
(aa)請求項1乃至3のうちのいずれか一項のスイッチ分子
のアフィボディを標的化するアフィボディを含む細胞外ドメイン(extracellular domain);
(bb)膜貫通ドメイン(transmembrane domain);及び
(cc)細胞内信号伝達ドメインを含
み、
細胞外ドメインの前記アフィボディは、配列番号2における1位~58位のアミノ酸残基;または、配列番号4における1位~58位のアミノ酸残基を含むアミノ酸配列を含むことを特徴とする、キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor、CAR)。
【請求項9】
キメラ抗原受容体を発現する効果器細胞(effector cell)であって、前記キメラ抗原受容体は請求項1乃至3のうちのいずれか一項のスイッチ分子
のアフィボディを標的化する
アフィボディを含み、
キメラ抗原受容体の前記アフィボディは、配列番号2における1位~58位のアミノ酸残基;または、配列番号4における1位~58位のアミノ酸残基を含むアミノ酸配列を含むことを特徴とする、効果器細胞。
【請求項10】
前記効果器細胞は、樹枝状細胞、キラー樹枝状細胞、肥満細胞、自然殺害細胞、Bリンパ球、Tリンパ球、大食細胞、及びこれらの前駆細胞からなる群より選択されることを特徴とする、請求項9に記載の効果器細胞。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本出願は2018年4月18日付で大韓民国特許庁に提出された大韓民国特許出願第10-2018-0045228号に対して優先権を主張し、前記特許出願の開示事項は本明細書に参照として挿入される。
【0002】
本発明はキメラ抗原受容体効果器細胞を活性化するためのスイッチ分子、これに結合するポリペプチドまたは融合蛋白質、及びキメラ抗原受容体に関するものである。
[背景技術]
【0003】
B細胞悪性腫瘍を有する患者でキメラ抗原受容体T細胞(chimeric antigen receptor T cell、CAR-T)に対する最近の臨床研究は遅延された寛解(sustained remission)が表れることを立証した。CARは細胞内共同刺激ドメイン(costimulatory domain)及び活性化ドメイン(activation domain)と結合された細胞の表面にディスプレイされたscFv(single chain antibody variable domain)を通して患者-由来T細胞に癌細胞を認識し除去する能力を与える。抗体認識の特異性をT細胞-媒介細胞毒性(T cell-mediated cytotoxicity)と関連させることによってCAR-T細胞は抗原陽性腫瘍細胞に対してヒトリンパ球抗原(human lymphocyte antigen、HLA)に独立的な方式により非常に効果的に作用する。今までCAR-Tは再発性急性リンパ球性白血病(ALL)患者で汎-B細胞抗原であるCD19(CART-19)を標的にすることで、最も大きい臨床的成功をなした。CD19二重特異的(bispecific)ブリナツモマブ(blinatumomab)で治療に失敗した患者にCART-19を投与して治療に成功した事例は腫瘍に対する細胞免疫反応を向上させる遺伝工学的接近法の利点を立証する。
【0004】
初期段階の臨床試験で印象的な成功を収めたことにもかかわらず、既存のCAR-T細胞は生体内での活性化及び拡張に対する制御が不可であるという点で限界を有する。例えば、CAR-T細胞は患者の抗原陽性細胞と会った時、104倍数まで急速に増殖して腫瘍溶解症候群(tumor lysis syndrome、TLS)と致命的なサイトカイン放出症候群(cytokine release syndrome、CRS)による深刻な症状を引き起こす。追加的な合併症はCAR-T細胞の抗原に対する持続的な活性化(persistent on-target activity)により引き起こされる。例えば、CART-19の場合、操作されたT細胞が悪性B細胞だけでなく、正常B細胞を無差別的に殺して長期間のB細胞無形性(B cell aplasia)を引き起こす。最後に、既存のCAR-T細胞の固定された抗原特異性はCART-19治療を受ける全ての患者の10%まで再発の根源であると明らかになった抗原-損失脱出突然変異体(antigen-loss escapte mutant)に対する標的化が排除される。
【0005】
したがって、CAR-T細胞の安全性を向上させるために深刻な毒性が表れる場合、CAR-T細胞の活性を調節することができ、抗原の突然変異が起こる場合、CAR-T細胞と標的細胞との間の相互作用を仲裁することができるスイッチ分子の開発に対する要求が徐々に増加している。
[発明の概要]
[発明が解決しようとする課題]
【0006】
本発明者らはCAR-T細胞の活性を調節することができ、CAR-T細胞と標的細胞との間の相互作用を仲介することができる新規なスイッチ分子を開発するために例の研究努力した。その結果、互いに特異的に結合するアフィボディ対(affibody pair、Zb pair)をスイッチ分子とCAR受容体として使用できることを糾明することによって、本発明の完成に至った。
【0007】
本発明の目的は、キメラ抗原受容体効果器細胞(chimeric antigen receptor-effector cell)を活性化するためのスイッチ分子(switch molecule)を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、(a)キメラ抗原受容体効果器細胞(chimeric antigen receptor-effector cell)を活性化するためのスイッチ分子(switch molecule)及び(b)前記スイッチ分子に特異的に結合するポリペプチドまたは融合蛋白質を提供することにある。
【0009】
本発明の更に他の目的は、前記スイッチ分子または融合蛋白質を含むキメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor、CAR)を提供することにある。
[課題を解決するための手段]
【0010】
本発明は、次の1から47の発明を提供する。
【0011】
1.次を含むキメラ抗原受容体効果器細胞(chimeric antigen receptor-effector cell)を活性化するためのスイッチ分子(switch molecule):
(a)標的細胞上で細胞表面分子に結合する標的化モイアティー(targeting moiety);及び
(b)効果器細胞上でキメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor、CAR)に結合するポリペプチド。
【0012】
2.1において、前記(a)標的化モイアティーは、抗体、抗体の抗原結合断片(antigen binding fragment)またはターゲット結合ポリペプチド(target binding polypeptide)であることを特徴とする、スイッチ分子。
【0013】
3.2において、前記抗体は単一クローン抗体、多クローン抗体、合成抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、単一ドメイン抗体、及び単鎖可変断片からなる群より選択された抗体であることを特徴とする、スイッチ分子。
【0014】
4.1乃至3において、前記効果器細胞の活性化は標的細胞に対する細胞毒性、サイトカイン分泌、及びこれらの組み合わせであることを特徴とする、スイッチ分子。
【0015】
5.1乃至4において、前記効果器細胞は、樹枝状細胞、キラー樹枝状細胞、肥満細胞、自然殺害細胞、Bリンパ球、Tリンパ球、大食細胞,及びこれらの前駆細胞からなる群より選択されることを特徴とする、スイッチ分子。
【0016】
6.1乃至5において、前記(a)標的化モイアティーはHER2またはCD19抗原に特異的に結合することを特徴とする、スイッチ分子。
【0017】
7.1乃至5において、前記(a)標的化モイアティーはHER2抗原に特異的に結合して序列目録第10序列の1乃至58番目のアミノ酸序列を含むターゲット結合ポリペプチドであることを特徴とする、スイッチ分子。
【0018】
8.1乃至5において、前記(a)標的化モイアティーはHER2抗原に特異的に結合し、序列目録第12序列の1乃至243番目のアミノ酸序列を含む抗体または抗原結合断片であることを特徴とする、スイッチ分子。
【0019】
9.1乃至5において、前記(a)標的化モイアティーはHER2抗原に特異的に結合し、序列目録第14序列の1乃至119番目のアミノ酸序列を重鎖可変領域として含み、序列目録第16序列の1乃至107番目のアミノ酸序列を軽鎖可変領域として含む抗体または抗原結合断片であることを特徴とする、スイッチ分子。
【0020】
10.1乃至5において、前記(a)標的化モイアティーはCD19抗原に特異的に結合し、序列目録第18序列の1乃至252番目のアミノ酸序列を含む抗体または抗原結合断片であることを特徴とする、スイッチ分子。
【0021】
11.1乃至10において、前記(b)キメラ抗原受容体に結合するポリペプチドは、抗体、抗体の抗原結合断片(antigen binding fragment)またはターゲット結合ポリペプチド(target binding polypeptide)であることを特徴とする、スイッチ分子。
【0022】
12.1乃至11において、前記(b)効果器細胞上でキメラ抗原受容体に結合するポリペプチドは序列目録第2序列の1乃至58番目のアミノ酸序列を含むことを特徴とする、スイッチ分子。
【0023】
13.1乃至11において、前記(b)効果器細胞上でキメラ抗原受容体に結合するポリペプチドは序列目録第4序列の1乃至58番目のアミノ酸序列を含むことを特徴とする、スイッチ分子。
【0024】
14.1において、前記スイッチ分子は序列目録第10序列のアミノ酸序列を含むことを特徴とする、スイッチ分子。
【0025】
15.1において、前記スイッチ分子は前記序列目録第10序列のアミノ酸序列のうち、74-131番目のアミノ酸序列が序列目録第4序列の1乃至58番目のアミノ酸序列に置換されたことを特徴とする、スイッチ分子。
【0026】
16.1において、前記スイッチ分子は序列目録第12序列のアミノ酸序列を含むことを特徴とする、スイッチ分子。
【0027】
17.1において、前記スイッチ分子は前記序列目録第12序列のアミノ酸序列のうち、259-316番目のアミノ酸序列が序列目録第4序列の1乃至58番目のアミノ酸序列に置換されたことを特徴とする、スイッチ分子。
【0028】
18.1において、前記スイッチ分子は序列目録第14序列のアミノ酸序列及び第16序列のアミノ酸序列を含むことを特徴とする、スイッチ分子。
【0029】
19.1において、前記スイッチ分子は前記序列目録第14序列のアミノ酸序列のうち、466-523番目のアミノ酸序列が序列目録第4序列の1乃至58番目の序列に置換されたことを特徴とする、スイッチ分子。
【0030】
20.1において、前記スイッチ分子は序列目録第18序列、第20序列、第22序列、または第24序列のアミノ酸序列を含むことを特徴とする、スイッチ分子。
【0031】
21.1乃至20のうち、いずれか1つのスイッチ分子を含む、組成物。
【0032】
22.1乃至20のうち、いずれか1つのスイッチ分子及び薬剤学的に許容される担体を含む免疫治療用薬剤学的組成物。
【0033】
23.次を含む複合体:
(a)次を含むキメラ抗原受容体効果器細胞(chimeric antigen receptor-effector cell)を活性化するためのスイッチ分子(switch molecule):
(aa)標的細胞上で細胞表面分子に結合する標的化モイアティー(targeting moiety);及び
(bb)効果器細胞上でキメラ抗原受容体に結合するポリペプチド、及び
(b)前記スイッチ分子に特異的に結合するポリペプチドまたは融合蛋白質。
【0034】
24.23において、前記(a)スイッチ分子は1乃至20のうち、いずれか1つのスイッチ分子であることを特徴とする、複合体。
【0035】
25.23において、前記(aa)標的化モイアティーは、抗体、抗体の抗原結合断片(antigen binding fragment)またはターゲット結合ポリペプチド(target binding polypeptide)であることを特徴とする、複合体。
【0036】
26.23において、前記(bb)キメラ抗原受容体に結合するポリペプチドは、抗体、抗体の抗原結合断片(antigen binding fragment)またはターゲット結合ポリペプチド(target binding polypeptide)であることを特徴とする、複合体。
【0037】
27.23において、前記(b)ポリペプチドまたは融合蛋白質は、前記スイッチを標的化する抗体、抗体の抗原結合断片、ターゲット結合ポリペプチドまたはこれらを含むキメラ抗原受容体であることを特徴とする、複合体。
【0038】
28.(aa)1乃至20のうち、いずれか1つのスイッチ分子を標的化する抗体、抗体の抗原結合断片、またはターゲット結合ポリペプチドを含む、細胞外ドメイン(extracellular domain);
(bb)膜貫通ドメイン(transmembrane domain);及び
(cc)細胞内信号伝達ドメインを含むことを特徴とする、キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor、CAR)。
【0039】
29.28において、前記細胞内信号伝達ドメインは、刺激分子、補助刺激分子の細胞内信号伝達ドメインであることを特徴とする、キメラ抗原受容体。
【0040】
30.28または29において、前記(bb)膜貫通ドメインは、T-細胞受容体、CD27、CD28、CD3、イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8(CD8α)、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、及びCD154のアルファ、ベータ、またはゼータ鎖からなる群より選択された蛋白質の膜貫通ドメインであることを特徴とする、キメラ抗原受容体。
【0041】
31.28乃至30のうち、いずれか1つにおいて、前記(cc)細胞内信号伝達ドメインはCD3ζ(CD3ゼータ)鎖から由来したドメインであることを特徴とする、キメラ抗原受容体。
【0042】
32.28乃至31のうち、いずれか1つにおいて、前記(cc)細胞内信号伝達ドメインは、OX40(CD134)、CD2、CD27、CD28、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)及び4-1BB(CD137)からなる群より選択された共同刺激分子(costimulatory molecule)を追加的に含むことを特徴とする、キメラ抗原受容体。
【0043】
33.キメラ抗原受容体を発現する効果器細胞(effector cell)であって、前記キメラ抗原受容体は1乃至20のうち、いずれか1つのスイッチ分子の(b)キメラ抗原受容体結合ポリペプチドを標的化することを特徴とする、効果器細胞。
【0044】
34.33において、前記効果器細胞は、樹枝状細胞、キラー樹枝状細胞、肥満細胞、自然殺害細胞、Bリンパ球、Tリンパ球、大食細胞、及びこれらの前駆細胞からなる群より選択されることを特徴とする、効果器細胞。
【0045】
35.34において、前記Tリンパ球は、炎症性Tリンパ球、細胞毒性Tリンパ球、調節Tリンパ球、またはヘルパーTリンパ球からなる群より選択されることを特徴とする、効果器細胞。
【0046】
36.29乃至32のうち、いずれか1つのキメラ抗原受容体を発現する効果器細胞及び前記キメラ抗原受容体と結合する1乃至20のうち、いずれか1つのスイッチ分子を治療が必要な対象体に投与するステップを含む、方法。
【0047】
37.36において、前記ステップで投与されたスイッチ分子と相異する標的細胞の細胞表面分子と結合する1以上のスイッチ分子を対象体に追加的に投与するステップを含む、方法。
【0048】
38.36または37において、前記方法は腫瘍または癌と関連した疾病または状態を治療する、方法。
【0049】
39.36または37において、前記方法は自己免疫と関連した疾病または状態を治療する、方法。
【0050】
40.(a)第25項のキメラ抗原受容体を発現する効果器細胞(CAR-effector cell)及び前記キメラ抗原受容体と結合する1乃至20のうち、いずれか1つのスイッチ分子を治療が必要な対象体に投与するステップ;及び
(b)効果器細胞上でキメラ抗原受容体に結合するポリペプチドを対象体に追加的に投与するステップを含む対象体内CAR-効果器細胞の活性を抑制する方法。
【0051】
41.1乃至20のうち、いずれか1つのスイッチ分子;及び前記スイッチ分子を標的化するキメラ抗原受容体を含むキメラ抗原受容体-効果器細胞治療システム。
【0052】
42.1乃至20のうち、いずれか1つのスイッチ分子をコーディングするヌクレオチド序列を含む、核酸分子。
【0053】
43.23乃至27のうち、いずれか1つの複合体をコーディングするヌクレオチド序列を含む、核酸分子。
【0054】
44.28乃至32のうち、いずれか1つのキメラ抗原受容体をコーディングするヌクレオチド序列を含む、核酸分子。
【0055】
45.42乃至44のうち、いずれか1つの核酸分子を含む再組合ベクター。
【0056】
46.45の再組合ベクターに形質転換された宿主細胞。
【0057】
47.46の宿主細胞を培養するステップを含む、方法。
本発明の一態様によれば、本発明は次を含むキメラ抗原受容体効果器細胞(chimeric antigen receptor-effector cell)を活性化するためのスイッチ分子(switch molecule)を提供する:
(a)標的細胞上で細胞表面分子に結合する標的化モイアティー(targeting moiety);及び(b)効果器細胞上でキメラ抗原受容体に結合するポリペプチド。
【0058】
本発明の一具現例によれば、前記(a)標的化モイアティーは、抗体、抗体の抗原結合断片(antigen binding fragment)またはアフィボディ(affibody)のようなターゲット結合ポリペプチド(target binding polypeptide)である。
【0059】
本発明の具体的な具現例によれば、前記(a)標的化モイアティーはHER2抗原に特異的に結合し、序列目録第10序列の1乃至58番目のアミノ酸序列を含むターゲット結合ポリペプチドである。前記序列目録第10序列の1乃至58番目のアミノ酸序列は序列目録第9序列の1乃至174番目のヌクレオチド序列にエンコーディングできるが、これに限定されるのではない。
【0060】
本発明の他の具体的な具現例によれば、前記(a)標的化モイアティーはHER2抗原に特異的に結合し、序列目録第12序列の1乃至243番目のアミノ酸序列を含む抗体または抗原結合断片である。前記序列目録第12序列の1乃至243番目のアミノ酸序列は序列目録第11序列の1乃至729番目のヌクレオチド序列にエンコーディングできるが、これに限定されるのではない。
【0061】
本発明の更に他の具体的な具現例によれば、前記(a)標的化モイアティーはHER2抗原に特異的に結合して序列目録第14序列の1乃至119番目のアミノ酸序列を重鎖可変領域として含み、序列目録第16序列の1乃至107番目のアミノ酸序列を軽鎖可変領域として含む抗体または抗原結合断片である。前記序列目録第14序列の1乃至119番目のアミノ酸序列は、序列目録第13序列の1乃至357番目のヌクレオチド序列にエンコーディングでき、前記序列目録第16序列の1乃至107番目のアミノ酸序列は序列目録第15序列の1乃至321番目のヌクレオチド序列にエンコーディングできるが、これに限定されるのではない。
【0062】
また、本発明の他の具現例によれば、本発明の前記(b)キメラ抗原受容体に結合するポリペプチドは、抗体、抗原結合断片、またはアフィボディ(affibody)のようなターゲット結合ポリペプチド(target binding polypeptide)である。
【0063】
本発明の具体的な具現例によれば、前記(b)効果器細胞上でキメラ抗原受容体に結合するポリペプチドは、序列目録第2序列の1乃至58番目のアミノ酸序列を含むターゲット結合ポリペプチドである。前記序列目録第2序列の1乃至58番目のアミノ酸序列は、序列目録第1序列の1乃至174番目のヌクレオチド序列にエンコーディングできるが、これに限定されるのではない。
【0064】
本発明の他の具体的な具現例によれば、前記(b)効果器細胞上でキメラ抗原受容体に結合するポリペプチドは、序列目録第4序列の1乃至58番目のアミノ酸序列を含むターゲット結合ポリペプチドである。前記序列目録第4序列の1乃至58番目のアミノ酸序列は、序列目録第3序列の1乃至174番目のヌクレオチド序列にエンコーディングできるが、これに限定されるのではない。
【0065】
本発明の更に他の具体的な具現例によれば、前記スイッチ分子は序列目録第10序列のアミノ酸序列を含むスイッチ分子であり、前記序列目録第10序列のアミノ酸序列のうち、74-131番目のアミノ酸序列は、序列目録第4序列の1乃至58番目のアミノ酸序列に置換できる。前記序列目録第10序列のアミノ酸序列は、序列目録第9序列のヌクレオチド序列にエンコーディングできるが、これに限定されるのではない。
【0066】
本発明の他の具体的な一具現例によれば、前記スイッチ分子は序列目録第12序列のアミノ酸序列を含むスイッチ分子であり、前記序列目録第12序列のアミノ酸序列のうち、259-316番目のアミノ酸序列は、序列目録第4序列の1乃至58番目のアミノ酸序列に置換できる。前記序列目録第12序列のアミノ酸序列は、序列目録第11序列のヌクレオチド序列にエンコーディングできるが、これに限定されるのではない。
【0067】
また、本発明の更に他の具体的な一具現例によれば、前記スイッチ分子は序列目録第14序列のアミノ酸序列及び第16序列のアミノ酸序列を含むスイッチ分子であり、前記序列目録第14序列のアミノ酸序列のうち、466-523番目のアミノ酸序列は序列目録第4序列の1乃至58番目の序列に置換できる。前記序列目録第14序列及び第16序列のアミノ酸序列は、序列目録第13序列及び第15序列のヌクレオチド序列にエンコーディングできるが、これに限定されるのではない。
【0068】
本明細書で、用語“抗体(antibody)”は特定抗原に特異的に結合する抗体であって、完全な抗体形態だけでなく、抗体分子の抗原結合断片(antigen binding fragment)を含む。完全な抗体は2つの全体長さの軽鎖及び2つの全体長さの重鎖を有する構造であり、各々の軽鎖は重鎖とジスルフィド結合により連結されている。重鎖不変領域は、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)、及びイプシロン(ε)タイプを有し、サブクラスにガンマ1(γ1)、ガンマ2(γ2)、ガンマ3(γ3)、ガンマ4(γ4)、アルファ1(α1)、及びアルファ2(α2)を有する。軽鎖の不変領域はキャパ(κ)及びラムダ(λ)タイプを有する(Cellular and Molecular Immunology, Wonsiewicz, M. J., Ed., Chapter 45, pp. 41-50, W. B. Saunders Co. Philadelphia, PA(1991); Nisonoff, A., Introduction to Molecular Immunology, 2nd Ed., Chapter 4,pp. 45-65, sinauer Associates, Inc., Sunderland, MA (1984))。
【0069】
本明細書で、前記抗体は、単一クローン抗体、多クローン抗体、合成抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、単一ドメイン抗体、及び単鎖可変断片からなる群より選択された抗体を含む。
【0070】
本明細書で、用語“抗原結合断片(antigen binding fragment)”は抗原結合機能を保有している断片を意味し、Fab、F(ab′)、F(ab′)2、及びFvなどを含む。抗体断片のうち、Fab(fragment antigen binding)は軽鎖及び重鎖の可変領域と軽鎖の不変領域及び重鎖の最初の不変領域(CH1)を有する構造で1つの抗原結合部位を有する。Fab′は、重鎖CH1ドメインのC-末端に1つ以上のシステイン残基を含むヒンジ領域(hinge region)を有するという点でFabと差がある。F(ab′)2抗体はFab’のヒンジ領域のシステイン残基がジスルフィド結合をなしながら生成される。Fvは重鎖可変部位及び軽鎖可変部位のみを有している最小の抗体片であって、Fv断片を生成する再組合技術はPCT国際公開特許出願WO 88/10649、WO 88/106630、 WO 88/07085、WO 88/07086、及びWO 88/09344に開示されている。二重鎖Fv(two-chain Fv)は非共有結合により重鎖可変部位と軽鎖可変部位が連結されており、単鎖Fv(single-chin variable fragment、scFv)は一般的にペプチドリンカーを通じて重鎖の可変領域と単鎖の可変領域が共有結合により連結されるか、またはC-末端で直ちに連結されているので、二重鎖Fvのようにダイマーのような構造をなすことができる。このような抗体断片は蛋白質加水分解酵素を用いて得るか(例えば、全体抗体をパパインで制限切断すればFabを得ることができ、ペブシンで切断すればF(ab′)2断片を得ることができる)、または遺伝子再組合技術により製作することができる。
【0071】
本発明の一具現例によれば、前記抗体または抗原結合断片は、具体的にFab、scFv形態であるか、または完全な抗体形態である。また、重鎖不変領域はガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)、またはイプシロン(ε)のうち、いずれか1つのイソタイプから選択できる。具体的には、重鎖不変領域は、ガンマ1(IgG1)、ガンマ3(IgG3)、またはガンマ4(IgG4)であり、最も具体的にはガンマ1(IgG1)イソタイプである。軽鎖不変領域はキャパまたはラムダ型でありえ、具体的にはキャパ型である。したがって、本発明の抗体はキャパ(κ)軽鎖とガンマ1(γ1)重鎖を有するFab、scFv形態、またはIgG1形態であるが、必ずこれに限定されるのではない。
【0072】
本明細書で、用語“重鎖”は抗原に特異性を与えるための充分の可変領域序列を有するアミノ酸序列を含む抗体の可変領域ドメインVH及び3個の不変領域ドメインCH1、CH2、及びCH3を含む全体長さ重鎖及びその断片を全て意味する。また、本明細書で、用語“軽鎖”は抗原に特異性を与えるための充分の可変領域序列を有するアミノ酸序列を含む抗体の可変領域ドメインVL及び不変領域ドメインCLを含む全体長さ軽鎖及びその断片を全て意味する。
【0073】
本明細書で、用語“CDR(complementarity determining region)”は免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の高可変領域(hypervariable region)のアミノ酸序列を意味する(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 4th Ed., U.S. Department of Health and Human Services, National Institutes of Health (1987))。重鎖(CDRH1、CDRH2、及びCDRH3)及び軽鎖(CDRL1、CDRL2、及びCDRL3)には各々3個のCDRsが含まれている。CDRは抗体が抗原またはエピトープに結合することにおいて主要な接触残基を提供する。
【0074】
本明細書で、用語“ヒト化抗体”とは、非-ヒト(例えば、ネズミ)抗体の非-ヒト免疫グロブリンから由来した最小序列を含有するキメリック免疫グロブリン、その免疫グロブリン鎖または断片(例えば、Fv、Fab、Fab′、F(ab′)2または抗体の他の抗原-結合下位序列)である。大部分の場合に、ヒト化された抗体は受容者の相補性-決定領域(CDR)の残基が、目的とする特異性、親和性、及び能力を有する非-ヒト種(供与者抗体)、例えば、マウス、ラット、またはうさぎのCDRの残基により代替されたヒト免疫グロブリン(受容者抗体)である。一部の場合に、前記ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は相応する非-ヒト残基により代替される。また、ヒト化された抗体は受容者抗体でも、または輸入されたCDRまたはフレームワーク序列でも発見できない残基を含むことができる。このような変形は抗体性能を追加で改善及び最適化するためになされる。一般に、前記ヒト化された抗体は少なくとも1つ、及び典型的に2つの実質的に全ての可変ドメインを含み、前記ドメインで前記CDR領域の全部または実質的な全部は非-ヒト免疫グロブリンのCDR領域に相応し、前記FR領域の全部または実質的な全部はヒト免疫グロブリンのFR領域の序列を有する。前記ヒト化された抗体は免疫グロブリン不変領域(Fc region)の少なくとも一部乃至実質的なヒト免疫グロブリンの不変領域(Fc region)序列を含む。
【0075】
本明細書で、アフィボディ(Affibody(登録商標))分子は黄色葡萄状球菌(Staphylococcus aureus)の蛋白質A(Protein A)のうち、IgGに親和性のある部位であるZ-ドメイン(Z domain)である。本明細書で、“アフィボディ(affibody)”は“Z body”または“Zb”とも表現される。アフィボディは58個のアミノ酸残基からなる小さな蛋白質である。このようなアフィボディ分子の蛋白質序列でIgGと結合面を形成する13個のアミノ酸はアミノ酸序列によって多様なターゲット抗原に対する結合が可能であり、ランダムな配列が可能であるのでライブラリー(library)を構築することができる。アフィボディ分子は抗体と類似するようにライブラリーからファージディスプレイ(phage display)、酵母蛋白質雑種法(yeast two hybrid、Y2H)などのスクリーニング方法により多様なターゲット抗原に対して結合できるアフィボディ分子を選別することができる。ターゲット抗原と結合可能なアフィボディ分子の特性を用いて最近HER2及びアミロイドベータ(amyloid-β)に特異的に結合するアフィボディが開発されたことがある(Orlova et al. 2006, Cancer Res., Gronwall et al., 2007, J. Biotechnol.)。また、アフィボディは分子量が6kDaで非常に小さくて、一般に150kDaの分子量を有するIgG形態の抗体と比較して人体投与時に全身的に拡散され、腎臓濾過により速く除去される特徴がある。したがって、アフィボディは主に診断試料研究開発に応用されている(Goldstein R et al., 2013, Expert Rev Anticancer Ther.)。アフィボディは一般IgGと結合された二重抗体の形態にも開発されている(Yu F et al., 2014, MAbs)。第1世代Z変異体(Z domainの変異体)に基づいたポリペプチドスキャフォールドに関する発明がPCT公開公報WO95/19374に開示されたことがあり、第2世代Z変異体に基づいたポリペプチドスキャフォールドに関する発明がPCT公開公報WO2009/080811に開示されたことがある。
【0076】
本明細書で、用語“ターゲット結合ポリペプチド(target binding polypeptide)”は、抗体のようにターゲット抗原またはハプテンに対する結合親和性を有するが、抗体とは構造的に関連性のない非免疫グロブリンポリペプチド分子をいう。前記ターゲット結合ポリペプチドは、抗体類似分子(antibody-like molecule)または抗体類似体(antibody mimetics)とも称されて、約150kDaの分子量を有する抗体とは異なり、一般的には3-20kDaの分子量を有する。前記ターゲット結合ポリペプチドは前記した蛋白質A(protein A)のZ-ドメインから由来したアフィボディ、ガンマ-Bクリスタリンまたはユビクィチンから由来したアフィリン(Affilin)、シスタチン(cystatin)から由来したアフィマー(Affimer)、Sulfolobus acidocaldariusのSac7dから由来したアフィチン(Affitin)、トリプルヘリックスコイルドコイルから由来したアルファボディー(Alphabody)、リポカリン(lipocalin)から由来したアンチカリン(Anticalin)、細胞膜受容体のドメインから由来したアビマー(Avimer)、アンキリン反復モチーフ(ankyrin repeat motif)から由来したDARPin、FynのSH3ドメインから由来したフィノマー(Fynomer)、プロテアーゼ抑制剤(protease inhibitor)のクニッツドメインから由来したクニッツドメインペプチド(Kunits domain peptide)、フィブロネクチンの10番目のタイプ3ドメイン(10th type III domain of fibronectin)から由来したモノボディー(Monobody)、Clostridium perfringensのNagHの炭水化物結合モジュール32-2(carbohydrate binding module 32-2)から由来したナノクランプ(nanoCLAMP)などを含むが、これに限定されるのではない。前記したターゲット結合ポリペプチドは、ファージディスプレイ、リボソームディスプレイなど、当業界に知られた多様なスクリーニング方法により任意のターゲット抗原またはハプテンに対する結合親和性を有するようにエンジニアリングできる。
【0077】
以下に使われる本明細書の用語、“抗体”、“抗原結合断片”、及び“ターゲット結合ポリペプチド”の定義は前述した通りである。
【0078】
本明細書で、用語“癌”は異常細胞の急速で、かつ統制されない成長を特徴とする疾病として定義される。癌細胞は局所的に、または血流及びリンパ系を通じて身体の他の部分に拡散できる。前記癌は固形腫瘍と非固形腫瘍(例えば、血液性腫瘍)を含む。
【0079】
本明細書で、用語“腫瘍”とは、陽性、前-癌性、悪性、または転移性の組織の異常成長を意味する。
【0080】
本明細書で、用語“ターゲット結合ポリペプチド(target binding polypeptide)”は抗体のようにターゲット抗原またはハプテンに対する結合親和性を有するが、抗体とは構造的に関連性のない非免疫グロブリンポリペプチド分子をいう。前記ターゲット結合ポリペプチドは、抗体類似分子(antibody-like molecule)または抗体類似体(antibody mimetics)とも称され、約150kDaの分子量を有する抗体とは異なり、一般的には3-20kDaの分子量を有する。前記ターゲット結合ポリペプチドは前記した蛋白質A(protein A)のZ-ドメインから由来したアフィボディ、ガンマ-Bクリスタリン、またはユビクィチンから由来したアフィリン(Affilin)、シスタチン(cystatin)から由来したアフィマー(Affimer)、Sulfolobus acidocaldariusのSac7dから由来したアフィチン(Affitin)、トリプルヘリックスコイルドコイルから由来したアルファボディー(Alphabody)、リポカリン(lipocalin)から由来したアンチカリン(Anticalin)、細胞膜受容体のドメインから由来したアビマー(Avimer)、アンキリン反復モチーフ(ankyrin repeat motif)から由来したDARPin、FynのSH3ドメインから由来したフィノマー(Fynomer)、プロテアーゼ抑制剤(protease inhibitor)のクニッツドメインから由来したクニッツドメインペプチド(Kunits domain peptide)、フィブロネクチンの10番目のタイプ3ドメイン(10th type III domain of fibronectin)から由来したモノボディー(Monobody)、Clostridium perfringensのNagHの炭水化物結合モジュール32-2(carbohydrate binding module 32-2)から由来したナノクランプ(nanoCLAMP)などを含むが、これに限定されるのではない。前記したターゲット結合ポリペプチドは、ファージディスプレイ、リボソームディスプレイなど、当業界に知られた多様なスクリーニング方法により任意のターゲット抗原またはハプテンに対する結合親和性を有するようにエンジニアリングできる。
【0081】
以下に使われる本明細書の用語、“抗体”、“抗原結合断片”、及び“ターゲット結合ポリペプチド”の定義は前述した通りである。
【0082】
本明細書で、用語“癌”は異常細胞の急速で、かつ統制されない成長を特徴とする疾病として定義される。癌細胞は局所的に、または血流及びリンパ系を通じて身体の他の部分に拡散できる。前記癌は固形腫瘍と非固形腫瘍(例えば、血液性腫瘍)を含む。
【0083】
本明細書で、用語“腫瘍”は、陽性、前-癌性、悪性、または転移性の組織の異常成長を意味する。
【0084】
固形腫瘍は、大概嚢腫または液体領域を含有しない組織の異常塊りである。固形腫瘍は陽性または悪性でありうる。相異する類型の固形腫瘍は前記腫瘍を形成する細胞の類型によって命名される(例えば、肉腫、癌腫、及びリンパ種)。固形腫瘍、例えば肉腫及び癌腫の例には、繊維肉腫(fibrosarcoma)、粘液肉腫(myxosarcoma)、脂肪肉腫(liposarcoma)、軟骨肉腫(chondrosarcoma)、骨肉腫(osteosarcoma)、及び他の肉腫、滑膜腫(synovioma)、中皮腫(mesothelioma)、ユーイング腫瘍(Ewing's tumor)、平滑筋肉腫(leiomyosarcoma)、横紋筋肉腫(rhabdomyosarcoma)、結腸癌腫(colon carcinoma)、悪性リンパ球(lymphoid malignancy)、膵癌(pancreaticcancer)、乳癌(breast cancer)、肺癌(lung cancers)、卵巣癌(ovarian cancer)、前立腺癌(prostate cancer)、肝細胞癌腫(hepatocellular carcinoma)、扁平細胞癌腫(squamous cell carcinoma)、基底細胞癌腫(basal cell carcinoma)、腺癌腫(adenocarcinoma)、汗腺癌腫(sweat gland carcinoma)、髄質甲状腺癌腫(medullary thyroid carcinoma)、乳頭甲状腺癌腫(papillary thyroid carcinoma)、クロム親和細胞腫皮脂腺癌腫(pheochromocytomas sebaceous gland carcinoma)、乳頭癌腫(papillary carcinoma)、乳頭腺癌腫(papillary adenocarcinomas)、髓質癌腫(medullary carcinoma)、気管支由来癌腫(bronchogenic carcinoma)、腎細胞癌腫(renal cell carcinoma)、肝細胞癌(hepatoma)、胆管癌腫(bile duct carcinoma)、絨毛膜癌腫(choriocarcinoma)、ウィルムス腫瘍(Wilms' tumor)、子宮頚部癌(cervical cancer)、皐丸腫瘍(testicular tumor)、精上皮腫(seminoma)、膀胱癌腫(bladder carcinoma)、黒色腫(melanoma)、及びCNS腫瘍(例えば、神経膠腫(glioma)(例えば、脳幹神経膠腫(brainstem glioma)及び混合神経膠腫(mixed gliomas))、膠母細胞腫(glioblastoma)(また、多形性膠母細胞腫(glioblastoma multiforme)として公知される)、星状細胞腫(astrocytoma)、CNSリンパ腫(lymphoma)、芽細胞腫(germinoma)、髄芽細胞腫(medulloblastoma)、シュワン腫(Schwannoma)頭蓋咽頭腫(craniopharyogioma)、上衣細胞腫(ependymoma)、松果体腫(pinealoma)、血管母細胞腫(hemangioblastoma)、聴神経腫瘍(acoustic neuroma)、乏枝膠腫(oligodendroglioma)、脳髄膜腫(menangioma)、神経母細胞腫(neuroblastoma)、網膜芽細胞腫(retinoblastoma)、及び脳転移(brain metastases)を含む。
【0085】
血液性腫瘍または血液癌は血液または骨髄の癌である。血液(または、造血)癌の例は、白血病、例えば急性白血病(acute leukemias)(例えば、急性リンパ球性白血病(acute lymphocytic leukemia)、急性骨髄球性白血病(acute myelocytic leukemia)、急性骨髄性白血病(acute myelogenous leukemia)、及び骨髄芽球性(myeloblastic)、前骨髄球性(promyelocytic)、骨髄単核球性(myelomonocytic)、単核球性(monocytic)、及び赤白血病(erythroleukemia)、慢性白血病(chronic leukemias)(例えば、慢性骨髄球性(chronic myelocytic)(顆粒球性(granulocytic))白血病、慢性骨髄性白血病、及び慢性骨髄球性白血病)、真性赤血球増加症(polycythemia vera)、リンパ腫(lymphoma)、ホジキン病(Hodgkin's disease)、非-ホジキンリンパ腫(non-Hodgkin's lymphoma)(遅延性及び高等級形態)、多発性骨髄腫(multiple myeloma)、原発性マクログロブリン血症(Waldenstrom's macroglobulinemia)、重鎖疾病(heavy chain disease)、骨髄異形性症候群(myelodysplastic syndrome)、毛細胞白血病(hairy cell leukemia)、及び骨髄異形性症(myelodysplasia)を含む。
【0086】
本明細書で、用語“自己免疫疾病”とは、自己免疫反応から生成される疾患と定義される。自己免疫疾病は自己-抗原に対する不適当で、かつ過度な反応の結果である。自己免疫疾病の例は非制限的に、特にアディソン病(Addision's disease)、円形脱毛症(alopecia areata)、強直性脊椎炎(ankylosing spondylitis)、自己免疫肝炎(autoimmune hepatitis)、自己免疫耳下腺炎(autoimmune parotitis)、クローン病(Crohn's disease)、糖尿病(diabetes)(I型)、異栄養性水泡性表皮剥離症(dystrophic epidermolysis bullosa)、副睾丸炎(epididymitis)、糸球体腎炎(glomerulonephritis)、グレーブス病(Graves' disease)、ギラン・バレー症候群(Guillain-Barr syndrome)、橋本病(Hashimoto's disease)、溶血性貧血(hemolytic anemia)、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus)、多発性硬化症(multiple sclerosis)、重症筋無力症(myasthenia gravis)、尋常性天皰瘡(pemphigus vulgaris)、乾癬(psoriasis)、リューマチ熱(rheumatic fever)、リウマチ性関節炎(rheumatoid arthritis)、類肉腫症(sarcoidosis)、硬皮症(scleroderma)、シェーグレン症候群(Sjogren's syndrome)、脊椎関節症(spondyloarthropathies)、甲状腺炎(thyroiditis)、血管炎(vasculitis)、白斑症(vitiligo)、粘液水腫(myxedema)、悪性貧血(pernicious anemia)、潰瘍性大膓炎(ulcerative colitis)を含む。
【0087】
本明細書で、用語“細胞毒性”とは、細胞を殺害または損傷させることを称する。本発明の一具現例において、活性化された細胞のターゲット細胞に対する細胞毒性は、例えば、Tリンパ球の増加した細胞溶解活性を意味する。
【0088】
本発明で、前記スイッチ分子を構成する(a)標的化モイアティーと(b)キメラ抗原受容体に結合するポリペプチドは互いに共有結合により連結される。例えば、2以上のポリペプチド鎖が再組合融合蛋白質(recombinant fused protein)で発現されることを通じて共有結合により連結されるか、または化学的コンジュゲーション(conjugation)により2以上のポリペプチド鎖が連結されたコンジュゲート(conjugate)の形態に具現できる。
【0089】
本発明の他の具現例によれば、前記スイッチ分子で(a)標的化モイアティーと(b)キメラ抗原受容体に結合するポリペプチドは直接的に連結されるか、またはリンカー(例えば、アミノ酸リンカー)を通じて間接的に連結できる。
【0090】
通常の技術者であれば、融合蛋白質の製作時、普通融合しようとする機能的一部分(moiety)の間にリンカーを使用することを含むことができ、互いに異なる特性を有する異なる種類のリンカー、例えば柔軟性アミノ酸リンカー、非柔軟性リンカー及び切断可能なアミノ酸リンカーがあるということを知っている。リンカーは融合蛋白質の発現量の増加、生物学的活性の向上、ターゲッティングを可能にするか、または薬動学を変更させるための目的に、または融合蛋白質の安定性を増加させ、フォールディング(folding)を向上させるために使われてきた。
【0091】
したがって、本発明の具体的な具現例によれば、前記複合体は少なくとも1つのリンカー、例えば柔軟性アミノ酸リンカー、非柔軟性リンカー、及び切断可能なアミノ酸リンカーから選択される少なくとも1つのリンカーをさらに含むことができる。本発明の最も具体的な一具現例によれば、前記リンカーは前記(a)標的化モイアティーと(b)キメラ抗原受容体に結合するポリペプチドの間に配列される。
【0092】
本発明の具体的な具現例によれば、前記スイッチ分子の(a)標的化モイアティーと(b)キメラ抗原受容体に結合するポリペプチドは、少なくとも1つのリンカーに連結される。
【0093】
この場合、前記リンカーは、一般式(GnSm)pまたは(SmGn)pと表示されるアミノ酸序列からなることができる:
【0094】
ここで、前記n、m、及びpは独立的に、
nは1乃至7範囲の整数であり;
mは0乃至7範囲の整数であり;
nとmの和は8以下の整数であり;及び
pは1乃至7範囲の整数である。
【0095】
本発明の他の具体的な具現例によれば、前記リンカーはn=1乃至5であり、m=0乃至5である。より具体的な具現例の場合、n=4で、m=1である。より具体的な具現例の場合、前記リンカーは(G4S)3または(S4G)3である。更に他の具現例の場合、前記リンカーはGGGGSである。
【0096】
更に他の具体的な具現例の場合、前記リンカーはVDGSである。更に他の具体的な具現例の場合、前記リンカーはASGSである。
【0097】
本明細書で、前記スイッチ分子をはじめとする本明細書で発現されるポリペプチドまたは融合蛋白質はポリペプチド/融合蛋白質のC-末端及び/又はN-末端に少なくとも1つの追加的なアミノ酸を含むことができる。上記の追加的なアミノ酸残基は、例えば、生産性、精製(purification)、生体内または生体外での安定化、複合体のカップリングまたは検出を向上させるための目的に、個別的または集合的に追加できる。例えば、前記ポリペプチドまたは融合蛋白質は前記ポリペプチドまたは融合蛋白質のC-末端及び/又はN-末端にシステイン残基を追加的に含むことができる。追加的なアミノ酸残基は精製またはポリペプチドの検出のための“タグ(tag)”を提供することもでき、例えばそのタグはそのタグと特異的な抗体との相互作用のためのものである。His6タグの場合、固定化された金属親和性クロマトグラフィー(IMAC)のために、His6タグ、(HisGlu)3タグ(“HEHEHE”tag)または“myc”(c-myc)タグまたは“FLAG”タグのようなタグを提供することができる。
【0098】
本発明の他の態様によれば、本発明は前記したスイッチ分子をコーディングするヌクレオチド序列を含む核酸分子を提供する。
【0099】
本発明の一具現例において、本発明の前記スイッチ分子をコーディングするヌクレオチド序列は、前記スイッチ分子を構成するアミノ酸序列をコーディングするヌクレオシド序列であれば足り、ある特定ヌクレオシド序列に限定されないということは当業者に自明である。これは、ヌクレオシド序列の変異が発生しても変異されたヌクレオチド序列を蛋白質で発現すれば蛋白質序列で変化をもたらさない場合もあるためである。これをコドンの縮退性という。したがって、前記ヌクレオチド序列は機能的に均等なコドンまたは同一のアミノ酸をコーディングするコドン(例えば、コドンの縮退性により、アルギニンまたはセリンに対するコドンは6個である)、または生物学的に均等なアミノ酸をコーディングするコドンを含むヌクレオチド序列を含む。
【0100】
本明細書で、用語“核酸(nucleic acids)”はDNA(gDNA及びcDNA)、そしてRNA分子を包括的に含む意味を有し、核酸分子で基本構成単位であるヌクレオチドは自然のヌクレオチドだけでなく、糖または塩基部位が変形された類似体(analogue)も含む(Scheit, Nucleotide Analogs, John Wiley, New York(1980); Uhlman及びPeyman, Chemical Reviews, 90:543-584(1990))。
【0101】
前述した生物学的均等活性を有する変異を考慮すれば、前記スイッチ分子を構成するアミノ酸序列をコーディングする本発明の核酸分子はこれと実質的な同一性(substantial identity)を示す序列も含むことと解析される。上記の実質的な同一性は、前記した本発明の序列と任意の他の序列を最大限対応するようにアライン(align)し、当業界で通常的に用いられるアルゴリズムを用いてアラインされた序列を分析した場合に、最小60%以上の相同性、より具体的には70%以上の相同性、より具体的には80%以上の相同性、さらに具体的には90%以上の相同性、最も具体的には95%以上の相同性を示す序列を意味する。序列比較のためのアラインメント(alignment)方法は当業界に公知されている。アラインメントに対する多様な方法及びアルゴリズムはSmith and Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482(1981); Needleman and Wunsch, J. Mol. Bio. 48:443(1970); Pearson and Lipman, Methods in Mol. Biol. 24: 307-31(1988); Higgins and Sharp, Gene 73:237-44(1988); Higgins and Sharp, CABIOS 5:151-3(1989); Corpet et al., Nuc. Acids Res. 16:10881-90(1988); Huang et al., Comp. Appl. BioSci. 8:155-65(1992) and Pearson et al., Meth. Mol. Biol. 24:307-31(1994)に開示されているが、これに限定されるのではない。
【0102】
本発明の更に他の態様によれば、本発明は前記したスイッチ分子をコーディングする核酸分子を含む再組合ベクターを提供する。
【0103】
本明細書で、用語“ベクター”は宿主細胞で目的遺伝子を発現させるための手段に、プラスミドベクター;コズミドベクター;そしてバクテリオファージベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、及びアデノ-関連ウイルスベクターのようなウイルスベクターなどを含む。
【0104】
本発明の具体的な具現例によれば、本発明のベクターで前記スイッチ分子をコーディングする核酸分子は前記ベクターのプロモーターと作動的に結合(operatively linked)されている。
【0105】
本明細書で、用語“作動的に結合された”は、核酸発現調節序列(例:プロモーター、シグナル序列、または転写調節因子結合位置のアレイ)と他の核酸序列との間の機能的な結合を意味し、これにより前記調節序列は前記他の核酸序列の転写及び/又は解毒を調節するようになる。
【0106】
本発明の再組合ベクターシステムは当業界に公知された多様な方法により構築されることができ、これに対する具体的な方法は Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001)に開示されており、この文献は本明細書に参照として挿入される。
【0107】
本発明のベクターは典型的に遺伝子クローニングのためのベクターまたは蛋白質の発現のためのベクターとして構築できる。また、本発明のベクターは原核細胞または真核細胞を宿主にして構築できる。
【0108】
例えば、本発明のベクターが発現ベクターであり、真核細胞を宿主にする場合には、哺乳動物細胞のゲノムから由来したプロモーター(例:メタロチオニンプロモーター、β-アクチンプロモーター、ヒトヘモグロビンプロモーター及びヒト筋肉クレアチンプロモーター)または哺乳動物ウイルスから由来したプロモーター(例:アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター、HSVのtkプロモーター、マウス乳房腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、HIVのLTRプロモーター、モロニーウイルスのプロモーター、エプスタインバーウイルス(EBV)のプロモーター、及びロウスサルコマウイルス(RSV)のプロモーター)が利用されることができ、これらは一般的に転写終結序列としてポリアデニル化序列を有する。
【0109】
本発明のベクターはそれから発現されるポリペプチドまたは蛋白質の精製を容易にするために、他の序列と融合されることもできる。融合される序列は、例えば、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(Pharmacia、USA)、マルトース結合蛋白質(NEB、USA)、FLAG(IBI、USA)、及び6x His(hexahistidine;Quiagen、USA)などがある。
【0110】
一方、本発明の発現ベクターは選択標識として、当業界で通常的に用いられる抗生剤耐性遺伝子を含み、例えばアンピシリン、ゲンタマイシン、カルベニシリン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、カナマイシン、ジェネティシン、ネオマイシン、及びテトラサイクリンに対する耐性遺伝子がある。
【0111】
本発明の他の一態様によれば、本発明は前記再組合ベクターに形質転換された宿主細胞を提供する。
【0112】
本発明のベクターを安定し、かつ連続的にクローニング及び発現させることができる宿主細胞は当業界に公知されており、いかなる宿主細胞も用いることができる。例えば、前記ベクターの適合した真核細胞宿主細胞は、猿腎臓細胞7(COS7:monkey kidney cells)、NSO細胞、SP2/0、チャイニーズハムスター卵巣(CHO:Chinese hamster ovary)細胞、W138、幼いハムスター腎臓(BHK:baby hamster kidney)細胞、MDCK、骨髄腫細胞株、HuT78細胞、及びHEK-293細胞を含むが、これに限定されない。
【0113】
本明細書で、用語“形質転換された”、“形質導入された”、または“形質感染された”は、外因性核酸が宿主細胞内に伝達または導入される過程を称する。“形質転換された”、“形質導入された”、または“形質感染された”細胞は、外因性核酸に形質転換、形質導入、または形質感染された細胞であり、前記細胞は当該細胞及びその継代培養による子孫細胞を含む。
【0114】
本発明の他の一態様によれば、本発明は前記したスイッチ分子を含む組成物を提供する。
【0115】
本発明の一具現例によれば、前記組成物は前記したスイッチ分子及び薬剤学的に許容される担体を含む免疫治療用薬剤学的組成物である。
【0116】
本明細書で、“免疫治療(immunotherapy)”とは、兔疫体系が癌を除去するように助ける癌の治療方法である。免疫治療は能動的免疫治療と受動的免疫治療とに区分される。能動的免疫治療は、i)癌細胞または癌細胞により生成された物質を人体に注入して兔疫体系を活性化させる癌ワクチン治療(cancer vaccine therapy)、ii)サイトカイン(インターフェロン、インターロイキンなど)、成長因子などの免疫調節剤(immune-modulating agents)を投与して特定白血球を活性化させる免疫調節治療を含む。受動的免疫治療は特定癌細胞に結合する治療的抗体(therapeutic antibody)と免疫細胞治療(immune cell therapy)を含む。免疫細胞治療は具体的に樹枝状細胞ワクチン治療(dendritic cell vaccine therapy)とCAR-T(chimeric antigen receptor T cell)治療、NK細胞治療(natural killer cell therapy)、CTL治療(cytotoxic T lymphocyte therapy)、養子細胞転移(adoptive cell transfer)などを含むが、これに限定されるのではない。本発明で免疫治療は主に前述した免疫細胞治療を意味する。
【0117】
本発明の薬剤学的組成物は標的細胞の細胞表面分子に結合する標的化モイアティーを含むスイッチ分子を含むので、標的化モイアティーの標的抗原の操作が可能であるので、多様な疾患の予防または治療に効果的である。
【0118】
前記標的化モイアティーが結合する標的抗原は4-1BB、5T4、腺癌腫抗原、アルファ-胎児蛋白質、BAFF、Bリンパ腫細胞、C242抗原、CA-125、炭酸脱水酵素9(CA-IX)、C-MET、CCR4、CD152、CD19、CD20、CD200、CD22、CD221、CD23(IgE受容体)、CD28、CD30(TNFRSF8)、CD33、CD4、CD40、CD44 v6、CD51、CD52、CD56、CD74、CD80、CEA、CNT0888、CTLA-4、DR5、EGFR、EpCAM、CD3、FAP、フィブロネクチン余分ドメイン-B、葉酸炎受容体1、GD2、GD3ガングリオシド、糖蛋白75、GPNMB、HER2/neu、HGF、ヒト散乱因子受容体キナーゼ、IGF-1受容体、IGF-I、IgG1、LI-CAM、IL-13、IL-6、インシュリン類似成長因子I受容体、インテグリンα5β1、インテグリンαvβ3、MORAb-009、MS4A1、MUC1、ミューシンCanAg、N-グリコリルノイラミン酸、NPC-1C、PDGF-Ra、PDL192、ホスファチジルセリン、前立腺癌腫細胞、RANKL、RON、ROR1、SCH900105、SDC1、SLAMF7、TAG-72、テネイシンC、TGFベータ2、TGF-ベータ、TRAIL-R1、TRAIL-R2、腫瘍抗原CTAA16.88、VEGF-A、VEGFR-1、VEGFR2、及びビメンチンを含む群より選択できるが、必ずここに限定されるのではない。
【0119】
前記標的化モイアティーが特異的に結合する標的抗原がCD19の場合、本発明の薬剤学的組成物を使用して治療できる疾患はCD19を発現する細胞と関連したヒト及び哺乳動物の疾患である。具体的に、前記疾患は慢性リンパ球性白血病(chronic lymphocytic leukemia、CLL)、急性リンパ球性白血病(acute lymphocytic leukemia、ALL)、前リンパ球性白血病(pro-lymphocytic leukemia)、毛細胞白血病(hairy cell leukemia)、一般急性リンパ球性白血病(common acute lymphocytic leukemia、CALLA)、Null-acute lymphoblastic leukemia、非-ホジキンリンパ腫、びまん性巨大B細胞リンパ腫(diffuse large B cell lymphoma、DLBCL)、多発性骨髄腫、濾胞リンパ腫(follicular lymphoma)、脾臓リンパ腫(splenic lymphoma)、辺縁帯リンパ腫(marginal zone lymphoma)、マントル細胞リンパ腫(mantle cell lymphoma)、低危険群B細胞リンパ腫(indolent B cell lymphoma)、ホジキンリンパ腫(Hodgkin lymphoma)からなる群より選択されたB細胞悪性腫瘍(B cell malignancy)を含む。また、前記疾患は不適切であるか、または増強したB細胞数及び/又は活性化と関連した自己免疫疾患及び炎症疾患を含む。前記自己免疫疾患及び炎症疾患の例には、多発性硬化症、リューマチ性関節炎、及び全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus、SLE)などを含む。
【0120】
本発明の薬剤学的組成物に含まれる薬剤学的に許容される担体は、製剤時に通常的に用いられるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアゴム、燐酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアル酸マグネシウム、及びミネラルオイルなどを含むが、これに限定されるのではない。
本発明の薬剤学的組成物は前記成分の以外に潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などを追加で含むことができる。適合した薬剤学的に許容される担体及び製剤は Remington's Pharmaceutical Sciences (19th ed., 1995)に詳細に記載されている。
【0121】
本発明の薬剤学的組成物は経口または非経口で投与することができ、例えば静脈内注入、皮下注入、皮内注入、筋肉内注入、腹腔内注入、胸骨内注入、腫瘍内注入、局所投与、鼻内投与、脳内投与、頭蓋骨内投与、肺内投与、及び直腸内投与などにより投与することができるが、これに限定されるのではない。
【0122】
本発明の薬剤学的組成物の適合した投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性、病的状態、飲食、投与時間、投与経路、排泄速度、及び反応感応性のような要因により多様であり、普通に熟練した医者は所望の治療または予防に効果的な投与量を容易に決定及び処方することができる。本発明の好ましい具現例によれば、本発明の薬剤学的組成物の1日投与量は0.0001-100mg/kgである。本明細書で、用語“薬剤学的有効量”は前述した疾患の予防または治療に十分な量を意味する。
【0123】
本明細書で、用語“予防”は疾患または疾患状態の防止または保護的な治療を意味する。本明細書で、用語“治療”は、疾患状態の減少、抑制、鎮静、または根絶を意味する。
【0124】
本発明の薬剤学的組成物は、当該発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施することができる方法によって、薬剤学的に許容される担体及び/又は賦形剤を用いて製剤化することにより単位容量形態に製造されるか、または多用量容器内に内入させて製造できる。この際、剤形はオイルまたは水性媒質中の溶液、懸濁液、または乳化液形態、またはエキス剤、散剤、坐剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、またはカプセル剤形態でありえ、分散剤または安定化剤を追加的に含むことができる。
【0125】
本発明の薬剤学的組成物はまた前述したスイッチ分子の以外に他の薬剤学的活性薬剤または薬物、例えば、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、パクリタキセル、リツキシマブ、ビンブラスチン、ビンクリスチンなどの化学治療剤を含むことができる。
【0126】
本発明の更に他の一態様によれば、本発明は次を含む複合体を提供する:
(a)次を含むキメラ抗原受容体効果器細胞(chimeric antigen receptor-effector cell)を活性化するためのスイッチ分子(switch molecule):
(aa)標的細胞上で細胞表面分子に結合する標的化モイアティー(targeting moiety);及び
(bb)効果器細胞上でキメラ抗原受容体に結合するポリペプチド、及び
(b)前記スイッチ分子に特異的に結合する(標的化する)ポリペプチドまたは融合蛋白質。
【0127】
本発明の一具現例によれば、前記(aa)標的化モイアティーと前記(bb)効果器細胞上でキメラ抗原受容体に結合するポリペプチドは、抗体、抗体の抗原結合断片(antigen binding fragment)またはアフィボディ(affibody)のようなターゲット結合ポリペプチド(target binding polypeptide)であり、前記(b)ポリペプチドまたは融合蛋白質また前記スイッチ分子を標的化する抗体、抗体の抗原結合断片、アフィボディのようなターゲット結合ポリペプチドであるか、またはこれらを含むキメラ抗原受容体である。
【0128】
また、本発明の他の一態様によれば、本発明は(a)前述したスイッチ分子を標的化する抗体、抗体の抗原結合断片、またはアフィボディのようなターゲット結合ポリペプチドを含む細胞外ドメイン(extracellular domain);(b)膜貫通ドメイン(transmembrane domain);及び(c)細胞内信号伝達ドメインを含むことを特徴とするキメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor、CAR)を提供する。
【0129】
また、本発明の更に他の一態様によれば、本発明は(a)前述した本発明のスイッチ分子、及び(b)前述した本発明のスイッチ分子を標的化するキメラ抗原受容体を含むCAR-効果器細胞治療的システムを提供する。
【0130】
本発明に従うCAR-効果器細胞治療的システムを利用すれば、特定癌細胞の表面抗原(e.g.CD19)に特異的に結合するスイッチ分子、及び(b)前記スイッチ分子を標的化するキメラ抗原受容体を発現する効果器細胞(e.g.T細胞、樹枝状細胞)を投与が必要な患者に投与して癌(e.g.CD19発現と関連した細胞の癌)を治療することができる。
【0131】
本明細書で、用語“キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor、CAR)”は効果器細胞信号伝達または効果器細胞活性化ドメイン(e.g.T-細胞信号伝達またはT-細胞活性化ドメイン)に連結されたターゲット結合ドメイン(e.g.単一鎖可変断片(scFv))を含む人工的に製作されたハイブリッド蛋白質(融合蛋白質)またはポリペプチドである。キメラ抗原受容体は一般的に単一クローン抗体の抗原-結合性質を用いて非-MHC-制限方式で、選択された標的に対するT-細胞特異性及び反応性を再誘導する能力を有する。非-MHC-制限された抗原認識はCARを発現するT-細胞に抗原処理に関わらず抗原を認識する能力を提供して、腫瘍逃避の主要メカニズムを回避させる。また、CARはT-細胞で発現される時、有利には内在性T-細胞受容体(TCR)アルファ及びベータ鎖と二量体化されない。
【0132】
本発明のキメラ抗原受容体はスイッチャブルキメラ抗原受容体(switchable chimeric antigen receptor、sCAR)である。一般的な従来のクラシックキメラ抗原受容体(classical chimeric antigen receptor)の細胞外ドメインは特定抗原(例えば、HER2抗原、CD19抗原などの腫瘍関連抗原(tumor associated antigen、TAA))を標的化する抗体または抗原結合断片を含む。しかしながら、本発明のキメラ抗原受容体の細胞外ドメインは、抗体、抗体の抗原結合断片、またはターゲット結合ポリペプチドを含む。また、前記細胞外ドメインが含む抗体、抗体の抗原結合断片、またはターゲット結合ポリペプチドは直接的に標的細胞の細胞表面抗原を標的化することでなく、前述したスイッチ分子(具体的には、スイッチ分子のCAR結合ポリペプチド)を標的化する。
【0133】
本発明の一実施例によれば、本発明のキメラ抗原受容体はZb1(第1序列、第2序列)またはZb2(第3序列、第4序列)を認識するZb2またはZb1を含んでスイッチ分子のCAR結合ポリペプチドを標的化することができる。
【0134】
本発明の一具現例において、前記細胞内信号伝達ドメインは、刺激分子、補助刺激分子の細胞内信号伝達ドメインであって、前記CARが発現される細胞の活性化を担当する。
【0135】
前記細胞内信号伝達ドメインは非制限的にTCR、CD3ゼータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD86、通常的なFcRガンマ、FcRベータ(FcイプシロンR1b)、CD79a、CD79b、FcガンマRIIa、DAP10、DAP12、T細胞受容体(TCR)、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能-関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合するリガンド、CDS、ICAM-1、GITR、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、CD127、CD160、CD19、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46、NKG2D、本明細書に記載された他の共同刺激分子、これらの任意の誘導体、変異体または断片、同一の機能上の能力を有する共同刺激分子の任意の合成序列、及びこれらの任意の組み合わせを含む。
【0136】
本発明の一具現例によれば、前記(bb)膜貫通ドメインはT-細胞受容体、CD27、CD28、CD3、イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8(CD8α)、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、及びCD154のアルファ、ベータ、またはゼータ鎖からなる群より選択された蛋白質の膜貫通ドメインである。
【0137】
また、本発明の具体的な具現例によれば、前記(cc)細胞内信号伝達ドメインはCD3ζ(CD3ゼータ)鎖から由来したドメインである。
【0138】
本発明の更に他の具体的な具現例によれば、前記(cc)細胞内信号伝達ドメインはOX40(CD134)、CD2、CD27、CD28、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、及び4-1BB(CD137)からなる群より選択された共同刺激分子(costimulatory molecule)を追加的に含むことができる。前記細胞内信号伝達ドメインは前述したドメインの他にも当該分野で公知された他の細胞内信号伝達分子から収得または由来されることができ、細胞内信号伝達ドメインが由来される分子の全体またはその断片を含むことができる。
【0139】
本発明のキメラ抗原受容体の膜貫通ドメイン及び細胞内信号伝達ドメインは前述した具体的な膜貫通ドメイン及び細胞内信号伝達ドメインのうち、1以上選択された組み合わせで含まれることができる。例えば、本発明のキメラ抗原受容体はCD8α膜貫通ドメイン及びCD28及びCD3ζの細胞内信号伝達ドメインを含むことができる。
【0140】
本明細書で、“スイッチ分子(switch molecule)”は前記キメラ抗原受容体を用いたT細胞治療剤、即ち、CAR-Tと称される細胞治療剤において、CARのターゲット認識ドメインと、CARの細胞シグナリングドメインを分離し、これを媒介するアダプター分子(adptor molecule)を意味する。スイッチ分子はHeterogenous target、またはresistant tumorに対してCARのターゲットを交替するか、またはCARを発現する細胞の過度な活性化によって副作用発生時、スイッチ分子の投与を通じてのCAR細胞の活性減少を可能にする(Cao et al., Angew Chem Int Ed Engl. 2016 June 20; 55(26): 7520-7524.)。
【0141】
本発明の更に他の一態様によれば、本発明はキメラ抗原受容体を発現する効果器細胞(effector cell)として、前記キメラ抗原受容体は前述したスイッチ分子の(b)キメラ抗原受容体結合ポリペプチド(例えば、アフィボディ分子)を標的化することを特徴とする効果器細胞を提供する。
【0142】
また、本発明の更に他の一態様によれば、本発明は次を含むCAR-効果器細胞治療的システムを提供する:
(a)前述した本発明のスイッチ分子、及び(b)前述した本発明のスイッチ分子を標的化するキメラ抗原受容体を発現する効果器細胞。
【0143】
本発明に従うCAR-効果器細胞治療的システムを利用すれば、例えば、特定癌細胞の表面抗原(e.g.CD19)に特異的に結合するスイッチ分子、及び(b)前記スイッチ分子を標的化するキメラ抗原受容体を発現する効果器細胞(e.g.T細胞、樹枝状細胞)を投与が必要な患者に投与して癌を治療することができる。
【0144】
本発明の一具現例によれば、前記効果器細胞は、樹枝状細胞、キラー樹枝状細胞、肥満細胞、自然殺害細胞、Bリンパ球、Tリンパ球、大食細胞、及びこれらの前駆細胞からなる群より選択される。
【0145】
本発明の具体的な具現例によれば、前記Tリンパ球は、炎症性Tリンパ球、細胞毒性Tリンパ球、調節Tリンパ球、またはヘルパーTリンパ球からなる群より選択できる。
【0146】
本発明の更に他の一態様によれば、本発明は上記のキメラ抗原受容体を発現する効果器細胞;及び前記キメラ抗原受容体と結合するスイッチ分子を治療が必要な対象体に投与するステップを含む方法を提供する。
【0147】
本発明の一具現例において、前記方法は腫瘍または癌と関連した疾病または状態を治療する方法である。
【0148】
本発明の他の一具現例において、前記方法は自己免疫と関連した疾病または状態を治療する方法である。
【0149】
本発明の一具現例によれば、前記腫瘍または癌と関連した疾病または状態の治療方法は対象体に先に投与されたスイッチ分子と相異する標的細胞の細胞表面分子と結合する1以上のスイッチ分子を対象体に追加的に投与するステップを含む。
【0150】
CAR-Tを用いた腫瘍または癌と関連した疾病または状態の治療途中、癌細胞の細胞表面分子に突然変異が生じる場合には既存のCARが突然変異が発生した癌細胞を認識できないので、治療効果が減少するか、または治療が不可である。この場合、突然変異が発生した細胞の表面分子を標的化する新規なスイッチ分子を対象体に追加的に投与すれば、先に投与されたスイッチ分子に代替して持続的な癌の治療効果を期待することができる。
【0151】
本発明の腫瘍または癌と関連した疾病または状態の治療方法は、有効性分として前述したCARを発現する効果器細胞と、前記CARと結合するスイッチ分子を共通的に使用する方法であるので、重複する内容に対しては本明細書の過度な複雑性を避けるためにその記載を省略する。
【0152】
また、本発明の他の態様によれば、本発明は(a)前述したキメラ抗原受容体を発現する効果器細胞(CAR-effector cell)及び前記キメラ抗原受容体と結合する本発明のスイッチ分子を治療が必要な対象体に投与するステップ;及び(b)対象体に先に投与されたスイッチ分子と相異する標的細胞の細胞表面分子と結合する1以上のスイッチ分子、または標的化モイアティーのないキメラ抗原受容体に結合するポリペプチドを対象体に追加的に投与するステップを含む対象体内CAR-効果器細胞の活性を抑制する方法を提供する。
【0153】
CAR-Tを用いた腫瘍または癌と関連した疾病または状態の治療途中、CAR-T細胞の活性化が過度になる場合、腫瘍溶解症候群(tumor lysis syndrome、TLS)、サイトカイン放出症候群(cytokine release syndrome、CRS)などの合併症が発生することがあり、これは患者に致命的である。本発明のスイッチ分子を用いるCAR-効果器細胞治療システムを用いる場合、CARを発現する効果器細胞が直接的に癌細胞の細胞表面分子を認識せず、CARに結合するポリペプチドを含むスイッチ分子を通じて間接的に認識する。したがって、対象体に先に投与されたスイッチ分子と相異する標的細胞の細胞表面分子と結合する1以上のスイッチ分子、または標的化モイアティーのないキメラ抗原受容体に結合するポリペプチドを対象体に追加的に投与すれば、CARがこれ以上の既存の癌細胞を標的化できなくて、これによりCAR-T細胞の過度な活性を抑制することができる。
[発明の効果]
【0154】
本発明の特徴及び利点を要約すると、次の通りである:
【0155】
本発明は、キメラ抗原受容体効果器細胞(chimeric antigen receptor-effector cell)を活性化するためのスイッチ分子(switch molecule)を提供する。
【0156】
また、本発明は(a)キメラ抗原受容体効果器細胞(chimeric antigen receptor-effector cell)を活性化するためのスイッチ分子(switch molecule)及び(b)前記スイッチ分子に特異的に結合するポリペプチドまたは融合蛋白質を提供する。
【0157】
また、本発明は前記スイッチ分子または融合蛋白質を含むキメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor、CAR)を提供する。
【0158】
(i)本発明のスイッチ分子を用いる場合、CAR-T細胞の安全性を向上させるために深刻な毒性が表れる場合、標的化モイアティーが欠如されたスイッチ分子を投与することによって、CAR-T細胞の活性を調節することができ、(ii)抗原の突然変異が起こる場合、または多様な癌腫を治療するために既存のスイッチ分子の代わりに突然変異により発生した新たな抗原を標的化するスイッチ分子や、相異する腫瘍関連抗原(TAA)を標的化するスイッチ分子を患者に投与することによって、より効果的に癌を治療することができる。
[図面の簡単な説明]
【0159】
[
図1]互いに特異的に結合するアフィボディ(Zb)をHisまたはFcが結合された形態に生産後、SDS-PAGE分析を通じて予想サイズに生産されたことを示す図である。
[
図2a-
図2b]BLI試験法を用いてZb1とZb2が特異的に結合することを示す図である。
図2aはスイッチ分子をimmobilizationしたセンサーチップにZb1-Fc蛋白質の結合を確認したものであり、
図2bはZb2-Fc蛋白質の結合を確認した図である。
[
図3]HER2を標的するアフィボディ(zHER2)及びIgG抗体(igHER2)とZb1が結合された形態のスイッチ分子を生産し、SDS-PAGE分析を通じて分析した図である。
[
図4]HER2を標的するスイッチ分子にZb2-Fcが直接結合することをBLI試験法により分析した結果は示す図である。
[
図5a-5c]HER2を標的するスイッチ分子とZb2-Fc蛋白質を用いてHER2蛋白質及びHER2発現癌細胞を標的できることを示す図である。
図5aは、BLI試験法によりHER2蛋白質にスイッチ分子を通じてZb2-Fcが結合することを分析した図である。
図5bはHER2陽性細胞であるOE-19を、
図5cはHER2陰性細胞であるMDA-MB-231を用いてスイッチ分子とZb2-Fcを用いてHER2陽性細胞のみを選択的に標的できることを示す図である。
[
図6]CD19を標的する多様なスイッチ分子に対する模式図を示す図である。
[
図7a-
図7b]CD19を標的なswitch moleculeとアフィボディを用いてCD19発現癌細胞を選択的に標的できることを示す図である。
図7aはCD19陽性細胞であるRajiを、
図7bはCD19陰性細胞であるJurkatを用いてZb1またはZb2を含むスイッチ分子を各々Zb2-FcまたはZb1-Fcを用いて選択的に標的できることを示す図である。
[
図8a-
図8b]Zb2アフィボディを含むキメラ抗原受容体を発現するT細胞(Zb2.CART)とZb1を含むHER2標的スイッチ分子(zHER2-Zb1)を用いてHER2陽性細胞であるSK-OV3細胞に対するHER2特異的CAR-T細胞活性を示す図である。SK-OV3細胞とZb2.CART細胞を1:5の割合で表示されたスイッチ分子(zHER2-Zb1)と24時間の間共同培養して活性を測定した。
図8aは培養液のインターフェロンガンマをELISA試験法により測定した結果であり、
図8bは細胞生存率をluminescence試験法により測定して細胞毒性を確認した結果である。
[発明を実施するための形態]
【0160】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。これら実施例は専ら本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の要旨によって本発明の範囲がこれら実施例により制限されないということは当業界で通常の知識を有する者において自明である。
【0161】
<実施例>
本明細書の全体に亘って、特定物質の濃度を示すために使われる“%”は別途の言及のない場合、固体/固体は(重量/重量)%、固体/液体は(重量/体積)%、そして液体/液体は(体積/体積)%である。
【0162】
<実施例1.スイッチャブルCARの抗原結合部位とスイッチ分子との間の特異的結合の確認(アフィボディ間の特異的結合の確認)>
本発明の新規なスイッチャブルCARシステム(switchable chimeric antigen receptor system, sCAR system)は、従来のスイッチャブルCARシステムでCAR受容体の抗原結合部位と、前記CAR受容体の抗原結合部位と結合するスイッチ分子としてアフィボディ(Affibody;本明細書では“Z body”、“Zb”と略称する)を用いる。
【0163】
本発明者らは前記CAR受容体の抗原結合部位とCAR受容体の抗原結合部位と結合するスイッチ分子としてアフィボディ対(Affibody pair)が利用できるか否かを以下の実験により確認した。
【0164】
本発明者らは互いに特異的に結合する2種類のアフィボディ(Affibody:Zb1、Zb2)にヒスチジンでタギングした蛋白質(Zb1-His、Zb2-His)及びFc領域を発現させた蛋白質(Zb1-Fc、Zb2-Fc)を各々バクテリアル細胞と動物細胞を用いて製作し、これらの間の結合をBioLayer Interferometry(BLI)分析法により確認した。
【0165】
【0166】
具体的にZb1-His(序列目録第1序列、第2序列)及びZb2-His(第3序列、第4序列)遺伝子をpET21a(Novagen, Cat No. 69740-3)にNcoIとXhoI制限酵素を用いてクローニングした。クローニングされたベクターを BL21(DE3) Competent cell(Novagen, Cat No. 69450)に形質転換(transformation)させ、1 mM IPTG(LPS solution, Cat No. IPTG025)を用いて発現させた。培養された細胞の細胞質からZb-His蛋白質をNi-NTAレジン(Qiagen, Cat No. 30410)を用いて精製した。Zb1-Fc(第5序列、第6序列)及びZb2-Fc(第7序列、第8序列)遺伝子をpCEP4ベクター(Invitrogen, Cat. No. V044-50)にSfiI制限酵素を用いてクローニングした。次に、Freestyle 293F(Invitroen, Cat. No. R790-07)細胞にポリエチレンイミン(Polyscience Inc, Cat. No. 23966)を用いて前記クローニングされたベクターを一時形質転換(transient transfection)させ、細胞培養液からprotein-A ceramic HyperD Fレジン(PALL, Cat. No. 20078-028)を用いて精製した。精製された蛋白質をProtein assay dye(Bio-Rad, Cat. No. 500-0006)を用いて定量し、SDS-PAGE後、クマシブルー染色を通じてサイズ及び純度を確認した(
図1)。
図1に示すように、Zb-His及びZb-Fc蛋白質全て予想されるサイズである7.3kDa、32.5kDaで発現されることを確認した。また、Zb1とZb2との間の特異的結合をOctet QK
e(PallForteBio, Cat. No. 30-5046)機器を用いたBLI分析法を用いて確認した。AR2Gセンサーチップ(Fortebio, Cat. No. 18-5093)にZb1-His、Zb2-His、Zb1-Fc、Zb2-Fc蛋白質を10mg/mLの濃度でEDC/NHSを用いたアミンカップリング方法により固定させた。Zb蛋白質が固定されたセンサーチップにZb1-FcまたはZb2-Fc蛋白質を10mg/mLの濃度で15分間結合させた(
図2a及び
図2b)。
図2a及び
図2bに示すように、Zb1-Fc蛋白質はZb2-His及びZb2-Fc蛋白質に結合し、Zb2-Fc蛋白質はZb1-His及びZb1-Fc蛋白質に結合した。したがって、互いに特異的に結合するアフィボディ対(Affibody pair;例えば、前記Zb1及びZb2)は本発明のCAR受容体の抗原結合部位と、CAR受容体の抗原結合部位と結合するスイッチ分子として有用に使われることができる。
【0167】
<実施例2.アフィボディ(Affibody、Zb)を用いたHER2標的化スイッチ分子の製造>
本発明のスイッチャブルCARシステムは特定癌細胞を標的化するアフィボディ(Affibody、Zb)を含むスイッチ分子及び前記スイッチ分子と特異的に結合するアフィボディを含むCAR受容体を用いる。
【0168】
本発明者らはアフィボディ(e.g.Zb1)を含む3種のHER2-標的化スイッチ分子(HER2-targetingswitch molecule)を製造し、スイッチ分子とアフィボディ分子(CARの抗原結合部位)との間の結合及びスイッチ分子-アフィボディ複合体(スイッチ分子及びCAR)の標的化有無を確認した。
【0169】
(実施例2-1.HER2-標的化3種スイッチ分子の製造)
HER2を標的するアフィボディ(zHER2)、HER2を標的するトラスツズマブ(trastuzumab)のscFv(scHER2)、igG形態の抗体(igHER2)にZb1を結合したスイッチ分子であるzHER2-Zb1、scHER2-Zb1、igHER2-Zb1を各々クローニングし、生産した。
【0170】
【0171】
HER2を標的する部位とZb1は(G
4S)
3リンカーを用いて連結した。zHER2-Zb1とscHER2-Zb1は精製のためにC-末端にHis tagを含めた。zHER2-Zb1とscHER2-Zb1は前記実施例1の方法のように、バクテリアで発現後、Ni-NTAレジンを用いて精製した。igHER2-Zb1は動物細胞で発現後、protein-Aレジンを用いて精製した。精製された蛋白質をSDS-PAGEを用いて予想サイズ(Zb1-His 7.3kDa;zHER2-Zb1 14.4kDa;scHER2-Zb1 49.5kDa;igHER2-Zb1の重鎖57.5kDa)で生成されたことを確認した(
図3)。
【0172】
(実施例2-2.HER2標的化3種スイッチ分子とアフィボディ分子(スイッチャブルCARの抗原結合部位)の結合)
本発明者らは前記実施例2-1で製作したアフィボディを含む3種のスイッチ分子(zHER2-Zb1、scHER2-Zb1、igHER2-Zb1)と前記スイッチ分子のアフィボディ(Zb1)に特異的に結合するアフィボディ(e.g.Zb2)の結合有無を確認した。アフィボディ(Zb1)を含む3種のスイッチ分子(zHER2-Zb1、scHER2-Zb1、igHER2-Zb1)と、ペアを組んだアフィボディ分子(Zb2)が特異的に結合する場合、互いに特異的に結合するアフィボディ対(Affibody pair)を各々CARの抗原結合部位及びCARの抗原結合部位と結合するスイッチ分子として含むスイッチャブルCARシステムを製作することができる。
【0173】
アフィボディ(Zb1)を含むスイッチ分子に対するアフィボディ(Zb2)の結合能力はBLI分析法を用いて確認した。まず、実施例1のような方法によりAR2Gセンサーチップにスイッチ分子(zHER2-Zb1、scHER2-Zb1、igHER2-Zb1)を200nMの濃度でEDC/NHSを用いたアミンカップリング方法により固定させた。スイッチ分子蛋白質が固定されたセンサーチップにZb2-Fc蛋白質を200nMの濃度で15分間結合させた。Zb1-His蛋白質は陽性対照群で、ウシ血清アルブミン(bovine serum albumin、BSA)は陰性対照群に使用した。結果は
図4に示す。
【0174】
図4に示すように、Zb2-Fc蛋白質はZb1を含む3種のスイッチ分子全てに特異的に結合することを確認した。前記結果から互いに特異的に結合するアフィボディ対は、前記アフィボディ対を各々CARの抗原結合部位及びCARの抗原結合部位と結合するスイッチ分子として含むスイッチャブルCARシステムに有用に使用できることが分かる。
【0175】
(実施例2-3.HER2標的化3種スイッチ分子とアフィボディ複合体の標的化能力)
互いに特異的に結合するアフィボディ対をスイッチ分子とスイッチ分子を認識するCARに使用できるか否かを確認するために、本発明のアフィボディを含むスイッチ分子(e.g.zHER2-Zb1、scHER2-Zb1、及びigHER2-Zb1)と、前記スイッチ分子のアフィボディに特異的に結合するアフィボディを含む蛋白質(e.g.Zb2-Fc)が結合された複合体が特定蛋白質(e.g.HER2蛋白質)を標的できるかをBLI分析法を用いて確認した。AR2GセンサーチップにhHER2-ECD-His(human HER2 extracellular domain-His tag)蛋白質を10mg/mLの濃度で固定化(immobilization)し、スイッチ分子を1mMの濃度で15分間結合させ、追加で15分間HER2蛋白質とスイッチ分子との間の結合を安定化させた。安定化の以後、Zb2-Fc-Biotinを1mg/mLの濃度で処理して15分間結合させた(
図5a)。Zb2-Fc蛋白質のビオチニル化(biotinylation)は EZ-Link sulfo-NHS-LC-Biotin (Thermo Fisher Scientific, Cat. No. 21335)を用いて製作された。前記の結果から、本発明のアフィボディ対(Affibody pair、Zb pair)を各々スイッチ分子とCARの抗原結合部位に用いてHER2蛋白質を標的できることを確認した。
【0176】
また、HER2を標的するアフィボディを含む前記スイッチ分子(e.g.zHER2-Zb1、scHER2-Zb1、及びigHER2-Zb1)と前記アフィボディに特異的に結合するアフィボディを含む蛋白質(e.g.Zb2-Fc)が結合された複合体がHER2陽性癌細胞を選択的に標的できるかを流細胞分析法(flow cytometry)により確認した。HER2-陽性細胞にはOE-19(ECACC, Cat. No. 96071721)を使用し、HER2-陰性細胞にはMDA-MB-231(韓国細胞株銀行、Cat. No. 30026)を使用した。精製された1mMの3種スイッチ分子(zHER2-Zb1、scHER2-Zb1、及びigHER2-Zb1)を5x10
5個のOE-19とMDA-MB-231細胞に各々処理し、追加で1mg/mLのZb2-Fc-Biotinを結合させた。Zb2-Fc-Biotinに結合するAvidin-FITC(Thermo Fisher Scientific, Cat. No. 29994)を用いて染色した。細胞に対する結合有無は Cytomics FC 500(Beckman Coulter)を用いて測定した(
図5b及び
図5c)。
図5bと
図5cに示すように、本発明のアフィボディを含むスイッチ分子とこれに対応するアフィボディ(Zb)蛋白質を用いてHER2陽性癌細胞のみを特異的に標的できることを確認した。
【0177】
<実施例3.アフィボディを用いたCD19標的化スイッチ分子の製造>
B細胞由来癌腫のマーカーであるCD19を認知する抗体(抗原結合断片、scFv)と本発明のアフィボディを用いてCD19-陽性癌細胞を標的できるかを確認した。これと共に、スイッチ分子を開発するに当たって、癌マーカーを標的する部位とアフィボディを連結するリンカーの種類に従う結合特性及びアフィボディ種類に従う標的能力の差を確認した。大韓民国特許出願第10-2017-0178559号で既に発明されたCD19標的抗体をscFv形態に製作し、これを前述したアフィボディZb1(第1序列、第2序列)またはZb2(第3序列、第4序列)と(G
4S)
3リンカーまたは(S
4G)
3リンカーに連結されたスイッチ分子を製作したものであり、精製のためにHis tagをC-末端に連結した(
図6)。
【0178】
【0179】
前記スイッチ分子は実施例1のようにバクテリアで発現させ、Ni-NTAレジンを用いて精製した。CD19発現癌細胞標的化の有無を確認するために、CD19陽性癌細胞であるRaji細胞(ATCC、CCL-86)とCD19陰性細胞であるJurkat細胞(ATCC、TIB-152)を用いて製作されたスイッチ分子とアフィボディ蛋白質を結合させた後、流細胞分析法(flow cytometry)により確認した。CD19-陽性癌細胞であるRaji及びCD19-陰性細胞であるJurkat細胞に2mgのスイッチ分子[scCD19-(S
4G)
3-Zb1、scCD19-(G
4S)
3-Zb1、scCD19-(S
4G)
3-Zb2、及びscCD19-(G
4S)
3-Zb2]を結合させ、以後Zb1-FcまたはZb2-Fcを結合させ、anti-hIgG-FITC(Invitrogen, Cat. No. A11013)を用いて検出した(
図7a及び
図7b)。
図7a及び
図7bに示すように、CD19を標的化するscFv及び互いに異なるアフィボディ(Zb1またはZb2)を含むスイッチ分子はCD19-陽性Raji細胞は標的したが、CD19-陰性Jurkat細胞を標的しなかった。したがって、本発明のアフィボディを含むCD19-標的化スイッチ分子はCD19を特異的に標的できることを確認した。
【0180】
前記の結果から、(a)抗体、抗原結合断片、またはアフィボディなど、標的抗原に結合する標的化モイアティー(targeting moiety)及び(b)CARに結合するポリペプチドとしてアフィボディを含む本発明のスイッチ分子は、標的化モイアティー(targeting moiety)を多様に交替することによってさまざまな標的抗原に対して特異的に結合できることが分かる。また、本発明のスイッチ分子はCARに結合するポリペプチドとしてアフィボディの種類(e.g.Zb1、Zb2)及びリンカーの種類[(S4G)3、(G4S)3]に関わらず、全ての組み合わせが可能であることが分かる。
【0181】
<実施例4.アフィボディが連結されたキメラ抗原受容体を含むレンチウイルスの製作>
Zb1とZb2アフィボディ組み合わせを用いて開発されたキメラ抗原受容体T細胞とスイッチ分子を用いて製造されたCAR-T細胞のサイトカイン分泌活性及び目標細胞に対する細胞毒性を確認するためにZb2を含むキメラ抗原受容体を開発した。キメラ抗原受容体はCD8リーダ、Zb2、CD8ヒンジ及び膜貫通領域、CD137細胞質領域、及びCD3ゼータの細胞質領域から構成された。キメラ抗原受容体に対するコドン最適化した後、プロモーターがEF-1 alphaに変更されたpLenti6.3/V5-TOPOレンチウイルスベクター(Invitrogen, K5315-20)にSpeI/PacIに切断及び結着させた。製造されたコンストラクトは塩基序列分析を通じて確認した。
【0182】
【0183】
製造されたレンチウイルスコンストラクトをウイルス外皮蛋白質であるVSV-G(vesicular stomatitis indiana virus G protein)をコーディングする核酸とgag、pol及びrev遺伝子を含むプラスミドであるpCMV-dR8.91と共にLenti-X293T(Takara Bio Inc., 632180)細胞株に形質導入させた。形質導入はリポフェクタミン2000( Invitrogen, 11668019)を使用して製造社のプロトコルの通り遂行した。レンチウイルスが含まれた培養液をLenti-Xconcentrator(Takara Bio Inc., 631232)を使用して濃縮して-80℃に冷凍保管した。
【0184】
<実施例5.アフィボディを含むキメラ抗原受容体が表面に提示されたT細胞の製造及び活性確認>
実施例4で製造されたレンチウイルスを用いて、Zb2を含むキメラ抗原受容体が表面に提示されたT細胞を製造した。まず、ヒト血液からT細胞をDynabeadsTM Human T-Activator CD3/CD28(Thermofisher scientific, 11131D)を用いて分離及び刺激し、ポリブレン(Sigma-Aldrich, H9268)及び前記レンチウイルスを前記細胞に添加して24時間の間培養して形質導入させた。以後、IL-2(Gibco, CTP0021)が含まれた培地に交替して5% CO2、37℃の条件で培養した。製造されたZb2を含むキメラ抗原受容体が表面に提示されたT細胞(Zb2.CART cell)を用いてZb1を含むスイッチ分子を活用した癌細胞除去及びサイトカイン分泌活性を分析した。
【0185】
具体的に、HER2陽性細胞株であるSK-OV3を実験に使用した。まず、SK-OV3細胞株を底の丸い形態の96-ウェルプレートにウェル当たり3x104個になるように株分けした。SK-OV3細胞株が株分けされたプレートにウェル当たりSK-OV3:細胞毒性T細胞が1:5の割合になるように製造した細胞毒性T細胞を添加した。各々のウェルに処理しようとする濃度のzHER2-Zb1を入れて、5%のCO2及び37℃の条件で24時間の間培養した。培養後、培地に分泌されたインターフェロンガンマの量をHuman IFN-γ ELISA set(BD Bioscience, 555142)を使用して製造社のプロトコルの通り測定し、細胞毒性T細胞の毒性効果をluminescence試験法(CytoTox-Glo Cytotoxicity Assay, Promega, G9292)を通じて確認した。
【0186】
図8aに示すように、本発明の抗体断片を含む細胞毒性T細胞とSK-OV3が処理された実験群でzHER2-Zb1の処理量に従ってインターフェロンガンマの分泌が有意的に増加することを確認した。
【0187】
本発明のアフィボディであるZb2を含むキメラ抗原受容体の細胞毒性効果は、細胞毒性T細胞、SK-OV3、及びzHER2-Zb1を共同培養後、CytoTox-Glo Cytotoxicity Assayを用いて確認した。SK-OV3細胞のみ培養したウェルから出るシグナルを100%にしてlysis割合を決定した。本発明のZb2が含まれたキメラ抗原受容体T細胞はzHER2-Zb1が処理された実験群で細胞毒性効果が表れることを確認することができた(
図8b)。スイッチ分子(zHER2-Zb1)を処理しない場合にはサイトカイン分泌及び細胞毒性が表れなかったので、試験で示されたCAR-T細胞はZb1とZb2アフィボディの組み合わせによる癌細胞標的によりなされることを確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0188】
【
図1】互いに特異的に結合するアフィボディ(Zb)をHisまたはFcが結合された形態に生産後、SDS-PAGE分析を通じて予想サイズに生産されたことを示す図である。
【
図2a】BLI試験法を用いてZb1とZb2が特異的に結合することを示す図である。
図2aはスイッチ分子をimmobilizationしたセンサーチップにZb1-Fc蛋白質の結合を確認したものであり、
図2bはZb2-Fc蛋白質の結合を確認した図である。
【
図2b】BLI試験法を用いてZb1とZb2が特異的に結合することを示す図である。
図2aはスイッチ分子をimmobilizationしたセンサーチップにZb1-Fc蛋白質の結合を確認したものであり、
図2bはZb2-Fc蛋白質の結合を確認した図である。
【
図3】HER2を標的するアフィボディ(zHER2)及びIgG抗体(igHER2)とZb1が結合された形態のスイッチ分子を生産し、SDS-PAGE分析を通じて分析した図である。
【
図4】HER2を標的するスイッチ分子にZb2-Fcが直接結合することをBLI試験法により分析した結果は示す図である。
【
図5a】HER2を標的するスイッチ分子とZb2-Fc蛋白質を用いてHER2蛋白質及びHER2発現癌細胞を標的できることを示す図である。
図5aは、BLI試験法によりHER2蛋白質にスイッチ分子を通じてZb2-Fcが結合することを分析した図である。
図5bはHER2陽性細胞であるOE-19を、
図5cはHER2陰性細胞であるMDA-MB-231を用いてスイッチ分子とZb2-Fcを用いてHER2陽性細胞のみを選択的に標的できることを示す図である。
【
図5b】HER2を標的するスイッチ分子とZb2-Fc蛋白質を用いてHER2蛋白質及びHER2発現癌細胞を標的できることを示す図である。
図5aは、BLI試験法によりHER2蛋白質にスイッチ分子を通じてZb2-Fcが結合することを分析した図である。
図5bはHER2陽性細胞であるOE-19を、
図5cはHER2陰性細胞であるMDA-MB-231を用いてスイッチ分子とZb2-Fcを用いてHER2陽性細胞のみを選択的に標的できることを示す図である。
【
図5c】HER2を標的するスイッチ分子とZb2-Fc蛋白質を用いてHER2蛋白質及びHER2発現癌細胞を標的できることを示す図である。
図5aは、BLI試験法によりHER2蛋白質にスイッチ分子を通じてZb2-Fcが結合することを分析した図である。
図5bはHER2陽性細胞であるOE-19を、
図5cはHER2陰性細胞であるMDA-MB-231を用いてスイッチ分子とZb2-Fcを用いてHER2陽性細胞のみを選択的に標的できることを示す図である。
【
図6】CD19を標的する多様なスイッチ分子に対する模式図を示す図である。
【
図7a】CD19を標的なswitch moleculeとアフィボディを用いてCD19発現癌細胞を選択的に標的できることを示す図である。
図7aはCD19陽性細胞であるRajiを、
図7bはCD19陰性細胞であるJurkatを用いてZb1またはZb2を含むスイッチ分子を各々Zb2-FcまたはZb1-Fcを用いて選択的に標的できることを示す図である。
【
図7b】CD19を標的なswitch moleculeとアフィボディを用いてCD19発現癌細胞を選択的に標的できることを示す図である。
図7aはCD19陽性細胞であるRajiを、
図7bはCD19陰性細胞であるJurkatを用いてZb1またはZb2を含むスイッチ分子を各々Zb2-FcまたはZb1-Fcを用いて選択的に標的できることを示す図である。
【
図8a】Zb2アフィボディを含むキメラ抗原受容体を発現するT細胞(Zb2.CART)とZb1を含むHER2標的スイッチ分子(zHER2-Zb1)を用いてHER2陽性細胞であるSK-OV3細胞に対するHER2特異的CAR-T細胞活性を示す図である。SK-OV3細胞とZb2.CART細胞を1:5の割合で表示されたスイッチ分子(zHER2-Zb1)と24時間の間共同培養して活性を測定した。
図8aは培養液のインターフェロンガンマをELISA試験法により測定した結果であり、
図8bは細胞生存率をluminescence試験法により測定して細胞毒性を確認した結果である。
【
図8b】Zb2アフィボディを含むキメラ抗原受容体を発現するT細胞(Zb2.CART)とZb1を含むHER2標的スイッチ分子(zHER2-Zb1)を用いてHER2陽性細胞であるSK-OV3細胞に対するHER2特異的CAR-T細胞活性を示す図である。SK-OV3細胞とZb2.CART細胞を1:5の割合で表示されたスイッチ分子(zHER2-Zb1)と24時間の間共同培養して活性を測定した。
図8aは培養液のインターフェロンガンマをELISA試験法により測定した結果であり、
図8bは細胞生存率をluminescence試験法により測定して細胞毒性を確認した結果である。
【配列表】