(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】(超高速)レーザクラッディングのためのデバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
B25J 11/00 20060101AFI20240729BHJP
B23K 26/342 20140101ALI20240729BHJP
B23K 26/08 20140101ALI20240729BHJP
【FI】
B25J11/00 D
B23K26/342
B23K26/08 D
(21)【出願番号】P 2020570895
(86)(22)【出願日】2019-06-19
(86)【国際出願番号】 EP2019066193
(87)【国際公開番号】W WO2019243418
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】102018114883.6
(32)【優先日】2018-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】520494334
【氏名又は名称】ポンティコン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】シュルテ,オリバー
【審査官】神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-060062(JP,A)
【文献】特開2016-165778(JP,A)
【文献】特開2009-269099(JP,A)
【文献】特開平06-126664(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0050278(US,A1)
【文献】特表2017-505237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超高速レーザクラッディングのためのデバイスであって、
少なくとも3本の駆動コラム(2)と、
前記駆動コラム(2.1、2.2、2.3)の間で中央に位置付けられた、製造されることになる製品のためのワークピース支持部(1)であって、
複数の引張圧縮ストラット(15)、及び前記引張圧縮ストラット(15)の両端部で固定された回転継手(3、4)を介して、3つの空間的方向(x,y,z)に可動で前記駆動コラム(2.1、2.2、2.3)に連結され、
各前記駆動コラム(2.1、2.2、2.3)は、前記ワークピース支持部(1)に面し、前記ワークピース支持部(1)を3つの空間的方向(x,y,z)に動かすために進む内側キャリッジ(6)を伴う、少なくとも1つの内側誘導レール(5)、ならびに、カウンタウェイト(9)を前記内側キャリッジ(6)とは反対方向に垂直方向に誘導するために進む外側キャリッジ(11)を伴う、外側誘導レール(8)を有する、
ワークピース支持部(1)と、
粉末供給ノズルを伴う溶接ヘッド(22)であって、前記粉末供給ノズルを備えた前記溶接ヘッド(22)は、前記駆動コラム(2)の間の支持板(20)によって保持される、粉末供給ノズルを伴う溶接ヘッド(22)と、
を備え、前記カウンタウェイト(9)は、200m/minより速い速度及び50m/s
2以上の加速度で質量補正を提供する、デバイス。
【請求項2】
前記ワークピース支持部(1)は、同じ長さの2本の平行の前記引張圧縮ストラット(15)を介して、6つのポイントで懸架され、2本の前記引張圧縮ストラット(15)が、前記駆動コラム(2)の1つの前記内側キャリッジ(6)に接続されることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記内側キャリッジ(6)及び前記外側キャリッジ(11)の誘導は、前記駆動コラム(2)に設けられた、駆動ベルト(12)のアイドラ(13、14)を介して行われることを特徴とする、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記駆動コラム(2)の
前記内側キャリッジ(6)及び前記外側キャリッジ(11)は、駆動ベルト(12)のための駆動ベルト締付部(7、10)を備えることを特徴とする、請求項1~3のうちいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記駆動コラム(2.1、2.2、2.3)の各個々の前記引張圧縮ストラット(15.1、15.2)を、それ自体独立して垂直方向に可動のキャリッジ(6.1、6.2)を用いて、それ自体の内側誘導レール(5.1、5.2)内で個々に垂直方向に動かすことができることを特徴とする、請求項1~4のうちいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記溶接ヘッド(22)のための前記支持板(20)の、頂板(16)からの懸架は、上方から固定具(30)を把持する上部連結ソケット(24)、及び下方から把持する連結ピン(25)を介して行われることを特徴とする、請求項1~5のうちいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
揺動板(21)は、懸架装置(27)を介して前記支持板(20)に接続されることを特徴とする、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記駆動コラム(2)において垂直方向に動かすことができる、前記引張圧縮ストラット(15)の、前記ワークピース支持部(1
)への連結が、側部から、上側において、または下側においてのいずれかでもたらされることを特徴とする、請求項1~7のうちいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
枢動デバイス(31)及び回転継手(33)は、製造されることになる製品
のために提供され、独立した軸システムの同期した反回転運動を、レーザヘッドを誘導しない軸システムの高速移動において可能にし、前記枢動デバイス(31)は、前記ワークピース支持部(1)の下方に配置され、製品を傾け、または回転させるのを可能にすることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記溶接ヘッドは、レーザ溶接ヘッドまたははんだ付けヘッドであることを特徴とする、請求項1~9のうちいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
追加の、軸方向に可動のミリングヘッドが、ワークピースの後続の処理のために提供されることを特徴とする、請求項1~10のうちいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記支持板(20)は、動かないよう設計され、前記ワークピース支持部(1)は、3つの空間方向(x、y、z)で軸方向に可動であることを特徴とする、請求項1~11のうちいずれか一項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザクラッディングの分野であり、レーザクラッディング、詳細には超高速レーザクラッディング(独語の頭字語:EHLA)を実行するためのデバイス及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来処理におけるレーザクラッディング(例えばLMD:Laser Metal Deposition)は、構成要素の表面処理、補修、及び付加的な製造のために使用される。この処理において、例えば金属粉末などの粉末充填材が、粉末供給ノズルによって、基材とレーザビームとの相互作用ゾーンの中に導入され、そこで金属粉末はレーザによって溶解されて、複合物を形成する。
【0003】
レーザクラッディングの変形である、超高速レーザクラッディング(EHLA)において、粉末充填材が、レーザビームによって生成された溶融プールに入る前に、粉末充填材はレーザビームによって溶解される。これは、500m/min以上までの非常に速い横行速度を実現させ、かつ層当たり10~250μmの範囲の厚さの層が生成される。例えば独国特許出願公開第102011100456号明細書の一部は、このような方法である。上記の方法において、完全に溶解された形態の少なくとも1つの添加材が、処理されることになる表面に存在する溶湯に加えられる。このため、当初から粉末形態で存在する充填材は、溶融プールからゼロよりも大きい距離においてレーザビームによって溶解され、次に液体形態で溶融プールに加えられる。その際に、溶湯が表面を横断して動くよう、ワークピースの表面を、レーザビーム及び粉末ガスジェットに対して動かすことができる。この処理は、50m/minより速い、ワークピースの非常に高速の移動を可能にする。三次元構造を、個々の層を重ねることによって付加的に盛り立てることができる。このような構造は、現存の構成要素上、または対象物全体を生成する場合に、基礎として役立つワークピースのキャリア板上のいずれかに、構築することができる。
【0004】
このような高速処理を実現するために、処理技術ならびにこのために使用されるデバイスの運動学に関する、高い基準が必要とされる。例えば、粉末ノズルへの粉末の供給は、レーザビームの中への粉末の導入が最適になるよう、かつ粉末効率が最大となるように設計しなければならない。このような解決策は、例えば独国特許出願公開第102014220183号明細書に記載されており、高い粉末効率を実現するための、いくつかの個々のレーザビームを生成できるレーザビーム装置を説明している。しかし、個々のレーザビーム源を、粉末を集束させる方法で当てるために調整しなければならず、それは非常に高価であるという欠点がある。レーザクラッディングのためのノズルは、例えば欧州特許出願公開第2774714号明細書に記載されており、それは、粉末を確実にレーザビームの中へ規定通り供給する。
【0005】
溶接ヘッド及び/またはワークピースの非常に速い移動も、不可欠である。機械工具において、材料を機械加工するための製品キャリアが使用されることが多く、これらは三脚または六脚と呼ばれる。このようなデバイスは、例えば独国特許出願公開第19640769号明細書、米国特許第5401128号明細書、または独国特許発明第19903613号明細書の一部にある。六脚の解決策も、米国特許第6196081号明細書、及び独国発明第102010025275号明細書の一部にある。しかし、これらのデバイスは条件付きでしかないか、または超高速レーザクラッディング(EHLA)の使用には全く適さない。なぜならこれらは、高加速度または高減速度における精確性のために設計されていないからである。
【0006】
米国特許出願公開第2017/0282297号明細書は、ノズルをx、y、及びz座標に沿って動かし、三脚及びノズルユニットの懸架装置から成るデバイスを説明している。5つのアクチュエータが、移動のために必要とされる。しかし、ワークピース自体は移動されず、固定されたままである。
【0007】
独国特許出願公開第3319665号明細書は、カウンタウェイトを用いた、噴射要素の直線的な移動のためのデバイスを説明している。これはバネが予め張力がかけられた撓みローラを必要とするが、それは高い動力を妨げる。しかし、規定された反転ポイントにおけるエネルギー貯蔵のためのバネの使用、及びそこに配置された制限スイッチは、予め設定された一定の作動ストロークを低速度で可能にするのみである。このようなデバイスは、EHLA方法には好適とならない。
【0008】
同じ物が、中国特許出願公開第105499796号明細書に記載されているデバイスに適用されている。このデバイスでは、製品キャリア板が固定されながら、作動ヘッドも誘導される。垂直加速力も補正されない。同じ物が、中国特許出願公開第105773984号明細書における変形である、3D印刷のための三脚デバイスに適用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】独国特許出願公開第102011100456号明細書
【文献】独国特許出願公開第102014220183号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2774714号明細書
【文献】独国特許出願公開第19640769号明細書
【文献】米国特許第5401128号明細書
【文献】独国特許発明第19903613号明細書
【文献】米国特許第6196081号明細書
【文献】独国特許出願公開第102010025275号明細書
【文献】米国特許出願公開第2017/0282297号明細書
【文献】独国特許出願公開第3319665号明細書
【文献】中国特許出願公開第105499796号明細書
【文献】中国特許出願公開第105773984号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、レーザクラッディング、特に超高速レーザクラッディングのためのデバイス及び方法を提供することである。それを用いて、500m/minまでの高い横行速度が、高い経路精度及び信頼性を伴って可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、以下の特許請求の範囲で請求するように、本発明によるデバイス及び方法によって解決される。好ましい実施形態は、従属請求項において示される。
【0012】
本発明によるデバイスは、EHLA方法を使用する場合には通常0.01~0.25mmの層厚、及び他の蒸着溶接ヘッドを使用する場合にはより厚い層厚のために、溶接ヘッドとワークピース支持部との間で50m/minよりも速い相対速度を可能にする。動力、盛り立てることになる外形タイプ、及び処理パラメータに依拠して、0.01mmよりも良好な経路精度が実現される。デバイスは、例えば溶接ヘッドの加速度を最大許容加速度未満に設定できるよう、設計しなければならない。このような機構は、本発明の設計によって、詳細にはワークピース支持部、及びデバイスにおける溶接ヘッドのためのそれぞれの支持部における、新規の懸架装置によって実現することができる。
【0013】
このため、本発明によるデバイスは、少なくとも3本の駆動コラムを備える。これらは実施形態に依拠して、製造または処理されることになる製品を受け入れるための、駆動コラム間の中央に配置されたワークピース支持部、及び/または溶接ヘッドのための支持板を伴う。このワークピース支持部は、製造または処理されることになる製品を受け入れるための、受入領域を有する。いくつかの引張圧縮ストラットは、二等辺の配置で、ワークピース支持部及び/または支持板に配置され、少なくとも1つの引張圧縮ストラットが、駆動コラムごとに設けられ、好ましくは懸架ポイントごとに一対の引張圧縮ストラットが設けられる。ワークピース支持部及び/または支持板は、それらが3つの空間的方向(x,y,z)に動けるように、引張圧縮ストラットを介して接続される。このため、回転継手が引張圧縮ストラットの両端部に設けられ、これら回転継手は、ストラットを、一方の端部でワークピース支持部または支持板と、かつ他方の端部で駆動コラムと連結する。各駆動コラムは、ワークピース支持部及び/または支持板に面した、少なくとも1つの内側誘導レールを備え、内側誘導レールの中に誘導された内側キャリッジを伴い、好ましくはワークピース支持部及び/または支持板の経路移動である、3つの空間的方向(x,y,z)の移動を実行する。このため内側キャリッジは、内側誘導レールに沿って、好ましくは垂直方向に上下に誘導される。さらにこのデバイスは、例えば充填材を溶湯の中に導入するための粉末供給ノズルを伴うレーザヘッドである、溶接ヘッドも含む。粉末供給ノズルの代わりに、ワイヤ供給ノズルを使用することも可能である。
【0014】
ここで使用される用語「上部」は、正面から見た場合に、それぞれの構成要素またはデバイス全体のヘッド側を指し、用語「下部」は足側を指す。用語「内側」及び「外側」は、製造されることになる製品に対する、構成要素の位置を示す。したがって、内側誘導レールは製品に面する一方で、外側誘導レールは、製品から外側を向く駆動コラムの側に形成される。内側誘導レール及び外側誘導レールは、好ましくは駆動コラムにおいて互いに反対側に取り付けられる。
【0015】
用語「ワークピース支持部」は、製造または処理されることになる製品を保持する構成要素を指す。用語「支持板」は、溶接ヘッド、すなわち好ましくはレーザヘッドを保持する構成要素を指す。
【0016】
本発明によると、外側キャリッジは、カウンタウェイトを内側キャリッジの反対側に垂直に誘導するために、外側誘導レールで誘導される。このカウンタウェイトは、例えばEHLA方法において、200m/minより速く、好ましくは500m/min以上の速度、及び50m/s2以上の加速度で生じる、質量補正を提供する。これは、これらの速い横行速度において、移動する質量によって高い振動が生成されるためである。これらの振動は、レーザ適用中に、デバイスの環境に影響を与え、望ましくない攪乱をもたらす場合がある。水平方向の質量移動は、カウンタウェイト及び個々の駆動コラムの相互作用によって、少なくとも部分的に吸収される場合がある。したがって、本発明による解決策は、駆動システムの分離をもたらし、垂直の質量移動のほとんど完全な補正を可能にする。
【0017】
溶接ヘッドは、好ましくはワークピース支持部に対して水平に、好ましくはワークピース支持部の上方に配置される。レーザ溶接ヘッド、またははんだ付けヘッドが好ましい。
【0018】
デバイスの1つの変形において、3つの駆動コラムが設けられ、それらにおける引張圧縮ストラットは、上方から回転継手を介してワークピース支持部及び/または支持板のヘッド側、ならびに駆動コラムに接続される。軸の端部ポイント、したがって懸架装置は、好ましくはワークピース支持部または支持板上で二等辺三角形に従って配置される。それによって懸架装置は、ワークピース支持部または支持板を傾けることなく保持し、ワークピース支持部または支持板を、水平面(x,y)及び垂直方向(z)、または3つの空間的方向の組み合わせで、移動させることができる。好ましくは、この変形は三脚である。
【0019】
キャリッジは、好ましくは高い動力のリニア直結駆動によって駆動される。独国実用新案第20306233(U1)号明細書は、粉末噴射ガンの直線誘導の、このような原則を説明している。この駆動の変形は、非常に高い加速度を可能にし、ほぼ全てのストロークにおいて5m/sを超える速度を実現する。当然ながら、他の駆動概念も、ワークピース支持部及び/または支持板の経路移動の実施を可能にする。ワークピース支持部または支持板の経路移動は、好ましくはx、y、zの空間軸に沿った移動であり、好ましくは3つの軸の同期移動として実施される。
【0020】
好ましくは、効果的なエネルギーチェーンの誘導を確実にするため、かつワークピース支持部または溶接ヘッドのための支持板における制御されない振動を避けるために、引張圧縮ストラットの長さは調整できないように提供される。
【0021】
ワークピース支持部及び/または支持板は、好ましくは6つのポイントで懸架される。これは、一対の引張圧縮ストラットが各懸架ポイントに設けられることを意味し、それが次に駆動コラムのキャリッジに接続される。好ましくは、ワークピース支持部及び/または支持板は、各ケースで同じ長さである2本の平行の引張圧縮ストラットを介して、6つのポイントで懸架され、それによって各ケースの2本の引張圧縮ストラットが、各ケースで駆動コラムの1つのキャリッジに接続される。これは、ワークピース支持部または支持板が、水平位置から回転して外れるのを防止する。
【0022】
別の発展した実施形態において、6軸の外形が提供され、そこでは各個々の引張圧縮ストラットが、それ自体の内側キャリッジ(六脚)に接続される。したがって、各駆動コラムはキャリッジを備える。このキャリッジは、キャリッジの垂直誘導、及びワークピース支持部または支持板の傾きのために、対応する誘導レールを伴う引張圧縮ストラットに接続される。これは、ワークピース支持部または支持板が、好ましくは80°までの角度で傾くのを可能にする。
【0023】
好ましくは、キャリッジの垂直誘導、すなわち製品に面した内側キャリッジ及び駆動コラムの背部で作動する外側キャリッジの垂直誘導は、各駆動コラムのヘッド側または足側に取り付けられたアイドラを介して実行される。キャリッジの垂直誘導は、駆動ベルト、好ましくは歯が付いたベルトによってもたらされる。好ましくは、駆動ベルト締付部が、駆動ベルトに設けられる。この実施形態において、好ましくは、駆動コラムの誘導レール内で独立して垂直方向に可動であるそれ自体のキャリッジを伴う、各個々の引張圧縮ストラットは、垂直方向に個々に可動である。
【0024】
溶接ヘッドは、好ましくは支持板によって保持される。この支持板は、ワークピース支持部に対して水平に、好ましくはワークピース支持部の上方または下方に配置される。高度な実施形態において、揺動板が、支持板とワークピース支持部との間に懸架され、溶接ヘッドがその軸でオフセットされるのを可能にする。これは、異なる構成要素の生成、及び個々の製品の仕様に対するデバイスの高い適応性を可能にする。この低慣性の揺動デバイスの助けを伴い、特にレーザヘッドの相対的または絶対的な経路移動の不正確さを修正することができる。これらの不正確さは、制御要素と駆動要素との間の慣性によって生じる。加えて揺動板は、小型の溶接構造の輪郭に合わせるか、または生成するときに、例えば急曲線の半径などの小さい部分的な移動を可能にする。これによって、主な移動装置を援助し、システム全体の速度を増加させることができる。
【0025】
基本的なバージョンにおいて、溶接ヘッド(すなわちレーザヘッド)は、ワークピース支持部の上方で懸架装置に固定される。しかし、製造されることになる、より大きい構造物の構築のため、ワークピース支持部の重心が大幅にずれる場合があり、それは、ワークピース支持部の速度及び/または加速度を低減させることを必要とする。これを避けるため、溶接ヘッドの連結システムが、ワークピース支持部に設けられる。これは、好ましくは自動化される。これは、好ましくは3つのポイントの連結であり、これによって溶接ヘッドを、ワークピース支持部から接収させることができる。
【0026】
さらに、揺動板は、外形または曲線の生成を可能にする。外形または曲線は通常、主軸を介した3つの空間的方向(x,y,z)に小さいセグメントを生成することによって作り出される。しかし、曲線を非常に小さい曲線のセグメントに分割することは、常に新しい横行加速度を伴う一定の軌道修正を意味する。機械的慣性により、主軸は、新しい移動設定が制御器によって伝達される前に、所与の設定を完了することはできない。したがって高速処理において、半径は、経路速度が増すにつれて、曲線の内側に向かってずらされることになる。そのとき円形経路は、より小さい径を有する。これは、過剰切削及び経路の逸脱をもたらす。
【0027】
このバージョンにおいて、本発明による揺動板は、概ね1~5°、好ましくは1~3°の溶接ヘッドの軸方向オフセットを可能にすることによって、過剰切削の補正を可能にする。
【0028】
好ましくは、支持板は、対応する固定具を用い、上方から把持する上部連結ソケット、及び下方から把持する下部連結ソケットによって、頂板から懸架される。好ましくは、揺動板は、必要な軸のオフセットを実現するために、懸架装置を介して支持板に接続される。
【0029】
別の実施形態において、溶接ヘッドのための支持板はワークピース支持部の上方に配置され、その各々は、それ自体の引張圧縮ストラットによって懸架されるよう提供される。各板は、それ自体のキャリッジを有し、駆動コラムの共通誘導部において垂直方向に動かすことができる。この変形において、ワークピース支持部及び溶接ヘッドの両方を、支持板を介して調整することができる。なぜなら、回転継手を端部に装着された引張圧縮ストラットが、支持板またはワークピース支持部を3つの空間的方向(x,y,z)に動かすことを可能にするからである。基本的に、引張圧縮ストラットは、ワークピース支持部または支持板に、それらの側部、それらの頂部、またはそれらの底部において連結させることができる。好ましい実施形態において、製品のためのワークピース支持部への引張圧縮ストラットの連結は、側部から実施し、その一方で溶接ヘッドのための支持板への引張圧縮ストラットの連結は、上方から実施するよう提供される。製品のタイプに依拠して、他の実施形態も考えられる。
【0030】
1つの変形において、支持板及びワークピース支持部の両方を、3つの空間的方向x、y、zにおいて個々に動かすことができる。別の好ましい実施形態において、支持板は動かないように設計し、ワークピース支持部を3つの空間的方向x、y、zにおいて軸方向に動かすことができる。
【0031】
好ましくは、別の実施形態において、枢動及び回転デバイスが、製造されることになる製品のために提供され、独立した軸システムの同期した反回転運動を、レーザヘッドを誘導しない軸システムの高速移動において可能にする。枢動デバイスは、ワークピース支持部の下方に配置され、製品を傾け、及び/または回転させるのを可能にする。
【0032】
本発明はさらに、レーザクラッディングの方法に関する。ここで製造されることになる製品のワークピース支持部は、少なくとも3つの駆動コラムを介して3つの空間的方向(x,y,z)に、ワークピース支持部に対して平行に配置された溶接ヘッドに沿って動かされる。上記の駆動コラムの各々は、関連する引張圧縮ストラットを介したワークピース支持部の経路移動(すなわち3つの軸の同期移動)と、対応するカウンタウェイトによる質量補正とを可能にする。この方法において、粉末充填材は、粉末ノズルを通して、構成要素の表面にレーザビームによって生成された溶湯の中に送り込まれ、融解される。これは、構成要素上に薄い層を作り出す。EHLA方法において、粉末充填材はレーザビームの中に送り込まれ、粉末が溶湯に到達する前に、そこで融解される。可能な限り密度が高く、かつ均質な粉末ガスジェットを、高い程度の粉末利用で生成することが、目的である。その結果、例えば自動車または航空産業の部品のために、薄い層を、高い処理速度において高い精度で構成要素に適用することができる。本発明によるデバイスの基本的なバージョンにおいて、3つのアクチュエータで十分である。
【0033】
本発明による方法は、製造されることになる製品またはワークピースを製造するために使用される。
【0034】
種々のノズルが、本発明による方法で使用することができる。例として、様々な粉末コーンノズル、ハイブリッド処理ノズル、またはマルチジェットノズルがある。
【0035】
本発明による方法において、粉末供給ノズルまたはワイヤ供給ノズルなど、好ましい溶接ノズルが使用される。
【0036】
レーザ切断ヘッドを用いて切断した後、ワークピースを後段階においてミリングヘッドを用いて処理することも可能である。したがって好ましい実施形態において、本発明によるデバイス及び方法は、軸に沿って動かすことができるミリングヘッドを含む。このミリングヘッドは、溶接ヘッドと連続して接続することもできる。
【0037】
別の好ましい実施形態において、ワークピースの後続の任意選択のコーティングも、レーザ処理及び/またはミリングの後に提供される。
【0038】
別の実施形態において、揺動操作が使用され、ワークピースの曲線及び空洞をデザインする。すなわち、材料は連続的ではないが、ワークピースの構造に従った時間遅延を伴って適用される。好ましくは、溶接ヘッドは、水平方向、垂直方向、または斜め方向に誘導され、例えば湾曲した構造またはウェブ形状の構造を形成する。このように、高度に構成された、自動もしくは手動変速機のハウジング、ロケットモータのノズル、複雑な固定具もしくは軸システム、または塊状体の充填構造を生成することができる。
【0039】
本発明による方法は、結晶性固体、非晶体、またはそれらの混合物などの、非晶質材料複合物も使用し得る。非晶質材料は、一般的に結晶性固体と同じ材料で構成される。しかしそれらは、冷却中の格子整合において異なる。非晶体は、材料が急速に冷却されて原子がそれ自体で整合できないときに、形成される。したがって、型取りのために青銅コーティングしたスチール工具、航空機のためのアルミニウム/ステンレススチールコーティング、またはガラス産業における表面処理工具としてのチタンスチール構造など、サンドイッチ状の材料を生成することが可能である。追加として、ブレーキディスクまたはダイヤモンド状炭素工具のコーティングのための、灰鋳鉄上の炭化タングステンマトリクスなどの、混合材料複合物を実現することができる。
【0040】
本発明を、以下の図でさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】三脚形態のデバイスの、第1の実施形態を示す図である。
【
図2】六脚形態のデバイスの、別の実施形態を示す図である。
【
図3】揺動板を伴う、より高度なバージョンを示す図である。
【
図4】溶接ヘッドの懸架装置を含む、揺動板の詳細を表わす図である。
【
図5】可動ワークピース支持部及び可動支持板の、組み合わされた軸システムを示す図である。
【
図6】可動ワークピース支持部及び可動支持板の、代替の軸システムを示す図である。
【
図7】追加の回転及び枢動デバイスを伴う、組み合わされた解決策を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、製造または処理されることになる製品のためのワークピース支持部1、及びレーザクラッディング方法を使用して製品を処理または製造するための中央製品受入部28を伴う、EHLAデバイスの第1の実施形態を示す。ワークピース支持部1は、引張圧縮ストラット15を介して6つの異なるポイントで懸架される。各引張圧縮ストラット15は、ワークピース支持部1に接続された下部回転継手3、及びキャリッジ6に連結された上部回転継手4に接続される。ワークピース支持部1は、3つの駆動コラム(2.1、2.2、2.3)の間で中央に配置され、キャリッジ6を介して空間的方向x、y、及び/またはzのうちの1つもしくは複数に沿って動かすことができる。キャリッジ6は、内側誘導レール5に沿って垂直方向に動かされる。内側誘導レール5は、ワークピース支持部1(または別の実施形態では支持板20)の経路移動を容易にするために、ワークピース支持部1に面する。
【0043】
キャリッジ6は、駆動ベルト締付部7に接続され、次に駆動ベルト締付部7は、回転継手4を介して引張圧縮ストラット15を連結する。内側キャリッジ6の垂直移動は、駆動ベルト12、好ましくは歯が付いたベルトによってもたらされる。各駆動コラム2の背部(すなわち内側誘導レール5の反対側)において、外側キャリッジ11が誘導される外側誘導レール8が存在する。加えて、カウンタウェイト9が、質量補正のために設けられる。外側キャリッジ11も、駆動ベルト締付部10を有する。駆動ベルト12を誘導するために、2つのアイドラ13、14が、各駆動コラムの頂部及び底部に設けられる。引張圧縮ストラット15は、ワークピース支持部1を上方から保持する。
【0044】
図2において、より高度な実施形態が提供され、ここで駆動コラム2.1、2.2などの各個々の引張圧縮ストラット15.1、15.2などは、それ自体の誘導レール5.1、5.2などを、キャリッジ6.1、6.2などを介して進む。この変形において、各個々の引張圧縮ストラット15.1、15.2などを個々に動かすことができる。各軸は、それ自体のカウンタウェイト9.1、9.2などを有し、カウンタウェイト9.1、9.2などは、それら自体のキャリッジ11.1、11.2などによって、内側キャリッジ6.1、6.2などの反対方向に、垂直方向に誘導される。ここで再び、ワークピース支持部1は、引張圧縮ストラット15を介して上方から懸架される。
【0045】
図3において、3つの駆動コラム2.1、2.2、2.3は、基板17及び頂板16によって保持される。溶接ヘッド22のための支持板20は、頂板16に接続された固定具30によって保持される。さらに、溶接ヘッド22の軸方向オフセットを可能にするために、揺動板21が設けられる。
【0046】
図4において、揺動板/構造物の構造がより詳細に示される。溶接ヘッド22の支持板20は、上部連結ソケット24、上部連結ピン25、及び下部連結ソケット26によって、固定具30に保持される。製造されることになる製品のためのワークピース支持部1も、下部連結ピン23を含む。下部連結ピン23は、ワークピース支持部1の表面で2本の引張圧縮ストラット15の間に配置される。揺動板21は、懸架装置27を介して支持板20に接続される。これは、1~3°の軸方向オフセットを可能にする。
【0047】
図5は、溶接ヘッド22を伴う支持板20と、製造または処理されることになる製品のためのワークピース支持部1とを備える、別の実施形態を示す。この変形において、引張圧縮ストラット15は上方から、上記のワークピース支持部1及び支持板20に、6つの画定された懸架ポイントで接続される。本発明によると、次に上部支持板20を、それ自体のキャリッジ6.2によって3つの空間的方向に動かすことができる。それによって、ワークピース支持部1のキャリッジ6.1及び支持板20のキャリッジ6.2は、駆動コラム2.1、2.2、及び2.3それぞれの同じ誘導レール5で進む。
【0048】
図6は、
図5で示された実施形態の変更を示す。ここでは、引張圧縮ストラット15は、下方からワークピース支持部1に連結される。ここで再び、ワークピース支持部1及び支持板20のための、個々の引張圧縮ストラット15.1、15.2などを、個々に3つの空間的方向に動かすことができる。
【0049】
図7は、追加の回転及び枢動デバイスを伴う実施形態を示す。これは、生成または処理されることになる製品のための製品受入領域32を、傾斜及び回転させるための、枢動デバイス31及び回転継手33を備える。
【0050】
本発明によるデバイス及び方法を用いて、200m/minより速い速度、しかし好ましくは1000m/minまで、及び100m/s2までの加速度が、EHLA適用処理を実施するために実現できる。そうすることによって、高い精度が、薄いコーティング厚さで実現される。
【符号の説明】
【0051】
1 ワークピース支持部
2 駆動コラム
3 下部回転継手(製品板)
4 上部回転継手(駆動コラム)
5 内側誘導レール
6 内側キャリッジ
7 駆動ベルト締付部
8 外側誘導レール
9 カウンタウェイト
10 駆動ベルト締付部
11 外側キャリッジ
12 駆動ベルト
13 駆動ベルトの上部アイドラ
14 駆動ベルトの下部アイドラ
15 引張圧縮ストラット
16 頂板
17 基板
18 駆動コラムの上部マウント
19 駆動コラムの下部マウント
20 支持板
21 揺動板
22 溶接ヘッド
23 下部連結ピン
24 上部連結ソケット
25 上部連結ピン
26 下部連結ソケット
27 懸架装置
28 製品受入部
29 溶接ヘッドの開口部
30 固定具
31 枢動デバイス
32 製品受入領域
33 回転継手