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特許7527645可搬浴槽用構造体、及びこれを備えた可搬浴槽
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】可搬浴槽用構造体、及びこれを備えた可搬浴槽
(51)【国際特許分類】
   A61H 33/00 20060101AFI20240729BHJP
【FI】
A61H33/00 310E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021019600
(22)【出願日】2021-02-10
(65)【公開番号】P2022122402
(43)【公開日】2022-08-23
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】505433828
【氏名又は名称】株式会社国誉アルミ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智司
(74)【代理人】
【識別番号】100184631
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 隆
(72)【発明者】
【氏名】辻 雅博
(72)【発明者】
【氏名】三木 武
【審査官】永冨 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-322868(JP,A)
【文献】特開2016-171859(JP,A)
【文献】特開2003-126208(JP,A)
【文献】米国特許第4146938(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 33/00
A47K 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可搬浴槽を形成するための構造体であって、
相互に対向する2つの長辺部及び2つの短辺部を有し、輪郭形状がほぼ長形をした環状の上部構造体と、
前記上部構造体の2つの長辺部に対してそれぞれ係脱可能に設けられ、前記各長辺部に係合して前記上部構造体を支持する下部構造体とを備え、
前記上部構造体は、その前記各長辺部に、軸を介して連結される2つの軸連結部が長手方向に所定間隔を空けてそれぞれ形成されるとともに、該軸連結部を中心として、長手方向両側の平面視U字状をした部位がそれぞれ内側に折り返し可能に形成され、
前記下部構造体は、それぞれ正面視U字状をした2つの脚枠体と、該2つの脚枠体の間に、前記長手方向に沿って左右に配設された2つの支持板とを備え、
前記各脚枠体の上端部には、それぞれ対応する前記軸連結部に対して係脱可能に設けられた係合部が形成され、該係合部は前記軸連結部に係合して前記長辺部が直線を成すように該長辺部を支持するように構成され、
前記2つの支持板は、相互に対向する側の側部が回動可能に連結されるとともに、反対側の側部が前記脚枠体に回動可能に連結されていることを特徴とする可搬浴槽用構造体。
【請求項2】
前記上部構造体の長手方向一方側のU字状部位を形成する一対の長辺部に、該一対の長辺部に掛け渡されるように連結された頭部支持板を備えていることを特徴とする請求項1記載の可搬浴槽用構造体。
【請求項3】
一方端が、前記一方側のU字状部位を形成する一対の長辺部の一方に係合し、且つ他方端が該一方の長辺部側の前記支持板に係合して、該一方の長辺部を支持する第1長辺部支持部材と、
一方端が、前記一方側のU字状部位を形成する一対の長辺部の他方に係合し、且つ他方端が該他方の長辺部側の前記支持板に係合して、該他方の長辺部を支持する第2長辺部支持部材とを備えていることを特徴とする請求項2記載の可搬浴槽用構造体。
【請求項4】
それぞれ、一方端が、一方の前記脚枠体の2つの縦辺部に回動可能に連結され、他方端が長手方向において対応する前記支持板の側面に係合する2つの長尺の第1係合部材と、
それぞれ、一方端が、他方の前記脚枠体の2つの縦辺部に回動可能に連結され、他方端が長手方向において対応する前記支持板の側面に係合する2つの長尺の第2係合部材とを備え、
前記第1係合部材及び第2係合部材は、それぞれ長穴状の係合穴を有し、前記各支持板の側面には対応する係合穴に挿入されて係合する係合突起が設けられ、更に、前記係合穴の下端部には、前記係合突起が係止される係止部が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の可搬浴槽用構造体。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の可搬浴槽用構造体と、
前記可搬浴槽用構造体の前記上部構造体を覆うように設けられた浴槽用シートとから構成されることを特徴とする可搬浴槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送可能な介護用の浴槽、及びこの浴槽を形成するための構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化が進み、介護の必要な高齢者が増加している。このため、高齢者が快適に生活することができ、しかも容易に介護を受けることができるように、居住設備や介護設備が充実した特別な集合住宅が提案されている。
【0003】
一方、このような特別な施設は、一般的に、費用の負担が高額となるため、介護設備等が用意された特別な住宅に移り住むのではなく、引き続き現在の住宅に居住しながら、介護を受けることを希望する高齢者も増えてきている。このような要望に応えるため、介護業者は個人宅に居住する要介護者に対して訪問介護を行っており、このような介護サービスの中に、入浴サービスが含まれている。
【0004】
そして、従来、このような入浴サービスに用いることができる浴槽として、下記特許文献1及び2に開示される浴槽が知られている。
【0005】
特許文献1に開示される浴槽は、長手方向の略中央で第1半割槽と第2半割槽とに分割可能に構成された平面視略長方形状を有する浴槽である。第1半割槽は、底部と該底部から立設された側壁部とから形成され、底部および側壁部の分割面側に、第2半割槽との突合せ端部を備えた第1の槽部を有する。同様に、第2半割槽は、底部と該底部から立設された側壁部とから形成され、底部および側壁部の分割面側に、第1半割槽との突合せ端部を備えた第2の槽部を有する。また、この浴槽は、第1半割槽および第2半割槽の各突合わせ端部同士を液密に結合可能な防水性スライドファスナーを備えている。
【0006】
この介護用浴槽によれば、第1半割槽および第2半割槽の各突合せ端部同士が防水性スライドファスナーによって結合または分離するように構成されており、各半割槽の突合せ端面に沿って金属製のフランジ部を設けていないので、介護用浴槽全体の軽量化を図ることができ、各半割槽の結合および分離を、防水性スライドファスナーの開閉によって行うことができるため、介護用浴槽の組立・分解が容易であり、訪問入浴サービスにおける介護従事者の作業負担を軽減させることができる、とのことである。
【0007】
一方、特許文献2に開示された浴槽は、底板とこの底板に対して内側に折り畳み可能に取り付けられた側板及び前後板とからなる浴槽本体と、この浴槽本体の外側に敷設される直方体状の防水シートと、この防水シートを受ける底板及び側部フレームを有し、折り畳み式の脚を備えた架台とから構成される。防水シート及び浴槽本体の底板には排水口がそれぞれ設けられており、防水シートの排水口には排水ホースが取り付けられ、排水口の上部に、高さ調整可能な排水管が設けられている。
【0008】
この浴槽によれば、折りたたみ収納が容易であり、場所を取らずに簡単に広げて使用することができる、とのことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2020-58520号公報
【文献】特開2001-299861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、上述した従来の各浴槽には、それぞれ以下のような問題があった。
【0011】
即ち、近年では、バリアフリーなどの観点から、マンションの等の比較的高層の建物に居住する要介護者が増えてきており、介護提供者は介護用の浴槽を高層階に住む要介護者の部屋まで運ばなければならない。
【0012】
ところが、特許文献1に開示された浴槽の場合、第1半割槽及び第2半割槽がFRPなどの樹脂材料で構成されており、これらに保形上の強度を持たせるには、各槽の肉厚を相応に厚くする必要があるため、浴槽の十分な軽量化を図ることができないものであった。要介護者が住む建物にエレベータが無い場合には、介護提供者の負担を考えると、浴槽を可及的に軽量化する必要がある。
【0013】
また、特許文献2に開示された浴槽は、浴槽本体、防水シート及び架台という3つの要素から構成されるものであり、これについても各要素の強度面を考慮すると、浴槽の全体的な軽量化を図るのは困難であり、その運搬性が悪いものとなっている。また、この浴槽は長手方向には折りたたむことができないため、そのコンパクト化が不十分であり、この面においても、その運搬性が悪いものとなっている。
【0014】
本発明は以上の実情に鑑みなされたものであって、介護提供者が容易に運搬できる程度に十分な軽量化が図られ、しかも、寸法的にコンパクト化が図られた可搬浴槽用の構造体、及びこれを備えた可搬浴槽の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するための本発明は、
可搬浴槽を形成するための構造体であって、
相互に対向する2つの長辺部及び2つの短辺部を有し、輪郭形状がほぼ長形をした環状の枠体である上部構造体と、
前記上部構造体の2つの長辺部に対してそれぞれ係脱可能に設けられ、前記各長辺部に係合して前記上部構造体を支持する下部構造体とを備え、
前記上部構造体は、その前記各長辺部に、軸を介して連結される2つの軸連結部が長手方向に所定間隔を空けてそれぞれ形成されるとともに、該軸連結部を中心として、長手方向両側の平面視U字状をした部位がそれぞれ内側に折り返し可能に形成され、
前記下部構造体は、それぞれ正面視U字状をした2つの脚枠体と、該2つの脚枠体の間に、前記長手方向に沿って左右に配設された2つの支持板とを備え、
前記各脚枠体の上端部には、それぞれ対応する前記軸連結部に対して係脱可能に設けられた係合部が形成され、該係合部は前記軸連結部に係合して前記長辺部が直線を成すように該長辺部を支持するように構成され、
前記2つの支持板は、相互に対向する側の側部が回動可能に連結されるとともに、反対側の側部が前記脚枠体に回動可能に連結された可搬浴槽用構造体に係る。
【0016】
また、本発明は、上記の可搬浴槽用構造体と、この可搬浴槽用構造体の上部構造体を覆うように、当該可搬浴槽用構造体に取り付けられる浴槽用シートとから構成される可搬浴槽に係る。
【0017】
この可搬浴槽によれば、前記可搬浴槽用構造体の上部構造体と下部構造体とは、係脱可能、即ち、分離可能に設けられ、更に、前記支持板を除いた脚枠体は枠体として構成されているので軽量であり、また、湯を貯留するための浴槽用のシートも軽量化を図ることができる。
【0018】
また、上部構造体は、その長手方向両側の平面視U字状をした部位が、前記軸連結部を中心として、それぞれ内側に折り返し可能に形成されているので、これらを折り畳むことによってコンパクトなものとすることできる。また、前記下部構造体は、その2つの支持板を折り畳みながら、2つの脚枠体を相互に接近させることができ、このようにすることで当該下部構造体もコンパクトなものとすることできる。更に、浴槽用シートも折り畳むことによってコンパクトなものとすることができる。
【0019】
このように、本発明に係る可搬浴槽用構造体、及び浴槽用シートは、それぞれ軽量化を図ることができ、また、コンパクトなものとすることができるので、介護提供者はこれらを容易に運搬することができる。
【0020】
尚、この可搬浴槽を使用する際には、まず、前記上部構造体、下部構造体及び浴槽用シートを分離した状態にするとともに、それぞれ折り畳むなどしてコンパクトなものとして使用場所に運搬する。そして、前記下部構造体の2つの脚枠体を相互に離間させて前記2つの支持板を一つの平板状に展開するとともに、前記上部構造体の長手方向両側の部位を外側に展開して、長形をした環状に形成した後、前記各脚枠体の上端部に形成された係合部に、前記上部構造体の前記軸連結部をそれぞれ係合させて、当該上部構造体が下部構造体によって支持された状態にする。
【0021】
次に、このようにして組み立てられた可搬浴槽用構造体の前記上部構造体を覆うように、前記浴槽用シートを被せるとともに、当該浴槽用シートを上部構造体の枠内に入れ込むことで、浴槽を形成する。尚、この状態で、浴槽用シートは、その周縁部が枠状の上部構造体によって支持されるとともに、浴槽を形成する底部が前記支持板によって支持された状態となっている。斯くして、このようにして形成した浴槽内にお湯を入れて、要介護者に入浴サービスを提供する。
【0022】
そして、入浴サービスを提供した後、可搬浴槽を撤収する際には、浴槽内のお湯を抜き取った後、可搬浴槽用構造体から浴槽用シートを取り外し、次いで、上部構造体と下部構造体とを分離した後、これら上部構造体、下部構造体及び浴槽用シートをそれぞれ折り畳んで搬出する。
【0023】
本発明において、前記可搬浴槽用構造体は、上部構造体の長手方向一方側のU字状部位を形成する一対の長辺部に、該一対の長辺部に掛け渡されるように連結された頭部支持板を備えた態様を採ることができる。このようにすれば、要介護者を入浴させる際に、頭部支持板によって要介護者の頭部を支えることができ、要介護者に対して円滑な入浴サービスを提供することができる。
【0024】
また、本発明において、前記可搬浴槽用構造体は、一方端が、前記一方側のU字状部位を形成する一対の長辺部の一方に係合し、且つ他方端が該一方の長辺部側の前記支持板に係合して、該一方の長辺部を支持する第1長辺部支持部材と、一方端が、前記一方側のU字状部位を形成する一対の長辺部の他方に係合し、且つ他方端が該他方の長辺部側の前記支持板に係合して、該他方の長辺部を支持する第2長辺部支持部材とを備えた態様を採ることができる。このようにすれば、前記頭部支持板が設けられるU字状部位を第1長辺部支持部材及び第2長辺部支持部材によって支持することができるので、要介護者の頭部が置かれる当該U字状部位をよりしっかりと支持することができる。
【0025】
また、本発明において、前記可搬浴槽用構造体は、それぞれ、一方端が、一方の前記脚枠体の2つの縦辺部に回動可能に連結され、他方端が長手方向において対応する前記支持板の側面に係合する2つの長尺の第1係合部材と、それぞれ一方端が他方の前記脚枠体の2つの縦辺部に回動可能に連結され、他方端が長手方向において対応する前記支持板の側面に係合する2つの長尺の第2係合部材とを備え、
前記第1係合部材及び第2係合部材は、それぞれ長穴状の係合穴を有し、前記各支持板の側面には対応する係合穴に挿入されて係合する係合突起が設けられ、更に、前記係合穴の下端部には、前記係合突起が係止される係止部が形成された態様を採ることができる。
【0026】
このようにすれば、第1係合部材及び第2係合部材に設けられた係合穴と、各支持板の側面に設けられた係合突起との係合関係によって、当該第1係合部材及び第2係合部材と各支持板とが相対移動可能に連結されているので、前記下部構造体の折り畳み及び展開をスムーズに実行することができる。また、支持板が展開したときに、係合突起が係合穴の下端部に形成された係止部によって係止されるようにすることができ、このようにすることで、展開された支持板を安定して展開状態に維持することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明に係る可搬浴槽によれば、可搬浴槽用構造体の上部構造体と下部構造体とが分離可能に設けられ、更に、支持板を除いて枠体として構成されているので軽量であり、また、湯を貯留するための浴槽用のシートも軽量化を図ることができる。また、上部構造体は、その長手方向両側の平面視U字状をした部位が、軸連結部を中心として、それぞれ内側に折り返し可能に形成されているので、これらを折り畳むことによってコンパクトなものとすることできる。一方、下部構造体は、その2つの支持板を折り畳みながら、2つの脚枠体を相互に接近させることができ、このようにすることで当該下部構造体もコンパクトなものとすることできる。更に、浴槽用シートも折り畳むことによってコンパクトなものとすることができる。斯くして、本発明に係る可搬浴槽は、介護提供者がこれらを容易に運搬することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態に係る可搬浴槽を示す平面図である。
図2図1における矢視A方向の正面図である。
図3図2における矢視B-B方向の断面図である。
図4】本実施形態に係る上部構造体の展開及び折り畳み状態を説明するための説明図である。
図5】本実施形態に係る下部構造体の折り畳みの態様を説明するための説明図である。
図6】本実施形態に係る下部構造体の折り畳みの態様を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0030】
図1から図3に示すように、本例の可搬浴槽1は、可搬浴槽を形成するための可搬浴槽用構造体5と、この可搬浴槽用構造体5を覆うように設けられる浴槽用シート2とから構成される。
【0031】
前記浴槽用シート2には、例えば、防水性を備えた樹脂シートを採用することができ、耐久性、防水性、柔軟性及び軽量性に優れたものがより好ましい。但し、このような樹脂シートに限定されるものでは無く、公知の各種シートを採用することができる。
【0032】
前記可搬浴槽用構造体5は、上部構造体10及び下部構造体30から構成される。上部構造体10は、相互に対向する2つの長辺部11,12及び2つの短辺部13,14を有し、輪郭形状がほぼ長形をした環状の枠体であり、アルミなどの軽量のパイプから構成される。
【0033】
この上部構造体10は、その各長辺部11及び12に、それぞれ長手方向に所定間隔を空けて形成された2つの軸連結部15,16及び17,18を備えている。この軸連結部は15,16及び17,18は、長辺部11,12の中央側の部位11a,12aの各両端部と、その両側の部位11b,12b及び11c,12cとを連結するもので、それぞれ同じ構造を備えている。
【0034】
具体的には、図2に示すように、長辺部12の中央側の部位12aの両側にブラケット17a,18aを設けるとともに、右側の部位12bにブラケット17bを設け、且つ左側の部位12cにブラケット18bを設けて、部位12aの右端部と部位12bの左端部を突き合せた状態で、ブラケット17aとブラケット17bとが重なり合った部分を支持軸17cによって軸支し、同様に、部位12aの左端部と部位12cの右端部を突き合せた状態で、ブラケット18aとブラケット18bとが重なり合った部分を支持軸18cによって軸支している。
【0035】
同様に、図2において括弧書きの符号で示すように、長辺部11の中央側の部位11aの両側にブラケット15a,16aを設けるとともに、右側の部位11bにブラケット15bを設け、且つ左側の部位11cにブラケット16bを設けて、部位11aの右端部と部位11bの左端部を突き合せた状態で、ブラケット15aとブラケット15bとが重なり合った部分を支持軸15cによって軸支し、同様に、部位11aの左端部と部位11cの右端部を突き合せた状態で、ブラケット16aとブラケット16bとが重なり合った部分を支持軸16cによって軸支している。
【0036】
斯くして、上部構造体10は、その長手方向両側の平面視U字状をした右側の部位20、及び左側の部位21が、軸連結部15,16及び17,18を中心として、中央の部位19に対しそれぞれ下方に回動して内側に折り返すことができるようになっており、右側部位20、中央部位19及び左側部位21は、これらが水平となる姿勢と、右側部位20及び左側部位21がそれぞれ下方に回動して内側に折り畳まれた姿勢をとることができるようになっている(図4参照)。
【0037】
前記下部構造体30は、それぞれ正面視U字状を有し、相互に対向するように設けられる2つの脚枠体31,61と、この2つの脚枠体31,61間に、前記長手方向に沿って左右に配設された2つの支持板33,63とを備えて構成される。
【0038】
図1における矢示A方向から見て、前記脚枠体31は、その右側の上端部に係合部37を備え、左側の上端部に係合部39を備えており、同様に、前記脚枠体61は、その右側の上端部に係合部67を備え、左側の上端部に係合部69を備えている。
【0039】
前記係合部37は、脚枠体31の右側の上端部に固設された支持板37cと、この支持板37cの前記長手方向における両端部に立設された一対の係合板37a,37aとから構成され、係合板37a,37aには、前記脚枠体61とは反対側に開口する切り欠き部37bが形成されている。同様に、前記係合部39は、脚枠体31の左側の上端部に固設された支持板39cと、この支持板39cの前記長手方向両端部に立設された一対の係合板39a,39aとから構成され、係合板39a,39aには、前記脚枠体61とは反対側に開口する切り欠き部39bが形成されている。
【0040】
また、前記係合部67は、脚枠体61の右側の上端部に固設された支持板67cと、この支持板67cの前記長手方向両端部に立設された一対の係合板67a,67aとから構成され、係合板67a,67aには、前記脚枠体31とは反対側に開口する切り欠き部67bが形成されている。同様に、前記係合部69は、脚枠体61の左側の上端部に固設された支持板69cと、この支持板69cの前記長手方向両端部に立設された一対の係合板69a,69aとから構成され、この係合板69a,69aには、前記脚枠体31とは反対側に開口する切り欠き部69bが形成されている。
【0041】
そして、係合部37に上部構造体10の軸連結部15を係合させ、係合部39に軸連結部16を係合させ、係合部67に軸連結部17を係合させるとともに、係合部69に軸連結部18を係合させることにより、下部構造体30によって上部構造体10が水平状態で支持される。このとき、係合部37では、前記長辺部11の部位11a,11bの各端部が係合板37a,37aの切り欠き部37b,37bに嵌り込むことによって係止され、係合部39では、前記長辺部11の部位11a,11cの各端部が係合板39a,39aの切り欠き部39b,39bに嵌り込むことによって係止されて、前記長辺部11の部位11a,11b,11cが一直線となる。同様に、係合部67では、前記長辺部12の部位12a,12bの各端部が係合板67a,67aの切り欠き部67b,67bに嵌り込むことによって係止され、係合部69では、前記長辺部12の部位12a,12cの各端部が係合板69a,69aの切り欠き部69b,69bに嵌り込むことによって係止されて、前記長辺部12の部位12a,12b,12cが一直線となる。
【0042】
前記支持板33,63は複数の穴が形成され、軽量化された所謂パンチングメタルから構成され、U字状に形成された支持枠体32,62上に固設されている。また、支持枠体32の両端部は、脚枠体31の縦辺部の内側に突設されたブラケット31a,31bに支持軸34a,34bによってそれぞれ軸支されており、支持枠体32はこの支持軸34a,34bを中心として回動可能になっている。同様に、支持枠体62の両端部は、脚枠体61の縦辺部の内側に突設されたブラケット61a,61bに支持軸64a,64bによってそれぞれ軸支されており、支持枠体62はこの支持軸64a,64bを中心として回動可能になっている。また、支持枠体32,62はその長手方向の相互に対向する側面同士が当接するように、その下面に長手方向に沿って所定間隔で設けられたヒンジ36a,36b,36cによって連結されている。斯くして、支持枠体32及び支持板33、並びに、支持枠体62及び支持板63は、前記支持軸34a,34b、並びに支持軸64a,64bを中心として、それぞれ上方に回動することによって、折り曲げ可能になっている。また、脚枠体31,61の各縦辺部は、係合部37,39、67,69より少し下方の部位に固設された連結棒31a,61aによって連結されている。
【0043】
また、脚枠体31の縦辺部の内側には、前記ブラケット31a,31bより上方位置にブラケット41,42が突設されており、このブラケット41,42に、長尺の係合部材43,44の一方端が支持軸47,48によってそれぞれ軸支され、当該支持軸47,48を中心として回動可能になっている。同様に、脚枠体61の縦辺部の内側には、前記ブラケット61a,61bより上方位置にブラケット71,72が突設されており、このブラケット71,72に、長尺の係合部材73,74の一方端が支持軸77,78によってそれぞれ軸支され、当該支持軸77,78を中心として回動可能になっている。
【0044】
前記係合部材43,44には、それぞれその長手方向に沿って長穴状の係合穴43a,44aが形成され、前記支持枠体32の長手方向両端面に突設された係合突起45,46がそれぞれ係合穴43a,44aに挿入された状態で係合している。また、係合穴43a,44aの下端部には、上側に向けて鉤状に屈曲した係止部43b,44bが形成されており、係合突起45,46が係合穴43a,44aの下端に位置しているときに、係合部材43,44を下側に向けて回動させることにより、係合突起45,46が係止部43b,44bに挿入され、これにより、係合突起45,46が係合穴43a,44aに沿って相対的に移動するのが制止される。
【0045】
同様に、前記係合部材73,74には、それぞれその長手方向に沿って長穴状の係合穴73a,74aが形成され、前記支持枠体62の長手方向両端面に突設された係合突起75,76がそれぞれ係合穴73a,74aに挿入された状態で係合している。また、係合穴73a,74aの下端部には、上側に向けて鉤状に屈曲した係止部73b,74bが形成されており、係合突起75,76が係合穴73a,74aの下端に位置しているときに、係合部材73,74を下側に向けて回動させることにより、係合突起75,76が係止部73b,74bに挿入され、これにより、係合突起75,76が係合穴73a,74aに沿って相対的に移動するのが制止される。
【0046】
また、上部構造体10の平面視U字状をした右側の部位20の長辺部11b,12bには、これらの間に掛け渡すように設けられた頭部支持板22が連結されている。この頭部支持板22は波状をしており、中央の凹部で要介護者の頭部を支持できるようになっている。
【0047】
また、長辺部11b,12bの、頭部支持板22と短辺部13との間の下面には、ブラケット49,79が設けられている。そして、ブラケット49には、平面視L字状をした長辺部支持部材50の一方端が、長辺部11bに沿った平面内で回動可能に連結され、この長辺部支持部材50の他方端は、係合突起45が設けられる支持枠体32の端面であって、当該係合突起45より中央寄りの端面に設けられた係止片35に係合可能となっている。同様に、ブラケット79には、平面視L字状をした長辺部支持部材80の一方端が、長辺部12bに沿った平面内で回動可能に連結され、この長辺部支持部材80の他方端は、係合突起75が設けられる支持枠体62の端面であって、当該係合突起75より中央寄りの端面に設けられた係止片65に係合可能となっている。そして、長辺部支持部材50,80がそれぞれ係止片35,65によって係止された状態で、当該長辺部支持部材50,80によって上部構造体10の右側の部位20が支持される。
【0048】
以上の構成を備えた本例の可搬浴槽1によれば、可搬浴槽用構造体5の上部構造体10と下部構造体30とが、係脱可能、即ち、分離可能に設けられているので、個別に搬送することができ、その搬送時の重量的な負荷を軽減することができる。更に、上部構造体10と下部構造体30は前記支持板33,63を除いて枠体として構成されているので軽量であり、また、支持板33,63についてもパンチングメタルを採用することで、必要な強度を確保しながらもその軽量化を図ることができる。また、湯を貯留するための浴槽用シート2についても可及的な軽量化が可能である。
【0049】
また、上部構造体10は、下部構造体30から分離した状態で、図4に示すように、その長手方向両側の、平面視U字状をした右側の部位20及び左側の部位21を、それぞれ軸連結部15,16及び17,18を中心として、中央の部位19に対しそれぞれ下方に回動させて内側に折り返すことで、折り畳むことができる。そして、このように折り畳むことで、上部構造体10をコンパクトなものにすることができ、これを容易に搬送することができるようになり、その可搬性が向上する。尚、図4では、右側の部位20及び左側の部位21を水平に展開した状態を実線で示し、右側の部位20及び左側の部位21を内側に折り畳んだ状態を一点鎖線で示している。
【0050】
また、下部構造体30についても、上部構造体10を分離した状態で、図3に示した状態から、係合部材43,44,73,74をそれぞれ上側に向けて回動させて、係合突起45,46,75,76と係止部43b,44b,73b,74bとの係合関係が解除され、これにより、図5に示すように、脚枠体31,61を相互に接近させることができるようになる。その際、支持枠体32及び支持板33、並びに、支持枠体62及び支持板63は、前記支持軸34a,34b、並びに支持軸64a,64bを中心として、それぞれ上方に回動することによって、折り曲げられるとともに、これに伴って、係合突起45,46及び75,76はそれぞれ係合穴43a,44a及び73a,74a内をこれに沿って相対的に移動する。そして、下部構造体30は、図6に示すように、コンパクトに折り畳まれた状態となる。
【0051】
このように、本発明に係る可搬浴槽用構造体5及び浴槽用シート2は、それぞれ軽量化を図ることができ、また、コンパクトなものとすることができるので、介護提供者はこれらを容易に運搬することができる。
【0052】
そして、この可搬浴槽1を使用する際には、まず、前記上部構造体10、下部構造体30及び浴槽用シート2を分離した状態にするとともに、それぞれ折り畳むなどしてコンパクトなものとして、使用場所に運搬する。次に、上部構造体10の長手方向両側の部位20,21を外側に展開して、長形をした環状に形成した後、下部構造体30の2つの脚枠体31,61を相互に離間させて2つの支持板33,63が一つの平板を形成する展開させながら、各脚枠体31,61の上端部に形成された係合部37,39,67,69に、上部構造体10の軸連結部15,16,17,18をそれぞれ係合させて、当該上部構造体10が下部構造体30によって支持された状態にする。
【0053】
次に、前記係合部材43,44,73,74をそれぞれ下側に向けて回動させて、係合突起45,46,75,76と係止部43b,44b,73b,74bとを係合させて、係合部材43,44,73,74を係止するとともに、前記長辺部支持部材50,80の他方端をそれぞれ係止片35,65に係止させる。以上により、上部構造体10と下部構造体30とが相互に組付けられ、一つの可搬浴槽用構造体5に形成される。
【0054】
次に、このようにして組み立てられた可搬浴槽用構造体5の前記上部構造体10を覆うように、前記浴槽用シート2を被せるとともに、当該浴槽用シート2を上部構造体10の枠内に入れ込むことで、浴槽を形成する。この状態で、浴槽用シート2は、その周縁部が枠状の上部構造体10によって支持されるとともに、浴槽を形成する底部が前記支持板33,63によって支持された状態となる。尚、図1から図3において、このように配設した浴槽用シート2を一点鎖線で示している。そして、このようにして形成した浴槽内にお湯を入れて、要介護者に入浴サービスを提供する。
【0055】
尚、本例の介護用可搬浴槽1では、上部構造体10の長辺部11b,12b間に掛け渡すようにして連結された頭部支持板22を設けているので、要介護者を入浴させる際に、この頭部支持板22によって要介護者の頭部を支えることができ、要介護者に対して円滑な入浴サービスを提供することができる。そして、この頭部支持板22が設けられるU字状部位20を長辺部支持部材50,80によって支持するようにしているので、要介護者の頭部が置かれる当該U字状部位20をよりしっかりと支持することができる。
【0056】
また、本例の可搬浴槽1では、係合部材43,44,73,74に設けられた係合穴43a,44a,73a,74aと、支持枠体32,62の側面に設けられた係合突起45,46,75,76との係合関係によって、当該係合部材43,44,73,74及び支持枠体32,62とが相対移動可能に連結されているので、下部構造体30の折り畳み及び展開をスムーズに実行することができる。また、支持板33,63が設けられる支持枠体32,62が展開したときに、係合突起45,46,75,76が係合穴43a,44a,73a,74aの下端部に形成された鉤状の係止部43b,44b,73b,74bによって係止されるようにすることができ、このようにすることで、展開された支持枠体32,62を安定して展開状態に維持することができる。
【0057】
そして、入浴サービスを提供した後、可搬浴槽1を撤収する際には、浴槽内のお湯を抜き取った後、可搬浴槽用構造体5から浴槽用シート2を取り外し、次いで、上部構造体10と下部構造体30とを分離した後、これら上部構造体10、下部構造体20及び浴槽用シート2をそれぞれ折り畳んで搬出する。
【0058】
以上、本発明の具体的な実施の形態について説明したが、本発明が採り得る具体的な態様は、何ら上例のものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0059】
1 可搬浴槽
2 浴槽用シート
5 可搬浴槽用構造体
10 上部構造体
11,12 長辺部
13,14 短辺部
15,16,17,18 軸連結部
22 頭部支持板
30 下部構造体
31、61 脚枠体
33,63 支持板
37,39,67,69 係合部
43,44,73,74 係合部材
43a,44a,73a,74a 係合穴
45,46,75,76 係合突起
50,80 長辺部支持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6