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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】ロック機構付き化粧料容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 33/00 20060101AFI20240729BHJP
【FI】
A45D33/00 610F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021058813
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022155361
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2024-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000158781
【氏名又は名称】紀伊産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】君島 美津志
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-118949(JP,A)
【文献】実開昭63-111809(JP,U)
【文献】特開2012-157524(JP,A)
【文献】米国特許第05682910(US,A)
【文献】韓国登録特許第10-1387265(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D33/00,34/04
B65D43/22,50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と、上記容器本体の後端部にヒンジ連結により開閉自在に取り付けられる蓋体とを備え、上記蓋体の前端部に、上記容器本体と係合するための係合用凸部を有する係合片が設けられているとともに、上記容器本体の前端部に、上記容器本体の手前から奥側に向かって凹状に切り欠かれた凹部が設けられ、その凹部の奥面に、上記蓋体の係合用凸部と係合して蓋体を係止するための被係合用凸部が設けられており、
上記容器本体の前端部に設けられた凹部内に、凹部内を前後方向に摺動しうるフックピースが取り付けられており、
上記フックピースが上記凹部内において奥面側に前進して上記蓋体を押し上げることにより、上記蓋体側の係合用凸部と上記容器本体側の被係合用凸部との係合が解除されて蓋体が上に開くようになっている化粧料容器であって、
上記容器本体の凹部内に、上記フックピースの前進動作を規制するロック部材が嵌入されているとともに、上記蓋体の係合片の、係合用凸部が設けられた側の面と反対側の面に、上記係合用凸部が設けられた側の面に向かって凹む段差部が設けられており、
上記ロック部材は、水平面部と、上記水平面部から立ち上がる立設部と、上記立設部から折り返されて断面略U字状に湾曲して延びる湾曲部と、上記湾曲部の先端からさらに折り返されて略水平に延びる延設部とを備え、上記立設部から湾曲部への折り返し部が、上記蓋体の係止片に設けられた段差部と係合するとともに、上記湾曲部から折り返された延設部が、上記フックピースと係合することにより、上記フックピースが奥側に前進することを規制しており、
上記ロック部材の水平面部を、容器本体の下面より引き下げることにより、上記ロック部材の折り返し部と上記蓋体側の段差部との係合を外して上記フックピースに対する規制を解除し、その状態でフックピースを奥側に前進させることにより、蓋体が開くようになっていることを特徴とするロック機構付き化粧料容器。
【請求項2】
上記ロック部材の、立設部から湾曲部への折り返し角度θが、60~70°に設定されている請求項1記載のロック機構付き化粧料容器。
【請求項3】
上記ロック部材の折り返し部と、上記蓋体側の段差部との係合部において、上下方向の係合距離Hが、0.7~2.0mmに設定されている請求項1または2記載のロック機構付き化粧料容器。
【請求項4】
上記ロック部材の延設部と、上記フックピースとの係合部において、前後方向の係合距離Jが、0.8~3.0mmに設定されている請求項1~3のいずれか一項に記載のロック機構付き化粧料容器。
【請求項5】
上記ロック部材の水平面部の奥端縁と、上記容器本体の凹部の、容器本体の下面に開口する部分の奥端縁との隙間幅Wが、2.5~4.0mmに設定されている請求項1~4のいずれか一項に記載のロック機構付き化粧料容器
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幼児等が勝手に蓋をあけることのできない、ロック機能付き化粧料容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ファンデーションやアイカラー、リップカラー等の化粧料を収容した薄型の化粧料容器としては、化粧料を収容した容器本体と蓋体とを互いの後端部でヒンジ連結し、手前正面で開閉自在に係止した、いわゆるコンパクトタイプの化粧料容器が多く出回っている。
【0003】
このようなコンパクトタイプの化粧料容器の多くは、例えば、図8に示すように、容器本体1と、この容器本体1を蓋する蓋体2と、容器本体1の前端部に設けられるフックピース3とを備えており、容器を開くときは、このフックピース3を手前から奥側に軽く押し込むと、容器本体1の前端部に設けられた凸部4と蓋体2の前端部に設けられた凸部5との係合が解除されて、蓋体2が上に開くようになっている。そして、使用後は、蓋体2を閉じるだけで、フックピース3が初期位置に戻って蓋体2側の凸部5と容器本体1側の凸部4とが係合して蓋体2を閉じた状態が保持されるようになっている。
【0004】
上記の構成によれば、フックピース3を軽く押圧するだけで蓋体2を簡単に開けることができ、使い勝手がよいが、その反面、他の化粧道具と一緒にバッグに収納して携帯しているときに他の化粧道具がフックピース3に当たって勝手に蓋体2が開き、バッグ内に化粧料がこぼれることがあり、問題となっている。
【0005】
また、幼児が勝手に化粧料容器をいじって偶然フックピース3を押し、蓋体2が開くおそれもある。幼児はなんでも口にするため、化粧料を口に入れると危険である。
【0006】
そこで、容易に蓋体が開かないように、特殊なロック機構を設けた化粧料容器がいくつか提案されている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実開平5-70407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1の化粧料容器は、図9(a)に示すように、容器本体11と、皿枠12と、蓋体13とを備えた化粧料容器であって、蓋体13の前端部に設けられた係合用の第1の爪片14を、容器本体11内に設けたロック機構付きの第2の爪片15によって係止するようにしたものである。
【0009】
上記第2の爪片15は、図9(b)に示すように、容器本体11の側面に設けられたプッシュピース部16から延びるアーム部17の先端に取り付けられており、上記プッシュピース部16を矢印のように奥側にスライドさせて容器本体11の内側に押し込むことによってアーム部17を揺動させると、上記第2の爪片15と、蓋体13側の第1の爪片14との係合が解除されるようになっている。上記プッシュピース部16のスライド操作は、偶然では起こりにくいため、前述のような携帯時のアクシデントや幼児の誤食を防ぐのに一定の効果を奏する。
【0010】
しかしながら、上記特許文献1のようなロック機構を容器本体11内に組み込むには、容器本体11に余分なスペースが必要となり、化粧料容器全体が嵩高いものとなるという問題がある。また、容器の側面にプッシュピース部16が突出しているため、スライド操作が偶然には起こりにくいとはいえ、幼児等がこれを偶然スライドさせてしまう可能性は皆無とはいえず、100%安全であるとは言い切れない。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、余分なスペースを設ける必要がなく、しかも偶然では開くことのできない優れたロック機構を備えた、ロック機構付き化粧料容器の提供をその目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明は、以下の[1]~[5]を提供する。
[1]容器本体と、上記容器本体の後端部にヒンジ連結により開閉自在に取り付けられる蓋体とを備え、上記蓋体の前端部に、上記容器本体と係合するための係合用凸部を有する係合片が設けられているとともに、上記容器本体の前端部に、上記容器本体の手前から奥側に向かって凹状に切り欠かれた凹部が設けられ、その凹部の奥面に、上記蓋体の係合用凸部と係合して蓋体を係止するための被係合用凸部が設けられており、
上記容器本体の前端部に設けられた凹部内に、凹部内を前後方向に摺動しうるフックピースが取り付けられており、
上記フックピースが上記凹部内において奥面側に前進して上記蓋体を押し上げることにより、上記蓋体側の係合用凸部と上記容器本体側の被係合用凸部との係合が解除されて蓋体が上に開くようになっている化粧料容器であって、
上記容器本体の凹部内に、上記フックピースの前進動作を規制するロック部材が嵌入されているとともに、上記蓋体の係合片の、係合用凸部が設けられた側の面と反対側の面に、上記係合用凸部が設けられた側の面に向かって凹む段差部が設けられており、
上記ロック部材は、水平面部と、上記水平面部から立ち上がる立設部と、上記立設部から折り返されて断面略U字状に湾曲して延びる湾曲部と、上記湾曲部の先端からさらに折り返されて略水平に延びる延設部とを備え、上記立設部から湾曲部への折り返し部が、上記蓋体の係止片に設けられた段差部と係合するとともに、上記湾曲部から折り返された延設部が、上記フックピースと係合することにより、上記フックピースが奥側に前進することを規制しており、
上記ロック部材の水平面部を、容器本体の下面より引き下げることにより、上記ロック部材の折り返し部と上記蓋体側の段差部との係合を外して上記フックピースに対する規制を解除し、その状態でフックピースを奥側に前進させることにより、蓋体が開くようになっているロック機構付き化粧料容器。
[2]上記ロック部材の、立設部から湾曲部への折り返し角度θが、60~70°に設定されている上記[1]に記載のロック機構付き化粧料容器。
[3]上記ロック部材の折り返し部と、上記蓋体側の段差部との係合部において、上下方向の係合距離Hが、0.7~2.0mmに設定されている上記[1]または[2]記載のロック機構付き化粧料容器。
[4]上記ロック部材の延設部と、上記フックピースとの係合部において、前後方向の係合距離Jが、0.8~3.0mmに設定されている上記[1]~[3]のいずれかに記載のロック機構付き化粧料容器。
[5]上記ロック部材の水平面部の奥端縁と、上記容器本体の凹部の、容器本体の下面に開口する部分の奥端縁との隙間幅Wが、2.5~4.0mmに設定されている上記[1]~[4]のいずれかに記載のロック機構付き化粧料容器。
【発明の効果】
【0013】
すなわち、本発明のロック機構付き化粧料容器は、容器本体と蓋体との係合を外すために容器本体の前端部の凹部内に取り付けられたフックピースの動きを規制するために、上記容器本体の前端部の凹部内において、フックピースと、容器本体との間に、特殊な形状のロック部材を介在させるようにしたものである。
この構成によれば、容器本体の裏面側に指先をかけて、上記ロック部材の、容器本体の前端部の凹部開口の下面から露出する水平面部を、容器本体の下面より引き下げるだけで、上記フックピースに対する規制を簡単に解除することができるようになっている。そして、その状態でフックピースを奥側に前進させれば、蓋体がすぐに開くため、従来と同様、使い勝手がよいものである。
【0014】
また、上記ロックを外すには、容器本体の裏面側の、ごく限られたスペースである凹部開口に指をかけて、その凹部開口内に露出するロック部材の水平面部を引き下げる、という意図的な操作が必要なため、バッグの中で他の化粧道具が当たったり、幼児がいじったりして偶然にロックが解除されるということは、よほどのことがない限り生じないのであり、充分に安全性が確保されたものとなっている。
【0015】
しかも、上記ロック部材は、フックピースを取り付けるための凹部として、もともと容器本体の前端部に設けられている凹部内に嵌入されており、余分なスペースを必要としないため、化粧料容器全体が嵩張ることがないという利点を有する。
【0016】
さらに、上記ロック部材が容器本体の裏面、すなわち容器の下面において直接見える構成になっているため、消費者に対して、この化粧料容器が安全性に配慮したものであることをわかりやすく示すことができ、訴求効果に優れている。
【0017】
なお、本発明のなかでも、特に、上記ロック部材の、立設部から湾曲部への折り返し角度θが、60~70°に設定されているものは、とりわけロックの解除動作がしやすく、かつ経時的にロックが甘くなったりすることがなく、好適である。
【0018】
また、本発明のなかでも、特に、上記ロック部材の折り返し部と、上記蓋体側の段差部との係合部において、上下方向の係合距離Hが、0.7~2.0mmに設定されているもの、あるいは、上記ロック部材の延設部と、上記フックピースとの係合部において、前後方向の係合距離Jが、0.8~3.0mmに設定されているものは、とりわけ、ロックが確実になされており、しかもロックの解除動作がしやすいという利点を有する。
【0019】
さらに、本発明のなかでも、特に、上記ロック部材の水平面部の奥端縁と、上記容器本体の凹部の、容器本体の下面に開口する部分の奥端縁との隙間幅Wが、2.5~4.0mmに設定されているものは、ロックの解除動作時に、ロック部材に指先をしっかりとかけることができ、好適である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】(a)は本発明の一実施の形態の正面図、(b)は(a)の底面図である。
図2図1(a)のA-A’断面図である。
図3図2において円Kで囲われた部分を拡大して示す部分断面図である。
図4】上記実施の形態における容器本体とロック部材とフックピースの分解斜視図である。
図5】(a)は上記実施の形態におけるロック部材の斜視図、(b)はその正面図である。
図6】(a)は上記実施の形態におけるフックピースの正面図、(b)はその底面図、(c)はその平面図、(d)は(a)のB-B’断面図である。
図7】上記実施の形態においてロックを解除する動作の説明図である。
図8】従来の、フックピースを備えた化粧料容器の一例を示す斜視図である。
図9】(a)は従来のロック機構付き化粧料容器の一例を斜視図、(b)はそのロックをかけた状態を示す説明図、(c)はそのロックを外した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。ただし、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0022】
図1(a)は、本発明のロック機構付き化粧料容器(以下、単に「化粧料容器」ということがある)の一実施の形態を示す正面図であり、図1(b)は、その底面図である。また、図2は、上記図1(a)のA-A’断面図であり、図3は、その円Kで囲われる部分を拡大して示す部分断面図である。
【0023】
これらの図からわかるように、この化粧料容器は、基本的な構成は、一般的なコンパクトタイプの化粧料容器と同じで、容器本体21と、上記容器本体21の後端部にヒンジ連結により開閉自在に取り付けられる蓋体22とを備えている。そして、上記蓋体22の前端部の中央に、上記容器本体21と係合するための係合用凸部23を有する係合片24(図2図3を参照)が設けられており、上記容器本体21の前端部に、手前から奥側に向かって凹状に切り欠かれた凹部30が設けられ、その凹部30の奥端面に、上記蓋体22の係合用凸部23と係合して蓋体22を係止するための被係合用凸部31が設けられている。
【0024】
そして、上記容器本体21の前端部に設けられた凹部30内に、凹部30内を前後方向に摺動しうるフックピース40と、そのフックピース40の動きを規制するロック部材50が取り付けられている(図4を参照)。
【0025】
より詳しく説明すると、上記フックピース40は、外観が横長の略箱状で、図6[(a)は正面図、(b)は底面図、(c)は平面図、(d)は(a)のB-B’断面図]に示すように、容器本体21の前端部に設けられた凹部30の前面開口を略垂直に塞ぐ前板部41(図4を参照)と、上記前板部41の上端縁から凹部30の奥面側に向かって略水平に延びる上板部42と、左右の側板部43と、底板部44とを備えている。
【0026】
そして、上記底板部44の左右両端に、下向きに突出する摺動用突起45が設けられており、この摺動用突起45が、容器本体21側の凹部30(図4を参照)の開口縁から張り出した左右一対のガイド板32に設けられたガイド溝33に沿って、前後に摺動するようになっている。なお、上記左右のガイド板32の上方には、前後に延びるガイド筒34がそれぞれ設けられており、このガイド筒34とガイド板32の隙間、同じくガイド筒34と凹部30の左右の側面との隙間が、前後に摺動するフックピース40をガイドするようになっている。
【0027】
また、上記フックピース40の底板部44には、図6(b)に示すように、以下に詳述するロック部材50を嵌め込むための切欠き46と、奥側に前進したフックピース40を自動的に手前に後退させるための、湾曲した左右一対のばね部47とが設けられている。
【0028】
一方、容器本体21の前端部に設けられた凹部30内において、上記フックピース40とともに取り付けられるロック部材50は、図5[(a)は斜視図、(b)は正面図]に示すように、ベースとなる水平面部51と、上記水平面部51から立ち上がる立設部52と、上記立設部52から手前側に折り返されて断面がやや傾いた略U字状に湾曲して延びる湾曲部53と、上記湾曲部53の先端から手前側に折り返されて略水平に延びる延設部54とを備えている。
【0029】
そして、上記ロック部材50は、その立設部52を、上記フックピース40の底板部44に設けられた切欠き46に入り込ませることによって、容器本体21の凹部30とフックピース40との間に嵌入されている。また、上記ロック部材50の左右方向は、容器本体21の凹部30の奥端面に設けられる左右一対のロックガイド35によって規制されている。
【0030】
上記フックピース40の内側に嵌入されたロック部材50は、図3に示すように、その立設部52から湾曲部53への折り返し部が、蓋体22側の係止片24に設けられた段差部24aと係合している。そして、上記湾曲部53から折り返された延設部54の先端が、上記フックピース40の前板部41と上板部42とで構成される内側の角部と係合している。また、上記ロック部材50は、凹部30の奥面と隙間をあけた状態で上記フックピース40および上記係止片24と係合している。
【0031】
このように、上記ロック部材50の一部が上記蓋体22側の段差部24aと係合して、蓋体22の係止片24を容器本体21側に押し付けているとともに、同じくロック部材50の他の一部が上記フックピース40側の角部と係合して、その間で突っ張っているため、従来のように、フックピース40を手前から奥側に向かって前進させて蓋体22を開けようとしても、フックピース40は前進することができず、蓋体22を開けることができない。
【0032】
そして、上記蓋体22を開けるには、図7において矢印Pで示すように、容器本体21の下面において上記凹部30の下端開口から露出する上記ロック部材50の水平面部51の奥面側を、上記容器本体21の下面より下の手前側に引き下げ、上記ロック部材50の折り返し部と上記蓋体22側の段差部24aとの係合を外して上記フックピース40に対する規制を解除し、その状態で、矢印Qで示すように、フックピース40を押して、奥側に前進させる。これにより、蓋体22を簡単に開けることができる。
【0033】
なお、上記ロック部材50の水平面部51を手前側に引き下げる動作を、容器本体21の下側に当てた人指し指もしくは中指で行い、上記フックピース40を押し込む動作を、親指で行うと、両方の動作を片手で行うことができ、大人であれば簡単に蓋体22を開けることができる。一方、幼児には、これら一連の動作を行うことは難しく、また偶然このような動作がなされることも想定できないため、上記ロック部材50を用いたロック機構は、非常に有効であり、この化粧料容器を安心して使用することができる。
【0034】
しかも、上記ロック部材50は、従来の化粧料容器の、容器本体の前端部に設けられる凹部30と、その凹部30に取り付けるフックピースとの間のスペースを利用して嵌め込むだけでよいことから、余分なスペースを設ける必要がなく、化粧料容器全体が嵩張らないという利点を有する。
【0035】
さらに、上記ロック部材50が容器本体21の裏面、すなわち容器の下面において直接見える構成になっているため、この化粧料容器によれば、消費者に対して、この容器が安全性に配慮したものであることをわかりやすく示すことができ、訴求効果に優れたものとなる。
【0036】
なお、上記ロック機構付き化粧料容器は、ロック機構を付与した以外は、従来の化粧料容器の構成と基本的に同じである。そして、容器本体21、蓋体22、フックピース40の材質は、特に限定されるものではなく、例えば、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂(ABS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が、適宜用いられる。また、上記ロック部材50の材質も、特に限定されるものではないが、容器の開閉のたびに繰り返し荷重がかかるため、反りや歪みが残留しにくい弾性体であって圧縮強度に優れたものであることが好ましく、例えばポリアセタール樹脂(POM)が好適である。ちなみに、上記の例では、下記の材質のものを用いている。
容器本体21:ABS
蓋体22:ABS
フックピース40:ABS
ロック部材:POM(ジュラコン、登録商標)
【0037】
なお、上記の例において、上記ロック部材50の形状は、フックピース40の前進動作をしっかりとロックし、かつ容器本体21の下面に指をかけて指先で容易に解除できるように、フックピース40と蓋体22のそれぞれに係合する形状であることが重要である。そのために、まず、上記ロック部材50の、立設部52から湾曲部53への折り返し角度θ(図3を参照)は、60~70°であることが好ましく、なかでも、64~67°であることがより好ましい。
【0038】
すなわち、上記折り返し角度θが小さすぎると、フックピース40の内側に係合させる形状を、ロック解除時にフックピース40の動きを妨げない形に設定することが容易でなく、解除動作がしにくくなるおそれがあり、好ましくない。また、逆に、上記折り返し角度θが大きすぎると、蓋体22の段差部24aとの係合部にかかる規制力が弱くなり、経時的にロックが甘くなるおそれがあり、やはり好ましくない。
【0039】
また、上記ロック部材50の折り返し部と、上記蓋体22側の段差部24aとの係合部において、上下方向の係合距離H(図3を参照)は、0.7~2.0mmに設定されていることが好ましく、なかでも、0.7~1.0mmに設定されていることがより好ましい。
【0040】
すなわち、上記係合距離Hが短すぎると、経時的にロックが甘くなるおそれがあり、また逆に、上記係合距離Hが長すぎると、ロックを解除しにくくなって、それぞれ好ましくない。
【0041】
さらに、上記ロック部材50の延設部54と、上記フックピース40との係合部において、前後方向の係合距離J(図3を参照、実際に両者が接して係合している部分の距離)が、0.8~3.0mmに設定されていることが好ましく、なかでも、0.8~1.5mmに設定されていることがより好ましい。
【0042】
すなわち、上記係合距離Jが短すぎると、両者の係合が不安定になり、ロックが不充分になったり、ロック解除時にロック部材50の姿勢がずれたりするおそれがあり、好ましくない。そして、上記係合距離Jが長すぎると、延設部54にかかる負担が大きくなりすぎるため、経時的に延設部54の形状が損なわれるおそれもあることから、好ましくない。
【0043】
また、上記ロック部材50の水平面部51の奥端縁と、上記容器本体21の凹部30の、容器本体21の下面に開口する部分の奥端縁との隙間幅W(図3を参照)が、2.5~4.0mmに設定されていることが好ましく、なかでも、2.7~3.0mmに設定されていることがより好ましい。
【0044】
すなわち、上記隙間幅Wが小さすぎると、ロック解除時に指先をロック部材50の水平面部51にかけにくくなるおそれがあり、逆に、上記隙間幅Wが大きすぎると、容器本体21の下面に大きな開口の隙間が見えて見栄えが悪くなるおそれがあり、好ましくない。また、隙間幅Wが大きすぎると、その隙間から異物が入り込んで、容器内のロック機構やフックピース40による開閉機構に支障をきたすおそれがある点においても、好ましくない。
【実施例
【0045】
つぎに、本発明の実施例について、比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0046】
[実施例1~5、比較例1]
まず、後記の表1に示す特徴を備えた実施例1~5のロック機構付き化粧料容器を準備した。これらの化粧料容器の基本的な構成は、図1図7の記載に従う。材質は、容器本体21、蓋体22、フックピース40がABS、ロック部材50がジュラコン(登録商標)である。
また、比較例1品として、ロック部材50を用いず、それ以外の構成は上記実施例1品と略同じである、従来の化粧料容器を準備した。
【0047】
これらの化粧料容器について下記の評価を行い、その結果を、後記の表1に併せて示す。
【0048】
<蓋体の開閉動作における使用感>
モニター7名が、その蓋体22の開閉を10回繰り返して、ロック解除を伴う開閉動作のやりやすさ(使用感)について、下記の評価基準にしたがって評価した。そして、最も人数の多い評価を、その評価として後記の表1に併せて示す。
◎…非常にスムーズに開閉することができ、全く問題ない。
○…スムーズに開閉することができ、問題ない。
△…わずかに違和感がある。
×…はっきりした違和感がある。
【0049】
<容器閉蓋の安定性>
上記化粧料容器(各例3個ずつ)と、他の3種類の化粧用具(口紅容器、ネイル容器、アイカラー容器)とを布製のポーチに入れた状態で、傾斜角度45°、斜面長さ1mの傾斜面を滑らせながら落下させた。この落下を5回および10回繰り返した後、化粧料容器の蓋体22が勝手に開いたものの数を確認し、下記の評価基準にしたがって評価した。その結果を下記の表1に併せて示す。
◎…落下を10回繰り返しても、3個とも蓋体22が開くことはなく、閉じた状態で安定している。
○…落下を5回繰り返しても、3個とも蓋体22が開くことはなく、閉じた状態で安定しているが、落下を10回繰り返した後、蓋体22が開いたものがあった。
△…落下を5回繰り返した後、蓋体22が開いたものが1個あった。
×…落下を5回繰り返した後、蓋体22が開いたものが2個以上あった。
【0050】
【表1】
【0051】
上記の結果から、ロック機構を付加した実施例1~5品は、蓋体22の開閉動作をスムーズに行うことができ、使用感は良好である。また、強い衝撃を与える落下を5回繰り返しても蓋体22が開くことがなく、とりわけ実施例1品は10回繰り返しても蓋体を閉じた状態で安定していることがわかる。一方、ロック機構のない比較例1品は、強い衝撃を受けると蓋体22が開くことがあることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、幼児がいじったり携帯時に他の化粧用具と当たったりして偶然蓋体が開くようなことのない、ロック機構付き化粧料容器に利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
21 容器本体
22 蓋体
30 凹部
40 フックピース
50 ロック部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9