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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】放射線防護シールド
(51)【国際特許分類】
   G21F 3/02 20060101AFI20240729BHJP
   G02C 7/16 20060101ALI20240729BHJP
   G21F 1/10 20060101ALI20240729BHJP
   G21F 1/06 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
G21F3/02 Z
G02C7/16
G21F1/10
G21F1/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021081050
(22)【出願日】2021-05-12
(65)【公開番号】P2022174969
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2023-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】522266025
【氏名又は名称】地方独立行政法人東京都立病院機構
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100141025
【弁理士】
【氏名又は名称】阿久津 勝久
(72)【発明者】
【氏名】神 與市
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3011320(JP,U)
【文献】特開平10-20262(JP,A)
【文献】特開2002-148569(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0091735(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 3/02
G02C 7/16
G21F 1/10
G21F 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡に装着される放射線防護シールドであって、
透明な放射線遮蔽材から構成されると共に、前記眼鏡の正面部及び側面部を覆う透明防護体と、
前記透明防護体の前記正面部に取付けられ、前記眼鏡のレンズを把持する少なくとも1つの把持部と、
前記透明防護体の前記側面部に取付けられ、前記側面部を前記眼鏡のツルに係止する少なくとも1つの係止部または前記眼鏡のツルを把持する少なくとも1つの把持部と、
前記眼鏡のレンズ側で前記透明防護体に形成された切欠部とを備えた、放射線防護シールド。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線防護シールドであって、
前記正面部は、前記眼鏡のレンズ側を覆い、前記側面部は、前記眼鏡のツル側を覆う、放射線防護シールド。
【請求項3】
請求項1または2に記載の放射線防護シールドであって、
前記正面部及び前記側面部は、滑らかに接続されている、放射線防護シールド。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の放射線防護シールドであって、
前記放射線防護シールドは、右眼用放射線防護シールドと、左眼用放射線防護シールドとから構成され、前記右眼用放射線防護シールド及び前記左眼用放射線防護シールドは互いに接続されず分離されている、放射線防護シールド。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の放射線防護シールドであって、
前記切欠部は、前記透明防護体の下端から上方に向けて、前記透明防護体を切り欠いている、放射線防護シールド。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の放射線防護シールドであって、
前記透明防護体は、鉛入り透明樹脂または鉛入り透明ガラスから形成されている、放射線防護シールド。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の放射線防護シールドであって、
前記正面部に取付けられた前記少なくとも1つの把持部は、鼻側の把持部と、前記側面側の把持部とから構成される、放射線防護シールド。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の放射線防護シールドであって、
前記正面部に取付けられた前記少なくとも1つの把持部は、前記側面側に位置する把持部のみから構成される、放射線防護シールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡等に取付ける放射線防護シールドに関し、より詳細には、医師等の医療従事者の水晶体が放射線によって被爆することを防護する防護シールドに関する。
【背景技術】
【0002】
手術の際、X線撮影装置から患部にX線を照射し、患部のX線透視画像を医師等の術者が確認することが行われている。この際、X線等の放射線から医師等の術者を防護するために、各種の防護シールドが提案されている。例えば、術者は、眼の水晶体を防護するために放射線防護用眼鏡を装着している。
【0003】
既存の放射線防護用眼鏡又はシールドは次の通りである。例えば、株式会社ミハマメディカルは、図6(a)に示す、フルフェイスマスクを提供している。株式会社保科製作所は、図6(b)に示す、FP-3フェイスシールドや、図6(c)に示す、X線防護眼鏡「パノラマシールド」を提供している。また、医師等の術者が眼鏡を掛けていても装着できる大きなタイプから、眼鏡を掛けていない素顔に装着する小さなタイプまで種々のタイプが提供されている。放射線防護用眼鏡は、色々なフレームの種類から選択可能となっている。
【0004】
図7には、ルーペ(拡大鏡)のタイプ別の写真を示している。ルーペは、大きく分けると、図7(a)に示す、拡大レンズの端部が眼鏡のレンズ面に埋め込まれるタイプと、図7(b)に示す、拡大レンズが眼鏡のレンズ面に埋め込まれていないタイプとに分類できる。また、特許文献1(特開2019-144373号公報)に示すように、眼鏡に取付けるルーペが提案されている。また、術者が装着するライトは、図8のライト-ルーペ一体式の眼鏡がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-144373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
医師等の術者は、脊椎、脳、または骨折の手術に際し、術野を拡大して見るためのルーペや、術野を照らすためのライトを装着している。しかしながら、ルーペの拡大レンズやライトが邪魔となり、既存の放射線防護用眼鏡が装着ができず、医師の眼の水晶体が被爆する可能性が生じている。手術中に使用するX線照射装置から2m以上離れると被曝の影響はほぼ無くなると言われているが、患者から2m離れて手術することは不可能である。よって、放射線防護用眼鏡を装着できない状態で、医師等の術者の水晶体は常時被曝していることになる。
【0007】
より具体的には、医師等の術者が、図7のルーペを有する眼鏡をかけて手術を行う際、図6の放射線防護用眼鏡又はシールドが拡大レンズと干渉するため、術者は図6の放射線防護用眼鏡又はシールドを装着することができない。同様に医師等の術者が、図8のライト-ルーペ一体式の眼鏡をかけて手術を行う際、図6の放射線防護用眼鏡又はシールドはライト及び/又はルーペと干渉するため、術者は図6の放射線防護用眼鏡又はシールドは拡大レンズを装着することができない。このような場合に、術者の眼(水晶体)を放射線被曝から防護することができない可能性が生じていた。
【0008】
本発明は、医療従事者が、ルーペ及び/またはライトを備える眼鏡をかけた状態であっても、医療従事者の眼(好ましくは水晶体)を放射線から防護できる放射線防護シールドの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の各態様は次の通りである。
[態様1]
眼鏡に装着される放射線防護シールドであって、
透明な放射線遮蔽材から構成されると共に、前記眼鏡の正面部及び側面部を覆う透明防護体と、
前記透明防護体の前記正面部に取付けられ、前記眼鏡のレンズを把持する少なくとも1つの把持部と、
前記透明防護体の前記側面部に取付けられ、前記側面部を前記眼鏡のツルに係止する少なくとも1つの係止部または前記眼鏡のツルを把持する少なくとも1つの把持部と、
前記眼鏡のレンズ側で前記透明防護体に形成された切欠部とを備えた、放射線防護シールド。
[態様2]
態様1に記載の放射線防護シールドであって、
前記正面部は、前記眼鏡のレンズ側を覆い、前記側面部は、前記眼鏡のツル側を覆う、放射線防護シールド。
【0010】
[態様3]
態様1または2に記載の放射線防護シールドであって、
前記正面部及び前記側面部は、滑らかに接続されている、放射線防護シールド。
[態様4]
態様1乃至3のいずれか一項に記載の放射線防護シールドであって、
前記放射線防護シールドは、右眼用放射線防護シールドと、左眼用放射線防護シールドとから構成され、前記右眼用放射線防護シールド及び前記左眼用放射線防護シールドは互いに接続されず分離されている、放射線防護シールド。
[態様5]
態様1乃至4のいずれか一項に記載の放射線防護シールドであって、
前記切欠部は、前記透明防護体の下端から上方に向けて、前記透明防護体を切り欠いている、放射線防護シールド。
[態様6]
態様1乃至5のいずれか一項に記載の放射線防護シールドであって、
前記透明防護体は、鉛入り透明樹脂または鉛入り透明ガラスから形成されている、放射線防護シールド。
[態様7]
態様1乃至6のいずれか一項に記載の放射線防護シールドであって、
前記正面部に取付けられた前記少なくとも1つの把持部は、鼻側の把持部と、前記側面側の把持部とから構成される、放射線防護シールド。
[態様8]
態様1乃至6のいずれか一項に記載の放射線防護シールドであって、
前記正面部に取付けられた前記少なくとも1つの把持部は、前記側面側に位置する把持部のみから構成される、放射線防護シールド。
【発明の効果】
【0011】
本発明の放射線防護シールドは、医師等の医療従事者が、ルーペやライトを備える眼鏡をかけた状態であっても、術者の眼を放射線から防護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るシールドを示す斜視図である。
図2図1のシールドの把持部材を示す側面図である。
図3図2の把持部材が開いた状態を示す側面図である。
図4図1のシールドを拡大レンズ埋込型の眼鏡に装着した状態を示す斜視図である。
図5図1のシールドを拡大レンズ非埋込型の眼鏡に装着した状態を示す斜視図である。
図5B図1のシールドの変形例を示す斜視図である。
図6】従来の放射線防護シールドを示す斜視図である。
図7】従来の拡大レンズ付き眼鏡を示す斜視図である。
図8】従来のライト-ルーペ一体式の眼鏡を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係る放射線防護シールドを図面を参照して説明する。なお、各図において対応する部分は、同じ符号を付して説明は適宜省略する。
【0014】
本発明の一実施形態に係る放射線防護シールド1を、図1を用いて説明する。以下、右眼用の放射線防護シールド1のみを図示しつつ説明するが、左右対称な構造で左眼用の放射線防護シールド1を有するものとする。
【0015】
放射線防護シールド1は、放射線(x線)を防護する透明防護体10と、透明防護体10の正面部10aの上縁に設けられ眼鏡のレンズを把持する少なくとも1つの把持部(クリップ部)30a、30bと、透明防護体10の側面部10bの上縁に設けられ眼鏡のテンプルに係止される少なくとも1つの係止部40とを備える。少なくとも1つの把持部は、好ましくは、鼻側の把持部30aと、側面部10b側の把持部30bとから構成される。把持部30a及び把持部30bは、好ましくは、図2に示すような同一の構造を有する。なお、係止部40は、金属等の弾性部材から形成されている。図1の放射線防護シールド1において、係止部40に代えて、図5bに示すような把持部30cを備えることもできる。
【0016】
透明防護体10は、正面部10aが眼鏡のレンズ側を覆い、側面部10bが眼鏡のツル側を覆う。正面部10aには、正面部の下端から上方に向けて正面部10aを切り欠いた切欠部10cが設けられている。正面部10a及び側面部10bは、略板状であり、滑らかに接続される。透明防護体10は、鉛入り透明樹脂(例えば、鉛入りアクリル樹脂、または鉛入りメタクリル樹脂)、または鉛入りガラス等から形成することができる。
【0017】
図2に示すように、把持部30a(30b)は、中心軸部32と、中央軸部32に設けられたバネ36と、バネ36に接続された一対の操作部34a、34bと、バネ36に接続された一対の脚部37a、37bと、透明防護体10の正面部10aを脚部37bの下端に固定する少なくも一つのビス39と、脚部37bの下端に固定された保護材(フェルト又はゴム)38とから構成される。
【0018】
図2に矢印で示す方向に一対の操作部34a、34bをバネ36の付勢力に抗して移動すると、把持部30は図3の状態となる。図3の状態で、一対の脚部37a、37bはバネの付勢力に抗して移動し、一対の脚部37a、37bの間は広くなる。一対の脚部37a、37bの間に、眼鏡のレンズを配置し、一対の操作部34a、34bから手を離すと、図2の状態となって、眼鏡のレンズを把持することができる。このように放射線防護シールド1は、把持部30を有するため、多様な形状の眼鏡に対し把持部の開閉(図2及び図3)のみで装着することができる。
【0019】
拡大レンズ埋め込み型の眼鏡50に、放射線防護シールド1を装着した状態を図4に示す。拡大レンズ埋め込み型の眼鏡50は、左右のレンズにそれぞれ拡大レンズ60の末端が埋め込まれ又は貫通している。
【0020】
拡大レンズ非埋め込み型の眼鏡70に、放射線防護シールド1を装着した状態を図5に示す。拡大レンズ非埋め込み型の眼鏡70は、眼鏡のブリッジから延びた支持アームと、支持アームと取り付けられた左右の拡大レンズ60とを備えている。
【0021】
図4または図5に示すように、眼鏡50または70に対して、放射線防護シールド1を装着する場合に、拡大レンズ60が切欠部10cを通過するため、透明防護体10が拡大レンズ60の邪魔にならない。
【0022】
放射線防護シールド1を図7aのような金属製のレンズの枠とツルを備えた眼鏡に装着した場合(図4)、眼鏡50の正面部には、複数の把持部30の邪魔になるものがないため、正面部のどの部分でも複数の把持部30a、30bで挟むことができる。これに対して、放射線防護シールド1を図7bや図8のようなデザイン性に富んだ眼鏡に装着した場合、これらの眼鏡の鼻側は、前方に突出しているため、鼻側の把持部(クリップ)30aで、眼鏡の正面部を挟めない可能性が生じる。
【0023】
そこで、このような可能性を解消するための、放射線防護シールド1の変形例を説明する。変形例に係る放射線防護シールド1’の正面部10aは、図5Bに示すように、側面部10b側に1つの把持部30bのみを備えている。また、変形例に係る放射線防護シールド1’の側面部10bは、少なくとも1つの把持部30cを備えている。したがって、放射線防護シールド1’は、図1の放射線防護シールド1とは異なり、正面部10aの鼻側に把持部30aを備えず、側面部10b側に係止部40を備えていない。変形例の放射線防護シールド1’は、把持部30b及び把持部30cを備えるため、前後左右上下の3方向すべてに対する動きを確実に制御(固定)することができる。
【0024】
図5Bに示すように、1つの把持部30bの保持位置と、1つの把持部30cの保持位置とは、略直交配置されている。眼鏡に放射線防護シールド1’を装着した状態で、放射線防護シールド1’に何らかの物体が接触しても、この略直交配置により、眼鏡から放射線防護シールド1’が脱落しにくくなるため、放射線防護シールド1’の眼鏡への固定性を向上することができる。
【0025】
放射線防護シールド1’は、1つの把持部30と、1つの把持部30cとからなる2つの部分で眼鏡に保持されるため、図1の放射線防護シールド1と比較して簡易な構造となり、コストも削減することができる。
【0026】
また、放射線防護シールド1または1’は、右眼用放射線防護シールド1または1’と、左眼用放射線防護シールド1または1’とから構成されるが、これらは、互いに接続されずに分離されている。したがって、右眼用放射線防護シールド1または1’と、左眼用放射線防護シールド1または1’とを、独立して眼鏡に装着できると共に、個々の眼鏡が備えた拡大レンズの配置及び形状に合うように、左右の放射線防護シールド1または1’の切欠部10cの装着位置を微調整することができる。
【0027】
さらに、放射線防護シールド1または1’は、透明防護体10に側面部10bを備えているため、術者の眼の側面も防護することができる。背景技術で説明したようにルーペとライトには種々の形状が提案されているので、オーダーメイドで拡大レンズのタイプに応じて放射線防護シールド1または1’(透明防護体10)の形を形成することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 放射線防護シールド
10 透明防護体
10a 正面部
10b 側面部
10c 切欠部
30a 鼻側の把持部(クリップ)
30b 側面部側の把持部
40 係止部(クリップ)
50 眼鏡
60 拡大レンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図5B
図6
図7
図8