(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】膜構造体、圧電体膜及び超伝導体膜
(51)【国際特許分類】
H10N 30/079 20230101AFI20240729BHJP
H10N 30/853 20230101ALI20240729BHJP
H10N 30/87 20230101ALI20240729BHJP
C23C 14/08 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
H10N30/079
H10N30/853
H10N30/87
C23C14/08 F
C23C14/08 K
(21)【出願番号】P 2021503431
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2019051627
(87)【国際公開番号】W WO2020179210
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2019042068
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019090505
(32)【優先日】2019-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019140723
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】522127678
【氏名又は名称】I-PEX Piezo Solutions株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100187388
【氏名又は名称】樋口 天光
(72)【発明者】
【氏名】木島 健
(72)【発明者】
【氏名】小西 晃雄
【審査官】小山 満
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-029894(JP,A)
【文献】特開平11-312801(JP,A)
【文献】国際公開第2018/216227(WO,A1)
【文献】特開2000-256098(JP,A)
【文献】特開2013-009173(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0015852(US,A1)
【文献】米国特許第06258459(US,B1)
【文献】特開2013-168530(JP,A)
【文献】特開2018-167557(JP,A)
【文献】特開2006-105886(JP,A)
【文献】特開2004-281762(JP,A)
【文献】特開平09-110592(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0114784(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0287037(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0259275(US,A1)
【文献】米国特許第05801105(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 30/079
H10N 30/853
H10N 30/87
C23C 14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された、
膜部と突出部から構成されるジルコニアを含む正方晶の結晶構造を有するバッファ膜と、
前記バッファ膜上に形成される、エピタキシャル成長した白金族元素を含む金属膜と、
前記金属膜上に形成される、エピタキシャル成長したSr(Ti
1-x,Ru
x)O
3
(0≦x≦1)を含む膜と、
前記エピタキシャル成長したSr(Ti
1-x
,Ru
x
)O
3
(0≦x≦1)を含む膜上に形成される単結晶の圧電体膜と、
を備える、膜構造体。
【請求項2】
前記金属膜の厚みが20~150nmである、
請求項1に記載の膜構造体。
【請求項3】
前記バッファ膜が、希土類元素又はアルカリ土類元素をさらに含む、請求項1又は2に記載の膜構造体。
【請求項4】
前記バッファ膜の表面積が、平面と比べて1.30~1.60である、
請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の膜構造体。
【請求項5】
前記基板が、(100)面、(110)面、または(111)面に配向してる、
請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載の膜構造体。
【請求項6】
前記バッファ膜は、前記基板の配向に従ってエピタキシャル成長する、
請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載の膜構造体。
【請求項7】
前記圧電体膜が、三方晶系の結晶構造を有する、請求項
1乃至6
のうちのいずれか1項に記載の
膜構造体。
【請求項8】
前記三方晶系の結晶構造を有する材料が、BiFeO
3、LiNbO
3、またはLiTaO
3である、請求項
7に記載の
膜構造体。
【請求項9】
前記圧電体膜が、六方晶系の結晶構造を有する、請求項
1乃至6
のうちのいずれか1項に記載の
膜構造体。
【請求項10】
前記六方晶系の結晶構造を有する材料が
、AlNである、請求項
9に記載の
膜構造体。
【請求項11】
前記圧電体膜が、タングステンブロンズ型の結晶構造を有する、請求項
1乃至6のうちのいずれか1項に記載の
膜構造体。
【請求項12】
前記圧電体膜が、ビスマス層状型の結晶構造を有する、請求項
1乃至6のうちのいずれか1項に記載の
膜構造体。
【請求項13】
前記ビスマス層状型の結晶構造を有する材料が、Bi
4Ti
3O
12または(Bi
4-xLa
x)Ti
3O
12(0≦x<1)である、請求項
12に記載の
膜構造体。
【請求項14】
前記圧電体膜が、ABO
3で表されるペロブスカイト型酸化物である、請求項
1乃至6のうちのいずれか1項に記載の
膜構造体。
【請求項15】
前記ABO
3
で表されるペロブスカイト型酸化物の材料が、チタン酸ジルコン酸鉛である、請求項
14に記載の
膜構造体。
【請求項16】
前記チタン酸ジルコン酸鉛が、Pb(Zr
0.3,Ti
0.7)O
3である、請求項
15に記載の
膜構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に単結晶の圧電体膜又は超伝導体膜をエピタキシャル成長により形成できるバッファ膜を備えた膜構造体、その圧電体膜、及びその超伝導体膜に関する。
【背景技術】
【0002】
ありとあらゆるモノがインターネットに接続するIoT時代となった現在、センサーは重要な役割を果たしており、その市場規模は全世界で200億ドル、市場成長率7-8%で拡大しており、世界で年間900億個ものセンサーが生産されている。その中でも、特にPZTをはじめとする圧電材料を用いたMEMSセンサー技術の取り組みが活況であり、自動運転用ジャイロセンサ、圧電マイク、5G通信用高周波フィルターや振動発電素子等、様々なアプリケーションに適用が広まっている。
【0003】
このような圧電材料を用いたMEMSセンサー技術はIoT技術の発展に伴い、年々小型・薄膜化、高感度化が必要とされている。一方で、高感度化の為には十分な圧電性を確保するために分極が揃うことが必要とされるが、多結晶のセラミックス焼結体が一般的である圧電材料では分極は揃わない。またセラミックス焼結体では薄膜化にも限界がある。そこで近年、圧電材料をエピタキシャル成長により薄膜の単結晶として得ようとする試みがなされている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような薄膜の単結晶化への取り組みにおいて、圧電材料の多くは酸化物であるため、例えば単結晶のSi基板を用いる場合、エピタキシャル成長によって圧電材料を単結晶化する事は難しい。そこで、例えば、YSZ(Yttria-stabilized zirconia)のような酸化物結晶をバッファ層として用いることがあるが、このような酸化物結晶は圧電材料の結晶系と異なる為、圧電材料の結晶形成時にバッファ層の結晶系に引きずられてしまい、面内の単結晶性を薄膜として得る事は難しいという課題がある。また、圧電材料ごとに格子定数が異なるためバッファ層の構成について圧電材料ごとに検討する必要があり、バッファ層の選定にも困難さがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本願発明に係る膜構造体は、基板と、前記基板上に形成された、ジルコニアを含む正方晶の結晶構造を有するバッファ膜と、前記バッファ膜上に形成される、エピタキシャル成長した白金族元素を含む金属膜と、前記金属膜上に形成される、エピタキシャル成長したSr(Ti1-x,Rux)O3を含む膜と(0≦x≦1)、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本願発明によれば、様々な圧電材料や超電導材料について、単結晶の結晶構造を有する膜を、本願発明に係る膜構造体の上に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本願発明に係るバッファ膜が形成された基板の断面図である。
【
図2】本願発明に係るバッファ膜上に下部電極が形成された基板の断面図である。
【
図3】本願発明に係るバッファ膜を含む膜構造体の断面図である。
【
図4】(a)は、基板11の上にバッファ膜12としてZrO
2を成膜した後にその断面を観察したSTEM画像であり、(b)の下図は基板11の電子回折像であり、上図はバッファ膜12の電子回折像である。
【
図5】バッファ膜12について、(a)は1nm、(b)は12nm、(c)は15nm、(d)は25nm、形成したときの断面を観察したSTEM画像である。
【
図6】膜構造体101についてXRDによるθ-2θスペクトルを測定した結果を示す。
【
図7】導電膜13について、(a)は10nm、(b)は20nm、(c)は150nm、形成したときの断面を観察したSTEM画像である。
【
図8】実施例1に係る膜構造体101について、XRD法によるθ-2θスペクトルを測定した結果を示す。
【
図9】実施例1に係る圧電体膜14としてのPZT(30/70)の断面を観察したSTEMによる格子像を示す。
【
図10】実施例1に係る膜構造体101について、(a)はSi(220)面の極点図であり、(b)はZrO
2(220)面の極点図であり、(c)はPt(220)の極点図であり、(d)はPZT(202)の極点図である。
【
図11】実施例1に係る圧電体膜14の分極の電圧依存性を示す図である。
【
図12】実施例2に係る膜構造体101について、XRD法によるθ-2θスペクトルを測定した結果を示す。
【
図13】実施例2に係る膜構造体101について、(a)は基板11であり、(b)は圧電体膜14のφスキャンによるX線回折パターンを示す図である。
【
図14】実施例2に係る圧電体膜14としてのBTOの断面を観察したSTEMによる格子像を示す。
【
図15】実施例2に係る圧電体膜14の分極の電圧依存性を示す図である。
【
図16】実施例2に係る圧電体膜14としてのBTOの圧電性を示す図である。
【
図17】実施例3に係る膜構造体101について、XRD法によるθ-2θスペクトルを測定した結果を示す。
【
図18】実施例3に係る膜構造体101について、(a)は基板11であり、(b)は圧電体膜14のφスキャンによるX線回折パターンを示す図である。
【
図19】実施例3に係る圧電体膜14としてのBFOの断面を観察したSTEMによる格子像を示す。
【
図20】実施例3に係る圧電体膜14の分極の電圧依存性を示す図である。
【
図21】実施例3に係る圧電体膜14としてのBFOの圧電性を示す図である。
【
図22】実施例4に係る膜構造体101について、XRD法によるOut-of-Planeのθ-2θスペクトルを測定した結果を示す。
【
図23】実施例4に係る膜構造体101について、(a)は基板11であり、(b)は圧電体膜14のφスキャンによるX線回折パターンを示す図である。
【
図24】実施例4に係る圧電体膜14としてのBLTの断面を観察したSTEMによる格子像を示す。
【
図25】実施例4に係る圧電体膜14の分極の電圧依存性を示す図である。
【
図26】実施例4に係る圧電体膜14としてのBLTの圧電性を示す図である。
【
図27】実施例5に係る膜構造体101について、XRD法によるθ-2θスペクトルを測定した結果を示す。
【
図28】実施例5に係る膜構造体101について、φスキャンによるX線回折パターンを示す図である。
【
図29】実施例6に係る膜構造体101について、XRD法によるθ-2θスペクトルを測定した結果を示す。
【
図30】実施例6に係る膜構造体101について、φスキャンによるX線回折パターンを示す図である。
【
図31】実施例1に係るPZT(30/70)を成膜したサンプルについて、バッファ膜12と導電膜13の断面をSTEM観察した結果を示す。
【
図32】実施例3に係るBFOを成膜したサンプルについて、バッファ膜12と導電膜13の断面をSTEM観察した結果を示す。
【
図33】実施例4に係るBLTを成膜したサンプルについて、バッファ膜12と導電膜13の断面をSTEM観察した結果を示す
【
図34】(a)は、実施例3に係るBFOを成膜した時の導電膜13及び膜16の界面の断面を示す格子像であり、(b)は、実施例4に係るBLTを成膜した時の導電膜13及び膜16の界面の断面を示す格子像である。
【
図35】実施例7に係る膜構造体101について、AlNをXRD法によりφスキャンしたX線回折パターンを測定した結果を示す。
【
図36】実施例8に係る膜構造体101について、LiNbO
3をXRD法によりφスキャンしたX線回折パターンを測定した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0010】
なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実施の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0011】
また本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0012】
更に、実施の形態で用いる図面においては、構造物を区別するために付したハッチング(網掛け)を図面に応じて省略する場合もある。
【0013】
(実施の形態)
図1は、本願発明に係るバッファ膜が形成された基板の断面図である。
図1に示すように、基板11上にバッファ膜12が形成される。
【0014】
基板11は、例えばシリコン(Si)基板である。Si以外にも、例えば、SOI(Silicon on Insulator)基板、Si以外の各種の半導体結晶よりなる基板、サファイアなど各種の酸化物単結晶よりなる基板、ガーネット(Al3Fe2Si3O12)基板、又は、表面にポリシリコン膜が形成されたガラス基板等であってよい。これら基板については、4インチのみならず6インチや8インチサイズの基板であっても良い。
【0015】
基板11の配向はどのようなものでもよく、Si基板であれば、例えばSi(100)、Si(110)、Si(111)等を用いることができる。
【0016】
バッファ膜12は、基板11上でエピタキシャル成長したジルコニア(ZrO2)を含み、膜部12aと突出部12bから構成される。ZrO2は付加するエネルギーにより結晶系が単斜晶→正方晶→立方晶と相転移を生じることが知られているが、本願発明において、バッファ膜12は正方晶の結晶構造を有する。なお、バッファ膜12は、好適には基板11の配向に従ってエピタキシャル成長している。
【0017】
なお、圧電材料は、晶系が正方晶か、正方晶でなくとも正方晶を含有すると性能が向上する事が報告されており、正方晶の酸化ジルコニウムをバッファ膜として設けることにより、圧電材料の単結晶形成に有利に作用すると考えられる。
【0018】
単結晶のZrO2は、最大で8%の結晶欠陥を含んでおり、結晶欠陥があると格子歪を小さくする方向に向けて、欠陥の空孔と近接の原子が弾性力を有すると考えられる。この弾性力の程度は空孔濃度に比例すると考えられる。本願発明に係るバッファ膜12はこの弾性力を利用し、結晶構造を可変とするように機能させることができる。
【0019】
図1に示すように、バッファ膜12は突出部12bを有している。このように突出部12bが形成されることは、バッファ膜12の成膜過程において原料濃度が過飽和のとき、結晶のある軸やある稜に沿って異方性を持って成長してピラミッド構造を形成しながら結晶成長していることによるものであると考えられる。
【0020】
バッファ膜12の成分は、ZrO2のみならず、さらに希土類元素やアルカリ土類元素を含んでいても良い。これらにおいて、ZrO2が酸素欠陥を含んでいても良い。また、特性改善のために、Al、Sc、Mn、Fe、Co,Ni等の遷移金属元素を含んでいてもよい。
【0021】
好適には、膜部12aは10nm以上あればよく、突出部12bは3~8nmである。
【0022】
図2は、
図1に示すバッファ膜12上に、下部電極を形成した基板の断面図を示す。下部電極は、バッファ膜12上でエピタキシャル成長した導電膜13と膜16を含む。導電膜13は各種金属を用いて形成することができ、例えば白金族元素であるRu、Rh、Pd、Os、Ir、Ptを用いることができる。これらの材料は相互に物理的・化学的に性質が類似していることが知られている。
【0023】
膜16は、下記の一般式(化1)で表わされる複合酸化物を含み、例えばチタン酸ストロンチウム(STO)、チタン酸ルテニウム酸ストロンチウム(STRO)、又はルテニウム酸ストロンチウム(SRO)である。なお、0≦x≦1を満たす。
Sr(Ti1-x,Rux)O3 … (化1)
【0024】
下部電極は、好適にはその表面が平面であり、導電膜13は少なくとも20nmあればよく、膜16は、その膜厚が導電膜13よりも薄いとよい。
【0025】
図3は、
図2に示す基板に、圧電体膜14と上部電極としての導電膜15をさらに形成した、本願発明に係る膜構造体101の断面図を示す。
【0026】
圧電体膜14の材料は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム(BaTiO3)等のペロブスカイト型酸化物である。あるいは、例えば、三方晶系のビスマスフェライト(BiFeO3)を用いることもできる。同様に三方晶系のニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)を用いることができる。また、例えば、六方晶系の窒化アルミニウム(AlN)を用いることができる。
【0027】
また、例えば、圧電体膜14として、タングステンブロンズ型強誘電体膜またはビスマス層状構造強誘電体膜を用いることができる。タングステンブロンズ型強誘電体膜の結晶構造を持つ材料としては、例えば、Ba2NaNb5O15である。
【0028】
ビスマス層状構造強誘電体膜の結晶構造は、一般式(Bi2O2)2+(Am-1BmO3m+1)2-(m=1~5)、又はBi2Am -1BmO3m+3(m=1~5)で表わされ、(Bi2O2)2+層の間に複数の疑ペロブスカイト構造を有する。ビスマス層状構造強誘電体は、例えば、チタン酸ビスマス(Bi4Ti3O12)である。または、例えば、チタン酸ビスマスランタン(Bi4-xLax)Ti3O12(0<x<1)を用いることができる。
【0029】
上記の圧電体膜14に限らず、ペロブスカイト構造を有する、YBa2Cu3O7(YBCO)のようなイットリウム系超伝導体や、Bi2SrCa2Cu3O10(BSCCO)のようなビスマス系超伝導体を材料として用いて超電導体膜14としてもよい。
【0030】
上記のような圧電体膜又は超伝導体膜を形成するための材料を用いると、バッファ膜12上に単結晶の圧電体膜14又は超伝導体膜14を形成することができる。
【0031】
圧電体膜14上には導電膜15が形成される。導電膜15は、導電膜13と同様の材料を用いることができる。なお、膜16により、導電膜13と圧電体膜14との間の密着性を高める等の効果を期待できる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例に基づいて本実施の形態を更に詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
【0033】
実施例1-4において、基板11として(100)配向したSi基板を用いて
図3に示す膜構造体101を作成した。圧電体膜14は、実施例1がPZT(30/70)(Pb(Zr
0.3,Ti
0.7)O
3)、実施例2は、BTO(BaTiO
3)、実施例3は、BFO(BiFeO
3)、実施例4は、BLT((Bi
3.25,La
0.75)Ti
3O
12)、をスパッタ材料として用いて成膜した。
【0034】
まず、基板11上に、バッファ膜12としてZrO2膜を電子ビーム蒸着法により形成した。このときの条件を以下に示す。
装置 : 電子ビーム蒸着装置
圧力 : 7.0×10-3Pa
蒸着源 : Zr+O2
O2流量 :10sccm
加速電圧/エミッション電流 : 7.5kV/1.8mA
厚さ : 25nm
基板温度 : 600℃
【0035】
図4(a)は、基板11の上にバッファ膜12としてZrO
2を成膜した後にその断面を観察したSTEM画像である。
図4(b)の下図は基板11の電子回折像であり、
図4(b)の上図はバッファ膜12の電子回折像である。
【0036】
図4(a)に示すように、バッファ膜12はその表面がピラミッド形状である突出部12bを備えており、膜部12aと突出部12bとから構成されることが分かる。
図4(b)の上図から分かるように、バッファ膜12は微細なZrO
2単結晶の集合体であり、基板11の上面にエピタキシャル成長している。
【0037】
図5は、バッファ膜12の成膜時間ごとのSTEMによる断面図を示す。
図5(a)は、バッファ膜12を1nm形成し、
図5(b)は、12nm形成し、
図5(c)は、15nm形成し、
図5(d)は、25nm形成したときの様子を示す。なお、
図5(b)-(d)において、突起部12bの形状が分かるように白抜きの点線で強調した。
【0038】
図5(a)に示すように、バッファ膜12の成膜直後においては、突出部12bは形成されていないことが分かった。このときの成膜時間は3秒である。次に、1分間、バッファ膜12を成膜したサンプルを作成し、その断面を観察した(
図5(b))。
図5(b)に示すように突出部12bの高さが不均一であることが分かった。次に、5分間、バッファ膜12を成膜したサンプルを作成し、その断面を観察した(
図5(c))。
図5(c)に示すように突出部12bは、
図5(b)に示す突出部12bよりも高さが均一化していた。次に、8分間、バッファ膜12を成膜したサンプルを作成し、その断面を観察した(
図5(d))。
図5(d)に示すように突出部12bは、
図5(b)又は(c)に示す突出部12bよりも、より高さが均一化していた。
【0039】
図5(b)-(d)に示す突出部12bの高さは、それぞれ画像に基づいて平均を算出すると、
図5(b)のときに2.2nm、
図5(c)のときに3.33nm、
図5(d)のときに4.67nmであった。また、突出部12bは、形状としては四角錐であり、底面の対角線の長さは、
図5(b)のときに3.3nm、
図5(c)のときに5.0nm、
図5(d)のときに7.0nmであった。
【0040】
以上の結果より、バッファ膜12を成膜するにつれて四角錐の大きさが大きくなっており、突出部12bの高さが、成膜時間に従って大きくなっていた。また、バッファ膜12を0.05分(3秒)成膜したとき(
図5(a))のバッファ膜12を平面とみなして表面積を1.0とすると、
図5(b)-(d)のバッファ膜12の表面積は1.30~1.60倍であった。
【0041】
成膜レートを算出すると、
図5(a)のときに3.33[nm/sec]、
図5(b)のときに2.0[nm/sec]、
図5(c)のときに0.50[nm/sec]、
図5(c)のときに0.50[nm/sec]、
図5(d)のときに0.52[nm/sec]であった。このように、バッファ膜12の膜厚別の成膜レートによれば、15nmより厚い膜になると、成膜レートが一定になることが分かった。
【0042】
図6は、後で説明する方法で導電膜13と、膜16を成膜した後のXRDによるθ-2θスペクトルを測定した結果を示す。。
図6に示すように、ピークの位置に従えば、バッファ膜12であるZrO
2が(200)面に配向した正方晶の結晶構造を有することがわかった。
【0043】
次に、バッファ膜12上に、導電膜13として白金(Pt)膜をスパッタリング法により形成した。この際の条件を以下に示す。
装置 : DCスパッタリング装置
圧力 : 1.2×10-1Pa
蒸着源 : Pt
電力 : 100W
厚さ : 150nm
基板温度 : 450~600℃
【0044】
図7は、バッファ膜12上に導電膜13としてPtを成膜した後にその断面を観察したSTEM画像である。
図7(a)は、導電膜13を10nm形成し、
図7(b)は、20nm形成し、
図7(c)は、150nm形成したときの様子を示す。
【0045】
図7(a)に示すように、10nmの膜厚でも導電膜13の表面がほぼ平坦化していることが分かった。そして、
図7(b)に示すように20nmの膜厚とすることにより導電膜13の表面がより平坦化し、そのまま150nm形成しても
図7(c)に示すように平坦を維持していた。
【0046】
次に、導電膜13上に、膜16としてSrRuO3(SRO)膜をスパッタリング法により形成した。この際の条件を以下に示す。
装置 : RFマグネトロンスパッタリング装置
パワー : 300W
ガス : Ar
圧力 : 1.8Pa
厚さ : 20nm
基板温度 : 600℃
【0047】
次に、膜16上に、圧電体膜14を形成した。実施例1~4において形成の条件は同じであり、スパッタ材料のみが異なる。
装置 : RFマグネトロンスパッタリング装置
材料 :[実施例1:PZT(30/70)]Pb(Zr0.3,Ti0.7)O3、
[実施例2:BTO]BaTiO3、
[実施例3:BFO]BiFeO3、
[実施例4:BLT](Bi3.25,La0.75)Ti3O12
パワー : 1500W
ガス : Ar/O2
圧力 : 1.0Pa
基板温度 : 450℃
【0048】
(実施例1)
実施例1では、膜構造体101として、Si/ZrO2/Pt/SRO/PZ/Ptのように成膜した。基板11は、Si(100)を用いた。なお圧電体膜14としてのPZT(30/70)を形成後、その膜厚を、リガク社製蛍光X線分析装置(AZX400)を用いてXRFで測定したところ、1.0μmであった。
【0049】
図8は、実施例1に係る膜構造体101について、XRD法によるθ-2θスペクトルを測定した結果を示す。
図8に示すようにPZT(30/70)はc軸に優先配向していることがわかった。このX線回折パターンに基づいて格子定数a及び格子定数cを求め、c/a軸比を計算したところ、1.046であった。
【0050】
図9は、膜構造体101の断面であって、圧電体膜14としてのPZT(30/70)を観察したSTEMによる格子像を示す。
図9に示すように圧電体膜14には、転移等の結晶格子の乱れもなく、単結晶であることが確認された。
【0051】
図10は、実施例1に係る膜構造体101における各層についてXRD法による極点図の測定を行い、各層の膜の面内の配向関係を調べた結果を示す。
図10(a)はSi(220)面の極点図であり、
図10(b)はZrO
2(220)面の極点図であり、
図10(c)はPt(220)の極点図であり、
図10(d)はPZT(202)の極点図である。
【0052】
図10(a)-(d)に示すように、4回対称性のピークが見られ、面内の配向が基板と揃うようにしてエピタキシャル成長していることがわかった。
【0053】
図11は、実施例1に係る圧電体膜14の分極の電圧依存性を示すグラフである。
図11に示すように、実施例1に係る圧電体膜14は、良好な特性を示しており、残留分極Prは、50μC/cm
2であり、抗電界はEcは、180kV/cmであった。
【0054】
(実施例2)
実施例2では、Si/ZrO2/Pt/SRO/BTOのように成膜した。基板11は、Si(100)を用いた。なお圧電体膜14としてのBTOを形成後、その膜厚をXRFで測定したところ、1.0μmであった。
【0055】
図12は、実施例2に係る膜構造体101について、XRD法によるθ-2θスペクトルを測定した結果を示す。
図12において上側の曲線はOut-of-Plane測定の結果を示し、下側の曲線はIn-Plane測定の結果を示す。
【0056】
図12に示すように、圧電体膜14は(001)面に優先配向していた。また、当該測定結果から、圧電体膜14のa軸長とc軸長を計算したところ、a軸が0.4012nmであり、c軸が0.4262nmであった。よってc/a比は1.044となり、バルクの数値である1.01と比してc軸長が伸びていることが分かった。
【0057】
図13は、実施例2に係る膜構造体101についてφスキャンによるX線回折パターンを示す図である。(a)は基板11であり、(b)は圧電体膜14のパターンである。
図13からも分かるように、圧電体膜14において基板11と同じ角度で4回対称軸を有しており、圧電体膜14までがCube-On-Cubeで形成されていることがわかった。
【0058】
図14は、実施例2に係る膜構造体101の断面であって、圧電体膜14としてのBTOを観察したSTEMによる格子像を示す。
図14に示すように圧電体膜14には、転移等の結晶格子の乱れもなく、単結晶であることが確認された。
【0059】
図15は、圧電体膜14の分極の電圧依存性を示すグラフである。
図15に示すように、実施例2に係る圧電体膜14は、強誘電体性を示した。
【0060】
図16は、圧電体膜14について、d33メーターにより圧電性を確認したものである。d33メーターは、リードテクノ(株)製のd33定数測定装置(型式:LTFA-01)であり、上部電極としての導電膜15が無くてもd33の測定が可能である。具体的には、膜構造体101に力を加えて電荷量の変化を積分回路で検出するものであり、圧電性を備えていれば
図16に示すように一定の時間間隔で力を加えたりあるいは印加をしないことでパルス形状の波形が観測できる。なおこのときのd33値は、24.88(pC/N)であった。
【0061】
(実施例3)
実施例3では、Si/ZrO2/Pt/SRO/BFOのように成膜した。基板11は、Si(100)を用いた。なお圧電体膜14としてのBFOを形成後、その膜厚をXRFで測定したところ、2.1μmであった。
【0062】
図17は、実施例3に係る膜構造体101について、XRD法によるθ-2θスペクトルを測定した結果を示している。
図17において上側の曲線はOut-of-Plane測定の結果を示し、下側の曲線はIn-Plane測定の結果を示す。
図17に示すように、圧電体膜14は(001)面に優先配向していた。
【0063】
図18は、φスキャンによるX線回折パターンを示す図である。(a)は基板11であり、(b)は圧電体膜14のパターンである。
図18からも分かるように、圧電体膜14の形成後において基板11と同じ角度で4回対称軸を有しており、圧電体膜14までがCube-On-Cubeで形成されていることがわかった。
【0064】
図19は、膜構造体101の断面であって、圧電体膜14としてのBFOを観察したSTEMによる格子像を示す。
図19に示すように圧電体膜14には、転移等の結晶格子の乱れもなく、単結晶であることが確認された。
【0065】
図20は、圧電体膜14の分極の電圧依存性を示すグラフである。
図20に示すように、実施例3に係る圧電体膜14は、良好な特性を示しており、残留分極Prは、60μC/cm
2であり、抗電界はEcは、100kV/cmであった。
【0066】
図21は、圧電体膜14について、d33メーターによる測定結果を示す図である。
図21に示すように、圧電体膜14が圧電性を備えることが分かった。なおこのときのd33値は、16.69(pC/N)であった。
【0067】
(実施例4)
実施例4では、Si/ZrO2/Pt/SRO/BLTのように成膜した。基板11は、Si(100)を用いた。なお圧電体膜14としてのBLTを形成後、その膜厚をXRFで測定したところ、1.0μmであった。
【0068】
図22は、実施例4に係る膜構造体101について、XRD法によるθ-2θスペクトルを測定した結果を示す。
図22はOut-of-Plane測定の結果を示す。
図22に示すように、圧電体膜14は(001)面に優先配向していた。
【0069】
図23は、φスキャンによるX線回折パターンを示す図である。(a)は基板11であり、(b)は圧電膜体14までが形成されたパターンである。
図24からも分かるように、圧電体膜14の形成後において基板11と同じ角度で4回対称軸を有しており、Cube-On-Cubeで形成されていた。
【0070】
図24は、膜構造体101の断面であって、圧電体膜14としてのBLTを観察したSTEMによる格子像を示す。
図24に示すように圧電体膜14には、転移等の結晶格子の乱れもなく、単結晶であることが確認された。なお、
図25において、W1はペロブスカイト層であり、W2は酸化ビスマス層である。
【0071】
図25は、圧電体膜14の分極の電圧依存性を示すグラフである。
図25に示すように、実施例4に係る圧電体膜14は、強誘電性を示し、残留分極Prは、4μC/cm
2であり、抗電界はEcは、4.5kV/cmであった。
【0072】
図26は、圧電体膜14について、d33メーターによる測定結果を示す図である。
図26に示すように、圧電体膜14が圧電性を備えることが分かった。なおこのときのd33値は、164.7(pC/N)であった。
【0073】
(実施例5)
実施例5では、Si/ZrO2/Pt/SRO/PZTのように成膜した。基板11は、Si(111)を用いた。なお圧電体膜14としてのPZTを形成後、その膜厚をXRFで測定したところ、1.0μmであった。なお、PZTの材料として、Pb/Zr/Ti(130/52/48)のターゲットを使用した。
【0074】
図27は、実施例5で作成したサンプルについて、XRD法によるθ-2θスペクトルを測定した結果を示す。
図27に示すように、基板11、バッファ膜12、導電膜13、圧電体膜14の全てが(111)面に配向していた。
【0075】
図28は、実施例5で作成したサンプルいついて、(111)面を回折面として測定したXRD法によるφスキャンによる結果を示す。
図28に示すように、基板11、導電膜13、圧電体膜14が3回対称性を示していた。なお、導電膜13のピークが60°ずれているが、エピタキシャル成長した単結晶膜であり、圧電体膜14もまた、エピタキシャル成長した単結晶膜である。
【0076】
(実施例6)
実施例6では、Si/ZrO2/Pt/SRO/PZTのように成膜した。基板11は、Si(110)を用いた。なお圧電体膜14としてのPZTを形成後、その膜厚をXRFで測定したところ、1.0μmであった。なお、PZTの材料として、Pb/Zr/Ti(130/52/48)のターゲットを使用した。
【0077】
図29は、実施例2で作成したサンプルについて、XRD法によるθ-2θスペクトルを測定した結果を示す。
図29に示すように、基板11、導電膜13が(110)面に優先配向していた。
【0078】
図30は、実施例6で作成したサンプルいついて、(111)面を回折面として測定したXRD法によるφスキャンによる結果を示す。
図30に示すように、基板11、導電膜13、圧電体膜14が2回対称性を示していた。これにより、圧電体膜14は、エピタキシャル成長した単結晶膜であるといえる。
【0079】
実施例1-6の結果からも分かるように、バッファ膜12は基板11の配向に従ってエピタキシャル成長し、その上に成膜される様々な圧電体膜14もエピタキシャル成長している。これは、以下に説明するように、バッファ膜12形成後に、その上に成膜される圧電材料に応じてバッファ膜12の結晶構造が変化するためであると考えられる。
【0080】
図31は、実施例1に係るPZT(30/70)を成膜したサンプルについて、バッファ膜12と導電膜13の断面をSTEM観察した結果を示す。
図31(a)に示すように、突出部12b間の長さは4.2nmであった。
図31(b)は、突出部12bを拡大した図である。
【0081】
図32は、実施例3に係るBFOを成膜したサンプルについて、バッファ膜12と導電膜13の断面をSTEM観察した結果を示す。
図32(a)に示すように、突出部12b間の長さは3.9nmであった。
図32(b)は、突出部12bを拡大した図である。
【0082】
図33は、実施例4に係るBLTを成膜したサンプルについて、バッファ膜12と導電膜13の断面をSTEM観察した結果を示す。
図33(a)に示すように、突出部12b間の長さは5.5nmであった。
図33(b)は、突出部12bを拡大した図である。
【0083】
図31-33に示すように、圧電体膜14の格子定数に応じて突出部12bの高さが変化している。例えば、
図32に示すBFOのa軸の格子定数は0.3971nmであり、
図31のPZTおよび
図33のBLTと比べると最も短い。このときは
図32(b)に示すように突出部12bの高さが6.3nmあり、圧電体膜14であるBFOの成膜過程において格子定数の短いBFOに合わせて突出部12bが上方に引き伸びていると考えられる。
【0084】
一方、
図33に示すBLTのa軸の格子定数は0.5411nmであり、
図31のPZTおよび
図32のBFOと比べると最も長い。このときは
図33(b)に示すように突出部12bの高さが2.8nmあり、圧電体膜14であるBLTの成膜過程において格子間隔の長いBLTに合わせて突出部12bが下方に押しつぶされていると考えられる。
【0085】
このように、圧電体膜14の種類に応じてバッファ膜12とりわけ突出部12bが変形しており、さらにバッファ膜12上の導電膜13と膜16も、その格子間隔が変動している。
図34(a)はBFOを成膜した時の導電膜13及び膜16の界面の断面を示す格子像であり、
図34(b)はBLTを成膜した時の導電膜13及び膜16の界面の断面を示す格子像である。
【0086】
図34(b)に示すようにBLTを成膜した時の導電膜13及び膜16の分子間隔は、
図34(a)に示すように、BFOを成膜した時の導電膜13及び膜16の分子間隔よりも長くなっている。
【0087】
(実施例7)
実施例7では、Si/ZrO2/Pt/SRO/AlNのように成膜した。基板11は、Si(100)を用いた。SRO膜までの製造条件は、実施例1-6と同じである。AlNは次の条件で成膜した。
装置 : RFマグネトロンスパッタリング装置
パワー : 200W
ガス : Ar
圧力 : 0.5Pa
成膜時間 : 60分
基板温度 : 200℃
【0088】
図35は、実施例7に係る膜構造体101について、AlNをXRD法によるφスキャンしたX線回折パターンを測定した結果を示す。
図35に示すように、AlN膜について6回対称性を示し、(0001)に単一配向し、単結晶化していることが分かった。なお、
図35に示す丸数字の1と2は面内で90°回転していることを示す。
【0089】
(実施例8)
実施例8では、Si/ZrO2/Pt/SRO/LiNbO3(LN)のように成膜した。基板11は、Si(100)を用いた。SRO膜までの製造条件は、実施例1-6と同じである。LNは次の条件で成膜した。
装置 : RFマグネトロンスパッタリング装置
パワー : 160W
ガス : Ar/O2比 2%
圧力 : 0.8Pa
成膜時間 : 9時間
基板温度 : 400℃
【0090】
図36は、実施例8に係る膜構造体101について、LNをXRD法によるφスキャンしたX線回折パターンを測定した結果を示す。
図35に示すように、LN膜について4回対称性を示し、(001)に単一配向し、単結晶化していることが分かった。
【0091】
以上の実施例1~8の結果からも分かるように、ジルコニウムを含むバッファ膜上にエピタキシャル成長したPt膜及びSRO膜を形成し、その上に圧電体膜を形成すると、単結晶化した圧電体膜を形成できることが分かった。
【符号の説明】
【0092】
11 基板
12 バッファ膜
12a 膜部
12b 突出部
13、15 導電膜
14 圧電体膜/超伝導体膜
16 膜
101 膜構造体