(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】6-(1-アクリロイルピペリジン-4-イル)-2-(4-フェノキシフェニル)ニコチンアミドの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 401/04 20060101AFI20240729BHJP
C07D 213/82 20060101ALI20240729BHJP
C07D 213/803 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
C07D401/04
C07D213/82
C07D213/803
(21)【出願番号】P 2021549695
(86)(22)【出願日】2020-02-24
(86)【国際出願番号】 CN2020076387
(87)【国際公開番号】W WO2020173407
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-12-16
(32)【優先日】2019-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516095419
【氏名又は名称】ベイジン・イノケア・ファーマ・テク・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Beijing InnoCare Pharma Tech Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】Bldg.8,No.8 Life Park Rd.,ZGC Life Science Park,Changping Dist.,Beijing,PRC,102206
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】チェン、シャンヤン
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-531893(JP,A)
【文献】特表2016-534056(JP,A)
【文献】特表2016-530231(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107226805(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 401/
C07D 213/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
6-(1-アクリロイルピペリジン-4-イル)-2-(4-フェノキシフェニル)ニコチンアミド(化合物I)の製造方法であって、
(a)INA、SMC及び第1のパラジウム含有触媒の混合物を60~140℃で加熱して、INBを取得する工程、
【化1】
[式中、PGは、tert-ブチルオキシカルボニル保護基である]
(b)INBを、水素雰囲気中、第2のパラジウム含有触媒の存在下で水素化して、INCを取得する工程、
【化2】
(c)
塩化水素ガスを添加してINC
を脱保護
し、IND塩酸塩を固体形態で取得する工程、
【化3】
(d)前記IND塩酸塩を、塩化アクリロイル又は塩化3-クロロプロパノイルと、塩基性条件で反応させて、6-(1-アクリロイルピペリジン-4-イル)-2-(4-フェノキシフェニル)ニコチンアミドを取得する工程
【化4】
を含む、方法。
【請求項2】
2,6-ジクロロニコチンアミド(SMA)、SMB及びパラジウム含有触媒の混合物を、塩基性溶媒又は溶媒混合物中、60~140℃で8~12時間にわたって加熱して、INAを製造する工程をさらに含む、請求項
1に記載の方法。
【化5】
【請求項3】
2,6-ジクロロニコチン酸を塩化オキサリル(COCl)
2と反応させ、続いて、有機溶媒中のアンモニア水と反応させて、SMAを取得する工程をさらに含む、請求項
2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、6-(1-アクリロイルピペリジン-4-イル)-2-(4-フェノキシフェニル)ニコチンアミドを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
6-(1-アクリロイルピペリジン-4-イル)-2-(4-フェノキシフェニル)ニコチンアミド(化合物I)は、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の置換ニコチンアミド阻害剤である。化合物Iは、がん、炎症及び自己免疫疾患を治療するために有用である(WO2015/028662)。WO2015/028662は、約50gの化合物Iを製造する方法を開示する。
【0003】
化合物Iを特に1kgを超える大規模で製造するための効率的で純度が制御された方法が必要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0004】
本発明は、6-(1-アクリロイルピペリジン-4-イル)-2-(4-フェノキシフェニル)ニコチンアミド(化合物I)を高純度及び良好な収率で製造するための方法に関する。この方法は、大規模生産(1kg超、好ましくは2kg超、4kg超又は10kg超)に好適である。この方法は、純度が90%以上、95%以上、98%以上又は99%以上の化合物Iを提供する。
【0005】
【0006】
第1の態様Aでは、化合物Iは、6-クロロ-2-(4-フェノキシフェニル)ニコチンアミド(INA)から製造され、tert-ブチルオキシカルボニル(t-Boc)を保護基として使用する。この方法は、以下の工程を含む:
(a)INA、SMC及び第1のパラジウム含有触媒の混合物を60~140℃で加熱して、INBを取得すること、
【0007】
【0008】
[式中、PGは、tert-ブチルオキシカルボニル保護基である]
(b)INBを、水素雰囲気中、第2のパラジウム含有触媒の存在下で水素化して、INCを取得すること、
【0009】
【0010】
(c)INCを、塩化水素を含む溶液で脱保護して、IND塩酸塩を固体形態で取得すること、
【0011】
【0012】
(d)IND塩酸塩を、塩化アクリロイル又は塩化3-クロロプロパノイルと、塩基性条件で反応させて、6-(1-アクリロイルピペリジン-4-イル)-2-(4-フェノキシフェニル)ニコチンアミドを取得すること。
【0013】
【0014】
工程(a)では、低酸素含有量(2%未満)の窒素雰囲気の反応容器を使用して、6-クロロ-2-(4-フェノキシフェニル)ニコチンアミド(INA)、4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-3,6-ジヒドロピリジン-1(2H)-カルボン酸tert-ブチルエステル(SMC)及び好適なパラジウム含有触媒を、塩基性有機水性溶媒混合物中で反応させて、粗製の5-カルバモイル-6-(4-フェノキシフェニル)-3',6'-ジヒドロ-[2,4'-ビピリジン]-1'(2'H)-カルボン酸tert-ブチルエステル(INB)を取得する。反応温度は、60~140℃、好ましくは60~100℃、より好ましくは75~85℃である。反応時間は、通常1~4時間である。Pdローディング(反応物質INAに対するPd触媒のモル比)は、0.5~5%である。より高いPdローディングは反応を加速させるが、コスト及び不純物も増大させる。粗製のINBは、カラムクロマトグラフィーを行うことなく、例えばテトラヒドロフラン及び酢酸エチルにより、再結晶及び/又はトリチュレーションによって更に精製し、少なくとも純度を90%とすることができる。
【0015】
好適なパラジウム含有触媒は、例えばトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd2(dba)3)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(Pd(PPh3)2Cl2)、[1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(Pd(dppf)Cl2)といった有機パラジウム化合物、及び無機パラジウム化合物を含み、例えばPh3P、Ph2Cy及びCy3P-HBF4のような種々のリガンドを有するPd(OAc)2が含まれる。
【0016】
工程(b)では、INBの有機溶液を水素雰囲気の反応容器内で好適なパラジウム含有触媒によって触媒水素化して、粗製の4-(5-カルバモイル-6-(4-フェノキシフェニル)-ピリジン-2-イル)ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(INC)を取得する。反応温度は、15~50℃、好ましくは20~45℃である。反応時間は、通常2~10時間である。パラジウム含有触媒は、Pd/C又はPd(OH)2/C、好ましくは、より方法に好都合なPd(OH)2/Cとすることができる。
【0017】
工程(c)では、塩化水素ガス又は塩化水素の溶液を、INCを含有する有機溶液に添加し、10~40℃で4~9時間にわたって撹拌して、保護基(t-Boc)を除去し、2-(4-フェノキシフェニル)-6-(ピペリジン-4-イル)ニコチンアミド(IND)塩酸塩を固体形態で形成させる。IND塩酸塩は反応媒体から沈殿し、ろ過又は遠心分離によって簡単に回収することができ、これは大規模生産に好適である。一態様では、塩化水素ガスをINCの溶液にバブリングする。別の態様では、塩化水素の有機溶液(例.酢酸エチル又はエタノール中の塩化水素)をINCの有機溶液(例.エタノール又はジクロロメタン中のINC)に添加する、又はINCの有機溶液を塩化水素の有機溶液に添加する。固体のIND塩酸塩を酢酸エチルでトリチュレーションして、少なくとも純度90%、好ましくは少なくとも純度95%とすることができる。
【0018】
工程(d)では、IND塩酸塩を、塩化アクリロイルと、塩基性溶液(pH8~14、例えば、重炭酸塩溶液HCO3
-、炭酸塩溶液CO3
-2、リン酸塩溶液PO4
-3及び水酸化物溶液OH-)中、低温(0~8℃又は2~6℃)で反応させて、不純物形成を低減させ、化合物Iを取得する。溶媒は、水を加えた又は加えていない有機溶媒(例.THF又はジクロロメタン)とすることができる。反応時間は、通常1~5時間又は1~3時間である。あるいは、工程(d)では、IND塩酸塩を、最初に塩化3-クロロプロパノイルと中程度の塩基性溶液(pH10~12、例えば、炭酸塩溶液又はリン酸塩溶液)中で反応させて中間体INEを形成し、次いで、pHを14に増大させて強塩基性溶液(例.水酸化物溶液)として、化合物Iを形成させる。溶媒は、水を加えた又は加えていない有機溶媒(例.THF又はジクロロメタン)とすることができる。
【0019】
【0020】
化合物Iを、THF/水でトリチュレーションによって更に精製して純度を改善し、少なくとも純度90%、好ましくは少なくとも純度95%とすることができる。
【0021】
第2の態様Bでは、化合物Iは、6-クロロ-2-(4-フェノキシフェニル)ニコチン酸エステル(INA’)から製造され、方法は、t-Bocを保護基として使用する。方法は、以下の工程を含む:
(a)INA’、SMC及び第1のパラジウム含有触媒の混合物を60~140℃で加熱して、INB’を取得すること、
【0022】
【0023】
[式中、
Rは、H又はC1~4アルキルであり、
PGは、tert-ブチルオキシカルボニル保護基である]
(b)INB’を、RがHである場合、最初に塩化オキサリル、次いでアンモニアで処理することによって、又はRがC1~4アルキルである場合、アンモニアと反応させることによって、アミド化して、INBを取得すること、
【0024】
【0025】
(c)INBを、水素雰囲気中、第2のパラジウム含有触媒の存在下で水素化して、INCを取得すること、
(d)INCを、塩化水素を含む溶液で脱保護して、IND塩酸塩を固体形態で取得すること、及び
(e)IND塩酸塩を、塩化アクリロイル又は塩化3-クロロプロパノイルと、塩基性条件で反応させて、化合物Iを取得すること。
【0026】
態様Bは、以下を除いて態様Aと同様である。態様Bでは、出発材料はINA’(酸又はエステル)であり、INA(アミド)ではない。工程(a)の生成物はINB’(酸又はエステル)であり、これは、水素化を行う前にアミド化してINBとする必要がある。工程(b)では、RがHである場合、INB’を最初に塩化オキサリルにより、有機溶媒(例.THF)中、15~50℃で2~10時間にわたって処理して、塩化アシル中間体を得、次いでこれを、20~35%(w/w)アンモニア水と、15~50℃で1~5時間にわたって反応させる。工程(b)では、RがC1~4アルキルである場合、有機溶液(例.THF)中のINB’を、20~35%(w/w)アンモニア水により15~75℃で4~20時間にわたって処理する。
【0027】
第3の態様Cでは、化合物Iは、6-クロロ-2-(4-フェノキシフェニル)ニコチンアミド(INA)から製造され、ベンジル又はカルボキシベンジルを保護基として使用する。方法は、以下の工程を含む:
(a)INA、SMC’及び第1のパラジウム含有触媒の混合物を60~140℃で加熱して、INBを取得すること、
【0028】
【0029】
[式中、PG1は、ベンジル保護基又はカルボキシベンジル保護基である]
(b)INBを、水素雰囲気中、第2のパラジウム含有触媒の存在下で水素化して、INDを取得すること、
【0030】
【0031】
(c)INDを、塩化アクリロイル又は塩化3-クロロプロパノイルと、塩基性条件で反応させて、6-(1-アクリロイルピペリジン-4-イル)-2-(4-フェノキシフェニル)ニコチンアミドを取得すること。
【0032】
態様Cは、態様Cが工程(a)における試薬としてベンジル保護基又はカルボキシベンジル保護基という異なる保護基を使用することを除いて、態様Aと同様である。そのような保護基は、水素化中は安定しておらず、工程(b)中に脱保護されてINDを形成する。次いで、塩基性条件で、INDを塩化アクリロイル又は塩化3-クロロプロパノイルと反応させて、化合物Iを形成することができる。任意に、工程(b)の後、塩化水素を含む溶液をINDに添加して、IND塩酸塩を固体形態で形成し、次いで、それを塩化アクリロイル又は塩化3-クロロプロパノイルと反応させることができる。
【0033】
第4の態様Dでは、化合物Iは、6-クロロ-2-(4-フェノキシフェニル)ニコチン酸エステル(INA’)から製造され、ベンジル又はカルボキシベンジルを保護基として使用する。方法は、以下の工程を含む:
(a)INA’、SMC’及び第1のパラジウム含有触媒の混合物を60~140℃で加熱して、INB’を取得すること、
【0034】
【0035】
[式中、
Rは、H又はC1~4アルキルであり、
PG1は、ベンジル保護基又はカルボキシベンジル保護基である]
(b)INB’を、RがHである場合、最初に塩化オキサリル、次いでアンモニアで処理することによって、又はRがC1~4アルキルである場合、アンモニアと反応させることによって、アミド化して、INBを取得すること、
【0036】
【0037】
(c)INBを、水素雰囲気中、第2のパラジウム含有触媒の存在下で水素化して、INDを取得すること、
(d)INDを、塩化アクリロイル又は塩化3-クロロプロパノイルと、塩基性条件で反応させて、6-(1-アクリロイルピペリジン-4-イル)-2-(4-フェノキシフェニル)ニコチンアミドを取得すること。
【0038】
態様Dは、以下を除いて態様Cと同様である。態様Dでは、出発材料はINA’(酸又はエステル)であり、INA(アミド)ではない。工程(a)の生成物はINB’(酸又はエステル)であり、これは、水素化を行う前にアミド化してINBとする必要がある。工程(b)では、RがHである場合、INB’を最初に塩化オキサリルにより、有機溶媒(例.THF)中、15~50℃で2~10時間にわたって処理して、塩化アシル中間体を得、次いでこれを、20~35%(w/w)アンモニア水と、15~50℃で1~5時間にわたって反応させる。工程(b)では、RがC1~4アルキルである場合、有機溶液(例.THF)中のINB’を、20~35%(w/w)アンモニア水により15~75℃で4~20時間にわたって処理する。
【0039】
出発材料INAは、2,6-ジクロロニコチンアミド(SMA)、SMB及びパラジウム含有触媒の混合物を、塩基性溶媒又は溶媒混合物(例.炭酸ナトリウム又はカリウム、1,4-ジオキサン、ジメチルアセトアミド、エタノール/メタノール)中、60~140℃で8~12時間にわたって加熱することによって製造できる。
【0040】
【0041】
出発材料INA’は、2,6-ジクロロニコチン酸エステル(SMA’)、SMB及びパラジウム含有触媒の混合物を、塩基性溶媒又は溶媒混合物(例.炭酸ナトリウム又はカリウム、1,4-ジオキサン、ジメチルアセトアミド)中、60~140℃で8~12時間にわたって加熱することによって製造できる。
【0042】
【0043】
INA又はINA’の製造方法では、ボロン酸エステルであるSMBを使用する。SMBは、SMBがジカップリングの副反応を低減させ、塩素のレギオ選択性(位置選択性)を改善するという点で、対応するボロン酸よりも良好に作用する。粗製のINAを更にテトラヒドロフランでトリチュレーションし、純度を少なくとも90%に改善することができる。
【0044】
2,6-ジクロロニコチンアミド(SMA)は、商業的供給業者から入手することができる。あるいは、SMAは、2,6-ジクロロニコチン酸(SM1)を塩化オキサリル(COCl)2と10~30℃で4~12時間にわたって反応させ、続いて、有機溶媒中のアンモニア水と10~30℃で1~3時間にわたって反応させることによって製造することができる。
【0045】
2,6-ジクロロニコチン酸エステル(SMA’)は、商業的供給業者から入手することができる。
【0046】
本発明の方法は、良好な収率の化合物Iを提供する。INA又はINA’から化合物Iへの全収率は約55~70%であり、SMA又はSMA’から化合物Iは約30~50%である。
【0047】
以下の実施例は、本発明をさらに例示する。これらの例は、本発明を例示することが意図されているにすぎず、本発明の限定として解釈されるべきではない。
【実施例】
【0048】
実施例1~6をスキームAにまとめる。
【0049】
【0050】
実施例1 2,6-ジクロロニコチンアミド(SMA)の製造
窒素雰囲気の反応容器に、2,6-ジクロロニコチン酸(SM1、39.8kg、207モル)、DMF(1.9kg、26モル)及びTHF(189.9kg)を投入した。塩化オキサリル(36.0kg、283モル)をゆっくりと添加し、その間、15~25℃に維持した。添加後、反応物を同じ温度で8時間にわたって撹拌した。温度を50℃未満に保ちながら、体積が2.5~3.5Vに減少するまで、混合物を減圧下で濃縮した。次いで、混合物を20~30℃に冷却し、0~10℃に冷却したTHF(106.1kg)及びアンモニア水(180.0kg)の撹拌溶液に添加した。添加後、反応混合物を20~30℃に加温し、さらに1.5時間撹拌した。次いで、混合物を、留去物が生じなくなるまで、減圧下、50℃未満で濃縮した。得られたスラリーを15~25℃に冷却し、2~4時間撹拌し、遠心分離した。固体ケーキを水(40.4kg)で洗浄し、メチルtert-ブチルエーテル(148.5kg)と混合した。得られた混合物を45~55℃に加熱し、3~5時間にわたって撹拌した。次いで、これを20~30℃に冷却し、1~3時間にわたって撹拌し、遠心分離した。固体ケーキをメチルtert-ブチルエーテル(6.8kg)で洗浄し、減圧下(-0.080MPa未満)、35~45℃で16時間にわたって乾燥させて、SMA(30.48kg、収率77%、純度99.6%)を得た。
【0051】
実施例2 6-クロロ-2-(4-フェノキシフェニル)ニコチンアミド(INA)の製造
エタノール(120.0kg)及びメタノール(36.3kg)中のSMB(58.7kg、198.2モル)の溶液に、SMA(30.0kg、157モル)及び炭酸ナトリウム(66.6kg、628モル)を添加し、得られた混合物を窒素ガスで3回パージした。次いで、Pd2(dba)3(トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、4.32kg、4.7モル)を添加し、2~5分間にわたって窒素ガスをバブリングさせた。反応混合物を75~85℃に加熱し、12時間にわたって撹拌した。次いで、混合物を15~25℃に冷却し、4~6時間にわたって撹拌し、ろ過した。ろ過ケーキをエタノール(30.3kg)に10~20分間にわたって浸漬し、ろ過した。ろ過ケーキをTHF(268.4kg)に溶解し、45~55℃に加熱し、2~4.5時間にわたって撹拌した。混合物を20~30℃に冷却しろ過した。ろ液を回収した。ろ過ケーキをTHF(62.4kg)に10~20分間浸漬し、ろ過した。ろ液を回収した。ろ過ケーキをTHF(60.3kg)に10~20分間にわたってさらに浸漬し、ろ過した。ろ液を回収し、上記の2つのバッチと合わせ、減圧下、50℃未満で濃縮した。残留物にエタノール(60.1kg)を添加し、減圧下、50℃未満で濃縮した。残留物に別のバッチのエタノール(60.4kg)を添加し、減圧下、50℃未満で濃縮した。残留物にエタノール(90.1kg)を添加し、75~85℃に加熱し、1.5~2.5時間にわたって撹拌した。得られた混合物を15~25℃に冷却し、4~6時間にわたって撹拌し、遠心分離した。固体ケーキをエタノール(30.1kg)で洗浄し、減圧下(-0.080MPa未満)、35~45℃で16時間にわたって乾燥させて、INA(39.23kg、収率77%、純度93.1%)を得た。
【0052】
実施例3 5-カルバモイル-6-(4-フェノキシフェニル)-3',6'-ジヒドロ-[2,4'-ビピリジン]-1'(2'H)-カルボン酸tert-ブチルエステル(INB)の製造
窒素雰囲気の反応容器に、INA(31.7kg、90.7モル、純度93.1%)、4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-3,6-ジヒドロピリジン-1(2H)-カルボン酸tert-ブチルエステル(30.8kg、99.7モル)、炭酸ナトリウム(25.1kg、237モル)、エタノール(118.7kg)及び水(148.2kg)を投入した。酸素含有量が1.0%未満になるまで、反応容器に窒素ガスをバブリングさせた。次いで、Pd(PPh3)2Cl2(1.18kg、1.68モル)を添加した。反応混合物を75~85℃に加熱し、2.5時間にわたって撹拌した。15~25℃に冷却した後、反応混合物を1~3時間にわたって撹拌し、ろ過した。ろ過ケーキをエタノール(26.2kg)、続いて水(35.8kg)で洗浄し、THF(261.7kg)に溶解し、45~55℃で2~4時間にわたって撹拌した。次いで、溶液を20~30℃に冷却し、ろ過した。ろ液を回収した。ろ過ケーキをTHFで2回洗浄し(それぞれ、59.3kgのTHF及び59.7kgのTHFを使用)、ろ液を回収した。ろ液の3つのバッチを合わせ、60℃未満で濃縮した。残留物に酢酸エチル(148.1kg)を添加し、60℃未満で濃縮した。次いで、別のバッチの酢酸エチル(147.5kg)を添加し、混合物を60℃未満で濃縮した。取得した残留物に酢酸エチル(147.5kg)を添加し、65~75℃に加熱し、2~4時間にわたって撹拌した。次いで、混合物を15~25℃に冷却し、2~4時間にわたって撹拌し、遠心分離した。固体ケーキを酢酸エチル(59.0kg)で洗浄し、減圧下(-0.080MPa未満)、35~45℃で12~16時間にわたって乾燥させて、INB(30.44kg、収率71%、純度98.7%)を得た。
【0053】
実施例4 4-(5-カルバモイル-6-(4-フェノキシフェニル)-ピリジン-2-イル)ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(INC)の製造
窒素雰囲気の反応容器に、Pd(OH)2/C(2.03kg、20%)及びTHF(32.0kg)を投入し、5~10分間にわたって撹拌した。次いで、THF(47kg)中のINB(14.85kg、31.5モル)の溶液を添加した。更なるTHF(32.0kg)を添加し、反応混合物を窒素ガスで3回パージし、次いで、水素ガスで3回パージし、その間、系の温度を20~25℃に保った。反応混合物を35~45℃に加熱し、0.10~0.20MPaの水素ガス圧力下、4時間にわたって撹拌した。次いで、混合物をろ過し、ろ過ケーキをTHFで2回洗浄した(30kg×2)。ろ液の3つのバッチを合わせて、粗製のINCの溶液(181.5kg)を得た。2つの別個の反応バッチ(合計で30.5kgの純粋なINBを使用)を合わせて、THF中INCの溶液(365.3kg)を得、これに活性炭(3.00kg)を添加し、45~55℃に加熱し、1~3時間にわたって撹拌した。次いで、混合物を20~30℃に冷却し、珪藻土(15.2kg)でろ過し、THFで2回洗浄した(それぞれ、62.2kg及び61.1kgのTHFを使用)。ろ液の3つのバッチを合わせ、減圧下、50℃未満で濃縮した。残留物にエタノール(244.0kg)を添加し、減圧下、50℃未満で濃縮した。さらなるエタノール(246.1kg)を添加し、得られた混合物を、減圧下、50℃未満で濃縮した。残留物に酢酸エチル(262.3kg)及びエタノール(43.5kg)を添加し、全ての固体が溶解するまで20~55℃で撹拌して、INCの溶液を得た。
【0054】
実施例5 2-(4-フェノキシフェニル)-6-(ピペリジン-4-イル)ニコチンアミド(IND)の製造
酢酸エチル(262.3kg)及びエタノール(43.5kg)中のINCの上記の溶液を、窒素ガスで3回パージした。次いで、塩化水素ガス(11.7kg)を溶液にバブリングし、反応混合物を10~40℃で7時間にわたって撹拌した。混合物を15~25℃に冷却し、1~3時間にわたって撹拌し、遠心分離した。固体ケーキを酢酸エチル(60.8kg)で洗浄し、減圧下(-70KPa未満)、30~50℃で24時間にわたって乾燥させて、IND(26.3kg、塩酸塩、収率99%、純度99.4%)を得た。
【0055】
実施例6 6-(1-アクリロイルピペリジン-4-イル)-2-(4-フェノキシフェニル)ニコチンアミド(INF)の製造
窒素雰囲気の反応容器に、IND(10.0kg、24.4モル)、THF(105.5kg)及び水(125.4kg)を投入し、混合物を15~25℃で20~40分間にわたって撹拌した。次いで、炭酸水素ナトリウム(10.3kg、123モル)を20~40分以内に添加した。反応混合物を-2~6℃に冷却し、塩化アクリロイル(3.8kg、42.0モル)を添加し、1~3時間にわたって撹拌した。HPLCはINDが全て消費されるとは限らないことを示したため、さらなる塩化アクリロイルを添加し、完了まで反応混合物を撹拌し続けた(0.68kgの塩化アクリロイルを3つのバッチで添加し、反応は16時間持続させた)。次いで、混合物を5~20℃に加温し、水(98.9kg)を添加し、20~40分間にわたって撹拌し、ろ過した。ろ過ケーキを水(20kg)で洗浄し、別のバッチの水(100.8kg)と混合し、15~25℃で1~2時間にわたって撹拌した。混合物をろ過した。ろ過ケーキを水(21.2kg)、続いてエタノール(5.0kg)で洗浄した。次いで、ろ過ケーキをジクロロメタン(200.6kg)に溶解し、40~45℃に加熱し、溶液が透明になるまで撹拌した。15~25℃に冷却した後、溶液に塩化水素溶液(300.7kg、0.18%)を添加し、10~20分間にわたって撹拌した。2つの層を分離した。有機相を、水で2回(それぞれ、51.0kgの水及び50.2kgの水を使用)、炭酸ナトリウム水溶液(0.42%、pH=8~9に調整するため)、続いて水(50.0kg)で洗浄した。有機相を減圧下で濃縮した。残留物にエタノール(100.0kg)を添加し、減圧下、45℃未満で濃縮した。残留物にエタノール(80.0kg)をさらに添加し、15~25℃で1~2時間にわたって撹拌し、ろ過した。ろ過ケーキをエタノールで洗浄し、減圧下、20~30℃で14時間にわたって乾燥させて、INF(7.47kg、収率72%、純度99.5%)を得た。
【0056】
ここで、本発明並びにそれを作製及び使用する様式及び方法を、それが属する分野の如何なる当業者にもそれを作製及び使用することを可能にするような、完全、明確、簡潔及び正確な用語で記述する。前述は本発明の好ましい態様を記述するものであり、特許請求の範囲で明記されるとおりの本発明の範囲から逸脱することなく、その中で修正が為されてもよいことを理解されたい。発明とみなされる主題を特に指摘し明瞭に特許請求するために、以下の特許請求の範囲が本明細書を結論付ける。
以下に、本願の出願当初の請求項を実施の態様として付記する。
[1] 6-(1-アクリロイルピペリジン-4-イル)-2-(4-フェノキシフェニル)ニコチンアミド(化合物I)の製造方法であって、
(a)INA、SMC及び第1のパラジウム含有触媒の混合物を60~140℃で加熱して、INBを取得する工程、
【化16】
[式中、PGは、tert-ブチルオキシカルボニル保護基である]
(b)INBを、水素雰囲気中、第2のパラジウム含有触媒の存在下で水素化して、INCを取得する工程、
【化17】
(c)INCを、塩化水素を含む溶液で脱保護して、IND塩酸塩を固体形態で取得する工程、
【化18】
(d)前記IND塩酸塩を、塩化アクリロイル又は塩化3-クロロプロパノイルと、塩基性条件で反応させて、6-(1-アクリロイルピペリジン-4-イル)-2-(4-フェノキシフェニル)ニコチンアミドを取得する工程
【化19】
を含む、方法。
[2] 6-(1-アクリロイルピペリジン-4-イル)-2-(4-フェノキシフェニル)ニコチンアミド(化合物I)の製造方法であって、
(a)INA’、SMC及び第1のパラジウム含有触媒の混合物を60~140℃で加熱して、INB’を取得する工程、
【化20】
[式中、
Rは、H又はC
1~4
アルキルであり、
PGは、tert-ブチルオキシカルボニル保護基である]
(b)INB’を、RがHである場合、最初に塩化オキサリル、次いでアンモニアで処理することによって、又はRがC
1~4
アルキルである場合、アンモニアと反応させることによって、アミド化して、INBを取得する工程、
【化21】
(c)INBを、水素雰囲気中、第2のパラジウム含有触媒の存在下で水素化して、INCを取得する工程、
【化22】
(d)INCを、塩化水素を含む溶液で脱保護して、IND塩酸塩を固体形態で取得する工程、
【化23】
(e)前記IND塩酸塩を、塩化アクリロイル又は塩化3-クロロプロパノイルと、塩基性条件で反応させて、6-(1-アクリロイルピペリジン-4-イル)-2-(4-フェノキシフェニル)ニコチンアミドを取得する工程
【化24】
を含む、方法。
[3] 6-(1-アクリロイルピペリジン-4-イル)-2-(4-フェノキシフェニル)ニコチンアミド(化合物I)の製造方法であって、
(a)INA、SMC’及び第1のパラジウム含有触媒の混合物を60~140℃で加熱して、INBを取得する工程、
【化25】
[式中、PG
1
は、ベンジル保護基又はカルボキシベンジル保護基である]
(b)INBを、水素雰囲気中、第2のパラジウム含有触媒の存在下で水素化して、INDを取得する工程、
【化26】
(c)前記INDを、塩化アクリロイル又は塩化3-クロロプロパノイルと、塩基性条件で反応させて、6-(1-アクリロイルピペリジン-4-イル)-2-(4-フェノキシフェニル)ニコチンアミドを取得する工程
【化27】
を含む、方法。
[4] 6-(1-アクリロイルピペリジン-4-イル)-2-(4-フェノキシフェニル)ニコチンアミド(化合物I)の製造方法であって、
(a)INA’、SMC’及び第1のパラジウム含有触媒の混合物を60~140℃で加熱して、INB’を取得する工程、
【化28】
[式中、
Rは、H又はC
1~4
アルキルであり、
PG
1
は、ベンジル保護基又はカルボキシベンジル保護基である]
(b)INB’を、RがHである場合、最初に塩化オキサリル、次いでアンモニアで処理することによって、又はRがC
1~4
アルキルである場合、アンモニアと反応させることによって、アミド化して、INBを取得する工程、
【化29】
(c)INBを、水素雰囲気中、第2のパラジウム含有触媒の存在下で水素化して、INDを取得する工程、
【化30】
(d)前記INDを、塩化アクリロイル又は塩化3-クロロプロパノイルと、塩基性条件で反応させて、6-(1-アクリロイルピペリジン-4-イル)-2-(4-フェノキシフェニル)ニコチンアミドを取得する工程
【化31】
を含む、方法。
[5] 2,6-ジクロロニコチンアミド(SMA)、SMB及びパラジウム含有触媒の混合物を、塩基性溶媒又は溶媒混合物中、60~140℃で8~12時間にわたって加熱して、INAを製造する工程をさらに含む、[1]又は[3]に記載の方法。
【化32】
[6] 2,6-ジクロロニコチン酸を塩化オキサリル(COCl)
2
と反応させ、続いて、有機溶媒中のアンモニア水と反応させて、SMAを取得する工程をさらに含む、[5]に記載の方法。
[7] 2,6-ジクロロニコチン酸エステル(SMA’)、SMB及びパラジウム含有触媒の混合物を、塩基性溶媒又は溶媒混合物中、60~140℃で8~12時間にわたって加熱して、INA’を製造する工程をさらに含む、[2]又は[4]に記載の方法。
【化33】