IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ワイエムティー カンパニー リミテッドの特許一覧

特許7527677キャリア箔付き金属箔、その製造方法、およびそれを含む積層体
<>
  • 特許-キャリア箔付き金属箔、その製造方法、およびそれを含む積層体 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】キャリア箔付き金属箔、その製造方法、およびそれを含む積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/04 20060101AFI20240729BHJP
   B32B 7/06 20190101ALI20240729BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20240729BHJP
   B32B 15/20 20060101ALI20240729BHJP
   C25D 3/56 20060101ALI20240729BHJP
   C25D 5/12 20060101ALI20240729BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20240729BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
B32B15/04 Z
B32B7/06
B32B15/08 J
B32B15/20
C25D3/56
C25D5/12
C25D7/00 J
H05K1/03 630H
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022532001
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-07
(86)【国際出願番号】 KR2020014066
(87)【国際公開番号】W WO2021107397
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-07-20
(31)【優先権主張番号】10-2019-0154286
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514122502
【氏名又は名称】ワイエムティー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ヒョン ウ
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ポ ムク
(72)【発明者】
【氏名】チュン、ソン ウク
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/080052(WO,A1)
【文献】特開2016-191086(JP,A)
【文献】国際公開第2015/170715(WO,A1)
【文献】特開2015-010274(JP,A)
【文献】国際公開第2017/150284(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0282500(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C25D 1/00-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア箔と、
前記キャリア箔上に提供された合金層と、
前記合金層上に提供された有機層と、
前記有機層上に提供された金属層と、
を含む、キャリア箔付き金属箔(carrier foil-attached metal foil)であって、
前記合金層が、ニッケル(Ni)を含有する第1の成分およびモリブデン(Mo)を含有する第2の成分を含み、前記第1の成分aおよび前記第2の成分bの比a:bが、40~80:60~20の重量比であり、
前記有機層が、2個以上の窒素原子を含有する環状化合物を含む、
キャリア箔付き金属箔。
【請求項2】
前記環状化合物が、ベンゾトリアゾール、メルカプトベンズイミダゾール、メルカプトベンゾトリアゾール、ナトリウムメルカプトベンゾトリアゾール、3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、トリアゾール-5-カルボン酸、1-メチル-3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、および1-フェニル-5-メルカプトテトラゾールからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のキャリア箔付き金属箔。
【請求項3】
前記合金層が、コバルト(Co)、リン(P)、マンガン(Mn)、および鉄(Fe)からなる群より選択される少なくとも1種を含有する第3の成分をさらに含む、請求項1に記載のキャリア箔付き金属箔。
【請求項4】
前記第1の成分a、前記第2の成分b、および前記第3の成分cの比a:b:cが、30~60:25~50:1~40の重量比である、請求項3に記載のキャリア箔付き金属箔。
【請求項5】
キャリア箔を準備することと、
前記キャリア箔上に合金層を形成することと、
前記合金層上に有機層を形成することと、
前記有機層上に金属層を形成することと、
を含む、キャリア箔付き金属箔(carrier foil-attached metal foil)の製造方法であって、
前記合金層が、ニッケル(Ni)を含有する第1の成分およびモリブデン(Mo)を含有する第2の成分を含むめっき溶液で形成され、前記第1の成分aおよび前記第2の成分bの比a:bが、40~80:60~20の重量比であり、
前記有機層が、2個以上の窒素原子を含有する環状化合物を含むコーティング溶液で形成される、
キャリア箔付き金属箔の製造方法。
【請求項6】
前記環状化合物の含有量が、100重量部の前記コーティング溶液に対して0.1~2重量部である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記めっき溶液が、コバルト(Co)、リン(P)、マンガン(Mn)、および鉄(Fe)からなる群より選択される少なくとも1種を含有する第3の成分をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のキャリア箔付き金属箔と、
前記キャリア箔付き金属箔上に提供された樹脂基材と、
を含む、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリア箔付き金属箔(carrier foil-attached metal foil)、その製造方法、および該金属箔を含むプリント回路基板を形成するための積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子部品の高度な集積化に伴い、高密度の超微細配線パターンを有するプリント回路基板が求められている。そのようなプリント回路基板は、該プリント回路基板に含まれる金属箔上に高密度の超微細配線パターンを形成することによって製造することができる。
【0003】
しかしながら、プリント回路基板に含まれる金属箔の厚みが大きいと、配線パターンを形成する時にエッチング時間が長くなるため、形成された配線パターンの側壁の垂直性が崩れ、断線が発生するという問題が起こり得る。そのため、高密度の超微細配線パターンを有するプリント回路基板の製造には、比較的薄い金属箔(例えば、厚さ9μm以下の金属箔)が主に使用されてきた。ここで、薄い金属箔は機械的強度が弱いため、プリント回路基板の製造時に金属箔にしわが寄ったり曲がったりしやすい。この問題を補うために、キャリア箔が離型層(release layer)を介して金属箔の一方の表面に付着したキャリア箔付き金属箔が使用されてきた。
【0004】
キャリア箔付き金属箔を樹脂基材に接着させた後、キャリア箔付き金属箔から離型層およびキャリア箔を剥離することにより、プリント回路基板の基本構造を形成する。ここで、離型層およびキャリア箔を剥離する際に、金属箔が変形したり、金属箔上に不純物が残ったりすると、プリント回路基板の不良率(defect rate)が高くなる。したがって、金属箔の変形を防止しつつ、金属箔上に不純物が残らないように、離型層およびキャリア箔を剥離する際の剥離強度を安定化させることが求められる。
【0005】
離型層およびキャリア箔を剥離する際の剥離強度を安定化させるために、有機成分または金属成分を離型層に適用する試みが多数なされてきた。しかしながら、離型層およびキャリア箔を剥離する際に、金属箔が変形したり、金属箔上に不純物が残ったりするため、プリント回路基板に不良を引き起こす問題が依然として発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、金属箔からキャリア箔を剥離する際に、金属箔の変形および金属箔上に残る不純物を最小限に抑えることができるキャリア箔付き金属箔を提供する。
【0007】
さらに、本発明は、キャリア箔付き金属箔の製造方法を提供する。
【0008】
さらに、本発明は、キャリア箔付き金属箔を含むことにより優れた信頼性を有するプリント回路基板を形成するための積層体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様によれば、キャリア箔と;前記キャリア箔上に提供された合金層と;前記合金層上に提供された有機層と;前記有機層上に提供された金属層と、を含む、キャリア箔付き金属箔(carrier foil-attached metal foil)であって、前記合金層が、ニッケル(Ni)を含有する第1の成分およびモリブデン(Mo)を含有する第2の成分を含み、前記第1の成分aおよび前記第2の成分bの比a:bが、40~80:60~20の重量比であり、前記有機層が、2個以上の窒素原子を含有する環状化合物を含む、キャリア箔付き金属箔が提供される。
【0010】
本発明の別の態様によれば、キャリア箔を準備することと;前記キャリア箔上に合金層を形成することと;前記合金層上に有機層を形成することと;前記有機層上に金属層を形成することと、を含む、キャリア箔付き金属箔(carrier foil-attached metal foil)の製造方法であって、前記合金層が、ニッケル(Ni)を含有する第1の成分およびモリブデン(Mo)を含有する第2の成分を含むめっき溶液で形成され、前記第1の成分aおよび前記第2の成分bの比a:bが、40~80:60~20の重量比であり、前記有機層が、2個以上の窒素原子を含有する環状化合物を含むコーティング溶液で形成される、キャリア箔付き金属箔の製造方法が提供される。
【0011】
本発明のさらに別の態様によれば、上記キャリア箔付き金属箔と;前記キャリア箔付き金属箔上に提供された樹脂基材と、を含む、積層体が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るキャリア箔付き金属箔は、特定の比率でモリブデンおよびニッケルを含む合金層と、2個以上の窒素原子を含有する環状化合物を含む有機層で形成された離型層と、を含むので、金属箔からキャリア箔を剥離する際に、金属箔の変形を最小限に抑えつつ、不純物(例えば、合金層に由来する金属成分)が金属箔上に残るのを防ぐことが可能である。
【0013】
また、本発明に係るプリント回路基板を形成するための積層体は、上記キャリア箔付き金属箔を含むので、不良率が最低限に抑えられ、こうして本発明は優れた信頼性を有するプリント回路基板を形成するための積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明に係るキャリア箔付き金属箔の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の説明および特許請求の範囲において使用される用語および単語は、通常のまたは辞書的な意味に限定されると解釈されるべきではなく、発明者は自らの発明を可能な限り最良の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に基づいて、本発明の技術的思想にかなう意味および概念の範疇で解釈されるべきである。
【0016】
本発明は、合金層と、離型層として機能する有機層との特定の組成および構造を有するキャリア箔付き金属箔を提供する。具体的には、本発明は、合金層および有機層を金属層から剥離する前に適切な接着(bonding)強度(剥離強度)でキャリア箔に接着された合金層および有機層を維持することができ、金属層から合金層および有機層を剥離する際にスムーズに剥離することにより金属層の変形を最小限に抑えることができ、剥離後に金属層に不純物が残るのを防ぐことができるキャリア箔付き金属箔、キャリア箔付き金属箔の製造方法、ならびに、キャリア箔付き金属箔を含む積層体に関するものである。これらについて以下詳細に説明する。
【0017】
1.キャリア箔付き金属箔
本発明に係るキャリア箔付き金属箔は、キャリア箔、合金層、有機層、および金属層を含む。これらについて以下図1を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】
本発明に係るキャリア箔付属金属箔に含まれるキャリア箔10は、キャリア箔付き金属箔の移動中または使用中の金属層40の変形を防止するための支持層として機能し得る。キャリア箔10は、銅またはアルミニウムなどの金属で形成されていてもよく;或いは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、またはテフロンなどのポリマーで形成されていてもよい。
【0019】
キャリア箔10の厚さは、10~50μmであってもよい。キャリア箔10の厚さが上記の範囲内であると、支持層の役割を円滑に果たしつつ、キャリア箔付き金属箔が必要以上に厚くなるのを防ぐことができる。
【0020】
本発明に係るキャリア箔付き金属箔に含まれる合金層20は、キャリア箔10上に提供される第1の離型層であり、キャリア箔10と有機層30とを接着させ、キャリア箔10の成分が金属層40に拡散するのを防ぐ機能を果たし得る。
【0021】
合金層20は、ニッケル(Ni)を含有する第1の成分およびモリブデン(Mo)を含有する第2の成分を含み得る。具体的には、第1の成分はニッケルであり、ニッケルが合金層20に含まれるので、キャリア箔10の成分が金属層40に拡散および吸着するのを防ぐことができる。第2の成分はモリブデンであり、モリブデンが合金層20に含まれるので、有機層30に含まれる環状化合物が結合するサイト(site)を提供し、それにより、合金層20と有機層30との間に求められる接着強度(剥離強度)を提供する。
【0022】
第1の成分aおよび第2の成分bの比a:bは、40~80:60~20の範囲内であり得、具体的には、60~80:40~20の重量比であってもよい。第1の成分および第2の成分の比が上記の範囲内であると、キャリア箔10の成分が金属層40に拡散するのを防ぐことができ、こうして、不純物が金属層40に残らないようにキャリア箔10を剥離することができ、剥離の前後で求められる接着強度(剥離強度)を合金層20に付与することができる。さらに、樹脂基材に接着したプリント回路基板を形成するための積層体を製造するためにキャリア箔付き金属箔を200℃以上で熱処理したとしても、キャリア箔10、合金層20、および有機層30の間の接着強度(剥離強度)が安定して維持されるので、キャリア箔10をうまく剥離することができる。
【0023】
一方、合金層20は、コバルト(Co)、リン(P)、マンガン(Mn)、および鉄(Fe)からなる群より選択される少なくとも1種を含有する第3の成分をさらに含んでいてもよい。合金層20が第3の成分をさらに含むと、合金層20と有機層30との間の接着強度(剥離強度)を増加させることができ、キャリア箔付き金属箔を200℃以上で熱処理したとしても、接着強度(剥離強度)を安定して維持することができる。ここで、合金層20が第3の成分cをさらに含む場合、第1の成分a、第2の成分b、および第3の成分cの比a:b:cは、30~60:25~50:1~40の重量比であってもよい。
【0024】
そのような合金層20の厚さは、30nm~1μmであってもよい。合金層20の厚さが上記の範囲内であると、合金層20と有機層30とを安定して接着させつつ、求められる接着強度(剥離強度)を発揮することができる。
【0025】
本発明に係るキャリア箔付き金属箔に含まれる有機層30は、合金層20上に提供される第2の離型層であり、合金層20と金属層40とを接着させ、キャリア箔10の成分および合金層20の成分が金属層40に拡散するのを防ぐ機能を果たし得る。
【0026】
有機層30は、2個以上の窒素原子を含有する環状化合物を含み得る。具体的には、環状化合物は、ベンゾトリアゾール、メルカプトベンズイミダゾール、メルカプトベンゾトリアゾール、ナトリウムメルカプトベンゾトリアゾール、3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、トリアゾール-5-カルボン酸、1-メチル-3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、および1-フェニル-5-メルカプトテトラゾールからなる群より選択される少なくとも1種であってもよい。とりわけ、有機層30に含まれる環状化合物は、メルカプト基(-SH)(多くの非共有電子対に起因する窒素原子との高い結合強度)および3個以上の窒素原子が結合した、ナトリウムメルカプトベンゾトリアゾール、メルカプトベンゾトリアゾール、3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、1-メチル-3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、または1-フェニル-5-メルカプトテトラゾールであってもよい。環状化合物が有機層30に含まれるため、有機層30の構造を安定して維持することができ、それにより、キャリア箔10の成分または合金層20の成分が金属層40に拡散および吸着するのを防ぐことができる。
【0027】
有機層30の厚さは、1~50nmであってもよい。有機層30の厚さが上記の範囲内であると、有機層30と金属層40とを安定して接着させつつ、求められる接着強度(剥離強度)を発揮することができる。
【0028】
本発明に係るキャリア箔付き金属箔に含まれる金属層40は、プリント配線基板(printed wiring board)を製造するプロセスにおいて配線パターンを形成する工程を経ることにより、回路層として機能し得る。金属層40は銅で形成されていてもよい。
【0029】
金属層40の厚さは、0.1~5μmであってもよい。金属層40の厚さが上記の範囲内であると、微細孔(micropores)が発生するのを防ぎつつ、高密度の超微細配線パターンを実現することができる。
【0030】
本発明に係るキャリア箔付き金属箔において、キャリア箔10と合金層20との間の接着強度(剥離強度)Sおよび合金層20と有機層30との間の接着強度(剥離強度)Sは等しくてもよく、それぞれ、有機層30と金属層40との間の接着強度(剥離強度)Sより大きくてもよい(S、S>S)。有機層30と金属層40との間の接着強度(剥離強度)Sは、2~20gf/cmであってもよく、具体的には5~15gf/cmであってもよい。
【0031】
一方、本発明に係るキャリア箔付き金属箔は、金属層40上に提供される表面粗化層(surface roughening layer)50をさらに含んでいてもよい。表面粗化層50は、キャリア箔付き金属箔と樹脂基材を接着させることにより積層体を製造する際、キャリア箔付き金属箔と樹脂基材との間の接着強度を増加させる機能を果たし得る。表面粗化層50は銅を含んでいてもよい。表面粗化層50は、0.5~1μmの厚さを有するシード層と、1.0~2.0μmの厚さを有する被覆層とを含んでいてもよい。
【0032】
そのような表面粗化層50は、0.2~0.3μmの算術平均粗さRa、および、1.5~2.5μmの10点平均粗さ(ten-point average roughness)Rzを有していてもよい。表面粗化層50の粗さが上記の範囲内であると、キャリア箔付き金属箔と樹脂基材との間の高い接着強度を発揮することができる。
【0033】
さらに、本発明に係るキャリア箔付き金属箔は、キャリア箔10と合金層20との間に提供される拡散バリア層(図示せず)をさらに含んでいてもよい。拡散バリア層は、ニッケルおよびリンを含んでいてもよい。
【0034】
さらに、本発明に係るキャリア箔付き金属箔は、有機層30と金属層40との間に提供される酸化防止剤層(図示せず)をさらに含んでいてもよい。酸化防止剤層は、ニッケルおよびリンを含んでいてもよい。
【0035】
2.キャリア箔付き金属箔の製造方法
本発明は、キャリア箔付き金属箔の製造方法を提供する。これについて以下詳細に説明する。
【0036】
a)キャリア箔の準備
まず、キャリア箔を準備する。具体的には、銅もしくはアルミニウムで形成された金属箔膜;または、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、もしくはテフロンで形成されたポリマー薄膜をキャリア箔として準備することができる。
【0037】
b)合金層の形成
準備したキャリア箔上に合金層を形成する。合金層は、電気めっきまたは無電解めっきにより形成することができる。電気めっきまたは無電解めっきにおいて、ニッケル(Ni)を含有する第1の成分およびモリブデン(Mo)を含有する第2の成分を含むめっき溶液を使用することができる。
【0038】
ここで、第1の成分aおよび第2の成分bの比a:bは、40~80:60~20の重量比であり得る。第1の成分および第2の成分の比が上記の範囲内であると、キャリア箔、合金層、および有機層がうまく接着されて、キャリア箔の成分が金属層に拡散するのを防ぐことができる。
【0039】
一方、めっき溶液は、コバルト(Co)、リン(P)、マンガン(Mn)、および鉄(Fe)からなる群より選択される少なくとも1種を含有する第3の成分をさらに含んでいてもよい。
【0040】
c)有機層の形成
次に、形成した合金層上に有機層を形成する。有機層は、浸漬法、シャワー法、またはスプレー法などのコーティング法によって形成することができる。コーティング法では、2個以上の窒素原子を含有する環状化合物を含むコーティング溶液を使用することができる。
【0041】
環状化合物は、ベンゾトリアゾール、メルカプトベンズイミダゾール、メルカプトベンゾトリアゾール、ナトリウムメルカプトベンゾトリアゾール、3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、トリアゾール-5-カルボン酸、1-メチル-3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、および1-フェニル-5-メルカプトテトラゾールからなる群より選択される少なくとも1種であってもよい。とりわけ、環状化合物は、メルカプト基(-SH)(多くの非共有電子対に起因する窒素原子との高い結合強度)および3個以上の窒素原子が結合した、ナトリウムメルカプトベンゾトリアゾール、メルカプトベンゾトリアゾール、3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、1-メチル-3-メルカプト-1,2,4-トリアゾール、または1-フェニル-5-メルカプトテトラゾールであってもよい。
【0042】
この環状化合物の含有量は、コーティング溶液100重量部に対して、0.1~2重量部であってもよい。環状化合物の含有量が上記の範囲内であると、金属層に吸着する環状化合物の量が最適化され、それにより、接着強度(剥離強度)を増加させつつ外観が劣化するのを防止する。
【0043】
d)金属層の形成
次に、形成した有機層上に金属層を形成する。金属層は、電気めっきもしくは無電解めっきなどのめっき法;または、化学蒸着(CVC)、物理化学蒸着(PVC)、もしくはイオンプレーティングなどの蒸着法によって形成することができる。
【0044】
本発明に係るキャリア箔付き金属箔の製造方法は、金属層上に表面粗化層を形成することをさらに含んでもよい。表面粗化層は、一次電気めっき(シード層を形成する)および二次電気めっき(被覆層を形成する)のプロセスを経ることによって形成することができる。一次電気めっきは、25℃の温度および15ASDの電流密度の条件下、60~70g/Lの銅および150~170g/Lの硫酸を含有する電気めっき溶液を使用して実施することができる。二次電気めっきは、45℃の温度および15ASDの電流密度の条件下、220~240g/Lの銅および120~140g/Lの硫酸を含有する電気めっき溶液を使用して実施することができる。
【0045】
さらに、本発明に係るキャリア箔付き金属箔の製造方法は、キャリア箔と合金層との間に拡散バリア層を形成することをさらに含んでもよい。
【0046】
さらに、本発明に係るキャリア箔付き金属箔の製造方法は、有機層30と金属層40との間に酸化防止剤層を形成することをさらに含んでもよい。
【0047】
3.積層体
本発明は、キャリア箔付き金属箔と樹脂基材とを含む積層体を提供する。
【0048】
本発明に係る積層体に含まれるキャリア箔付き金属箔は、配線パターンが形成される回路層として機能し得る。このキャリア箔付き金属箔の説明については上記したものと同様なので省略する。
【0049】
本発明に係る積層体に含まれる樹脂基材は、絶縁層として機能する。樹脂基材は一般に知られており、無機繊維または有機繊維を樹脂に含浸させた構造を有し得る。樹脂は、ナフタレン系エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、リン系エポキシ樹脂、およびビスフェノールF型エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であってもよい。
【0050】
本発明に係る積層体は、プリント回路基板を形成するための積層体であり、該積層体が上記のキャリア箔付き金属箔を含むため、不良率が最小限に抑えられ、優れた信頼性を有するプリント回路基板を形成するための積層体として使用することができる。
【0051】
以下、本発明を実施例によってより詳細に説明する。しかしながら、以下の実施例は本発明を説明することを意図しており、本発明の範囲および趣旨の範囲内で種々の変更および改変を行うことができ、本発明の範囲がそれらに限定されないことは当業者にとって明白である。
【0052】
[実施例1]
18μmの厚さを有する銅箔で形成されたキャリア箔を5重量%の硫酸に沈め(immersed)、漬け込み(pickled)、続いて純水で洗浄した。洗浄したキャリア箔をニッケル(第1の成分)とモリブデン(第2の成分)とを含有するめっき溶液(50g/Lの硫酸ニッケル、60g/Lのモリブデン酸ナトリウム、および50g/Lのクエン酸を含有する水溶液)を用いて電気めっきして、200nmの厚さを有する合金層(ニッケル:モリブデン比=60:40の重量比)を形成した。この場合では、pH10以上を維持しながら、5A/dmで30秒間電気めっきを行った。
【0053】
合金層が形成されたキャリア箔を洗浄し、続いて、1重量部のナトリウムメルカプトベンゾトリアゾールおよび99重量部の純水を含有する30℃のコーティング溶液に30秒間浸漬して、合金層上に1~10nmの厚さを有する有機層を形成した。
【0054】
合金層および有機層が形成されたキャリア箔を洗浄し、続いて電気めっきして2μmの厚さを有する金属層(電解銅層)を形成して、キャリア箔付き金属箔を製造した。この場合では、150g/Lの銅濃度および100g/Lの遊離硫酸濃度を有する23℃の硫酸銅溶液が電気めっきに使用され、電流密度は5A/dmであった。
【0055】
[実施例2]
有機層を形成する際にナトリウムメルカプトベンゾトリアゾールの代わりにベンゾトリアゾールを使用したことを除いて、実施例1と同様のプロセスでキャリア箔付き金属箔を製造した。
【0056】
[実施例3]
有機層を形成する際にナトリウムメルカプトベンゾトリアゾールの代わりにメルカプトベンズイミダゾールを使用したことを除いて、実施例1と同様のプロセスでキャリア箔付き金属箔を製造した。
【0057】
[実施例4]
ニッケル:モリブデンの比が80:20の重量比になるようにめっき溶液の組成を調節して合金層を形成したことを除いて、実施例1と同様のプロセスでキャリア箔付き金属箔を製造した。
【0058】
[実施例5]
ニッケル:モリブデンの比が40:60の重量比になるようにめっき溶液の組成を調節して合金層を形成したことを除いて、実施例1と同様のプロセスでキャリア箔付き金属箔を製造した。
【0059】
[実施例6]
ニッケルおよびモリブデンを含有するめっき溶液の代わりに、ニッケル(第1の成分)、モリブデン(第2の成分)、およびコバルト(第3の成分)を含有するめっき溶液を用いて合金層(ニッケル:モリブデン:コバルトの比=50:35:15の重量比)を形成したことを除いて、実施例1と同様のプロセスでキャリア箔付き金属箔を製造した。
【0060】
[実施例7]
ニッケルおよびモリブデンを含有するめっき溶液の代わりに、ニッケル(第1の成分)、モリブデン(第2の成分)、およびリン(第3の成分)を含有するめっき溶液を用いて合金層(ニッケル:モリブデン:リンの比=55:42:3の重量比)を形成したことを除いて、実施例1と同様のプロセスでキャリア箔付き金属箔を製造した。
【0061】
[実施例8]
ニッケルおよびモリブデンを含有するめっき溶液の代わりに、ニッケル(第1の成分)、モリブデン(第2の成分)、およびマンガン(第3の成分)を含有するめっき溶液を用いて合金層(ニッケル:モリブデン:マンガンの比=40:35:25の重量比)を形成したことを除いて、実施例1と同様のプロセスでキャリア箔付き金属箔を製造した。
【0062】
[実施例9]
ニッケルおよびモリブデンを含有するめっき溶液の代わりに、ニッケル(第1の成分)、モリブデン(第2の成分)、(第3の成分)、およびリン(第4の成分)を含有するめっき溶液を用いて合金層(ニッケル:モリブデン:鉄:リンの比=43:40:15:2の重量比)を形成したことを除いて、実施例1と同様のプロセスでキャリア箔付き金属箔を製造した。
【0063】
[比較例1]
有機層を形成しなかったことを除いて、実施例1と同様のプロセスでキャリア箔付き金属箔を製造した。
【0064】
[比較例2]
ニッケルおよびモリブデンを含有するめっき溶液の代わりに、ニッケルおよび鉄を含有するめっき溶液を用いて有機層(ニッケル:鉄の比=70:30の重量比)を形成したことを除いて、実施例1と同様のプロセスでキャリア箔付き金属箔を製造した。
【0065】
[比較例3]
ニッケルおよびモリブデンを含有するめっき溶液の代わりに、ニッケルおよびコバルトを含有するめっき溶液を用いて有機層(ニッケル:コバルトの比=70:30の重量比)を形成したことを除いて、実施例1と同様のプロセスでキャリア箔付き金属箔を製造した。
【0066】
[比較例4]
ニッケルおよびモリブデンを含有するめっき溶液の代わりに、鉄およびモリブデンを含有するめっき溶液を用いて有機層(鉄:モリブデンの比=70:30の重量比)を形成したことを除いて、実施例1と同様のプロセスでキャリア箔付き金属箔を製造した。
【0067】
[比較例5]
ニッケル:モリブデンの比が85:15の重量比になるようにめっき溶液の組成を調節して合金層を形成したことを除いて、実施例1と同様のプロセスでキャリア箔付き金属箔を製造した。
【0068】
[比較例6]
ニッケル:モリブデンの比が35:65の重量比になるようにめっき溶液の組成を調節して合金層を形成したことを除いて、実施例1と同様のプロセスでキャリア箔付き金属箔を製造した。この場合では、ニッケル:モリブデンの比が35:65の重量比であったため、電気めっきがうまく行われず、合金層が適切に形成されなかった。その結果、続いて形成した有機層と金属層との間の接着強度が低く、キャリア箔付き金属箔として使用するのが困難であった。
【0069】
[製造例1~9および比較製造例1~5]
実施例1~9および比較例1~5で製造したキャリア箔付き金属箔上に積層された樹脂基材(Doosan Electronics prepreg (DS-7409HG))を形成し、該樹脂基材を220MPaの圧力、220℃で、100分間プレスすることにより積層体を製造した。
【0070】
[実験例1]
実施例1~9および比較例1~5で製造したキャリア箔付き金属箔ならびに製造例1~9および比較製造例1~5で製造した積層体の剥離強度(gf/cm)をIPC-TM-650規格(幅10mm×長さ10cmのプレート状試験片を使用)により測定した。結果を下記表1に示した。ここで、剥離強度とは、金属層と、有機層/合金層/キャリア箔が接着されている構造体との間の剥離強度を意味する。
【0071】
【表1】
【0072】
上記表1を参照すると、本発明に係る製造例1~9のキャリア箔付き金属箔(実施例1~9)は、合金層および有機層によりキャリア箔との接着を維持し、その後うまく剥離したが、比較製造例1~4のキャリア箔付き金属箔は剥離されないことが確認された。また、比較製造例5のキャリア箔付き金属箔はプレス後、剥離強度が高いため剥離しにくいことが確認された。
【0073】
[実験例2]
実験例1のプレス後の剥離プロセスにより得られた金属層の表面をXPSにより分析して、合金層の成分が金属層に残っているかどうかを確認した。結果を下記表2に示した。
【表2】
【0074】
表2を参照すると、本発明に係る実施例1のキャリア箔付き金属箔では、合金層の成分(ニッケル)が剥離後の金属層の表面上に残らない(ニッケル残分0%)が、比較例1のキャリア箔付き金属箔では、大量の合金層の成分(ニッケル)が剥離後の金属層の表面上に残る(ニッケル残分5.08%)ことが確認された。
図1