(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】転換負荷力測定器及び転換負荷力測定方法
(51)【国際特許分類】
G01L 5/00 20060101AFI20240729BHJP
E01B 7/02 20060101ALI20240729BHJP
B61L 5/00 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
G01L5/00 Z
E01B7/02
B61L5/00 Z
(21)【出願番号】P 2023078550
(22)【出願日】2023-05-11
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000159423
【氏名又は名称】吉原鉄道工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】成田 博
(72)【発明者】
【氏名】谷畑 晃司
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-60067(JP,A)
【文献】米国特許第4644785(US,A)
【文献】特開2007-225513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 5/00-5/28
E01B 7/00-7/30
B61L 5/00-5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の進路を選択する分岐器のトングレールを転換するためのスイッチアジャスタのうち、基本レールの外側から内側に渡るロッド部の途中に形成された傾斜部に取り付けられる転換負荷力測定器であって、
前記傾斜部に着脱される着脱部材と、
前記着脱部材に取り付けられて前記ロッド部への荷重を検知する検知部と、を有
し、
前記着脱部材が、
一対の支持部と、
前記検知部が取り付けられて前記支持部間に渡って前記支持部に取り付けられた薄板状の予め屈曲した台座部と、を有する、
ことを特徴とする転換負荷力測定器。
【請求項2】
車両の進路を選択する分岐器のトングレールを転換するためのスイッチアジャスタのうち、基本レールの外側から内側に渡るロッド部の途中に形成された傾斜部に取り付けられる転換負荷力測定器であって、
前記傾斜部に着脱される着脱部材と、
前記着脱部材に取り付けられて前記ロッド部への荷重を検知する検知部と、を有し、
前記着脱部材が、
一対の支持部と、
前記検知部が取り付けられて前記支持部間に渡って前記支持部に取り付けられた台座部と、を有
し、
前記支持部が、
前記ロッド部の外周に沿って前記傾斜部の外面に取り付けられる本体部材と、
前記台座部を挟んだ状態で前記傾斜部の外面と前記本体部材との間に挟まって取り付けられる台座支持部材と、を有する、
ことを特徴とす
る転換負荷力測定器。
【請求項3】
前記
支持部が、
前記ロッド部の外周に沿って前記傾斜部の外面に取り付けられる本体部材と、
前記台座部を挟んだ状態で前記傾斜部の外面と前記本体部材との間に挟まって取り付けられる台座支持部材と、を有する、
ことを特徴とする請求項
1に記載された転換負荷力測定器。
【請求項4】
前記
本体部材が、
前記ロッド部の外周に沿った形状を有するU字部材と、
前記U字部材の開放端に連結される板部材と、
前記板部材を貫通した前記開放端に連結されて前記板部材と前記開放端とに介在する球面座金と、を有し、
前記傾斜部が、前記U字部材の閉塞端と前記台座支持部材とで挟まれる、
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載された転換負荷力測定器。
【請求項5】
前記
台座支持部材が、
互いに連結する第一支持部材と第二支持部材とを有し、
前記板部材のうち、前記開放端が貫通する一対の孔部同士の間の裏面に、前記第一支持部材が連結され、前記第一支持部材と前記第二支持部材との間に前記台座部が挟まれた状態で前記第二支持部材が前記第一支持部材に連結される、
ことを特徴とする請求項4に記載された転換負荷力測定器。
【請求項6】
車両の進路を選択する分岐器のトングレールを転換するためのスイッチアジャスタのうち、基本レールの外側から内側に渡るロッド部の途中に形成された傾斜部に、前記ロッド部への荷重を検知する検知部を有する転換負荷力測定器を取り付け、前記検知部による測定値から、転換最中に前記トングレールに加えられた負荷、及び、前記トングレールと前記基本レールとの密着の度合いを算出するものであって、
前記転換負荷力測定器が、
前記傾斜部に着脱される一対の支持部と、
前記検知部が取り付けられて前記支持部間に渡って前記支持部に取り付けられた薄板状の予め屈曲した台座部と、を有する、
ことを特徴とす
る転換負荷力測定
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の進路を選択する分岐器のトングレールと基本レールとの密着の度合いや、転換中のトングレールに加えられる負荷を測定するために用いられる転換負荷力測定器及び転換負荷力測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
はじめに、鉄道車両の進路を選択する分岐器構造の一般的な構成を
図1に基づいて説明する。分岐器のポイント部を担う転てつ器として、例えば下記非特許文献1に記載された転てつ装置がある(
図1参照。)。この転てつ装置は転換装置と鎖錠装置とから構成され、電気転てつ機101によって稼働する。ここで転換装置は、固定された基本レール109に対してトングレール110を密着させ、又は離反させるものであり、一方、鎖錠装置はトングレール110と基本レール109との密着状態を保持するものである。
【0003】
電気転てつ機101は、軌間外側(一対の基本レール109間の外側)に延びた枕木100上に設置されている。この電気転てつ機101は、駆動源である交流モータ108からの駆動力を、クラッチ、減速歯車及び転換ローラ付転換歯車(それぞれ図示省略)の順に伝導し、転換ローラにより動作かん102を移動させる。
【0004】
動作かん102は、この動作かん102に接続されたカム(図示省略)が転換ローラによって移動することで、基本レール109と直交する方向に直線運動する。電気転てつ機101は、動作かん102に接続されたスイッチアジャスタ103、このスイッチアジャスタ103の腕金具111、この腕金具111に接続された転てつ棒104、及び、トングレール110に固定された連結金具112によって、トングレール110を転換し、その転換されたトングレール110の先端が正常な位置にあるか否かを、フロントロッド105、接続かん106及び鎖錠かん107によって照査する。トングレール110の先端が正常な位置にあれば、動作かん102及び鎖錠かん107がカムバー(ロックピース)(図示省略)で鎖錠される。
【0005】
上記したような分岐器構造では、様々な点検や測定が行われている。例えば、下記特許文献1に記載された密着度測定器(以下、「文献公知1発明」と記す。)では、トングレールが、スイッチアジャスタによって押されて適切な度合いで基本レールに密着しているか否かが測定される(以下、トングレールと基本レールとの密着の度合いを「密着力」と記す。)。具体的には、トングレールの先端側から、トングレールと基本レールとの隙間にプッシャーが設置される。この状態で、油圧ポンプによってプッシャーが稼働すると、トングレールが基本レールから強制的に引き離されるため、そのときにプッシャーがトングレールを開こうとする力(以下、トングレールを開こうとする力を「密着度」と記す。)が、圧力計で測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【文献】平成17年6月28日、社団法人日本鉄道電気技術協会発行、「鉄道技術者のための電気概論 信号シリーズ4 転てつ装置」、第7刷、第1、38~47頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、文献公知1発明では、測定された密着度をもって密着力が推定されているのであって、密着力そのものが測定されるものではない。
【0009】
密着力は、トングレールが基本レールに押し付けられる際の圧力であるため、トングレールが、スイッチアジャスタを介して電気転てつ機によって転換される原理からすれば、スイッチアジャスタに加えられる荷重値から密着力を推定することができる。しかし、比較的番数が高い分岐器の場合、複数のスイッチアジャスタが用いられるところ、トングレールに対して後側のスイッチアジャスタは、クランク装置等を介在して電気転てつ機に接続されているため、荷重値の正確な測定が困難である。したがって、密着力の推定も正確ではなくなる。
【0010】
例えば、スイッチアジャスタと動作かんとを連結するジョーピンに替えて、ジョーピンと同形状の測定器であるジョーピン型軸力計を用いる方法もあるが、分岐器構造の施工や調整が終わった後に、ジョーピンを取り外してジョーピン型軸力計に替える必要があるため、作業が煩雑である。また、ジョーピン型軸力計は、ジョーピンよりも直径が小さいため、ジョーピンで連結されたスイッチアジャスタの測定値と、ジョーピン型軸力計に替えられたスイッチアジャスタの測定値とには、誤差がある。
【0011】
ベテランの作業者は、自身の経験と勘所に基づいて、適当な密着力となるようにスイッチアジャスタを調整することができるが、この作業は煩雑であるし、調整の加減を習得するには熟練を要するため、時間が掛るうえ、客観的に他の作業者に伝承することは、非常に困難である。
【0012】
本発明は、上記の実情に鑑みて提案されたものである。すなわち、トングレールと基本レールとの密着力や、転換中のトングレールに加えられる負荷(以下、密着力及び転換負荷を、「転換負荷力」と記す。)を、可能な限り正確に推定することができる転換負荷力測定器及び転換負荷力測定方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明に係る転換負荷力測定器は、車両の進路を選択する分岐器のトングレールを転換するためのスイッチアジャスタのうち、基本レールの外側から内側に渡るロッド部の途中に形成された傾斜部に取り付けられる密着力測定器であって、前記傾斜部に着脱される着脱部材と、前記着脱部材に取り付けられて前記ロッド部への荷重を検知する検知部と、を有する、ことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る転換負荷力測定器は、前記着脱部材が、一対の支持部と、前記検知部が取り付けられて前記支持部間に渡って前記支持部に取り付けられた台座部と、を有する、ことを特徴とする。
【0015】
本発明に係る転換負荷力測定器は、前記台座部が、薄板状であり、予め屈曲している、ことを特徴とする。
【0016】
本発明に係る転換負荷力測定器は、前記支持部が、前記ロッド部の外周に沿って前記傾斜部の外面に取り付けられる本体部材と、前記台座部を挟んだ状態で前記傾斜部の外面と前記本体部材との間に挟まって取り付けられる台座支持部材と、を有する、ことを特徴とする。
【0017】
本発明に係る転換負荷力測定器は、前記本体部材が、前記ロッド部の外周に沿った形状を有するU字部材と、前記U字部材の開放端に連結される板部材と、前記板部材を貫通した前記開放端に連結されて前記板部材と前記開放端とに介在する球面座金と、を有し、前記傾斜部が、前記U字部材の閉塞端と前記台座支持部材とで挟まれる、ことを特徴とする。
【0018】
本発明に係る転換負荷力測定器は、前記台座支持部材が、互いに連結する第一支持部材と第二支持部材とを有し、前記板部材のうち、前記開放端が貫通する一対の孔部同士の間の裏面に、前記第一支持部材が連結され、前記第一支持部材と前記第二支持部材との間に前記台座部が挟まれた状態で前記第二支持部材が前記第一支持部材に連結される、ことを特徴とする。
【0019】
本発明に係る転換負荷力測定方法は、車両の進路を選択する分岐器のトングレールを転換するためのスイッチアジャスタのうち、基本レールの外側から内側に渡るロッド部の途中に形成された傾斜部に、前記ロッド部への荷重を検知する検知部を取り付け、前記検知部による測定値から、転換最中に前記トングレールに加えられた負荷、及び、前記トングレールと前記基本レールとの密着の度合いを算出する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る転換負荷力測定器は、車両の進路を選択する分岐器のトングレールを転換するためのスイッチアジャスタのうち、基本レールの外側から内側に渡るロッド部の途中に形成された傾斜部に取り付けられるものであって、傾斜部に着脱される着脱部材と、着脱部材に取り付けられてロッド部への荷重を検知する検知部とを有している。すなわち、スイッチアジャスタは、軌間外側から、基本レールの下を潜って軌間内側のトングレールに連結されるため、ロッド部は、動作かんから基本レールの下に向けて傾斜(又は、動作かんから伸びて軌間内側において上に向けて傾斜)した傾斜部を有しているところ、この傾斜部に検知部が取り付けられている。電気転てつ機から加えられた荷重によるスイッチアジャスタの歪みは、ロッド部において直線状の部位よりも傾斜部の方が顕著に表れる。よって、測定値から、トングレールと基本レールとの密着力を正確に推定することができ、転換中のトングレールに加えられた負荷も推定することができる。また、検知部は、着脱部材を介して傾斜部に取り付けられるため、着脱部材ごと設置や交換が可能である。よって、密着力測定器の着脱は、容易である。
【0021】
本発明に係る転換負荷力測定器は、着脱部材が、一対の支持部と、検知部が取り付けられて支持部間に渡って支持部に取り付けられた台座部とを有している。すなわち、荷重によって傾斜部が変形すると、支持部が、互いに近づく方向又は離れる方向に変位するため、支持部間に渡って取り付けられた台座部が変形する。検知部は、台座部に取り付けられているため、台座部の変形を検知する。台座部の変形は、傾斜部の変形とみなせるため、台座部での測定値から、トングレールと基本レールとの密着力や、転換中のトングレールに加えられた負荷を、正確に推定することができる。
【0022】
本発明に係る転換負荷力測定器は、台座部が、薄板状であり、予め屈曲している。薄板状の台座部は変形し易く、傾斜部の変形に追随して変形する。よって、台座部での測定値から、トングレールと基本レールとの密着力や、転換中のトングレールに加えられた負荷を、正確に推定することができる。また、台座部は、予め屈曲しているため、傾斜部の圧縮及び引張に追随して柔軟に変形する。なお、仮に、台座部が屈曲しておらず平坦であった場合、台座部が引張する方向に伸び代(のびしろ)がないため、台座部は、傾斜部の引張に対して変形し辛くなり、正確な測定や推定が困難となる場合がある。
【0023】
本発明に係る転換負荷力測定器は、支持部が、ロッド部の外周に沿って傾斜部の外面に取り付けられる本体部材と、台座部を挟んだ状態で傾斜部の外面と本体部材との間に挟まって取り付けられる台座支持部材とを有している。すなわち、台座支持部材の位置は、本体部材の内側であり、台座支持部材が傾斜部に近接しているため、台座部も傾斜部に近接して配置される。したがって、傾斜部の変形に即座に追随して台座部が変形する。よって、台座部の変形は、傾斜部の変形とみなせるため、台座部での測定値から、トングレールと基本レールとの密着力や、転換中のトングレールに加えられた負荷を、正確に推定することができる。
【0024】
ところで、着脱部の支持部が傾斜部に取り付けられる際、支持部の内面部と台座支持部材とで傾斜部が挟まれるところ、支持部がズレることなく堅牢に傾斜部に取り付けられるためには、支持部が傾斜部に対して直交した姿勢であること、すなわち、傾斜部の軸線と直交する仮想的な線(以下、「仮想線」と記す。)上に、支持部と台座支持部材とが揃っていることが理想的である。しかし、実際には、ロッド部は塗装され、表面が均一ではないうえ、傾斜部は傾斜しているため、この傾斜部に対して、仮想線上に支持部と台座支持部材とを揃えることは困難である。台座支持部材が仮想線上に対して傾いている場合、台座支持部材は、傾斜部の外表面に対しても傾いた姿勢となり、塗装に食い込む結果、姿勢が不安定となる場合がある。
【0025】
そこで、本発明に係る転換負荷力測定器は、本体部材が、ロッド部の外周に沿った形状を有するU字部材と、U字部材の開放端に連結される板部材と、板部材を貫通した開放端に連結されて板部材と開放端とに介在する球面座金とを有し、傾斜部を、U字部材の閉塞端と台座支持部材とで挟むものである。すなわち、板部材と開放端とに球面座金が介在しているため、U字部材は、板部材に対して傾いた姿勢であっても適切に連結される。よって、U字部材の閉塞端は、仮想線上からズレた位置にあったとしても、支持部は堅牢に傾斜部に取り付けられる。
【0026】
ところで、台座部の変形を、傾斜部の変形とみなすべく、台座部は、傾斜部の変形に即座に追随して変形するものであることを要するため、外力からの影響を受けやすく、変形しやすい。したがって、台座部が予め他の部材に連結されている場合、搬送中や着脱作業等において、不本意に台座部が変形する可能性がある。
【0027】
そこで、本発明に係る転換負荷力測定器は、台座支持部材が、互いに連結する第一支持部材と第二支持部材とを有し、板部材のうち、開放端が貫通する一対の孔部同士の間の裏面に、第一支持部材が連結され、第一支持部材と第二支持部材との間に台座部が挟まれた状態で第二支持部材が第一支持部材に連結されるものである。すなわち、台座部が、台座支持部材を介して後から板部材に取り付けられるため、台座部の不本意な変形が抑止される。
【0028】
本発明に係る転換負荷力測定方法は、車両の進路を選択する分岐器のトングレールを転換するためのスイッチアジャスタのうち、基本レールの外側から内側に渡るロッド部の途中に形成された傾斜部に、ロッド部への荷重を検知する検知部を取り付け、検知部による測定値から、転換最中にトングレールに加えられた負荷、及び、トングレールと基本レールとの密着の度合いを算出することで、転換負荷力を正確に推定することができる。
【0029】
本発明によれば、既存の分岐器構造に組み込むことを要さず、スイッチアジャスタのロッド部に取り付けるだけで、高精度で転換負荷力を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、従来の転てつ装置の施設状態の概略が示された概略平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第一実施形態に係る転換負荷力測定器が取り付けられたスイッチアジャスタの部分外観図である。
【
図3】
図3は、本発明の第一実施形態に係る転換負荷力測定器がスイッチアジャスタに取り付けられた状態の一部透し図である。
【
図4】
図4は、本発明の第一実施形態に係る転換負荷力測定器が取り付けられたスイッチアジャスタの部分平面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第一実施形態に係る転換負荷力測定器がスイッチアジャスタに取り付けられた状態の拡大側面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第一実施形態に係る転換負荷力測定器の台座部の外観拡大斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の第一実施形態に係る転換負荷力測定器の台座部の拡大平面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第一実施形態に係る転換負荷力測定器の板部材の拡大平面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第一実施形態に係る転換負荷力測定器の台座支持部材の一部である第一支持部材の拡大側面図である。
【
図10】
図10は、本発明の第一実施形態に係る転換負荷力測定器の台座支持部材の一部である第一支持部材の拡大底面図である。
【
図11】
図11は、本発明の第一実施形態に係る転換負荷力測定器の台座支持部材の一部である第二支持部材の拡大側面図である。
【
図12】
図12は、本発明の第一実施形態に係る転換負荷力測定器の台座支持部材の一部である第二支持部材の拡大底面図である。
【
図13】
図13は、本発明の第二実施形態に係る転換負荷力測定器がスイッチアジャスタに取り付けられた状態の一部透し図である。
【
図14】
図14は、
図13のXIV部分が拡大されたものであり、本発明の第二実施形態に係る転換負荷力測定器がスイッチアジャスタに取り付けられた状態の一部透し拡大図である。
【
図15】
図15は、本発明の第三実施形態に係る転換負荷力測定器がスイッチアジャスタに取り付けられた状態の一部透し図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明の第一実施形態に係る転換負荷力測定器及び転換負荷力測定方法を図面に基づいて説明する。
図2ないし5には、スイッチアジャスタ1に取り付けられた状態の転換負荷力測定器5の外観等が示されている。
図6ないし12には、転換負荷力測定器5を構成する部品が示されている。
【0032】
図2に示されているとおり、スイッチアジャスタ1は、基本レールの外側から内側に渡る円筒棒状のロッド部2を有し、このロッド部2の途中に傾斜部3が形成されている。傾斜部3は、軌間外側における電気転てつ機(
図1参照)側から視して、ロッド部2における長手方向に対して下向きに傾斜している。
【0033】
図2ないし5に示されているとおり、転換負荷力測定器5は、傾斜部3に取り付けられている。詳説すれば、転換負荷力測定器5は、傾斜部3に着脱される着脱部材6と、この着脱部材6に取り付けられた検知部4とを有している。着脱部材6は、一対の支持部7と、この支持部7間に渡って支持部7に取り付けられた台座部15とを有している。検知部4は、台座部15の表面に取り付けられている。検知部4は、ロッド部2に作用する荷重を検知するものであり、例えば複数の歪センサー等である。
【0034】
支持部7は、ロッド部2のうち、軸線Xと直交する断面の外周に沿って傾斜部3の外面に取り付けられた本体部材8と、傾斜部3の外面と本体部材8との間に挟まって取り付けられた台座支持部材9とを有している(
図5参照)。台座支持部材9には、台座部15が挟まれている(
図3参照)。
【0035】
本体部材8は、ロッド部2の断面である円形に沿った形状を有するU字部材18と、このU字部材18が連結された板部材21と、U字部材18と板部材21とを連結したナット24とから構成されている。U字部材18は、湾曲した閉塞端19と、一対の先端である開放端20とを有している。開放端20は、板部材21を貫通し、貫通した先で先端にブッシュ25及びナット24が連結されている。
【0036】
台座支持部材9は、互いに連結する第一支持部材10と第二支持部材14とを有しており、板部材21の裏面に取り付けられている。第一支持部材10と第二支持部材14との間には、台座部15の端部16が挟まれている(
図3参照)。
【0037】
上記した構成により、傾斜部3は、本体部材8の内側に収められた状態で、U字部材18の閉塞端19と台座支持部材9とで上下から挟まれている(
図5参照)。以下、各部材を更に詳説する。
【0038】
図6及び7には、台座部15が示され、
図8には本体部材8の板部材21が示され、
図9及び10には、台座支持部材9の第一支持部材10が示され、
図11及び12には、台座支持部材9の第二支持部材14が示されている。
【0039】
図6及び7に示されているとおり、台座部15は、ほぼ長方形の薄板状であり、厚みは約0.8ミリメートルである。台座部15の中央部17は、端部16と比較してくびれており、予め屈曲している。中央部17は、くびれていることから、加工時に応力が集中し、屈曲し易い。中央部17には、検知部4が貼り付けられる。台座部15の両端部16には、ネジ穴が形成されている。台座部15は、金属製であり、例えば、チタン、ステンレス、鉄等である。チタンは、鉄と比較して防錆に優れ、また、ステンレスと比較して塑性変形し難く、弾性変形に資する。
【0040】
図8に示されているとおり、板部材21は、ほぼ長方形の薄板状である。板部材21の両端部には孔部22が形成され、両孔部22同士の間であって、板部材21の中央の裏面には、円形の溝部23が形成されている。孔部22の直径は、U字部材18の開放端20の直径よりも大きい。
【0041】
図9及び10に示されているとおり、第一支持部材10は、平面視において円板状の基台部11の上面に円筒形の突部12が形成され、基台部11の下面に挟持面部13が形成されている。第一支持部材10の中央には、挟持面部13から基台部11に至ってネジ穴が形成されている。
【0042】
図11及び12に示されているとおり、第二支持部材14は、平面視において四角形であり、上下に貫通したネジ穴が形成されている。第二支持部材14の下面は、傾斜部3の外面に倣って湾曲している。
【0043】
上記のとおり構成された各部材は、次のとおり組み付けられる。第一支持部材10の挟持面部13と第二支持部材14の上面との間に台座部15の端部16が挟まれた状態で、各部材のネジ穴にネジ(図示省略)が通され、部材同士が連結される。この状態で、第一支持部材10の突部12が、板部材21の溝部23に嵌合し、第二支持部材14の下面が傾斜部3の外面に当てられる(
図5参照)。板部材21とU字部材18との間に傾斜部3が収められ、U字部材18の開放端20が板部材21の孔部22に通される。開放端20に、ブッシュ25と共にナット24が連結され、ナット24が締められることで、傾斜部3は、U字部材18の閉塞端19と台座支持部材9とで上下から挟まれる。
図2に示されているとおり、各支持部7は、傾斜部3に取り付けられ、台座部15が支持部7間に渡った状態となる。台座部15の中央部17は、傾斜部3から離れる方向に屈曲している。台座部15と傾斜部3との間は空いており、台座部15は傾斜部3に接触していない。最後に、台座部15の中央部17に検知部4が貼り付けられる。
【0044】
次に、転換負荷力測定器5の作用及び効果を説明する。
【0045】
上記したとおり、転換負荷力測定器5は、スイッチアジャスタ1の傾斜部3に取り付けられているところ(
図2参照)、電気転てつ機から加えられた荷重によるスイッチアジャスタ1の歪みは、ロッド部2における直線状の部位よりも傾斜部3の方が顕著に表れる。よって、測定値から、トングレールと基本レールとの密着力や、転換中のトングレールに加えられた負荷を、正確に推定することができる。また、検知部4は、着脱部材6を介して傾斜部3に取り付けられているため、着脱部材6ごと設置や交換が可能である。よって、転換負荷力測定器5の着脱は、容易である。
【0046】
傾斜部3に取り付けられた着脱部材6は、一対の支持部7と、この支持部7間に渡って支持部7に取り付けられた台座部15とを有していることから(
図2参照)、荷重によって傾斜部3が変形すると、支持部7が、互いに近づく方向又は離れる方向に変位し、支持部7間に渡って取り付けられた台座部15も追随して変形する。検知部4は、台座部15に取り付けられているため、台座部15の変形を検知する。台座部15の変形は、傾斜部3の変形とみなせるため、台座部15での測定値から、トングレールと基本レールとの密着力や、転換中のトングレールに加えられた負荷を、正確に推定することができる。
【0047】
台座部15は、ほぼ長方形の薄板状であることから(
図6参照)、変形し易く、傾斜部3の変形に追随して変形する。よって、台座部15での測定値からトングレールと基本レールとの密着力を正確に推定することができる。また、台座部15の中央部17が予め屈曲していることから、傾斜部3の圧縮及び引張に追随して柔軟に変形する。
【0048】
支持部7は、ロッド部2の軸線Xと直交する断面の外周に沿って傾斜部3の外面に取り付けられた本体部材8(U字部材18、板部材21及びナット24)と、傾斜部3の外面と本体部材8との間に挟まって取り付けられた台座支持部材9(第一支持部材10及び第二支持部材14)とを有し、第一支持部材10と第二支持部材14とに台座部15が挟まれている(
図3参照)。すなわち、台座支持部材9の位置は、本体部材8の内側であり、台座支持部材9が傾斜部3に近接しているため、台座部15も傾斜部3に近接して配置されている。したがって、傾斜部3の変形に即座に追随して台座部15が変形する。よって、台座部15の変形は、傾斜部3の変形とみなせるため、台座部15での測定値から、トングレールと基本レールとの密着力や、転換中のトングレールに加えられた負荷を、正確に推定することができる。
【0049】
転換負荷力測定器5は、第一支持部材10の挟持面部13と第二支持部材14の上面との間に台座部15の端部16が挟まれた状態で、各部材のネジ穴にネジが通され、部材同士が連結され、第一支持部材10の突部12が、板部材21の溝部23に嵌合し、第二支持部材14の下面が傾斜部3の外面に当てられる(
図5参照)。すなわち、台座部15が、台座支持部材9を介して後から板部材21に取り付けられるため、台座部15の不本意な変形が抑止される。
【0050】
モニターや外部入出力ケーブル等を有する測定表示機等(図示省略)が、検知部4に接続されることで、検知部4によって検知された情報を表示し、又は、記録することができる。
【0051】
次に、本発明の第二実施形態に係る転換負荷力測定器を図面に基づいて説明する。
図13には、第二実施形態に係る転換負荷力測定器205が示され、
図14には、転換負荷力測定器205が拡大されて示されている。転換負荷力測定器205は、第一実施形態に係る転換負荷力測定器5と異なり、ナット24と球面座金26、又は、球面座金付ナット26が用いられている。なお、以下は、主に転換負荷力測定器5と異なる構成の説明であり、転換負荷力測定器5と同様の構成は、図示された同一の符号をもって説明が省略されている。
【0052】
図13及び14に示されているとおり、U字部材18の開放端20は、板部材21を貫通した先で球面座金26が連結され、板部材21と開放端20とは、球面座金26を介して連結されている。台座支持部材9は、仮想線V上にあり、板部材21は仮想線Vと概ね直交した姿勢である。よって、台座支持部材9は、傾斜部3の外表面に対しても、傾かずに垂直に立った姿勢である。一方で、U字部材18は、仮想線Vからズレており、台座支持部材9及び板部材21に対して傾いた姿勢である(U字部材18を通る仮想軸線V
18参照)。したがって、閉塞端19と台座支持部材9とが、仮想線V上に揃っていない。
【0053】
しかし、球面座金26が介在しているため、U字部材18は、板部材21に対して傾いた姿勢であっても適切に連結される。よって、U字部材18の閉塞端19は、仮想線V(軸線Xと直交する仮想的な線)上からズレた位置にあるが、支持部7は堅牢に傾斜部3に取り付けられる。
【0054】
次に、本発明の第三実施形態に係る転換負荷力測定器を図面に基づいて説明する。
図15には、第三実施形態に係る転換負荷力測定器305が示されている。転換負荷力測定器305は、第一実施形態に係る転換負荷力測定器5と異なり、台座部35が平坦であって、屈曲していない。なお、以下は、主に転換負荷力測定器5と異なる構成の説明であり、転換負荷力測定器5と同様の構成は、図示された同一の符号をもって説明が省略されている。
【0055】
転換負荷力測定器305であっても、台座部35は、少なくとも傾斜部3の圧縮に対しては変形するため、台座部35での測定値から、トングレールと基本レールとの密着力や、転換中のトングレールに加えられた負荷を、正確に推定することができる。
【0056】
上記したとおり、本発明の実施形態によれば、既存の分岐器構造に組み込むことを要さず、スイッチアジャスタ1のロッド部2に間接的に取り付けるだけで、高精度で転換負荷力を推定することができる。
【0057】
なお、本発明の他の実施形態では、支持部は、ロッド部の外周に沿って取り付けられる構造であれば、U字ボルト等に限られない。
他の実施形態では、一対ではなく単一の支持部を有している。
他の実施形態では、台座部は、傾斜部と接触しない限りにおいて、傾斜部に近づく方向に屈曲している。
他の実施形態では、台座部は、板状部材の表面に取り付けられている。
他の実施形態は、第一実施形態と上下が逆さまの姿勢で傾斜部に取り付けられる。すなわち、台座部が傾斜部の下方に配置される。この場合、直射日光からの影響が少ないため、転換負荷力測定器をスイッチアジャスタに取り付けて常駐させることができる。
他の実施形態では、検知部がスイッチアジャスタの傾斜部に直接貼り付けられる。
【0058】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 スイッチアジャスタ
2 ロッド部
3 傾斜部
4 検知部
5、205、305 転換負荷力測定器
6 着脱部材
7 支持部
8 本体部材
9 台座支持部材
10 第一支持部材
11 基台部
12 突部
13 挟持面部
14 第二支持部材
15、35 台座部
16 端部
17 中央部
18 U字部材
19 閉塞端
20 開放端
21 板部材
22 孔部
23 溝部
24 ナット
25 ブッシュ
26 球面座金
100 枕木
101 電気転てつ機
102 動作かん
103 スイッチアジャスタ
104 転てつ棒
105 フロントロッド
106 接続かん
107 鎖錠かん
108 モータ
109 基本レール
110 トングレール
111 腕金具
112 連結金具
V 仮想線
V18 仮想軸線
X 軸線
【要約】
【課題】トングレールと基本レールとの密着力や、転換中のトングレールに加えられる負荷を、可能な限り正確に推定することができる転換負荷力測定器及び転換負荷力測定方法を提供する。
【解決手段】転換負荷力測定器5は、スイッチアジャスタ1の傾斜部3に取り付けられた一対の支持部7と、この支持部7間に渡って支持部7に取り付けられた台座部15と、この台座部15に取り付けられた検知部4とを有している。台座部15は、ほぼ長方形の薄板状であり、中央部が予め屈曲している。
【選択図】
図2