(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】非接触支持装置
(51)【国際特許分類】
B25J 15/06 20060101AFI20240729BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20240729BHJP
B65G 49/07 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
B25J15/06 Z
H01L21/68 C
B65G49/07 H
(21)【出願番号】P 2023213302
(22)【出願日】2023-12-18
【審査請求日】2024-03-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】323010881
【氏名又は名称】有限会社Link P&M Japan
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】鄭 仁奇
(72)【発明者】
【氏名】西松 誠
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 歩
(72)【発明者】
【氏名】久野 悠利
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-130162(JP,A)
【文献】特開2009-073646(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2023/0110422(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/06
H01L 21/677
B65G 49/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク(W)に対して気体を噴出することにより前記ワークを非接触状態で支持する非接触支持装置(10)において、
中心軸線(K)が延びる軸線方向、及び前記軸線方向と直交する径方向に延びるボディ(20,40)を備え、
前記ボディの前記軸線方向における第1端部には、前記中心軸線を中心として環状をなすとともに、前記ワークに対向するワーク支持部(21)が形成されており、
前記ボディのうち前記ワーク支持部よりも前記径方向における内側部分には、前記ワーク支持部に対して、前記ボディの前記軸線方向における第2端部側に凹む内側凹部(22)が形成されており、
前記ボディには、
前記軸線方向に延びるとともに、気体が供給される軸線方向通路(51,151)と、
前記径方向の外側に向かって延びて前記内側凹部に開口する径方向通路(52)と、
前記軸線方向通路の下流側の端部と前記径方向通路の上流側の端部とを接続するコーナー通路(80,180)と、
が、前記ボディの周方向に並んで形成されており、
前記コーナー通路の通路面積は、前記軸線方向通路側から前記径方向通路側に向かって徐々に小さくなって
おり、
前記コーナー通路のうち内側コーナー部(33)を形成する内周面(33a)は、前記軸線方向通路の内周面と前記径方向通路の内周面とに滑らかに連続する曲面状をなしている、非接触支持装置。
【請求項2】
前記コーナー通路のうち外側コーナー部(81)を形成する内周面(81a)は、前記軸線方向通路の内周面と前記径方向通路の内周面とに滑らかに連続する曲面状をなしている、請求項
1に記載の非接触支持装置。
【請求項3】
前記コーナー通路の最大通路面積は、前記径方向通路の最小通路面積の3倍以上である、請求項1
又は2に記載の非接触支持装置。
【請求項4】
ワーク(W)に対して気体を噴出することにより前記ワークを非接触状態で支持する非接触支持装置(10)において、
中心軸線(K)が延びる軸線方向、及び前記軸線方向と直交する径方向に延びるボディ(20,40)を備え、
前記ボディの前記軸線方向における第1端部には、前記中心軸線を中心として環状をなすとともに、前記ワークに対向するワーク支持部(21)が形成されており、
前記ボディのうち前記ワーク支持部よりも前記径方向における内側部分には、前記ワーク支持部に対して、前記ボディの前記軸線方向における第2端部側に凹む内側凹部(22)が形成されており、
前記ボディには、
前記軸線方向に延びるとともに、気体が供給される軸線方向通路(51,151)と、
前記径方向の外側に向かって延びて前記内側凹部に開口する径方向通路(52)と、
前記軸線方向通路の下流側の端部と前記径方向通路の上流側の端部とを接続するコーナー通路(80,180)と、
が、前記ボディの周方向に並んで形成されており、
前記コーナー通路の通路面積は、前記軸線方向通路側から前記径方向通路側に向かって徐々に小さくなっており、
前記ボディとして、メインボディ(20)及びサブボディ(40)が備えられ、
前記メインボディの前記軸線方向における前記第1端部には、円環状をなす前記ワーク支持部が形成されており、
前記メインボディのうち前記ワーク支持部よりも前記径方向における内側部分には、前記内側凹部が形成されており、
前記メインボディのうち前記径方向において前記内側凹部の内側に隣接する部分には、前記内側凹部に対して、前記軸線方向における前記第2端部側に円柱状に凹む柱状凹部(30)が形成されており、
前記内側凹部には、
前記内側凹部と前記柱状凹部との角部から前記径方向の外側に延びるとともに、円環状をなす平面部(23)と、
前記平面部と前記ワーク支持部とを接続する部分であって、前記平面部に対して傾斜する傾斜部(24)と、
が形成されており、
前記サブボディは、
前記中心軸線を中心として前記径方向の外側に延びる円板状をなすとともに、前記軸線方向の寸法が、前記ワーク支持部と前記平面部との前記軸線方向の距離よりも小さい円板部(41)と、
前記円板部の中央部から前記軸線方向に延びるとともに外形が円柱状をなし、前記径方向の寸法が前記円板部の前記径方向の寸法よりも小さい大径円柱部(42)と、
前記大径円柱部の中央部から前記軸線方向に延びるとともに外形が円柱状をなし、前記径方向の寸法が前記大径円柱部の前記径方向の寸法よりも小さい小径円柱部(43)と、を有し、
前記大径円柱部の外周部には、前記軸線方向における前記小径円柱部側の端から前記軸線方向において前記円板部まで延びる軸線方向溝部(44)が形成されており、
前記円板部には、前記軸線方向溝部から前記円板部の前記径方向の端まで前記径方向に延びる径方向溝部(45)が形成されており、
前記柱状凹部の底部(31)に前記小径円柱部の前記軸線方向の端部が当接するとともに、前記大径円柱部の外周面(42a)が前記柱状凹部の内周面(32b)に当接し、
前記柱状凹部、前記小径円柱部及び前記大径円柱部で囲まれた円環状の空間が、気体が供給される環状通路部(50)とされており、
前記軸線方向溝部、前記径方向溝部及び前記柱状凹部によって前記軸線方向通路及び前記コーナー通路が形成されており、
前記径方向溝部と前記凹部の前記平面部とによって前記径方向通路が形成されている
、非接触支持装置。
【請求項5】
前記平面部は、前記径方向通路の開口端よりも前記径方向の外側まで延びている、請求項
4に記載の非接触支持装置。
【請求項6】
前記径方向通路の開口端側は、前記開口端に行くほど通路面積が大きくなっている、請求項
5に記載の非接触支持装置。
【請求項7】
前記サブボディの前記径方向の中央部には、前記円板部、前記大径円柱部及び前記小径円柱部を前記軸線方向に貫通するボルト挿通孔(60)が形成されており、
前記サブボディのうち、前記円板部側の前記ボルト挿通孔の周縁部には、ボルト(70)の頭部(71)が当接する座面(61)が形成されており、
前記メインボディのうち前記サブボディと前記軸線方向に対向する部分における前記径方向の中央部には、前記ボルトの軸部(72)の雄ねじがねじ込まれる雌ねじ孔(62)が形成されており、
前記ボルトの頭部が前記座面に当接した状態で、前記ボルトの軸部の雄ねじが前記雌ねじ孔にねじ込まれている、請求項
4に記載の非接触支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非接触支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、エアーの流れによって発生する負圧を利用してワークを非接触で支持する非接触支持装置が知られている。詳しくは、非接触支持装置からワークに対してエアーを噴出させながら非接触支持装置をワークに近づけると、非接触支持装置とワークとの間に高速でエアーが流れる。これにより、非接触支持装置とワークとの間が負圧状態となり、ワークにリフト力が作用する。その結果、非接触支持装置に非接触の状態でワークが支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワークのリフト力を増加させる技術については、未だ改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、ワークのリフト力を増加させることができる非接触支持装置を提供することを主たる目的とする。
【0006】
本開示は、ワークに対して気体を噴出することにより前記ワークを非接触状態で支持する非接触支持装置において、
中心軸線が延びる軸線方向、及び前記軸線方向と直交する径方向に延びるボディを備え、
前記ボディの前記軸線方向における第1端部には、前記中心軸線を中心として環状をなすとともに、前記ワークに対向するワーク支持部が形成されており、
前記ボディのうち前記ワーク支持部よりも前記径方向における内側部分には、前記ワーク支持部に対して、前記ボディの前記軸線方向における第2端部側に凹む内側凹部が形成されており、
前記ボディには、
前記軸線方向に延びるとともに、気体が供給される軸線方向通路と、
前記径方向の外側に向かって延びて前記内側凹部に開口する径方向通路と、
前記軸線方向通路の下流側の端部と前記径方向通路の上流側の端部とを接続するコーナー通路と、
が、前記ボディの周方向に並んで形成されており、
前記コーナー通路の通路面積は、前記軸線方向通路側から前記径方向通路側に向かって徐々に小さくなっている。
【0007】
本開示において、軸線方向通路に供給されたエアーは、コーナー通路及び径方向通路を流れ、径方向通路から内側凹部に噴出する。エアーを噴出させた状態でボディのワーク支持部をワークに近づけると、ワーク支持部とワークとの間に高速でエアーが流れる。これにより、非接触支持装置に非接触の状態でワークが支持される。
【0008】
本開示では、コーナー通路の通路面積が、軸線方向通路側から径方向通路側に向かって徐々に小さくなっている。これにより、エアーの流れをスムーズにしつつ、エアーを加速させることができる。その結果、軸線方向通路への同一エアー供給圧に対する内側凹部に噴出するエアー流量を増加させつつ、内側凹部に噴出するエアーの流速を高めることができる。これにより、内側凹部とワークとの間の圧力をより低下させることができ、ワークのリフト力を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図7】
図1の3―3線断面図のうち、コーナー通路付近の部分拡大図。
【
図8】
図1の3―3線断面図のうち、コーナー通路付近の部分拡大図。
【
図9】
図1の3―3線断面図のうち、コーナー通路及び径方向通路付近の部分拡大図。
【
図10】比較例1に対する一実施形態のリフト力増加効果を示す計算結果。
【
図12】その他の実施形態に係るボディ断面の部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る非接触支持装置を具体化した一実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態の非接触支持装置10は、ベルヌーイタイプの非接触支持装置である。
【0011】
図1~
図4に示すように、非接触支持装置10は、メインボディ20と、サブボディ40とを備えている。以下、各ボディ20,40の中心軸線Kの延びる方向を軸線方向とし、中心軸線Kの中心から放射状に延びる方向であって軸線方向と直交する方向を径方向とし、中心軸線Kを中心として円周状に延びる方向を周方向としている。
【0012】
メインボディ20及びサブボディ40が組み合わせられることにより、気体供給装置(例えばポンプ)から供給された気体(例えば圧縮気体)の流通経路が、メインボディ20及びサブボディ40に形成される構造になっている。本実施形態において、気体は空気(エアー)である。
【0013】
メインボディ20は、外形が扁平な円柱状をなしている。メインボディ20において、非接触支持装置10の軸線方向における第1端部(下端部)側の外周部には、ワーク支持部21が形成されている。ワーク支持部21は、平坦面21aを有しており、中心軸線Kを中心とした円環状をなしている。
図3の2点鎖線は、ワーク支持部21に対向するワークWを示す。
【0014】
図3及び
図4に示すように、メインボディ20のうちワーク支持部21よりも径方向における内側部分には、ワーク支持部21に対して、非接触支持装置10の軸線方向における第2端部(上端部)側に凹む内側凹部22が形成されている。内側凹部22は、中心軸線Kを中心とした円環状をなしている。メインボディ20のうち径方向において内側凹部22の内側に隣接する部分には、内側凹部22に対して、軸線方向における上端部側に円柱状に凹む柱状凹部30が形成されている。
【0015】
内側凹部22には、平面部23と、傾斜部24とが形成されている。平面部23は、径方向に延びる平坦面23aを有し、内側凹部22と柱状凹部30との角部(具体的には例えば、内側コーナー部33)から、径方向外側に延びるとともに、中心軸線Kを中心とした円環状をなしている。傾斜部24は、平面部23とワーク支持部21とを接続する部分である。傾斜部24は、軸線方向において非接触支持装置10の下端部側にいくほど径方向寸法が大きくなる傾斜面24aを有している。平面部23の平坦面23a、傾斜部24の傾斜面24a、及びワーク支持部21のワークWに対する対向面(平坦面21a)は滑らかに連続している。
【0016】
図1~
図6に示すように、サブボディ40は、円板部41、大径円柱部42及び小径円柱部43を備えている。円板部41は、中心軸線Kを中心として径方向外側に延びる円板状をなしている。円板部41の軸線方向寸法t1は、ワーク支持部21と平面部23との軸線方向距離t2よりも小さい。
【0017】
大径円柱部42は、円板部41の中央部から軸線方向に延びるとともに外形が円柱状をなしている。大径円柱部42の径方向寸法は、円板部41の径方向寸法よりも小さい。小径円柱部43は、大径円柱部42の中央部から軸線方向に延びるとともに外形が円柱状をなしている。小径円柱部43の径方向寸法は、大径円柱部42の径方向寸法よりも小さい。
【0018】
図3及び
図5に示すように、大径円柱部42の外周部には、軸線方向における小径円柱部43側の端から軸線方向において円板部41まで延びる軸線方向溝部44が形成されている。円板部41には、軸線方向溝部44から円板部41の径方向の端まで径方向に延びる径方向溝部45が形成されている。
図3及び
図6に示すように、軸線方向溝部44及び径方向溝部45それぞれの内周面は、円弧状をなしている。軸線方向溝部44及び径方向溝部45は、周方向に等間隔に並んで複数(図中、12個を例示)形成されている。
【0019】
図3及び
図4に示すように、メインボディ20のうち径方向において内側凹部22の内側に隣接する部分には、中心軸線Kを中心として軸線方向に延びる柱状凹部30が形成されている。柱状凹部30は、内側凹部22に対して、軸線方向においてメインボディ20の上端部側に円柱状に凹む部分である。柱状凹部30は、平坦面31aを有する底部31と、中心軸線Kを中心として周方向に延びる内周面32とを備えている。
【0020】
柱状凹部30の底部31の平坦面31aに小径円柱部43の軸線方向端面が当接するとともに、大径円柱部42の外周面42aが柱状凹部30の内周面32(第1内周面32a)に当接している。柱状凹部30の第1内周面32a、小径円柱部43の外周面43a、及び大径円柱部42で囲まれた空間が、中心軸線Kを中心として円環状をなす環状通路部50とされている。
【0021】
図2に示すように、メインボディ20の上端部には、軸線方向に延びて環状通路部50まで貫通する供給孔64が形成されている。供給孔64には、図示しない気体供給装置からエアーが供給される。なお、メインボディ20の上端部には、非接触支持装置10の取付対象部に非接触支持装置10を固定するための取付孔65が形成されている。取付孔65は、軸線方向に延びており、複数(図中、4つを例示)形成されている。取付対象部は、例えば、産業用ロボットのアームの先端部である。
【0022】
続いて、
図1~
図5を用いて、サブボディ40をメインボディ20に固定するための構成について説明する。サブボディ40の径方向の中央部には、円板部41、大径円柱部42及び小径円柱部43を軸線方向に貫通するボルト挿通孔60が形成されている。サブボディ40のうち、円板部41側のボルト挿通孔60の周縁部には、ボルト70の頭部71が当接する座面61が形成されている。
【0023】
メインボディ20の径方向の中央部には、ボルト70の軸部72の雄ねじがねじ込まれる雌ねじ孔62が形成されている。
【0024】
小径円柱部43の上端部側の端面には、円環状をなすシール溝部63が形成されている。シール溝部63は、端面においてボルト挿通孔60の周縁部全周にわたって形成されている。シール溝部63には、円環状のシール部材73が配置されている。シール部材73は、弾性材料(例えばゴム材料)により形成されており、例えばOリングである。柱状凹部30を構成する底部31の平坦面31aは、シール部材73が当接するシール面になっている。
【0025】
シール溝部63にシール部材73が配置された状態において、雌ねじ孔62にボルト70の軸部72の雄ねじがねじ込まれている。これにより、メインボディ20とサブボディ40の底部31との間をシールしつつ、メインボディ20とサブボディ40とが固定されている。シールにより、環状通路部50からボルト挿通孔60へとエアーが漏れる事態の発生を抑制できる。
【0026】
続いて、
図7~
図9を用いて、各ボディ20,40によって形成される気体通路について説明する。
図7は、
図1の3―3線断面図のうちコーナー通路80付近の部分拡大図である。3-3線断面図は、中心軸線Kを通ってかつ軸線方向に延びる平面で非接触支持装置10を切断した場合の図である。
【0027】
柱状凹部30の内周面32は、軸線方向に延びる第1内周面32aと、軸線方向において第1内周面32aに連続するとともに、第1内周面32aに対して径方向外側に傾斜する第2内周面32bとを備えている。第2内周面32bの径方向寸法は、軸線方向において非接触支持装置10の下端部側にいくほど直線状に大きくなっている。
【0028】
各ボディ20,40により、軸線方向通路51、コーナー通路80及び径方向通路52が形成されている。軸線方向通路51は、軸線方向において環状通路部50から非接触支持装置10の下端部側に延びる通路である。径方向通路52は、径方向外側に向かって延びて内側凹部22に開口する通路である。コーナー通路80は、軸線方向通路51の下流側の端部と径方向通路52の上流側の端部とを接続する通路である。各通路51,80,52は、周方向に等間隔に並んで形成されている。
【0029】
第2内周面32bと平面部23の平坦面23aとは、内側コーナー部33によって接続されている。内側コーナー部33は、周方向に延びる円環状をなしている。内側コーナー部33の内周面33aは、軸線方向通路51の内周面(第2内周面32b)と径方向通路52の内周面(平坦面23a)とに滑らかに連続する曲面状をなしている。
【0030】
図7において、A1は、柱状凹部30の第2内周面32bと、内側コーナー部33の内周面33aとの境界線である第1境界線を示す。第1境界線A1は周方向に延びている。S1は、第1境界線A1に対する法線の集合からなる第1仮想面を示す。A2は、内側コーナー部33の内周面33aと、平面部23の平坦面23aとの境界線である第2境界線を示す。第2境界線A2は周方向に延びている。S2は、第2境界線A2に対する法線の集合からなる第2仮想面を示す。
【0031】
サブボディ40の軸線方向溝部44と、メインボディ20の柱状凹部30及び平面部23とによって形成された通路のうち、第1仮想面S1よりも環状通路部50側の通路が軸線方向通路51である。また、サブボディ40の軸線方向溝部44と、メインボディ20の柱状凹部30及び平面部23とによって形成された通路のうち、第2仮想面S2よりも内側凹部22側の通路が径方向通路52である。
【0032】
サブボディ40の軸線方向溝部44と、メインボディ20の柱状凹部30及び平面部23とによって形成された通路のうち、第1仮想面S1と第2仮想面S2とによって挟まれた通路がコーナー通路80である。
【0033】
気体供給装置から供給孔64に供給されたエアーは、環状通路部50に流れ込む。環状通路部50に流れ込んだエアーは、各軸線方向通路51に流れ込む。軸線方向通路51に流れ込んだエアーは、コーナー通路80及び径方向通路52を流れ、径方向通路52から内側凹部22に噴出する。エアーを噴出させた状態でワーク支持部21をワークWに近づけると、ワーク支持部21とワークWとの間に高速でエアーが流れる。これにより、ワーク支持部21に非接触の状態でワークWが支持される。
【0034】
ここで、
図8に示すように、コーナー通路80の通路面積が、軸線方向通路51側から径方向通路52側に向かって徐々に小さくなっている。これにより、エアーの流れをスムーズにしつつ、エアーを加速させることができる。その結果、軸線方向通路51への同一エアー供給圧に対する内側凹部22に噴出するエアー流量を増加させつつ、内側凹部22に噴出するエアーの流速を高めることができる。これにより、内側凹部22とワークWとの間の圧力をより低下させることができ、ワークWのリフト力を増加させることができる。換言すれば、同一リフト力を生成するためのエアー流量を低減できる。
【0035】
図7に示すように、内側コーナー部33の内周面33aは、柱状凹部30の第2内周面32bと平面部23の平坦面23aとに滑らかに連続する曲面状をなしている。つまり、内側コーナー部33を形成する内周面33aは、軸線方向通路51の内周面と径方向通路52の内周面とに滑らかに連続する曲面状をなしている。これにより、エアーの流れをよりスムーズにしつつ、エアーをより加速させることができる。その結果、ワークWのリフト力をより増加させることができる。
【0036】
なお、内側コーナー部33の内周面33aは、R面取りされた形状ということもできる。
図7に、平面部23の平坦面23aを径方向内側に延長した仮想面P1と、第2内周面32bの延びる方向に沿って第2内周面32bを非接触支持装置10の下端部側に延長した仮想面P2とを1点鎖線にて示す。柱状凹部30と内側凹部22との角部のうち、仮想面P1よりも径方向外側であって、仮想面P2よりも非接触支持装置10の上端部側の一部分がR面取りされた形状にされることにより、内周面33aが曲面状とされている。
【0037】
図7,8に示すように、コーナー通路80のうち外側コーナー部81を形成する内周面81aは、軸線方向溝部44を形成する周面と径方向溝部45を形成する周面とに滑らかに連続する曲面状をなしている。つまり、外側コーナー部81を形成する内周面81aは、軸線方向通路51の内周面と径方向通路52の内周面とに滑らかに連続する曲面状をなしている。これにより、内側コーナー部33におけるエアーの流れをスムーズにでき、エアーをより加速させることができる。その結果、ワークWのリフト力をより増加させることができる。これに対し、内側コーナー部33に角があると、エアーの流れが悪くなって圧力が低下し、エアー流速が低下してしまう。
【0038】
ちなみに、内側コーナー部33の内周面33aの曲率半径R2は、外側コーナー部81の内周面81aの曲率半径R1以上であることが望ましい。これにより、例えば、通路面積を徐々に小さくする通路を実現しやすくなる。
【0039】
柱状凹部30の底部31の平坦面31aに小径円柱部43の軸線方向端面が当接するとともに、大径円柱部42の外周面42aが柱状凹部30の第2内周面32bに周方向にわたって当接している。また、円板部41の端面が平面部23の平坦面23aに周方向にわたって当接している。これにより、メインボディ20に対してサブボディ40を安定して支持できる。その結果、メインボディ20に対するサブボディ40のずれを抑制し、内部のエアー漏れ等の不具合の発生を抑制できる。これにより、軸線方向通路51及び径方向通路52が設計時に意図した通路として機能するようにできる。
【0040】
図9に示すように、径方向通路52の開口端側は、開口端に行くほど通路面積が大きくなっている。これにより、コーナー通路80から径方向通路52の開口端までの経路において、徐々に通路面積を小さくした後、徐々に通路面積を大きくするラバールノズルを構成することができる。これにより、エアーの流速を高めることができ、リフト力を増加させることができる。
【0041】
本実施形態では、径方向溝部45の開口端側が、開口端に行くほど溝深さ寸法が大きくなる傾斜部になっていることにより、開口端側の通路面積が徐々に大きくなっている。これにより、例えば、ボールエンドミルを用いた切削加工により径方向溝部45を形成する作業工程において、ボールエンドミルを径方向に操作しながらボールエンドミルの軸線方向位置を調整するといった簡易な作業により、徐々に通路面積を大きくする通路を実現できる。その結果、非接触支持装置10の製造時における作業負荷を削減できる。
【0042】
ちなみに、径方向溝部45のうちコーナー通路80側の底面に対する、上記開口端に行くほど溝深さ寸法が大きくなる傾斜部の底面の傾斜角度をθとする場合、例えば、「10°≦θ≦40°」又は「15°≦θ≦25°」であり、具体的には例えば「θ=20°」であればよい。
【0043】
コーナー通路80の最大通路面積ECは、径方向通路52の最小通路面積ERの3倍以上であることが望ましい。これにより、環状通路部50から軸線方向通路51へと流入するエアー流量を増加させつつ、通路面積を徐々に小さくしてエアーの流速を高めることにより、リフト力をより増加させることができる。例えば、「3×ER≦EC≦7×ER」、「3×ER≦EC≦6×ER」、「3×ER≦EC≦5×ER」又は「3×ER≦EC≦4×ER」に設定することができる。なお、径方向通路52において、溝深さが最小値DN(ノズル径DNともいう)となる部分が、径方向通路52において最小通路面積となる部分である。
【0044】
径方向寸法が相対的に大きい大径円柱部42により、ボルト70をねじ込んだ場合における円板部41の反りを抑制できる。その結果、径方向通路52の開口端側の通路形状が、設計時に意図した形状から大きくずれる事態の発生を抑制できる。
【0045】
図9に示すように、平面部23の平坦面23aは、径方向通路52の開口端よりも径方向外側まで延びている。これにより、径方向通路52の開口端から噴出したエアーが内側凹部22の壁面に衝突しにくくなり、エアーの流速を高めることができる。その結果、リフト力を増加させることができる。
【0046】
ちなみに、例えば、平面部23の平坦面23aのうち径方向通路52の開口端よりも径方向外側部分の径方向寸法LFは、径方向通路52のうち通路面積が徐々に大きくなる傾斜部の径方向寸法LNよりも大きいことが望ましい。
【0047】
また、例えば、傾斜部の径方向寸法LNは、ノズル径DNの5倍以上であることが望ましい。さらに、軸線方向通路51の通路面積は、ノズル径DNの3倍以上であることが望ましい。
【0048】
図10に、軸線方向におけるワーク支持部21及びワークWの距離と、ワークWに作用するリフト力との関係を示す計算結果を示す。
図10において、比較例1は、先の
図9において「LF=0」とした構成のことである。
【0049】
比較例1に対して本実施形態のリフト力が大きいのは、大きな負圧を発生する超音速領域が、内側凹部22の径方向の広い範囲において分布しているためである。LF>0の構成により、エアーが減速してからワークWに衝突すると考えられる。
【0050】
これに対し、比較例1では、径方向通路52の開口端から噴出した高速のエアーが十分減速することなくワークWへ衝突する。その結果、ワークWを非接触支持装置10から引き離すようにエアーがワークWに衝突してしまい、リフト力が減少すると考えられる。
【0051】
図11に、比較例2の断面図を示す。比較例2は、上記特許文献1の特開2021-130162号公報の
図3~
図6等に記載された構成である。比較例2の非接触支持装置は、エアーが流入する環状通路部150、内側凹部160、平面部161、径方向通路170及び径方向溝部171を備えている。
【0052】
比較例2は、径方向通路170の通路面積が徐々に小さくなっておらず、コーナー部が曲面状になっていない。このため、エアーの流れをスムーズにできず、エアーを効果的に加速させることができない。その結果、リフト力を十分に得ることができない。
【0053】
<その他の実施形態>
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0054】
・軸線方向溝部44及び径方向溝部45それぞれの底部は、円弧状をなすものに限らず、例えば、矩形状又はV字状をなすものであってもよい。
【0055】
・径方向溝部45の開口端側が、開口端に行くほど径方向寸法が大きくなっていることにより、径方向溝部45の開口端側の通路面積が徐々に大きくなっていてもよい。
【0056】
・コーナー通路の通路面積が、軸線方向通路側から径方向通路側に向かって徐々に小さくなっている構成であれば、コーナー通路の内側コーナー部は、曲面状をなすものに限らず、例えば
図12に示す構成であってもよい。
図12に示す構成において、柱状凹部30の第2内周面32bと、平面部23の平坦面23aとは、内側コーナー部133によって接続されている。内側コーナー部133の内周面133aは直線状に延びている。
【0057】
また、コーナー通路の外側コーナー部も、曲面状をなすものに限らず、例えば
図12に示す構成であってもよい。
図12に示す構成において、軸線方向溝部44の底部と、径方向溝部45の底部とは、外側コーナー部181によって接続されている。外側コーナー部181の内周面181aは直線状に延びている。内周面181aは、軸線方向溝部44及び径方向溝部45と同様に円弧状をなしている。
【0058】
図12において、B1は、柱状凹部30の第2内周面32bと、内側コーナー部133の内周面133aとの境界線である第1境界線を示す。C1は、軸線方向溝部44の底部と、内周面181aの底部との境界点である第1境界点を示す。SA1は、第1境界線B1及び第1境界点C1を通る第1仮想面を示す。B2は、内側コーナー部133の内周面133aと、平面部23の平坦面23aとの境界線である第2境界線を示す。C2は、径方向溝部45の底部と、内周面181aの底部との境界点である第2境界点を示す。SA2は、第2境界線A2を通ってかつ軸線方向に延びる第2仮想面を示す。第1仮想面SA1と第2仮想面SA2とによって挟まれた通路がコーナー通路180である。なお、
図12において、内周面133aに対する法線も2点鎖線で示している。
【0059】
内周面181aにおいて、第1境界点C1から第2境界点C2までの間に位置する境界点を対象境界点とする。対象境界点を第1境界点C1から第2境界点C2に移動させるにつれて、第1境界線B1と対象境界点との距離が徐々に小さくなる。つまり、コーナー通路180のうち、第1境界線B1及び第2境界点C2を通る仮想面と、第1仮想面SA1とで囲まれる通路において、径方向通路52側にいくほど通路面積が徐々に小さくなる。
【0060】
・非接触支持装置を3Dプリンタで製造する場合、メインボディ及びサブボディといった2つのボディ部材で非接触支持装置が構成されることに限らず、1つのボディ部材で非接触支持装置が構成されていてもよい。
【0061】
・非接触支持装置に供給される気体は、エアーに限らず、例えば窒素であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
10…非接触支持装置、20…メインボディ、21…ワーク支持部、40…サブボディ、51…軸線方向通路、52…径方向通路、80…コーナー通路。
【要約】
【課題】ワークのリフト力を増加させることができる非接触支持装置を提供する。
【解決手段】非接触支持装置10は、メインボディ20及びサブボディ40を備えている。メインボディ20の軸線方向における第1端部には、環状をなすワーク支持部21が形成されている。メインボディ20のうちワーク支持部21よりも径方向内側部分には、軸線方向における第2端部側に凹む内側凹部22が形成されている。各ボディ20,40には、気体が供給される軸線方向通路51と、径方向外側に向かって延びて内側凹部22に開口する径方向通路52と、軸線方向通路51の下流側の端部と径方向通路52の上流側の端部とを接続するコーナー通路80とが形成されている。コーナー通路80の通路面積は、軸線方向通路51側から径方向通路52側に向かって徐々に小さくなっている。
【選択図】
図3