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特許7527702橋梁変形監視方法、コンピュータ機器及びコンピュータ可読記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】橋梁変形監視方法、コンピュータ機器及びコンピュータ可読記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G06N 3/0442 20230101AFI20240729BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
G06N3/0442
E01D22/00 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024103252
(22)【出願日】2024-06-26
【審査請求日】2024-06-26
(31)【優先権主張番号】202410366815.5
(32)【優先日】2024-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522046210
【氏名又は名称】台州学院
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】何 海杰
(72)【発明者】
【氏名】陳 謙
(72)【発明者】
【氏名】曹 紀興
(72)【発明者】
【氏名】段 元鋒
(72)【発明者】
【氏名】曹 建斌
(72)【発明者】
【氏名】馮 倩
【審査官】宮司 卓佳
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第116070508(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第116542146(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112362756(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113723010(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113836783(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第117421816(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0391037(US,A1)
【文献】Yang Deng他,Correlation model of deflection, vehicle load, and temperature for in-service bridge using deep learning and structual health monitoring,Structural Control and Health Monitoring [online],John Wiley & Sons Ltd.,2022年12月,Vol.29,No.12,p.1-p.20,https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/stc.3113
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 3/04-3/045
E01D 22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁変形監視方法であって、
ターゲット橋梁の主径間中径間断面上の設定位置の温度データと撓みデータを収集することと、
データクレンジングモデルを用いて前記温度データと前記撓みデータのデータ分類を行い、データ分類結果に基づいてクレンジング後の温度データと撓みデータを得ることであって、前記データクレンジングモデルは、第一のトレーニングセットを用いてBiGRUベースのニューラルネットワークをトレーニングして得られたものであり、前記データ分類は、異常値タイプと正常値タイプとを含むことと、
クレンジング後の撓みデータから温度感応撓みデータを抽出することと、
温度感応撓みデータと温度感応撓みデータに対応する温度を圧縮処理して、圧縮後の温度データと撓みデータを得ることと、
圧縮後の温度データと撓みデータを用いて第二のトレーニングセットを構築し、前記第二のトレーニングセットを用いてGRUネットワーク構造をトレーニングして、温度感応撓みモデルを得ることであって、
GRUネットワークは、式(1)~式(4)によって構築され、
ここで、hは、t時刻のシステム状態を表し、ht-1は、t-1時刻のシステム状態を表し、zは、t時刻の更新ゲートを表し、rは、t時刻のリセットゲートを表し、xは、t時刻の入力を表し、σは、sigmoid関数を表し、wは、更新ゲート重みを表し、wは、リセットゲート重みを表し、wは、t時刻の候補システム状態を計
力を表し、
ここで、双方向伝播プロセスは、式(5)~式(7)によって構築され、
テム状態を表すことと、
前記温度データと前記撓みデータを前記データクレンジングモデルに入力する前に、前記温度データと前記撓みデータをそれぞれシーケンスの形式に整理して、データ整列と適切な標準化を確保し、前記温度感応撓みモデルを用いて前記ターゲット橋梁の温度感応変形を監視することとを含む、ことを特徴とする橋梁変形監視方法。
【請求項2】
前記設定位置は、主桁対角線と主桁とを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の橋梁変形監視方法。
【請求項3】
前記BiGRUベースのニューラルネットワークは、順に接続されるシーケンス入力層と、第一のBiGRUと、第二のBiGRUと、第一の完全接続層と、第二の完全接続層と、Softmax層と、分類出力層とを含み、
前記第一のトレーニングセットにおけるサンプルデータは、第一の入力データと第一のラベルデータとを含み、前記第一の入力データは、温度データの時系列に基づいて得られる特徴データ又は撓みデータの時系列に基づいて得られる特徴データであり、前記第一のラベルデータは、前記第一の入力データに対応する分類であり、前記分類は、正常タイプと異なる異常タイプとを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の橋梁変形監視方法。
【請求項4】
クレンジング後の撓みデータから温度感応撓みデータを抽出することは、具体的に、
特異スペクトル分析方法を用いてクレンジング後の撓みデータから温度感応撓みデータを抽出することを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の橋梁変形監視方法。
【請求項5】
温度感応撓みデータと温度感応撓みデータに対応する温度を圧縮処理して、圧縮後の温度データと撓みデータを得ることは、具体的に、
温度感応撓みデータと温度感応撓みデータに対応する温度データを、設定時間帯ごとに平均値を取る方法を用いて圧縮し、圧縮後の温度データと撓みデータを得ることを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の橋梁変形監視方法。
【請求項6】
第二のトレーニングセットにおけるサンプルデータは、第二の入力データと第二のラベルデータとを含み、前記第二の入力データは、主桁頂部温度と、主桁底部温度と、主桁垂直方向温度差とを含み、前記第二のラベルデータは、前記第二の入力データに対応する温度感応撓みデータである、ことを特徴とする請求項1に記載の橋梁変形監視方法。
【請求項7】
前記第二のトレーニングセットを用いてGRUネットワーク構造をトレーニングして、温度感応撓みモデルを得ることは、具体的に、
t検定方法を利用してトレーニングされたGRUネットワーク構造を検定し、不合格の場合、検定に合格するまで、GRUネットワーク構造に対して引き続きトレーニングを行い、前記温度感応撓みモデルを得ることを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の橋梁変形監視方法。
【請求項8】
前記温度感応撓みモデルを用いて前記ターゲット橋梁の温度感応変形を監視することは、具体的に、
前記ターゲット橋梁の検出すべき温度データを前記温度感応撓みモデルに入力して、撓み予測値を得ることと、
前記撓み予測値が警報閾値を超える場合、警報を行うこととを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の橋梁変形監視方法。
【請求項9】
メモリと、プロセッサと、メモリ上に記憶されており、プロセッサ上で運行できるコンピュータプログラムとを含むコンピュータ機器であって、前記プロセッサは、前記コンピュータプログラムを実行して請求項1から8のいずれか1項に記載の方法のステップを実現する、ことを特徴とするコンピュータ機器。
【請求項10】
コンピュータプログラムが記憶されているコンピュータ可読記憶媒体であって、このコンピュータプログラムがプロセッサにより実行される時、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法のステップを実現する、ことを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁監視の技術分野に関し、特に橋梁変形監視方法、コンピュータ機器及びコンピュータ可読記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁安全監視の目的は、監視機器を布設し、収集した時系列データを分類、整理、計算、分析することにより、橋梁の作動状態を把握し、その安全運行を保障することである。しかしながら、センシング通信技術、コンピュータ技術とデータ科学技術の発展に制限され、監視データスマート処理と分析に基づく橋梁状態監視と安全警報理論及び技術は、まだ模索段階にあり、なお高速鉄道の橋梁が置かれている環境が複雑で、関連する要素が多く、監視データに隠された重要な情報を発掘することが往々にして困難で、橋梁監視システムデータが多いが精確ではないという問題を解決することがずっと困難である。また、一般的に使用される人件費が比較的高く、リソースの浪費につながることもある。
【0003】
橋梁工事にとって、垂直方向変形は、非常に重要な監視項目である。橋梁の垂直方向変形を引き起こす荷重は、主に温度と車両の二つの荷重であるため、橋梁線形基準値モデルの確立に関する考え方も、温度感応撓みモデルの確立と車両感応撓みモデルの確立の二つに分けられる。従来の研究の多くは、線形回帰方法によって、主桁温度と主桁撓みとの間の温度感応撓みモデルを確立し、一般的には主桁温度をさらに主桁頂部温度、主桁底部温度と主桁垂直方向温度差として抽出した後、この三種類の温度変数を利用して多元線形回帰分析を行うことで該当する温度感応撓みモデルを得ることができるが、その精度は、依然として工事の実際の需要を満たすことができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、監視精度を向上させる橋梁変形監視方法、機器及び媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を実現するために、本発明は、以下のような方案を提供する。
【0006】
橋梁変形監視方法であって、
ターゲット橋梁の主径間中径間断面上の設定位置の温度データと撓みデータを収集することと、
データクレンジングモデルを用いて前記温度データと前記撓みデータのデータ分類を行い、データ分類結果に基づいてクレンジング後の温度データと撓みデータを得ることであって、前記データクレンジングモデルは、第一のトレーニングセットを用いてBiGRUベースのニューラルネットワークをトレーニングして得られたものであり、前記データ分類は、異常値タイプと正常値タイプとを含むことと、
クレンジング後の撓みデータから温度感応撓みデータを抽出することと、
温度感応撓みデータと温度感応撓みデータに対応する温度を圧縮処理して、圧縮後の温度データと撓みデータを得ることと、
圧縮後の温度データと撓みデータを用いて第二のトレーニングセットを構築し、前記第二のトレーニングセットを用いてGRUネットワーク構造をトレーニングして、温度感応撓みモデルを得ることと、
前記温度感応撓みモデルを用いて前記ターゲット橋梁の温度感応変形を監視することとを含む。
【0007】
選択的に、前記設定位置は、主桁対角線と主桁とを含む。
【0008】
選択的に、前記BiGRUベースのニューラルネットワークは、順に接続されるシーケンス入力層と、第一のBiGRUと、第二のBiGRUと、第一の完全接続層と、第二の完全接続層と、Softmax層と、分類出力層とを含み、
前記第一のトレーニングセットにおけるサンプルデータは、第一の入力データと第一のラベルデータとを含み、前記第一の入力データは、温度データの時系列に基づいて得られる特徴データ又は撓みデータの時系列に基づいて得られる特徴データであり、前記第一のラベルデータは、前記第一の入力データに対応する分類であり、前記分類は、正常タイプと異なる異常タイプとを含む。
【0009】
選択的に、クレンジング後の撓みデータから温度感応撓みデータを抽出することは、具体的に、
特異スペクトル分析方法を用いてクレンジング後の撓みデータから温度感応撓みデータを抽出することを含む。
【0010】
選択的に、温度感応撓みデータと温度感応撓みデータに対応する温度を圧縮処理して、圧縮後の温度データと撓みデータを得ることは、具体的に、
温度感応撓みデータと温度感応撓みデータに対応する温度データを、設定時間帯ごとに平均値を取る方法を用いて圧縮し、圧縮後の温度データと撓みデータを得ることを含む。
【0011】
選択的に、第二のトレーニングセットにおけるサンプルデータは、第二の入力データと第二のラベルデータとを含み、前記第二の入力データは、主桁頂部温度と、主桁底部温度と、主桁垂直方向温度差とを含み、前記第二のラベルデータは、前記第二の入力データに対応する温度感応撓みデータである。
【0012】
選択的に、前記第二のトレーニングセットを用いてGRUネットワーク構造をトレーニングして、温度感応撓みモデルを得ることは、具体的に、
t検定方法を利用してトレーニングされたGRUネットワーク構造を検定し、不合格の場合、検定に合格するまで、GRUネットワーク構造に対して引き続きトレーニングを行い、前記温度感応撓みモデルを得ることを含む。
【0013】
選択的に、前記温度感応撓みモデルを用いて前記ターゲット橋梁の温度感応変形を監視することは、具体的に、
前記ターゲット橋梁の検出すべき温度データを前記温度感応撓みモデルに入力して、撓み予測値を得ることと、
前記撓み予測値が警報閾値を超える場合、警報を行うこととを含む。
【0014】
コンピュータ機器であって、メモリと、プロセッサと、メモリ上に記憶されており、プロセッサ上で運行できるコンピュータプログラムとを含み、前記プロセッサは、前記コンピュータプログラムを実行して前記橋梁変形監視方法のステップを実現する。
【0015】
コンピュータ可読記憶媒体であって、その上には、コンピュータプログラムが記憶されており、このコンピュータプログラムがプロセッサにより実行される時、前記橋梁変形監視方法のステップを実現する。
【発明の効果】
【0016】
本発明による具体的な実施例によれば、本発明は、以下の技術的効果を開示した。
【0017】
本発明は、GRUニューラルネットワークに基づく温度感応撓みモデルを採用し、計算リソースが少なく、オーバーフィッティングリスクを減少させることができ、トレーニング速度が速く、また深層学習技術によって監視データにおける温度と温度感応撓みデータ特徴をマイニングして第二のトレーニングセットを構築し、GRUネットワーク構造のトレーニングによって温度感応撓みモデルを得て、監視精度を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施例1による橋梁変形監視方法のフローチャートである。
図2】本発明の実施例1による橋梁変形監視方法の具体的なフローチャートである。
図3】本発明の実施例1によるGRU構造の概略図である。
図4】本発明の実施例1によるデータクレンジングモデル構造の概略図である。
図5】本発明の実施例1によるSSA方法を用いた温度感応撓みの抽出フローチャートである。
図6】本発明の実施例1による温度感応撓みモデル構造の概略図である。
図7】本発明の実施例1による警報フローチャートである。
図8】コンピュータ機器の内部構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の目的は、監視精度を向上させる橋梁変形監視方法、機器及び媒体を提供することである。
【0020】
ゲート制御サイクルユニットは、サイクルニューラルネットワークの変種であり、長短期記憶ネットワークの別の変種に比べて、GRUニューラルネットワークは、以下の利点を有し、即ち、LSTMのトレーニングパラメータが多く、複雑度もそれに伴って向上し、オーバーフィッティングのリスクもあるが、GRUは、より少ないパラメータを有し、計算上で相対的により効率的で、トレーニング速度がより速く、GRUは、更新ゲートとリセットゲートのみを含むが、LSTMは、入力ゲート、忘却ゲートと出力ゲートを有し、それによってGRUは、データが比較的少ない場合又はデータ雑音が比較的大きい場合にトレーニングしやすくなり、パラメータが比較的少ないため、いくつかのリソースが制限されている環境においてGRUは、優位性を有する。全体的に言えば、GRUは、軽量レベルのLSTMであり、本発明のコア技術は、GRUニューラルネットワークである。
【0021】
<実施例1>
図1図2に示すように、本実施例における橋梁変形監視方法は、以下のステップを含む。
【0022】
ステップ101:ターゲット橋梁の主径間中径間断面上の設定位置の温度データと撓みデータを収集する。
【0023】
ステップ102:データクレンジングモデルを用いて前記温度データと前記撓みデータのデータ分類を行い、データ分類結果に基づいてクレンジング後の温度データと撓みデータを得、前記データクレンジングモデルは、第一のトレーニングセットを用いてBiGRUベースのニューラルネットワークをトレーニングして得られたものであり、前記データ分類は、異常値タイプと正常値タイプとを含む。
【0024】
ステップ103:クレンジング後の撓みデータから温度感応撓みデータを抽出する。
【0025】
ステップ104:温度感応撓みデータと温度感応撓みデータに対応する温度を圧縮処理して、圧縮後の温度データと撓みデータを得る。
【0026】
ステップ105:圧縮後の温度データと撓みデータを用いて第二のトレーニングセットを構築し、前記第二のトレーニングセットを用いてGRUネットワーク構造をトレーニングして、温度感応撓みモデルを得る。
【0027】
ステップ106:前記温度感応撓みモデルを用いて前記ターゲット橋梁の温度感応変形を監視する。
【0028】
ここで、ステップ101において、前記設定位置は、主桁対角線と主桁とを含み、具体的には、それぞれ主径間中径間断面における主桁対角線と主桁から温度と撓みデータを収集する。
【0029】
主桁対角線は、上下弦材の頂板と底板とを含み、主桁は、主桁の桁下弦材の中央を含む。
【0030】
ステップ101は、具体的に、監視橋梁の中径間断面における主桁対角線と主桁を選択し、それぞれ第一のモノのインターネット温度センサW1、第二のモノのインターネット温度センサW2、第三のモノのインターネット温度センサW3、第四のモノのインターネット温度センサW4とモノのインターネット撓みセンサNを設定することを含む。一般的には、中径間断面における中径間位置の温度データ関連性は、特に明らかであり、且つデータが比較的滑らかであるため、中径間位置のポイントを選択してデータの収集を行う。
【0031】
ここで、ステップ102は、BiGRUベースのニューラルネットワークによって温度と撓みデータを識別、クレンジングする。データ分類結果に基づいてクレンジング後の温度データと撓みデータを得ることは、具体的に、データ分類における異常値タイプのデータを除外し、クレンジング後の温度データと撓みデータを得ることを含む。
【0032】
BiGRUニューラルネットワークは、GRUニューラルネットワークが以前の値を捕捉することしかできず、将来の値を使えないということを克服するために確立された双方向伝播ニューラルネットワークである。BiGRUは、二つの逆方向の単独の隠蔽GRU層によって同一の出力に組み合わせられる。このようにサブ出力層は、以前と将来の値を利用することができる。
【0033】
GRUの内部構造は、図3に示すとおりである。
【0034】
GRUニューラルネットワークは、式(1)~式(4)によって構築され、
ここで、hは、t時刻のシステム状態を表し、ht-1は、t-1時刻のシステム状態を表し、zは、t時刻の更新ゲートを表し、rは、t時刻のリセットゲートを表し、xは、t時刻の入力を表し、σは、sigmoid関数を表し、wは、更新ゲート重みを表し、wは、リセットゲート重みを表し、wは、t時刻の候補システム状態を計
力を表す。
【0035】
ここで、双方向伝播プロセスは、式(5)~式(7)によって構築され、
テム状態を表す。
【0036】
前記温度データと前記撓みデータを前記データクレンジングモデルに入力する前に、前記温度データと前記撓みデータをそれぞれシーケンスの形式に整理して、データ整列と適切な標準化を確保する。
【0037】
図4に示すように、前記BiGRUベースのニューラルネットワークは、順に接続されるシーケンス入力層と、第一のBiGRUと、第二のBiGRUと、第一の完全接続層と、第二の完全接続層と、Softmax層と、分類出力層とを含む。
【0038】
前記第一のトレーニングセットにおけるサンプルデータは、第一の入力データと第一のラベルデータとを含み、前記第一の入力データは、温度データの時系列に基づいて得られる特徴データ(9つの特徴表現)又は撓みデータの時系列に基づいて得られる特徴データ(9つの特徴表現)であり、前記第一のラベルデータは、前記第一の入力データに対応する分類であり、前記分類は、正常タイプと異なる異常タイプとを含む。
【0039】
特徴データは、9つの特徴表現を含み、各特徴表現は、一つのベクトルである。1分ごとに特徴抽出を行い、選択した特徴表現数に応じて、1時間のトレーニングサンプルサイズは、9×60である。
【0040】
選択可能な9つの特徴表現は、1)データの標準偏差、2)データの最大値と最小値との差、3)平均値をデータ幅で割ったもの、4)データの平均値、5)データの標準偏差、6)データの中央値、7)データの二乗平均レベル、8)最大値を80パーセンタイル値で割ったデータ、9)平均値を80パーセンタイル値で割ったデータである。
【0041】
収集された温度と撓み元データ信号について、センサ異常タイプ(異常値タイプ)に応じてマークデータセットを分類統計し、異なる異常タイプの分布特徴を取得する。
【0042】
マークの異常値タイプは、データ欠落、データジャンプ、データドリフトとデータトレンド異常を含む。
【0043】
ここで、アルゴリズム閾値を設定する時、できる限りデータ偽陰性率を0.5%以下に低減させ、偽陽性を適切に緩和する。
【0044】
ステップ102で抽出された特徴データ形成データセットは、行列として入力され、サンプルサイズは、n×9×60で表される。
【0045】
BiGRUベースのニューラルネットワークにおける隠蔽層のニューロン数を16に設定し、SELUは、隠蔽層の活性化関数として用いられ、Softmaxは、出力層に用いられる。
【0046】
SELUは、指数線形ユニットのスケーリングされたバージョンであり、正しく初期化されれば、線形層を使用するフィードフォワードネットワークは、自己正規化される。
【0047】
各層の出力は、ほぼ0に等しい平均値と1に等しい標準偏差を有し、これは、勾配の消失又は爆発問題を防止し、深層ネットワークの構築を許容するのに役立つ。
【0048】
BiGRUベースのニューラルネットワークのトレーニングに採用される損失関数は、Huber Loss関数である。Huber Lossは、小さな誤差と大きな誤差に対する感度のバランスをとることができる。Huber Loss関数の式は、以下のとおりである。
【0049】
は、予測データであり、xは、モデル入力データであり、δは、パラメータであり、δ値の大きさは、Huber Lossの平均二乗誤差と平均絶対誤差に対する偏重性を決める。
【0050】
前記BiGRUモデルは、異なるデータ異常タイプに対して比較的に良いクレンジング効果があり、最後に出力される温度と撓みデータは、その後のモデルの確立に用いられる。
【0051】
ここで、ステップ103において、図5に示すように、特異スペクトル分析方法を用いてクレンジング後の撓みデータから温度感応撓みデータを抽出することは、具体的に、
橋梁の監視を必要とする主桁の桁下弦材中央にひずみゲージ、変位センサ、加速度計を取り付けて橋梁の車両感応撓みを連続的に監視することを含み、ここで、W3、W4は、主桁の温度変化を記録して、データから温度による影響を分離する。前記モノのインターネットセンサは、SSA方法の使用を完了するために用いられる。
【0052】
すべてのセンサのデータを時間同期し、主に交通量の多い時間帯のデータを分析する。
【0053】
統計的確率知識に基づいて、データの初歩処理を行い、ひずみデータを分析して異なる時点で橋を渡る車両の車種(乗用車、貨物車、列車など)を識別し、そして車両のタイプに基づいて荷重を推定する。
【0054】
監視結果に基づいて、時系列データを単独の車両橋渡りイベントに分割する。各イベントのデータを単独で分析し、この車両感応撓みを抽出する。
【0055】
車両感応撓みデータの時系列を、適切な遅延ウィンドウサイズとオーバーラップウィンドウを選択することによって形成される軌跡行列に構築する。構築された軌跡行列に対して特異値分解(SVD)を行う。
【0056】
遅延ウィンドウサイズLは、選択されるデータシーケンスの長さの半分よりも小さい。時系列の開始点から開始し、長さLのデータセグメントを軌跡行列の1番目の列としてとり、そして1時間単位だけ右に移動し、次の長さLのデータセグメントを2番目の列としてとる。時系列の最後までこのプロセスを繰り返す。最終軌跡行列の次元は、L×K(Kは、総列数であり、時系列長さからLを引いたものに1を加えたものに等しい)である。異なる実際の状況に応じて、具体的なL値は、最適な結果を得るために継続的に試される必要がある。
【0057】
特異値分解結果から選択された特異ベクトルを利用して、逆変換により元データを再構築し、再構築後の時系列は、主な車両感応撓み信号を含む。車両感応撓みは、一般的に中程度の特異値に対応する。
【0058】
再構築後の時系列に基づいて、クレンジング後の撓みデータにモードマッチング又はスライドウィンドウ技術を用いて車両感応撓みデータを除外し、最後の温度感応撓みデータを得る。
【0059】
ここで、ステップ104は、具体的に、
温度感応撓みデータと温度感応撓みデータに対応する温度データを、設定時間帯ごとに平均値を取る方法を用いて圧縮し、圧縮後の温度データと撓みデータを得ることを含む。
【0060】
第二のトレーニングセットにおけるサンプルデータは、第二の入力データと第二のラベルデータとを含み、前記第二の入力データは、主桁頂部温度Wと、主桁底部温度Wと、主桁垂直方向温度差Wとを含み、前記第二のラベルデータは、前記第二の入力データに対応する温度感応撓みデータである。
【0061】
ここで、Wは、第一のモノのインターネット温度センサで収集された温度を表し、Wは、第二のモノのインターネット温度センサで収集された温度を表し、Wは、第三のモノのインターネット温度センサで収集された温度を表し、Wは、第四のモノのインターネット温度センサで収集された温度を表す。
【0062】
現在時刻の最初の5時間の温度データと温度感応撓みデータを取得し、即ち最初の30個のデータポイントを入力し、30番目の時刻から列挙し、即ち30時刻ごとのデータポイントを一つのシーケンスとして入力する。例えば、30番目の時刻に1~30のデータセットを入力し、31番目の時刻に2~31のデータセットを入力し、これに基づき類推する。表1に示すとおりである。
【0063】
これらのデータの最初の80%をトレーニングセットとし、最後の20%をテストセットとする。
【0064】
GRUネットワーク構造は、図6に示すように、GRUネットワーク構造の入力層が計30ユニットであり、データ入力の次元が3であり、即ちW、隠蔽層は、計64ユニットであり、図6においてX、X、…、Xは、いずれもGRUネットワーク構造の入力であり、GRU、GRU、…、GRUは、いずれもGRU、H、H、…であり、Ht-1は、それぞれ各GRUの出力であり、FC、FC、…、FCは、いずれも完全接続層であり、Yは、GRUネットワーク構造の出力である。入出力モードは、表1に示すとおりである。
【0065】
【0066】
GRUネットワーク構造は、SELU(Scaled ELU)を活性化関数として選択する。Huber Lossを損失関数とする。
【0067】
出力層では、多次元データは、1つの撓み出力データ、即ち温度感応撓みのニューラルネットワーク回帰値に正規化される。
【0068】
逆伝播過程において、Adamアルゴリズムを利用してGRUパラメータを絶えず最適化する。特定の数の順方向計算+逆伝播の過程を経た後、トレーニングされたGRUに基づく温度感応撓みモデルを得る。
【0069】
トレーニング中にテストセットを用いてモデルの性能をモニタリングし、オーバーフィッティングを回避する。
【0070】
ここで、ステップ105は、具体的に、
t検定(student’s test)方法を利用してトレーニングされたGRUネットワーク構造を検定し、不合格の場合、検定に合格するまで、GRUネットワーク構造に対して引き続きトレーニングを行い、前記温度感応撓みモデルを得ることを含む。
【0071】
さらに、温度感応撓みのGRUニューラルネットワーク回帰値と実測値とをt検定し、撓み偏差を縮小してテストすることにより、比較的小さい撓み異常の判別を実現する。
【0072】
t検定式は、次のように表される。
【0073】
【0074】
【0075】
算出されたt値が、与えられた自由度と有意性レベルにおけるt分布表における閾値を超えた場合、モデルのトレーニングに成功しなかったと考えられ、トレーニングを再実施する必要がある。
【0076】
ここで、図7に示すように、ステップ106は、具体的に、
前記ターゲット橋梁の検出すべき温度データを前記温度感応撓みモデルに入力して、撓み予測値を得ることと、
前記撓み予測値が警報閾値を超える場合、警報を行うこととを含む。
【0077】
モデリング結果に基づいて警報閾値を設定し、予測値が閾値を超えた場合、警報を実現する。
【0078】
橋梁の実際の状況に応じて、温度感応撓みモデルから出力される撓み理論値と組み合わせて撓み変化の閾値を設定し、異なる状況をシミュレートして閾値の有効性をテストする。
【0079】
予測される撓み値、閾値を超える程度、推奨される対応策(事先設定)を、自動化システムを介して電子メール、メッセージ又は専用アプリケーションプログラムの形式で保守担当者、橋梁管理者に送信する。
【0080】
さらに、異常位置が発生した具体的な位置を提供し、撓み異常のレベルに基づいて、具体的な警報レベルを決定する。予測撓みデータと履歴データとの比較のグラフを提供し、異常範囲を強調して表示する。
【0081】
さらに、予測撓みが閾値を超えた程度に応じて、「正常モニタリング」、「警告」「一次警報」「二次警報」に分けられる。
【0082】
さらに、0%~5%を正常モニタリング、5%~10%を警告、10%~20%を一次警報、20%以上を二次警報とする。
【0083】
緊急応答フロー、例えば橋梁の一時的な閉鎖、現場検査の実施、保守作業の起動をトリガーする。
【0084】
本発明方案の有益な効果は、以下のとおりである。
【0085】
現段階で橋梁の温度感応変形分野に人工知能管理がない窮状を打破し、従来のLSTM方法による予測に対して、GRUは、より少ない計算リソースを必要とし、オーバーフィッティングのリスクを減少させることができ、且つより速いトレーニング速度を持っている。本発明で採用されるのは、基本的に時間スパンが比較的小さいデータセットである一方、GRUは、比較的短いシーケンスにおいてLSTMよりも時間の依存性をより効果的に捕捉することができる。本発明は、深層学習技術によって監視データにおける温度と温度感応撓みデータ特徴をマイニングし、数理統計知識と組み合わせて、トレーニングが完了すると、正確な予測を実現することができる。
【0086】
警報システムの構築後、手動干渉を大幅に減少させ、橋梁の自動化検出と警報を実現することができる。採用されるモノのインターネットセンサは、データの無線伝送を実現することができ、即ち前期配線の作業量を減少させることができるだけでなく、後期の回線メンテナンスコストを減少させることもできる。
【0087】
<実施例2>
コンピュータ可読記憶媒体であって、その上には、コンピュータプログラムが記憶されており、このコンピュータプログラムがプロセッサにより実行される時、実施例1における橋梁変形監視方法のステップを実現する。
【0088】
<実施例3>
コンピュータプログラム製品であって、コンピュータプログラムを含み、このコンピュータプログラムがプロセッサにより実行される時、実施例1における橋梁変形監視方法のステップを実現する。
【0089】
<実施例4>
コンピュータ機器であって、その内部構造図は、図8に示されてもよい。このコンピュータ機器は、プロセッサと、メモリと、入力/出力インターフェース(Input/Output、I/Oと略称される)と、通信インターフェースとを含む。ここで、プロセッサ、メモリと入力/出力インターフェースは、システムバスを介して接続され、通信インターフェースは、入力/出力インターフェースを介してシステムバスに接続される。ここで、このコンピュータ機器のプロセッサは、計算と制御能力を提供するために用いられる。このコンピュータ機器のメモリは、不揮発性記憶媒体と内部メモリとを含む。この不揮発性記憶媒体には、オペレーティングシステム、コンピュータプログラムとデータベースが記憶されている。この内部メモリは、不揮発性記憶媒体におけるオペレーティングシステムとコンピュータプログラムの運行のための環境を提供する。このコンピュータ機器のデータベースは、処理すべき事務を記憶するために用いられる。このコンピュータ機器の入力/出力インターフェースは、プロセッサと外部機器との間で情報を交換するために用いられる。このコンピュータ機器の通信インターフェースは、ネットワーク接続を介して外部の端末と通信するために用いられる。このコンピュータプログラムがプロセッサにより実行される時、実施例1における橋梁変形監視方法を実現する。
【0090】
説明すべきこととして、本発明に関わる対象情報(対象機器情報、対象個人情報などを含むが、それらに限らない)とデータ(分析のためのデータ、記憶のためのデータ、提示のためのデータなどを含むが、それらに限らない)は、いずれも対象者の許可又は各当事者の十分な許可を得た情報とデータである。
【0091】
当業者であれば理解できるように、上記実施例の方法における全部又は一部のフローを実現することは、コンピュータプログラムによって関連するハードウェアに命令することによって完了されることができ、前記のコンピュータプログラムは、不揮発性コンピュータ可読記憶媒体に記憶されてもよく、このコンピュータプログラムが実行される時、上記のような各方法の実施例のフローを含んでもよい。ここで、本発明による各実施例に使用されるメモリ、データベース又は他の媒体への任意の援用は、いずれも不揮発性メモリと揮発性メモリとのうちの少なくとも一つを含んでもよい。不揮発性メモリは、リードオンリーメモリ、磁気テープ、フロッピーディスク、フラッシュメモリ、光メモリ、高密度埋め込み式不揮発性メモリ、抵抗性メモリ、磁気変化メモリ、強誘電体メモリ、相変化メモリ、グラフェンメモリなどを含んでもよい。揮発性メモリは、ランダムアクセスメモリ又は外部高速キャッシュメモリなどを含んでもよい。本発明による各実施例に関わるデータベースは、リレーショナルデータベースと非リレーショナルデータベースとのうちの少なくとも一つを含んでもよい。非リレーショナルデータベースは、ブロックチェーンに基づく分散型データベースなどを含んでもよいが、これらに限らない。本発明による各実施例に関わるプロセッサは、汎用プロセッサ、中央プロセッサ、グラフィックスプロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ、プログラマブル論理器、量子計算ベースのデータ処理論理器などであってもよく、これらに限らない。
【要約】
【要約】本発明は、橋梁変形監視方法、機器及び媒体を開示し、橋梁監視技術分野に関し、方法は、ターゲット橋梁の主径間中径間断面上の設定位置の温度データと撓みデータを収集することと、データクレンジングモデルを用いて温度データと撓みデータのデータ分類を行い、クレンジング後の温度データと撓みデータを得ることであって、データクレンジングモデルは、第一のトレーニングセットを用いてBiGRUベースのニューラルネットワークをトレーニングして得られたものであり、クレンジング後の撓みデータから温度感応撓みデータを抽出することと、温度感応撓みデータと温度感応撓みデータに対応する温度を圧縮処理して、圧縮後の温度データと撓みデータを得ることと、圧縮後の温度データと撓みデータを用いて第二のトレーニングセットを構築し、第二のトレーニングセットを用いてGRUネットワーク構造をトレーニングして、温度感応撓みモデルを得ることと、温度感応撓みモデルを用いてターゲット橋梁の温度感応変形を監視することとを含む。本発明は、橋梁変形の監視精度を向上させる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8