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特許7527703電池部材及びその製造方法、並びに二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】電池部材及びその製造方法、並びに二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0565 20100101AFI20240729BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240729BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240729BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20240729BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20240729BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
H01M10/0565
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M4/139
H01B1/06 A
H01B13/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021519992
(86)(22)【出願日】2019-05-22
(86)【国際出願番号】 JP2019020345
(87)【国際公開番号】W WO2020235065
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】小川 秀之
(72)【発明者】
【氏名】西村 拓也
(72)【発明者】
【氏名】瀬良 祐介
(72)【発明者】
【氏名】堀川 真代
(72)【発明者】
【氏名】織田 明博
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-216848(JP,A)
【文献】国際公開第2016/063835(WO,A1)
【文献】特開平11-329061(JP,A)
【文献】特開2005-310445(JP,A)
【文献】特開2003-022840(JP,A)
【文献】特開2012-018909(JP,A)
【文献】国際公開第2018/193630(WO,A1)
【文献】特開2015-090777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0565
H01M 4/13
H01M 4/62
H01M 4/139
H01B 1/06
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と、前記集電体上に設けられた電極合剤層と、前記電極合剤層上に設けられたシート状の電解質層と、を備え、
前記電極合剤層は、電極活物質と、有機溶媒と、電解質塩と、有機溶媒をゲル化可能なポリマと、を含有し、前記有機溶媒がゲル状であり、
前記電解質層は、ポリマと、酸化物粒子と、電解質塩と、イオン液体と、からなる、電池部材。
【請求項2】
前記有機溶媒が炭酸エステルを含む、請求項1に記載の電池部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電池部材を備える、二次電池。
【請求項4】
有機溶媒及び電解質塩を含有する組成物を、集電体上に設けられた電極活物質を含有する電極活物質層中に加えて電極合剤層を形成する工程(a)と、
前記電極合剤層上に、ポリマ、酸化物粒子及び電解質塩を含有する電解質層を設ける工程(b)と、を備え、
前記組成物が、前記有機溶媒をゲル化可能なポリマを更に含有し、
前記工程(a)の前に、前記組成物を加熱する工程を更に備える、電池部材の製造方法。
【請求項5】
前記有機溶媒が炭酸エステルを含む、請求項4に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池部材及びその製造方法、並びに二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷の小さい電気自動車、ハイブリッド自動車の普及率が増加傾向にある。これらの自動車には、ニッケル水素電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池が搭載されている。自動車用の二次電池には、電池特性のみならず、高い安全性が求められる。二次電池の安全性を向上させる方法として、電解液を固体電解質へ変更する方法が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-107641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の二次電池においては、安全性の点で更なる改善の余地があることに加えて、安全性を損なわずに電池特性(例えば、放電特性及び容量維持率)を向上させることが必ずしもできていない。
【0005】
そこで、本発明の一側面は、安全性に優れると共に、放電特性及び容量維持率にも優れる二次電池を作製可能な電池部材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、電極合剤層に有機溶媒を用いることにより、電極活物質とイオン伝導成分である電解質塩との界面、及び、電極合剤層と電解質層との界面がそれぞれ良好に形成され、二次電池の放電特性及び容量維持率を向上させることができること、更には、有機溶媒を用いた場合、一般的には安全性が損なわれやすいところ、ポリマ、酸化物粒子及び電解質塩を含有する電解質層を用いることにより、酸化物粒子が電極間の絶縁性を担保することから、従来のポリマのみから構成されるセパレータと比較して、当該セパレータが融解するような温度でも電極間の短絡を抑制できるため、安全性も高めることができることを見出した。
【0007】
本発明の一側面は、集電体と、集電体上に設けられた電極合剤層と、電極合剤層上に設けられた電解質層と、を備え、電極合剤層は、電極活物質と、有機溶媒と、電解質塩と、を含有し、電解質層は、ポリマと、酸化物粒子と、電解質塩と、を含有する、電池部材である。
【0008】
有機溶媒は、炭酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでよい。
【0009】
電極合剤層は、有機溶媒をゲル化可能なポリマを更に含有してよい。
【0010】
本発明の他の一側面は、上記の電池部材を備える二次電池である。
【0011】
本発明の他の一側面は、有機溶媒及び電解質塩を含有する組成物を、集電体上に設けられた電極活物質を含有する電極活物質層中に加えて電極合剤層を形成する工程(a)と、電極合剤層上に、ポリマ、酸化物粒子及び電解質塩を含有する電解質層を設ける工程(b)と、を備える、電池部材の製造方法である。
【0012】
有機溶媒は、炭酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでよい。
【0013】
組成物は、有機溶媒をゲル化可能なポリマを更に含有してよい。この場合、上記製造方法は、工程(a)の前に、組成物を加熱する工程を更に備えてよい。
【0014】
組成物は、重合性化合物を更に含有してよく、重合性化合物は、重合することにより有機溶媒をゲル化可能なポリマになる化合物であってよい。この場合、上記製造方法は、工程(b)の後に、電極合剤層中の重合性化合物を重合させる工程を更に備えてよい。
【0015】
上記組成物が、有機溶媒をゲル化可能なポリマを更に含有する場合、及び、重合することにより有機溶媒をゲル化可能なポリマになる重合性化合物を更に含有する場合、有機溶媒を揮発させる工程を必要とせずに有機溶媒のゲル化が可能であるため、所望の特性を有する二次電池をより好適に得ることができる。加えて、有機溶媒と当該ポリマ又は重合性化合物とを電極合剤層に予め添加した上で、有機溶媒をゲル化させることにより、正極、電解質層及び負極を積層した後で電解液を注液する必要がなくなるため、高エネルギ密度化のために二次電池を大面積化したときに問題となり得る電解液の浸透性(特に電極合剤層への浸透性)を確保できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一側面によれば、安全性に優れると共に、放電特性及び容量維持率にも優れる二次電池を作製可能な電池部材及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、一実施形態に係る二次電池を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示した二次電池の電極群の一実施形態を示す分解斜視図である。
図3図3(a)は一実施形態に係る二次電池用電池部材(正極部材)を示す模式断面図であり、図3(b)は他の一実施形態に係る二次電池用電池部材(負極部材)を示す模式断面図である。
図4図4は、二次電池の電極群の他の一実施形態を示す分解斜視図である。
図5図5は、他の一実施形態に係る二次電池用電池部材(バイポーラ電極部材)を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を適宜参照しながら、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。各図における構成要素の大きさは概念的なものであり、構成要素間の大きさの相対的な関係は各図に示されたものに限定されない。
【0019】
本明細書における数値及びその範囲は、本発明を制限するものではない。本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書において段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載される数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0020】
図1は、一実施形態に係る二次電池を示す斜視図である。図1に示すように、二次電池1は、正極、負極、及び電解質層から構成される電極群2と、電極群2を収容する袋状の電池外装体3とを備えている。正極及び負極には、それぞれ正極集電タブ4及び負極集電タブ5が設けられている。正極集電タブ4及び負極集電タブ5は、それぞれ正極及び負極が二次電池1の外部と電気的に接続可能なように、電池外装体3の内部から外部へ突き出している。
【0021】
電池外装体3は、例えばラミネートフィルムで形成されていてよい。ラミネートフィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の樹脂フィルムと、アルミニウム、銅、ステンレス鋼等の金属箔と、ポリプロピレン等のシーラント層とがこの順で積層された積層フィルムであってよい。
【0022】
図2は、図1に示した二次電池の電極群2の一実施形態を示す分解斜視図である。図2に示すように、一実施形態に係る電極群2Aは、正極6、電解質層7、及び負極8をこの順に備える。正極6は、正極集電体9と、正極集電体9上に設けられた正極合剤層10とを備えている。正極6の正極集電体9には、正極集電タブ4が設けられている。負極8は、負極集電体11と、負極集電体11上に設けられた負極合剤層12とを備えている。負極8の負極集電体11には、負極集電タブ5が設けられている。なお、本明細書においては、正極合剤層10及び負極合剤層12をまとめて電極合剤層と呼ぶ。同様に、後述する正極活物質及び負極活物質をまとめて電極活物質と呼ぶ。
【0023】
一実施形態において、電極群2Aには、正極集電体9と、正極合剤層10と、電解質層7とをこの順に備える第1の電池部材(正極部材)が含まれていると見ることができる。図3(a)は、一実施形態に係る二次電池用電池部材(正極部材)を示す模式断面図、すなわち第1の電池部材(正極部材)を示す模式断面図である。図3(a)に示すように、第1の電池部材13は、正極集電体9と、正極集電体9上に設けられた正極合剤層10と、正極合剤層10上に設けられた電解質層7とをこの順に備える正極部材である。
【0024】
正極集電体9は、アルミニウム、チタン、タンタル等の金属、又はそれらの合金で形成されていてよい。正極集電体9は、軽量で高い重量エネルギ密度を有するため、好ましくはアルミニウム又はその合金で形成されている。
【0025】
正極合剤層10は、一実施形態において、正極活物質と、有機溶媒と、電解質塩(「電解質塩A」ともいう)と、を含有する。
【0026】
正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物、リチウム遷移金属リン酸塩等のリチウム遷移金属化合物であってよい。
【0027】
リチウム遷移金属酸化物は、例えば、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム等であってよい。リチウム遷移金属酸化物は、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム等に含有されるMn、Ni、Co等の遷移金属の一部を、1種若しくは2種以上の他の遷移金属、又はMg、Al等の金属元素(典型元素)で置換したリチウム遷移金属酸化物であってもよい。すなわち、リチウム遷移金属酸化物は、LiM又はLiM (Mは少なくとも1種の遷移金属を含む)で表される化合物であってよい。リチウム遷移金属酸化物は、具体的には、Li(Co1/3Ni1/3Mn1/3)O、LiNi1/2Mn1/2、LiNi1/2Mn3/2等であってよい。
【0028】
リチウム遷移金属酸化物は、エネルギ密度を更に向上させる観点から、好ましくは下記式(1)で表される化合物である。
LiNiCo 2+e (1)
[式(1)中、Mは、Al、Mn、Mg及びCaからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、a、b、c、d及びeは、それぞれ0.2≦a≦1.2、0.5≦b≦0.9、0.1≦c≦0.4、0≦d≦0.2、-0.2≦e≦0.2、かつb+c+d=1を満たす数である。]
【0029】
リチウム遷移金属リン酸塩は、LiFePO、LiMnPO、LiMn 1-xPO(0.3≦x≦1、MはFe、Ni、Co、Ti、Cu、Zn、Mg、及びZrからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である)等であってよい。
【0030】
正極活物質の含有量は、正極合剤層全量を基準として、70質量%以上、80質量%以上、又は90質量%以上であってよい。正極活物質の含有量は、正極合剤層全量を基準として、99質量%以下であってよい。
【0031】
有機溶媒は、電解質塩Aを溶解し得る溶媒である。正極合剤層がポリマA(詳細は後述)を更に含有する場合、有機溶媒は、好ましくは、ポリマAを溶解し得る溶媒であり、例えば、少なくとも100℃においてポリマAを溶解し得る溶媒であってよい。なお、本明細書における有機溶媒には、イオン液体は含まれない。
【0032】
有機溶媒は、例えば、エステル、エーテル、アミド、スルホキシド及びスルホンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでよく、好ましくは、エステルを含んでいる。有機溶媒は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0033】
エステルとしては、炭酸エステル、脂肪酸エステル、ラクトン、リン酸エステル等が挙げられる。有機溶媒は、好ましくは、炭酸エステルを含んでいる。
【0034】
炭酸エステルとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、クロロエチレンカーボネート、クロロプロピレンカーボネート等が挙げられる。
【0035】
脂肪酸エステルとしては、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等が挙げられる。ラクトンとしては、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。リン酸エステルとしては、リン酸トリエステル等が挙げられる。
【0036】
エーテルは、鎖状であっても環状であってもよい。鎖状のエーテルとしては、ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、トリメトキシメタン等が挙げられる。環状のエーテルとしては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン等が挙げられる。
【0037】
アミドとしては、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。スルホキシドとしては、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。スルホンとしては、スルホラン等が挙げられる。
【0038】
有機溶媒の含有量(合計含有量)は、正極合剤層全量を基準として、1質量%以上、3質量%以上、又は5質量%以上であってよく、30質量%以下、20質量%以下、又は10質量%以下であってよい。
【0039】
電解質塩Aは、リチウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、及びマグネシウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。
【0040】
電解質塩Aのアニオンは、ハロゲン化物イオン(I、Cl、Br等)、SCN、BF 、BF(CF、BF(C、PF 、ClO 、SbF 、N(SOF) 、N(SOCF 、N(SO 、BPh 、B(C 、C(FSO 、C(CFSO 、CFCOO、CFSO、CSO、[B(C等であってよい。アニオンは、好ましくは、PF 、BF 、N(SOF) 、N(SOCF 、[B(C、又はClO である。
【0041】
なお、以下では下記の略称を用いる場合がある。
[FSI]:N(SOF) 、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン
[TFSI]:N(SOCF 、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン
[BOB]:[B(C、ビスオキサレートボラートアニオン
[f3C]:C(FSO 、トリス(フルオロスルホニル)カルボアニオン
【0042】
リチウム塩は、LiPF、LiBF、Li[FSI]、Li[TFSI]、Li[f3C]、Li[BOB]、LiClO4、LiCFBF、LiCBF、LiCBF、LiCBF、Li[C(SOCF]、LiCFSO、LiCFCOO、及びLiRCOO(Rは、炭素数1~4のアルキル基、フェニル基、又はナフチル基である。)からなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。
【0043】
ナトリウム塩は、NaPF、NaBF、Na[FSI]、Na[TFSI]、Na[f3C]、Na[BOB]、NaClO4、NaCFBF、NaCBF、NaCBF、NaCBF、Na[C(SOCF]、NaCFSO、NaCFCOO、及びNaRCOO(Rは、炭素数1~4のアルキル基、フェニル基、又はナフチル基である。)からなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。
【0044】
カルシウム塩は、Ca(PF、Ca(BF、Ca[FSI]、Ca[TFSI]、Ca[f3C]、Ca[BOB]、Ca(ClO、Ca(CFBF、Ca(CBF、Ca(CBF、Ca(CBF、Ca[C(SOCF、Ca(CFSO、Ca(CFCOO)、及びCa(RCOO)(Rは、炭素数1~4のアルキル基、フェニル基、又はナフチル基である。)からなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。
【0045】
マグネシウム塩は、Mg(PF、Mg(BF、Mg[FSI]、Mg[TFSI]、Mg[f3C]、Mg[BOB]、Mg(ClO、Mg(CFBF、Mg(CBF、Mg(CBF、Mg(CBF、Mg[C(SOCF、Mg(CFSO、Mg(CFCOO)、及びMg(RCOO)(Rは、炭素数1~4のアルキル基、フェニル基、又はナフチル基である。)からなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。
【0046】
これらのうち、解離性及び電気化学的安定性の観点から、電解質塩Aは、好ましくはLiPF、LiBF、Li[FSI]、Li[TFSI]、Li[f3C]、Li[BOB]、LiClO4、LiCFBF、LiCBF、LiCBF、LiCBF、Li[C(SOCF]、LiCFSO、LiCFCOO、及びLiRCOO(Rは、炭素数1~4のアルキル基、フェニル基、又はナフチル基である。)からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはLi[TFSI]、Li[FSI]、LiPF、LiBF、Li[BOB]、及びLiClO4からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、更に好ましくはLi[TFSI]又はLi[FSI]である。
【0047】
電解質塩Aの含有量は、正極合剤層全量を基準として、0.1質量%以上、0.4質量%以上、又は0.7質量%以上であってよく、4.8質量%以下、3.2質量%以下、又は1.6質量%以下であってよい。
【0048】
有機溶媒の単位体積あたりの電解質塩Aの濃度は、0.3mol/L以上、0.6mol/L以上、又は1.0mol/L以上であってよく、2.0mol/L以下、1.7mol/L以下、又は1.5mol/L以下であってよい。
【0049】
正極合剤層10は、二次電池1からの有機溶媒(電解液)の液漏れを更に抑制する観点から、好ましくは、有機溶媒をゲル化可能なポリマ(「ポリマA」ともいう)を更に含有する。この場合、正極合剤層10中の有機溶媒がゲル化されるため、二次電池1からの有機溶媒の液漏れを抑制できる。
【0050】
本明細書において、有機溶媒をゲル化可能なポリマとは、有機溶媒の流動性を大きく低下させることができるポリマを意味し、具体的には、以下の流動性の評価において、位置Aと位置Bとの間の距離が1cm未満となるポリマを意味する。
【0051】
まず、ガラスバイアル瓶(アズワン株式会社製、ラボランスクリュー管瓶No.4、13.5mL、底面の直径:約2cm、高さ:約4cmの円筒形)内に有機溶媒と有機溶媒をゲル化可能なポリマ(ポリマA)との混合物(有機溶媒/ポリマA=90/10(質量比))5gを投入して蓋をする。続いて、ポリマAのガラス転移温度以上の温度でポリマAを溶融させた後、ガラスバイアル瓶の底面側を下に、蓋側を上にした状態で、25℃で20時間静置する。この静置後のガラスバイアル瓶中の有機溶媒とポリマAとの混合物の最上面(ガラスバイアル瓶の底面から最も離れた面)の位置を位置Aとする。その後、ガラスバイアル瓶の天地を逆転させた状態(ガラスバイアル瓶の底面側を上に、蓋側を下にした状態)で、25℃で10分間静置する。この静置後のガラスバイアル瓶中の有機溶媒とポリマAとの混合物の最下面(ガラスバイアル瓶の底面から最も離れた面)の位置を位置Bとする。このようにして求めた位置Aと位置Bとの間の距離に基づいて、流動性を評価する。
【0052】
ポリマAは、例えば、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、N-イソプロピルアクリルアミド、アクリル酸メチル、スチレン、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジアリルジメチルアンモニウム-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、アクリル酸2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロヘプチル、メタクリル酸2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロヘプチル、(エチレングリコール)メタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、イソプレンモノオキシド、及びエチレングリコールジグリシジルエーテルからなる群より得られる少なくとも1種をモノマ単位として含むポリマであってよい。
【0053】
ポリマAは、上記モノマ単位の1種のみを含むホモポリマであってよく、上記モノマ単位の2種以上を含むコポリマであってよく、上記モノマ単位の1種以上と上記モノマ単位以外のモノマ単位の1種以上とを含むコポリマであってよい。
【0054】
ホモポリマとしては、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)、ポリアクリル酸2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロヘプチル、ポリメタクリル酸2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロヘプチル、ポリアクリルアミド、ポリグリシジルメタクリレート、ポリエチレングリコール等が挙げられる。コポリマとしては、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマ、メチルメタクリレートとオキセタニルメタクリレートとのコポリマ等が挙げられる。
【0055】
ポリマAは、上記のようなポリマを1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。ポリマAは、二次電池1の長寿命化及び高入出力化の観点から、好ましくは、ペンタエリスリトールテトラアクリレートをモノマ単位として含むポリマ、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマ、及びメチルメタクリレートとオキセタニルメタクリレートとのコポリマからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0056】
ポリマAの含有量は、正極合剤層全量を基準として、0.01質量%以上、0.1質量%以上、又は1質量%以上であってよく、20質量%以下、10質量%以下、又は5質量%以下であってよい。
【0057】
ポリマAの含有量は、有機溶媒、電解質塩及びポリマAの合計含有量100質量部に対して、0.5質量部以上、2質量部以上、又は4質量部以上であってよく、20質量部以下、15質量部以下、又は10質量部以下であってよい。
【0058】
正極合剤層10は、イオン液体を更に含有してもよい。イオン液体は、以下のアニオン成分及びカチオン成分を含有する。なお、本明細書におけるイオン液体は、-20℃以上で液状の物質である。
【0059】
イオン液体のアニオン成分は、特に限定されないが、Cl、Br、I等のハロゲンのアニオン、BF 、N(SOF) 等の無機アニオン、B(C 、CHSO 、CFSO 、N(CSO 、N(SOCF 、N(SOCFCF 等の有機アニオンなどであってよい。イオン液体のアニオン成分は、好ましくは、B(C 、CHSO 、N(CSO 、CFSO 、N(SOF) 、N(SOCF 及びN(SOCFCF からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有し、比較的低粘度でイオン伝導度を更に向上させるとともに、充放電特性も更に向上させる観点から、より好ましくは、N(CSO 、CFSO 、N(SOF) 、N(SOCF 、及びN(SOCFCF からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有し、更に好ましくはN(SOF) を含有する。
【0060】
イオン液体のカチオン成分は、特に限定されないが、好ましくは鎖状四級オニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、及びイミダゾリウムカチオンからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0061】
鎖状四級オニウムカチオンは、例えば、下記一般式(2)で表される化合物である。
【化1】
式(2)中、R~Rは、それぞれ独立に、炭素数が1~20の鎖状アルキル基、又はR-O-(CH-で表される鎖状アルコキシアルキル基(Rはメチル基又はエチル基を表し、nは1~4の整数を表す)を表し、Xは、窒素原子又はリン原子を表す。R~Rで表されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~10、更に好ましくは1~5である。
【0062】
ピペリジニウムカチオンは、例えば、下記一般式(3)で表される、窒素を含有する六員環環状化合物である。
【化2】
式(3)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数が1~20のアルキル基、又はR-O-(CH-で表されるアルコキシアルキル基(Rはメチル基又はエチル基を表し、nは1~4の整数を表す)を表す。R及びRで表されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~10、更に好ましくは1~5である。
【0063】
ピロリジニウムカチオンは、例えば、下記一般式(4)で表される五員環環状化合物である。
【化3】
式(4)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数が1~20のアルキル基、又はR-O-(CH-で表されるアルコキシアルキル基(Rはメチル基又はエチル基を表し、nは1~4の整数を表す)を表す。R及びRで表されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~10、更に好ましくは1~5である。
【0064】
ピリジニウムカチオンは、例えば、下記一般式(5)で示される化合物である。
【化4】
式(5)中、R~R13は、それぞれ独立に、炭素数が1~20のアルキル基、R-O-(CH-で表されるアルコキシアルキル基(Rはメチル基又はエチル基を表し、nは1~4の整数を表す)、又は水素原子を表す。R~R13で表されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~10、更に好ましくは1~5である。
【0065】
イミダゾリウムカチオンは、例えば、下記一般式(6)で示される化合物である。
【化5】
式(6)中、R14~R18は、それぞれ独立に、炭素数が1~20のアルキル基、R-O-(CH-で表されるアルコキシアルキル基(Rはメチル基又はエチル基を表し、nは1~4の整数を表す)、又は水素原子を表す。R14~R18で表されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~10、更に好ましくは1~5である。
【0066】
イオン液体の含有量は、正極合剤層全量を基準として、3質量%以上、5質量%以上、又は10質量%以上であってよく、30質量%以下、25質量%以下、又は20質量%以下であってよい。
【0067】
正極合剤層10は、導電剤、結着剤等を更に含有してもよい。
【0068】
導電剤は、特に限定されないが、黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、炭素繊維等の炭素材料などであってよい。導電剤は、上述した炭素材料の2種以上の混合物であってもよい。
【0069】
導電剤の含有量は、正極合剤層全量を基準として、0.1質量%以上、1質量%以上、又は3質量%以上であってよく、15質量%以下、10質量%以下、又は8質量%以下であってよい。
【0070】
結着剤は、特に限定されないが、四フッ化エチレン、アクリル酸、マレイン酸、エチルメタクリレート等をモノマ単位として含有するポリマ(ただし、上述したポリマAを除く)、スチレン-ブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリルゴム等のゴムなどであってよい。
【0071】
結着剤の含有量は、正極合剤層全量を基準として、0.1質量%以上、1質量%以上、又は3質量%以上であってよく、15質量%以下、10質量%以下、又は8質量%以下であってよい。
【0072】
正極合剤層10の厚さは、10μm以上、40μm以上、60μm以上、又は80μm以上であってよく、200μm以下、180μm以下、又は160μm以下であってよい。
【0073】
電解質層7は、ポリマ(以下「ポリマB」ともいう)と、酸化物粒子と、電解質塩(以下「電解質塩B」ともいう)と、を含有する。
【0074】
ポリマBは、電解質層7に含まれる他の材料を保持するための母体となる(連続相を形成する)ポリマ(バインダポリマ)である。ポリマBは、好ましくは、四フッ化エチレン及びフッ化ビニリデンからなる群より選ばれる第1の構造単位を有する。
【0075】
ポリマBは、好ましくは1種又は2種以上のポリマであり、1種又は2種以上のポリマを構成する構造単位(モノマ単位)の中には、好ましくは、四フッ化エチレン及びフッ化ビニリデンからなる群より選ばれる第1の構造単位(モノマ単位)と、ヘキサフルオロプロピレン、アクリル酸、マレイン酸、エチルメタクリレート、及びメチルメタクリレートからなる群より選ばれる第2の構造単位(モノマ単位)とが含まれる。
【0076】
第1の構造単位及び第2の構造単位は、1種のポリマに含まれてコポリマを構成してもよい。すなわち、電解質層7は、一実施形態において、第1の構造単位と第2の構造単位との両方を含む少なくとも1種のコポリマを含有する。コポリマは、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマ、フッ化ビニリデンとマレイン酸とのコポリマ、フッ化ビニリデンとメチルメタクリレートとのコポリマ等であってよい。電解質層7がコポリマを含有する場合、その他のポリマを更に含有していてもよい。
【0077】
第1の構造単位及び第2の構造単位は、それぞれ別のポリマに含まれて、第1の構造単位を有する第1のポリマと、第2の構造単位を有する第2のポリマとの少なくとも2種のポリマを構成していてもよい。すなわち、電解質層7は、一実施形態において、第1の構造単位を含む第1のポリマと、第2の構造単位を含む第2のポリマとの少なくとも2種以上のポリマをポリマBとして含有する。電解質層7が第1のポリマ及び第2のポリマを含有する場合、その他のポリマを更に含有していてもよい。
【0078】
第1のポリマは、第1の構造単位のみからなるポリマであってもよく、第1の構造単位に加えてその他の構造単位を更に有するポリマであってもよい。その他の構造単位は、エチレンオキシド(-CHCHO-)等の含酸素炭化水素構造であってよい。第1のポリマは、ポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、及び、これらの分子構造の内部に前記含酸素炭化水素構造を導入されたポリマであってよい。
【0079】
第2のポリマは、第2の構造単位のみからなるポリマであってもよく、第2の構造単位に加えてその他の構造単位を更に有するポリマであってもよい。その他の構造単位は、エチレンオキシド(-CHCHO-)等の含酸素炭化水素構造であってよい。
【0080】
第1のポリマと第2のポリマとの組合せとしては、ポリフッ化ビニリデンとポリアクリル酸、ポリ四フッ化エチレンとポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデンとポリメチルメタクリレート等が挙げられる。
【0081】
第1の構造単位の含有量は、電解質層7の強度を更に向上させる観点から、ポリマBを構成する構造単位全量を基準として、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、更に好ましくは20質量%以上である。第1の構造単位の含有量は、電解質層7にイオン液体が含まれる場合にイオン液体との親和性を更に向上させる観点から、ポリマBを構成する構造単位全量を基準として、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下であり、更に好ましくは30質量%以下である。
【0082】
第1の構造単位の含有量は、電解質層7の強度を更に向上させる観点から、第1の構造単位及び第2の構造単位の含有量の合計を基準として、好ましくは、50質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、又は95質量%以上である。第1の構造単位の含有量は、電解質層7にイオン液体が含まれる場合にイオン液体との親和性を更に向上させる観点から、第1の構造単位及び第2の構造単位の含有量の合計を基準として、好ましくは、99質量%以下、98質量%以下、97質量%以下、又は96質量%以下である。
【0083】
第2の構造単位の含有量は、電解質層7にイオン液体が含まれる場合にイオン液体との親和性を更に向上させる観点から、ポリマBを構成する構造単位全量を基準として、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上であり、更に好ましくは5質量%以上である。第2の構造単位の含有量は、電解質層7の強度を更に向上させる観点から、ポリマBを構成する構造単位全量を基準として、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、更に好ましくは10質量%以下である。
【0084】
第2の構造単位の含有量は、電解質層7にイオン液体が含まれる場合にイオン液体との親和性を更に向上させる観点から、第1の構造単位及び第2の構造単位の含有量の合計を基準として、好ましくは、1質量%以上、3質量%以上、又は4質量%以上である。第2の構造単位の含有量は、電解質層7の強度を更に向上させる観点から、第1の構造単位及び第2の構造単位の含有量の合計を基準として、好ましくは、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、又は5質量%以下である。
【0085】
ポリマBの含有量は、電解質層7の強度を更に向上させる観点から、電解質層全量を基準として、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上であり、更に好ましくは20質量%以上であり、特に好ましくは25質量%以上である。ポリマBの含有量は、導電率を更に向上させる観点から、電解質層全量を基準として、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは35質量%以下であり、更に好ましくは30質量%以下であり、特に好ましくは28質量%以下である。
【0086】
酸化物粒子は、例えば無機酸化物の粒子である。無機酸化物は、例えば、Li、Mg、Al、Si、Ca、Ti、Zr、La、Na、K、Ba、Sr、V、Nb、B、Ge等を構成元素として含む無機酸化物であってよい。酸化物粒子は、好ましくは、SiO、Al、AlOOH、MgO、CaO、ZrO、TiO、LiLaZr12、及びBaTiOからなる群より選ばれる少なくとも1種の粒子である。酸化物粒子は極性を有するため、電解質層7中の電解質の解離を促進するとともに、ポリマBの非晶質化を助長して電解質のカチオン成分の拡散速度を高める。
【0087】
酸化物粒子の平均一次粒径(一次粒子の平均粒径)は、導電率を更に向上させる観点から、好ましくは0.005μm以上であり、より好ましくは0.01μm以上であり、更に好ましくは0.015μm以上である。酸化物粒子の平均一次粒径は、電解質層7を薄くする観点から、好ましくは1μm以下であり、より好ましくは0.1μm以下であり、更に好ましくは0.05μm以下である。酸化物粒子の平均一次粒径は、導電率を向上させつつ、電解質組成物を薄層化する観点及び電解質組成物表面からの酸化物粒子の突出を抑制する観点から、好ましくは0.005~1μm、0.01~0.1μm、又は0.015~0.05μmである。酸化物粒子の平均一次粒径は、酸化物粒子を透過型電子顕微鏡等によって観察することによって測定できる。
【0088】
酸化物粒子の平均粒径は、好ましくは0.005μm以上であり、より好ましくは0.01μm以上であり、更に好ましくは0.03μm以上である。酸化物粒子の平均粒径は、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは3μm以下であり、更に好ましくは1μm以下である。酸化物粒子の平均粒径は、レーザー回折法により測定され、体積累積粒度分布曲線を小粒径側から描いた場合に、体積累積が50%となる粒径に対応する。
【0089】
酸化物粒子の形状は、例えば塊状又は略球状であってよい。酸化物粒子のアスペクト比は、電解質層7の薄層化を容易にする観点から、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは2以下である。アスペクト比は、酸化物粒子の走査型電子顕微鏡写真にて、粒子の長軸方向の長さ(粒子の最大長さ)と、粒子の短軸方向の長さ(粒子の最小長さ)との比として定義される。粒子の長さは、前記写真を、市販の画像処理ソフト(例えば、旭化成エンジニアリング株式会社製の画像解析ソフト、A像くん(登録商標))を用いて、統計的に計算して求めることが可能である。
【0090】
酸化物粒子の含有量は、電解質の解離を促進させる観点から、電解質層全量を基準として、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは7質量%以上であり、更に好ましくは10質量%以上である。酸化物粒子の含有量は、導電率を更に向上させる観点から、電解質層全量を基準として、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下であり、更に好ましくは20質量%以下である。
【0091】
電解質層7に含まれる電解質塩Bは、正極合剤層10に含まれる電解質塩Aとして例示した電解質塩であってよい。電解質層7に含まれる電解質塩Bは、正極合剤層10に含まれる電解質塩Aと同じであってよく、異なっていてもよい。
【0092】
電解質塩Bの含有量は、電解質層7を好適に作製する観点から、電解質層全量を基準として、10質量%以上であってよく、60質量%以下であってよい。電解質塩Bの含有量は、電解質層の導電率を高める観点から、電解質層全量を基準として、好ましくは20質量%以上であり、二次電池1を高い負荷率で充放電することを可能にする観点から、より好ましくは30質量%以上である。
【0093】
電解質層7は、イオン液体を更に含有してもよい。この場合、電解質塩Bはイオン液体に溶解した状態で存在していてもよい。電解質層7に含まれるイオン液体は、正極合剤層10に含まれるイオン液体として例示したものであってよい。
【0094】
イオン液体の含有量は、電解質層7を好適に作製する観点から、電解質組成物全量を基準として、10質量%以上であってよく、60質量%以下であってよい。イオン液体の含有量は、電解質塩の含有量を増加させることにより、電解質層7の導電率を増大させてリチウム二次電池を高い負荷率で充放電することを可能にする観点から、電解質組成物全量を基準として、好ましくは55質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下である。
【0095】
電解質層7がイオン液体を含有する場合、電解質塩Bとイオン液体との合計の含有量は、電解質層全量を基準として、導電率を更に向上させ、二次電池の容量低下を抑制する観点から、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは25質量%以上であり、更に好ましくは40質量%以上であり、電解質層7の強度低下を抑制する観点から、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下である。
【0096】
電解質層7がイオン液体を含有する場合、イオン液体の単位体積あたりの電解質塩Bの濃度は、充放電特性を更に向上させる観点から、好ましくは0.5mol/L以上であり、より好ましくは0.7mol/L以上であり、更に好ましくは1.0mol/L以上であり、また、好ましくは2.0mol/L以下であり、より好ましくは1.8mol/L以下であり、更に好ましくは1.6mol/L以下である。
【0097】
電解質層7の厚さは、強度を高めると共に、安全性を更に向上させる観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上である。電解質層7の厚さは、二次電池の内部抵抗を更に低減させる観点及び大電流特性を更に向上させる観点から、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、更に好ましくは100μm以下である。
【0098】
他の一実施形態において、電極群2Aには、負極集電体11と、負極合剤層12と、電解質層7とをこの順に備える第2の電池部材(負極部材)が含まれていると見ることもできる。図3(b)は、他の実施形態に係る二次電池用電池部材(負極部材)を示す模式断面図、すなわち第2の電池部材(負極部材)を示す模式断面図である。図3(b)に示すように、第2の電池部材14は、負極集電体11と、負極集電体11上に設けられた負極合剤層12と、負極合剤層12上に設けられた電解質層7とをこの順に備える負極部材である。電解質層7は、上述した第1の電池部材13における電解質層7と同様であるので、以下では説明を省略する。
【0099】
負極集電体11は、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス等の金属、それらの合金などであってよい。負極集電体11は、軽量で高い重量エネルギ密度を有するため、好ましくはアルミニウム及びその合金である。負極集電体11は、薄膜への加工のし易さ及びコストの観点から、好ましくは銅である。
【0100】
負極合剤層12は、一実施形態において、負極活物質と、有機溶媒と、電解質塩Aとを含有する。
【0101】
負極活物質は、黒鉛、非晶質炭素等の炭素材料、スズ、シリコン等を含む金属材料、チタン酸リチウム(LiTi12)、金属リチウムなどであってよい。
【0102】
負極活物質の含有量は、負極合剤層全量を基準として、60質量%以上、65質量%以上、又は70質量%以上であってよい。負極活物質の含有量は、負極合剤層全量を基準として、99質量%以下、95質量%以下、又は90質量%以下であってよい。
【0103】
負極合剤層12に含まれる有機溶媒及び電解質塩Aの種類及び含有量は、上述した正極合剤層10に含まれる有機溶媒及び電解質塩Aとして説明したものとそれぞれ同様であってよい。負極合剤層12に含まれる有機溶媒及び電解質塩Aは、それぞれ、正極合剤層10に含まれる有機溶媒及び電解質塩Aと同じであってよく異なっていてもよい。
【0104】
負極合剤層12は、二次電池1からの有機溶媒(電解液)の液漏れを更に抑制する観点から、好ましくは、有機溶媒をゲル化可能なポリマ(ポリマA)を更に含有する。この場合、負極合剤層12中の有機溶媒がゲル化されるため、二次電池1からの有機溶媒の液漏れを抑制できる。負極合剤層12に含まれるポリマAの種類及び含有量は、上述した正極合剤層10に含まれるポリマAとして説明したものと同様であってよい。負極合剤層12に含まれるポリマAは、正極合剤層10に含まれるポリマAと同じであってよく異なっていてもよい。
【0105】
負極合剤層12は、イオン液体を更に含有していてもよい。負極合剤層12に含まれるイオン液体の種類及び含有量は、上述した正極合剤層10に含まれるイオン液体として説明したものと同様であってよい。負極合剤層12に含まれるイオン液体は、正極合剤層10に含まれるイオン液体と同じであってよく異なっていてもよい。
【0106】
負極合剤層12は、導電剤、結着剤等を更に含有してもよい。負極合剤層12に含まれる導電剤及び結着剤の種類及び含有量は、上述した正極合剤層10に含まれる導電剤及び結着剤として説明したものとそれぞれ同様であってよい。負極合剤層12に含まれる導電剤及び結着剤は、正極合剤層10に含まれる導電剤及び結着剤とそれぞれ同じであってよく異なっていてもよい。
【0107】
負極合剤層12の厚さは、10μm以上、20μm以上、40μm以上、又は60μm以上であってよい。負極合剤層の厚さは、150μm以下、130μm以下、又は110μm以下であってよい。
【0108】
続いて、上述した二次電池1の製造方法について説明する。一実施形態に係る二次電池1の製造方法は、第1の電池部材(正極部材)13を作製する工程(A1)と、第2の電池部材(負極部材)14を作製する工程(B1)と、第1の電池部材(正極部材)13と第2の電池部材(負極部材)14とを積層して二次電池1を得る工程(C1)とを備えている。なお、工程(A1)及び工程(B1)の順序は任意である(いずれか一方を先に実施してもよく、両方を同時に実施してもよい。以下同様。)。
【0109】
工程(A1)は、一実施形態において、有機溶媒及び電解質塩Aを含有する組成物(電解液組成物)を、正極集電体9上に設けられた正極活物質を含有する正極活物質層(電極活物質層)中に加えて正極合剤層10を形成する工程(a)と、正極合剤層10上に、ポリマB、酸化物粒子及び電解質塩Bを含有する電解質層7を設ける工程(b)と、を含んでいる。工程(A1)は、工程(a)及び工程(b)をこの順に備える第1の電池部材(正極部材)13の製造方法であるということができる。
【0110】
工程(a)では、まず、正極集電体9と、正極集電体9上に設けられた正極活物質を含有する正極活物質層とを備える正極積層体を用意する。正極積層体は、例えば、正極活物質、導電剤、バインダ等を含む材料を分散媒に分散させたスラリを調製し、当該スラリを正極集電体9に塗布した後に分散媒を揮発させることによって作製することができる。分散媒は、特に制限されないが、水、アルコールと水との混合溶媒等の水系溶剤、N-メチル-2-ピロリドン等の有機溶剤であってよい。
【0111】
次いで、有機溶媒及び電解質塩Aを含有する電解液組成物を正極活物質層中に加えて、正極合剤層10(電極合剤層)を形成する。電解液組成物を正極活物質層中に加える方法は、例えば、滴下、塗布、印刷、スプレー等であってよい。得られる正極合剤層10は、正極活物質と、正極活物質間に配置(充填)された電解液組成物とを含んでいる。
【0112】
電解液組成物における有機溶媒及び電解質塩Aの含有量は、正極合剤層10における各成分の所望の含有量とそれぞれ略一致するように調整すればよい。
【0113】
続いて、工程(b)では、工程(a)で得られた正極合剤層10上に、電解質層7を設ける。電解質層7は、例えば、ポリプロピレン、ポリイミド等のポリマ製の支持フィルム上に、予めシート状に成形されていてよい。電解質層7は、例えばラミネート法により、好ましくは支持フィルムと共に、電解質層7が正極合剤層10と接するように積層される。この場合、電解質層7に加えて支持フィルムも正極合剤層10を覆うように配置されるため、正極合剤層10中の有機溶媒の揮発が更に抑制される。
【0114】
他の一実施形態では、工程(a)で用いられる電解液組成物が、有機溶媒及び電解質塩Aに加えてポリマAを更に含有しており、この場合、工程(A1)は、工程(a)の前に、電解液組成物を加熱する工程(w)を更に含んでいてよい。すなわち、第1の電池部材(正極部材)13の製造方法の他の一実施形態は、工程(w)、工程(a)及び工程(b)をこの順に備えている。
【0115】
工程(w)では、電解液組成物を温度T1に加熱することにより、ポリマA(更には電解質塩A)を有機溶媒に溶解させて、ゾル状の電解液組成物を得る。電解液組成物におけるポリマAの含有量は、正極合剤層10におけるポリマAの所望の含有量と略一致するように調整すればよい。
【0116】
温度T1は、ポリマAが有機溶媒に溶解し得る温度であればよく、例えば、60℃以上、80℃以上、又は100℃以上であってよく、160℃以下、140℃以下、又は120℃以下であってよい。加熱時間は、例えば、1時間以上、3時間以上、又は5時間以上であってよく、10時間以下、8時間以下、又は6時間以下であってよい。
【0117】
この実施形態における工程(a)では、工程(w)で加熱された電解液組成物の温度が過度に低下しないうちに、すなわち、ゾル状の電解液組成物の粘度が過度に上昇しない(ゾル状の電解液組成物のゲル化が生じない)うちに、電解液組成物を正極活物質層に加えることが好ましい。
【0118】
この実施形態では、工程(a)の後に、工程(w)における温度T1より低い温度T2の環境下で正極合剤層10を静置する工程(x)を実施することが好ましい。すなわち、第1の電池部材(正極部材)13の製造方法の他の一実施形態は、工程(w)、工程(a)、工程(x)及び工程(b)をこの順に備えている。これにより、正極合剤層10中でポリマAによる有機溶媒のゲル化が好適に進行する。
【0119】
工程(x)における温度T2は、例えば、0℃以上、10℃以上、又は20℃以上であってよく、60℃以下、50℃以下、又は40℃以下であってよい。工程(x)において静置する時間は、例えば、10分間以上、1時間以上、又は3時間以上であってよく、20時間以下、15時間以下、又は10時間以下であってよい。
【0120】
他の一実施形態では、工程(a)で用いられる電解液組成物が、有機溶媒及び電解質塩Aに加えて重合性化合物を更に含有しており、この場合、工程(A1)は、工程(b)の後に、正極合剤層10中の重合性化合物を重合させる工程(y)を更に含んでいてよい。すなわち、第1の電池部材(正極部材)13の製造方法の他の一実施形態は、工程(a)、工程(b)及び工程(y)をこの順に備えている。
【0121】
この実施形態では、工程(a)で用いられる電解液組成物は、有機溶媒、電解質塩A及び重合性化合物を含有し、好ましくは、重合性化合物の重合を開始させる重合開始剤を更に含有する。
【0122】
重合性化合物は、重合することにより上記ポリマAを構成し得るモノマ及びオリゴマからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である。つまり、重合性化合物は、重合することにより有機溶媒をゲル化可能なポリマ(ポリマA)になる化合物(モノマ又はオリゴマ)である。
【0123】
重合性化合物は、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、N-イソプロピルアクリルアミド、アクリル酸メチル、スチレン、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジアリルジメチルアンモニウム-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、アクリル酸2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロヘプチル、メタクリル酸2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロヘプチル、(エチレングリコール)メタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、イソプレンモノオキシド、エチレングリコールジグリシジルエーテル、及びこれらのオリゴマからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であってよい。
【0124】
電解液組成物における重合性化合物の含有量(合計含有量)は、正極合剤層10におけるポリマAの所望の含有量と略一致するように調整すればよい。
【0125】
重合開始剤は、公知の重合開始剤から適宜選択すればよい。重合開始剤は、例えば、アゾ化合物系重合開始剤、有機過酸化物系重合開始剤等であってよく、これら以外の重合開始剤であってもよい。
【0126】
アゾ化合物系重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。
【0127】
有機過酸化物系重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、tert-ブチルパーオキシアセテート、2,2-ジ-(tert-ブチルパーオキシ)ブタン、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、n-ブチル-4,4-ジ-(tert-ブチルパーオキシ)バレレート、ジ-(2-tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、ジ-tert-ヘキシルパーオキサイド、2,5,-ジメチル-2,5,-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、tert-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3,-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、tert-ブチルトリメチルシリルパーオキサイド等が挙げられる。
【0128】
電解液組成物中の重合開始剤の含有量は、重合性化合物の含有量100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上であってよく、10質量部以下であってよい。
【0129】
工程(y)では、正極合剤層10中の重合性化合物を重合させる。これにより、重合性化合物からポリマAが形成されると共に、ポリマAによって有機溶媒がゲル化され得る。
【0130】
重合させる方法は、例えば、熱を加えることによって重合させる方法(加熱重合)であってよい。加熱温度及び加熱時間は、重合性化合物の種類に応じて適宜設定すればよい。加熱温度は、例えば、30℃以上、40℃以上、又は50℃以上であってよく、100℃以下、90℃以下、又は80℃以下であってよい。加熱時間は、例えば、1時間以上、3時間以上、又は5時間以上であってよく、48時間以下、32時間以下、又は16時間以下であってよい。重合させる方法は、光を照射することによって重合させる方法(光重合)であってもよい。
【0131】
工程(B1)は、工程(A1)と同様である(工程(A1)における「正極」を「負極」と読み替えればよい)ため、詳細な説明を省略する。例えば、第2の電池部材(負極部材)14の製造方法の一実施形態は、上述した工程(a)及び工程(b)(ただし「正極」を「負極」と読み替える)をこの順に備えている、ということができる。また、第2の電池部材(負極部材)14の製造方法の他の一実施形態は、上述した工程(w)、工程(a)及び工程(b)(ただし「正極」を「負極」と読み替える)をこの順に備えている、ということができる。また、第2の電池部材(負極部材)14の製造方法の他の一実施形態は、上述した工程(a)、工程(b)及び工程(y)(ただし「正極」を「負極」と読み替える)をこの順に備えている、ということができる。
【0132】
工程(C1)では、工程(A1)で得られた第1の電池部材(正極部材)13と、工程(B1)で得られた第2の電池部材(負極部材)14とを、例えばラミネート法により、第1の電池部材(正極部材)13における電解質層7及び第2の電池部材(負極部材)14における電解質層7が互いに接するように積層して、二次電池1を得る。
【0133】
以上説明した実施形態に係る二次電池1の製造方法では、工程(C1)において、電解質層7を備える第1の電池部材(正極部材)13と、電解質層7を備える第2の電池部材(負極部材)14とを積層しているが、他の一実施形態に係る二次電池1の製造方法では、電解質層7が設けられていない正極6(正極集電体9及び正極合剤層10)と、電解質層7を備える第2の電池部材(負極部材)14とを積層してもよい。
【0134】
すなわち、他の一実施形態に係る製造方法は、正極6を作製する工程(A2)と、上述した第2の電池部材(負極部材)14を作製する工程(B1)と、正極6と第2の電池部材(負極部材)14とを積層して二次電池1を得る工程(C2)とを備えている。なお、工程(A2)及び工程(B1)の順序は任意である。
【0135】
工程(A2)は、上述した工程(a)を備えていてよく、上述した工程(w)及び工程(a)をこの順に備えていてよく、上述した工程(a)及び工程(y)をこの順に備えていてよい。
【0136】
工程(A2)は、好ましくは、工程(a)の直後に、工程(a)で得られた正極合剤層10上に、当該正極合剤層10を覆うようにカバーフィルムを設ける工程(z)を更に備えている。すなわち、工程(A2)は、好ましくは、工程(a)及び工程(z)をこの順に備えていてよく、工程(w)、工程(a)及び工程(z)をこの順に備えていてよく、工程(w)、工程(a)、工程(z)及び工程(x)をこの順に備えていてよく、工程(a)、工程(z)及び工程(y)をこの順に備えていてよい。これにより、カバーフィルムが正極合剤層10中の有機溶媒の揮発を抑制し、正極合剤層10がポリマAを含有する場合には、有機溶媒の組成が変化することなく、ゲル化が好適に進行する。カバーフィルムは、例えば、ポリプロピレン、ポリイミド等のポリマ製のフィルムであってよい。
【0137】
工程(A2)が工程(z)を備えていない場合、正極合剤層10中の有機溶媒の揮発を抑制する観点から、電解液組成物(正極合剤層10)に含まれる有機溶媒として、160℃以上、180℃以上、又は200℃以上の沸点(大気圧における沸点)を有する有機溶媒を用いることが好ましい。上述した有機溶媒のうち、このような沸点を有する有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。
【0138】
工程(C2)では、工程(A2)で得られた正極6と、工程(B1)で得られた第2の電池部材(負極部材)14とを、例えばラミネート法により、正極6における正極合剤層10及び第2の電池部材(負極部材)14における電解質層7が互いに接するように積層して、二次電池1を得る。正極6にカバーフィルムが設けられている場合は、カバーフィルムを正極6から剥離した後に、正極6と第2の電池部材(負極部材)14とを積層すればよい。
【0139】
上記実施形態に係る二次電池1の製造方法では、工程(C2)において、電解質層7が設けられていない正極6と、電解質層7を備える第2の電池部材(負極部材)14とを積層しているが、他の一実施形態に係る二次電池1の製造方法では、電解質層7を備える第1の電池部材(正極部材)13と、電解質層7が設けられていない負極8(負極集電体11及び負極合剤層12)とを積層してもよい。
【0140】
すなわち、他の一実施形態に係る製造方法は、上述した第1の電池部材(正極部材)13を作製する工程(A1)と、負極8を作製する工程(B2)と、第1の電池部材(正極部材)13と負極8とを積層して二次電池1を得る工程(C3)とを備えている。なお、工程(A1)及び工程(B2)の順序は任意である。
【0141】
工程(B2)は、工程(A2)と同様である(工程(A2)における「正極」を「負極」と読み替えればよい)ため、詳細な説明を省略する。工程(C3)は、工程(C2)と同様である(工程(C2)における「正極」及び「負極」を相互に読み替えればよい)ため、詳細な説明を省略する。
【0142】
上記各実施形態に係る二次電池1の製造方法では、正極6及び負極8の少なくとも一方に電解質層7を予め設けて(第1の電池部材(正極部材)13及び第2の電池部材(負極部材)14の少なくとも一方を予め作製して)いるが、他の一実施形態に係る二次電池1の製造方法では、電解質層7が設けられていない正極6(正極集電体9及び正極合剤層10)及び負極8(負極集電体11及び負極合剤層12)と、電解質層7とを積層してもよい。
【0143】
すなわち、他の一実施形態に係る製造方法は、上述した正極6を作製する工程(A2)と、上述した負極8を作製する工程(B2)と、正極6、電解質層7及び負極8をこの順に積層して二次電池1を得る工程(C4)とを備えている。なお、工程(A2)及び工程(B2)の順序は任意である。
【0144】
工程(C4)では、工程(A2)で得られた正極6と、電解質層7と、工程(B2)で得られた負極8とを、例えばラミネート法により、正極6における正極合剤層10、電解質層7、及び負極8における負極合剤層12がこの順で隣接するように積層して、二次電池1を得る。
【0145】
電解質層7は、例えば、上述した支持フィルム上に予めシート状に成形されていてよく、その場合、支持フィルムを剥離した後に正極6及び負極8と積層すればよい。正極6及び負極8のそれぞれにカバーフィルムが設けられている場合は、カバーフィルムを正極6及び負極8のそれぞれから剥離した後に、正極6、電解質層7及び負極8を積層すればよい。
【0146】
この実施形態では、工程(A2)で用いられる電解液組成物(正極合剤層10)が上記ポリマAを含有する場合、上述したように、工程(A2)において、正極合剤層10を静置する工程(x)を実施してよい。あるいは、工程(A2)において工程(x)を実施せずに、工程(C4)の後(正極6、電解質層7及び負極8を積層した後)に工程(x)を実施してもよい。
【0147】
工程(B2)で用いられる電解液組成物(負極合剤層12)が上記ポリマAを含有する場合も同様に、工程(B2)において、負極合剤層12を静置する工程(x)を実施してよく、あるいは、工程(B2)において工程(x)を実施せずに、工程(C4)の後(正極6、電解質層7及び負極8を積層した後)に、工程(x)を実施してもよい。
【0148】
また、工程(A2)で用いられる電解液組成物(正極合剤層10)が上記重合性化合物を含有する場合、上述したように、工程(A2)において、正極合剤層10中の重合性化合物を重合させる工程(y)を実施してよい。あるいは、工程(A2)において工程(y)を実施せずに、工程(C4)の後(正極6、電解質層7及び負極8を積層した後)に工程(y)を実施してもよい。
【0149】
工程(B2)で用いられる電解液組成物(負極合剤層12)が上記重合性化合物を含有する場合も同様に、工程(B2)において、負極合剤層12中の重合性化合物を重合させる工程(y)を実施してよく、あるいは、工程(B2)において工程(y)を実施せずに、工程(C4)の後(正極6、電解質層7及び負極8を積層した後)に、工程(y)を実施してもよい。
【0150】
すなわち、他の一実施形態に係る二次電池1の製造方法は、工程(A2)及び工程(B2)と、工程(C4)と、工程(x)とをこの順に備えていてよく、工程(A2)及び工程(B2)と、工程(C4)と、工程(y)とをこの順に備えていてもよい。なお、工程(A2)及び工程(B2)の順序は任意である。
【0151】
以上説明した各実施形態に係る二次電池1の製造方法では、有機溶媒の揮発を抑制できるため、正極合剤層10又は負極合剤層12に加える電解液組成物の各成分の配合割合と、得られる正極合剤層10又は負極合剤層12中の各成分の配合割合との間に変化が生じにくくなっている。したがって、得られる二次電池1の特性に応じた正極合剤層10又は負極合剤層12の組成と略同一の組成で電解液組成物を調製すればよいため、所望の特性を有する二次電池1を好適に得ることができる。
【0152】
また、有機溶媒をゲル化させる場合、有機溶媒を揮発させることが一般的であるところ、上記各実施形態に係る二次電池1の製造方法では、有機溶媒を揮発させる工程を必要とせずに有機溶媒のゲル化が可能であるため、従来に比べて、所望の特性を有する二次電池1をより好適に得ることができる。加えて、有機溶媒とポリマA又は重合性化合物とを電極合剤層10,12に予め添加した上で、有機溶媒をゲル化させることにより、正極6、電解質層7及び負極8を積層した後で電解液を注液する必要がなくなるため、高エネルギ密度化のために二次電池1を大面積化したときに問題となり得る電解液の浸透性(特に電極合剤層10,12への浸透性)を確保できる。
【0153】
次に、図1に示した二次電池の電極群2の他の一実施形態について説明する。図4は、二次電池の電極群の他の一実施形態を示す分解斜視図である。図4では、図2に示した電極群2Bと同一の符号を付し、重複する説明は省略する。図4に示すように、他の一実施形態における二次電池が上述した実施形態における二次電池と異なる点は、電極群2Bが、バイポーラ電極15を更に備えている点である。すなわち、電極群2Bは、正極6と、第1の電解質層7と、バイポーラ電極15と、第2の電解質層7と、負極8とをこの順に備えている。
【0154】
バイポーラ電極15は、バイポーラ電極集電体16と、バイポーラ電極集電体16の負極8側の面に設けられた正極合剤層10と、バイポーラ電極集電体16の正極6側の面に設けられた負極合剤層12とを備えている。
【0155】
電極群2Bには、第1の電解質層7と、バイポーラ電極15と、第2の電解質層7とをこの順に備える第3の電池部材(バイポーラ電極部材)が含まれていると見ることができる。図5は、他の一実施形態に係る二次電池用電池部材である第3の電池部材(バイポーラ電極部材)を示す模式断面図である。図5に示すように、第3の電池部材17は、バイポーラ電極集電体16と、バイポーラ電極集電体16の一方の面上に設けられた正極合剤層10と、正極合剤層10上におけるバイポーラ電極集電体16と反対側に設けられた第2の電解質層7と、バイポーラ電極集電体16の他方の面上に設けられた負極合剤層12と、負極合剤層12上におけるバイポーラ電極集電体16と反対側に設けられた第1の電解質層7とを備えている。
【0156】
バイポーラ電極集電体16は、例えばアルミニウム、ステンレス鋼、チタン等の金属単体、アルミニウムと銅又はステンレス鋼と銅を圧延接合してなるクラッド材などで形成されている。
【0157】
第1の電解質層7と第2の電解質層7とは、互いに同種であっても異種であってもよく、好ましくは、互いに同種である。
【0158】
以上説明した二次電池1では、電極合剤層10,12に有機溶媒を用いることにより、電極活物質とイオン伝導成分である電解質塩との界面、及び、電極合剤層10,12と電解質層7との界面がそれぞれ良好に形成され、二次電池1の放電特性及び容量維持率を向上させることができる。加えて、有機溶媒を用いた場合、一般的には安全性が損なわれやすいところ、ポリマ、酸化物粒子及び電解質塩を含有する電解質層7を用いることにより、従来のポリマのみから構成されるセパレータと比較して、安全性も高めることができる。
【0159】
また、電極合剤層10,12が有機溶媒をゲル化可能なポリマAを含有する場合、電極合剤層10,12中の有機溶媒(電解液)の揮発が抑制される。これにより、二次電池1の安全性を更に向上させることができると共に、電極合剤層10,12のみ(あるいは、電極(正極6及び負極8)又は電池部材(正極部材13及び負極部材14)のみ)を長期保存が可能となり、必要時にそれらを積層するという単純な工程によって簡便に二次電池1を作製することもできる。
【0160】
このように、上述した二次電池1は、安全性に優れると共に、放電特性及び容量維持率にも優れているため、この二次電池1では、二次電池1を大型化及び高エネルギ密度化が可能であると共に、その際に特に問題となる発火等のリスクが低減されている。したがって、この二次電池1は、例えば、高エネルギ密度が要求される大型二次電池の用途として好適であり、自動車等の車両に搭載される車載用二次電池として特に好適である。
【実施例
【0161】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0162】
<実施例1>
[正極活物質層の作製]
Li(Co1/3Ni1/3Mn1/3)O(正極活物質)66質量部、アセチレンブラック(導電剤、商品名:Li400、平均粒径48nm(製造元カタログ値)、デンカ株式会社)4質量部、ポリフッ化ビニリデン溶液(バインダ、商品名:クレハKFポリマ#1120、固形分:12質量%、株式会社クレハ)14質量部、及びN-メチル-2-ピロリドン(分散媒、NMP)15質量部を混合してスラリを調製した。このスラリを正極集電体(厚さ20μmのアルミニウム箔)上に塗布し、120℃で乾燥後、圧延して、片面塗布量120g/m、合剤密度2.7g/cmの正極活物質層を形成した。
【0163】
[負極活物質層の作製]
黒鉛(負極活物質)52質量部、カーボンナノチューブ(導電剤、商品名:VGCF、繊維径150nm(製造元カタログ値)、昭和電工株式会社)0.4質量部、高純度黒鉛(導電剤、商品名:JSP、平均粒径7μm(製造元カタログ値)、日本黒鉛株式会社)1.4質量部、ポリフッ化ビニリデン溶液(バインダ、商品名:クレハKFポリマ#9130、固形分:13質量%、株式会社クレハ)21.8質量部、及びN-メチル-2-ピロリドン(分散媒、NMP)24.4質量部を混合してスラリを調製した。このスラリを負極集電体(厚さ10μmの銅箔)上に塗布し、80℃で乾燥後圧延して、片面塗布量60g/m、合剤密度1.6g/cmの負極活物質層を形成した。
【0164】
[電解質層の作製]
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)を電解質塩として用い、イオン液体である1-エチル3-メチルイミダゾリウム-ビス(フルオロスルホニル)イミド(EMIFSI)に、電解質塩を1.5mol/Lの濃度で溶解させた。上記のように電解質塩を溶解させたイオン液体43質量部と、SiO粒子(商品名:AEROSIL OX50、日本アエロジル株式会社)23質量部と、バインダ(商品名:クレハKFポリマ#8500、株式会社クレハ)34質量部と、NMP 143質量部とを混合して、スラリを調製した。このスラリを支持フィルム(ポリプロピレン製)上に塗布し、80℃で乾燥して、厚さ20μmの電解質層(電解質シート)を作製した。
【0165】
[電解液組成物の調製]
エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)及びジエチルカーボネート(DEC)を、EC:PC:EMC:DEC=20:20:35:25(質量比)で混合した有機溶媒に、電解質塩としてヘキサフルオロりん酸リチウム(LiPF)を1.2mol/Lとなるように溶解させた溶液Aを調製した。この溶液A 95質量部に対し、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマ(P(VDF-HFP))5質量部添加し、80℃に加熱することで、ゾル状の電解液組成物を得た。
【0166】
[電池部材の作製]
正極活物質層上及び負極活物質層上のそれぞれに、ゾル状の電解液組成物を均一に塗布して、正極合剤層及び負極合剤層を得た。得られた正極合剤層上及び負極合剤層上のそれぞれに対して、各電極合剤層に電解質層が接するように、電解質層を支持フィルムごと転写(積層)した。その後、25℃で12時間静置し、有機溶媒をゲル化させ、正極合剤層及び負極合剤層のそれぞれにゲル状の電解液組成物を含む正極部材及び負極部材を得た。
【0167】
[二次電池の作製]
正極部材及び負極部材の支持フィルムを剥離し、正極部材及び負極部材の各電解質層同士を貼り合わせた後、直径16mmの円形に打ち抜いた。これをCR2032型のコインセル容器内に配置した後、絶縁性のガスケットを介して電池容器上部をかしめて密閉して、二次電池を得た。
【0168】
[電池特性の評価]
作製した二次電池について、充放電装置(東洋システム株式会社製)を用いて、25℃での電池特性を以下の充放電条件で測定した。
【0169】
(1)終止電圧4.2V、0.1Cで定電流定電圧(CCCV)充電を行った後、0.1Cで終止電圧2.7Vまで定電流(CC)放電する充放電を2サイクル行い、二次電池を初期化した。CCCV充電の終止条件は、電流値が0.05C以下となったとき、または20時間経過したときのいずれかとした。なお、Cとは、「電流値(A)/電池容量(Ah)」を意味する。2サイクル目の放電容量を、0.1Cでの放電容量とした。
(2)次いで、終止電圧4.2V、0.1Cで定電流定電圧(CCCV)充電を行った後、0.5Cで終止電圧2.7Vまで定電流(CC)放電するサイクルを1サイクル行い、0.5Cでの放電容量を求めた。
(3)次いで、終止電圧4.2V、0.1Cで定電流定電圧(CCCV)充電を行った後、2Cで終止電圧2.7Vまで定電流(CC)放電するサイクルを1サイクル行い、0.5Cでの放電容量を求めた。
【0170】
得られた放電容量から、下記式に基づき、0.1C放電特性、0.5C放電特性、及び2C放電特性を算出した。結果を表1に示す。0.1C放電特性は、その値が大きいほど、低電流において、電池から高容量を取り出すことができるといえる。0.5C及び2C放電特性は、その値が大きいほど、電池の出力特性に優れているといえる。
0.1C放電特性(%)=(1)で得られた放電容量/設計放電容量×100
0.5C放電特性(%)=(2)で得られた放電容量/設計放電容量×100
2C放電特性(%)=(3)で得られた放電容量/設計放電容量×100
【0171】
(4)次いで、終止電圧4.2V、0.1Cで定電流定電圧(CCCV)充電を行った後、0.1Cで終止電圧2.7Vまで定電流(CC)放電するサイクルを100サイクル行い、100サイクル時点での放電容量を求めた。100サイクル時点での容量維持率は、下記式に基づき算出した。
100サイクル時点での容量維持率=(4)で得られた放電容量/(1)で得られた放電容量
【0172】
<実施例2>
実施例1の[電池部材の作製]を以下のとおり変更した以外は、実施例1と同様にして、二次電池の作製及び評価を行った。
正極活物質層上及び負極活物質層上のそれぞれにゾル状の電解液組成物を均一に塗布して、正極合剤層及び負極合剤層を得た後すぐに、正極合剤層、電解質層及び負極合剤層をこの順に重ね合わせた。次いで、25℃で12時間静置することで、有機溶媒をゲル化させ、正極合剤層/電解質層/負極合剤層を一体化させた。
【0173】
<実施例3>
実施例1の[電解液組成物の調製]において、溶液A 100質量部に対してビニレンカーボネート(VC)1質量部を更に外添した溶液Bを溶液Aの代わりに用いた以外は、実施例1と同様にして、二次電池の作製及び評価を行った。
【0174】
<比較例1>
実施例1の[電解液組成物の調製]及び[電池部材の作製]を以下のとおり変更した以外は、実施例1と同様にして、二次電池の作製及び評価を行った。
ポリメタクリル酸メチル10質量部にアセトン40質量部を加えて溶解させた溶液と、EMIFSIにLiFSIを1.5mol/Lで溶解させた溶液90質量部とを混合し、ゾル状の溶液を得た。この溶液を実施例1の電解液組成物の代わりに用いて正極活物質層上及び負極活物質層上のそれぞれに塗布し、80℃で12時間真空乾燥することでアセトンを揮発させ、ポリマ(ポリメタクリル酸メチル)及びイオン液体(EMIFSI)を含むゲル状の組成物を含有する正極部材及び負極部材を得た。
【0175】
【表1】
【0176】
有機溶媒を含有する電極合剤層を用いて作製した二次電池(実施例1~3)は、イオン液体を含有する電極合剤層を用いて作製した二次電池(比較例1)と比較して、放電特性に優れていることが分かった。これは、有機溶媒を含有する電極合剤層を用いることにより、電極活物質とイオン伝導成分である電解質塩との界面、及び、電極合剤層と電解質層との界面がそれぞれ良好に形成され、二次電池の出力特性が向上したためであると考えられる。
【符号の説明】
【0177】
1…二次電池、2,2A,2B…電極群、3…電池外装体、4…正極集電タブ、5…負極集電タブ、6…正極、7…電解質層、8…負極、9…正極集電体、10…正極合剤層、11…負極集電体、12…負極合剤層、13…第1の電池部材、14…第2の電池部材、15…バイポーラ電極、16…バイポーラ電極集電体、17…第3の電池部材。
図1
図2
図3
図4
図5