(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】超吸収体を製造する方法
(51)【国際特許分類】
C08F 20/06 20060101AFI20240729BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20240729BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20240729BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20240729BHJP
C08F 8/00 20060101ALI20240729BHJP
C08J 3/12 20060101ALI20240729BHJP
C08L 33/02 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
C08F20/06
A61F13/53 300
B01J20/26 D
B01J20/30
C08F8/00
C08J3/12 CEY
C08L33/02
(21)【出願番号】P 2021525725
(86)(22)【出願日】2019-11-04
(86)【国際出願番号】 EP2019080011
(87)【国際公開番号】W WO2020099153
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-11-04
(32)【優先日】2018-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521037411
【氏名又は名称】ベーアーエスエフ・エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】ピーターソン,モンテ アラン
(72)【発明者】
【氏名】ゲンツェル,ジョン ペリー
(72)【発明者】
【氏名】シュレーダー,ユールゲン
(72)【発明者】
【氏名】フンク,リュディガー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイスマンテル,マティアス
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0200691(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0283401(US,A1)
【文献】特表2009-507062(JP,A)
【文献】国際公開第2011/090129(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F
B01J
C08F
C08J
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超吸収性ポリマー粒子を製造する方法であって、
a)部分的に中和されたアクリル酸、
b)少なくとも1種の架橋剤、及び
c)少なくとも1種の開始剤
を含むモノマー溶液を重合させるステップ、
得られたポリマーゲルを乾燥させるステップ、
任意選択で、得られた乾燥ポリマーゲルを粉砕及び分類するステップ、並びに
任意選択で、得られたポリマー粒子を熱的に後架橋し、冷却するステップ
を含み、
部分的に中和されたアクリル酸が、アクリル酸と、塩基の水溶液と、任意選択で水との混合によって形成され、
部分的に中和される前のアクリル酸が、アクリル酸の製造場所にある少なくとも1つのタンク(B1)及び超吸収性ポリマー粒子の製造場所にある少なくとも1つのタンク(B2)内に保存され、超吸収性ポリマー粒子の製造場所にある少なくとも1つのタンク(B2)から中和へ供給され、 アクリル酸の製造場所にある少なくとも1つのタンク(B1)と超吸収性ポリマー粒子の製造場所にある少なくとも1つのタンク(B2)が、1つの単一のパイプライン(3)によって相互接続され、
超吸収性ポリマー粒子の製造の中断の間にパイプライン(3)内部の流れを一時的に逆転させる、方法。
【請求項2】
中和のための塩基が、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素カリウム、及び/又は炭酸カリウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
超吸収性ポリマー粒子の製造の中断が少なくとも1時間である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
パイプライン(3)内の流れが、超吸収性ポリマー粒子の製造の中断時間の少なくとも90%の間、少なくとも0.1m/sである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
パイプライン(3)内の流れが、超吸収性ポリマー粒子の製造の中断時間の少なくとも90%の間、少なくとも0.5m/sである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
パイプライン(3)内部の流れが、流れの方向の変更に必要な時間を除いて
、少なくとも0.1m/sである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
パイプライン(3)内部の流れが、流れの方向の変更に必要な時間を除いて
、少なくとも0.5m/sである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
パイプライン(3)の長さが100~20,000mである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
パイプライン(3)の長さが1000~5,000mである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
パイプライン(3)の内径が0.002~0.4mである、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
アクリル酸が0.001~0.015重量%の重合防止剤を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記タンク内のアクリル酸の温度が15~25℃である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
タンクの少なくとも1つの内部体積が100~2000m
3である、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
タンクの少なくとも1つの充填レベルが10~80%であり、充填レベルが、タンク内のアクリル酸の体積とタンクの内部体積との比である、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超吸収性ポリマー粒子を製造する方法であって、アクリル酸の製造場所にある少なくとも1つのタンク(B1)及び超吸収性ポリマー粒子の製造場所にある少なくとも1つのタンク(B2)内にアクリル酸を保存することを含み、アクリル酸の製造場所にある少なくとも1つのタンク(B1)と超吸収性ポリマー粒子の製造場所にある少なくとも1つのタンク(B2)が、1つの単一のパイプライン(3)によって相互接続され、超吸収性ポリマー粒子の製造の中断の間にパイプライン(3)内部の流れを一時的に逆転させる、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超吸収性ポリマー粒子は、おむつ、タンポン、生理用ナプキン、及び他の衛生物品、並びに市場園芸における保水剤を製造するためにも用いられる。超吸収性ポリマー粒子は、「吸収性樹脂」、「超吸収体」、「超吸収性ポリマー」、「吸収性ポリマー」、「吸収性ゲル化材料」、「親水性ポリマー」、又は「ヒドロゲル」と呼ばれることも多い。
【0003】
市販の超吸収性ポリマー粒子は、モノグラフ"Modern Superabsorbent Polymer Technology", F.L. Buchholz及びA.T. Graham, Wiley-VCH, 1998, 69-103頁に記載されている、部分的に中和されたアクリル酸のポリマーである。
【0004】
小冊子"Safe Handling and Storage of acrylic acid" (EBAM - European Basic Acrylic Monomer Manufacturers Association)は、アクリル酸の安全な取り扱いについてのガイドラインを開示している。アクリル酸の再循環又は移送が長時間にわたって中断している場合は、停滞物を回避するためにパイプラインの排水が推奨されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、超吸収性ポリマー粒子を製造する改善された方法、とりわけ、異なる製造場所間のパイプラインを通じたアクリル酸の改善された輸送を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、超吸収性ポリマー粒子を製造する方法であって、
a)部分的に中和されたアクリル酸、
b)少なくとも1種の架橋剤、及び
c)少なくとも1種の開始剤
を含むモノマー溶液を重合させるステップ、
得られたポリマーゲルを乾燥させるステップ、
任意選択で、得られた乾燥ポリマーゲルを粉砕及び分類するステップ、並びに
任意選択で、得られたポリマー粒子を熱的に後架橋し、冷却するステップ
を含み、
部分的に中和されたアクリル酸が、アクリル酸と、塩基の水溶液と、任意選択で水との混合によって形成され、
用いられるアクリル酸が、アクリル酸の製造場所にある少なくとも1つのタンク(B1)及び超吸収性ポリマー粒子の製造場所にある少なくとも1つのタンク(B2)内に保存され、超吸収性ポリマー粒子の製造場所にある少なくとも1つのタンク(B2)から中和へ供給され、
アクリル酸の製造場所にある少なくとも1つのタンク(B1)と超吸収性ポリマー粒子の製造場所にある少なくとも1つのタンク(B2)が、1つの単一のパイプライン(3)によって相互接続され、
超吸収性ポリマー粒子の製造の中断の間にパイプライン(3)内部の流れを一時的に逆転させる、方法によって達成された。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の好ましい実施形態の概略図である。B1 アクリル酸の製造場所にあるタンク、B2 超吸収性ポリマー粒子の製造場所にあるタンク、P1 ポンプ、P2 ポンプ、1 タンクB1へのアクリル酸の移送ライン、2 中和へのアクリル酸の移送ライン、3 アクリル酸の製造場所と超吸収性ポリマー粒子の製造場所の間のパイプライン
【発明を実施するための形態】
【0008】
超吸収性ポリマー粒子の製造中断中の超吸収性ポリマー粒子の製造場所にある少なくとも1つのタンク(B2)の充填レベルが特定の範囲内、好ましくは4~20%、より好ましくは5~15%、最も好ましくは6~10%の範囲内であるように、パイプライン(3)内部の流れを一時的に逆転させる。
【0009】
本発明は、超吸収性ポリマー粒子の製造場所にあるタンク(B2)の充填レベルが所定のレベルに達するまで流れを逆転させ、再度、超吸収性ポリマー粒子の製造場所にあるタンク(B2)の充填レベルが所定のレベルに達するまで流れを逆転させることなどによって、超吸収性ポリマー粒子の製造の長時間の中断の間のパイプライン内の停滞アクリル酸を回避することができるという発見に基づくものである。各サイクルでポンプ輸送されるアクリル酸の量は、パイプライン内の滞留量より多くなければならない。環状ライン(これは、アクリル酸の製造場所と超吸収性ポリマー粒子の製造場所の間に2つのパイプラインがあることを意味する)の使用は、回避することができる。超吸収性ポリマー粒子の製造の中断の間のパイプラインの排水も不要である。
【0010】
中和のための好ましい塩基は、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素カリウム、及び/又は炭酸カリウムである。
【0011】
超吸収性ポリマー粒子の製造の中断は、好ましくは少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも10時間、最も好ましくは少なくとも100時間である。
【0012】
パイプライン(3)内の流れが最小値を上回ること、及びパイプライン(3)内の流れの中断ができるだけ短いことが重要である。
【0013】
本発明の一実施形態では、パイプライン(3)内部の流れは、それぞれ流れの方向の変更に必要な時間を除いて、好ましくは少なくとも0.1m/s、より好ましくは少なくとも0.3m/s、最も好ましくは少なくとも0.5m/sである。
【0014】
本発明の一実施形態では、パイプライン(3)内部の流れは、それぞれ超吸収性ポリマー粒子の製造の中断時間の少なくとも90%の間、好ましくは少なくとも0.1m/s、より好ましくは少なくとも0.3m/s、最も好ましくは少なくとも0.5m/sである。
【0015】
パイプライン(3)の長さは、好ましくは100~20,000m、より好ましくは500~10,000m、最も好ましくは1,000~5,000mである。5,000mより長いパイプライン(3)には、追加のポンプが必要となる場合がある。パイプライン(3)の内径は、好ましくは0.002~0.4m、より好ましくは0.004~0.3m、最も好ましくは0.006~0.2mである。
【0016】
アクリル酸は、好ましくは0.001~0.015重量%、より好ましくは0.003~0.010重量%、最も好ましくは0.005~0.007重量%の重合防止剤を含む。好ましい重合防止剤は、ヒドロキノンモノエーテル、例えばヒドロキノンモノメチルエーテルである。
【0017】
アクリル酸の温度は、好ましくは15~35℃、より好ましくは16~30℃、最も好ましくは17~25℃である。
【0018】
アクリル酸の製造場所にある少なくとも1つのタンク(B1)及び/又は超吸収性ポリマー粒子の製造場所にある少なくとも1つのタンク(B2)の内部体積は、好ましくは100~2,000m3、より好ましくは250~1,000m3、最も好ましくは500~750m3である。
【0019】
アクリル酸の製造場所にある少なくとも1つのタンク(B1)及び/又は超吸収性ポリマー粒子の製造場所にある少なくとも1つのタンク(B2)の充填レベルは、好ましくは10~80%、より好ましくは15~55%、最も好ましくは20~30%であり、充填レベルは、タンク内のアクリル酸の体積とタンクの内部体積との比である。
【0020】
超吸収性ポリマー粒子の製造の中断の間、超吸収性ポリマー粒子の製造場所にある少なくとも1つのタンク(B2)の充填レベルは、好ましくは4~20%、より好ましくは5~15%、最も好ましくは6~10%であり、充填レベルは、タンク内のアクリル酸の体積とタンクの内部体積との比である。
【0021】
超吸収体の製造を、以下に詳細に記載する。
【0022】
超吸収体は、モノマー溶液を重合させることによって製造され、典型的には非水溶性である。
【0023】
アクリル酸は、貯蔵安定剤として、典型的には重合防止剤、好ましくはヒドロキノンモノエーテルを含む。
【0024】
好適な架橋剤b)は、架橋に好適な少なくとも2つの基を有する化合物である。このような基は、例えば、フリーラジカルによってポリマー鎖に重合することができるエチレン性不飽和基、及びアクリル酸の酸基と共有結合を形成することができる官能基である。加えて、少なくとも2つのアクリル酸の酸基と配位結合を形成することができる多価金属塩も、架橋剤b)として好適である。
【0025】
架橋剤b)は、好ましくは、フリーラジカルによってポリマーネットワークに重合することができる、少なくとも2つの重合性基を有する化合物である。好適な架橋剤b)は、例えば、EP0530438A1に記載されているエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、テトラアリルアンモニウムクロリド、テトラアリルオキシエタン、EP0547847A1、EP0559476A1、EP0632068A1、WO93/21237A1、WO2003/104299A1、WO2003/104300A1、WO2003/104301A1、及びDE10331450A1に記載されている、ジ-及びトリアクリレート、DE10331456A1及びDE10355401A1に記載されている、アクリレート基とともに更なるエチレン性不飽和基を含む混合アクリレート、又は例えばDE19543368A1、DE19646484A1、WO90/15830A1、及びWO2002/032962A2に記載されている、架橋剤の混合物である。
【0026】
架橋剤b)の量は、各場合において中和前のアクリル酸を基準として、好ましくは0.05~1.5重量%、より好ましくは0.1~1重量%、最も好ましくは0.3~0.6重量%である。架橋剤の含有量の上昇に伴って、遠心分離保持容量(CRC)は低下し、21.0g/cm2の圧力下吸収性は、最大値を通過する。
【0027】
用いる開始剤c)は、重合条件下でフリーラジカルを発生させるすべての化合物、例えば、熱開始剤、レドックス開始剤、光開始剤であってよい。好適なレドックス開始剤は、ペルオキソ二硫酸ナトリウム/アスコルビン酸、過酸化水素/アスコルビン酸、ペルオキソ二硫酸ナトリウム/重亜硫酸ナトリウム、及び過酸化水素/重亜硫酸ナトリウムである。熱開始剤とレドックス開始剤との混合物、例えばペルオキソ二硫酸ナトリウム/過酸化水素/アスコルビン酸を用いることが好ましい。しかしながら、用いる還元成分は、好ましくは、2-ヒドロキシ-2-スルホナト酢酸二ナトリウム、又は、2-ヒドロキシ-2-スルフィナト酢酸(sulfinatoacetate)二ナトリウム、2-ヒドロキシ-2-スルホナト酢酸二ナトリウム及び重亜硫酸ナトリウムの混合物である。このような混合物は、Brueggolite(登録商標)FF6及びBrueggolite(登録商標)FF7(Brueggemann Chemicals (Heilbronn;ドイツ))として入手可能である。
【0028】
典型的には、水性モノマー溶液を用いる。モノマー溶液の含水量は、好ましくは40~75重量%、より好ましくは45~70重量%、最も好ましくは50~65重量%である。モノマー懸濁液、すなわち過剰なアクリル酸ナトリウムを含むモノマー溶液を用いることもできる。含水量の上昇に伴って後続の乾燥におけるエネルギー要求が増加し、含水量の低下に伴って、重合の熱が不十分にしか除去されない場合がある。
【0029】
最適な作用のために、好ましい重合防止剤は溶存酸素を必要とする。そのため、モノマー溶液は、重合の前に、不活性化(inertization)によって、すなわち、不活性ガス、好ましくは窒素又は二酸化炭素を流すことによって、溶存酸素が除去されている場合がある。モノマー溶液の酸素含有量は、重合前に、好ましくは、1重量ppm未満まで、より好ましくは0.5重量ppm未満まで、最も好ましくは0.1重量ppm未満まで低下させる。
【0030】
重合反応をより良好に制御するため、任意選択で、すべての公知のキレート剤を、モノマー溶液若しくは懸濁液、又はその原材料に加えることができる。好適なキレート剤は、例えば、リン酸、二リン酸、三リン酸、ポリリン酸、クエン酸、酒石酸、又はこれらの塩である。
【0031】
モノマー溶液を重合させる。好適な反応器は、例えば、混練反応器又はベルト反応器である。混練機では、水性モノマー溶液又は懸濁液の重合において形成されたポリマーゲルは、例えば、WO2001/038402A1に記載されているように、反転撹拌シャフトによって、連続的に粉砕される。ベルト上での重合は、例えばDE3825366A1及び米国特許第6,241,928号に記載されている。ベルト反応器における重合はポリマーゲルを形成し、これは、更なるプロセスステップにおいて、例えば押出機又は混練機中で、粉砕しなければならない。
【0032】
乾燥特性を改善するため、混練機によって得られた粉砕ポリマーゲルを、追加で押出すことができる。
【0033】
得られたポリマーゲルの酸基は、典型的には、部分的に中和されている。中和は、モノマー段階で行われる。これは、典型的には、水溶液として、又は好ましくは固体としても、中和剤中で混合することによって達成される。中和度は、好ましくは40~85mol%、より好ましくは50~80mol%、最も好ましくは60~75mol%であり、中和のため、通例の中和剤、好ましくは、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属炭酸塩、又はアルカリ金属炭酸水素塩、及びこれらの混合物も用いることができる。アルカリ金属塩の代わりに、アンモニウム塩を用いることもできる。特に好ましいアルカリ金属は、ナトリウム及びカリウムであるが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及びまたこれらの混合物は、非常に特に好ましい。
【0034】
得られるポリマーゲルを、乾燥させる。乾燥機は、いずれの制限も受けない。しかしながら、ポリマーゲルの乾燥は、残留水分含有量が、好ましくは0.5~10重量%、より好ましくは1~7重量%、最も好ましくは2~5重量%になるまで、好ましくはベルト乾燥機によって実行し、残留水分含有量は、EDANA推奨試験法No.WSP230.2(05)「Mass Loss Upon Heating」によって決定される。残留水分含有量が高すぎる場合、乾燥ポリマーゲルは低すぎるガラス転移温度Tgを有し、更に処理をしてもよいが、困難なばかりである。残留水分含有量が低すぎる場合、乾燥ポリマーゲルはあまりにもろく、後続の粉砕ステップにおいて、望ましくないことに、過度に小さな粒子サイズを有するポリマー粒子(微粉)が大量に得られる。乾燥前のゲルの固形分含有量は、好ましくは25~90重量%、より好ましくは35~70重量%、最も好ましくは40~60重量%である。しかしながら、流動床乾燥機又はパドル式乾燥機も、任意選択で、乾燥目的で用いてよい。
【0035】
続いて、乾燥ポリマーゲルを粉砕及び分類する。粉砕に用いる器具は、典型的には、単段若しくは多段ロールミル、好ましくは2段若しくは3段ロールミル、ピンミル、ハンマーミル、又は振動ミルであってよい。
【0036】
生成物画分として取り出されるポリマー粒子の平均粒子サイズは、好ましくは少なくとも200μm、より好ましくは250~600μm、非常に特定的には300~500μmである。生成物画分の平均粒子サイズは、EDANA推奨試験法No.WSP220.2(05)「Particle Size Distribution」によって決定してよく、ここで、ふるい分け画分の質量割合を累積形式でプロットし、図によって平均粒子サイズを決定する。ここでの平均粒子サイズは、累積50重量%を生じさせるメッシュサイズの値である。
【0037】
特性を改善するため、続いて、ポリマー粒子を熱的に表面後架橋してもよい。好適な表面後架橋剤は、ポリマー粒子の少なくとも2つの酸基と共有結合を形成することができる基を含む化合物である。好適な化合物は、例えば、EP0083022A2、EP0543303A1、及びEP0937736A2に記載されている、多官能アミン、多官能アミドアミン、多官能エポキシド、DE3314019A1、DE3523617A1、及びEP0450922A2に記載されている二官能若しくは多官能アルコール、又はDE10204938A1及び米国特許第6,239,230号に記載されているβ-ヒドロキシアルキルアミドである。
【0038】
表面架橋剤の量は、各場合においてポリマー粒子を基準として、好ましくは0.001~2重量%、より好ましくは0.02~1重量%、最も好ましくは0.05~0.2重量%である。
【0039】
本発明の好ましい実施形態では、多価カチオンは、表面後架橋剤に加えて、表面後架橋の前、その間、又はその後で、粒子表面に施与される。
【0040】
本発明による方法に用いることができる多価カチオンは、例えば、二価カチオン、例えば、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、鉄、及びストロンチウムのカチオン、三価カチオン、例えば、アルミニウム、鉄、クロム、希土類、及びマンガンのカチオン、四価カチオン、例えば、チタン及びジルコニウムのカチオンである。可能な対イオンは、塩化物イオン、臭化物イオン、水酸化物イオン、硫酸イオン、硫化水素イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、リン酸水素イオン、リン酸二水素イオン、並びにカルボン酸イオン、例えば、酢酸イオン及び乳酸イオンである。水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、及び乳酸アルミニウムが好ましい。金属塩以外に、多価カチオンとして多価アミンを用いることもできる。
【0041】
用いる多価カチオンの量は、各場合においてポリマー粒子を基準として、例えば、0.001~1.5重量%、好ましくは0.005~1重量%、より好ましくは0.02~0.8重量%である。
【0042】
表面後架橋は、典型的には、表面後架橋剤の溶液が乾燥ポリマー粒子に噴霧される方法で行われる。噴霧施与の後、表面後架橋剤でコーティングされたポリマー粒子を、熱によって乾燥させるが、表面後架橋反応は、乾燥の前又はその間のいずれかに起こりうる。
【0043】
表面後架橋剤の溶液の噴霧施与は、好ましくは、可動混合用具を有する混合機、例えばスクリュー式混合機、ディスク式混合機、及びパドル式混合機で実行する。水平型混合機、例えばパドル式混合機は特に好ましく、垂直型混合機は非常に特に好ましい。水平型混合機と垂直型混合機との区別は、混合シャフトの位置によってなされ、すなわち、水平型混合機は水平に取り付けられた混合シャフトを有し、垂直型混合機は垂直に取り付けられた混合シャフトを有する。好適な混合機は、例えば、水平型Pflugschar(登録商標)プラウシェア混合機(Gebr. Loedige Maschinenbau GmbH;パーダーボルン;ドイツ)、Vrieco-Nauta連続混合機(Hosokawa Micron BV;ドゥーティンヘム;オランダ)、Processall Mixmill混合機(Processall Incorporated;シンシナティ;USA)、及びSchugi Flexomix(登録商標)(Hosokawa Micron BV;ドゥーティンヘム;オランダ)である。しかしながら、流動床において表面後架橋剤溶液の噴霧を行うこともできる。
【0044】
表面後架橋剤は、典型的には、水溶液の形態で用いられる。表面後架橋剤のポリマー粒子への浸透深度は、非水性溶媒の含有量及び溶媒の総量によって、調整することができる。
【0045】
熱による表面後架橋は、好ましくは、接触式乾燥機、より好ましくはパドル式乾燥機、最も好ましくはディスク式乾燥機で実行する。好適な乾燥機は、例えば、Hosokawa Bepex(登録商標)Horizontal Paddle Dryer(Hosokawa Micron GmbH;ラインガルテン;ドイツ)、Hosokawa Bepex(登録商標)Disc Dryer(Hosokawa Micron GmbH;ラインガルテン;ドイツ)、及びNara Paddle Dryer(NARA Machinery Europe;フレッヒェン;ドイツ)である。更に、流動床乾燥機も用いてもよい。
【0046】
熱による表面後架橋は、ジャケットの加熱又は温かい空気中の吹き込みによって、混合機自体の中でも行うことができる。下降流型乾燥機、例えば棚段乾燥機、回転式管状炉、又は加熱可能なスクリューは、同様に好適である。流動床乾燥機で混合及び乾燥を行うことは、特に有利である。
【0047】
好ましい表面後架橋温度は、100~250℃、好ましくは110~220℃、より好ましくは120~210℃、最も好ましくは130~200℃の範囲内である。反応混合機又は乾燥機中で、この温度における好ましい滞留時間は、好ましくは少なくとも10分、より好ましくは少なくとも20分、最も好ましくは少なくとも30分であり、典型的には最大60分である。
【0048】
続いて、表面後架橋されたポリマー粒子を再び分類することができ、過度に小さな及び/又は過度に大きなポリマー粒子を取り出し、プロセスに再循環させる。
【0049】
特性を更に改善するため、表面後架橋されたポリマー粒子を、コーティング又は再加湿することができる。
【0050】
再加湿は、好ましくは30~80℃において、より好ましくは35~70℃において、最も好ましくは40~60℃において実行する。過度に低い温度では、超吸収体が塊を形成する傾向があり、高温では、目に見えるほど水が既に蒸発する。再加湿に用いる水の量は、好ましくは1~10重量%、より好ましくは2~8重量%、最も好ましくは3~5重量%である。再加湿によって、ポリマー粒子の機械的安定性が上昇し、静電気を帯びる傾向が低下する。
【0051】
自由膨潤速度及び生理食塩水流れ誘導性(SFC)を改善するために好適なコーティングは、例えば、無機不活性物質、例えば、非水溶性金属塩、有機ポリマー、カチオン性ポリマー、及び二価又は多価金属カチオンである。ダストの結合に好適なコーティングは、例えばポリオールである。ポリマー粒子の望ましくないケーキング傾向を抑制するために好適なコーティングは、例えば、ヒュームドシリカ、例えばAerosil(登録商標)200、又は沈降シリカ、例えばSipernat(登録商標)D17、及び界面活性剤、例えばSpan(登録商標)20である。
【0052】
本発明は更に、本発明の方法によって調製された超吸収性ポリマー粒子を含む衛生物品を提供する。
【実施例】
【0053】
アクリル酸の製造場所と超吸収性ポリマー粒子の製造場所を、3,200mの長さ及び0.0762mの内径を有するパイプライン(3)によって相互接続した。
【0054】
アクリル酸の製造場所にあるタンクB1の内部体積は534m3であり、超吸収性ポリマー粒子の製造場所にあるタンクB2の内部体積は534m3であった。
【0055】
アクリル酸は、0.005重量%のヒドロキノンモノメチルエーテルを含み、18~24℃の温度を有していた。
【0056】
超吸収性ポリマー粒子の製造を70時間中断した。超吸収性ポリマー粒子の製造を中止する前に、タンクB1からタンクB2への供給を低減させることによって超吸収性ポリマー粒子の製造場所にあるタンクB2の充填レベルを15%に低減させた。パイプライン(3)内の最小流量は0.6m/sであった。次に、パイプライン(3)内部の流れを逆転させた。パイプライン(3)内部の流れは0.6m/sであった。超吸収性ポリマー粒子の製造場所にあるタンクB2内の充填レベルが5%に減少したときに、パイプライン(3)内部の流れを再び逆転させた。超吸収性ポリマー粒子の製造の中断の間の充填レベルが約5~約15%の範囲内に保持されるように、これらのステップを繰り返した。超吸収性ポリマー粒子の製造を再び開始する前に、タンクB1からタンクB2への供給を増加させることによって超吸収性ポリマー粒子の製造の中断の間の充填レベルを25%に増加させた。
【0057】
超吸収性ポリマー粒子の調製
脱イオン水と48重量%水酸化ナトリウム溶液とアクリル酸とを連続的に混合することによって、中和度が72.4mol%に相当するように、アクリル酸/アクリル酸ナトリウム溶液を調製した。モノマー溶液の固形分含有量は、40.0重量%であった。
【0058】
モノマー溶液を更に冷却した。次に、3個(3-tuply)のエトキシル化グリセロールトリアクリレートを架橋剤としてモノマー溶液に加えた。架橋剤の量は、モノマー溶液1t当たり1.43kgであった。
【0059】
フリーラジカル重合を、1.31kgの0.25重量%過酸化水素水溶液、3.00kgの30重量%ペルオキソ二硫酸ナトリウム水溶液、及び0.98kgの1重量%アスコルビン酸水溶液(それぞれモノマー溶液1t当たりを基準とする)を加えることによって開始した。これらの過酸化物をモノマー溶液に加えた。
【0060】
モノマー溶液の処理量は21t/時であった。モノマー溶液の温度は、供給時に26℃であった。
【0061】
成分(モノマー溶液及びアスコルビン酸水溶液)を、6.3m3の容量を有する連続ニーダー反応器(LIST AG、アリスドルフ、スイス)に連続的に計量供給した。
【0062】
架橋剤の添加点と過酸化物の添加点の間で、モノマー溶液を窒素で不活性化させた。
【0063】
重合反応器内の滞留時間の約50%の後、粉砕及びふるい分けによる製造プロセスから得られた微粉(1270kg/時)の反応器への計量添加を更に行った。反応器内での反応混合物の滞留時間は15分であった。
【0064】
得られたポリマーゲルをベルト乾燥機上に置いた。ベルト乾燥機上で、ポリマーゲルの周辺に空気/ガス混合物を連続的に流し、ポリマーゲルを乾燥させた。
【0065】
乾燥ポリマーゲルを粉砕し、150~850μmの粒径画分にふるい分けした。