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特許75277102次シーリングを含むパウチ型電池セルの製造方法及びこれによって製造されたパウチ型電池セル
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】2次シーリングを含むパウチ型電池セルの製造方法及びこれによって製造されたパウチ型電池セル
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/105 20210101AFI20240729BHJP
   H01M 50/342 20210101ALI20240729BHJP
   H01M 50/198 20210101ALI20240729BHJP
【FI】
H01M50/105
H01M50/342 101
H01M50/198
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022564812
(86)(22)【出願日】2021-11-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-31
(86)【国際出願番号】 KR2021016521
(87)【国際公開番号】W WO2022103194
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2022-10-25
(31)【優先権主張番号】10-2020-0152143
(32)【優先日】2020-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0155191
(32)【優先日】2021-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ジュン・キム
(72)【発明者】
【氏名】テ・ジュン・ソ
(72)【発明者】
【氏名】ウ・ヨン・イ
【審査官】小川 進
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2013-0140587(KR,A)
【文献】特開2011-258438(JP,A)
【文献】特開2005-116235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/105-50/198
H01M 50/342
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラミネーションシートからなる電池ケースに電極組立体を収納する段階;
前記電池ケースの外周辺を1次シーリングする段階;及び
前記1次シーリングされた外周辺の少なくとも一部を2次シーリングする段階;
を含むパウチ型電池セルの製造方法であって、
前記1次シーリング及び前記2次シーリングは、シーリングツールで上部ケース及び下部ケースを加圧する工程で行われ、
前記1次シーリングのシーリング温度は、前記2次シーリングのシーリング温度よりも高く、
前記1次シーリングによって、前記電池ケースの前記外周辺に1次シーリング部が形成され、
前記2次シーリングによって、前記1次シーリング部の一部が変形して前記1次シーリング部よりも密封力の弱い2次シーリング部が形成される、パウチ型電池セルの製造方法。
【請求項2】
前記1次シーリング温度は、130℃超~250℃以下であり、前記2次シーリング温度は、50℃以上~200℃未満である、請求項1に記載のパウチ型電池セルの製造方法。
【請求項3】
前記1次シーリングは、前記電池ケースが密封されるように電池ケースの全外周辺を密封する工程である、請求項1または2に記載のパウチ型電池セルの製造方法。
【請求項4】
前記2次シーリングは、前記電池ケースの長軸方向シーリング部のうち少なくとも一部、短軸方向シーリング部のうち少なくとも一部、及び角の一部のうち、少なくとも一方をシールする、請求項または2に記載のパウチ型電池セルの製造方法。
【請求項5】
前記2次シーリングは、前記電池ケースの長軸方向シーリング部の中心をシールする、請求項1~4のいずれか一項に記載のパウチ型電池セルの製造方法。
【請求項6】
前記2次シーリング時間は、前記1次シーリング時間よりも長い、請求項1~5のいずれか一項に記載のパウチ型電池セルの製造方法。
【請求項7】
前記2次シーリング時間は、5秒以上である、請求項6に記載のパウチ型電池セルの製造方法。
【請求項8】
前記2次シーリングの加圧力は、前記1次シーリングの加圧力よりも大きい、請求項1~7のいずれか一項に記載のパウチ型電池セルの製造方法。
【請求項9】
前記パウチ型電池セルは、前記電極組立体と、前記1次シーリングのみによって形成された前記1次シーリング部、及び前記1次シーリングと前記2次シーリングの両方によって形成された前記2次シーリング部を含む前記電池ケースと、を含み、
前記2次シーリング部の密封力は、前記1次シーリング部の密封力よりも弱い、請求項1~8のいずれか一項に記載のパウチ型電池セルの製造方法
【請求項10】
前記パウチ型電池セルは、外部樹脂層、金属層及び内部接着層を含むラミネートシートを前記電池ケースとして含み、
前記1次シーリング及び前記2次シーリングの両方が行われた前記2次シーリング部におけるポリボールの厚さは、前記1次シーリングのみ行われた前記1次シーリング部におけるポリボールの厚さの60~70%である、請求項9に記載のパウチ型電池セルの製造方法
【請求項11】
前記パウチ型電池セルは、外部樹脂層、金属層及び内部接着層を含むラミネートシートを前記電池ケースとして含み、
前記1次シーリングのみ行われた前記1次シーリング部におけるポリボールの厚さは220μm~290μmであり、前記2次シーリングまで行われた前記2次シーリング部におけるポリボールの厚さは150μm~170μmである、請求項9または10に記載のパウチ型電池セルの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年11月13日付韓国特許出願第2020-0152143号及び2021年11月11日付韓国特許出願第2021-0155191号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本願発明は、2次シーリングを含むパウチ型電池セルの製造方法及びこれによって製造されたパウチ型電池セルに関する。具体的には、パウチ型電池セルが内圧増加によって膨脹する場合に、前記パウチ型電池セルが爆発する前に内部ガスを排出することによって安全性を確保できるようにシーリング強度を調節することができるパウチ型電池セルの製造方法及びこれによって製造されたパウチ型電池セルに関する。
【背景技術】
【0003】
充放電が可能なリチウム二次電池は、モバイル機器(mobile device)又はウェアラブル機器(wearable device)のエネルギー源として広範囲に使用されている他、電気自動車のエネルギー源としても使用されている。
【0004】
リチウム二次電池は、外装材の種類又は形態によって、ラミネートシートからなるパウチ型二次電池、金属缶からなる円筒形二次電池又は角形二次電池に分類されてよい。
【0005】
パウチ型二次電池は、様々なサイズに製作可能であり、軽くて、エネルギー密度が高いという点から、高出力及び高容量のエネルギー源を必要とする電気自動車の動力として脚光を浴びている。
【0006】
リチウム二次電池は、充放電工程で発生する熱によって電極組立体及び電気的連結部材などの温度が増加することがある。高温になると、リチウム二次電池内の電解液が分解されてガスが発生し、これはリチウム二次電池を膨脹させる。複数の電池セルがケース内に固定されている電池パックにおいて、膨脹した電池セルは限られたケース内でさらに加圧され、このため、発火及び爆発の危険性が増加する。パウチ型電池セルが膨脹して爆発する前に、前記パウチ型電池セル内のガスを排出させることができれば、上記のような問題を防止することができる。
【0007】
パウチ型電池セルは、内部に接着層が形成されたラミネートシートを電池ケースとして使用し、前記電池ケースの外周辺を熱融着でシールする。前記ラミネートシートを加熱及び加圧すれば前記接着層が溶融し、上部ケースのシーリング部と下部ケースのシーリング部とが結合するが、この時、それらの結合部に内部接着層の樹脂が固まる部分が形成され、これをポリボール(poly ball,polymer ball)と称する。
【0008】
前記ポリボールのサイズが大きいほど電池ケースの密封力が高くなり、高い内部圧力でもベンティングが起きない。大きい圧力でベンティング又は爆発が起きないように、必要によって密封力を調節できる手段が必要である。
【0009】
特許文献1は、ラミネートフィルムからなる電池ケースを密封するとき、シーリングツールの加熱温度、プレス圧、及びプレス時間によって異なるパターンのシーリング部を形成できることを説明している。また、樹脂溜まり部の端部は、上側及び下側の少なくとも一方が、樹脂溜まり部の方向に鋭くなった断面形状を構成し、このような場合に破綻強度が弱くなることを説明している。
【0010】
特許文献2は、ポリマーリチウム二次電池の製造方法に関するものであり、外装フィルムの縁部が熱融着によって密封部を形成し、前記密封部のうち少なくとも1箇所は安全バルブとして働き、前記安全バルブとして働く密封領域の熱融着温度は、安全バルブとして働かない密封領域の熱融着温度に比べて低いことを開示している。
【0011】
特許文献2は、電池ケースの外周辺の一部に密封力の弱い部分を形成し、二次電池の破裂を未然に防止することができる。
【0012】
特許文献3は、パウチ外装材の一側に、電池の内圧上昇時に破綻可能なように超音波融着によって形成された破綻辺を備えたリチウムイオンポリマー電池を開示しており、特許文献4は、パウチ型電池セルの外周辺に形成された複数個のシーリング面のいずれか一つのシーリング面のシーリング強度が弱いパウチ型二次電池を開示し、シーリング強度を異なるように形成する方法として、工程条件を調節して圧力、熱及び温度を制御する方法、又はガス排出部位以外のシーリング面にシーリング強度を強化させ得る物質を付加する方法などを開示している。
【0013】
特許文献5は、シーリングツールを用いて熱と圧力を加える1次ヒートシーリングを行い、2次シーリングは、高周波シーリングで1次シーリングされた領域と一部の領域とが重なるように当該領域を加熱して融着させる方法を用いている。特許文献5は、2段階のシーリングによってケースの厚さを減少させ、全体シーリング幅を減少させようとする点に特徴がある。
【0014】
特許文献6は、1次シーリングしたパウチ型電池ケースの外周辺の一部を2次シーリングする方法を開示しており、1次シーリングと2次シーリングは両方とも、シーリングツールを用いたヒートシーリング方法を用いている。ただし、特許文献6において、1次シーリングの好ましい温度範囲は180℃前後であり、2次シーリングの好ましい温度範囲は、室温範囲である15~20℃である。
【0015】
特許文献6において、2次シーリングの温度範囲が非常に低いことは、1次シーリングで溶融されたシーリング領域を冷却して凝固させるためであり、これはシーリングの強度を高めるためである。
【0016】
このように、パウチ型電池セルにおいて、電池ケースのベンティングを誘導するための様々な方法を提示しているが、実質的にシーリングの強度を決定するポリボールのサイズを減らすための方法を明確に提示していない現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】特開第5463212号公報
【文献】特開第2000-100399号公報
【文献】韓国登録特許第0889765号公報
【文献】韓国登録特許第1520152号公報
【文献】韓国登録特許第1883527号公報
【文献】韓国登録特許第1471765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本願発明は、上記のような問題を解決するためのものであり、パウチ型電池セルシーリング部の密封強度を調節することによって、前記パウチ型電池セルが所望の方向にベントされるように誘導できるパウチ型電池セルの製造方法及びこれによって製造されたパウチ型電池セルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
このような目的を達成するための本願発明に係るパウチ型電池セルの製造方法は、ラミネーションシートからなる電池ケースに電極組立体を収納する段階、前記電池ケースの外周辺を1次シーリングする段階、及び前記1次シーリングされた外周辺の少なくとも一部を2次シーリングする段階を含むパウチ型電池セルの製造方法であって、前記1次シーリング及び前記2次シーリングは、シーリングツールで上部ケース及び下部ケースを加圧する工程で行われ、前記1次シーリングのシーリング温度は、前記2次シーリングのシーリング温度と同一である又は高くてよい。好ましくは、前記1次シーリングのシーリング温度は、前記2次シーリングのシーリング温度よりも高くてよい。
【0020】
本願発明に係るパウチ型電池セルの製造方法において、前記1次シーリング温度及び前記2次シーリング温度はそれぞれ、130℃超~250℃以下、50℃以上~200℃未満であり、好ましくは140℃以上~220℃以下、75℃以上~160℃未満であり、より好ましくは、160℃以上~200℃以下、100℃以上~130℃未満であってよい。
【0021】
本願発明に係るパウチ型電池セルの製造方法において、前記1次シーリングは、前記電池ケースが密封されるように電池ケースの全外周辺を密封する工程であってよい。
【0022】
本願発明に係るパウチ型電池セルの製造方法において、前記2次シーリングは、前記電池ケースの長軸方向シーリング部のうち少なくとも一部、短軸方向シーリング部のうち少なくとも一部、及び角の一部のうち、少なくとも一方をシールすることができる。
【0023】
本願発明に係るパウチ型電池セルの製造方法において、前記2次シーリングは、前記電池ケースの長軸方向シーリング部の中心をシールすることができる。
【0024】
本願発明に係るパウチ型電池セルの製造方法において、前記2次シーリング時間は、前記1次シーリング時間よりも長くてよい。
【0025】
本願発明に係るパウチ型電池セルの製造方法において、前記2次シーリング時間は、5秒以上であってよい。
【0026】
本願発明に係るパウチ型電池セルの製造方法において、前記2次シーリングの加圧力は、前記1次シーリングの加圧力よりも大きくてよい。
【0027】
本願発明は、また、前記パウチ型電池セルの製造方法によって製造されたパウチ型電池セルを提供する。
【0028】
本願発明に係る電池セルにおいて、前記パウチ型電池セルは、外部樹脂層、金属層及び内部接着層を含むラミネートシートを電池ケースに含み、1次シーリング及び2次シーリングの両方を行ったシーリング部におけるポリボールの厚さは、1次シーリングされたシーリング部におけるポリボールの厚さの60~70%であってよい。
【0029】
ここで、前記ポリボールの厚さは、前記パウチ型電池セルの断面を観測する時、前記ポリボールが形成された部分のうち最も厚い部分の厚さを指す。
【0030】
また、1次シーリングのみ行われたシーリング部におけるポリボールの厚さは、220μm~300μmであり、2次シーリングまで行われたシーリング部におけるポリボールの厚さは130μm~170μmであってよい。
【0031】
前記パウチ型電池セルは、外部樹脂層、金属層及び内部接着層を含むラミネートシートを電池ケースとして含み、前記電池ケースにおいて1次シーリング及び2次シーリングが行われたシーリング部は、電極組立体収納部と連結される連結部における内部接着層の厚さが、前記シーリング部の外周辺における内部接着層の厚さの200%未満であってよい。
【0032】
本願発明に係る電池セルにおいて、前記電池ケースにおいて1次シーリング及び2次シーリングが行われたシーリング部の密封力は、1次シーリングのみ行われたシーリング部の密封力よりも低くてよい。
【0033】
本願発明は、また、前記課題を解決するための手段を様々に組み合わせて提供することもできる。
【発明の効果】
【0034】
以上に説明したように、本願発明は、パウチ型電池セルのシーリング部の一部を重複シーリングすることによって、当該部分の密封力を調節することができる。また、本願発明は、パウチ型電池セルのシーリング部の一部を重複シーリングすることによって、当該部分に形成されたポリボールのサイズを小さくすることができる。前記ポリボールのサイズが小さくなった部分は密封力が低下するので、パウチ型電池セルのベンティング位置及びベンティング時点を制御することができる。
【0035】
このように、パウチ型電池セルが爆発する前に自己ベンティングを誘導できるので、パウチ型電池セルが高温環境で発火することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本願発明に係るパウチ型電池セルの製造工程である。
図2】パウチ型電池ケースの一部を示す垂直断面図である。
図3】1次シーリングが完了した電池ケースの断面写真である。
図4】2次シーリングが完了した電池ケースの断面写真である。
図5】1次シーリング(a)と2次シーリング(b)後のポリボールによる仮着領域部の長さを示す図である。
図6】1次シーリング(a)と2次シーリング(b)後のポリボールの厚さを示す図である。
図7】サンプル1の密封力測定プロファイルである。
図8】サンプル2の密封力測定プロファイルである。
図9】サンプル3の密封力測定プロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付の図面を参照して、本願発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が本願発明を容易に実施できる実施例を詳細に説明する。ただし、本願発明の好ましい実施例に対する動作原理を詳細に説明するとき、関連する公知機能又は構成に関する具体的な説明が本願発明の要旨を却って曖昧にし得ると判断される場合には、その詳細な説明を省略する。
【0038】
なお、図面中、類似の機能及び作用をする部分に対しては同一の図面符号を使用する。明細書全体を通じて、ある部分が他の部分と連結されているとしているとき、これは、直接に連結されている場合の他に、それらの間にさらに他の素子を介在して間接に連結されている場合も含む。また、ある構成要素を含むということは、別に断らない限り、他の構成要素を除外する意味ではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0039】
また、構成要素を限定又は付加して具体化する説明は、特に制限がない限り、いかなる発明に適用されてもよく、特定の発明に関する説明に限定されない。
【0040】
また、本願発明の説明及び特許請求の範囲全般にわたって単数で表示されたものは、特に言及されない限り、複数である場合も含む。
【0041】
また、本願発明の説明及び特許請求の範囲全般にわたって、「又は」は、特に言及されない限り、「及び」も含むものである。したがって、「A又はBを含む」とは、Aを含む、Bを含む、A及びBを含む、3つのいずれの場合をも意味する。
【0042】
本願発明は、電池ケースの外周辺を加熱及び加圧してシールするパウチ型電池セルの製造方法に関するものであり、前記電池ケースの外周辺の密封力を確保するための目的と、前記外周辺の特定部分でベンティングを誘導するための目的を達成するために、1次シーリングと2次シーリング工程を行う。また、本願発明は、1次シーリングと2次シーリングによって密封力自体を調節することができる。
【0043】
一般に、パウチ型電池のシーリングにおいてシーリング回数を増やせば密封力が上がることが知られている。本願発明は、前記ポリボールのサイズを制御することによって密封力を制御できるだけでなく、2次シーリングによって却って密封力を下げることができるという点に着目して導出したものである。
【0044】
すなわち、前記1次シーリングによって電池ケースの全外注辺において密封力の強い1次シーリング部を形成することができ、前記2次シーリングによって前記1次シーリング部の一部を変形することによって密封力の弱い2次シーリング部を備えることができる。本願発明は、また、2次シーリングの条件を変更することによって、密封力を上げる構成も導出することができた。
【0045】
本願発明に係るパウチ型電池セルの製造方法は、具体的に、ラミネーションシートからなる電池ケースに電極組立体を収納する段階、前記電池ケースの外周辺を1次シーリングする段階、及び前記1次シーリングした外周辺の少なくとも一部を2次シーリングする段階を含む。
【0046】
前記ラミネートシートは、外部樹脂層、空気及び水分遮断性金属層、及び熱融着性の内部接着層が積層された層状構造を有することができ、前記外部樹脂層と金属層との間、及び前記金属層と内部接着層との間に接着層がさらに含まれてよい。
【0047】
前記外部樹脂層は、外部環境に対して優れた耐性を持たなければならず、所定以上の引張強度と耐候性が必要である。このような側面で、外部樹脂層の高分子樹脂は、引張強度及び耐候性に優れたポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)又は延伸ナイロンを含むことができる。
【0048】
前記金属層は、ガス、湿気などの異物の流入又は電解液の漏れを防止する機能の他に電池ケースの強度を向上させる機能も発揮できるように、アルミニウム(Al)又はアルミニウム合金が使用されてよく、アルミニウム合金としては、例えば、合金番号8079、1N30、8021、3003、3004、3005、3104、3105などを挙げることができ、それらは単独又は2つ以上の組合せで使用されてよい。
【0049】
前記内部接着層は、熱融着性を有し、電解液に対する吸湿性が低く、電解液によって膨脹又は浸食されない高分子樹脂が使用されてよく、詳細には、無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)からなってよい。
【0050】
図1は、本願発明に係るパウチ型電池セルの製造工程を示している。
【0051】
図1を参照すると、電池ケース101に電極組立体110を収納した後、1次シーリングツール200で電池ケース101の外周辺全体を密封する1次シーリングを行って1次シーリング部220を形成する。その後、2次シーリングツール300を用いて1次シーリング部220の一部を2次シーリングして2次シーリング部320を形成する。
【0052】
前記1次シーリングは、電池ケースの外部と内部間の物質移動を遮断できるように前記電池ケースを密封する工程であって、電池ケースの全外周辺を密封する。
【0053】
パウチ型電池ケースは、電極組立体収納部が形成される第1ケース、及び前記第1ケースの上部に結合する第2ケースで構成されてよく、或いは、第1ケース及び第2ケースの両方に電極組立体収納部が形成された形態であってよい。
【0054】
前記第1ケースと第2ケースは互いに分離された形態であってもよく、或いは、いずれか一端が結合した状態で折り曲がることによって第1ケースと第2ケースが密封される形態であってもよい。
【0055】
図1の電池ケースは、第1ケース101と第2ケース102のそれぞれに電極組立体収納部が形成されており、第1ケース101と第2ケース102とが結合した状態で折り曲がる形態であって、折り曲がる部分にはシーリング部が形成されないか、或いは他の外周辺に比べてシーリング部がより狭く形成されてよい。
【0056】
図1に示す1次シーリングツール200は、四角リング状を有し、電池ケースの全外周辺を密封できる形態であるが、これに限定されるものではない。図1は、電池ケースシーリング部の上部に配置される1次シーリングツール及び2次シーリングツールだけを示しており、前記1次シーリングツール及び2次シーリングツールと重なるように電池ケースシーリング部の下部に配置される1次下部シーリングツール及び2次下部シーリングツールは省略している。前記1次下部シーリングツール及び2次下部シーリングツールのそれぞれは、1次シーリングツール及び2次シーリングツールのそれぞれに対応するサイズ及び形態を有するか、或いは、1次シーリングツール及び2次シーリングツールよりも大きい支持体の形態で形成されてよい。
【0057】
また、1次シーリングツール及び1次下部シーリングツールは、電池ケースの4個の外周辺シーリング部のいずれか一シーリング部のみを密封できるように、前記いずれか一シーリング部の上下にのみ配置される直線形態であってよい。
【0058】
前記1次シーリング及び前記2次シーリングは、高温のシーリングツールで上部ケース及び下部ケースを加圧する工程によって行われ、前記1次シーリングのシーリング温度は、前記2次シーリングのシーリング温度と同一である或いは高い。
【0059】
具体的には、前記1次シーリング温度及び前記2次シーリング温度はそれぞれ、130℃超~250℃以下、50℃以上~200℃未満であり、好ましくは140℃以上~220℃以下、75℃以上~160℃未満であり、より好ましくは160℃以上~200℃以下、100℃以上~130℃未満であってよい。
【0060】
又は、前記1次シーリング温度は、160℃以上~200℃以下であり、前記2次シーリング温度は、100℃以上~200℃以下、好ましくは100℃以上~140℃以下であってよい。
【0061】
1次シーリング段階は、第1ケースと第2ケースの内部接着層が溶融して相互結合する工程であり、1次シーリング温度は、前記接着層の溶融温度と同一である又はより高い温度範囲であってよい。
【0062】
このように、高い温度で電池ケースの外周辺をシールする場合に、第1ケースと第2ケースとが結合する結合面のうち、電極組立体収納部と連結される部分に、内部接着層を構成する高分子樹脂が固まったポリボール(poly ball)が形成される。
【0063】
前記ポリボールのサイズが大きいほど、電池ケースのベンティング圧力が増加する。このため、本願発明は、高温の1次シーリングによって、電池ケースの全外周辺に強い結合力を有するシーリング部を形成する。
【0064】
一方、本願発明は、パウチ型電池セルのベンティング位置及びベンティング時点を誘導するための技術であり、シーリング部の一部に、密封力の弱い部分を任意に形成することができる。逆に、高い密封力を必要とする場合にも、本願発明に係る構成によって制御が可能である。
【0065】
具体的に、既にシーリングされた1次シーリング部のうち、ベンティングの発生を所望する部分に、低い温度で2次シーリングを行うことによって、密封力の弱いベンティング部を形成する。
【0066】
前記2次シーリング段階で前記ポリボールのサイズが減ることにより、2次シーリングされたシーリング部の密封力が低くなる。
【0067】
一般に、パウチ型電池セルは、短軸方向シーリング部に比べて長軸方向シーリング部の方でベンティングがより多く発生する点から、電池ケースの4方向のシーリング部のうちいずれか1方向のシーリング部でベンティングが先に起きるように誘導する場合には、前記2次シーリングは、前記電池ケースの長軸方向のシーリング部のうち少なくとも一つのシーリング部をさらにシールする工程で行われてよい。
【0068】
前記ベンティング部を狭く形成する場合に、圧力がさらに集中して早くベンティングが起きることがある。また、長軸方向シーリング部のうち中心部に電池セル内部圧力が集中する点から、電池ケースの長軸方向シーリング部の中心部に2次シーリングを行う場合に最も早くベンティングが起きるように誘導できる。
【0069】
一つの具体的な例において、前記2次シーリング時間は1次シーリング時間よりも長い時間行われてよく、詳細には、前記2次シーリング時間は5秒以上行われてよく、より詳細には、8秒以上行われてよい。また、前記1次シーリング時間は4秒以下で行われてよく、詳細には3秒以下で行われてよい。
【0070】
このように、1次シーリングは高温で加圧するので、加圧時間が短くても、内部接着層が溶けて密封性を確保するのに十分である。一方、2次シーリングは、低い温度で加圧するので、ポリボールが溶けて広く広がる時間を確保する必要があり、相対的に長い時間加圧する必要がある。2次シーリングによって仮着領域を形成するポリボールの一部がケースに沿って広く広がるか、或いは、相対的に温度が低いため仮着領域は形成できずにポリボールの厚さだけが減ることによって密封力が弱くなる。
【0071】
他の具体的な例において、前記2次シーリングの加圧力は前記1次シーリングの加圧力よりも大きくてよい。すなわち、低い温度で加圧する2次シーリングでは、1次シーリングに比べて大きい加圧力でシールすることにより、ポリボールのサイズを減らす効果を得ることができる。
【0072】
本願発明に係る1次シーリング及び2次シーリングによるシーリング部の変化を説明するために、図2は、パウチ型電池ケースの一部の垂直断面図を示している。
【0073】
図2を参照すると、パウチ型電池ケースは、第1ケース101と第2ケース102とで構成され、外部樹脂層101a,102a、金属層101b,102b、及び内部接着層101c,102cが順次に積層された構造を有するラミネートシートを成形して製造されたものである。
【0074】
(a)は、パウチ型電池ケースをシールする前状態であり、(b)は、1次シーリングした状態であり、(c)は、2次シーリングした状態である。前記(c)は、2次シーリングによって密封力を下げた場合を示す。
【0075】
具体的に、(b)に示す1次シーリング部220において、第1ケース101の内部接着層101cと第2ケース102の内部接着層102cが溶融して結合しながら一体化する。また、内部接着層101c,102cは1次シーリングツールによって加圧されるため、内部接着層101c,102cの厚さの和は、(a)に比べて(b)において薄くなる。
【0076】
すなわち、1次シーリング部220にある内部接着層は、1次シーリングツールによって押されて電極組立体収納部105の方向にはみ出されながらポリボール108を形成する。
【0077】
また、2次シーリングは、低い温度で1次シーリング部220を加圧して2次シーリング部320を形成する工程であり、2次シーリング部320ではポリボール108のサイズが顕著に減る。
【0078】
したがって、2次シーリング部320における密封力も弱くなり得る。
【0079】
これは、2次シーリングツールの温度によって内部接着層とポリボールが加熱された状態で加圧力が作用してポリボールが広く広がる結果として現れる現象とみられる。
【0080】
上記のようなパウチ型製造方法によって製造されたパウチ型電池セルは、1次シーリングのみによって形成された1次シーリング部と、1次シーリングと2次シーリングの両方によって形成された2次シーリング部を含み、前記2次シーリング部は、電極組立体収納部と連結される連結部における内部接着層の厚さが、前記シーリング部の外周辺における内部接着層の厚さの200%未満であってよい。
【0081】
また、前記2次シーリング部のシーリング強度は、前記1次シーリング部のシーリング強度よりも低いので、パウチ型電池セルの内圧増加時に前記2次シーリング部でまずベンティングが起き得る。
【0082】
以下では、本願発明の実施例を参照して説明するが、これは、本願発明のより容易な理解のためのもので、本願発明の範疇を限定するものではない。
【0083】
<比較例>
【0084】
内部接着層として熱融着性樹脂の一種である変性ポリオールレフィン層、金属層としてアルミニウム層、及び外部樹脂層としてポリエチレンテレフタレートを含むラミネートシートから製造された電池ケースを3セット準備し、それぞれをサンプル1、サンプル2、及びサンプル3とした。前記サンプル1電池ケースの上部ケースの外周辺と下部ケースの外周辺とが対面するように配置した状態で前記上部ケースと下部ケースの厚さの和は137μmとした。
【0085】
前記サンプル1電池ケースの上部ケース外周辺と下部ケース外周辺を密封するために、シーリング温度を185℃にし、0.03kgf/cmの加圧力を3秒間印加して1次シーリングを行った。
【0086】
前記サンプル1電池ケースの1次シーリングが完了した写真を、図3に示す。図3を参照すると、ポリボールの高さが248.74μmと測定された。
【0087】
サンプル1、2、3と同じ条件で複数の電池ケースに対して仮着領域部の長さ及びポリボール厚さの変化を観測した。図5は、1次シーリング(a)及び2次シーリング(b)後のポリボールによる仮着領域部の長さであり、図6は、1次シーリング(a)及び2次シーリング(b)後のポリボールの厚さである。
【0088】
図3図6を参照すると、1次及び2次シーリングを行っても仮着領域部の長さはあまり変動がないことが観測された。ただし、1次及び2次シーリングを行う場合に、ポリボールの厚さに変動が起き、これによって密封力の差ができる。
【0089】
図3図6を参照すると、1次シーリングされたシーリング部においてポリボールの厚さは220μm~290μm、2次シーリングされたシーリング部においポリボールの厚さは150μm~170μmである。
【0090】
前記サンプル2及びサンプル3も、前記サンプル1の1次シーリングと同じ条件で1次シーリングされた。
【0091】
前記サンプル1の密封力を3回測定した密封力プロファイルを、図7に実線で示し、前記サンプル2の密封力を2回測定した密封力プロファイルを、図8に実線で示し、前記サンプル3の密封力を2回測定した密封力プロファイルを、図9に実線で示した。
【0092】
下記の表1には、各サンプルの密封力プロファイルのピーク値の平均値を記載した。表1で、比較例は、前記サンプル1、サンプル2、サンプル3に対して1次シーリングのみを行った場合を指す。
【0093】
<実施例1>
【0094】
前記比較例のサンプル1を準備し、2次シーリングとして、1次シーリングされた外周辺の一部に対してシーリング温度を130℃とし、40kgf/cmの力を8秒間印加した。
【0095】
前記サンプル1の2次シーリングが完了した電池ケースの写真を、図4に示した。
【0096】
図4を参照すると、ポリボールの高さが134.96μmと測定される。したがって、2次シーリングも行った場合にポリボールのサイズは、1次シーリングのみを行った時のポリボールのサイズ比べて約45%減ったことが確認できる。
【0097】
サンプル1の2次シーリング後の密封力を3回測定した密封力プロファイルを、図7に点線で示し、下記の表1には、3回測定した密封力プロファイルのピーク値の平均値を記載した。
【0098】
<実施例2>
【0099】
前記比較例のサンプル2を準備し、2次シーリングとして、シーリング温度を185℃とし、圧力無しで3秒間シールした。
【0100】
前記サンプル2の2次シーリング後に密封力を2回測定した密封力プロファイルを、図8に点線で示し、下記の表1には2回測定した密封力プロファイルのピーク値の平均値を記載した。
【0101】
<実施例3>
【0102】
前記比較例のサンプル3を準備し、2次シーリングとして、シーリング温度を185℃とし、40kgf/cmの力を3秒間印加した。
【0103】
前記サンプル3の2次シーリング後に密封力を2回測定した密封力プロファイルを、図9に点線で示し、下記の表1には、2回測定した密封力プロファイルのピーク値の平均値を記載した。
【0104】
前記比較例と実施例1~実施例3で製造された電池ケースの密封力を測定するために、下記のような剥離強度測定実験を行い、その結果を下記の表1に記載した。
【0105】
<実験例>
【0106】
剥離強度測定
【0107】
Stable Micro System社のTA装備(モデル名:Texture Analyzer)を用いて上記の比較例、実施例1~実施例3で製造した電池ケースを250mm/minの速度で180°の角度で剥離し、この際に必要な力を測定した。
【0108】
【表1】
【0109】
上記の表1を参照すると、サンプル1では、1次シーリングのみを行った時の密封力が、2次シーリングをさらに行った後の密封力に比べて高いことが確認できる。
【0110】
一方、サンプル2及びサンプル3では、1次シーリングのみを行った時の密封力に比べて2次シーリングを行った後の密封力がより増加していることが確認できる。
【0111】
したがって、本願発明のように、1次シーリング温度よりも低い温度で2次シーリングを行う場合に、1次シーリングのみを行った状態に比べて密封力が低くなることが分かる。これは、図3及び図4に示すように、1次シーリングと2次シーリングを順次に行い、2次シーリング温度が1次シーリング温度よりも低い場合には、ポリボールのサイズが顕著に減って密封力が減少する結果とみられる。
【0112】
実施例2及び実施例3から分かるように、2次シーリング温度が1次シーリング温度と同一である或いはより高い場合には、密封力が増加する結果が見られ、これは、加圧に比べて温度による影響がより大きいことが把握される。
【0113】
本願発明の属する分野における通常の知識を有する者であれば、上記の内容に基づいて本願発明の範疇内で様々な応用及び変形を行うことが可能であろう。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本願発明は、ラミネーションシートからなる電池ケースに電極組立体を収納する段階、前記電池ケースの外周辺を1次シーリングする段階、及び前記1次シーリングされた外周辺の少なくとも一部を2次シーリングする段階を含むパウチ型電池セルの製造方法に関し、前記1次シーリング及び2次シーリングの両方を行った部分の密封力が弱く形成されるので、パウチ型電池セルのベンティング位置及びベンティング時期を誘導することができ、産業上に利用可能である。
【符号の説明】
【0115】
101 第1ケース
101a,102a 外部樹脂層
101b,102b 金属層
101c,102c 内部接着層
102 第2ケース
105 電極組立体収納部
108 ポリボール
110 電極組立体
111 正極端子
112 負極端子
200 1次シーリングツール
220 1次シーリング部
300 2次シーリングツール
320 2次シーリング部
図1
図2(a)】
図2(b)】
図2(c)】
図3
図4
図5(a)】
図5(b)】
図6(a)】
図6(b)】
図7
図8
図9