(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】電子混合水栓
(51)【国際特許分類】
F24D 17/00 20220101AFI20240729BHJP
G05D 23/13 20060101ALI20240729BHJP
F16K 31/04 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
F24D17/00 L
G05D23/13
F16K31/04 H
(21)【出願番号】P 2020157345
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2023-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000100562
【氏名又は名称】アール・ビー・コントロールズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106105
【氏名又は名称】打揚 洋次
(72)【発明者】
【氏名】中島 征士
(72)【発明者】
【氏名】江川 凌太
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-241607(JP,A)
【文献】特開2011-033091(JP,A)
【文献】特開2015-152196(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0153425(US,A1)
【文献】特開2017-133789(JP,A)
【文献】特開平01-279182(JP,A)
【文献】特開昭62-123510(JP,A)
【文献】米国特許第4969598(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 17/00
F16K 11/00
F16K 31/00
G05D 23/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給湯装置から出湯される温水と水道水とを混合して所定の水量であって所定の温度の混合水として吐出する電子混合水栓であって、上記温水が流れる給湯管に温水の流量を調節する温水サーボを有し、上記水道水が流れる給水管に水道水の流量を調節する水道水サーボを有し、上記混合水の水温を検知する水温センサを設けて、この水温センサが検知する混合水の水温に応じて上記両サーボのうち少なくとも水道水サーボの流量を調節するものにおいて、上記水道水の水温を検知する水温センサを設け、この水道水の水温が低いほど上記水道水サーボの流量調節速度を減速することを特徴とする電子混合水栓。
【請求項2】
上記温水の水温をThとし、上記水道水の水温をTcとし、上記混合水の水量をWmとして、上記水道水サーボの流量調節速度に対する補正係数をWm/(Th-Tc)としたことを特徴とする請求項1に記載の電子混合水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯装置から出湯される温水と水道水とを所定の比率で混合して所望する水温の混合水として吐出する電子混合水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の電子混合水栓として、給湯装置から出湯されてる温水の流量を増減制御する温水サーボと、水道水の流量を増減制御する水道水サーボとを設け、これら温水と水道水とを混合した後の混合水の水量が所定の水量であって、かつ混合水の水温が上記所望する水温になるように、温水の流量と水道水の流量とを調節するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記温水は給湯装置から吐出されるため、給湯装置側で出湯温度を設定すると、加熱前の水道水の水温の高低にかかわらず、設定された出湯温度の温水を吐出する。そのため、季節等によって水道水の水温が変化しても出湯温度はほとんど変化しない。
【0005】
これに対して、温水に混合される水道水の水温は季節などによって大きく変化する。従って、温水に混合する水道水が低温であれば、混合される水道水の流量が少ししか増減しなくても混合水の水温に与える影響が大きく、逆に水道水の温度が高ければ混合水の水温に与える影響は小さくなる。
【0006】
このため、上記水道水サーボの開度を制御する際に、水道水の水温の高低にかかわらず一定の速度で開度を変化させると、混合水の温度変化が一定せず、使用感に変化が生じるという不具合が生じる。なお、このような不具合は季節の変化の他、地域的な差により水道水の水温が相違する場合にも生じる。
【0007】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、水道水の水温の高低にかかわらず、同じ使用感を得ることのできる電子混合水栓を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明による電子混合水栓は、給湯装置から出湯される温水と水道水とを混合して所定の水量であって所定の温度の混合水として吐出する電子混合水栓であって、上記温水が流れる給湯管に温水の流量を調節する温水サーボを有し、上記水道水が流れる給水管に水道水の流量を調節する水道水サーボを有し、上記混合水の水温を検知する水温センサを設けて、この水温センサが検知する混合水の水温に応じて上記両サーボのうち少なくとも水道水サーボの流量を調節するものにおいて、上記水道水の水温を検知する水温センサを設け、この水道水の水温が低いほど上記水道水サーボの流量調節速度を減速することを特徴とする。
【0009】
水道水の水温に着眼し、水道水の水温を検知する水温センサを設け、この水道水の水温が低いほど上記水道水サーボの流量調節速度を減速するように制御することによって、水道水の水温の高低による影響が出ないようにする。
【0010】
具体的には、上記温水の水温をThとし、上記水道水の水温をTcとし、上記混合水の水量をWmとして、上記水道水サーボの流量調節速度に対する補正係数をWm/(Th-Tc)とすればよい。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明から明らかなように、本発明は、水道水の水温が低いほど上記水道水サーボの流量調節速度を減速するように制御するので、水道水の水温の高低による影響が出ない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明を実施するにあたり最低限の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を参照して、1は水道水が流れる水道管であり、この水道管1には水道水を混合タンク3へ導く給水管11が接続されている。この給水管11には、給水管11内の水道水の流量を増減するための水道水サーボ12が設置されている。この水道水サーボ12は内部に図示しないサーボモータを有しており、同じく図示しない制御装置からの制御信号によって水道水の流路を増減するように構成されている。また、給水管11には内部に流れる水道水の水温を検知する水温センサ13と流量を検知する流量センサ14とが取り付けられている。なお、この水温センサ13が検知する水温をTcとし、流量センサ14が検知する流量をWcとする。
【0014】
一方、上記水道管11には給湯装置2が接続されており、水道管1内に流れる水道水を所定の温度まで加熱して温水とし、給湯管21を介して混合タンク3に導くように構成されている。なお、この給湯管21には温水サーボ22,水温センサ23.および流量センサ24が取り付けられている。なお、この給湯管21に取り付けられた水温センサ23が検知する湯温をThとし、流量センサ24が検知する流量をWhとする。
【0015】
混合タンク3で水道水と温水とが混合されたあと、その混合水は吐出管31を通って浴室などに導かれる。なお、この吐出管31には混合水の水温を検知する水温センサ33が取り付けられており、この水温センサ33が検知する混合水の温度をTmとする。なお、4は上記図示しない制御装置によって開閉制御される開閉弁である。
【0016】
上記構成で、浴室などから出湯指示がされると、それまで閉弁状態であった開閉弁4を開弁させ吐出管31から混合水を浴室等へと吐出する。吐出される混合水の温度は使用者が任意に設定することができ、混合水の吐出量は制御装置によって決定される。
【0017】
その際、以下の数1の関係が成立する。
【0018】
TmWm=ThWh+TcWcであるから、
【0019】
Tm=(ThWh+TcWc)/Wm・・・・・(数1)
【0020】
但し、Wmは吐出管31内を流れる混合水の水量であり、(Wc+Wh)である。
【0021】
ここで、WcをΔW増加させ、逆にWhをΔW減少させた場合のTmをTm’とすると、
【0022】
Tm-Tm’=(ThΔW-TcΔW)/Wmとなり、
ΔW=1とした場合には、
【0023】
Tm-Tm’=(Th-Tc)/Wm・・・・・(数2)
が得られる。
【0024】
そこで、水道水サーボ12の開度を変化させる際に、温水サーボ22の開度変化速度に対する補正係数として上記数2の逆数を補正係数として用い、水道水サーボ12の開度変化にWm/(Th-Tc)をかけた値で水道水サーボ12の開度を制御することとした。
【0025】
このように補正係数を用いる理由は、季節によってもThやTmはあまり変化しないが、Tcは大きく変化する。従って、Tcが低くなるに伴って水道水サーボ12の開度の影響がTmに大きく現れるので、Tcが小さくなるに従って水道水サーボ12の開度変化速度が遅くなるようにした。
【0026】
例えば、Th=60℃、Tc=20℃であって、Wm=100L/minとすると、上記補正係数は、2.5になる。
【0027】
次に、水道水の水温が10℃に低下した場合の補正係数は、2.0になる。
このように、水道水の温度が20℃から10℃に下がると、水道水サーボ12の開閉速度が20%減少するようにした。
【0028】
なお、
図1に示すように、温水サーボ22の開度は水温センサ23の検知温度に基づいてフィードバック制御し、水道水サーボ12の開度は水温センサ33の検知温度に基づいてフィードバック制御するが、このような構成に限定されるものではない。
【0029】
例えば、
図2に示す構成であってもよい。この
図2に示す構成は上記
図1に示した構成に対して吐出管31に混合水サーボ32と流量センサ34とを追加している。そして、この混合水サーボ32の開度は流量センサ34が検知する混合水の流量に基づいてフィードバック制御し、水道水サーボ12および温水サーボ22の開度は水温センサ33の検知する混合水の水温に基づいて制御する。但し、この場合も水道水サーボ12の開閉速度は上記の補正係数によって水道水の水温に応じた速度になるようにした。
【0030】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【符号の説明】
【0031】
1 水道管
2 給湯装置
3 混合タンク
4 開閉弁
11 給水管
12 水道水サーボ
13 水温センサ
14 流量センサ
21 給湯管
22 温水サーボ
23 水温センサ
24 流量センサ
31 吐出管
32 混合水サーボ
33 水温センサ
34 流量センサ