(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス、および外装部材
(51)【国際特許分類】
H01B 7/00 20060101AFI20240729BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
H01B7/00 301
H02G3/04 062
H02G3/04 087
(21)【出願番号】P 2020160795
(22)【出願日】2020-09-25
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 智彦
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-322940(JP,A)
【文献】特開2019-175790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と、該電線の所定位置に装着される外装部材と、を備えたワイヤハーネスであって、
前記電線は、複数の素線の集合体である芯線、および該芯線を被覆する被覆部を有し、
前記外装部材は、前記電線を挟み込む一対の部材から成る筒状の外装本体と、
前記電線に対し垂直な断面において、前記外装本体から前記芯線に向かって突出して設けられて前記被覆部を貫通するとともに、突出方向の先端は、前記被覆部と前記芯線との間に位置される貫通刃と、を有し、
前記貫通刃は、前記一対の部材それぞれに設けられ、
前記一対の部材のうち一方には、一部を切り欠いて形成された開口が形成され、
前記開口から前記外装本体の内部に注入されて、前記複数の素線間に充填される充填材をさらに備えたことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
前記貫通刃は、前記電線の延在方向に対して斜めに延びて形成されていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記電線の少なくとも一方の端末部に接続される端子と、
該端子と前記芯線とが接続された状態で前記芯線が露出した部分を覆う防食部と、をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
複数の素線の集合体である芯線、および該芯線を被覆する被覆部を有する電線を挟み込む一対の部材から成る筒状の外装本体と、
該外装本体の内面から突出して設けられた貫通刃と、を有し、
前記貫通刃は、前記被覆部を貫通して前記芯線の手前まで到達可能な突出寸法を有し、
前記貫通刃は、前記一対の部材それぞれに設けられ、
前記一対の部材のうち一方には、一部を切り欠いて形成された開口が形成されていることを特徴とする外装部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネス、および外装部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には、多種多様な電子機器が搭載され、電子機器に電力や制御信号等を伝えるために、ワイヤハーネスが配索されている。このようなワイヤハーネスを構成する電線として、アルミニウムが導体芯線の材料として用いられる場合がある。このようなアルミニウム製の導体芯線を有するアルミニウム電線(以下、電線と記す)と端子とを接続するにあたり、電線と端子との接続部分に対する浸水を抑制するための技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、被覆電線(以下、電線と記す)電線と、この電線の導体部分に接続される圧着端子と、を備えた端子付き電線が開示されている。この端子付き電線を製造する際には、金属製の板材を折り曲げて、板材の2つの端縁を突き合わせた状態で接合することで筒状体を形成し、この筒状体に電線の導体部分を挿入して、電線の導体部分とともに筒状体を押し潰して封止することで、電線の導体部分と圧着端子とが接続された端子付き電線が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の端子付き電線を製造する場合には、金属製の板材を折り曲げて、板材の2つの端縁を突き合わせた状態で接合するための接合設備や、圧着端子の筒状体を押し潰して封止するための圧着設備を新設する必要が生じ、製造コストを低減することが困難だった。
【0006】
本発明は、製造コストを低減させつつ、防水シール性の向上を図ったワイヤハーネス、および外装部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、電線と、該電線の所定位置に装着される外装部材と、を備えたワイヤハーネスであって、前記電線は、複数の素線の集合体である芯線、および該芯線を被覆する被覆部を有し、前記外装部材は、前記電線を挟み込む一対の部材から成る筒状の外装本体と、前記電線に対し垂直な断面において、前記外装本体から前記芯線に向かって突出して設けられて前記被覆部を貫通するとともに、突出方向の先端は、前記被覆部と前記芯線との間に位置される貫通刃と、を有し、前記貫通刃は、前記一対の部材それぞれに設けられ、前記一対の部材のうち一方には、一部を切り欠いて形成された開口が形成され、前記開口から前記外装本体の内部に注入されて、前記複数の素線間に充填される充填材をさらに備えたことを特徴とするワイヤハーネスである。
【0008】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載の発明において、前記貫通刃は、前記電線の延在方向に対して斜めに延びて形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に記載された発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記電線の少なくとも一方の端末部に接続される端子と、該で前記芯線が露出した部分を覆う防食部と、をさらに備えたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項4に記載された発明は、複数の素線の集合体である芯線、および該芯線を被覆する被覆部を有する電線を挟み込む一対の部材から成る筒状の外装本体と、該外装本体の内面から突出して設けられた貫通刃と、を有し、前記貫通刃は、前記被覆部を貫通して前記芯線の手前まで到達可能な突出寸法を有し、前記貫通刃は、前記一対の部材それぞれに設けられ、前記一対の部材のうち一方には、一部を切り欠いて形成された開口が形成されていることを特徴とする外装部材である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、電線と、該電線の所定位置に装着される外装部材と、を備え、外装部材は、電線を挟み込む筒状の外装本体と、該外装本体に設けられて、被覆部から芯線まで貫通する貫通刃と、を有し、外装本体には、一部を切り欠いて形成された開口が形成され、開口から外装本体の内部に注入されて、複数の素線間に充填される充填材を備える。これによれば、外装本体が電線の所定位置にて該電線を挟み込んで、該外装本体に設けられた貫通刃が電線の被覆部から芯線まで貫通する。この状態で、外装本体の開口から充填材が注入されることで、貫通刃により貫通した部分を通って、複数の素線間に充填材が充填される。こうして、電線の各端末部間の空気の経路を遮断される。ここで、例えば、電線の一方の端末部が、車両のエンジンルーム等の急激に冷却される環境に設置された際に、冷却により負圧が発生したとしても、電線の所定位置には、外装部材を介して複数の素線間に充填材が充填されていることで、電線の各端末部間の空気の経路を遮断することができる。これによれば、従来技術の如く筒状体を形成し、該筒状体を押し潰して封止するための圧着設備を新設しなくとも、電線の所定位置に外装部材を介して複数の素線間に充填材が充填されていることで、電線の各端末部間の空気の経路を遮断されて、電線の内部において液体を吸い込むことがなくなる。これにより、製造コストを低減させつつ、防水シール性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るワイヤハーネスを示す分解斜視図である。
【
図5】(A)~(C)は、前記ワイヤハーネスを組み立てる様子を説明するための断面図である。
【
図6】前記ワイヤハーネスを構成する外装部材の変形例を示す図である。
【
図7】前記ワイヤハーネスを構成する外装部材の他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態を
図1~5に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係るワイヤハーネス1を示す分解斜視図である。
図2は、ワイヤハーネス1を示す斜視図である。このワイヤハーネス1は、車両の車室内に搭載される電装品と、各電装品の制御等を行う電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)と、の間に接続されて、電子制御ユニットからの制御信号を各電装品に伝送する。本実施形態では、電子制御ユニットはエンジンルーム内に設置され、電装品はエンジンルームとは区画された車室内に設置されている。
【0014】
ワイヤハーネス1は、
図1、2に示すように、被覆電線2(以下電線2と記す)と、`該電線の所定位置に装着される外装部材3と、該外装部材3の注入口6(開口)から内部に注入される充填材10と、を備える。
【0015】
この電線2の一方の端末部2Aは、不図示の第1コネクタを介して、車両の車室内に搭載される不図示の電装品に接続され、他方の端末部2Bは、不図示の第2コネクタを介して、各電装品の制御等を行う不図示の電子制御ユニットに接続されている。
【0016】
第1コネクタは、電線2の一方の端末部2Aに接続される第1端子と、該第1端子を収容する第1ハウジングと、電線2の被覆部23に外嵌されて第1ハウジング内への浸水を阻止するゴム栓と、を備える。以下では、第1コネクタを「防水コネクタ」と記す。
【0017】
第2コネクタは、電線2の他方の端末部2Bに接続される第2端子 (端子)と、第2ハウジングと、防食部と、を備える。防食部は、電線2の他方の端末部2Bにおいて、第2端子と電線2の芯線22とが接続された状態で、溶融されたUV硬化樹脂が、第2端子と芯線22との接続部分および芯線22が露出した部分を覆うように塗布され硬化されることで形成されたものであり、芯線22が露出した部分の腐食を抑制する。以下では、第2コネクタを「防食コネクタ」と記す。
【0018】
電線2は、
図1に示すように、導電性を有する線状の素線21の集合体である芯線22と、この芯線22を絶縁被覆する被覆部23と、を備える。素線21は、アルミニウムを含んで構成されている。換言すると、電線2は、アルミニウム電線2またはアルミニウム合金電線2である。また、本実施形態では、電線2の長手方向(電線2が延在する方向)を「前後方向」と記す場合がある。
【0019】
外装部材3は、
図1、3に示すように、下部材4と、上部材5
(一対の部材のうち一方)と、を備え、これら下部材4および上部材5は、電線2を挟み込むことが可能な周面30を有して構成されている。これらの上部材5および下部材4は、樹脂成形により形成されている。本実施形態では、不図示の入れ子を含む金型を用いて形成されている。以下では、周面30のうち、下部材4に設けられた周面30の一部分を「下側周面40」と記し、上部材5に設けられた周面30の他の部分を「上側周面50」と記す場合がある。
下部材4および上部材5は、請求項中の「一対の部材」を構成する。
【0020】
この周面30は、下部材4および上部材5が組み付けられた状態で、略円形状に形成されている。また、周面30の内径寸法は電線2の外径寸法と略同じ径寸法か、周面30の内径寸法が、電線2の外径寸法より僅かに大きい径寸法となるように形成されていて、これら下部材4および上部材5により電線2が挟み込まれた状態で、電線2の周面20が下部材4および上部材5の周面30に接触(または対向)するように構成されている。
【0021】
下部材4は、
図1、4に示すように、下側周面40を有する樋状の下部材本体41と、下側周面40から突出して設けられて電線2の被覆部23から芯線22
の手前まで貫通する下側貫通刃42と、下側周面40において、下側貫通刃42の前後方向の両側に位置する下側溝部43(
図1に示す)と、を備える。なお、下部材本体41、および上部材5の後述する上部材本体51を、以下では「外装本体31」と記す場合がある。また、下側貫通刃42、および上部材5の後述する上側貫通刃52を、以下では「貫通刃32」と記す場合がある。
【0022】
下部材本体41は、長方形板状の下壁44と、該下壁44の両端から立設して幅方向に対向する一対の下側立設壁45、45と、を備え、下壁44から各下側立設壁45に亘って、電線2の周面20に接触する下側周面40が設けられている。この下側周面40は、電線2の周面20の曲率と略同じ曲率を有して構成されている。この下側周面40は断面半円状に形成され、長手方向に延びて構成されている。
【0023】
下側貫通刃42は、一対の下側刃部4R、4Lを有して構成されている。一対の下側刃部4R、4Lは、電線2の幅方向に延在する仮想線Pを軸とする対称に配置されているとともに、両端部40a、40aが仮想線Pに最も近い位置にあり、中間部が仮想線Pから最も離れた位置にあるように設けられている。また、各下側刃部4R、4Lは、各端部40aが下側周面40の幅方向の両端部4a、4bの手前に位置するように形成されている。
【0024】
一対の下側刃部4R、4Lは、それぞれ、一端4aから他端4bまで同じ突出寸法を有して構成されているとともに、何れの位置においても、仮想線Pに向けて斜めに延びて形成されている。即ち、一対の下側刃部4R、4Lは、前後方向(電線2の延在方向)に対して斜めに延びて形成されている。各下側刃部4R、4Lは、電線2が近付けられた際に、
図4に示すように、電線2の被覆部23を貫通して芯線22
の手前まで到達するような長さを有して形成されている。
【0025】
各下側溝部43は、
図1に示すように、2つの下側凹溝46、46を有して構成されている。3つの下側凹溝46、46は、下側周面40の前後方向に等間隔をあけて設けられている。各下側凹溝は、下側周面40の幅方向の両端部を切り欠いて形成されているとともに、下側周面40の一端4aから他端4bまで凹溝状に延在形成されている。
【0026】
上部材5は、
図1、4に示すように、上側周面50を有する樋状の上部材本体51と、上側周面50から突出して設けられて電線2の被覆部23から芯線22
の手前まで貫通する上側貫通刃52と、上側周面50において、上側貫通刃52の前後方向の両側に位置する上側溝部53(
図1に示す)と、を備える。
【0027】
上部材本体51は、下部材本体41の下壁44に対向して設けられる長方形板状の上壁54と、該上壁54の両端から立設して幅方向に対向する一対の上側立設壁55、55と、を備え、上壁54から各上側立設壁55に亘って、電線2の周面20に接触する上側周面50が設けられている。この上側周面50は、電線2の周面20の曲率と略同じ曲率を有して構成されている。この上側周面50は断面半円状に形成され、前後方向に延びて構成されている。
【0028】
上壁54には、その一部を切り欠いて形成されて、溶融した樹脂が注入される注入口6(開口)が設けられている。この注入口6は、トラック状に形成されているとともに、上側貫通刃52の後述する一対の上側刃部5R、5L間において、各上側刃部5R、5Lの内縁に沿って形成されている。
【0029】
上側貫通刃52は、一対の上側刃部5R、5Lを有して構成されている。一対の上側刃部5R、5Lは、電線2の幅方向に延在する仮想線Pを軸とする線対称に配置されているとともに、平面視では、両端部50aが仮想線Pに最も近い位置にあり、中間部が仮想線Pから最も離れた位置にあるような曲線状に設けられている。また、各上側刃部5R、5Lは、その端部50aが上側周面50の幅方向の両端部5a、5bの手前に位置するように形成されている。
【0030】
このような各下側刃部4R、4Lおよび各上側刃部5R、5Lは、下部材4および上部材5が電線2を挟み込んだ際に、電線2の長手方向の所定位置において、被覆部23の全周を切り込むことはない。換言すると、各下側刃部4R、4Lは、下部材4および上部材5が電線2を挟み込んだ際に、電線2の長手方向の所定位置において、被覆部23の周方向の一部のみを切り込むように構成されている。
【0031】
また、一対の上側刃部5R、5Lは、それぞれ、一端5aから他端5bまで同じ突出寸法を有して構成されているとともに、何れの位置においても、仮想線Pに向けて斜めに延びて形成されている。即ち、一対の上側刃部5R、5Lは、前後方向(電線2の延在方向)に対して斜めに延びて形成されている。
【0032】
各上側溝部53は、2つの上側凹溝56、56を有して構成されている。3つの上側凹溝56、56は、上側周面50の前後方向に等間隔をあけて設けられている。各上側凹溝56は、上側周面50の幅方向の両端部を切り欠いて形成されているとともに、上側周面50の一端5aから他端5bまで凹溝状に延在形成されている。
【0033】
次に、電線2の所定位置に外装部材3を装着させてワイヤハーネス1を製造する手順について
図5(A)(B)(C)を参照して説明する。
図5(A)に示すように、下部材4と上部材5との上下の間に電線2を位置付けて、下部材4および上部材5を電線2に近付けて該電線2を挟み込む。
図5(B)に示すように、下部材4の一対の下側刃部4R、4L、および上部材5の一対の上側刃部5R、5Lが、電線2の被覆部23を貫通して被覆部23に孔部23aが形成される。これと略同時に、電線2の周面20は、下部材4の下側周面40、および上部材5の上側周面50に対向して接触する。
【0034】
続いて、
図5(C)に示すように、注入口6から外装本体31の内部に、溶融した充填材10を注入する。充填材10は、被覆部23に形成された孔部23aから被覆部23の内部に進入して、複数の素線21間に充填される。この後、充填材10が硬化する。これにより、電線2の各端末部間の空気の経路が遮断される。これにより、電線2の所定位置に外装部材3を装着させて形成されたワイヤハーネス1が完成する。
【0035】
上述した構成のワイヤハーネス1において、電線2の一方の端末部2Aは、防水コネクタを介して、車両の車室内に搭載される電装品に接続され、他方の端末部2Bは、防食コネクタを介して、各電装品の制御等を行う電子制御ユニットに接続されている。これにより、電子制御ユニットからの電気信号が電装品に伝送される。
【0036】
上述した実施形態によれば、電線2と、該電線2の所定位置に装着される外装部材3と、を備え、外装部材3は、電線2を挟み込む筒状の外装本体31と、該外装本体31に設けられて、被覆部23から芯線22の手前まで貫通する貫通刃32と、を有し、外装本体31には、一部を切り欠いて形成された注入口6(開口)が形成され、注入口6から外装本体31の内部に注入されて、複数の素線21間に充填される充填材10を備える。これによれば、外装本体31が電線2の所定位置にて該電線2を挟み込んで、該外装本体31に設けられた貫通刃32が電線2の被覆部23から芯線22の手前まで貫通する。この状態で、外装本体31の注入口6から充填材10が注入されることで、貫通刃32により貫通した孔部23a(部分)を通って、複数の素線21間に充填材10が充填される。こうして、電線2の各端末部間の空気の経路を遮断される。
【0037】
ここで、例えば、電線2の一方の端末部2Aが、車両のエンジンルーム等の急激に冷却される環境に設置された際に、冷却により負圧が発生したとしても、電線2の所定位置には、外装部材3を介して複数の素線21間に充填材10が充填されていることで、電線2の各端末部間の空気の経路は遮断されている。これによれば、電線2の所定位置に外装部材3を介して複数の素線21間に充填材10が充填されていることで、電線2の各端末部間の空気の経路を遮断されて、電線2の内部において液体を吸い込むことがなくなる。これにより、製造コストを低減させつつ、防水シール性の向上を図ることができる。
【0038】
また、外装部材3が、電線2の所定位置に挟み込んで装着されていることで、電線2を保護しつつ、充填材10が複数の素線21間に充填されていることで屈曲耐久性の向上を図ることができる。また、外装部材3が、電線2の所定位置を挟み込んだ状態で、所定量の充填材10を外装部材3の注入口6(開口)から注入することで形成されるので、完成時の品質のばらつきを生じ難くすることができる。
【0039】
また、貫通刃32は、前後方向(電線2の延在方向)に対して斜めに延びて形成されている。これによれば、貫通刃32が外装部材3の周面30に対して直交する方向に突出した場合に比して、貫通刃32により形成された孔部23aの開口面積を大きくすることができるとともに、貫通刃32が芯線22に直角に当たり難くなる。このように孔部23aの開口面積が大きくなることで、被覆部23の内部の空気を抜け易くしつつ、溶融した充填材10を被覆部23の内部に進入させ易くすることができる。
【0040】
また、ワイヤハーネス1は、電線2の他方の端末部2B(少なくとも一方の端末部2A)に接続される第2端子(端子)と、該第2端子と芯線22とが接続された状態で芯線22の露出部分を覆う防食部と、を備えている。これによれば、電線2の端末部2Bにおいて、芯線22の露出部分の腐食を抑制することができる。
【0041】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
【0042】
前記実施形態では、外装部材3を構成する下部材4および上部材5は、入れ子を含む金型を用いて形成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。
図6に示すように、下部材4における各下側刃部4R、4Lの付け根部分や、上部材5における各上側刃部5R、5Lの付け根部分に金型の抜き孔7が形成されていてもよい。この場合には、外装本体31の注入口6(開口)から充填材10を注入する前に、抜き孔7を不図示の部材で塞ぐようにしてもよい。
【0043】
前記実施形態では、外装部材3は、下部材4および上部材5の2部材から構成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。
図7に示すように、下部材4および上部材5は、ヒンジ8を介して連結されていてもよい。さらに、外装部材3は、下部材4および上部材5が電線2を挟み込んだ状態を維持するための不図示のロック部を有していてもよい。
【0044】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0045】
1 ワイヤハーネス
10 充填材
2 電線
21 複数の素線
22 芯線
23 被覆部
3 外装部材
31 外装本体
32 貫通刃
4、5 下部材、上部材(一対の部材)
5 上部材(一対の部材のうち一方)
6 注入口(開口)