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特許7527741グループワークの活性化支援の要否を判定する支援装置、プログラム及び方法
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  • 特許-グループワークの活性化支援の要否を判定する支援装置、プログラム及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】グループワークの活性化支援の要否を判定する支援装置、プログラム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/20 20120101AFI20240729BHJP
   G06Q 10/00 20230101ALI20240729BHJP
【FI】
G06Q50/20
G06Q10/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021119180
(22)【出願日】2021-07-19
(65)【公開番号】P2023014939
(43)【公開日】2023-01-31
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135068
【弁理士】
【氏名又は名称】早原 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】栗木 優一
(72)【発明者】
【氏名】石川 雄一
(72)【発明者】
【氏名】小林 亮博
【審査官】塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-201861(JP,A)
【文献】特開2019-086992(JP,A)
【文献】河野 進,関係維持を指向した意思決定場面における会話状況に基づくグループ状態の推定,博士論文,日本,総合研究大学院大学,2018年03月,1-233,https://ir.soken.ac.jp/records/5782
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グループワークの活性化支援の要否を判定する支援装置であって、
過去グループワーク毎に、参加した各ユーザの個人特性情報、議論状況情報及び満足度と、各支援項目の過去の支援有無とを蓄積した教師データ蓄積手段と、
過去グループワーク毎に、各ユーザの個人特性情報及び議論状況情報と、各支援項目の過去の支援有無とを説明変数とし、当該ユーザの満足度を目的変数として訓練した学習エンジンと
を有し、
学習エンジンは、推定段階として、現グループワークに参加するユーザの個人特性情報及び議論状況情報と、各支援項目における支援有りとを入力し、当該ユーザの満足度を推定し、
当該ユーザの満足度が最も高くなる支援状況情報の支援項目を選択する支援情報選択手段と
を有することを特徴とする支援装置。
【請求項2】
教師データ蓄積手段は、過去グループワーク毎に、参加した全てのユーザの個人特性情報及び議論状況情報の統計値を、グループ特性情報として更に蓄積し、
学習エンジンは、説明変数に、当該過去グループワークのグループ特性情報を更に含める
ことを特徴とする請求項1に記載の支援推定装置。
【請求項3】
個人特性情報は、固定的な個人属性、及び/又は、当該過去グループワーク毎の当該ユーザの心理感情に基づく特性因子であり、
議論状況情報は、当該過去グループワーク毎に、各ユーザの発言回数、総発言時間、総発言割合、盛り上げ度、テーマ一致度の1つの以上の組み合わせ、及び/又は、グループワークに参加した全てのユーザの発言回数、総発言時間、総発言割合、盛り上げ度、テーマ一致度の1つ以上の組み合わせである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の支援推定装置。
【請求項4】
教師データ蓄積手段は、支援有りの支援項目に、支援回数を更に付与しており、
学習エンジンは、
訓練段階として、説明変数に、支援有りの支援項目に、支援回数を更に含めて訓練し、
推定段階として、支援有りの支援項目に支援回数を付与して入力し、支援有りの支援項目について支援回数毎のユーザの満足度を推定し、
該ユーザへ、支援情報を提示する度に、支援回数を加算して記録し、記録した支援回数と、支援情報選択手段によって選択された支援項目に基づく支援回数とに基づいて、当該ユーザへ支援情報を提示するか否かを制御する支援情報提示手段を更に有する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の支援推定装置。
【請求項5】
支援情報提示手段は、記録した支援回数が、支援情報選択手段によって選択された支援項目に基づく支援回数を超えた場合、当該ユーザへ支援情報を提示しない、ように制御する
ことを特徴とする請求項4に記載の支援推定装置。
【請求項6】
学習エンジンの推定段階と、支援情報選択手段とは、所定時間毎に繰り返し機能する
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の支援推定装置。
【請求項7】
グループワークの活性化支援の要否を判定する装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
過去グループワーク毎に、参加した各ユーザの個人特性情報、議論状況情報及び満足度と、各支援項目の過去の支援有無とを蓄積した教師データ蓄積手段と、
過去グループワーク毎に、各ユーザの個人特性情報及び議論状況情報と、各支援項目の過去の支援有無とを説明変数とし、当該ユーザの満足度を目的変数として訓練した学習エンジンと
して機能させると共に、
学習エンジンは、推定段階として、現グループワークに参加するユーザの個人特性情報及び議論状況情報と、各支援項目における支援有りとを入力し、当該ユーザの満足度を推定し、
当該ユーザの満足度が最も高くなる支援状況情報の支援項目を選択する支援情報選択手段と
としてコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項8】
グループワークの活性化支援の要否を判定する装置の支援方法であって、
装置は、
過去グループワーク毎に、参加した各ユーザの個人特性情報、議論状況情報及び満足度と、各支援項目の過去の支援有無とを蓄積した教師データ蓄積部と、
過去グループワーク毎に、各ユーザの個人特性情報及び議論状況情報と、各支援項目の過去の支援有無とを説明変数とし、当該ユーザの満足度を目的変数として訓練した学習エンジンと
を有し、
学習エンジンが、推定段階として、現グループワークに参加するユーザの個人特性情報及び議論状況情報と、各支援項目における支援有りとを入力し、当該ユーザの満足度を推定する第1のステップと、
当該ユーザの満足度が最も高くなる支援状況情報の支援項目を選択する第2のステップと
を実行することを特徴とする装置の支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グループワークの進行を活性化させるための支援情報を提示する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、教育研修は、多様な価値観と触れることによって新たな気付きが得られるようにするために、グループワークで実施されることが多くなってきている。教育研修の目的は、参加者が何かしらの気づきを得て、行動変容につなげることにある。これに対して、例えばカークパトリックモデルによれば、ARCS(Attention(関心)、Relevant(関連性)、Confidence(自信)、Satisfaction(満足))の中でも特に「満足度」が重要であって、ユーザの行動変容につながりやすい、としている。
【0003】
既存研究によれば、研修におけるユーザの満足度に影響を与える要素として、研修のコンテンツや本人の理解だけではなく、どのようなグループワークであったか、が挙げられている(例えば非特許文献1参照)。例えば特定のメンバのみが一方的に発言しているグループワークの場合、他のメンバは気付きを得られず、満足度が低下しやすくなる。
【0004】
これに対して、グループワークの進行中に、特定のメンバに発言が偏りすぎないようにする技術がある(例えば特許文献1参照)。ここでは、ユーザの満足度は、主観的指標であって、メンバの発言が均一であるといった絶対評価ではない、と考える。即ち、ユーザ毎に、十分に発言できたかといった相対評価が重要と考える。この技術によれば、メンバの発言状況情報を参照し、所定条件に満たした際に、メッセージを画面に表示する。
【0005】
また、各メンバの特性を踏まえて、会話の盛り上がり度を、絶対評価ではなく、相対評価として算出する技術もある(例えば特許文献2参照)。この技術によれば、音声及び/又は映像の会議データから時系列の特徴量を抽出し、その特徴量から絶対評価値としての時系列の盛り上がり度を算出し、それを相対評価値へと補正する。
【0006】
尚、グループワークの議論状況からグループ状態を推定する技術もある(例えば特許文献3参照)。この技術によれば、同一のテーマに関連する複数のユーザの一連の発話群から、判定基準に基づいて、グループの種別及びグループ状態を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-182493号公報
【文献】特開2016-012216号公報
【文献】特開2017-009826号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】小薗修; 大内章子. 能力・態度における研修効果に影響を与える要因とその関連性. 日本労務学会誌, 2016, 17.1: 50-68.、[online]、[令和3年7月4日検索]、インターネット<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jshrm/17/1/17_50/_pdf/-char/ja>
【文献】和田さゆり, “性格特性用語を用いたBig Five尺度の作成”, 心理学研究 67(1), 61-67, 1996、[online]、[令和3年7月4日検索]、インターネット<URL:https://ci.nii.ac.jp/naid/130002028345>
【文献】並川 努・谷 伊織・脇田 貴文・熊谷 龍一・中根 愛・野口 裕之 (2012). Big Five尺度短縮版の開発と信頼性と妥当性の検討 心理学研究, 83, 91-99.、[online]、[令和3年7月4日検索]、インターネット<URL:https://pdfs.semanticscholar.org/7d49/2aa1aecce291e304bfa51292242e481d9dbb.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述した特許文献1~3のいずれも、研修に対する各ユーザの満足度を高めるようとするものではない。
これに対し、本願の発明者は、参加者の行動変容を促すために満足度を高めることが重要であって、議論状況情報から各ユーザの満足度を推定し、その満足度に応じた支援情報を提示することで満足度を向上させることはできないか、と考えた。特に、各ユーザの満足度を推定する際に、当該ユーザの個人特性情報も考慮すべきである、と考えた。
【0010】
そこで、本発明は、グループワークにおける議論状況情報に応じて、各ユーザに対する活性化支援の要否を判定する支援装置、プログラム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、グループワークの活性化支援の要否を判定する支援装置であって、
過去グループワーク毎に、参加した各ユーザの個人特性情報、議論状況情報及び満足度と、各支援項目の過去の支援有無とを蓄積した教師データ蓄積手段と、
過去グループワーク毎に、各ユーザの個人特性情報及び議論状況情報と、各支援項目の過去の支援有無とを説明変数とし、当該ユーザの満足度を目的変数として訓練した学習エンジンと
を有し、
学習エンジンは、推定段階として、現グループワークに参加するユーザの個人特性情報及び議論状況情報と、各支援項目における支援有りとを入力し、当該ユーザの満足度を推定し、
当該ユーザの満足度が最も高くなる支援状況情報の支援項目を選択する支援情報選択手段と
を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の支援装置における他の実施形態によれば、
教師データ蓄積手段は、過去グループワーク毎に、参加した全てのユーザの個人特性情報及び議論状況情報の統計値を、グループ特性情報として更に蓄積し、
学習エンジンは、説明変数に、当該過去グループワークのグループ特性情報を更に含める
ことも好ましい。
【0013】
本発明の支援装置における他の実施形態によれば、
個人特性情報は、固定的な個人属性、及び/又は、当該過去グループワーク毎の当該ユーザの心理感情に基づく特性因子であり、
議論状況情報は、当該過去グループワーク毎に、各ユーザの発言回数、総発言時間、総発言割合、盛り上げ度、テーマ一致度の1つの以上の組み合わせ、及び/又は、グループワークに参加した全てのユーザの発言回数、総発言時間、総発言割合、盛り上げ度、テーマ一致度の1つ以上の組み合わせである
ことも好ましい。
【0015】
本発明の支援装置における他の実施形態によれば、
教師データ蓄積手段は、支援有りの支援項目に、支援回数を更に付与しており、
学習エンジンは、
訓練段階として、説明変数に、支援有りの支援項目に、支援回数を更に含めて訓練し、
推定段階として、支援有りの支援項目に支援回数を付与して入力し、支援有りの支援項目について支援回数毎のユーザの満足度を推定し、
該ユーザへ、支援情報を提示する度に、支援回数を加算して記録し、記録した支援回数と、支援情報選択手段によって選択された支援項目に基づく支援回数とに基づいて、当該ユーザへ支援情報を提示するか否かを制御する支援情報提示手段を更に有する
ことも好ましい。
【0016】
本発明の支援装置における他の実施形態によれば、
支援情報提示手段は、記録した支援回数が、支援情報選択手段によって選択された支援項目に基づく支援回数を超えた場合、当該ユーザへ支援情報を提示しない、ように制御することも好ましい。
【0017】
本発明の支援装置における他の実施形態によれば、
学習エンジンの推定段階と、支援情報選択手段とは、所定時間毎に繰り返し機能する
ことも好ましい。
【0018】
本発明によれば、グループワークの活性化支援の要否を判定する装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
過去グループワーク毎に、参加した各ユーザの個人特性情報、議論状況情報及び満足度と、各支援項目の過去の支援有無とを蓄積した教師データ蓄積手段と、
過去グループワーク毎に、各ユーザの個人特性情報及び議論状況情報と、各支援項目の過去の支援有無とを説明変数とし、当該ユーザの満足度を目的変数として訓練した学習エンジンと
して機能させると共に、
学習エンジンは、推定段階として、現グループワークに参加するユーザの個人特性情報及び議論状況情報と、各支援項目における支援有りとを入力し、当該ユーザの満足度を推定し、
当該ユーザの満足度が最も高くなる支援状況情報の支援項目を選択する支援情報選択手段と
としてコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、グループワークの活性化支援の要否を判定する装置の支援方法であって、
装置は、
過去グループワーク毎に、参加した各ユーザの個人特性情報、議論状況情報及び満足度と、各支援項目の過去の支援有無とを蓄積した教師データ蓄積部と、
過去グループワーク毎に、各ユーザの個人特性情報及び議論状況情報と、各支援項目の過去の支援有無とを説明変数とし、当該ユーザの満足度を目的変数として訓練した学習エンジンと
を有し、
学習エンジンが、推定段階として、現グループワークに参加するユーザの個人特性情報及び議論状況情報と、各支援項目における支援有りとを入力し、当該ユーザの満足度を推定する第1のステップと、
当該ユーザの満足度が最も高くなる支援状況情報の支援項目を選択する第2のステップと
を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の支援装置、プログラム及び方法によれば、グループワークにおける議論状況情報に応じて、各ユーザに対する活性化支援の要否を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】グループワークの外観図である。
図2】本発明における支援装置の機能構成図である。
図3】教師データ蓄積部における例となるデータ構成図である。
図4】本発明における推定段階の各機能構成部の処理の流れを表す説明図である。
図5】教師データとして、支援有無及び支援回数を含む例となるデータ構成図である。
図6】支援フラグ及び支援回数に基づく学習エンジンの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0023】
図1は、グループワークの外観図である。
【0024】
図1のシステムによれば、複数のユーザによって議論する1つ以上のグループワークが構成されている。グループワークのメンバはそれぞれ、ユーザ端末2を装着している。ユーザ端末2は、各ユーザの発話を収音可能なマイクであって、具体的にはスマートフォンのようなものである。勿論、マイクとして機能するユーザ端末2は、ユーザ毎に装着することを必須とするものでもなく、1つの全指向性マイクであってユーザ全員の発話音声を収音するものであってもよい。
ユーザ端末2は、収音した各ユーザの発話音声を、アクセスポイントを介して支援装置1へ送信する。ユーザ端末2とアクセスポイントとは、例えば無線LANやBluetooth(登録商標)等によって接続されている。
【0025】
また、ユーザ端末2は、ディスプレイを搭載しており、支援装置1からの支援情報を表示するものであってもよい。勿論、グループワークのメンバ全員が視認可能な大型のディスプレイに、支援情報が表示されるものであってもよいし、音声によって支援情報を出力するものであってもよい。
【0026】
図2は、本発明における支援装置の機能構成図である。
【0027】
図2によれば、支援装置1は、ユーザ端末2から受信した発話音声から、グループワークの議論状況を分析し、グループワークの活性化支援の要否を判定する。また、活性化支援が必要と判定された際に、支援装置1は、各ユーザへ、グループ全体へ、又は、講師へ、支援情報を提示する。
【0028】
支援装置1は、教師データ蓄積部100と、学習エンジン10と、議論状況分析部11と、支援判定部12と、支援情報提示部13と、支援情報選択部14とを有する。これら機能構成部は、装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。また、これら機能構成部の処理の流れは、装置の支援方法としても理解できる。
【0029】
[教師データ蓄積部100]
教師データ蓄積部100は、過去グループワーク毎に、参加した各ユーザの「個人特性情報」、「議論状況情報」及び「満足度」を蓄積したものである。
【0030】
図3は、教師データ蓄積部における例となるデータ構成図である。
【0031】
図3によれば、個人特性情報と、議論状況情報とが蓄積されている。
<個人特性情報>
図3(a1)は、過去グループワークに参加したユーザの固定的な個人属性情報を表す。
固定的な個人属性情報としては、一般的なプロファイル(性別、年齢代、職業、職種、・・・)と、性格を表す特性因子(開放性、誠実性、外向性、協調性、・・・)とが混在したものであってもよい。
図3(a2)は、過去グループワークに参加したユーザが、その過去グループワークの進行中に取得された変動的な個人属性情報を表す。
変動的な個人属性情報としては、心理感情を表す特性因子(怒り、喜び、悲しみ、笑い、・・・、開放性、誠実性、外向性、協調性、・・・)とが混在したものであってもよい。
【0032】
ここで、ユーザの特性因子は、例えば特性5因子モデル(BigFive)に基づく形容詞であってもよい。特性5因子モデルは、アンケートの回答に応じて、因子毎に数値を算出する技術である(例えば非特許文献2参照)。
特性5因子とは、各ユーザについて、形容詞毎に、以下の5つの因子について数値を算出したものである(例えば非特許文献3参照)。
(1)開放性 (Openness to Experience)
(2)誠実性 (Conscientiousness)
(3)外向性 (Extroversion)
(4)協調性 (Agreeableness)
(5)情緒不安定性 (Neuroticism)
尚、BigFiveに限られず、スタイル変異形式(SVI(Stylistic Variation Items))のような心理学に基づく心理尺度で計測したものであってもよい。
【0033】
<議論状況情報>
議論状況情報は、過去グループワーク毎に、各ユーザの発言回数、総発言時間、総発言割合、盛り上げ度、テーマ一致度の1つの以上の組み合わせ、及び/又は、グループワークに参加した全てのユーザの発言回数、総発言時間、総発言割合、盛り上げ度、テーマ一致度の1つ以上の組み合わせであってもよい。
【0034】
図3(b)によれば、過去グループワーク毎の議論状況情報として、各ユーザについて、以下のような情報要素が計測されている。
ユーザ総発言回数
ユーザ総発言時間
ユーザ総発言割合
盛り上げ度
テーマ一致度
【0035】
「ユーザ総発言回数」と「ユーザ総発言時間」とは、議論状況分析部11によって各ユーザの発話をカウントし、その累積時間としたものである。
「ユーザ総発言割合」は、過去グループワークの制限時間を予め規定し、制限時間に対する各ユーザの発言時間の割合である。
「盛り上げ度」とは、グループワークにおける発話音声の特徴量を時系列上で抽出し、時系列の度合いを算出したものである(例えば特許文献1参照)。この度合いは、グループワークの活性度と認識される。
「テーマ一致度」とは、テーマに関連する単語リストを予め用意しておき、その単語が発言された度合いを算出したものである。この度合いは、グループワークで議論してほしい内容がどの程度発言されたかを表す。
【0036】
また、過去グループワーク毎の議論状況情報として、全てのユーザについて、以下のような情報要素が計測されている。
グループ総発言回数
グループ総発言時間
グループ総発言割合
グループ盛り上げ度
グループテーマ一致度
時間経過率
これらは、過去グループワーク毎に、参加した全てのユーザの個人特性情報及び議論状況情報の統計値を、グループ特性情報として算出したものである。
尚、「時間経過率」とは、グループワークでは制限時間を予め規定し、制限時間に対する経過時間の割合である。
【0037】
[学習エンジン10(訓練段階)]
学習エンジン10は、訓練段階として、過去グループワーク毎に、各ユーザの「個人特性情報」及び「議論状況情報」を説明変数とし、当該ユーザの「満足度」を目的変数として訓練したものである。
ここで、学習エンジンは、教師有り学習における回帰アルゴリズムを適用した一般的なものであってもよい。例えばバックプロパゲーションやサポートベクタマシンを適用することができる。
【0038】
また、学習エンジン10は、説明変数に、当該過去グループワークのグループ特性情報を更に含めて訓練するものであってもよい。これによって、学習エンジン10は、推定段階として、現グループワークのグループ特性情報に応じた、当該ユーザに「満足度」を推定することができる。
【0039】
図4は、本発明における推定段階の各機能構成部の処理の流れを表す説明図である。
【0040】
[議論状況分析部11]
議論状況分析部11は、各ユーザの発話音声から、現グループワークの議論状況情報を検出する。
議論状況分析部11は、例えば音声認識エンジンによって構成されたものであってもよい。ユーザ毎の発話音声を予め学習しておくことによって、入力された音声を発したユーザを特定すると共に、テキスト(文字列)に変換することもできる。このような音声認識エンジンとして、例えばGoogle Cloud Speech-to-Text(登録商標)やWatson Speech to Text(登録商標)を適用することができる。
議論状況分析部11は、現グループワークの議論状況情報は、前述した図3(b)と同じものである。
【0041】
[学習エンジン10(推定段階)]
学習エンジン10は、推定段階として、現グループワークに参加するユーザの「個人特性情報」及び「議論状況情報」を入力し、当該ユーザの「満足度」を推定する。推定された満足度は、支援判定部12へ出力される。
【0042】
[支援判定部12]
支援判定部12は、当該ユーザの満足度が所定閾値以下である場合、当該ユーザに対して支援必要と判定する。
教師データとして、現グループワークについて、各ユーザは、以下のような満足度が推定されたとする。
(ユーザID) (満足度)
a 3.4
b 2.5
c 4.5
ここで、所定閾値=3.0と予め規定されている場合、ユーザbの満足度が所定閾値以下となり、当該ユーザbに対して支援必要と判定する。
【0043】
[支援情報提示部13]
支援情報提示部13は、支援必要と判定された際に、教師に代わって、議論の進行の活性化を示唆する言葉(例えばキーワード、フレーズ、簡易文)を発信する。これによって、グループワークの進行中に、各ユーザに直接的に異なる支援情報を提示することができる。勿論、ユーザ毎に直接的に支援情報を提示することに限られず、グループワークのメンバ全員へ又は講師のみへ、支援情報を提示するものであってもよい。
【0044】
図4によれば、現グループワークの進行中に、ユーザbについて「満足度<3.0」と推定されている。このとき、ユーザbに対する支援情報を提示し、その後、ユーザbの満足度が高まることを期待する。
【0045】
図5は、教師データとして、支援有無及び支援回数を含む例となるデータ構成図である。
【0046】
図5によれば、教師データ蓄積部100は、過去グループワーク毎に、各支援ID(支援項目)について過去の支援有無(支援フラグ)を付与している。
学習エンジン10は、訓練段階として、説明変数に、各支援項目の過去の支援有無を更に含めて訓練する。そして、推定段階として、各支援項目について支援有りとして入力し、支援項目毎のユーザの満足度を推定することができる。
【0047】
ここで、支援ID毎に、「支援項目」と「提示情報」とが対応付けられている。
図5によれば、例えば過去グループワーク1について、ユーザ1に対して支援項目1「話を振る」の支援情報が提示され、ユーザ3に対して支援項目2「理解を助ける」の支援情報が提示されている。また、このとき、ユーザ1は満足度5.0であり、ユーザ3は満足度2.5となっている。
【0048】
他の実施形態について、図5によれば、教師データ蓄積部100は、過去グループワーク毎に、支援有りの支援項目に、支援回数を更に付与している。
学習エンジン10は、訓練段階として、説明変数に、支援有りの支援項目に、支援回数を更に含めて訓練する。そして、推定段階として、支援有りの支援項目に支援回数を付与して入力し、支援有りの支援項目について支援回数毎のユーザの満足度を推定する。
【0049】
図6は、支援フラグ及び支援回数に基づく学習エンジンの説明図である。
【0050】
学習エンジン10は、同一の議論状況情報について、支援項目毎に支援有無及び支援回数の異なる複数のパターンで、当該ユーザの満足度を推定する。これら複数の満足度は、支援情報選択部14へ出力される。
【0051】
[支援情報選択部14]
支援情報選択部14は、学習エンジン10によってユーザの満足度が最も高くなる支援状況情報の支援項目を選択する。
【0052】
最終的に、支援情報提示部13は、当該ユーザへ、支援情報を提示する度に、支援回数を加算して記録する。そして、支援情報提示部13は、記録した支援回数と、支援情報選択部14によって選択された支援項目に基づく支援回数とに基づいて、当該ユーザへ支援情報を提示するか否かを制御する。
また、支援情報提示部13は、記録した支援回数が、支援情報選択部14によって選択された支援項目に基づく支援回数を超えた場合、当該ユーザへ支援情報を提示しない、ように制御する。これは、ユーザの満足度が最も高い支援回数を超えた場合、当該ユーザにとって、それ以上の同一項目の支援情報の提示は、不快にしかならないと想定される。
【0053】
また、本発明の他の実施形態として、現グループワークの進行中に、所定時間毎に、学習エンジン10の推定段階と、支援判定部12(支援情報提示部13及び支援情報選択部14)とは、所定時間毎に繰り返し機能させる。現グループワークの時間が30分に規定されている場合、例えば5分毎に、学習エンジン10及び支援判定部12を機能させる。これによって、現グループワークの進行中に、支援情報を提示する数回のタイミングを設けることができる。
【0054】
以上、詳細に説明したように、本発明の支援装置、プログラム及び方法によれば、グループワークにおける議論状況情報に応じて、各ユーザに対する活性化支援の要否を判定することができる。また、支援必要と判定されたユーザについては、過去グループワークの統計結果から、できる限り適切な支援項目及び支援回数が推定される。
これによって、現グループワークにおける各ユーザの満足度を向上させ、高い研修の効果を得られるようにすることができる。
【0055】
尚、これにより、例えば「グループワークを活性化する」ことから、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標4「すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」に貢献することが可能となる。
【0056】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0057】
1 支援装置
100 教師データ蓄積部
10 学習エンジン
11 議論状況分析部
12 支援判定部
13 支援情報提示部
14 支援情報選択部
2 ユーザ端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6