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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】二次電池及び電池スタック
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20240729BHJP
   H01M 50/291 20210101ALI20240729BHJP
   H01M 50/474 20210101ALI20240729BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20240729BHJP
   H01M 50/209 20210101ALN20240729BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01M10/04 Z
H01M50/291
H01M50/474
H01M50/489
H01M50/209
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021134272
(22)【出願日】2021-08-19
(65)【公開番号】P2023028521
(43)【公開日】2023-03-03
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 恒良
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-212554(JP,A)
【文献】特開2013-093225(JP,A)
【文献】特開2016-004732(JP,A)
【文献】特開2014-216086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/00-10/39
H01M50/40-50/497
H01M50/20-50/298
H01G11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層される複数の二次電池と、
隣接する前記二次電池の間に挿入され、前記二次電池の外側から前記二次電池に対して押し圧力を加えるリブが形成される複数のスペーサと、を有し、
前記複数の二次電池は、それぞれ、
電力を蓄積する電極体と、
前記電極体を収納する収納ケースと、
前記電極体と前記収納ケースとの間に挟み込まれる弾性体と、を有し、
前記弾性体は、前記収納ケースの面のうち押し圧力が印加される加圧面において、前記収納ケースと前記電極体とが対向する面の一部であって、前記リブのうち前記加圧面の中央部分に位置する前記リブに沿って設けられる電池スタック
【請求項2】
積層される複数の二次電池と、
隣接する前記二次電池の間に挿入され、前記二次電池の外側から前記二次電池に対して押し圧力を加えるリブが形成される複数のスペーサと、を有し、
前記複数の二次電池は、それぞれ、
電力を蓄積する電極体と、
前記電極体を収納する収納ケースと、
前記電極体と前記収納ケースとの間に挟み込まれる弾性体と、を有し、
前記弾性体は、前記収納ケースの面のうち押し圧力が印加される加圧面において、前記収納ケースと前記電極体とが対向する面の一部であって、前記リブの形状全体に沿って設けられる電池スタック
【請求項3】
前記弾性体は、前記収納ケースの面のうち押し圧力が印加される加圧面において、前記収納ケースと前記電極体とが対向する面の一部のみに設けられる請求項1又は2に記載の電池スタック
【請求項4】
前記弾性体は、前記電極体のうち、正極シートと負極シートとが対向する部分においていずれか一方の極性に関わる活物質層がなくなる積層端部を含む領域に対応した位置に設けられる請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電池スタック
【請求項5】
前記弾性体は、前記収納ケースに設けられる注液口及び安全弁を塞ぐ位置を除く領域に設けられる請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電池スタック
【請求項6】
前記電極体は、正極シート、セパレータ及び負極シートが重ねられた状態で巻かれた電極体、或いは、正極シート、セパレータ及び負極シートが独立した状態で重ね合わされた積層体として形成される請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電池スタック
【請求項7】
前記弾性体が前記電極体と前記収納ケースに挟まる2つの面に対して押し圧力がかけられていない状態で、前記収納ケースが膨張する方向に生じる反発力を示すバネ定数が、一定値以下である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電池スタック
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、複数の二次電池セルが積層構造となるように重ね合わされる電池スタック及び電池スタックに含まれる二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の二次電池を組み合わせて1つの電池として利用する組電池の利用が広がっている。この組電池では、電極体を構成する正極シート、セパレータ、負極シートの密着性が重要な指標の1つとなっており、組電池を構成する場合、組電池を構成する二次電池に積層方向から押し圧力を印加した状態で拘束することが行われる。このような組電池への加圧技術の一例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の蓄電装置は、正極電極及び負極電極がセパレータを介して巻回されている扁平形状の電極巻回体が、平坦な壁部を有するケース内に電解質と共に収容されている電池セルと、一方向に拘束状態で配列された複数の電池セルにおいてケースの平坦な壁部間に挟まれて、ケースを介して電極巻回体を押圧する押圧部材とを備える。電極巻回体は、扁平方向の両側に位置する湾曲部と、その間の平面部を有する。押圧部材は、電極巻回体の平面部の両側端部を押圧するリブと、電極巻回体の平面部の中央部を押圧するリブとを含み、リブは低ばね定数を有し、リブは高ばね定数を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-98107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、電極体として機能する電極体に対して一定以下のバネ定数を担保できないため、電極体に対して一定以下のバネ定数を維持しながら高いスタック性を確保できない問題がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電極体の固さがどのようなものであれ、二次電池に対して一定以下のバネ定数での押し圧力の印加を維持しながら高いスタック性を確保することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる二次電池の一態様は、電力を蓄積する電極体と、前記電極体を収納する収納ケースと、前記電極体と前記収納ケースとの間に挟み込まれる弾性体と、を有し、前記弾性体は、前記収納ケースに対して押し圧力が印加される加圧面において、前記収納ケースと前記電極体とが対向する面に設けられる。
【0008】
本発明にかかる電池スタックの一態様は、積層される複数の二次電池と、隣接する前記二次電池の間に挿入され、前記二次電池の外側から前記二次電池に対して押し圧力を加えるリブが形成される複数のスペーサと、を有し、前記二次電池は、電力を蓄積する電極体と、前記電極体を収納する収納ケースと、前記電極体と前記収納ケースとの間に挟み込まれる弾性体と、を有し、前記弾性体は、前記収納ケースに対して押し圧力が印加される加圧面において、前記収納ケースの面のうち押し圧力が印加される加圧面において、記リブのうち前記加圧面の中央部分に位置する前記リブに沿って設けられる。
【0009】
本発明にかかる電池スタックの一態様は、積層される複数の二次電池と、隣接する前記二次電池の間に挿入され、前記二次電池の外側から前記二次電池に対して押し圧力を加えるリブが形成される複数のスペーサと、を有し、前記二次電池は、電力を蓄積する電極体と、前記電極体を収納する収納ケースと、前記電極体と前記収納ケースとの間に挟み込まれる弾性体と、を有し、前記弾性体は、前記収納ケースの面のうち押し圧力が印加される加圧面において、前記収納ケースと前記電極体とが対向する面の一部であって、前記リブの形状全体に沿って設けられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の二次電池及び電池スタックによれば、電極体に対して一定以下のバネ定数での押し圧力の印加を維持しながら高いスタック性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1にかかる二次電池の構造を説明する概略図である。
図2】実施の形態1にかかる二次電池の電極体の位置を説明する図である。
図3】実施の形態1にかかる電池スタックの構成図である。
図4】実施の形態1にかかるスペーサの概略図である。
図5】実施の形態1にかかる二次電池における弾性体の配置を説明する正面断面図である。
図6】実施の形態1にかかる二次電池における弾性体の配置を説明する側方断面図である。
図7】実施の形態1にかかる二次電池における弾性体の配置を説明する上方断面図である。
図8】実施の形態2にかかる二次電池における弾性体の配置を説明する正面断面図である。
図9】実施の形態2にかかる二次電池における弾性体の配置と電極体の位置関係を説明する図である。
図10】実施の形態3にかかる二次電池における弾性体の配置を説明する正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0013】
実施の形態1
まず、図1に実施の形態1にかかる二次電池の構造を説明する概略図を示す。図1に示すように、実施の形態1にかかる二次電池1は、収納ケース10、電極体11、蓋12を有する。そして、収納ケース10に電極体11を収納し、その後、蓋12により電極体11をケース10に密封する。
【0014】
また、電極体11は、電極体として機能するものである。電極体11は、セパレータ挟むように正極シートと負極シートとを積層したものである。この積層構造は、正極シート、負極シート、セパレータを積層する積層型で形成することもでき、長尺状の正極シート、負極シート、セパレータを重ねた上で捲回する捲回型とすることもできる。以下の説明では、電極体11として捲回型の電極体を用いた例について説明するが、本発明は、積層型の電極体に適用することも可能である。
【0015】
ここで、電極体11を構成する正極シート、セパレータ、負極シートと、電極体において電力を貯蔵する電極体の位置の関係について説明する。そこで、図2に実施の形態1にかかる二次電池の電極体の位置を説明する図を示す。図2に示すように、電極体11は、正極シート41、セパレータ42、負極シート43を有する。正極シート41は、正極活物質を塗工した正極合材層45と、正極活物質が塗工されていない正極タブ部と、を有する。また、負極シート43は、負極活物質を塗工した負極合材層47と、負極活物質が塗工されていない負極タブ部と、を有する。そして、電極体11では、正極シート41の正極合材層45と、負極シート43の負極合材層47と、が対向するように電極体を構成し、正極タブ部を電極体11の一方の端部から突出させ、負極タブ部を電極体11の他方の端部から突出させる。このような電極体11では、電極体の厚み方向(図1のZ方向)でみると正極タブ部21及び負極タブ部31は、それぞれ複数枚が重なった状態となる。そこで、二次電池1では、正極タブ部21を集電部品22で集箔する。また、二次電池1では、負極タブ部31を集電部品32で集箔する。そして、電極体11では、電極体11のうち正極合材層45及び負極合材層47が対向して存在する区間の領域を電極体40とする。
【0016】
集電部品22は、カシメ部24により端子部品23に導通される。つまり、二次電池1では、正極タブ部21が集電部品22、カシメ部24を介して端子部品23と導通するように構成される。集電部品32は、カシメ部34により端子部品33に導通される。つまり、二次電池1では、負極タブ部31が集電部品32、カシメ部34を介して端子部品33と導通するように構成される。なお、図1に示すように、端子部品23と蓋12との間にはスペーサ15が設けられる。また、端子部品33と蓋12との間にはスペーサ16が設けられる。つまり、二次電池1では、スペーサ15、16により蓋12と端子部品23、33が絶縁される構造となる。
【0017】
ここで、実施の形態1にかかる二次電池1では、電極体11に関連して弾性体17が設けられる。この弾性体17は、電極体11が収納ケース10に収納された状態で電極体11と収納ケース10との間に挟み込まれる。また、弾性体17は、電極体11が収納ケース10に収納され、かつ、二次電池1を電池スタックとした状態で電池セルの積層方向から押し圧力が加えられた状態で、電極体11に所定のバネ定数で押し圧力を加える。また、二次電池1では、弾性体17が電極体11と収納ケース10に挟まる2つの面に対して押し圧力がかけられていない状態で、収納ケース10が膨張する方向に生じる反発力を示すバネ定数が、一定値以下である。
【0018】
弾性体17は、二次電池1は使用期間が長くなり収納ケース10に膨張した際に膨らみが大きくなる場所を中心に配置することが好ましい。図1に示す例では、電極体11の幅方向(電極体11の長辺の延在方向)の中心線に沿った位置に弾性体17を配置した。しかしながら、弾性体17の配置及び形状については様々な形態がある。また、二次電池1が電池スタックの一部を構成する場合に二次電池1に隣接するスペーサがある場合に、当該スペーサにリブがある場合は、当隊リブの位置に応じて弾性体17の位置及び形状が決定される。そのため、弾性体17の配置及び形状についての詳細については後述する。
【0019】
また、弾性体17は、収納ケース(図1では収納ケースの一部を構成する蓋12)に設けられる注液口14及び安全弁13を塞ぐ位置を除く領域に設けられる。図1に示す例では、弾性体17は、上端部を電極体11の高さよりも若干低い位置にすることで注液口14及び安全弁13を塞がない構成としている。
【0020】
また、弾性体17は、端子部品23、33に近い位置については配置しないようにすることが好ましい。端子部品23、33は、例えば端子部品23とカシメ部24とを溶接する工程、端子部品23にバスバー(不図示)を溶接する工程等で発生する熱の影響が弾性体17に及ぶことを防止するためである。さらに、弾性体17は、端子部品23、33に近い位置については配置しないようにすることで、蓋12で密閉された収納ケース10内のデッドスペースを広げて内圧上昇の防止効果を高めることができる。
【0021】
弾性体17としては、電解液に溶けないこと、一定の弾性力を有すること(バネとしての機能を満足すること)などの特性が求められる。このような弾性体17としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等の樹脂部材を用いることができる。また、弾性体17の構造としては、気泡を多数含む多孔質体、不織布等の繊維状体、筒を並べてシート形状とした物、バネ形状等とすることが考えられる。また、弾性体17の形状は、シート形状となっていると電極体11を収納ケース10に収納する際の挿入性を高めることができる。
【0022】
ここで、実施の形態1にかかる二次電池1を含む電池スタックについて説明する。そこで、図3に実施の形態1にかかる電池スタックの構成図を説明する。図3では、二次電池1とスペーサ50とを交互に並べて積層した電池スタックをスタックケースに収納する工程を示した。図3に示すように、二次電池1とスペーサ50とを交互に並べて積層した状態で積層方向から押し圧力を印加して、スタック長を短くした状態でスタックケースに収納される。
【0023】
ここで、弾性体17の有無に応じて生じる電池スタックの違いについて説明する。ここでの比較条件としては、電極体11の固さは弾性体17の有無に寄らず同じになるように条件設定した。図3では、電池スタックに押し圧力を加えない未拘束から0.2kNの荷重をかけた状態を示したが、この条件において電池スタックのスタック長の変位量は、弾性体17がある場合は0.12mm程度であり、弾性体17がない場合は0.06mm程度であった。また、図3では、電池スタック長がスタックケースの収納部分の長さよりも短くなる高荷重を加えた状態から0.2kN程度の押し圧力に押し圧力を弱めた場合の電池スタックのスタック長の変位量は、弾性体17がある場合は0.46mm程度であり、弾性体17がない場合は0.31mm程度であった。このようなことから、弾性体17があることで同じ試験力を加えたときの変位量が大きくなることがわかる。
【0024】
このようなことから、二次電池1を含む電池スタックでは、弾性体17があることで、拘束状態での電池スタックをスタックケースに入れやすくなる。また、二次電池1を含む電池スタックでは、弾性体17によりバネ定数調整することで拘束状態(例えば、電池スタックをスタックケースに納めた状態)において電極体11に印加される押し圧力をコントロールしやすくなる。
【0025】
ここで、弾性体17のバネ定数は、二次電池に対し9.8kNから14.7kNに加圧した際に220kN/mm以下かつ4.5kNから3.7kNに荷重を抜き10分以上保持した際に100kN/mm未満となるように設定することが好ましい。加えて、3.7kNから0.2kNに荷重を抜き10分以上保持した際に60kN/mm未満となるように設定することが好ましい。但し、当該バネ定数は例示であり、スタックの拘束条件等により最適値は異なる。
【0026】
また、電池スタックにおいて、電池スタック全体のバネ定数が一定値以下になることを保障するためには、スペーサ50、収納ケース10、収納ケース10内において電極体11を包み込む内挿フィルム、電極体11等の各要素のばね定数が一定以下である必要がある。このとき、電池スタック全体のバネ定数を決定する主要因プレスによって一定の硬さとなる電極体11のバネ定数である。そして、電極体11の硬さを一定以下にする場合、電極体11のシートの密度を下げ積層数を増やす、或いは、捲回のテンションを下げるなどが考えられる。しかしながら、電極体11の固さ調整を電極体の構成により実施することで以下の3点の課題が生じると考えられる。第1の課題は、充放電時の体積変化やガス発生により電極体が変形し、抵抗が急増することである。第2の課題は、出荷前の自己放電検査時に異物がクリープしにくくなり検出力が低下することである。第3の課題は、緩巻きになり電極体11が太ることで、ケースへの挿入性が低下することである。
【0027】
しかしながら、実施の形態1にかかる二次電池1では、弾性体17により二次電池のバネ定数を設定できるため、電極体11の固さを高めることができる。より具体的には、実施の形態1にかかる二次電池1では、電極密度(正極シート41、セパレータ42、負極シート43の密度)を高め、捲回工程でのテンションを高めて電極体11の固さを高めても弾性体17によりバネ定数を一定以下にすることができる。これにより、実施の形態1にかかる二次電池1では、電極体11の電極体40で蓄積できる電力容量を高めることができる。また、電極体11の固さを高めることで、以下の3つの効果も生じる。第1の効果は、充放電時の体積変化やガス発生による電極体11の変形を防止して、抵抗の急増を防止できる効果である。第2の効果は、出荷前の自己放電検査時に異物がクリープしやすくなり検出力が上昇する効果である。第3の効果は、固巻きになり電極体11が細くなることで、収納ケース10への挿入性が向上する。
【0028】
ここで、弾性体17の配置位置及び形状について詳細に説明する。ここで、弾性体17の配置及び形状は、スペーサ50の形態に依存するため、まずスペーサ50の形状について説明する。そこで、図4に実施の形態1にかかるスペーサの概略図を示す。図4に示すように、スペーサ50は、リブ51、52、ベースプレート53、ルーバー54、側壁55を有する。ベースプレート53は、二次電池1の冷却面に対向する面である。また、ベースプレート53は、スペーサ50を構成する主面となるプレートでもある。そして、リブ51、52は、ベースプレート53上に形成され、二次電池1の冷却面とベースプレート53の間に空間を形成する。そして、このリブ51、52により形成される空間に冷却風を流す複数の流路を形成する。またベースプレート53の端部には、リブ51が形成される面に接する二次電池1が位置する側に向かってルーバー54が形成される。ルーバー54は、通風路を介して排出される冷却風の向きを決定する板である。また、ベースプレート53の端部には、リブ51、52が形成さない面に接する二次電池1が位置する側に向かって側壁55が形成される。電池スタックでは、側壁55により二次電池1を保持する。
【0029】
スペーサ50では、リブ51、52の形状によって冷却風の流路の形状を決定する。具体的には、図4に示す例では、二次電池1については二次電池1の下側(例えば、二次電池1の端子部品23、33が配置されている面に対向する側の面)から冷却風が流入し、二次電池1の左右側(例えば、ルーバー54のある側の面)から冷却風が排出される冷却風の経路を形成する。このような経路を形成するために、複数のリブ51をL字型の形状のリブとした。また、リブ52は、T字型のリブであり、左右方向の中央部分において上下方向に伸びるリブを中心に複数のリブ51が左右対称となるように形成し、左右方向に伸びるリブが複数のリブ51の最上段のリブとなるような形状とした。
【0030】
続いて、図4に示したスペーサ50と二次電池1とを組み合わせた場合の弾性体17の配置及び形状の例について説明する。そこで、図5に実施の形態1にかかる二次電池における弾性体の配置を説明する正面断面図を示す。なお、図5では、スペーサ50のリブ51、52の位置を破線で示した。図5に示す例では、弾性体17は、スペーサ50に形成されリブのうちリブ52の上下方向に伸びるリブに沿った位置に配置される。また、弾性体17の形状は、リブ52の中央付近で上下方向に伸びるリブに沿った帯形状を有する。また図5に示す例では、弾性体17は、収納ケース10の蓋12に達しない位置に情他院部が設けられる。これにより、弾性体17は、蓋12に設けられた安全弁13及び注液口14を塞がない形状を有する。
【0031】
また、図5のVI-VI線に沿った二次電池1の断面形状について説明する。そこで、図6に実施の形態1にかかる二次電池1における弾性体の配置を説明する側方断面図を示す。図6に示すように、実施の形態1にかかる二次電池1では、電極体11が側方からの断面視において扁平形状を有する。そして、電極体11は、上下部分にシートの曲部が位置するが、その曲部を繋ぐ部分は、収納ケース10の壁面と略平行になる直線部分を有する。二次電池1への加圧ではこの直線部分に押し圧力の印加が必要であり、本明細書では当該部分を加圧重点範囲と称す。そして、スペーサ50のリブは、この加圧重点範囲を含み、加圧重点範囲よりも広い範囲に形成される。スペーサ50のリブの形成範囲をこのように設定することで、加圧重点範囲全体に電池スタックへの押し圧力が加えられる。
【0032】
また、弾性体17は、加圧重点範囲を含む広い範囲を覆うような形状を有する。このように弾性体17の設置範囲を設定することで、加圧重点範囲全体に弾性体17により生じるバネ圧力を加えることができる。また、弾性体17は、電極体11と収納ケース10との挟まれる領域に設けられることがわかる。
【0033】
続いて、図5のVII-VII線に沿った二次電池1の断面形状について説明する。そこで、図7に実施の形態1にかかる二次電池1における弾性体の配置を説明する上方断面図を示す。図7に示すように、実施の形態1にかかる二次電池1では、弾性体17は、電極体11の略中央付近に設置されることが分かる。
【0034】
なお、図6及び図7に示すように、弾性体17は、電極体11の前面側(例えば、スペーサ50のリブが当接する面の側)と電極体11の背面側(例えば、スペーサ50のベースプレート53が当接する面の側)とのうち、少なくとも前面側にあれば良い。
【0035】
上記説明より、実施の形態1にかかる二次電池1では、弾性体17を有することで、電極体11に対して一定以下のバネ定数での押し圧力の印加を維持しながら高いスタック性を確保することができる。また、二次電池1を含む電池スタックでは、スタックケースへの挿入性を高めることができる。さらに、二次電池1では、以下の3つの効果も生じる。第1の効果は、充放電時の体積変化やガス発生による電極体11の変形を防止して、抵抗の急増を防止できる効果である。第2の効果は、出荷前の自己放電検査時に異物がクリープしやすくなり検出力が上昇する効果である。第3の効果は、固巻きになり電極体11が細くなることで、収納ケース10への挿入性が向上する。
【0036】
実施の形態2
実施の形態2では、収納ケース10内に設ける弾性体の別の例について説明する。そこで、図8に実施の形態2にかかる二次電池2における弾性体の配置を説明する正面断面図を示す。
【0037】
図8に示すように、実施の形態2にかかる二次電池2では、弾性体17に加えて、電極体40の両端付近に弾性体18が設けられる。この弾性体18の配置位置について詳細に説明する。そこで、図9に実施の形態2にかかる二次電池2における弾性体の配置と電極体の位置関係を説明する図を示す。
【0038】
図8に示すように、実施の形態2では、電極体40のうち正極合材層45が塗工されている部分の端部と、負極合材層47が塗工されている部分の端部を含む領域に弾性体加圧位置61、62を設定し、この領域を含むように弾性体18を設ける。言い換えると、弾性体18は、電極体のうち、正極シート41と負極シート43とが対向する部分においていずれか一方の極性に関わる活物質層がなくなる積層端部を含む領域に対応した位置に設けられる。
【0039】
より具体的には、弾性体加圧位置61、62は、電極体40内の正極合材層45と負極合材層47とを見たときに面積が異なる場合は面積が小さいほうの端部が存在する部分を含む。また、弾性体加圧位置61、62は、電極面積の小さいほうの左右端部を含むことがさらに望ましい。
【0040】
実施の形態2にかかる二次電池2では、このように合材層の面積が小さい側の合材層の端部に加圧力を加える弾性体18を設けることで、2つの効果を奏する。第1の効果は、セパレータ42が収縮した際の短絡防止の効果である。第2の効果は、正極合材層45及び負極合材層47の端部からの電解液移動を抑制して、ハイレート劣化体制を改善させる効果である。
【0041】
実施の形態3
実施の形態3においても弾性体の別の形態について説明する。そこで、図10に実施の形態3にかかる二次電池3における弾性体の配置を説明する正面断面図を示す。図10に示すように、実施の形態3にかかる二次電池3では、スペーサ50のリブ51、52の形状全体を覆うような形状を有する弾性体19を備える。また、弾性体19では、弾性体17及び弾性体18により加圧力が与えられる部分に対応する部分を含む。つまり、弾性体18は、リブ51、52からの押し圧力に対抗するバネ定数を発揮しながら弾性体18及び弾性体19により得られるバネ定数についても発生させることができる。
【0042】
実施の形態3にかかる弾性体19を用いることで、電極体11に加わる圧力を他の実施の形態よりも均一化させることができる。
【0043】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上記実施の形態1~3では、収納ケースと電極体とが対向する面の一部のみに設けているが、全面に設けてもよい。また、上記実施の形態1~3では、リブ付きのスペーサで説明したが、リブがないスペーサや、スペーサがない場合も含まれる。特に、実施の形態2の弾性体18のように、電極体の両端付近に弾性体を配置する場合は、リブの有無やスペーサの有無によらず効果を奏する。
【符号の説明】
【0044】
1~3 二次電池
10 収納ケース
11 電極体
12 蓋
13 安全弁
14 注液口
15、16 スペーサ
17~19 弾性体
21 正極タブ部
22、32 集電部品
23、33 端子部品
24、34 カシメ部
31 負極タブ部
40 電極体
41 正極シート
42 セパレータ
43 負極シート
44 正極箔
45 正極合材層
46 負極箔
47 負極合材層
50 スペーサ
51、52 リブ
53 ベースプレート
54 ルーバー
55 側壁
61 弾性体加圧位置
62 弾性体加圧位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10