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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】小型時計刻み装置
(51)【国際特許分類】
   G04B 19/28 20060101AFI20240729BHJP
【FI】
G04B19/28 B
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019103481
(22)【出願日】2019-06-03
(65)【公開番号】P2020020780
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-05-06
(31)【優先権主張番号】18177590.9
(32)【優先日】2018-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599091346
【氏名又は名称】ロレックス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】ROLEX SA
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディ ピアザ, フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ロビン, ジャン―バプティスト
(72)【発明者】
【氏名】ルック, アレン
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-205515(JP,A)
【文献】特表2015-518967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部品(2)を第2部品(3)に対して刻むことが意図される、前記第1部品(2)用の小型時計ばね(1)であって、
前記ばね(1)は、リングと、前記ばねと前記第1部品とを接続するために前記第1部品の部品(2b)上に設けられた少なくとも1つの第2接続要素(20b)と相互作用することが意図される少なくとも1つの第1接続要素(10a)とを含み、
前記少なくとも1つの第1接続要素は、前記リングから分岐して、第1方向(D1)に延長する少なくとも1つの弾性接続アーム(10a)を含み、
前記少なくとも1つの第1接続要素は、前記第1部品を前記第2部品に対して前記第1方向へまたは実質的に前記第1方向へ駆動するための力(F)を受けることが意図される、
小型時計ばね。
【請求項2】
前記第1方向は、前記ばねの回転軸(A1)に対してまたは前記ばね(1)の重心(G)を通る軸(A1)に対して直角半径方向であり、前記ばね(1)または前記ばねが延長する平面(P)に対して垂直または実質的に垂直である、
請求項1に記載のばね(1)。
【請求項3】
前記弾性接続アーム(10a)は、前記第1方向(D1)に垂直または実質的に垂直な面(101a)を形成する自由端部を有する、及びまたは前記弾性接続アームは引込傾斜(102a)を有する、
請求項1または2に記載のばね(1)。
【請求項4】
前記ばねは、全体的に環状形状を有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のばね(1)。
【請求項5】
前記第1接続要素は、2つの弾性接続アーム(10a、10a’)を含む、
請求項1から4のいずれか一項に記載のばね(1)。
【請求項6】
前記ばねは、数個の第1接続要素を含む、
請求項1から5のいずれか一項に記載のばね(1)。
【請求項7】
前記数個の第1接続要素は、前記ばね(1)の周囲に沿って一定間隔で分配される、
請求項6に記載のばね(1)。
【請求項8】
前記ばねは、第2部品(3)上に設けられた少なくとも1つの第2割出または刻み構造(40)と相互作用することが意図される、少なくとも1つの第1割出または刻み構造(21)を含む、
請求項1から7のいずれか一項に記載のばね(1)。
【請求項9】
前記第1接続要素は、前記少なくとも1つの第1割出または刻み構造の高さに配置される、
請求項8に記載のばね(1)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のばね(1)を含む、第1部品(2)。
【請求項11】
請求項10に記載の第1部品と、第2部品とを含み、前記第2部品は、前記第1部品(2)に設けられた少なくとも1つの第1割出または刻み構造(21)と相互作用するよう適合された、第2割出または刻み構造(40)を含む、小型時計アセンブリ(7)。
【請求項12】
前記少なくとも1つの第1接続要素は、前記第1部品を前記第2部品に対して駆動するための力であって、前記第1部品(2)を前記第2部品(3)に対して刻む刻み力の強さの1.5倍以上の強度である力を伝達するよう配置される、
請求項11に記載の小型時計アセンブリ(7)。
【請求項13】
請求項11または12に記載のアセンブリ(7)、及びまたは請求項10に記載の部品(2)、及びまたは請求項1から9のいずれか一項に記載のばね(1)を含む、時計(300)。
【請求項14】
請求項11または12に記載のアセンブリまたは請求項13に記載の時計の取付けまたは組立方法であって、
前記第1部品(2)の前記第2部品(3)への取付け、
前記第2部品に対する前記第1部品の変位、及び前記弾性接続アームに対する前記第2接続要素の作用による、前記ばねの前記弾性接続アームの変形、
前記弾性接続アームの端部を前記第2接続要素の高さに位置させるための、ばねの前記弾性接続アームの戻り、
の段階を含む、方法。
【請求項15】
前記弾性接続アームは、前記ばねの平面(P)内で曲げ変形される、及びまたは前記ばねの平面(P)に垂直に曲げ変形される、
請求項14に記載の取付けまたは組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型時計ばねに、より具体的には刻み(Notching:ノッチング)ばねに関する。本発明はまた、当該ばねを含む、小型時計部品に関する。本発明は更に、当該ばねまたは当該部品を含む、小型時計アセンブリに関する。本発明は更に、当該ばねまたは当該部品または当該アセンブリを含む、時計、より具体的には腕時計に関する。本発明は最後に、当該アセンブリまたは当該時計の組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
時計は、例えば刻み回転ベゼルの実施のために、刻みばねが設けられる。
【0003】
特許文献1は、例えば、回転ベゼルの刻みを生成するために、閉ループのばねが環状カムに対して半径方向力を発揮するよう構成された、当該構造を開示する。特定の実施形態において、当該ばねは、より具体的には当該ベゼルと当該ばねが、小型時計ケースのケース胴へのベゼルの組立の過程で回転するよう強いられるために、ベゼルに設けられた溝と係合することが意図される円筒案内部が設けられる。
【0004】
このような組立操作は、ベゼルに形成された溝がベゼル円板または貴石の配置により隠されている一方で、ベゼルの溝をばねの円筒案内部に対して位置させることが必要な限りにおいて、難しいことが判明することもある。更に、円筒案内部が設けられた当該ばねは、より具体的には石を設けたベゼルの実施のためには、特に煩雑であることもある。
【0005】
特許文献1が開示するばねの実施形態を問わず、弾性刻みアームにより分離される3つの突出部が、環状カムと相互作用するために設けられる。ばねがベゼルに配置される実施形態において、当該ばねと当該ベゼルは、ばねの突出部のそれぞれの高さに圧入された円筒案内部またはピンの形状を取る剛体手段を用いて、両方向に回転するよう強いられる。ばねがケース胴に配置される実施形態において、ばねは、ばねの突出部のそれぞれの高さに形成された内向き突起を用いて、ケース胴に対する回転に対して固定される。
【0006】
特許文献2は、刻みベゼル装置を開示する。第1実施形態において、刻みばねは、歯列と相互作用することが意図される刻みタブが設けられたリングの形状である。この場合、刻みばねは、ピンといった固定要素を用いてベゼルに取りつけられる。この目的のため、固定要素を受けるためにリングに切欠きが形成される。当該刻み装置または当該ばねは、ばねをベゼルまたはケース胴に少なくとも2方向で接続するよう構成された、弾性手段が設けられた接続装置を有しない。
【0007】
特許文献3は、第1仕上げ部品と第2仕上げ部品との間の刻み装置を開示し、両者の間には刻みばねが配置される。ばねは、2つの弾性刻みタブの間に形成された突出部を有する止め輪の形状を取る。弾性刻みアームのそれぞれは、止め輪を仕上げ部品の一方または他方と少なくとも2方向で接続するために、足部が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】欧州特許出願公開第1431845号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2672333号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3276187号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1416341号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、前述の欠点に対応し、従来技術から既知の刻み装置を改善する、刻み装置を入手可能にすることである。特に、本発明は、刻み装置の組立を単純にするため、小型で、信頼性があり、単純な小型時計ばねを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかるばねは、請求項1に定義される。
【0011】
ばねの様々な実施形態は、従属請求項2から9に定義される。
【0012】
本発明にかかる小型時計部品は、請求項10に定義される。
【0013】
本発明にかかる小型時計アセンブリは、請求項11に定義される。
【0014】
小型時計アセンブリの実施形態は、従属請求項12に定義される。
【0015】
本発明にかかる時計は、請求項13に定義される。
【0016】
本発明にかかる組立方法は、請求項14に定義される。
【0017】
組立方法の実施形態は、請求項15に定義される。
【0018】
添付の図面は、時計の実施形態を例示する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、ベゼルの刻みの高さにおける、時計の第1実施形態の部分図である。
図2図2は、刻みばねの上方図である。
図3図3は、刻みばねの部分図である。
図4図4は、刻みばねが図示されない、ベゼルの上方図である。
図5図5は、刻みばねが図示されない、ベゼルの部分図である。
図6図6は、時計の組立を示す図である。
図7図7は、時計の組立を示す図である。
図8図8は、時計の組立を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
時計300の実施形態を、図1から8を参照して以下に説明する。時計は、例えば小型時計または腕時計である。時計は、機械式ムーブメント、特に自動式ムーブメントを、または電子式ムーブメントを含んでもよい。時計は更に、小型時計アセンブリを、より具体的にはムーブメントを含むことが意図される小型時計ケース7を含む。
【0021】
小型時計アセンブリは、有利には、第1小型時計部品2と第2小型時計部品3とを含む。第1部品は、例えば可動部または回転ベゼルである。第2部品は、例えばケース胴である。このように、第1部品は有利には、第2部品に対して可動である。第1及び第2部品間に、有利には、刻みが設けられる。この目的のため、第2部品は、例えば、第2割出または刻み構造40を含む。当該第2割出または刻み構造40は、第1部品2に設けられた少なくとも1つの第1割出または刻み構造21と相互作用することが意図される。
【0022】
第1部品2は、より具体的にはベゼルは、ばね1を含む。第1部品はまた、部品2bを、より具体的にはリング2bを含んでもよい。このため第1部品は、ばね1と、1以上の他の要素または部品を含む。これら1以上の他の要素または部品は、これ以降、「第1部品の残り部分」と称される。
【0023】
ばねは、有利には、第1部品と第2部品との間の割出または刻みを実現することが意図される。より具体的には、少なくとも1つの第1割出または刻み構造21は、ばねによりすなわちばね上の構造により実現されてもよい。例えば、少なくとも1つの第1構造は、弾性刻みアーム21a、31a、41aにより区切られる3つの突出部21、31、41を含む。これら突出部は、相互作用することと、突出部と相互作用することが意図される空洞40を含むケース胴4の要素に対して半径方向力を発揮することが意図される。ケース胴4の要素は、カムと、より具体的には環状カムと見做されてもよい。
【0024】
小型時計ばね1は、ばねと部品とを接続するために、第1部品の部品2bに設けられた少なくとも1つの第2接続要素20bと相互作用することが意図される、少なくとも1つの第1接続要素10aを含む。少なくとも1つの第1接続要素は、第1方向D1に延長する、少なくとも1つの弾性接続アーム10aを含む。第1接続要素は、第2部品に対して第1部品を第1方向または実質的に第1方向へ駆動するための力Fを受けることが意図される。第1接続要素は、ばねの残り部分へ、より具体的にはばねに設けられたあらゆる刻みまたは割出構造へ、駆動力Fの伝達を許可する。有利には、少なくとも1つの弾性接続アーム10aは、ばね1と部品2bをより少ない遊びでまたは遊びをなくして接続するために、第1接続要素が、より少ない遊びでまたは遊びをなくして第1部品の部品2bに設けられた第2接続要素20bと相互作用することを許可する。
【0025】
ばねは、平面Pに全体的な環状形状を有する。換言すれば、ばね1は平面Pに閉ループの形状を有する。より具体的には、ばねの全体的な環状形状は、第1方向D1の接線または実質的に接線でもよい。
【0026】
第1方向D1は、好ましくは、ばねの回転軸A1に対してまたはばね1の重心Gを通る軸A1に対して直角半径方向または実質的に直角半径方向であり、ばね1の平面Pに垂直または実質的に垂直である。軸A1は、好ましくは図6及び7に示すように、第1または第2部品の回転軸でもある。
【0027】
ここで説明する実施形態において、ばね1は、3つの第1接続要素を含む。好ましくは、3つの第1接続要素は、ばね1の周囲に沿って、一定間隔で分配される。
【0028】
代替として、ばね1は、異なる数の第1接続要素を、より具体的には2つまたは4つまたは5つの第1接続要素を含んでもよい。より好ましくは、様々な第1接続要素は、ばね1の周囲に沿って、一定間隔で分配される。
【0029】
好ましくは、様々な第1接続要素は、同一構造を有する。
【0030】
有利には、様々な第1接続要素は、第1割出または刻み構造21、31、41の高さに配置される。換言すれば、第1接続要素と第1割出または刻み構造とは、その場所が軸A1周りに角度的に定義されるばねの上の同じ位置にまたは実質的に同じ位置に配置されてもよい。
【0031】
有利には、第1接続要素及びまたは第1構造21、31、41は、軸A1に対してばね上に一定間隔で分配されてもよい。
【0032】
より一般的には、第1割出または刻み構造の数に対する第1接続要素の数の比は整数または整数の逆数であってもよい。好ましくは、第1割出構造の数に対する第1接続要素の数の比は、1に等しい。
【0033】
各弾性接続アームは、自由または遠位端部と、ばねの残り部分と接続される端部または基端部とを含む。
【0034】
好ましくは、1以上の自由または遠位端部はそれぞれ、第1方向D1に垂直または実質的に垂直な面101aを形成する。当該面は、平面であってもなくてもよい。
【0035】
有利には、1以上の自由または遠位端部はそれぞれ、裾が広がった形状を有する。
【0036】
有利には、各弾性接続アームは、長尺形状を有する。各弾性接続アームのばねの平面Pで測定した長手方向寸法L1は、ばねの軸A1に対するアーク長と実質的に同等と見做すことができる。このアーク長は、図2に示す角度α1に比例する。この角度は、ラジアンで表すことができる。ばねの軸A1に対するそれぞれの弾性刻みアームのアーク長をL2と仮定すると、寸法L1は、好ましくは、L2/20とL2/3の間である。ばねの平面Pで測定された各刻みアームの長手方向寸法L2もまた、ばねの軸A1に対するアーク長と実質的に同等と見做すことができる。このアーク長は、図2に示す角度α2に比例する。寸法α1は好ましくは、α2/20とα2/3の間である。
【0037】
弾性刻みアームの長手方向寸法L2は、第1割出または刻み構造21の特性点から、例えば構造の対称軸から、他の隣接する第1割出または刻み構造41の他の特性点へ延長する。
【0038】
第1接続要素12aのアームの長手方向寸法L1は、アームの基端部100bからアームの遠位端部100aへ延長する。例えば、基端部は、軸A1で半径方向に延長する表面の場所、または図3に示すように、ばねが平面Pにおいて、90°より小さい、または60°より小さい、または30°より小さい角度βを形成する接線を含むばねの表面を有する場所として定義される。
【0039】
各弾性接続アームの横断寸法d1は、好ましくはd2/5とd2/2の間であり、ここでd2は各弾性刻みアームの横断寸法である。「横断寸法」の表現は、ばねの平面Pで測定された、ばねの軸A1に対する所定の半径方向における、ばねの断面の寸法を意味すると理解される。
【0040】
好ましくは、弾性接続アームは、弾性接続アームの横断寸法d1の15倍以上の、または20倍以上の、または25倍以上の、長手方向寸法を有する。
【0041】
好ましくは、ばねの厚さeは一定である。更に好ましくは、d1/eの比率は、1以下、または0.5以下である。「厚さ」の表現は、ばねの軸A1に平行な方向のばねの寸法を意味するために使用される。
【0042】
1以上の弾性接続アームは、例えば、長方形または実質的に長方形または四角または実質的に四角の横断面を有してもよい。断面は、弾性接続アームの長手方向寸法L1に沿って一定または実質的に一定でよい。代替として、断面は漸進であってもよい、すなわち弾性接続アームの長手方向寸法L1に沿って変化してもよい。
【0043】
1以上の弾性接続アーム10a:10a’、11a;11a’、12a;12a’は、理想的には、弾性刻みアーム21a、31a、41aに連続して形成され、弾性刻みアームは、第1割出または刻み構造21、31、41の両側に位置される。
【0044】
1以上の弾性接続アームは、例えば、ばねの環状形状の半径の大きさに及ぶ曲率半径を有する、一般的に弓形のまたは実質的に弓形の形状を有してもよい。例えば、弾性接続アームの曲率半径は、ばねの環状形状の半径の0.2倍から1倍の間である。代替として、1以上の弾性接続アームは、概して直線状または実質的に直線状の形状を有してもよい。
【0045】
上述のように、少なくとも1つの第1接続要素は、ばねを部品の残り部分に接続するために、より具体的にはベゼルの残り部分にまたはケース胴の残り部分にまたはケース胴の裏蓋の残り部分に接続するために、少なくとも1つの第2接続要素と相互作用する。
【0046】
少なくとも1つの第2接続要素は、少なくとも1つの突起20b、21b及び22bを、より具体的には少なくとも1つの半径方向突起を、例えば3つの半径方向突起を含む。好ましくは、小型時計アセンブリは第2接続要素と同数の第1接続要素を含む。
【0047】
各突起は、好ましくは、弾性接続アームの面101a、101a’と当接によりまたは確動係合により相互作用することが意図される面200b、201bを含む。面200b、201bの全部または一部は、好ましくは、弾性接続アームと相互作用する際に、それ自身が第1方向に垂直である。
【0048】
好ましくは、各第1接続要素は、2つの弾性接続アーム10a、10a’を、より具体的にはその自由端部面が互いに向く2つの弾性接続アームを、またはばねの回転軸A1またはばね1の重心Gを通る軸A1を含み、ばね1の平面Pに直角または実質的に直角な平面P1、に対して対称な2つのアームを含む。このため、対称アームの各一対は、アームの自由端部間で、第2接続要素が収容されることが意図される、間隙または凹部10b、11b、12bを提供する。
【0049】
各弾性接続アームは、引込傾斜102aを有してもよい。下記の通り、当該引込傾斜は、下記の第1及び第2部品の取り付けまたは組立方法中に、第2接続要素の変形を可能とし、第1及び第2部品の相対的変位の途中で弾性接続アームの引込を可能にする。この変形と引込は、1以上の第2接続要素が間隙または凹部に収まるまで、継続して行われる。この状況において、1以上の変形した弾性接続アームは、その形状を再び採り、1以上の第2接続要素は、弾性接続アーム間に固定される。
【0050】
このため、ばねと第1部品の残り部分は、第2部品に対する第1部品の2つの変位方向に、すなわち方向D1で定義される2つの方向に接続されてもよい。
【0051】
弾性接続アーム10a;10a’、11a;11a’、12a;12a’の配置と形状は、第1及び第2刻み構造を互いに対して戻すときに弾性刻みアームが生成する戻しトルクよりも高いトルクを、または実質的に高いトルクを伝達するために適合される。この目的のため、少なくとも1つの第1接続要素は、第2部品に対して第1部品を駆動するための力を伝達するように配置され、その強さは、刻み力の強さの1.5倍以上、または2倍以上、または2.5倍以上、または3倍以上であってもよい。
【0052】
前述のアセンブリまたは前述の時計の取付けまたは組立方法の実施の態様を、以下に説明する。当該実施の態様において、ケース胴への回転ベゼルの組立が説明される。
【0053】
組立の第1段階において、ばね1は、最初に、ケース胴3の環状座部30上に配置され、構造21、31、41の少なくとも1つが、ケース胴3に取付けられた環状カム4の空洞40へ配置される。このようにばね1は、弾性アーム21a、31a、41aの予張力により、組立の第2段階まで角度位置及び軸位置に維持される。
【0054】
有利には、カム4は、ケース7の密閉部5を囲う。更に有利には、カム4は、特許文献4の目的であるような、ベゼル2の保持のための環状要素6を持つ。当該要素6は、ケース胴3へのベゼル2の組立の過程でベゼル2の環状溝2aへの挿入が意図される環状部分6aを有する。
【0055】
換言すれば、第1段階において、第1部品2は、第2部品3上に設置または位置される。
【0056】
組立の第2段階において、ベゼル2は、環状要素6を用いて、ケース胴3に軸方向に接続される。図6は、第2段階中の刻み装置の断面図を示す。図7の断面図に示すように、ベゼル2は、半径方向にケース胴3の環状座部30へ近づけられ、要素6の部分6aの弾性変形を許可するように、またその際にベゼル2の溝2aへの挿入を許可するように、定義される構造を有する。
【0057】
ケース胴3へのベゼル2の組立は、この場合、ケース胴3に対するベゼル2の角度位置に関係なく実施されてもよく、特許文献1に示す刻み装置の組立とはこの点で異なる。
【0058】
図8に図示する組立の第3段階において、ベゼルは続いて、ベゼル2の第2接続要素20b、21b、22bをばね1の間隙10b、11b、12bへ挿入することを可能にするため、限定されない角度にわたり回転される。この目的のため、ばね1の弾性接続アーム10a;10a’、11a;11a’、12a;12a’は、ベゼル2の回転中、第2接続要素20b、21b、22bの影響下で、より具体的にはベゼル2の第2接続要素のそれぞれの端部202b、212b、222bに起因する半径方向力の影響下で、第2接続要素が間隙10b、11b、12bに挿入されるまで、弾性変形するよう構成される。有利には、弾性接続アームの遠位端部100a;100a’、110a;110a’、120a;120a’は、図3に示すような弾性接続アームの最適化された引込を可能にするように具体的に定義される、傾斜面または斜面102a;102a’、112a;112a’、122a;122a’が設けられてもよい。
【0059】
このように、組立の第3段階は、バヨネット式の組立の段階に対応する。ケース胴3に予め配置されたばね1に対するベゼルの回転の結果として、ベゼル2の第1接続要素20b、21b、22bがばね1に設けられた間隙に収容されると、ばね1は軸A1周りの回転の2方向において、ベゼル2と共に回転することが強いられる。
【0060】
換言すれば、当該第3段階は、
- 第2部品に対する第1部品の変位、より具体的には回転、及びばねの1以上の弾性接続アームに対する1以上の第2接続要素の作用による、ばねの1以上の弾性変形アームの変形、より具体的には曲げ変形、及び
- ばねの1以上のアームの端部を1以上の第2接続要素の高さに位置させるための、ばねの1以上の弾性接続アームの戻り、
を含む。
【0061】
有利には、ばねの1以上の弾性接続アームは、1以上の弾性接続アームの引込の過程で、ばねの平面Pにおいて曲げ変形される。代替的にまたは加えて、1以上の弾性接続アームは、ばねの平面Pに垂直に曲げ変形させられてもよい。
【0062】
上記説明において、ばねを第1部品の残り部分へ、より具体的にはベゼルの残り部分へ接続するための弾性接続アームは、ばね上に設けられた。代替的にまたは加えて、ばねを第1部品の残り部分へ、より具体的にはベゼルの残り部分へ接続するための弾性接続アームは、第1部品の残り部分に設けられてもよい。この場合、ばねは、第1部品の残り部分に、より具体的にはベゼルの残り部分に設けられた弾性接続アームと相互作用することが意図される少なくとも1つの突起により設けられてもよい。1以上の弾性アームは、第1部品の、より具体的にはベゼルの本体上に実現されてもよく、または、第1部品の、より具体的にはベゼルの本体に取付けられたリング上に実現されてもよい。
【0063】
上記説明において、刻みばねは、ベゼルに接続されることが意図される。同じ原理により、刻みばねをケース胴の裏蓋に接続することももちろん可能である。このように構成されたばねは、ケース胴に対するベゼルまたはケース胴の裏蓋を駆動するための力Fを受けることが意図されてもよい。同様に、同じ原理により、刻みばねをケース胴に接続することも可能である。後者の場合、ばねは同様に、ケース胴に対するベゼルまたはケース胴の裏蓋を駆動する力Fを受けることが意図されてもよい。
【0064】
上記説明において、弾性接続アームは、一対のアームの自由端部間に間隙を形成するために、一対で編成された。しかしながら、一対のアームの一方を、堅固な当接部で代替してもよい。この場合、第2接続要素を収容する間隙は、堅固な当接部とアームの端部の間で実現される。第1接続要素は、もはや対称ではなく、接続は、ばねに対する一方向での第1部品の部品の変位により実行されてもよい。
【0065】
本明細書において、「接続する」の文言は、好ましくは、第2要素に接続される第1要素が第2要素に対して移動不可能であるという意味を有する。特に、軸A1周りの第1要素の回転は、第2要素の回転を引き起こす。
【0066】
しかしながら、本明細書において「割り出す」及び「刻む」の文言は、好ましくは、第2要素に対して割り出された第1要素が、第2要素に対して移動する少なくとも多少の能力を有する意味を有する。特に、第2要素に関して軸A1周りの第1要素の回転が可能である。第2要素に関する第1要素の動きは、好ましくは、1つの所定の(割出)位置から他の所定の(割出)位置へ可能である。所定の位置は、割出手段により定義される。
【符号の説明】
【0067】
1 ばね
2 第1部品
2b 部品
3 第2部品
7 ケース
10a 第1接続要素
20b 第2接続要素
21 第1割出または刻み構造
40 第2割出または刻み構造
A1 軸
D1 第1方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8