(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】ヘルニア修復用の生体吸収性ニットおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
D06H 7/22 20060101AFI20240729BHJP
A61L 31/14 20060101ALI20240729BHJP
A61L 31/12 20060101ALI20240729BHJP
A61L 31/06 20060101ALI20240729BHJP
A61L 27/58 20060101ALI20240729BHJP
A61L 27/56 20060101ALI20240729BHJP
A61L 27/40 20060101ALI20240729BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20240729BHJP
D04B 21/00 20060101ALI20240729BHJP
D04B 21/16 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
D06H7/22
A61L31/14 500
A61L31/12
A61L31/06
A61L31/14 400
A61L27/58
A61L27/56
A61L27/40
A61L27/18
D04B21/00 B
D04B21/16
(21)【出願番号】P 2019154509
(22)【出願日】2019-08-27
【審査請求日】2022-08-04
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】597147278
【氏名又は名称】ソフラディム・プロダクション
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】ダミヤン シモン
(72)【発明者】
【氏名】アントニ ミラ
(72)【発明者】
【氏名】ジュリ ルキュイーヴル
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-530981(JP,A)
【文献】特開2009-007682(JP,A)
【文献】特開2015-151027(JP,A)
【文献】特開2016-107086(JP,A)
【文献】特表2014-531518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06B
D06C
D06G
D06H
D06J
D04B
A61F
A61L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体吸収性人工多孔質ニットであって、前記ニットの少なくとも2つの側面を画定する生体吸収性の生体適合性材料の糸の配列を含む、生体吸収性人工多孔質ニット、を製造するための方法であって、前記ニットが、その一方の側面に、前記一方の側面から外向きに突出するかかりを設けられ、前記方法が、
-i)4つのガイドバー、すなわちガイドバーB1、ガイドバーB2、ガイドバーB3およびガイドバーB4を含む、1つの針床を含む、縦編み機械を提供するステップと、
ii)以下のように、前記機械上で、生体吸収性の生体適合性材料の糸を編むステップであって、
-ガイドバーB1が、糸通しされておらず、
-ガイドバーB2およびB3が、生体吸収性の生体適合性材料の糸で二重に糸通しされ、ガイドバーB2およびB3が従う編みパターンが、少なくとも2本の針を伴い、前記ニットの前記2つの側面を画定する糸の前記配列を作り出し、
-ガイドバーB4が、生体吸収性の生体適合性材料の熱融着モノフィラメント糸で糸通しされ、ガイドバーB4が従う編みパターンが、編み目を作り、前記ニットの前記一方の側面から外向きに突出するループを生成する、ステップと、
iii)ii)で得られた前記ニットをヒートセットするステップと、
iv)溶融を介して前記ループを切断することによって、かかりを形成するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
ガイドバーB4の前記編みパターンが、一連の編み目およびインレーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ガイドバーB2、B3およびB4に通された前記糸が、80μm~180μmの範囲の直径を示すモノフィラメントである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ガイドバーB2およびB3に通された前記糸が、125μmの直径を示すモノフィラメントである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ガイドバーB4に通された前記糸が、150μmの直径を示すモノフィラメントである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
ガイドバーB2およびB3の編みパターン繰り返しユニットが、第1のコース数に沿った5~9本の針上の前記糸の変位、および第2のコース数に沿った2本のみの針上の前記糸の変位を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のコース数は、4~6であり、前記第2のコース数は、2~4である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ガイドバーB2およびB3の前記編みパターン繰り返しユニットが、4コースに沿った7本の針上の前記糸の変位、および2コースに沿った2本のみの針上の前記糸の変位を含む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
ガイドバーB2およびB3の前記編みパターン繰り返しユニットが、4本の針上の前記糸の変位を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ガイドバーB2およびB3が、次のパターン、
B2:0-1/3-4/7-6/4-3/0-1/2-1//
B3:7-6/4-3/0-1/3-4/7-6/5-6//に従って、1つがフル、2つが空で二重に糸通しされ、
ガイドバーB4が、次のパターン、
B4:4-4/1-2/0-1/2-1/4-4/2-2//に従って、1つがフル、2つが空で糸通しされている、請求項6~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ガイドバーB2およびB3が、次のパターン、
B2:1-0/3-4//
B3:3-4/1-0//に従って、1つがフル、2つが空で二重に糸通しされ、
ガイドバーB4が、次のパターン、
B4:5-5/2-3/0-0/3-2//に従って、1つがフル、2つが空で糸通しされている、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記生体吸収性の生体適合性材料が、ポリトリメチレンカーボネート(PTMC)とポリ-L-ラクチド(PLLA)とのコポリマーである、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記コポリマーが、80%のラクチドおよび20%のトリメチレンカーボネートの組成を有する、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニットの一方の側面に外向きに突出するかかりを有し、全方向に良好な機械的特性および良好な弾性を示す生体吸収性人工多孔質ニット、ならびにそのようなニットの製造方法に関する。本発明の方法によって得られたニットは、特に壁補強プロテーゼとして、より具体的には腹側ヘルニア修復において使用され得る。
【背景技術】
【0002】
ヒトの腹壁は、筋膜によって相互接続された脂肪と筋肉で構成される。場合によっては、筋膜に連続性の断絶が生じ、腹膜の一部が滑り落ちて、脂肪または腸の一部を含む嚢またはヘルニアを形成することある。ヘルニアは、皮膚の表面に膨らみの形で現れ、例えば、それらがどこに位置するかに応じて、臍ヘルニアまたは鼠径ヘルニアまたは切開ヘルニアとして分類される。ヘルニア欠損を修復するために、外科医はしばしば、弱った解剖学的組織を置換または強化する織物ベースのプロテーゼを適所にはめ込む。
【0003】
織物ベースのプロテーゼは、腹壁の修復など、一部の外科分野でよく知られている。これらのプロテーゼは、一般に、一定の適合性を付与する生体適合性のある人工繊維で作られており、それらが適応する解剖学的構造に応じて、例えば、長方形、円形、または楕円形などの多くの形状を示し得る。織物ベースのプロテーゼは、通常、プロテーゼが移植された後にニット内での細胞成長を促進する開口部および/または細孔を含む、多孔性ニットなどの糸の配列から作られる。
【0004】
これらのプロテーゼのいくつかは、非生体吸収性または半生体吸収性であり得、これは、それらが、例えば、患者の体内に永久的に残るように意図されている非生体吸収性の糸などの非生体吸収性部分を含むことを意味する。
【0005】
いずれにせよ、場合によっては、例えば体内に永久的な異物を埋め込むことを回避するという観点から、プロテーゼが患者の体内に永久的に留まらないことが望ましい場合がある。そのような場合、完全に生体吸収性の糸でできているプロテーゼが提供される。そのような生体吸収性プロテーゼは、それらが細胞定着、組織リハビリテーションおよび組織治癒の期間中にそれらの補強機能を果たした後に、消滅することを意図している。
【0006】
それにもかかわらず、既存の生体吸収性プロテーゼのいくつかは、移植後の数ヶ月間、十分な機械的強度を維持しない。実際に、成功した移植を実現するためには、プロテーゼが織物から機能的な新しい組織への強度のゆるやかな伝達を促進することが重要である。例えば、プロテーゼの織物は移植後5ヶ月の間に有意な強度を、そして例えば、12ヶ月後にのみ残留強度を有することが望ましい。理想的には、移植の5ヶ月後、生体吸収性プロテーゼは、移植された時点で非生体吸収性プロテーゼによって通常示されるのと同程度の機械的強度を示すことが望ましい。
【0007】
実際、理想的には、プロテーゼは、治癒の臨界期に早期のサポートを提供すべきである。一部の著者(Williams ZF, Hope WW.Abdominal wound closure : current perspectives.Open Access Surgery.2015 :8 p 89-94を参照)によると、いくつかの他の創傷と同様に、腹部切開の治癒には3つの段階が必要である。炎症期は約4日間続き、続いて増殖期が3週間続く。成熟期は、最大1年間続く。増殖期の終わりまでに、筋膜はその元々の強度の20%しか有さない。手術後6~20週間で、筋膜は、元の強度の50%~80%しか有さない。この観点から、治癒の臨界期は少なくとも5ヶ月続くと考えることができる。
【0008】
ヘルニア修復用のプロテーゼも、腹壁に固定する必要がある。外科用縫合糸を使用して、プロテーゼを腹壁に固定することが知られている。とにかく、縫合は外科医にとって時間がかかる場合がある。それはまた、生物学的組織内に張力および引き裂きを生じ得る。特に、腹壁は、人の日常生活の間に、咳、跳躍、運動、呼吸などの活動のために腹腔内圧を受ける。縫合によってプロテーゼを固定することは、長期的には患者にとって苦痛で非常に不快であることを証明するかもしれない。この問題を解決することを考慮して、ニットの一方の側面から外向きに突出するかかりを備えた人工ニットが提案されている。これらのかかりは、同じプロテーゼに属しているかどうかにかかわらず、別のプロテーゼ織物に、または生物学的組織、例えば腹壁にそれらを直接固定することができるフックを構成する。
【0009】
文書WO01/81667は、ニットの一方の側にかかりを含むニットの生成を記載している。この文書では、ニットは、編み機の3つのガイドバーを使用して生成されている。とにかく、この文書に記載されているニットはある方向では限られた弾性を示し得ることが観察されている。
【0010】
上記のように、腹壁はあらゆる方向に腹腔内圧力を受け、その応力は、患者の動きおよび活動に応じて、常に方向および強度を変化させる。したがって、プロテーゼは、あらゆる方向に良好な弾性を示すことによって、これらの動きならびに圧力の変化および関連する応力に適応できる必要がある。
【0011】
張力をかけることなく腹壁に固定することができ、移植後少なくとも5ヶ月間は腹壁を効率的に補強することができ、全方向、好ましくは縦糸方向に十分な弾性を示す、完全生体吸収性多孔質ニットが必要とされている。したがって、修復された腹壁は、日常生活における患者の動きによって発生する多方向の応力に円滑に適応することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【非特許文献】
【0013】
【文献】Williams ZF, Hope WW.Abdominal wound closure : current perspectives.Open Access Surgery.2015 :8 p 89-94
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本出願人は、体内に移植して5ヶ月後に、移植された瞬間に非生体吸収性ニットによって示されるのと同程度の機械的強度を示すことができる、生体吸収性人工多孔質ニットの迅速で簡単な製造方法を見出した。そのニットは、張力を発生させることなく生体組織に固定することができ、そのニットは、あらゆる方向に良好な弾性をさらに示す。
【0015】
本発明の第1の態様は、生体吸収性人工多孔質ニットであって、ニットの少なくとも2つの側面を画定する生体吸収性の生体適合性材料の糸の配列を含む、生体吸収性人工多孔質ニットを製造するための方法であり、そのニットは、その一方の側面に、その一方の側面から外向きに突出するかかりを設けられ、そのプロセスは、以下のステップ:
-i)4つのガイドバー、すなわちガイドバーB1、ガイドバーB2、ガイドバーB3およびガイドバーB4を含む、1つの針床を含む、縦編み機を提供するステップと、
ii)以下のように、その機械上で、生体吸収性の生体適合性材料の糸を編むステップであって、
-ガイドバーB1が、糸通しされておらず、
-ガイドバーB2およびB3が、生体吸収性の生体適合性材料の糸で二重に糸通しされ、ガイドバーB2およびB3が従う編みパターンが、少なくとも2本の針を伴い、そのニットのその2つの側面を画定する糸のその配列を作り出し、
-ガイドバーB4が、生体吸収性の生体適合性材料の熱融着モノフィラメント糸で糸通しされ、ガイドバーB4が従う編みパターンが、編み目を作り、そのニットのその一方の側面から外向きに突出するループを生成する、ステップと、
iii)ii)で得られたニットをヒートセットするステップと、
-iv)溶融を介してループを切断することによって、かかりを形成するステップと、を含む。
【0016】
本明細書によれば、「二重に糸通しされたバー」とは、バーの各スレッドガイドに2本の糸が存在することを意味する。
【0017】
本出願において、「プロテーゼニット」は、プロテーゼの形態で人体または動物の体内に移植されることを意図したニット、または少なくとも部分的にそのニットと一緒に設計された任意の他の部分として理解される。
【0018】
本発明の意味の範囲内で、「多孔質ニット」は、ニットの側面およびその厚さ内に均一または不均一に開いて分布している細孔または空隙、セル、穴またはオリフィスを、ニットが有するという特徴を意味し、そしてそれは細胞定着を促進する。細孔は、あらゆる種類の形状、例えば球、溝および六角形の形で存在することができる。
【0019】
本出願において、「生体適合性」は、この特性を有する材料が、人体または動物の体内に移植され得ることを意味するものと理解される。
【0020】
本明細書で使用される「生体吸収性」という用語は、生体分解性、生体吸着性、および生体吸収性の材料を含むように定義される。生体吸収性とは、材料が、身体の条件下で分解するか、もしくは構造的完全性を失う(例えば、酵素的分解または加水分解)か、または身体の生理学的条件下で、(物理的または化学的に)分解されて、分解生成物が身体内で排出または吸収されることを意味する。
【0021】
本発明の別の態様は、ニットの少なくとも2つの側面を画定する生体吸収性の生体適合性材料の糸の配列を含む、生体吸収性人工多孔質ニットであり、そのニットは、その一方の側面に、その一方の側面から外向きに突出するかかりを設けられ、そのニットの2つの側面を画定する配列の各糸は、二重である。
【0022】
本明細書において「糸が二重である」とは、ニットの製造中に、ニットの2つの側面、すなわちガイドバーB2およびガイドバーB3を画定する配列の形成に寄与する各スレッドガイドバーが、通常1本のみである糸の代わりに、実際には2本の糸を受けるので、その結果、最終的には、得られたニットにおいて、ニットの2つの側面を画定する配列の各繊維経路が、2本の糸で形成されることを意味する。
【0023】
本発明の別の態様は、ニットの少なくとも2つの側面を画定する生体吸収性の生体適合性材料の糸の配列を含む、生体吸収性人工多孔質ニットであり、そのニットは、その一方の側面に、その一方の側面から外向きに突出するかかりを設けられ、ニットの2つの側面を画定する配列の各糸は、二重であり、そのニットは、以下の特徴のうちの1つまたはいくつかを、代替的に、または組み合わせてさらに含む。
-ニットの2つの側面を画定する配列の糸は、約80~約140μmの範囲の直径を示し、好ましくは、約125μmの直径を示すモノフィラメントであり得る、
-かかりは、モノフィラメントカットから形成され得、モノフィラメントは、約100~約180μmの範囲の直径を示し、好ましくは、約150μmの直径を示す、
-生体吸収性材料は、例えば、80%のラクチドおよび20%のトリメチレンカーボネートの組成を有する、ポリトリメチレンカーボネート(PTM)とポリ-L-ラクチド(PLLA)とのコポリマーであり得る、
-ニットを形成する糸およびかかりは、例えば、80%のラクチドおよび20%のトリメチレンカーボネートの組成を有する、ポリトリメチレンカーボネート(PTMC)とポリ-L-ラクチド(PPLA)とのコポリマーから作られてもよく、ならびに/またはコポリマーは、100,000~約225,000の範囲のモル質量Mnを示し得、および/もしくはコポリマーは、約100,000g/mol~約225,000g/molの範囲の分子量Mwを示し得る、
-ニットは、実施例1に記載されるように測定して、約60N~約160N、例えば、約70N~約150Nの範囲のグリップ強度(N)を示し得る、
-ニットは、実施例3に記載されるように測定して、約400kPa~約750kPa、例えば、約450kPa~約700kPaの範囲の破裂強度(kPa)を示し得る、
-ニットは、実施例3に記載されるように測定して、縦糸方向に約200N~約500N、例えば、約240N~約380Nの範囲、および横糸方向に約200N~約400N、例えば、約250N~約360Nの範囲の引張破断強度(N)を示し得る、
-ニットは、実施例3に記載されるように測定して、縦糸方向に約20%~約35%、例えば、約23%~約32%の範囲、および横糸方向に約20%~約45%、例えば、約30%~約40%の範囲の50N(%)未満の引張伸びを示し得る、
-ニットは、実施例3に記載されるように測定して、縦糸方向に約40%~約100%、例えば、約55%~約95%の範囲、および横糸方向に約60%~約110%、例えば、70%~100%の範囲の引張破断伸び(%)を示し得る、
-ニットは、実施例3に記載されるように測定して、縦糸方向に約30N~約75N、例えば、約35N~約70Nの範囲、および横糸方向に約25N~約75N、例えば、約30N~約70Nの範囲の引き裂き強度(N)を示し得る、
-ニットは、実施例3に記載されるように測定して、縦糸方向に約50N~約100N、例えば、約60N~約90Nの範囲、および横糸方向に約40N~約80N、例えば、約40N~約70Nの範囲の縫合引抜き強度(N)を示し得る、
-ニットは、実施例4に記載されるように測定して、約300N~約600N、例えば、約350N~約550Nの範囲の、T0における最大力(N)を示し得る。
-ニットは、実施例4に記載されるように測定して、約15mm~約30mm、例えば、約15mm~約25mmの範囲の、T0における撓み(mm)を示し得る、
-ニットは、実施例4に記載されるように測定して、約300N~約600N、例えば、約350N~約550Nの範囲の、T20wsにおける最大力(N)を示し得る、
-ニットは、実施例4に記載されるように測定して、約15mm~約30mm、例えば、約15mm~約25mmの範囲の、T20wsにおける撓み(mm)を示し得る、
-ニットは、実施例5に記載されるように測定して、縦糸方向に約90N~約250N、例えば、約100N~約180Nの範囲、および横糸方向に約100N~約200N、例えば、約130N~約180Nの範囲の、T0における破断強度(N)を示し得る、
-ニットは、実施例5に記載されるように測定して、縦糸方向に約15%~約35%、例えば、約27%~約35%の範囲、および横糸方向に約17%~約45%、例えば、約25%~約40%の範囲の、T0における30N(%)未満の伸びを示し得る、
-ニットは、実施例5に記載されるように測定して、縦糸方向に約25%~約50%、例えば、約35%~約50%の範囲、および横糸方向に約25%~約55%、例えば、約40%~約55%の範囲の、T0における50N(%)未満の伸びを示し得る、
-ニットは、実施例5に記載されるように測定して、縦糸方向に約60%~約100%、例えば、約65%~約95%の範囲、および横糸方向に約60%~約110%、例えば、80%~100%の範囲の、T0における破断伸び(%)を示し得る、
-ニットは、実施例5に記載されるように測定して、縦糸方向に約90N~約250N、例えば、約100N~約180Nの範囲、および横糸方向に約100N~約200N、例えば、約130N~約180Nの範囲の、T20wsにおける破断強度(N)を示し得る、
-ニットは、実施例5に記載されるように測定して、縦糸方向に約15%~約35%、例えば、約27%~約35%の範囲、および横糸方向に約17%~約45%、例えば、約25%~約40%の範囲の、T20wsにおける30N(%)未満の伸びを示し得る、
-ニットは、実施例5に記載されるように測定して、縦糸方向に約25%~約50%、例えば、約35%~約45%の範囲、および横糸方向に約25%~約55%、例えば、約35%~約55%の範囲の、T20wsにおける50N(%)未満の伸びを示し得る、
-ニットは、実施例5に記載されるように測定して、縦糸方向に約60%~約100%、例えば、約65%~約97%の範囲、および横糸方向に約60%~約110%、例えば、80%~100%の範囲の、T20wsにおける破断伸び(%)を示し得る、
-ニットは、実施例6に記載されるように測定して、縦糸方向に約60N~約150N、例えば、約70N~約130Nの範囲、および横糸方向に約80N~約150N、例えば、約100N~約120Nの範囲の、T20wdにおける破断強度(N)を示し得る。
【0024】
本発明のニットは、4つのガイドバー、すなわちガイドバーB1、ガイドバーB2、ガイドバーB3およびガイドバーB4を含む、1つの針床を含む、縦編み機で生成される。
【0025】
本発明のニットは、4本のうち3本のガイドバーを用いて機械の縦糸方向に沿って生成され、ガイドバーB1は、糸通しされていない。ガイドバーB2、B3およびB4は、一緒に動作し、糸の展開を画定する編みパターンを繰り返す。ある針から別の針への糸の展開は、コースと呼ばれる。針は、生成されたニットの横糸方向に対応する、機械の幅に沿って延在する。編みパターンは、コースの最小数に対応し、それに従って、糸全体の展開が説明され得る。したがって、編みパターンには、糸の全体の展開を完了するために使用される針の総数に対応する、決められた数の針が含まれる。
【0026】
本発明の方法では、ニットの2つの側面を画定する糸の配列、すなわちガイドバーB4から出たかかりが突出するであろうニットのグラウンドを形成する、ガイドバーB2およびB3は、二重で糸通しされている。言い換えれば、これらのガイドバーの各スレッドガイドは、2本の糸を通されている。さらに、糸は、生体吸収性材料で作られている。これにより、本発明の方法によって得られたニットは、移植後5ヶ月で、それが移植された時点で非生体吸収性ニットによって示されるのと同程度の機械的特性を示すことが可能になる。さらに、かかりの存在のおかげで、本発明の方法によって得られたニットは、縫合糸を使用することなく、したがって張力をかけることなく腹壁に固定することができる。本発明の方法によって得られたニットはまた、あらゆる方向に良好な弾性を示し、それにより、患者が不快に感じることなく、移植後の腹壁の動きに順応することが可能になる。さらに、本発明のニットのかかりもまた、生体吸収性材料から作られる。したがって、本発明の方法によって得られたニットは、完全に生体吸収性であり、合成および生物学的プロテーゼの両方の利点を兼ね備えている。
【0027】
ガイドバーB4は、好ましくは、1本で糸通しされている。実施形態では、ガイドバーB4の編みパターンは、一連の編み目およびインレーを含む。そのような編みパターンは、一方では、編み目を生成するいくつかの針、および例えば、溶融後にかかりを生じさせるループを有し、他方では、二重スレッドガイドバーB2とB3から生じる、編み目を生成せず、それによって2本の糸を受け入れるのに十分なスペースを提供することを可能にする。特に、ガイドバーB4の編みパターン内にインレーが存在すると、バーB2およびB3の各スレッドガイド内に2本の糸が存在しやすくなる。実際、ガイドバーB4の編みパターンにインレーが存在すると、編み目が詰まっていない針が得られ、したがってバーB2およびB3から生じる2本の糸を流動的に受容するための空間が得られる。バーB2およびB3の各スレッドガイドにおける2本の糸の存在と組み合わされた、B4の編みパターンにおけるインレーの存在は、均質なニットの生成を可能にする。
【0028】
実施形態では、ガイドバーB2およびB3に通された糸は、約80μm~約140μmの範囲の直径を示すモノフィラメントである。例えば、これらの糸は、約125μmの直径を示す。結果として、バーB2およびB3のスレッドガイドは、それぞれ約125μmの直径を有する2本の糸を含む。上記のように、ガイドバーB2およびB3は、ニットの基礎を形成するガイドバーであり、そこからガイドバーB4によって生成されたループから出たかかりが突出する。バーB2およびB3のスレッドガイドに通された2本の糸が約125μmの直径を示すような実施形態は、良好な機械的強度を示すニットを生成することを可能にする。特に、バーB4の編みパターン内にインレーが存在するおかげで、バーB2およびB3の各スレッドガイドの直径125μmの2本の糸は、そのインレーに関する針に流動的に受容され得る。
【0029】
実施形態では、ガイドバーB4に通された糸は、約100μm~約180μmの範囲の直径を示すモノフィラメントである。例えば、これらの糸は、約150μmの直径を示す。そのようなモノフィラメントは、良好なグリップ力を示すかかりを提供することを可能にする。
【0030】
実施形態では、ガイドバーB2およびB3の編みパターン繰り返しユニットは、第1のコース数に沿った5~9本の針上の糸の変位、および第2のコース数に沿った2本のみの針上の糸の変位を含む。たとえば、第1のコース数は4~6であり、第2のコース数は2~4である。例えば、ガイドバーB2およびB3の編みパターン繰り返しユニットは、4コースに沿った7本の針上の糸の変位、および2コースに沿った2本のみの針上の糸の変位を含む。そのような実施形態は、特に良好な伸び特性、およびしたがって全方向に良好な弾性を有するニットを生成する一方で、優れた機械的特性、特に優れた引張破断強度および破裂強度、良好な引き裂き強度、ならびに縫合引抜き強度を示すことを可能にする。
【0031】
実施形態では、ガイドバーB2およびB3は、標準ISO 11676(発行年2014)による次の編みパターン:
B2:0-1/3-4/7-6/4-3/0-1/2-1//
B3:7-6/4-3/0-1/3-4/7-6/5-6//に従って、1つがフル、2つが空で二重に糸通しされている。
【0032】
ガイドバーB2およびB3の編みパターン繰り返しユニットは、4コースに沿った7本の針上の糸の変位、および2コースに沿った2本のみの針上の糸の変位を含む。
【0033】
そのような実施形態では、ガイドバーB4は、標準ISO 11676(発行年2014)による次の編みパターン:
B4:4-4/1-2/0-1/2-1/4-4/2-2//に従って、1つがフル、2つが空で糸通しされてもよい。
【0034】
そのような編みパターンは、一連の編み目およびインレーを生成する。
【0035】
B2、B3およびB4について上述したような編みパターンを用いると、全方向における良好な弾性とともに、良好な機械的特性を有するニットを得ることが可能である。
【0036】
他の実施形態では、ガイドバーB2およびB3の編みパターン繰り返しユニットは、4本の針上の糸の変位を含む。そのような実施形態は、全方向に特に良好な弾性を有する一方で、良好な機械的特性を示すニットを生成することを可能にする。
【0037】
例えば、ガイドバーB2およびB3は、標準ISO 11676(発行年2014)による次の編みパターン:
B2:1-0/3-4//
B3:3-4/1-0//に従って、1つがフル、2つが空で二重に糸通しされてもよい。
【0038】
そのような実施形態では、ガイドバーB4は、標準ISO 11676(発行年2014)による次の編みパターン:
B4:5-5/2-3/0-0/3-2//に従って、1つがフル、2つが空で糸通しされてもよい。
【0039】
そのような編みパターンは、一連の編み目およびインレーを生成する。
【0040】
B2、B3およびB4について上述したような編みパターンを用いると、良好な弾性とともに、良好な機械的特性を有するニットを得ることが可能である。
【0041】
本発明のニットの糸およびかかりに適した生体吸収性材料としては、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、酸化セルロース、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDO)、トリメチレンカーボネート(TMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、これらの化合物のコポリマーおよびそれらの混合物が含まれる。
【0042】
本発明のニットの糸およびかかりに適した好ましい生体吸収性の生体適合性材料は、ポリトリメチレンカーボネート(PTMC)およびポリ-L-ラクチド(PLLA)のコポリマーなどのポリヒドロキシアルカノエートである。コポリマーは、約80%のラクチドおよび20%のトリメチレンカーボネートの組成を有することができる。例えば、ポリマー構造は、以下の式(I)下で示すような、ポリトリメチレンカーボネート(PTMC)の中央ブロック、およびポリ-L-ラクチド(PLLA)の2つの側方ブロックを有する、トリブロックコポリマーである。
【化1】
【0043】
上記式(I)のポリマーは、約100,000~約225,000の範囲のモル質量Mn、および約100,000g/mol~約225,000g/molの範囲の分子量Mwを示し得る。
【0044】
好ましい実施形態では、本発明のニットの糸およびかかりを形成する生体吸収性の生体適合性材料は、例えば、欧州特許出願EP18197009.6に記載されているような、約80%のラクチドおよび20%のトリメチレンカーボネートの組成を有する、ポリトリメチレンカーボネート(PTMC)の中央ブロックおよびポリ-L-ラクチド(PLLA)の2つの側方ブロックを有するトリブロックコポリマーである。
【0045】
ポリマーは、最初に、加熱によって重合されるトリメチレンカーボネート、二官能性開始剤(ジエチレングリコール)および触媒(第一スズオクトアート)を添加することによって、乾燥条件(窒素ガス)下で、2つのヘリコン型混合ブレードを装備した乾燥ステンレス鋼円錐容器反応器内で製造され得る。完全な重合(第1の段階)の後、ラクチドを(追加の触媒とともに)添加し得る。反応が完了したら、加熱および真空下で、ポリマーを押出し、ペレット化し、(水分およびモノマーを除去するために)乾燥し得る。
【0046】
例えば、コポリマーは、次に紡糸口金を通じて押し出されて、糸を生成するために、融合温度より高い温度で溶融され得る。生成された糸は、80μmから200μmの範囲の直径を示し得る。例えば、直径125μmおよび直径150μmの糸を生成することができる。糸は、それらの押し出し直後に水中で冷却される。その後、モノフィラメントは、一連のオーブンおよびロールシステムを通過して、引き伸ばされ、それらの技術的特徴を実現する。125μmの直径の糸および150μmの直径の糸の両方をビームに反らせて、さらに縦編み機にセットし得る。
【0047】
上述のような編み工程に加えて、得られたニットをヒートセットする。ヒートセット工程は、特に横糸方向および縦糸方向において、ニットの幅および長さを安定させることを可能にする。ヒートセット工程は、約100℃~約125℃の範囲の温度、例えば約115℃で実施され得る。実施形態では、ヒートセット工程が実施される温度は、ガイドバーB4に通されたモノフィラメントを形成する熱融着材料の融点より低く、その融点より少なくとも約10℃低いことが好ましい。ヒートセット工程の間、ニットは、縦糸方向にも横糸方向にも張力を受けないように保たれてもよい。
【0048】
さらなる工程において、ガイドバーB4に通された熱融着モノフィラメントによって生成されたループは、切断されて、かかりを形成する。ループは、モノフィラメントを溶融することによって切断される。
【0049】
実施形態では、この工程は、WO01/81667に記載されているように、ループを溶融し、ループが2つに切断されて、それによりかえしを形成する温度に達したシリンダーに、突出ループを備えたニットの側面を置くことによって実施される。この切断は2つのかかりを発生させ、それらの各々は通常、そのステムよりも大きい寸法のヘッドを有する。
【0050】
得られたかかりは、例えば、筋肉、結合組織などの生物学的組織を掴むのに特に効果的である。
【0051】
次いで、ニットは、例えば、エチレンオキシドを使用して、従来の滅菌方法に従って洗浄および滅菌され得る。
【0052】
本発明のニットは、特にヘルニア、好ましくは腹側ヘルニアの治療のための頭頂部または内臓の外科手術における壁補強のために、単独で、またはプロテーゼの一部として使用され得る。
【0053】
本発明の別の態様は、上述のような少なくとも1つのニットを含む、ヘルニア治療用のプロテーゼである。本発明のプロテーゼは、引張強度のような良好な機械的特性、および引張伸び強度のような良好な伸び特性を示す。特に、本発明のプロテーゼは、特に良好なボール破裂特性を示し、そのことは、十分な弾性とともに高い機械的抵抗を示すことを可能にする。したがって、本発明のプロテーゼは、プロテーゼの弾性により、日常生活において患者の動きによって生じる腹腔内圧に順応し、円滑に反応することができるので、患者にとって最適な快適さで腹壁の効率的な補強を確実にする。
【0054】
以下の実施例および添付の図面を参照して、本発明のニットおよびそのニットの製造方法をさらに詳細に説明する。
本発明は、例えば以下を提供する。
(項目1)
生体吸収性人工多孔質ニットであって、前記ニットの少なくとも2つの側面を画定する生体吸収性の生体適合性材料の糸の配列を含む、生体吸収性人工多孔質ニット、を製造するための方法であって、前記ニットが、その一方の側面に、前記一方の側面から外向きに突出するかかりを設けられ、前記プロセスが、
-i)4つのガイドバー、すなわちガイドバーB1、ガイドバーB2、ガイドバーB3およびガイドバーB4を含む、1つの針床を含む、縦編み機械を提供するステップと、
ii)以下のように、前記機械上で、生体吸収性の生体適合性材料の糸を編むステップであって、
-ガイドバーB1が、糸通しされておらず、
-ガイドバーB2およびB3が、生体吸収性の生体適合性材料の糸で二重に糸通しされ、ガイドバーB2およびB3が従う編みパターンが、少なくとも2本の針を伴い、前記ニットの前記2つの側面を画定する糸の前記配列を作り出し、
-ガイドバーB4が、生体吸収性の生体適合性材料の熱融着モノフィラメント糸で糸通しされ、ガイドバーB4が従う編みパターンが、編み目を作り、前記ニットの前記一方の側面から外向きに突出するループを生成する、ステップと、
iii)ii)で得られた前記ニットをヒートセットするステップと、
iv)溶融を介して前記ループを切断することによって、かかりを形成するステップと、を含む、方法。
(項目2)
ガイドバーB4の前記編みパターンが、一連の編み目およびインレーを含む、前記項目に記載の方法。
(項目3)
ガイドバーB2、B3およびB4に通された前記糸が、約80μm~約180μmの範囲の直径を示すモノフィラメントである、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目4)
ガイドバーB2およびB3に通された前記糸が、約125μmの直径を示すモノフィラメントである、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目5)
ガイドバーB4に通された前記糸が、約150μmの直径を示すモノフィラメントである、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目6)
ガイドバーB2およびB3の編みパターン繰り返しユニットが、第1のコース数に沿った5~9本の針上の前記糸の変位、および第2のコース数に沿った2本のみの針上の前記糸の変位を含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目7)
前記第1のコース数は、4~6であり、前記第2のコース数は、2~4である、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目8)
ガイドバーB2およびB3の前記編みパターン繰り返しユニットが、4コースに沿った7本の針上の前記糸の変位、および2コースに沿った2本のみの針上の前記糸の変位を含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目9)
ガイドバーB2およびB3の前記編みパターン繰り返しユニットが、4本の針上の前記糸の変位を含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目10)
ガイドバーB2およびB3が、次のパターン、
B2:0-1/3-4/7-6/4-3/0-1/2-1//
B3:7-6/4-3/0-1/3-4/7-6/5-6//に従って、1つがフル、2つが空で二重に糸通しされ、
ガイドバーB4が、次のパターン、
B4:4-4/1-2/0-1/2-1/4-4/2-2//に従って、1つがフル、2つが空で糸通しされている、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目11)
ガイドバーB2およびB3が、次のパターン、
B2:1-0/3-4//
B3:3-4/1-0//に従って、1つがフル、2つが空で二重に糸通しされ、
ガイドバーB4が、次のパターン、
B4:5-5/2-3/0-0/3-2//に従って、1つがフル、2つが空で糸通しされている、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目12)
前記生体吸収性の生体適合性材料が、例えば、80%のラクチドおよび20%のトリメチレンカーボネートの組成を有する、ポリトリメチレンカーボネート(PTMC)とポリ-L-ラクチド(PLLA)とのコポリマーである、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目13)
生体吸収性人工多孔質ニットであって、前記ニットの少なくとも2つの側面を画定する生体吸収性の生体適合性材料の糸の配列を含み、前記ニットが、その一方の側面に、前記一方の側面から外向きに突出するかかりを設けられ、前記ニットの前記2つの側面を画定する前記配列の各糸が、二重である、生体吸収性人工多孔質ニット。
(項目14)
前記ニットの前記2つの側面を画定する前記配列の前記糸が、約80~約140μmの範囲の直径を示し、好ましくは、約125μmの直径を示すモノフィラメントである、前記項目のいずれかに記載の生体吸収性人工ニット。
(項目15)
前記かかりが、モノフィラメントカットから形成され、前記モノフィラメントが、約100~約180μmの範囲の直径を示し、好ましくは、約150μmの直径を示す、前記項目のいずれかに記載の生体吸収性人工ニット。
(項目16)
前記ニットを形成する前記糸および前記かかりが、例えば、80%のラクチドおよび20%のトリメチレンカーボネートの組成を有する、ポリトリメチレンカーボネート(PTMC)とポリ-L-ラクチド(PPLA)とのコポリマーから作られる、前記項目のいずれかに記載の生体吸収性人工ニット。
(摘要)
本発明は、生体吸収性人工多孔質ニットであって、ニットの少なくとも2つの側面を画定する生体吸収性の生体適合性材料の糸の配列を含む、生体吸収性人工多孔質ニットに関し、そのニットは、その一方の側面に、その一方の側面から外向きに突出するかかりを設けられ、その2つの側面を画定する配列の各糸は、二重である。本発明はさらに、そのようなニットを製造する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】本発明のニットの第1の実施形態による、ガイドバーB2の編みパターンの概略図である。
【
図2】本発明のニットの第1の実施形態による、ガイドバーB3の編みパターンの概略図である。
【
図3】本発明のニットの第1の実施形態による、ガイドバーB4の編みパターンの概略図である。
【
図4】本発明のニットの第2の実施形態のガイドバーB2、B3およびB4の編みパターンの概略図である。
【
図5】ボール破裂試験で使用した試験機の概略図である。
【
図6】実施例7に記載されたインビボ研究に関して異なる壁腹部サンプルについて測定された、最大力の分布を示すグラフを示す図である。
【実施例】
【0056】
実施例1:
以下でニットAと呼ばれる、本発明によるプロテーゼニットは、上述のように4本のガイドバーB1、B2、B3およびB4を有する縦編み機で製造され、ここでバーB1は編み機の位置1にあり、バーB2は位置2にあり、バーB3は位置3にあり、バーB4は位置4にある。
【0057】
ガイドバーB1は、糸通しされていない。
【0058】
ガイドバーB2およびB3は、標準ISO 11676(発行年2014)による次の編みパターン:
B2:0-1/3-4/7-6/4-3/0-1/2-1//
B3:7-6/4-3/0-1/3-4/7-6/5-6//に従って、1つがフル、2つが空で二重に糸通しされてもよい。
【0059】
当業者にはよく知られている表現に従ってガイドバーB2の編みパターンが
図1に示されており、ここで、「wa」は縦糸方向を示し、「we」は横糸方向を示す。
【0060】
当業者にはよく知られている表現に従ってガイドバーB3の編みパターンが
図2に示されており、ここで、「wa」は縦糸方向を示し、「we」は横糸方向を示す。
【0061】
ガイドバーB4は、標準ISO 11676(発行年2014)による次の編みパターン:
B4:4-4/1-2/0-1/2-1/4-4/2-2//に従って、1つがフル、2つが空で糸通しされてもよい。
【0062】
当業者にはよく知られている表現に従ってガイドバーB4の編みパターンが
図3に示されており、ここで、「wa」は縦糸方向を示し、「we」は横糸方向を示す。
【0063】
本ニットAの製造に使用されるすべての糸、すなわちガイドバーB2、B3およびB4に通された糸は、ポリトリメチレンカーボネート(PTMC)の中央ブロックと、約80%のラクチドおよび20%のトリメチレンカーボネートの組成を有するポリ-L-ラクチド(PLLA)の2つの横ブロックとを有する、トリブロックコポリマーでできている。ニットAは完全生体吸収性である。
【0064】
ガイドバーB2およびB3に通された糸は、125μmの直径を有するモノフィラメントである。糸番手は156dtexである。各スレッドガイドは、2本の糸を通されている。
【0065】
ガイドバーB4に通された糸は、150μmの直径を有するモノフィラメントである。糸番手は227dtexである。ガイドバーB4は、1本で糸通しされている。
【0066】
図1~
図3のそれぞれについて、グラフィックは、対応するガイドバーの動きを示している。ガイドバーの動きは、下から上に向かって読み取られ、最初の編みコースは下にある。
【0067】
各ガイドバーの包括的なパターン繰り返しサイズは6コースであるので、全体的なパターン繰り返しサイズは、6コースである(
図1~
図3において1~6という名前の行)。
【0068】
かかりを生成することを目的とする熱融着モノフィラメント糸は、溶融工程中に定期的に切断されるため、B2およびB3に通された糸は、本ニットのベースを構成する。ガイドバーB2およびB3の編みパターンは、ニットの両側を画定する糸の配列を作り出す。
【0069】
ガイドバーB2およびB3の編みパターン繰り返しユニットには、4コースに沿った7針の糸の変位(
図1でA-B-C-Dと呼ばれる変位に対応する)、および2コースに沿った2針の糸の変位(
図1でE-Fと呼ばれる変位に対応する)が含まれる。
【0070】
シーケンスA-B-C-Dは、横糸方向においてニットにいくらかの強度をもたらし、シーケンスEFは、縦糸方向においてニットにいくらかの性能をもたらす。
【0071】
そのような編みパターン繰り返しユニットは、全方向に特に良好な弾性を有するニットを生成する一方で、良好な機械的特性、特に優れた引張破断強度および破裂強度、良好な引き裂き強度、ならびに縫合引抜き強度を示すことを可能にする。
【0072】
ガイドバーB4が続く編みパターンは、編み目がニットの一方の側面から外向きに突出するループを生成させる。
【0073】
ニットが製造されると、それを従来の方法に従って、例えば、115℃でヒートセットして、それを長さおよび幅において安定させる。
【0074】
ヒートセット工程の後、ガイドバーB4によって生成されたループが突出しているニットの側面は、例えば、WO01/81667に記載されているのと同じ方法で、ループを溶融させるために、発熱抵抗体を含むシリンダーと接触して配置される。かえしを形成するために本実施例で使用される80%ラクチドと20%トリメチレンカーボネートとのコポリマーの融点は、172℃であり、発熱抵抗体は、約250~290℃の温度を示し得る。
【0075】
溶融すると、各ループは2つに切断され、ニットのその側面から外向きに突出する2つのかかりが生じる。
【0076】
本実施例のニットAの以下の特性は、以下のようにして決定された。
-表面密度(g/m2):ISO 3801:1977「ユニット長さ当たりの質量およびユニット面積当たりの質量の決定」に従って測定、5つのサンプル、1dm2ディスク、
-細孔サイズ(幅×高さ)(mm):ニット最大細孔幅および高さは、プロジェクターなどのプロファイルプロジェクターを用いて、寸法100×50mmの5つの個々のサンプルについて1回測定することによって測定される。
-グリップ強度(N):試験すべきニットサンプルを、六角形の細孔を有する織物でできたカウンターサンプルと組み合わせて評価する。以下のように、それらのかかりによってニットサンプルをまずカウンターサンプルに固定する。寸法5×10cmのカウンターサンプルを調製する。寸法5×10cmのニットサンプルを調製する。各カウンターサンプルは、六角形の細孔を上にして水平面上に置かれる。ニットサンプルは、カウンターサンプルの上部に配置され、かかりは下方に突出している。次いで、ニットサンプルに1.5kgの荷重を前後に5回通すことによって、ニットサンプルをカウンターサンプルに押し付ける。次に、カウンターサンプルおよびそれに把持されたニットサンプルを、滑動板と5×5cmの寸法の締付け板との間に配置する。次いで、アセンブリを、固定ジョーおよび可動ジョーを備えたHounsfieldモデルH5KS(Hounsfield、Redhill、England)などの牽引試験機に取り付ける。カウンターサンプルを可動ジョーに取り付け、ニットサンプルを固定ジョーに取り付ける。予荷重を2Nに設定する。可動ジョーを100mm/分の速度で固定ジョーから離す。グリップ強度は、ニットサンプルが破損する前および/またはカウンターサンプル上を摺動する前に、測定される最大剪断力である。収集値は5つのサンプルの平均を表す。
【0077】
【0078】
実施例2:
本明細書において以下でニットBと言及される、本発明によるプロテーゼニットは、上述のように4本のガイドバーB1、B2、B3およびB4を有する縦編み機で製造され、ここでバーB1は編み機の位置1にあり、バーB2は位置2にあり、バーB3は位置3にあり、バーB4は位置4にある。
【0079】
ガイドバーB1は、糸通しされていない。
【0080】
ガイドバーB2およびB3は、標準ISO 11676(発行年2014)による次の編みパターン:
B2:1-0/3-4//
B3:3-4/1-0//に従って、1つがフル、2つが空で二重に糸通しされてもよい。
【0081】
ガイドバーB4は、標準ISO 11676(発行年2014)による次の編みパターン:
B4:5-5/2-3/0-0/3-2//に従って、1つがフル、2つが空で糸通しされてもよい。
【0082】
当業者にはよく知られている表現に従ってガイドバーB2、B3およびB4の編みパターンが
図4に示されており、ここで、「wa」は縦糸方向を示し、「we」は横糸方向を示す。
【0083】
本ニットBの製造に使用されるすべての糸、すなわちガイドバーB2、B3およびB4に通された糸は、ポリトリメチレンカーボネート(PTMC)の中央ブロックと、約80%のラクチドおよび20%のトリメチレンカーボネートの組成を有するポリ-L-ラクチド(PLLA)の2つの横ブロックとを有する、トリブロックコポリマーでできている。ニットBは完全生体吸収性である。
【0084】
ガイドバーB2およびB3に通された糸は、125μmの直径を有するモノフィラメントである。糸番手は156dtexである。各糸通しされたガイドは、2本の糸を通されている。
【0085】
ガイドバーB4に通された糸は、150μmの直径を有するモノフィラメントである。糸番手は227dtexである。ガイドバーB4は1本で糸通しされている。
【0086】
ガイドバーB2およびB3のパターン繰り返しサイズは2コースであり、ガイドバーB4のパターン繰り返しサイズは4コースであるので、全体的なパターン繰り返しサイズは、4コースである(
図4において1’~4’という名前の行)。
【0087】
かかりを生成することを目的とする熱融着モノフィラメント糸は、溶融工程中に定期的に切断されるため、B2およびB3に通された糸は、本ニットのベースを構成する。ガイドバーB2およびB3の編みパターンは、ニットの両側を画定する糸の配列を作り出す。
【0088】
ガイドバーB2およびB3の編みパターン繰り返しユニットは、2つのコースに沿った4本の針上の糸の変位を含む。
【0089】
そのような編みパターン繰り返しユニットは、全方向に特に良好な弾性を有するニットを生成する一方で、良好な機械的特性、特に優れた引張破断強度および破裂強度、良好な引き裂き強度、ならびに縫合引抜き強度を示すことを可能にする。
【0090】
ニットが製造されると、それを従来の方法に従って、例えば、115℃でヒートセットして、それを長さおよび幅において安定させる。
【0091】
ヒートセット工程の後、ガイドバーB4によって生成されたループが突出しているニットの側面は、例えば、WO01/81667に記載されているのと同じ方法で、ループを溶融させるために、発熱抵抗体を含むシリンダーと接触して配置される。実施例1と同様に、発熱抵抗体は、約250~290℃の温度を示し得る。
【0092】
溶融すると、各ループは2つに切断され、ニットのその側面から外向きに突出する2つのかかりが生じる。
【0093】
本ニットBの特性は、実施例1に記載されているのと同じ様式および同じ方法で測定された。結果を以下の表IIにまとめる。
【表2】
【0094】
実施例3:
本実施例では、上記実施例1および2の本発明のニット、すなわちニットAおよびニットBの機械的特性を、以下の方法に従って測定した。
-引張破断強度(N)、破断時の引張伸び(%)、50N未満の引張伸び(%)を、ISO 13934-1:2013「Determination of breaking strength and elongation」に従って測定した、5つのサンプル、幅:50mm、長さ:ジョー間200mm、クロスヘッド速度:100mm/分、予荷重:0.5N、HounsfieldモデルH5KS(Hounsfield、Redhill、England)などの牽引試験機を使用。
-破裂強度(kPa):ISO 13938-2:1999「Textiles-Bursting properties of fabrics-Pneumatic method for determination of bursting strength and bursting deformation」に従って測定、5つのサンプル、破裂強度テスター、James HealモデルTruburst4を使用。
-以下のように、縦糸方向および横糸方向における縫合引抜き強度を測定した:USP 2縫合糸を、サンプルの小さい側の端から10mmで、50X100mmサンプルの細孔に通し、HounsfieldモデルH5KS(Hounsfield、Redhill、England)などの牽引試験機を使用して、次の条件で牽引する:5つのサンプル、幅50mm、ジョー間100mm、クロスヘッド速度:100mm/分。
-縦糸方向および横糸方向における引き裂き強度(N):置き換えられたISO 4674:1977「Determination of tear resistance of coated fabrics」方法A2に従って測定した、5つのサンプル、幅:75mm、引き裂き長さ≦145mm、クロスヘッド速度:100mm/分。
【0095】
さらに、これらの特性を、先行技術の以下のニットについて、上述の方法に従って測定した。
-ニットC:Sofradim Production社により≪Parietex商標Hydrophilic 3 Dimensional mesh≫の商品名で市販されている、ポリエステルマルチフィラメントで作られたヘルニア修復用非生体吸収性ニット。
-ニットD:Sofradim Production社により≪ProGrip商標Self-Gripping Polyester Mesh≫の商品名で市販されている、非生体吸収性ポリエステルモノフィラメントおよび生体吸収性ポリ乳酸かかりのベースニットで作られたヘルニア修復用非生体吸収性ニット。
【0096】
本実施例のニットは、試験が完了する前にいかなる疲労および/または分解処理も受けずに、それらの製造後に試験される。
【0097】
【0098】
上記の結果から分かるように、本発明のニットAおよびBは、ニットAについては583kPa、ニットBについては672kPaの破裂強度、ニットAについては377N、ニットBについては243Nの縦糸方向の引張破断強度、およびニットAについては323N、ニットBについては345Nの横糸方向の引張破断強度などの優れた機械的特性を示す。同時に、本発明のニットAおよびBは、ニットAについては、縦糸方向において94%の引張破断強度および横糸方向において97%の引張破断強度、ニットBについては、縦糸方向において58%の引張破断強度および横糸方向において77%の引張破断強度を有する、優れた弾性をさらに示す。
【0099】
比較として、従来技術の非生体吸収性ニットCは、わずか288kPaの破裂強度を示し、言い換えれば、ニットAの破裂強度の約49%のみ、およびニットBの破裂強度の約43%のみを表す。従来技術の非生体吸収性ニットDは、わずか271kPaの破裂強度を示し、言い換えれば、ニットAの破裂強度の約46%のみ、およびニットBの破裂強度の約40%のみを表す。
【0100】
上記の表IIIからさらに明らかなように、本発明の生体吸収性ニットAおよびBは、先行技術の非生体吸収性ニットCおよびDよりも、引張破断強度、引き裂き強度および縫合引抜き強度などの良好な機械的特性を示す。本発明のニットAおよびBは、50N未満の引張伸びおよび引張破断伸びについて測定された値によって示されるように、先行技術のニットCおよびDよりも良好な弾性を、すべての方向においてさらに示す。
【0101】
実施例4:
本実施例では、上記実施例1および2の本発明のニットAおよびBのボール破裂特性を、従来技術のニットのそれと比較する。
【0102】
本明細書で使用されるボール破裂試験方法は、ASTM D6797-15「Standard Test Method for Bursting strength of Textiles - Constant-rate-of-Extension (CRE) Ball Burst Test」に準拠する。このボール破裂試験は、本明細書において
図5を参照して説明される。この図を参照すると、試験されるべきニットの寸法6.5cm×6.5cmの正方形ニットサンプル1が、44.45mmの内径を有するリングクランプによって、ボール破裂強度試験機4の下側ジョー2と上側ジョー3との間に固定されている。25.4mmのボールプローブ5を、HounsfieldモデルH5KS(Hounsfield、Redhill、England)などの圧縮試験機のクロスヘッド6に取り付け、0.1Nの予荷重をサンプル1に加える。
【0103】
試験を完了するために、ボールプローブ5を、
図5に示す矢印Fの方向に下方に動かし、それによってサンプル1に力が加えられる。サンプル1が破壊するまで、ボールプローブを305mm/分の速度で移動させる。
【0104】
破壊時に測定された力(N)を「最大力」と呼び、破壊時のサンプル1の変位(mm)を「撓み」と呼ぶ。最大力が大きいほど、ニットサンプルは強くなる。撓みが大きいほど、ニットはより弾力的になる。したがって、高い最大力および高い撓みを有するニットは、圧力に円滑に適応することができる抵抗性ニットである。そのようなニットから作られたヘルニア修復のためのプロテーゼは、腹壁が日常的にかけられる圧力に耐えることができるように、耐性がありそして順応性があるであろう。
【0105】
実施例3に記載した2つの比較用ニットCおよびDに加えて、従来技術の以下のニットも、本実施例で試験した。
-ニットE:B-Braun社により「Optilene(登録商標)Mesh LP」の商品名で市販されている、ポリプロピレンモノフィラメントで作られたヘルニア修復用の非生体吸収性ニット。
-ニットF:Novus Scientific社により「Tigr(登録商標)Matrix」の商品名で市販されている、グリコリド、ラクチドおよびトリメチレンカーボネートのコポリマーのマルチフィラメント、ならびにラクチドおよびトリメチレンカーボネートのマルチフィラメントで作られた、ヘルニア修復用の生体吸収性ニット。
【0106】
1°)時間T0でのボール破裂試験:
試験の完了前にいかなる疲労および/または分解処理も受けずに、ニットA~Fは時間T0で試験された。
【0107】
T0で完了した試験の結果を、以下の表IVにまとめる。
【表4】
【0108】
表4から明らかなように、本発明のニットAおよびBは、時間T0において高い最大力および高い撓みを示す。したがって、これらのニットは、強くて適応性があるので、ヘルニア修復としての使用に特に適している。
【0109】
2°)インビトロでの20週間の静的分解後のボール破裂試験。
生体吸収性ニットA、BおよびFを、人体内の生理学的液体をシミュレートすることを目的とした緩衝溶液中に20週間(T20ws)静的様式で浸漬した後、そのような条件下のニットの挙動を評価するために、さらに試験した。試験は、標準ISO 13781:1997に従って、以下の偏差を伴って実施される:オーブン精度は±2℃であり、そしてpHが7.2未満に低下すると緩衝液が変更される。
【0110】
ニットサンプルを、1/15mol/Lの濃度の滅菌水中のリン酸二水素カリウムおよびリン酸水素二ナトリウムからなるリン酸緩衝溶液に浸漬させる。緩衝溶液のpH値は、7.4±0.1である。
【0111】
7×7cmの寸法のサンプルを、150mLのリン酸緩衝溶液で満たした滅菌180mLポリプロピレン容器に入れる。容器を閉じて37℃の恒温室に入れ、そこで20週間静置状態に維持する。
【0112】
20週間後、各サンプルを溶液から取り出し、そして上述のようにボール破裂について直接試験する。
【0113】
T20wsで完了したテストの結果を、以下の表Vにまとめる。
【表5】
【0114】
上記の表Vから明らかなように、本発明のニットAおよびBは、それらが部分的に分解されている緩衝溶液中に20週間浸漬された後でも、それらのボール破裂特性を維持していた。実際、これら2つのニットについては、最大力および撓みの値は、T0およびT20wsで実質的に同じままである。
【0115】
比較として、比較生体吸収性ニットFの最大力は、緩衝溶液中に20週間静的浸漬した後、463Nから143Nになり、それによってその初期値の約69%を失った。結果として、T20wsにおける比較ニットFの最大力は、本発明のニットAについて測定された最大力の約26%のみおよび本発明のニットBについて測定された最大力の約39%のみを表す。
【0116】
比較のために、一方ではT0での非生体吸収性比較ニットC、DおよびE、ならびに他方ではT20wsでの本発明のニットAおよびBのボール破裂特性の値を、本発明のニットが、いかなる分解処理も受けていない従来技術の非生体吸収性ニットよりも、静的分解処理の20週間後により良好なボール破裂特性を示すことを強調するために、以下の単一の表VIに示す。
【表6】
【0117】
実施例5:
本実施例では、上記実施例1および2の本発明のニットAおよびBの機械的特性を、従来技術の比較生体吸収性ニットFのそれと比較する。ニットは最初に時間T0で、すなわち、いかなる疲労および/または分解処理も受けずに試験される。
【0118】
本発明のニットAおよびBもまた、時間T20ws、すなわち20週間のインビトロでの静的分解後に試験され、静的分解プロトコルは、上記実施例4に記載されたものと同様である。
【0119】
比較用ニットFを、時間T13ws、すなわち、13週間のインビトロでの静的分解後にさらに試験する。静的分解プロトコルは、20週間ではなく、13週間の浸漬後に、サンプルを緩衝溶液から取り出すことを除いて、上記実施例4に記載されたものと同様である。
【0120】
ニットの機械的特性は、以下のように小さいサイズのサンプルに適合されている一軸引張試験に従って測定される:引張破断強度(N)、破断時の引張伸び(%)、50N未満の引張伸び(%)および30N未満の引張伸び(%)を、以下の偏差を有するISO 13934-1:2013「Determination of breaking strength and elongation」に従って測定する:各方向における5つのサンプル、寸法25mmX60mm-長さ:ジョー間40mm、クロスヘッド速度:20mm/分、予荷重:0.5N、HounsfieldモデルH5KSなどの牽引試験機を使用。
【0121】
結果を、以下の表VIIおよび表VIIIにまとめる。
【表7】
【表8】
【0122】
上記の表VIIおよび表VIIIから明らかなように、本発明のニットAおよびBは、20週間静的分解処理を受けた後でも、それらの破断強度および伸び特性を高いレベルで維持した。実際、これら2つのニットについて、破断強度、30N未満の伸び、50N未満の伸び、および破断伸びの値は、T0およびT20wsで実質的に同じままである。これは、本発明のニットAまたはBから作られたヘルニア修復用のプロテーゼは、製造時と同じように20週間後にも機械的耐性および弾性のままであり続けることができることを意味する。したがって、このようなプロテーゼは、日常生活の間に人体の腹壁が受ける様々な圧力に耐え、それに適合することができよう。
【0123】
比較用ニットFについては、小さいサイズのサンプルについての上述の一軸引張試験による破断強度は、20週間ではなく、13週間緩衝溶液に浸漬した後に試験が行われたことを除いて、静的分解プロトコルが上述と同様である13週間(T13ws)の静的分解後に測定された。結果を以下の表IXにまとめる。
【表9】
【0124】
これらの結果によって示されるように、13週間の静的分解の後、比較生体吸収性ニットFの破断強度は、縦糸方向において175Nから73Nになり、これはその初期値の58%を失ったことを意味し、さらに横糸方向において180Nから33Nになり、これはその初期値の81%を失ったことを意味する。比較ニットFについてT13wsで測定された値は、分解条件下で費やされた時間がずっと短いにもかかわらず、本発明のニットAおよびBについてT20wsで測定された値より劣っている。
【0125】
実施例6:
本実施例では、上記の実施例1および2の本発明のニットAおよびBの破断強度を、以下に説明するように20週間(T20wd)のインビトロでの動的分解の期間をニットにかけた後、上記の実施例5で説明したように小サイズのサンプルに適合した一軸引張試験の条件に従って測定した。
【0126】
インビトロでの動的分解プロトコル:
いくつかの100Nのロードセルを備えた装置が提供され、その各セルは、第1のニットサンプルエッジを掴むことができる第1の固定ジョーと、ニットサンプルの反対側のエッジを掴むことができる第2の移動ジョーとを有する。装置およびセルを、37℃の温度制御された槽に浸す。この槽は、1/15mol/Lの濃度の滅菌水中のリン酸二水素カリウムおよびリン酸水素二ナトリウムからなるリン酸緩衝溶液である。緩衝溶液のpH値は、7.4±0.1である。
【0127】
寸法60mm×25mmのニットサンプルを用意する。各サンプルは、1つのセルのジョーに取り付けられている。ジョー間の長さは40mmである。1Hzの周波数でニットサンプルの15%~20%の変形を引き起こすように、6~8mmの変位の間で振動する一軸性の周期的正弦波に従って、可動ジョーを固定ジョーに近づけながら移動させる。そのような疲労治療は、人体の腹壁に埋め込まれたニットの予想される機械的負荷に近いと考えられる。
【0128】
サンプルは、連続的な方法で20週間、このような疲労治療にかけられる。
【0129】
上述のプロトコルは、動的分解条件をシミュレートすることを意図されており、人工のニットが、患者の体内に埋め込まれた後にそのような条件下で予想されるニットの挙動を評価するために供され得る。
【0130】
破断強度の測定:
時間T20wdと称される上記の20週間の動的分解処理の後、37℃の滅菌水中に1時間浸漬することによって湿潤状態に維持した各サンプルを、実施例5に記載のように引張破断強度について試験する。
【0131】
【0132】
比較のために、比較の非吸収性ニットC、DおよびEの破断強度もまた、上記実施例5に記載したような小さいサイズのサンプルに適合させた一軸引張試験の条件に従って測定し、T0では、ニットは、試験の完了前に疲労および/または分解処理を受けていない。
【0133】
一方でT0での非生体吸収性ニットC、DおよびE、ならびに他方でT20wsおよびT20wdでの本発明のニットAおよびBの破断強度の値を、本発明のニットが、いかなる分解処理も受けていない従来技術の非生体吸収性ニットよりも、静的分解処理の20週間後(T20ws)または動的分解処理の20週間後(T20wd)に良好な破断強度特性を示すことを強調するために、以下の単一の表XIにまとめる。
【表11】
【0134】
実施例7:
本実施例では、上記の実施例1および2のニットAおよびBを、ブタモデルの修復された腹部腹壁欠損を経時的に強化する本発明のニットの能力を評価するために、ブタにインビボで移植した。一定時間の移植後のボール破裂特性に関するニットAおよびBの性能を、一方では天然腹壁の性能と比較し、そして全く補強ニットなしで、欠損が単に縫合されている壁の性能と比較した。
【0135】
本研究のために従ったプロトコルは、以下のものである。必要に応じて外科的修復を含む以下の4つの治療法を適用した。
【0136】
治療1:ネガティブコントロール:動物の腹側腹壁に直径3cmの円板状の欠損を作る。外科的修復は、補強ニットを使用せずに、単純に欠損を吸収性縫合で閉じることからなる。
【0137】
治療2:ポジティブコントロール:天然の腹壁に相当する。欠損は作らない。外科的修復を行わない。
【0138】
処置3:ニットA:処置1と同じ様式で、動物の腹側腹壁に直径3cmの円板状の欠損を作る。外科的修復は、吸収性縫合で欠損を閉じ、そして直径9cmを有する上記実施例1のニットAの円板状サンプルで腹壁を補強することからなる。
【0139】
処置4:ニットB:上記処置1および処置2と同じ様式で、動物の腹側腹壁に3cmの円板状の欠損を作る。外科的修復は、吸収性縫合で欠損を閉じ、そして直径9cmを有する上記実施例2のニットBの円板状サンプルで腹壁を補強することからなる。
【0140】
外科的修復の20週間後、動物を安楽死させる。腹壁サンプルを以下のようにまとめる:各部位(治療2の天然壁または治療1、3および4の修復欠損部位)、および適量の周囲組織を、外植し、トリミングし、食塩水に浸したガーゼで包み、上記の実施例4に記載の方法によるボール破裂試験にかけ、ここでニットサンプルは、腹壁サンプルで置き換えられる。
【0141】
図6は、上記の異なる処理、すなわちネガティブコントロール、ポジティブコントロール、ニットAおよびニットBについて測定された、最大力の分布を示すグラフを表している。
【0142】
図6のグラフの点線は、天然の腹壁に対する最大力の値の80%を表す。
【0143】
この図から明らかなように、本発明のニットは、移植後20週間、言い換えれば移植後約5ヶ月で、天然の腹壁の最大力の80%をはるかに超える最大力を示している。
【0144】
結果として、本発明の移植されたニットは、上記で定義されたように少なくとも5ヶ月の治癒の臨界期の終了時に、腹壁の修復に依然として貢献している。