(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】真空生成装置を備えた真空システムの制御
(51)【国際特許分類】
F04B 37/16 20060101AFI20240729BHJP
F04F 5/48 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
F04B37/16 A
F04F5/48 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019211403
(22)【出願日】2019-11-22
【審査請求日】2022-11-10
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500258868
【氏名又は名称】ピアブ アクチエボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100137969
【氏名又は名称】岡部 憲昭
(74)【代理人】
【識別番号】100104824
【氏名又は名称】穐場 仁
(72)【発明者】
【氏名】セーダーマン,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】アーリン ヘグフェルト,サイモン
(72)【発明者】
【氏名】ウィグレン,グスタフ
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-025186(JP,A)
【文献】特表2018-507393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 37/16
F04F 5/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の輸送のためにバキュームリフタを動作する真空システムにおける持ち上げプロセスで省エネルギーを可能にする自動圧力レベル適合方法であって、
前記真空システムは、圧縮空気流により駆動される真空生成装置であって、真空室を介して前記真空システムの一部となり、前記バキュームリフタと流通接続されるように構成され、これにより、前記圧縮空気流により真空を前記バキュームリフタに供給し、経時的にシステム圧力p-(t)を監視する圧力センサが前記真空室内に配置される真空生成装置と、
メインコントローラに電気的に接続され得る真空システムコントローラであって、前記真空生成装置に対して制御および通信を行い、前記圧力センサと通信するように構成され、複数の監視ポイントで測定された前記システム圧力p-(t)を監視するように構成された真空システムコントローラとを備え、
持ち上げプロセス全体における各前記監視ポイントについて、前記持ち上げプロセス全体において前記物体を保持するのに必要な真空レベル(P-)を調整することを特徴とし、前記方法が
前記バキュームリフタによって動かされている物体の加速度(Oacc)を測定することと、
前記加速度(Oacc)に応じて前記必要な真空レベル(P-)を調整することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記持ち上げプロセスの開始時に基準信号を決定することをさらに含む、請求項1に記載の自動圧力レベル適合方法。
【請求項3】
基準信号を計算することをさらに含み、前記基準信号は計算された真空レベル(p-)であって、これらの真空レベル(p-)は、前記持ち上げプロセス全体における各前記監視ポイントについて、前記物体を保持するのに必要な最小真空レベルである、請求項1または2に記載の自動圧力レベル適合方法。
【請求項4】
前記基準信号を計算することが、加速度(Objectacc)、物体の質量(Omass)、および前記バキュームリフタに使用される特定の真空パッドの力特性(Oforce char)という3つの変数を使用する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記力特性(Oforce char)は、真空レベル(P-)と力との間の関連性のデータを収集することにより計算される、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記力を計算することが、前記物体を前記真空パッドから引き離すことができる設定で動力計を使用して行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記パッドが把持力を失う特定の真空レベルが、前記バキュームリフタ、特にリフタパッドが前記物体の持ち上げに適用できる最大力であるように、前記力が計算される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記システム圧力p-(t)が経時的に連続的に監視される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記システム圧力p-(t)が経時的に定期的に監視される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
物体の輸送のためにバキュームリフタを動作する真空システムにおける持ち上げプロセスで省エネルギーを可能にする自動圧力レベル適合システムであって、
前記真空システムは、圧縮空気流により駆動される真空生成装置であって、真空室を介して前記真空システムの一部となり、前記バキュームリフタと流通接続されるように構成され、これにより、前記圧縮空気流により真空を前記バキュームリフタに供給し、システム圧力p-(t)を監視する圧力センサが前記真空室内に配置される真空生成装置と、
メインコントローラに電気的に接続され得る真空システムコントローラであって、前記真空生成装置に対して制御および通信を行い、前記圧力センサと通信するように構成され、複数の監視ポイントで前記測定されたシステム圧力p-(t)を監視するように構成された真空システムコントローラとを備え、
前記真空システムコントローラは前記持ち上げプロセスにおける各前記監視ポイントについて、前記持ち上げプロセス全体において前記物体を保持するのに必要な真空レベル(P-)を調整するように構成されることを特徴とし、
前記真空システムコントローラは前記バキュームリフタによって動かされている物体の加速度(Oacc)を測定するように構成され、
前記真空システムコントローラは前記加速度(Oacc)に応じて前記必要な真空レベル(P-)を調整するように構成される、システム。
【請求項11】
前記真空システムコントローラは、基準信号を計算するように構成され、前記基準信号は計算された真空レベル(p-)であって、これらの真空レベル(p-)は、前記持ち上げプロセスにおける各前記監視ポイントについて、前記物体を保持するのに必要な最小真空レベルである、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記システム圧力p-(t)が連続的に監視され、変動が自律的に検出される、請求項10または11に記載のシステム。
【請求項13】
前記システム圧力p-(t)が定期的に監視され、変動が自律的に検出される、請求項10または11のいずれかに記載のシステム。
【請求項14】
通気部をさらに備え、前記通気部はニードル弁を備える、請求項10から13のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バキュームリフタに適用可能な負圧を生成するために、圧縮空気によって駆動される真空生成装置を備えるマテリアルハンドリングシステムの制御方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は概して、1つ以上のバキュームリフタを有するマテリアルハンドリングシステムに関し、より詳細には、そのような真空システムの制御に関する。実質的に平らな物体またはパネルなどの物体と係合するように移動し、当該物体を持ち上げて、目的の場所に動かす、吸引カップなどのバキュームリフタを有する真空システムを含むマテリアルハンドリングシステムを提供することが知られている。バキュームリフタカップを動かして物体と係合させ、真空生成器を作動させて物体と吸引カップの間に真空を作ることで、物体を目的の場所に輸送する際に、吸引リフタに保持されるようにしてもよい。このようなマテリアルハンドリングシステムは、1つ以上の作業ステーションの一部であってもよい。
【0003】
本明細書では、「真空システム」は、物体を輸送するための真空システムを指す。
【0004】
バキュームリフタで生成される真空は、真空システム内の真空生成装置によって提供される。これにより、加圧空気が当該装置の真空生成器に供給または提供される。
【0005】
真空生成器への空気供給が停止され、真空が生成されない場合、真空システム内の真空は通常、真空システムをシステム外の大気に接続する通気部を介して排出される。それにより、真空がシステムと吸引カップ内から十分に放出されると、吸引カップが物体から離脱され得る。
【0006】
バキュームリフタを使用する場合、空気消費量は重要な検討事項である。リフタを自動化用途に則した手段とするには、消費量を最小限に抑える必要がある。漏れが生じない材料の場合、真空およびバキュームリフタは、物体を持ち上げるのに効果的な方法となる。本明細書では、これを「真空持ち上げプロセス」とも称する。必要な真空レベルに達したら、真空レベルを下げずにシステムを停止できる。ただし、漏れが生じる物体を取扱う場合、空気消費量が懸念され得る。
【0007】
したがって、漏れの生じる用途に使用される真空は、必要なレベルに対して多すぎることが多い。
【0008】
業界では現状、持ち上げプロセスをある程度動的に制御可能である。この方法では、システムが必要な真空レベルを作成してから停止する。レベルが最小値まで低下すると、真空システムが再び起動される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ただし、この手法では、様々な持ち上げ段階が考慮されていない。
【0010】
我々の知る限りでは、この問題を適切に解決する解決策は見つかっていない。
【0011】
本発明の目的は、上述の欠点を克服するか、少なくとも軽減するようなシステムにおける改善された真空システムおよび方法を実現することである。
【0012】
物体を輸送するための真空システムには、1つ以上の通気部、典型的にはバキュームグリッパーでの真空生成を作動させる弁が含まれる。そのような通気部は、典型的には電気的に(例えばソレノイドにより)開放され、これにより、真空生成器に空気が通り、バキュームグリッパーに真空圧が生成される。通常、真空システムは機械的に(例えばばね装置または磁石により)閉鎖され、これにより、少なくとも所定の真空圧が実現された状態、および/または真空圧を生成するべきではない状態で、真空生成器に空気を通さないようにする。通気部が閉じられると、通気部による電力消費はなくなるか、少なくともほぼなくなる。したがって、真空システムは通常、真空システムの通気部に電力を供給しないことでエネルギーを節約するための省エネルギー(ES)機能を備え得る。通常、方法と真空システム、典型的には省エネルギー(ES)機能を制御するための真空システムの真空システムコントローラにおいて、制御信号が使用される。上述のES機能は、圧力間隔を定義する真空圧レベル設定を利用する。これにより、最小圧力レベルが検出されたときにのみ真空生成が起動され、真空生成が停止する所定の最大圧力レベルまで真空圧を上げることが求められる。
【0013】
真空レベルを動的に変更できる動的に制御されるシステムを作成することにより、圧縮空気の消費量をある程度抑えられるが、持ち上げプロセス全体での抑制はなされない。
【0014】
この問題を適切に解決する解決策は見つかっていない。動的制御に使用可能な製品が存在するが、通常、そのような製品は電磁弁を使用する。ここで問題は、電磁弁の寿命が極めて短くなるということである。これは頻繁な使用による過熱が原因であることが多い。
【0015】
上述の手法では、持ち上げプロセス全体における様々な持ち上げ段階が考慮されておらず、これにより電磁弁の寿命が極めて短くなることが多い。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の目的の1つは、上述の欠点を克服する、または少なくとも軽減するような真空システム内の真空生成装置および弁を制御するための真空システムおよび真空システムの方法を提供することである。これは、持ち上げプロセス全体における様々な持ち上げ段階を考慮するもので、好ましくはこれによりさらに弁の寿命が延びる。
【0017】
持ち上げプロセスの段階に応じて、真空システム、特にバキュームリフタに必要な真空レベルは異なる。例えば物体を上方に加速するのに必要なレベルは、物体を下降させる場合よりも高くなる。物体を持ち上げるという観点から、持ち上げプロセス全体で、必要な真空レベルを動的に調整することにより、空気消費量を抑えることができ得る。
【0018】
上記の目的は、独立請求項の態様および実施形態による本発明によって達成される。好ましい実施形態は、従属請求項に記載される。
【0019】
一実施形態によれば、物体の輸送のためにバキュームリフタを動作させる真空システムにおいて、持ち上げプロセスにおける省エネルギーを可能にする自動圧力レベル適合のための方法が提供される。真空システムは、圧縮空気流によって駆動される真空生成装置を備える。真空システムの一部である真空室を介した真空生成装置は、圧縮空気流によりバキュームリフタに真空が供給されるように、バキュームリフタと流通接続するように構成される。システム圧力を監視するための圧力センサが、真空室内に構成される。真空システムの真空システムコントローラは、メインコントローラに電気的に接続され得る。真空システムコントローラは、真空生成装置に対して制御および通信を行い、圧力センサと通信するように構成される。真空システムコントローラは、複数の監視ポイントで測定されたシステム圧力を監視するよう構成される。必要な真空レベルは、持ち上げプロセス全体中に、持ち上げプロセス全体中の各監視ポイントで物体を保持するために必要なとおりに調整される。
【0020】
本開示では、「持ち上げプロセス全体」は次のように定義される。
【0021】
第1の態様を含む第1の実施形態によれば、起動時にさらに基準信号が決定される。これは、持ち上げプロセス中に適用される真空が変動することを意味する。ここで、特に基準信号Srefが適切に決定されている場合、供給される圧縮空気を減らすことができる。
【0022】
別の実施形態によれば、物体の輸送のためにバキュームリフタを動作させる真空システムにおける持ち上げプロセスにおける省エネルギーを可能にする自動圧力レベル適合のシステムが提供される。真空システムは、圧縮空気流によって駆動される真空生成装置を備え、真空生成装置は、圧縮空気流によりバキュームリフタに真空を供給するために、真空システムの一部である真空室を介して、バキュームリフタと流通接続するように構成される。システム圧力を監視するための圧力センサは、真空室内に配置され、真空システムコントローラは、メインコントローラに電気的に接続され得る。真空システムコントローラは、真空生成装置に対して制御および通信を行い、圧力センサと通信するように構成され、真空システムコントローラは、複数の監視ポイントにわたって測定システム圧力を監視するように構成される。真空システムの真空システムコントローラは、持ち上げプロセス中に各監視ポイントの物体を保持するために必要な完全な持ち上げプロセス中に必要な真空レベルを調整するようにさらに構成される。
【0023】
別の実施形態によれば、真空システムの真空システムコントローラはさらに、本構成においては摩耗しにくい弁によって、持ち上げプロセス全体中で、必要な真空レベルを調整するように構成される。エジェクタへの入力空気圧は、ニードル弁を使用して調整される。ニードルは、そのねじ山とねじ付き弁本体により回転可能である。Oリングシールなどのシールは、空気漏れを最小限に抑えるために、ニードルをねじ山に対して密閉する。弁を閉じると、ニードルはポリオキシメチレン(POM)製の部品に突き当たる。この部品には、中央に孔が空けられている。POMは弁の所定の位置にねじ込むことができる。孔のサイズは、POMを変更することで、システムの必要な特性に合わせて調整できる。
【0024】
本発明は、様々な態様および実施形態に従って、非限定的な例として、作業ステーションと、吸引カップを備えたグリッパーを有し、省エネルギーの可能性を備えた人間工学的なバキュームリフタと、を伴う用途で起こりがちな問題を解決する。
【0025】
本発明は、本発明の実施形態が概略的に示される添付図面を参照して、以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態による真空システム10の概略図を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態によるニードル弁として実施された弁を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
物体を輸送するための真空システム自体は既知である。これは、1つ以上の通気部、典型的にはバキュームリフタで真空生成を作動させるための弁を含む。そのような通気部は、典型的には電気的に(例えばソレノイドにより)開放され、これにより、真空生成器に空気が通り、バキュームグリッパーに真空圧が生成される。通常、真空システムは機械的に(例えばばね装置または磁石により)閉鎖され、これにより、少なくとも所定の真空圧が実現された状態、および/または真空圧を生成するべきではない状態で、真空生成器に空気を通さないようにする。通気部が閉じられると、通気部による電力消費はなくなるか、少なくともほぼなくなる。したがって、真空システムは通常、真空システムの通気部に電力を供給しないことでエネルギーを節約するための省エネルギー(ES)機能を備え得る。通常、方法と真空システム、典型的には省エネルギー(ES)機能を制御するための真空システムの真空システムコントローラにおいて、動的制御信号が使用される。上述のES機能は、圧力間隔を定義する真空圧レベル設定を利用する。これにより、最小圧力レベルが検出されたときにのみ真空生成が起動され、真空生成が停止する所定の最大圧力レベルまで真空圧を上げることが求められる。
【0028】
真空レベルを動的に変更できる動的に制御されるシステムを作成することにより、圧縮空気の消費量をある程度抑えられる。
【0029】
まず、本発明の実施形態を示す
図1を参照して、物体の輸送のための真空システム10の形態を説明する。
【0030】
本明細書において、「バキュームリフタ」という用語は、「バキュームグリッパー」または「バキュームグリッパーツール」も含み、それらにより代替できるが、これら2つの用語は同じ種類のバキュームリフタを指し、これは複数のバキュームリフタも含み得る。
【0031】
真空システム10は、通気部(ここでは開閉弁1)、または圧縮空気流を制御する他の手段を介した圧縮空気流によって駆動される真空生成器3を備える。真空システム10の一部である真空室11を介した真空生成器3は、真空生成器3への圧縮空気流によりバキュームグリッパー6に真空を供給するために、真空システム10内の1つ以上のバキュームリフタ6と流通接続するように配置される。
図1では、線P
air sourceは、圧縮空気供給源AIR SOURCEからの開閉弁1を介した、真空生成器3への圧縮空気流の方向を示す。空気供給源AIR SOURCEは典型的には、圧縮空気を真空生成器3(つまり開閉弁1)に供給する。これにより、
図1に示すように、供給接続1aを介して、圧縮空気を真空システム10(典型的には真空室11内)に入れることができる。
【0032】
圧力センサ4は、システム圧力p-を監視するために、真空室11の内部に、または真空室11に、またはその中心に配置されている。真空システム10は、真空システムコントローラ5をさらに備える。これは省略して「コントローラ」とも呼ばれる。非限定的な例として、開閉弁1は、直接操作される電磁弁、あるいはパイロット弁として動作してもよい。即ち、パイロット弁を作動させ、真空生成器3および/または真空システム10に空気を供給してもよい。
【0033】
典型的には、コントローラ5は、信号V01を介して開閉弁1と、さらに圧力センサ4と通信するように構成される。真空システム10および/または真空生成器3は、コントローラ5および開閉弁1、ならびにシステム圧力センサ4(圧力計とも称する)と一体的に設けられてもよい。同センサは、真空システム10、特に真空室11のシステム-圧力P=p-の監視に使用可能である。あるいは、コントローラ5は、メインコントローラ7からコントローラ5への真空制御信号である信号通信U01を介して、メインコントローラ7により選択的に監視、制御され、さらに/あるいはメインコントローラ7と通信してもよい。信号V01は、開閉弁1への内部真空制御信号である。信号U01およびV01の値は、二値、例えば「1」または「0」、つまり「イチ」または「ゼロ」であってもよい。信号レベル「1」および「0」は、それぞれ「正」または「誤」とも解され得る。したがって、「1」が「正」に設定されている場合、「0」は「誤」に設定されており、「1」が「誤」に対応している場合、「0」は「正」に対応する。さらに、信号値「1」は「高」として特徴付けられ、信号値「0」は「低」として特徴付けられ得る。さらに、「1」および「0」以外の値も使用可能である。例えば、「1」と「-1」、「0」と「-1」等であってもよい。
【0034】
例えば、メインコントローラ7からコントローラ5への信号U01が「高」であれば、バキュームリフタ6が、持ち上げられる物体を吸着することにより取り付けられるように作動されるべきであることを意味する。一方、メインコントローラ7からコントローラ5への信号U01が「低」であれば、バキュームグリッパーツールが取り付けられた物体から離脱するように、グリッパーツール6を停止する必要があることを意味する。したがって、メインコントローラ7は、コントローラ5を介してバキュームリフタの物体への取り付けまたは離脱を制御する。コントローラ5は、基本的に開閉弁1を制御するが、場合によっては真空生成器3も、さらに場合によっては真空システム10の他の部位も制御する。
【0035】
典型的には、コントローラ5は、開閉弁1および真空生成器3を制御するために使用される既存のコントローラに実装された特定の制御アルゴリズムを含むコンポーネントによって定義および/または動作され得るが、真空システム10の他の部分もまた、同様である。
【0036】
一態様によれば、本開示は、真空システム10において、物体Oを持ち上げるために必要な真空レベルが持ち上げプロセスWc中に変化するという考えに基づいている。物体Oを上方に移動させる際の高い加速度の場合、静止しているまたは下方に移動している物体O用の真空レベルP-と比較して、より高い(通常は低い圧力P-)真空レベルP-が必要となる。
【0037】
図1の説明によって理解されるように、作業サイクルWcは、バキュームリフタが物体に適用されると開始し、物体から離脱されると終了する。
【0038】
バキュームグリッパーツールの新しい作業サイクルWcが開始されると、コントローラは真空生成を開始し、システムのシステム圧力P=p
-が時間t
1で、なし(0)からシステム圧力
【数1】
まで上昇する。コントローラ5がシステム圧力
【数2】
で開閉弁1を閉じることにより、真空生成が停止する。その結果、空気源から最初の開閉弁を通る空気の流れが止まる。システム、特にバキュームリフタの漏れにより、システム圧力P=p
-が低下する。システム圧力がp
-=ES
Lowに下がると、開閉弁1がコントローラ5によって開かれ、真空室11でのシステム圧力p
-の生成が開始され、供給接続1aからの開閉弁1を介した空気流P
air sourceを停止することで真空生成が停止するp
-=ES
Highに上昇する。システム圧力がp
-=ES
Lowまで低下すると、システム10とバキュームリフタ6の漏れにより、システム圧力p
-が再び低下し、コントローラによって開閉弁1が再び開かれ、真空室11でのシステム圧力p
-の生成が開始され、空気源から真空生成器3への開閉弁1を介した空気の流れを停止することで真空生成が停止するp
-=ES
Highに上昇する。システム圧力p
-をp
-=ES
Lowに下げ、システム圧力をp
-=ES
Highに上げるように真空室11でシステム圧力p
-の生成を開始することを含むこの繰り返しプロセスは、コントローラが離脱制御信号を送信するまで繰り返される。この信号は、輸送物体Oからバキュームリフタ6を離脱するためのものである。離脱制御信号は、空気(明示せず)をバキュームリフタ6に入れることにより、システム圧力p
-をなし、「0」に低下させるものである。バキュームリフタ6が作業ステーションの輸送経路(Wc)の終点で物体Oから離脱すると、コントローラ5または場合によってはメインコントローラ7がバキュームリフタ6を輸送経路の開始点または始点に戻す。そしてバキュームリフタ6の新しい作業サイクルWcが開始する。
【0039】
圧力センサ4は、測定された真空圧p-を、測定されたシステム圧力p-に応じた値の電気信号に変換する。
【0040】
典型的には、真空システムコントローラ5は、バキュームリフタ6によって動かされている物体の加速度Oaccを測定するように構成されている。真空システム10は、物体の加速度Oaccを考慮し、異なるいくつかのデータ変数から必要な真空P-を計算する。
【0041】
物体Oの加速度と質量とにより、持ち上げプロセスWc全体を通して物体Oを保持するのに必要な力が求められる。次に力特性により、この力と必要な真空P-とが関連付けられる。これにより、物体Oを保持するのに必要な最小量の真空P-が得られる一連の真空値が求められる。
【0042】
次に、一実施形態による方法100を示す
図2をさらに参照する。この方法は、真空システム10、特に、真空生成装置1に対して制御および通信を行い、圧力センサ4と通信するように構成された真空システムコントローラ5を含む。真空システムコントローラ5は、測定システム圧力P
-tを経時的に、複数の監視ポイントで監視するように構成される。方法100は、持ち上げプロセスWにおける各監視ポイントP
monについて、持ち上げプロセスW
c全体において物体Oを保持するのに必要な真空レベルP
-を調整すること101を含む。
【0043】
通常、新しい100a作業プロセスWcの開始時に、基準信号Srefが決定される100b。
【0044】
通常、方法100は、
バキュームリフタ6によって動かされている物体の加速度を測定すること102と、
基準信号Srefを計算すること104と、のうちの1つ以上を含む。
【0045】
ここで基準信号Srefは、計算された真空レベルP-である。これらの真空レベルP-は、持ち上げプロセスWc全体における各監視ポイントPmonについて、物体Oを保持するのに必要な最小真空レベルである。
【0046】
通常、基準信号を計算すること104は、3つの変数、即ち、加速度Objectacc、物体の質量Omass、およびバキュームリフタ6に使用されている特定のリフタパッドの力特性Oforce charを使用する104である。リフタパッドは典型的にはバキュームリフタパッドである。この種のリフタパッド自体は真空リフティング技術内でよく知られているため、本明細書ではより詳細に図示または説明しない。
【0047】
典型的には、力特性Oforce charは、真空レベル(P-)と力Oforce間の関連性のデータを収集することによって計算される102。
【0048】
典型的には、力および力特性Oforce charは、物体Oをバキュームリフタ6の真空パッドから引き離すことができる設定で動力計を使用して計算される102。
【0049】
典型的には、力と力特性Oforceを計算すること102において、バキュームリフタ6の真空パッドが把持力を失う特定の真空レベルP-が、バキュームリフタ6(特にリフタパッド)が物体を持ち上げるためにかけられる最大力Oforceとして計算される。
【0050】
上記の態様に加えて別の態様によると、一部の製品が持ち上げプロセス全体ではなくてもある程度の動的制御に使用できるが、これらの製品が電磁弁を使用することにさらなる問題がある。つまり、頻繁な使用による過熱が原因で、電磁弁の寿命が極めて短くなるという問題がある。
【0051】
ここで、本発明の実施形態による通気部1を示す
図3を参照する。
【0052】
別の実施形態によれば、システム10内の真空システムコントローラ5は、ニードル弁として実施された通気部1によって、持ち上げプロセス全体中に必要な真空レベルを調整するようにさらに構成される。即ち、この特定の実施形態では、エジェクタ3への入力空気圧P-は、ニードル弁として実施された通気部1を使用して調整される。
【0053】
図3は、ニードル弁1として実施された通気部1を示している。ニードル弁1は、ねじ山2´により、対応するねじ山付きハウジング(簡潔性のために、
図3では不図示)に回し入れることができるねじ山2´付きニードル2と、ねじ山付きニードル弁1のハウジング(不図示)とを有する。Oリング2´´は、空気漏れを最小限に抑えるために、ニードル2をねじ山2´に対して密閉する。弁1を閉じると、ニードル2は弁座2*に突き当たる。弁座2*は、例えばポリオキシメチレン(POM)製である。この弁座2*の中央には孔2**が開けられている。例えば、POMは弁1の所定の位置にねじ込むことができる。孔2**のサイズは、POMを変更することにより、システムに求められる特性に合わせて調整可能である。
【0054】
この弁1は、典型的には、コントローラ5、7に接続されたステッパーモーター12によって駆動され、これにより、弁1の位置Pvalveを正確に制御することができる。このコントローラ5、7は、典型的には、設置済みの真空センサ4を使用して、エジェクタ3から真空レベルを測定するマイクロコントローラ5、7である。コントローラ5、7は、ステッパーモーター12と弁1と共に、閉ループシステムを形成する。制御システム5の設定点を、真空システム10が実現可能な所望の真空レベルV-に設定することができる。
【0055】
コントローラ5は、真空生成装置30の開閉弁1を制御するために使用される既存のコントローラに実装された特定の制御アルゴリズムを含むコンポーネントによって定義および/または動作され得るが、真空システムの他の部分もまた、同様である。
【0056】
コントローラ5は、例えば真空生成器自体への信号V01、または真空生成装置3の開閉弁1により、真空が発生していない状態を示す。
【0057】
この方法は、真空生成装置が設けられ動作する真空システムの作業サイクル中の省エネルギーを可能にする。そのようなシステムはいずれも、
図1に示されている。この方法は、コンピュータプログラムソフトウェアの実行可能なコンピュータプログラム命令として、またはハードウェアとして実施され得る。当該コンピュータプログラムソフトウェアは、プログラマブルロジックコンピュータ(PLC)によって実行されると、プログラマブルロジックコンピュータに上記方法の各ステップを実行させる。上記の真空システムコントローラ(
図1の5)は、プログラマブルロジックコンピュータである。この方法は、真空システムコントローラ、または真空システムコントローラ装置を構成する前記コントローラと通信可能な別のPLCによって実行されてもよい。真空システムコントローラは、システム圧力P=p
-(t)=p
-を計算するため、真空生成装置に対して制御および通信を行い、さらに圧力センサと通信するように構成される。コントローラは、測定されたシステム圧力p
-を連続的に監視するように構成される。コントローラはさらに、作業サイクル中にシステム圧力時間微分D(t)=dp
-/dtを計算できる。
【0058】
従来技術と比較した他の利点としては、無駄がなく、および/または使いやすいことが挙げられる。非限定的だが、典型的には、1つのシステム圧力センサ4のみが使用されるため、追加のセンサおよび外部機能が必要ない。例えば、吸引カップなどの各バキュームリフタ6にはセンサは必要なく、上述のように中央に配置されたセンサまたは中央センサは1つのみでよい。
【0059】
メインコントローラ7ではなく真空システムコントローラ5に方法を担わせることは有利である。これらのコントローラ5、7は、バス配線(例えばケーブル)を介して互いに通信している。前記配線は、配線の長さによる遅延を伴うことが多い。そのような遅延は、真空システムの制御および動作の妨害を引き起こす、極めて重要なものとなり得る。ADL機能と方法を、メインコントローラよりも真空システムに近い真空システムコントローラに担わせる場合、この遅延はなくなる。
【0060】
コントローラ5または本発明の方法は、使用に際して手動の処理または設定を必要としない。従来技術の装置では、多くの場合、操作者による重労働、または操作者が大気への適切な通気を確保するために不必要に長い時間をかけて制御パラメータを設定する必要があることを考えると、これは有利である。
【0061】
この実施形態の利点としては、方法100および真空システムコントローラが継続的に適応し、使用時に実際に必要な場合にのみ、および必要な時間だけ作動されることが挙げられる。
【0062】
代替的実施形態によれば、または加えて、真空システムコントローラ5は、実際の使用時の個別のニーズによりよく応えられるように、操作者が手動で制御パラメータの調整が可能となるように適応されてもよい。
【0063】
真空システム圧力p-(t)を連続的または定期的に監視し、変動を自律的に検出することができる。
【0064】
図1に概略的に示された真空生成器3は、典型的にはエジェクタとして実現される。バキュームリフタ6は、吸引カップとして、または真空生成器3から共通して供給を受ける一組の吸引カップとして実現することができる。
【0065】
図1は、あくまで本発明を説明するために真空システムの一般的な構成を示している。当業者には明らかなように、実際の真空システムは、真空システムを所望の機能に適宜適応させるために追加の弁、センサ、および流通接続を含むことができることに留意されたい。
【0066】
本発明は、上記の教示から当業者によって理解され得る本発明の上記および他の修正を包含する添付の特許請求の範囲において定義される。
【0067】
例として、この例の真空システムコントローラを定義および/または操作するコンポーネントは、1つまたは複数の汎用または専用コンピューティングデバイス上で実行される専用ソフトウェア(またはファームウェア)によって実装されてもよい。そのようなコンピューティングデバイスとしては、1つまたは複数の処理ユニット、例えば、CPU(「中央処理装置」)、DSP(「デジタル信号プロセッサ」)、ASIC(「特定用途向け集積回路」)、ディスクリートアナログおよび/またはデジタルコンポーネント、またはその他のプログラム可能な論理デバイス、例えばFPGA(「フィールドプログラマブルゲートアレイ」)が挙げられる。これに関連して、コントローラ5の各「コンポーネント」は、アルゴリズムの概念的な同等物を指すことを理解されたい。コンポーネントと特定のハードウェアまたはソフトウェアルーチンとの間に常に一対一の対応があるわけではない。1つのハードウェアが異なるコンポーネントを備える場合がある。例えば、処理ユニットは、ある命令を実行するときにあるコンポーネントとして機能するが、別の命令を実行するときには別のコンポーネントとして機能する。加えて、1つのコンポーネントは、ある場合には1つの命令によって実装されてもよいが、いくつかの他の場合には複数の命令によって実装されてもよい。コンピューティングデバイスは、システムメモリと、システムメモリを含む様々なシステムコンポーネントを処理ユニットに結合するシステムバスとをさらに含んでもよい。システムバスは、メモリバスまたはメモリコントローラ、周辺バス、および任意の各種バスアーキテクチャを使用するローカルバスを含む各種バス構造のいずれでもよい。システムメモリは、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、およびフラッシュメモリなどの揮発性および/または不揮発性メモリの形態のコンピュータ記憶媒体を含んでもよい。専用ソフトウェアは、システムメモリ、または磁気メディア、光学メディア、フラッシュメモリカード、デジタルテープ、ソリッドステートRAM、ソリッドステートROMなど、コンピューティングデバイスに含まれる、またはコンピューティングデバイスにアクセス可能なその他のリムーバブル/非リムーバブルの揮発性/不揮発性のコンピュータストレージメディアに格納されていてもよい。コンピューティングデバイスは、シリアルインターフェース、パラレルインターフェース、USBインターフェース、ワイヤレスインターフェース、ネットワークアダプターなどの1つまたは複数の通信インターフェースを含んでもよい。1つまたは複数のI/Oデバイスが、通信インターフェースを介してコンピューティングデバイスに接続されてもよく、その例としては、キーボード、マウス、タッチスクリーン、ディスプレイ、プリンター、ディスクドライブなどが挙げられる。専用ソフトウェアは、記録媒体、読み取り専用メモリ、または電気搬送信号を含む、任意の適切なコンピュータ読み取り可能な媒体でコンピューティングデバイスに提供されてもよい。
【0068】
通常、コントローラ5と方法100を操作するためのすべての機能は、piCompactなどの1つのコンパクトパッケージに含まれている。