(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】コーヒー飲料
(51)【国際特許分類】
A23F 5/24 20060101AFI20240729BHJP
【FI】
A23F5/24
(21)【出願番号】P 2019236510
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100154988
【氏名又は名称】小林 真知
(72)【発明者】
【氏名】網野 紗与
(72)【発明者】
【氏名】西郷 亮子
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0216387(US,A1)
【文献】特開2003-310162(JP,A)
【文献】特開2009-148175(JP,A)
【文献】特開2014-183777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノカフェオイルキナ酸、フェルラキナ酸、及び、ジカフェオイルキナ酸を含有するコーヒー飲料であって、
40~75mg/100mlのカフェインを含み、
コーヒー飲料全量に対する、モノカフェオイルキナ酸、フェルラキナ酸、及び、ジカフェオイルキナ酸の総含有量(mg/100ml)をXとし、
コーヒー飲料全量に対する、ジカフェオイルキナ酸の含有量(mg/100ml)をYとしたときに、
Xが50~
130であり、
Xに対するYの比(Y/X)が0.02以下である、
コーヒー飲料。
【請求項2】
50~120mg/100mlのタンニンを含む、請求項1に記載のコーヒー飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浅煎り豆を使用したコーヒー飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
焙煎されたコーヒー豆から得られるコーヒー抽出液を含むコーヒー飲料は、世界各国で飲用されており、わが国においても身近な嗜好性飲料の一つとなっている。
コーヒー豆の焙煎方法は多岐にわたり、その方法に応じて焙煎コーヒー豆から得られるコーヒーの香気成分の組成は変動し、その香りや苦味、コク味、酸味、うま味などの風味は大きく変わる。したがって、コーヒー豆の焙煎状態に応じて、そのコーヒー豆から得られるコーヒー飲料を改良するための様々な手段が開発されている。
【0003】
また、コーヒー飲料の嗜好性を高めるために含有成分を調整するための様々な技術も開発されている。例えば、特許文献1においては、雑味が抑制され、苦味のキレ及び口腔香気が良好なコーヒー飲料を得るために、アセチルメチルピロールとジカフェオイルキナ酸類の含有量を所定の数値範囲に調整することが記載されており、その手段として、焙煎コーヒー豆と活性炭とを抽出器に仕込んでから抽出液を得ることが開示されている。また、特許文献2には、コーヒー成分の各要素をバランスよく調和させ、強烈な苦渋味を伴わず、コーヒー独特の豊かな香りや風味、コク味が濃厚であるコーヒー飲料を提供するために、コーヒー抽出液を加水分解酵素により酵素処理した後、タンニン及びカフェイン等の苦渋味成分をPVPP処理により吸着除去することが記載されている。
【0004】
また、コーヒー飲料における過酸化水素生成速度を低くするというアプローチから、例えば特許文献3においては、容器詰コーヒー飲料において、クロロゲン酸類の組成を調整して、開封後の過酸化水素生成速度が低く、安全性に優れた容器詰コーヒー飲料を提供できることが記載されている。
このように、コーヒー飲料の嗜好性や風味やハンドリング性を高めるために様々なアプローチから技術が改良されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2014/155746号パンフレット
【文献】特開2003-310162号公報
【文献】特開2003-204755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コーヒー飲料の分野において、容器詰コーヒー飲料、例えば缶コーヒーにおいて、浅煎り豆を用いたコーヒー商品は、クロロゲン酸の含有量が高くなることから渋みが強く出る傾向にあり、あまり商業的には流通していない。しかしながら、浅煎り豆を用いたコーヒー飲料は、深煎り豆を用いたコーヒー飲料とは異なる、フルーティーな香りを有し、特有の風味を有することから、浅煎り豆を用いたコーヒー飲料のニーズは低くなく、缶コーヒーとして流通することが求められている。
そこで、本発明の目的は、浅煎り豆特有の香りを保持したまま、渋味が抑えられた、後味の良いコーヒー飲料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、好ましい香味を有する浅煎り豆を用いたコーヒー飲料を作製するために、上述したクロロゲン酸類を除くことに着目し、その手段として吸着剤としてポリビニルポリピロリドン(PVPP)を選択した。しかしながら、検討過程において予想外にも、単にクロロゲン酸類の総量を低減させるのではなく、クロロゲン酸類のうち、ジカフェオイルキナ酸を低減させ、かつ、モノカフェオイルキナ酸、フェルラキナ酸、及びジカフェオイルキナ酸の総含有量を所定の数値範囲に調整することで、渋味を抑えながら、浅煎り豆ならではの香りやコーヒー感を有し、後味の良いコーヒー飲料が得られることを見出した。そして、鋭意研究を重ねて、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は以下の〔1〕~〔4〕のような態様を含む。
〔1〕モノカフェオイルキナ酸、フェルラキナ酸、及び、ジカフェオイルキナ酸を含有するコーヒー飲料であって、
コーヒー飲料全量に対する、モノカフェオイルキナ酸、フェルラキナ酸、及び、ジカフェオイルキナ酸の総含有量(mg/100ml)をXとし、
コーヒー飲料全量に対する、ジカフェオイルキナ酸の含有量(mg/100ml)をYとしたときに、
Xが50~150であり、
Xに対するYの比(Y/X)が0.02以下である、
コーヒー飲料。
〔2〕Xが、75~150である、前記〔1〕に記載のコーヒー飲料。
〔3〕50~120mg/100mlのタンニンを含む、前記〔1〕又は〔2〕に記載のコーヒー飲料。
〔4〕40~75mg/100mlのカフェインを含む、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載のコーヒー飲料。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、浅煎り豆特有の香りやコーヒー感を有しつつ、渋味が抑えられた、後味の良いコーヒー飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のコーヒー飲料は、クロロゲン酸類として、モノカフェオイルキナ酸、フェルラキナ酸、及びジカフェオイルキナ酸を含有する。そして、本発明のコーヒー飲料は、コーヒー飲料全量に対する、モノカフェオイルキナ酸、フェルラキナ酸、及び、ジカフェオイルキナ酸の総含有量(mg/100ml)をXとし、コーヒー飲料全量に対する、ジカフェオイルキナ酸の含有量(mg/100ml)をYとしたときに、Xが50~150であり、かつ、Xに対するYの比(Y/X)が0.02以下であることを特徴とする。本発明におけるXの範囲は、浅煎り豆から中煎り豆を用いて得られるコーヒー飲料の特徴である。さらに、Xは、下限が60であり、上限が140であることがより好ましく、下限が75であり上限が130であることが特に好ましい。Xが50未満であると、浅煎り豆特有の香気が失われる場合があり、Xが150超過であると、生豆特有の青臭さが強く感じられ飲みづらくなる場合がある。また、Y/X比は、0.015以下であることがより好ましく、0.010以下であることが特に好ましい。Y/X比が0.02超過であると、渋味が強く感じられ後味が悪くなる場合がある。なお、本発明におけるクロロゲン酸類の分析値は、後述する本実施例で示された方法を採用することができる。
ここで、本発明におけるコーヒー抽出液とは、コーヒー豆由来の成分を含有する液体を意味し、例えば、粉砕した焙煎豆を水や温水を用いて抽出した溶液が挙げられる。また、該溶液を濃縮したコーヒーエキスや該溶液を乾燥させたインスタントコーヒーも含まれる。また、該抽出液にはクロロゲン類が含まれる。また、本発明におけるコーヒー飲料とは、上記コーヒー抽出液を含む飲料を意味する。
【0011】
本発明のコーヒー抽出液の原料であるコーヒー豆の焙煎度合いは、いわゆる浅煎りから中煎りであることが好ましく、浅煎りであることがより好ましい。その際、焙煎コーヒー豆の焙煎度合を示すAgtron値は、40~120(ROAST ANALYSER RoAmi(TRA-3000))であることが好ましく、かつ/又は、L値は16~28であることが好ましく、20~26であることがより好ましい。ここで、L値とは、焙煎コーヒー豆を粉砕したコーヒー顆粒の表面色を数値化したもので、明度の指標となる値である(0が黒、100が白)。L値は、例えば色彩色差計(例えば、コニカミノルタ(株)社製型番:CR-410)を用いて測定することができる。本発明において使用されるコーヒー豆は、アラビカ種でもロブスタ種でもよく、特に限定されない。例えば、当該生豆としては、メキシコ、グアテマラ、ブルーマウンテン、クリスタルマウンテン、コスタリカ、コロンビア、ベネズエラ、ブラジル・サントス、ハワイ・コナ、モカ、ケニア、キリマンジャロ、マンデリン、及びロブスタから選択される豆、又はこれらの混合豆が挙げられる。なお、本発明において使用されるコーヒー豆の挽き具合については、特に限定されないが、中~粗挽きであることが好ましく、中挽きであることがより好ましい。
【0012】
また、本発明のコーヒー抽出液は、コーヒー豆50~250g、より好ましくは100~200gに対して1Lの水で抽出されるのが好ましく、抽出時の水は、60~95℃であることが好ましい。また、本発明のコーヒー抽出液の抽出時間は30~120分間であることが好ましい。本発明のコーヒー抽出液の抽出方法は特に限定されず、例えば一般的なドリップ法や浸漬法、エスプレッソ法などで抽出されうる。
ここで、本発明のコーヒー飲料においては、コーヒー抽出液中の可溶性固形分濃度をBrix(ブリックス)値と同義とし、抽出率を、「得られた抽出液の質量×可溶性固形分濃度(%)÷使用したコーヒー豆の質量」と定義した場合に、抽出率が20~30%になるように調整されることが好ましい。本発明におけるBrix値の測定方法は、後述する本実施例で示された方法を採用することができる。
一般的に、コーヒー抽出液中の可溶性固形分濃度が上がると、味が濃くなり、甘みや口当たりを感じやすくなる一方で、苦味や渋味が強くなり、抽出率が上がると渋みを感じやすく、かつ酸味を感じにくくなる傾向にある。したがって、本発明のコーヒー飲料はこれらの傾向を加味しつつ、可溶性固形分濃度や抽出比率を上記の条件に設定することが望ましい。
【0013】
本発明のコーヒー飲料における、クロロゲン酸類の濃度を調整する方法としては、例えば上記のようなコーヒー抽出液にPVPP(ポリビニルポリピロリドン)を0.05~5質量%の量で添加し、撹拌後、10秒間~2時間反応させて、PVPPを除去する方法が挙げられる。また、本発明のコーヒー飲料においては、コーヒー抽出液にモノカフェオイルキナ酸、フェルラキナ酸、及び/又は、ジカフェオイルキナ酸を適宜添加して調整してもよい。また、本発明のコーヒー飲料においては、様々な条件下で得られた、様々な比率でモノカフェオイルキナ酸、フェルラキナ酸、及び、ジカフェオイルキナ酸を有するコーヒー抽出液を複数混合することで調整してもよい。
また、本発明のコーヒー飲料は、50~120mg/100mlのタンニン及び/又は40~75mg/100mlのカフェインを含むことができる。これらタンニン及び/又はカフェインの量は、浅煎り豆由来のコーヒー飲料の特徴の1つであり、これらの範囲に設定することにより、適度なコーヒー感を付与できて、苦渋味等の後残りがしにくくなる。
【0014】
本発明のコーヒー飲料は、コーヒー抽出液からなるブラックコーヒーであってもよい。本発明のコーヒー飲料は、添加物を含まない状態において、先味の強さ、ボディの強さ、後味の強さ、香りの強さ、酸味の強さ、苦味の強さ、甘味の強さ、及び複雑味の強さなどの観点で官能評価した際に、バランスの良い味を提供することができる。
また、本発明のコーヒー飲料は、一般的に流通する容器詰コーヒー飲料、特に缶やペットボトル詰のコーヒー飲料に用いることができる。また、当該コーヒー飲料は、コーヒー抽出液以外にも、1又は2種以上の糖分、抗酸化剤、pH調整剤、酸味料、香味成分、乳分等を添加してもよい。また、本発明の目的を損なわない範囲で、各種栄養成分、抽出物、着色剤、希釈剤等の食品添加物を添加することもできる。
【0015】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これら実施例により何ら限定されるものでなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更させてもよい。
【実施例】
【0016】
[実施例1]
所定の焙煎度(L値24)のコーヒー豆 500g(中挽き)を5,000gの熱水(95℃)で、45分間かけて抽出し、抽出液A(未処理)を得た。なお、L値は、色彩色差計(コニカミノルタ(株)社製型番:CR-410)の測定値とし、以下の例でも同様とした。
得られた抽出液AにPVPP(ポリビニルポリピロリドン)を2.0質量%添加し、30分撹拌して吸着反応をさせたのち、濾紙濾過でPVPPを除去し、吸着処理をした抽出液Bを得た。これに重曹(pH調整剤)を0.1質量%濃度になるように添加し、缶に充填してレトルト殺菌をかけた。
【0017】
[実施例2]
所定の焙煎度(L値24)のコーヒー豆 500g(中挽き)を5,000gの熱水(95℃)で、45分間かけて抽出し、抽出液A(未処理)を得た。
また、得られた抽出液AにPVPPを4.0質量%添加し、30分撹拌して吸着反応をさせたのち、濾過でPVPPを除去し、吸着処理をした抽出液Cを得た。これに重曹(pH調整剤)を0.1質量%濃度になるように添加し、缶に充填してレトルト殺菌をかけた。
【0018】
[比較例1]
所定の焙煎度(L値24)のコーヒー豆 500g(中挽き)を5,000gの熱水(95℃)で、45分間かけて抽出し、抽出液A(未処理)を得た。これに重曹(pH調整剤)を0.1質量%濃度になるように添加し、缶に充填してレトルト殺菌をかけた。
【0019】
[比較例2]
所定の焙煎度(L値24)のコーヒー豆 500g(中挽き)を5,000gの熱水(95℃)で、45分間かけて抽出し、抽出液A(未処理)を得た。これに重曹(pH調整剤)を0.1質量%濃度になるように添加し、缶に充填してレトルト殺菌をかけた。
【0020】
≪測定・分析・官能評価方法≫
(1)固形分濃度測定と抽出率の調整
本実施例及び比較例においては、コーヒー抽出液中の可溶性固形分濃度をBrix(ブリックス)値と同義とした。本発明において当該可溶性固形分濃度は、例えば、商品名「RX-5000」((株)アタゴ社製)を使用して20℃で測定した固形分量とすることができる。そして、以下の式に基づいて抽出率を算定した。
抽出率=得られた抽出液の質量×可溶性固形分濃度(%)÷使用したコーヒー豆の質量
本実施例及び比較例においては、缶に充填する前の抽出液における抽出率が27.5%になるように調整された。
【0021】
(2)クロロゲン酸類の分析方法
クロロゲン酸類の分析にはHPLCを使用した。クロロゲン酸類の分析は、缶に充填した後の抽出液に対して行われた。結果を表1に示す。
装置の構成ユニットの型番は次のとおりだった。
UV-VIS検出器:SPD-M20A((株)島津製作所)
カラムオーブン:CTO-20AC((株)島津製作所)
ポンプ:LC-20ADSP((株)島津製作所)
オートサンプラー:SIL-20ACHT((株)島津製作所)
カラム:Cadenza CD-C18 内径4.6mm×長さ150mm、粒子径3μm(インタクト(株))。
【0022】
分析条件は次のとおりとした。
サンプル注入量:10μL
流量:1.0mL/min
UV-VIS検出器設定波長:325nm
カラムオーブン設定温度:35℃、
溶離液A:0.05M 酢酸、0.1mM 1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、10mM 酢酸ナトリウム、5(V/V)%アセトニトリル溶液
溶離液B:アセトニトリル。
【0023】
濃度勾配条件
時間 溶離液A 溶離液B
0.0分 100% 0%
10.0分 100% 0%
15.0分 95% 5%
20.0分 95% 5%
22.0分 92% 8%
50.0分 92% 8%
52.0分 10% 90%
60.0分 10% 90%
60.1分 100% 0%
70.0分 100% 0%
【0024】
HPLCでは、試料1mlを精秤後、溶離液Aにて10mLにメスアップし、メンブレンフィルター(GLクロマトディスク13A,孔径0.45μm,ジーエルサイエンス(株))にて濾過後、分析に供した。
クロロゲン酸類の保持時間(単位:分)
(A1)モノカフェオイルキナ酸:6.1、10.6、14.1の計3点
(A2)フェルラキナ酸:15.5、22.1、23.3の計3点
(A3)ジカフェオイルキナ酸:41.6、42.1、51.1の計3点。
ここで求めた9種のクロロゲン酸類の面積値から5-カフェオイルキナ酸を標準物質とし、質量%を求めた。
【0025】
(3)カフェインの分析方法
超高速液体クロマトグラフィー法により、下記の条件でカフェイン含有量を測定した。
装置:超高速液体クロマトグラフィー Nexeraシリーズ((株)島津製作所)
カラム:ZORBAX EclipsePlus C18 内径3.0mm×長さ100mm 粒子径1.8μm(アジレントテクノロジー(株))
移動相A:0.2%リン酸8%メタノール溶液
試料注入量:3μL
送液量:1.0mL/分
カラムオーブン温度:40℃
測定波長:280nm
【0026】
(4)タンニンの分析方法
タンニン含有量は、酒石酸鉄比色法にて測定した。
【0027】
(3)官能評価方法
各実施例/各比較例において、缶に充填した7日後に缶を開けてすぐの抽出液に対して専門パネル7名による、「香りのよさ・コーヒー感の強さ・舌に残る渋味の強さ・後味のよさ・まろやかさ」の5項目に関する評価を行った。比較例1を基準として(3点)、1~5点の5段階で評点をつけ、その平均値(小数点第2位を四捨五入)を官能評価結果とした。結果を表1に示す。
【0028】
表1:実施例1及び実施例2並びに比較例1及び比較例2の条件と結果
【表1】
【0029】
表1の結果から、実施例1及び2は香りのよさを維持したまま、または向上させつつ、舌に残る渋味の強さと後味の良さが改善される結果となった。また、まろやかさも強化された。コーヒー感の強さについても、比較例と同等であり、コーヒー飲料としてふさわしいものであった。
以上の結果から、本発明は、浅煎り豆由来の、嗜好性の高いコーヒー飲料を提供できることが明らかになった。
【0030】
[実施例3]
所定の焙煎度(L値20)のコーヒー豆 500g(中挽き)を5,000gの熱水(95℃)で、45分間かけて抽出し、抽出液A(未処理)を得た。
また、得られた抽出液AにPVPPを2.0質量%添加し、30分撹拌して吸着反応をさせたのち、濾過でPVPPを除去し、吸着処理をした抽出液Cを得た。これに重曹(pH調整剤)を0.1質量%濃度になるように添加し、缶に充填してレトルト殺菌をかけた。
【0031】
[実施例4]
所定の焙煎度(L値20)のコーヒー豆 500g(中挽き)を5,000gの熱水(95℃)で、45分間かけて抽出し、抽出液A(未処理)を得た。
また、得られた抽出液AにPVPPを4.0質量%添加し、30分撹拌して吸着反応をさせたのち、濾過でPVPPを除去し、吸着処理をした抽出液Cを得た。これに重曹(pH調整剤)を0.1質量%濃度になるように添加し、缶に充填してレトルト殺菌をかけた。
【0032】
[比較例3]
所定の焙煎度(L値20)のコーヒー豆 500g(中挽き)を5,000gの熱水(95℃)で、45分間かけて抽出し、抽出液A(未処理)を得た。これに重曹(pH調整剤)を0.1質量%濃度になるように添加し、缶に充填してレトルト殺菌をかけた。
【0033】
実施例3及び4並びに比較例3のコーヒー抽出液を、上述した≪測定・分析・官能評価方法≫の項に記載したのと同様に評価した(ただし、官能評価については、比較例3を基準として(3点)、実施例3及び4について、1~5点の5段階で評点をつけ、その平均値(小数点第2位を四捨五入)を官能評価結果とした。)。結果を表2に示す。
【0034】
表2:実施例3及び実施例4並びに比較例3の条件と結果
【表2】
【0035】
表2の結果から、実施例1及び2と比べて焙煎度を下げた実施例3及び4においても同様に、香りのよさを向上させつつ、舌に残る渋味の強さと後味の良さが改善される結果となった。また、まろやかさも強化された。コーヒー感の強さについても、比較例と同等であり、コーヒー飲料としてふさわしいものであった。
以上の結果からも、本発明は、浅煎り豆由来の、嗜好性の高いコーヒー飲料を提供できることが明らかになった。