(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】類別装置及び類別方法
(51)【国際特許分類】
G01S 13/90 20060101AFI20240729BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240729BHJP
G01S 7/41 20060101ALI20240729BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
G01S13/90 164
G06T7/00 350B
G01S13/90 191
G01S7/41
G06T1/00 285
G06T7/00 640
(21)【出願番号】P 2020000791
(22)【出願日】2020-01-07
【審査請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】三上 成
(72)【発明者】
【氏名】戸田 俊一
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-128558(JP,A)
【文献】特開2019-175142(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110633727(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110427981(CN,A)
【文献】特開2019-175462(JP,A)
【文献】特開2018-063524(JP,A)
【文献】特開2016-057164(JP,A)
【文献】特表2017-522548(JP,A)
【文献】特開2015-021824(JP,A)
【文献】特開2012-026976(JP,A)
【文献】特開2009-289078(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0184865(US,A1)
【文献】特開2005-315837(JP,A)
【文献】特開2004-093166(JP,A)
【文献】特開2003-331289(JP,A)
【文献】特開平11-281739(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0076438(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0061625(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0328838(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S7/00 - 7/42
G01S13/00-13/95
G08G 1/00-99/00
G06T1/00
G06T7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ISAR画像に基づいて艦船の類別をする類別装置であって、
艦船の動きとISAR画像の取得の優先度との関係を学習させて作成された第1の学習済みモデルにレーダ装置によって探索された複数の艦船の動きのデータを入力することによって、複数の艦船の間のISAR画像の取得の優先度を判定し、高い優先度を有する艦船のISAR画像の取得を前記レーダ装置に実施させる優先度判定部と、
ISAR画像の設定と前記類別の成否との関係を学習させて作成された第2の学習済みモデルに前記レーダ装置によって取得された複数の前記ISAR画像を入力することによって、前記レーダ装置によって取得された複数の前記ISAR画像の設定を調整する調整部と、
ISAR画像に写っている艦船の形状の視認性と前記類別の成否
との組み合わせから、類別に良好なISAR画像の特徴量を学習させて作成された第3の学習済みモデルに前記調整部によって調整された複数の前記ISAR画像を入力することによって、前記調整部によって調整された複数の前記ISAR画像の中から
類別のために良好なISAR画像を選択する選択部と、
艦船の特徴量と艦船の種類との関係を学習させて作成された第4の学習済みモデルに前記選択部によって選択された前記ISAR画像を入力することによって、前記選択部によって選択された前記ISAR画像に写っている艦船の種類を判別する判別部と、
艦船の特徴量と艦船の艦級との関係を学習させて作成された第5の学習済みモデルに前記選択部によって選択された前記ISAR画像を入力することによって、前記選択部によって選択された前記ISAR画像に写っている艦船の艦級を類別する類別部と、
を具備する類別装置。
【請求項2】
前記第1の学習済みモデルは、サポートベクトルマシンによる機械学習モデルである請求項1に記載の類別装置。
【請求項3】
前記動きは、艦船の進行方向、速さ、前記レーダ装置のアスペクト角を含む請求項1又は2に記載の類別装置。
【請求項4】
前記第2の学習済みモデル、前記第3の学習済みモデル、前記第4の学習済みモデル及び前記第5の学習済みモデルは、ディープラーニングによる機械学習モデルである請求項1乃至3の何れか1項に記載の類別装置。
【請求項5】
前記類別装置は、航空機に搭載される請求項1乃至4の何れか1項に記載の類別装置。
【請求項6】
ISAR画像に基づいて艦船の類別をする類別装置であって、
艦船の動きとISAR画像の取得の優先度との関係を学習させて作成された第1の学習済みモデルにレーダ装置によって探索された複数の艦船の動きのデータを入力することによって、複数の艦船の間のISAR画像の取得の優先度を判定し、高い優先度を有する艦船のISAR画像の取得を前記レーダ装置に実施させる優先度判定部を具備する類別装置。
【請求項7】
ISAR画像に基づいて艦船の類別をする類別装置であって、
ISAR画像の設定と前記類別の成否との関係を学習させて作成された第2の学習済みモデルにレーダ装置によって取得された複数の前記ISAR画像を入力することによって、前記レーダ装置によって取得された複数の前記ISAR画像の設定を調整する調整部を具備する類別装置。
【請求項8】
ISAR画像に基づいて艦船の類別をする類別方法であって、
艦船の動きとISAR画像の取得の優先度との関係を学習させて作成された第1の学習済みモデルにレーダ装置によって探索された複数の艦船の動きのデータを入力することによって、複数の艦船の間のISAR画像の取得の優先度を判定し、高い優先度を有する艦船のISAR画像の取得を前記レーダ装置に実施させることと、
ISAR画像の設定と前記類別の成否との関係を学習させて作成された第2の学習済みモデルに前記レーダ装置によって取得された複数の前記ISAR画像を入力することによって、前記レーダ装置によって取得された複数の前記ISAR画像の設定を調整することと、
ISAR画像に写っている艦船の形状
の視認性と前記類別の成否
との組み合わせから、類別に良好なISAR画像の特徴量を学習させて作成された第3の学習済みモデルに前記調整された複数の前記ISAR画像を入力することによって、前記調整された複数の前記ISAR画像の中から
類別のために良好なISAR画像を選択することと、
艦船の特徴量と艦船の種類との関係を学習させて作成された第4の学習済みモデルに前記選択された前記ISAR画像を入力することによって、前記選択された前記ISAR画像に写っている艦船の種類を判別することと、
艦船の特徴量と艦船の艦級との関係を学習させて作成された第5の学習済みモデルに前記選択された前記ISAR画像を入力することによって、前記選択された前記ISAR画像に写っている艦船の艦級を類別することと、
を具備する類別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、類別装置及び類別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
逆合成開口レーダ(ISAR:Inverse Synthetic Aperture RADAR)は、いわゆる画像化レーダ装置の一つとして知られている。ISARは、レーダの送信信号の反射エコーから、艦船等の目標を画像化する。この種のレーダ装置の多くは航空機に搭載され、遠方から目標を類別するために用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現状、ISAR画像から目標を類別するまでの処理には人(オペレータ)が介在している。したがって、オペレータに負担がかかりやすい。また、ISAR画像から目標を類別するまでの処理には機材操作への高い習熟度が求められるものもある。つまり、オペレータの習熟度によっては適切な類別を行うことができない場合もある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、省力化を図った類別装置及び類別方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、類別装置は、ISAR画像に基づいて艦船の類別をする類別装置であって、優先度判定部と、調整部と、選択部と、判別部と、類別部とを有する。優先度判定部は、艦船の動きとISAR画像の取得の優先度との関係を学習させて作成された第1の学習済みモデルにレーダ装置によって探索された複数の艦船の動きのデータを入力することによって、複数の艦船の間のISAR画像の取得の優先度を判定し、高い優先度を有する艦船のISAR画像の取得をレーダ装置に実施させる。調整部は、ISAR画像の設定と類別の成否との関係を学習させて作成された第2の学習済みモデルにレーダ装置によって取得された複数のISAR画像を入力することによって、レーダ装置によって取得された複数のISAR画像の設定を調整する。選択部は、ISAR画像に写っている艦船の形状の視認性と類別の成否との組み合わせから、類別に良好なISAR画像の特徴量を学習させて作成された第3の学習済みモデルに調整部によって調整された複数のISAR画像を入力することによって、調整部によって調整された複数のISAR画像の中から類別のために良好なISAR画像を選択する。判別部は、艦船の特徴量と艦船の種類との関係を学習させて作成された第4の学習済みモデルに選択部によって選択されたISAR画像を入力することによって、選択部によって選択されたISAR画像に写っている艦船の種類を判別する。類別部は、艦船の特徴量と艦船の艦級との関係を学習させて作成された第5の学習済みモデルに選択部によって選択されたISAR画像を入力することによって、選択部によって選択されたISAR画像に写っている艦船の艦級を類別する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一実施形態の類別システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、レーダ装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、サーバの構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、プロセッサの機能ブロック図である。
【
図5】
図5は、レーダ装置の動作を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、ISAR処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
図1は、一実施形態の類別システムの構成を示すブロック図である。類別システム1は、レーダ装置100と、サーバ200とを有している。レーダ装置100は、例えば航空機に搭載され、海上の対象物Oを探索するために用いられる。対象物Oは、例えば艦船である。サーバ200は、陸上に設置されている。
【0009】
図2は、レーダ装置100の構成を示すブロック図である。レーダ装置100は、送信機110と、サーキュレータ120と、アンテナ130と、受信機140と、プロセッサ150と、ストレージ160と、入力装置170と、表示装置180とを有している。
【0010】
送信機110は、所定の送信周期で送信信号を生成する。そして、送信機110は、生成した送信信号を、サーキュレータ120を介してアンテナ130から空間へ送信する。アンテナ130から送信された送信信号の一部は、目標で反射され、反射エコーとしてアンテナ130により受信される。
【0011】
サーキュレータ120は、送信信号と受信信号とを分離するための循環回路である。サーキュレータ120は、送信機110によって生成された送信信号をアンテナ130へ供給し、アンテナ130で受信された反射エコーを受信信号として受信機140へ供給する。
【0012】
受信機140は、送信機110の送信周期に基づいて受信信号からレーダビデオ信号を生成する。受信機140は、生成したレーダビデオ信号をプロセッサ150へ出力する。
【0013】
プロセッサ150は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のプロセッサが処理を実行するためのメモリとを含む。プロセッサ150は、レーダ装置100の動作を制御する。例えば、プロセッサ150は、レーダ装置100のモードを探索モードとISARモードとの間で切り替える。探索モードは、レーダ装置100を中心とした放射方向に向けて送信信号が送信されるように送信機110を制御することによって、海上の多数の対象物を探索するモードである。ISARモードは、プロセッサ150から指示された対象物に向けて送信信号が送信されるように送信機110を制御することによって、プロセッサ150から指示された対象物のISAR画像を取得するモードである。また、プロセッサ150は、探索モードにおいては、受信機140から入力された受信信号からPPI(Plane Position Indicator)画像を生成する。また、プロセッサ150は、ISARモードにおいては、受信機140から入力された受信信号からISAR画像を生成する。また、プロセッサ150は、探索モードのレーダ装置100において探索される多数の艦船の間の優先度を判定する。そして、プロセッサ150は、優先度の高い艦船のISAR画像の取得のためにレーダ装置100のモードをISARモードに切り替える。また、プロセッサ150は、レーダ装置100において生成された多数のISAR画像から、目標の艦級を類別するために良好なISAR画像を選択する。また、プロセッサ150は、選択したISAR画像から目標の艦級を類別する。プロセッサ150は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)又はDSP(Digital Signal Processor)等のデジタル信号処理器によって処理を行うように構成されていてもよい。また、プロセッサ150は、単一のCPU等で構成されていてもよいし、複数のCPU等で構成されていてもよい。
【0014】
ストレージ160は、レーダ装置100の動作に必要なプログラム、パラメータを記憶するための記憶装置である。また、ストレージ160は、艦船の優先度の判定、ISAR画像の選択、ISAR画像からの艦船の類別に用いられる学習済みモデルを記憶するための記憶装置である。ストレージ160は、ハードディスク、ソリッドステートドライブ等であってよい。学習済みモデルについては後で詳しく説明する。
【0015】
入力装置170は、レーダ装置100のオペレータからの操作を受け付けるためのインタフェースである。入力装置170は、キーボード、マウス、トラックボール、ジョイスティック、タッチパネル等であってよい。入力装置170は、オペレータからの操作に応じた操作信号を、プロセッサ150に供給する。プロセッサ150は、この操作信号に応じて各種の処理を行う。
【0016】
表示装置180は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等を備え、プロセッサ150で処理された信号に基づいて各種の画像を表示する。
【0017】
図3は、類別装置の一例としてのサーバ200の構成を示すブロック図である。サーバ200は、プロセッサ210と、ストレージ220と、入力装置230と、表示装置240とを有している。
【0018】
プロセッサ210は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のプロセッサが処理を実行するためのメモリとを含む。プロセッサ210は、サーバ200の動作を制御する。プロセッサ210は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)又はDSP(Digital Signal Processor)等のデジタル信号処理器によって処理を行うように構成されていてもよい。また、プロセッサ210は、単一のCPU等で構成されていてもよいし、複数のCPU等で構成されていてもよい。
【0019】
ストレージ220は、サーバ200の動作に必要なプログラム、パラメータを記憶するための記憶装置である。ストレージ220は、ハードディスク、ソリッドステートドライブ等であってよい。また、ストレージ220は、艦船の優先度の判定、ISAR画像の選択、ISAR画像からの艦船の類別に用いられる学習モデルを記憶するための記憶装置である。なお、学習モデルは、ストレージ220とは別の記憶装置に記憶されていてもよい。
【0020】
入力装置230は、サーバ200のオペレータからの操作を受け付けるためのインタフェースである。入力装置230は、キーボード、マウス、タッチパネル等であってよい。入力装置230は、オペレータからの操作に応じた操作信号を、プロセッサ210に供給する。プロセッサ210は、この操作信号に応じて各種の処理を行う。
【0021】
表示装置240は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等を備え、プロセッサ210で処理された信号に基づいて各種の画像を表示する。
【0022】
図4は、プロセッサ150の機能ブロック図である。プロセッサ150は、優先度判定部151と、調整部152と、選択部153と、判別部154と、類別部155とを有している。
【0023】
優先度判定部151は、艦船の間のISAR画像の取得の優先度を判定する。そして、優先度判定部151は、高い優先度の艦船のISAR画像を取得させるためにレーダ装置100の送信機110に対して指示をする。優先度判定部151は、例えばSVM(Support Vector Machine)による学習済みモデル161によって優先度を判定する。
【0024】
学習済みモデル161は、例えば、ストレージ160に記憶され、艦船の動きに関するデータを入力データとし、優先度の分類結果を出力するように構成された機械学習モデルである。艦船の動きに関するデータは、艦船の進行方向、艦船の速さ、艦船に対するレーダ装置100のアスペクト角(受信信号の到来角度)を含むベクトルデータであってよい。学習済みモデル161の学習は、サーバ200において行われる。学習に当たっては、進行方向、速さ、アスペクト角を含むベクトルデータのそれぞれに対して優先度のラベルが付けられる。この優先度は、例えばオペレータによる入力装置230の操作に従って付けられてよい。優先度は、例えば「高」、「低」の2つのクラスに分けられている。そして、ベクトルデータと優先度との組み合わせから、優先度「高」と優先度「低」との境界を表す識別面が学習される。サーバ200において生成された学習済みモデルは、学習済みモデル161としてレーダ装置100の例えばストレージ160に記憶される。優先度判定部151は、このような学習済みモデル161に基づき、入力された艦船の動きに関するデータから艦船の優先度を判定する。そして、優先度判定部151は、高い優先度を有する艦船のISAR画像を取得させるべく、送信機110にISARモードへの移行指示をする。
【0025】
ここで、例では艦船の動きに関するベクトルデータは、艦船の進行方向、艦船の速さ、レーダ装置100のアスペクト角の3つであるとしている。しかしながら、ベクトルデータは、これら3つ以外のデータを含んでいてもよい。また、優先度は、「高」、「低」の2つのクラスに分けられている。しかしながら、優先度は、3つ以上のクラスに分けられていてもよい。
【0026】
調整部152は、複数のISAR画像の設定を調整する。調整部152は、畳み込みニューラルネットワーク、ランダムフォレスト等を用いたディープラーニングによる学習済みモデル162によって調整のための判定をする。
【0027】
学習済みモデル162は、例えば、ストレージ160に記憶され、ISAR画像のデータを入力データとし、設定の調整量を出力するように構成された機械学習モデルである。設定は、例えば画像の輝度、コントラストを含む。学習済みモデル162の学習はサーバ200において行われる。学習に当たっては、ISAR画像のそれぞれに対して類別の成否のラベルが付けられる。つまり、後で説明する類別が正しく行われたISAR画像に対しては成功のラベルが付けられ、類別が正しく行われなかったISAR画像に対しては失敗のラベルが付けられる。艦船の類別が正しく行われたか否かは、例えばサーバ200のオペレータによる入力装置230の操作によって指定されてよい。そして、ISAR画像の設定と類別の成否との組み合わせから、類別のために良好な基準のISAR画像の設定が学習される。サーバ200において生成された学習済みモデルは、学習済みモデル162としてレーダ装置100の例えばストレージ160に記憶される。調整部152は、このような学習済みモデル162に基づき、入力されたISAR画像の設定を基準のISAR画像の設定に近づけるための設定の調整量を判定する。そして、調整部152は、判定した調整量に応じて入力されたISAR画像の輝度、コントラスト等を調整する。
【0028】
ここで、例ではISAR画像の設定は、輝度、コントラストの2つであるとしている。しかしながら、設定は、これら2つ以外を含んでいてもよい。また、設定は、レーダ装置100の個体差に係るデータを含んでいてもよい。例えば、基準のISAR画像にレーダ装置100の個体差に係るデータが関連付けられているとき、調整部152は、個体差によるISAR画像のずれも含めて調整してよい。
【0029】
また、学習のためのISAR画像の設定のデータは、オペレータによる入力装置230の操作によって与えられてもよい。この場合のISAR画像には、無条件で成功のラベルが付けられてよい。
【0030】
選択部153は、調整部152で調整された複数のISAR画像の中から、類別に適したISAR画像を選択する。選択部153は、畳み込みニューラルネットワーク等を用いたディープラーニングによる学習済みモデル163によってISAR画像を選択する。
【0031】
学習済みモデル163は、例えば、ストレージ160に記憶され、ISAR画像のデータを入力データとし、入力されたISAR画像が類別に適しているか否かの判定結果のデータを出力するように構成された機械学習モデルである。学習済みモデル163の学習はサーバ200において行われる。学習に当たっては、艦船の形状の視認性に関わるデータのそれぞれに対して類別の成否のラベルが付けられる。艦船の形状の視認性に関わるデータは、例えば艦船の全体が写っているISAR画像のデータ、艦船の一部のみが写っているISAR画像のデータ、艦船の向きの異なるISAR画像のデータといったように、同一の艦船(艦級)の各種の形状の異なるISAR画像のデータである。そして、艦船の形状の視認性に関わるデータと類別の成否との組み合わせから、類別に良好なISAR画像の特徴量が学習される。そして、学習済みモデル163は、入力されたISAR画像の特徴量が類別に良好なISAR画像の特徴量と一致しているときには類別に適している旨のデータを出力し、一致していないときには類別に適していない旨のデータを出力する。特徴点の検出と特徴量の抽出は、SIFT(Scale Invariant Feature Transform)等を用いて行われてよい。サーバ200において生成された学習済みモデルは、学習済みモデル163としてレーダ装置100の例えばストレージ160に記憶される。選択部153は、このような学習済みモデル163に基づき、入力されたISAR画像が、類別のために良好なISAR画像を選択する。
【0032】
判別部154は、選択部113で選択されたISAR画像に写っている艦船の種類を判別する。判別部154は、畳み込みニューラルネットワーク等を用いたディープラーニングによる学習済みモデル164によって艦船の種類を判別する。
【0033】
学習済みモデル164は、例えば、ストレージ160に記憶され、ISAR画像のデータを入力データとし、艦船の種類のデータを出力するように構成された機械学習モデルである。艦船の種類のデータは、例えば軍艦、商船といった各種の艦船の種類を示すデータである。学習済みモデル164の学習はサーバ200において行われる。学習に当たっては、各種の艦船が写っているISAR画像に対して艦船の種類を示すラベルが付けられる。そして、各種の艦船のISAR画像と艦船の種類との組み合わせから、艦船の特徴量と種類との関係が学習される。そして、学習済みモデル164は、入力されたISAR画像の特徴量と類似する特徴量を有するISAR画像を判定し、この類似する特徴量を有するISAR画像に関連付けられている艦船の種類を表すデータを出力する。特徴点の検出と特徴量の抽出は、SIFT等を用いて行われてよい。サーバ200において生成された学習済みモデルは、学習済みモデル164としてレーダ装置100の例えばストレージ160に記憶される。判別部154は、このような学習済みモデル164に基づき、入力されたISAR画像から、艦船の種類を判別する。判別部154は、判別された艦船が商船であるときには、レーダ装置100を探索モードに戻すべく、レーダ装置100に移行指示をする。
【0034】
ここで、例では艦船の種類は、軍艦と商船の2つであるとしている。しかしながら、艦船の種類は、これら2つ以外を含んでいてもよい。
【0035】
類別部155は、判別部154で商船でないと判別されたISAR画像に写っている艦船の艦級を類別する。類別部155は、畳み込みニューラルネットワーク等を用いたディープラーニングによる学習済みモデル165によって艦船の艦級を類別する。
【0036】
学習済みモデル165は、例えば、ストレージ160に記憶され、ISAR画像のデータを入力データとし、艦船の艦級のデータを出力するように構成された機械学習モデルである。学習済みモデル165の学習はサーバ200において行われる。学習に当たっては、各種の艦級の艦船が写っているISAR画像に対して艦級を示すラベルが付けられる。そして、各種の艦級の艦船のISAR画像と艦級との組み合わせから、艦船の特徴量と艦級との関係が学習される。そして、学習済みモデル165は、入力されたISAR画像の特徴量と類似する特徴量を有するISAR画像を判定し、この類似する特徴量を有するISAR画像に関連付けられている艦級を表すデータを出力する。特徴点の検出と特徴量の抽出は、SIFT等を用いて行われてよい。サーバ200において生成された学習済みモデルは、学習済みモデル165としてレーダ装置100の例えばストレージ160に記憶される。類別部155は、このような学習済みモデル165に基づき、入力されたISAR画像から、艦船の艦級を類別する。
【0037】
以下、類別システム1の動作を説明する。
図5は、レーダ装置100の動作を示すフローチャートである。ステップS1において、プロセッサ150は、探索モードで送信機110からアンテナ130を介して送信信号を送信させる。探索モードでは、例えばアンテナ130を回転させながら放射状に送信信号が送信される。このため、レーダ装置100を中心とした広範囲の探索が行われ得る。
【0038】
ステップS2において、プロセッサ150は、受信機140を介して受信される受信信号に基づいて、表示装置180にPPI(Plane Position indicator)表示をする。PPI表示では、プロセッサ150は、レーダ装置100を中心として探索されたそれぞれの艦船を示す輝点を平面図上に表示する。
【0039】
ステップS3において、プロセッサ150は、受信機140を介して受信される受信信号に基づいて、探索されたそれぞれの艦船の動きを算出する。艦船の動きは、前述したように、艦船の進行方向、艦船の速さ、艦船に対するレーダ装置100のアスペクト角を含む。艦船の進行方向及び速さは、例えば受信信号に基づいて算出される艦船の座標の時間変化から算出され得る。アスペクト角は、例えば受信信号の到来角度を推定することで算出され得る。
【0040】
ステップS4において、プロセッサ150は、優先度判定を行う。つまり、プロセッサ150は、探索結果として受信されたそれぞれの艦船の動きに関するデータを学習済みモデル161に入力し、探索されたそれぞれの艦船の優先度を取得する。そして、プロセッサ150は、例えば優先度の上位1位の艦船をISAR画像の取得の対象の艦船と判定する。ISAR画像の取得の対象の艦船は、優先度の上位1位の艦船に限るものではない。
【0041】
ステップS5において、プロセッサ150は、ISARモードで送信機110からアンテナ130を介して送信信号を送信させる。ISARモードでは、例えばプロセッサ150によって指定された艦船に向けて送信信号が送信される。
【0042】
ステップS6において、プロセッサ150は、ISAR処理を行う。ISAR処理の後、プロセッサ150は、
図5の処理を終了する。
【0043】
図6は、ISAR処理を示すフローチャートである。ステップS101において、プロセッサ150は、受信機140を介して受信される受信信号に基づいて、ISAR画像を生成する。
【0044】
ステップS102において、プロセッサ150は、ISAR画像の設定を調整する。つまり、プロセッサ150は、受信されたISAR画像のデータを学習済みモデル162に入力し、入力されたISAR画像の設定を基準のISAR画像の設定に近づけるための設定の調整量を取得する。そして、プロセッサ150は、調整量に応じて入力されたISAR画像の輝度、コントラスト等を調整する。
【0045】
ステップS103において、プロセッサ150は、調整したISAR画像のデータに基づいて、ISAR画像を表示装置180に表示させる。
【0046】
ステップS104において、プロセッサ150は、調整したISAR画像の中から類別に良好なISAR画像を選択する。つまり、プロセッサ150は、調整したISAR画像を学習済みモデル163に入力し、類別に適しているか否かのデータを取得する。類別に適している旨のデータを受け取ったとき、プロセッサ150は、入力したISAR画像を選択する。
【0047】
ステップS105において、プロセッサ150は、ISAR画像を選択できたか否かを判定する。ステップS105において、ISAR画像を選択できなかったと判定されたときには、処理はステップS101に移行する。この場合、プロセッサ150は、次のタイミングのISAR画像の取得を待ち受ける。ステップS105において、ISAR画像を選択できたと判定されたときには、処理はステップS106に移行する。
【0048】
ステップS106において、プロセッサ150は、選択したISAR画像に写っている艦船の種類を判別する。つまり、プロセッサ150は、選択したISAR画像を学習済みモデル164に入力し、艦船の種類のデータを取得する。
【0049】
ステップS107において、プロセッサ150は、判別した艦船の種類が商船であるか否かを判定する。ステップS107において、判別した艦船の種類が商船であると判定されたときには、処理はステップS108に移行する。ステップS107において、判別した艦船の種類が商船でないと判定されたときには、処理はステップS109に移行する。
【0050】
ステップS108において、プロセッサ150は、
図6の処理を終了させ、処理を
図5のステップS1に戻す。この処理は、判別した艦船の種類が目標とする艦船ではなかったときの処理である。
【0051】
ステップS109において、プロセッサ150は、選択したISAR画像に写っている艦船の艦級を類別する。つまり、プロセッサ150は、選択したISAR画像を学習済みモデル165に入力し、艦船の艦級のデータを取得する。艦級のデータは、選択したISAR画像に写っている艦船との類似度の最も高い艦船の艦級のデータだけであってもよいし、類似度の高い上位の複数の艦船の艦級のデータであってもよい。
【0052】
ステップS110において、プロセッサ150は、艦級の類別結果を例えば表示装置180に表示させる。その後、プロセッサ150は、
図6の処理を終了させる。この場合、
図5の処理も終了する。ここで、類別結果の表示手法は特定の手法に限定されない。例えば、類別結果は、表示装置180に表示されているISAR画像に重ねて表示されてもよいし、別のウインドウ上に表示されてもよい。さらには、類別結果は、類似度の順にリスト表示されてもよい。
【0053】
ステップS110において、類別結果が表示された後の最終的な確認は、レーダ装置100のオペレータによって行われてよい。この場合において、サーバ200は、類別が正しく行われていたか否かのデータの入力を待ち受けるように構成されていてもよい。類別が行われる毎にその成否のデータが入力されることにより、サーバ200における学習モデルにおける更なる学習が期待される。
【0054】
以上説明したように一実施形態によれば、ISAR画像の取得から類別結果を得るまでの一連の処理の大部分が機械学習モデルを用いることによって自動化される。これにより、オペレータの作業負荷は大幅に軽減される。また、オペレータの経験の有無によらずに一定の類別結果を得ることができる。
【0055】
また、実施形態ではISAR画像の設定の調整が行われた上で類別が行われる。これにより、レーダ装置100の個体差等が吸収された上で類別が行われる。したがって、類別の確度の向上が期待される。
【0056】
ここで、実施形態では、ISAR画像の取得、調整、選択、艦船の類別、艦級の類別のそれぞれがレーダ装置100において行われるとしている。これらの処理の幾つかはサーバ200において行われてもよい。
【0057】
また、前述した実施形態では、機械学習モデルは、サポートベクトルマシン又はディープラーニングによる学習によって生成されるとしている。学習は、ゼロショット学習等を組み合わせて行われてもよい。
【0058】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 類別システム、100 レーダ装置、110 送信機、120 サーキュレータ、130 アンテナ、140 受信機、150 プロセッサ、151 優先度判定部、152 調整部、153 選択部、154 判別部、155 類別部、160 ストレージ、161 学習済みモデル、162 学習済みモデル、163 学習済みモデル、164 学習済みモデル、165 学習済みモデル、70 入力装置、180 表示装置、200 サーバ、210 プロセッサ、220 ストレージ、230 入力装置、240 表示装置。