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特許7527804アルコール飲料、アルコール飲料の製造方法、及び、アルコール飲料の飲用感向上方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】アルコール飲料、アルコール飲料の製造方法、及び、アルコール飲料の飲用感向上方法
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/04 20190101AFI20240729BHJP
   C12G 3/06 20060101ALN20240729BHJP
【FI】
C12G3/04
C12G3/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020023779
(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公開番号】P2021126088
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 英敏
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/169100(WO,A1)
【文献】特開2011-142890(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0169691(US,A1)
【文献】特開2019-037205(JP,A)
【文献】特開2015-112032(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0064143(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナトリウムの含有量が40mg/100mL以上であり、ペクチンを含有するアルコール飲料であって、
液温20℃における粘度が1.62~10.00cpであるアルコール飲料。
【請求項2】
酸度が0.2g/100mL以上である請求項1に記載のアルコール飲料。
【請求項3】
前記ナトリウムの含有量が70mg/100mL以上である請求項1又は請求項2に記載のアルコール飲料。
【請求項4】
前記ナトリウムがクエン酸三ナトリウム由来である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のアルコール飲料。
【請求項5】
ナトリウムの含有量を40mg/100mL以上とし、ペクチンを含有させ、液温20℃における粘度を1.62~10.00cpとする工程を含むアルコール飲料の製造方法。
【請求項6】
ナトリウムの含有量が40~200mg/100mLであるアルコール飲料のもったり感とぬめり感とを低減させる飲用感向上方法であって、
前記アルコール飲料の液温20℃における粘度を1.50~10.00cpとするアルコール飲料の飲用感向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール飲料、アルコール飲料の製造方法、及び、アルコール飲料の飲用感向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコールを含有するアルコール飲料については、これまでにも、飲料の香味に着目した様々な発明が創出されている。
例えば、特許文献1には、イソアミルアルコールを1~300mg/L、キサンタンガムおよび/またはグルコマンナンを2~1000mg/L含有し、アルコール度数が8~30v/v%である容器詰めアルコール飲料が開示されている。
そして、特許文献1の実施例では、クエン酸三ナトリウムの含有量が0.01~0.03w/v%のアルコール飲料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-195570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、アルコール飲料として、塩味が強く、飲みごたえのあるものを創出すれば、一定数の消費者の嗜好に合致するようなアルコール飲料を提供できるのではないかと考えた。
よって、特許文献1の実施例で開示されているような一般的なアルコール飲料と比較して、ナトリウムの含有量が多く、塩味の強いアルコール飲料の創出を検討した。
【0005】
そして、本発明者が、ナトリウムの含有量の多いアルコール飲料の香味について詳細に検討したところ、味全体が重く残るような「もったりとした感覚」(もったり感)を受けるとともに、口腔内において「ぬるぬるとした感覚」(ぬめり感)を受けてしまうことを確認した。
【0006】
そこで、本発明は、もったり感とぬめり感とが低減されたアルコール飲料、アルコール飲料の製造方法、及び、アルコール飲料の飲用感向上方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、以下の手段により解決することができる。
(1)ナトリウムの含有量が40mg/100mL以上であり、ペクチンを含有するアルコール飲料であって、液温20℃における粘度が1.62~10.00cpであるアルコール飲料。
(2)酸度が0.2g/100mL以上である前記1に記載のアルコール飲料。
(3)前記ナトリウムの含有量が70mg/100mL以上である前記1又は前記2に記載のアルコール飲料。
(4)前記ナトリウムがクエン酸三ナトリウム由来である前記1から前記3のいずれか1つに記載のアルコール飲料。
)ナトリウムの含有量を40mg/100mL以上とし、ペクチンを含有させ、液温20℃における粘度を1.62~10.00cpとする工程を含むアルコール飲料の製造方法。
)ナトリウムの含有量が40~200mg/100mLであるアルコール飲料のもったり感とぬめり感とを低減させる飲用感向上方法であって、前記アルコール飲料の液温20℃における粘度を1.50~10.00cpとするアルコール飲料の飲用感向上方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るアルコール飲料は、もったり感とぬめり感とが低減している。
本発明に係るアルコール飲料の製造方法は、もったり感とぬめり感とが低減しているアルコール飲料を製造することができる。
本発明に係るアルコール飲料の飲用感向上方法は、ナトリウムの含有量が所定値以上であるアルコール飲料のもったり感とぬめり感とを低減させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るアルコール飲料、アルコール飲料の製造方法、及び、アルコール飲料の飲用感向上方法を実施するための形態(本実施形態)について説明する。
【0010】
[アルコール飲料]
本実施形態に係るアルコール飲料は、ナトリウムの含有量が所定値以上であって、液温20℃における粘度が所定範囲内となる飲料である。また、本実施形態に係るアルコール飲料は、酸度が所定値以上(又は所定範囲内)となっていてもよく、ペクチンを含有していてもよい。
ここで、アルコール飲料とは、アルコールを含有する飲料であり、特定の種類の飲料に限定されないものの、例えば、チューハイテイスト飲料が挙げられる。そして、このチューハイテイスト飲料とは、チューハイのような味わいを呈する飲料、つまり、チューハイの香味が感じられるように香味設計された飲料である。なお、チューハイの香味には、サワーやカクテルといった香味も含まれる。
そして、本実施形態に係るアルコール飲料は、ナトリウムの含有量が多いことから、塩味の強いアルコール飲料、例えば、梅テイスト(梅干テイストを含む)のアルコール飲料や、塩味と柑橘系の酸味とが融合した塩柑橘テイスト(塩レモンテイストなど)のアルコール飲料に適用するのが好ましい。
以下、本実施形態に係るアルコール飲料を構成する各要素について説明する。
【0011】
(アルコール)
本実施形態に係るアルコール飲料は、アルコールを含有している。
アルコールは飲用することができるアルコールであればよく、本発明の効果が阻害されない範囲であれば、種類、製法、原料などに限定されることがないが、蒸留酒又は醸造酒であることが好ましい。蒸留酒としては、例えば、焼酎、ブランデー、ウォッカ、ウイスキー等の各種スピリッツ、原料用アルコール等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。醸造酒としては、例えば、ビール、発泡酒、果実酒、甘味果実酒などを1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、本明細書においてアルコールとは、特に明記しない限り、エタノールのことをいう。
【0012】
(アルコール度数)
本実施形態に係るアルコール飲料のアルコール度数は、特に限定されず、1v/v%以上、2v/v%以上、3v/v%以上、4v/v%以上であればよく、また、15v/v%以下、13v/v%以下、11v/v%以下、10v/v%以下、9v/v%以下、8v/v%以下、7v/v%以下、6v/v%以下であればよい。
【0013】
本実施形態に係るアルコール飲料のアルコール度数は、例えば、国税庁所定分析法(訓令)3清酒3-4アルコール分(振動式密度計・ガスクロマトグラフ分析法)に基づいて測定することができる。
【0014】
(ナトリウム)
ナトリウム(Na)は、アルコール飲料に対して、塩味を付与し、その結果、飲みごたえを増強させることができる。
本発明者は、このナトリウムをアルコール飲料に所定量以上含有させると、もったり感とぬめり感とを生じさせてしまうことを確認した。
【0015】
ナトリウムの含有量は、40mg/100mL以上が好ましく、50mg/100mL以上、60mg/100mL以上、70mg/100mL以上、75mg/100mL以上がより好ましい。ナトリウムの含有量が所定値以上であることによって、アルコール飲料に塩味が付与されるだけでなく、課題(もったり感とぬめり感)が明確化する。
ナトリウムの含有量は、200mg/100mL以下が好ましく、150mg/100mL以下、140mg/100mL以下、130mg/100mL以下、120mg/100mL以下、110mg/100mL以下、100mg/100mL以下、90mg/100mL以下、85mg/100mL以下がより好ましい。ナトリウムの含有量が所定値以下であることによって、アルコール飲料として好適な香味とすることができる。
【0016】
本実施形態に係るアルコール飲料に含有するナトリウムの由来となる物質(塩類)は、特に限定されず、クエン酸三ナトリウム、塩化ナトリウム、L-アスコルビン酸ナトリウムなどを挙げることができる。これらの中でも、後記する実施例で実際に香味の評価を実施したクエン酸三ナトリウム、塩化ナトリウム、L-アスコルビン酸ナトリウムの少なくとも1つが好ましく、クエン酸三ナトリウムが特に好ましい。
【0017】
アルコール飲料のナトリウムの含有量は、例えば、原子吸光分析法によって測定することができる。
【0018】
(粘度)
粘度は、アルコール飲料の液温20℃におけるねばりの指標である。
本発明者は、驚くべきことに、粘度が、前記したナトリウムに起因する「もったり感」と「ぬめり感」とに大きな影響を与えることを確認し、粘度を所定範囲内に特定することによって、高ナトリウム含有量のアルコール飲料におけるもったり感とぬめり感とを低減させることを見出した。
【0019】
粘度は、1.50cp以上が好ましく、1.60cp以上、1.70cp以上、1.75cp以上、1.80cp以上がより好ましい。粘度が所定値以上であることによって、アルコール飲料のもったり感とぬめり感とを低減することができる。また、粘度が所定値以上であることによって、アルコール飲料の飲み込みやすさも向上させることができる。
粘度は、10.00cp以下が好ましく、8.00cp以下、6.00cp以下、5.00cp以下、4.80cp以下、4.00cp以下、3.00cp以下、2.00cp以下がより好ましい。粘度が所定値以下であることによって、アルコール飲料のもったり感の低減という効果を確保できるとともに、アルコール飲料としての香味の評価も好ましい状態とすることができる。
【0020】
アルコール飲料の粘度の測定方法については、対象となる飲料の液温を20℃とし、市販の粘度測定器を用いて測定することができる。
【0021】
粘度は、アルコール飲料における増粘剤の含有量によって制御することができる。そして、増粘剤については、特に限定されないものの、例えば、ペクチン、キサンタンガム、アラビアガム、グアーガム、寒天、マンナン、タマリンドガム、ローカストビーンガムなどを使用することができる。
【0022】
(ペクチン)
ペクチン(pectin)とは、ガラクツロン酸やそのメチルエステルが重合した高分子多糖類である。
本実施形態に係るアルコール飲料は、前記のように粘度が特定されていればよいが、ペクチンで粘度を制御する場合、ペクチンの含有量は、例えば、以下のとおりである。
ペクチンの含有量は、0.07w/v%以上が好ましく、0.08w/v%以上、0.09w/v%以上、0.10w/v%以上がより好ましい。ペクチンの含有量が所定値以上であることによって、アルコール飲料のもったり感とぬめり感とを低減することができる。また、ペクチンの含有量が所定値以上であることによって、アルコール飲料の飲み込みやすさも向上させることができる。
ペクチンの含有量は、0.80w/v%以下が好ましく、0.70w/v%以下、0.60w/v%以下、0.50w/v%以下、0.40w/v%以下、0.30w/v%以下、0.20w/v%以下がより好ましい。ペクチンの含有量が所定値以下であることによって、アルコール飲料のもったり感の低減という効果を確保できるとともに、アルコール飲料としての香味の評価も好ましい状態とすることができる。
【0023】
(キサンタンガム)
キサンタンガム(xanthan gum)とは、微生物であるキサントモナス キャンペストリス(Xanthomonas campestris)から生産される増粘多糖類である。
本実施形態に係るアルコール飲料は、前記のように粘度が特定されていればよいが、キサンタンガムで粘度を制御する場合、キサンタンガムの含有量は、例えば、以下のとおりである。
キサンタンガムの含有量は、0.007w/v%以上が好ましく、0.008w/v%以上、0.009w/v%以上、0.01w/v%以上がより好ましい。キサンタンガムの含有量が所定値以上であることによって、アルコール飲料のもったり感とぬめり感とを低減することができる。また、キサンタンガムの含有量が所定値以上であることによって、アルコール飲料の飲み込みやすさも向上させることができる。
キサンタンガムの含有量は、0.08w/v%以下が好ましく、0.07w/v%以下、0.06w/v%以下、0.05w/v%以下、0.04w/v%以下、0.03w/v%以下、0.02w/v%以下がより好ましい。キサンタンガムの含有量が所定値以下であることによって、アルコール飲料のもったり感の低減という効果を確保できるとともに、アルコール飲料としての香味の評価も好ましい状態とすることができる。
【0024】
(酸度)
酸度とは、クエン酸酸度(クエン酸相当量として換算した酸度の値)であり、アルコール飲料の酸味に関する指標である。
そして、本発明者は、アルコール飲料の酸度が、粘度によるもったり感とぬめり感との低減効果をさらに増強させることを確認した。
【0025】
酸度は、0.2g/100mL以上が好ましく、0.3g/100mL以上、0.4g/100mL以上、0.5g/100mL以上、0.6g/100mL以上、0.7g/100mL以上、0.8g/100mL以上がより好ましい。酸度が所定値以上であることによって、もったり感とぬめり感との低減効果をより増強させることができる。
酸度は、2.0g/100mL以下が好ましく、1.8g/100mL以下、1.5g/100mL以下、1.2g/100mL以下、1.1g/100mL以下、1.0g/100mL以下、0.9g/100mL以下が好ましい。酸度が所定値以下であることによって、アルコール飲料の香味の評価を好ましい状態とすることができる。
なお、酸度は、クエン酸をはじめとする酸味料によって制御することができ、後記する各酸味料を使用すればよい。
【0026】
アルコール飲料の酸度(クエン酸酸度)は、果実飲料の日本農林規格(平成28年2月24日農林水産省告示第489号)に定められた方法で求めることができる。具体的には、飲料を水酸化ナトリウム溶液(0.1mol/L)で中和滴定し、中和滴定において必要となった水酸化ナトリウム溶液の「滴定量(mL)」、滴定に使用した飲料の「重量(g)」、「0.0064」(0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液1mLに相当するクエン酸の重量(g))という定数などを用いて算出することができる。
【0027】
(発泡性)
本実施形態に係るアルコール飲料は、炭酸ガスを含有する発泡性のもの、つまり、炭酸飲料であるのが好ましい。ここで、本実施形態における発泡性とは、20℃におけるガス圧(全圧)が0.5kg/cm以上であることをいい、1.0kg/cm以上が好ましく、1.5kg/cm以上、2.0kg/cm以上、3.0kg/cm以上、3.5kg/cm以上がより好ましい。また、20℃におけるガス圧(全圧)は、5.0kg/cm以下、4.0kg/cm以下であるのが好ましい。
【0028】
(その他)
本実施形態に係るアルコール飲料は、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で飲料として通常配合される甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料、酸味料、塩類、食物繊維など(以下、適宜「添加剤」という)を含有していてもよい。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトースなどを用いることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームなどを用いることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどを用いることができる。酸味料としては、例えば、クエン酸、アジピン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL-リンゴ酸、DL-リンゴ酸ナトリウム、リン酸などを用いることができる。塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウムなどを用いることができる。食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ペクチン、ポリデキストロース、グアーガム分解物などを用いることができる。
【0029】
本実施形態に係るアルコール飲料は、チューハイテイスト飲料とする場合、フルーツフレーバー(フルーツ様の香りを付与するフレーバー)、果汁(果実を搾った汁)、果実エキス(果実又は果汁から水やアルコールなどを用いて当該果実の有効成分を抽出した抽出物)を含有させることもできる。そして、果汁としては、例えば、濃縮果汁、還元果汁、ストレート果汁といった各種果汁、果実ピューレ(火を通した果実あるいは生の果実をすりつぶしたり裏ごししたりした半液体状のもの)、これらの希釈液、濃縮液、混合液などを用いることができる。
果汁の由来となる果実(および、果実フレーバーや果実エキスの果実種)は、柑橘類果実である、レモン、ライム、ミカン、オレンジ、グレープフルーツ、ユズ、シークワーサー等や、バラ科果実である、梅、リンゴ、イチゴ、桃等、これら以外にも、ぶどう、プラム、ざくろ、ブルーベリー、カシス、クランベリー、マキベリー、いちご、アップル、ピーチ、マンゴー、パイナップル、キウイ、梨等といった従来公知の果実も挙げることができる。
なお、本発明の効果(もったり感の低減、ぬめり感の低減)は、フレーバー・果汁・果実エキスの香味タイプや香味の強弱から直接的な影響は受けず、少なくとも、当該効果が消失してしまうといったことはないと考えることから、フレーバーなどによる香味タイプは前記のとおり多様であってもよく、含有量についても特に限定されない。しかし、本発明のように塩味の強いアルコール飲料の場合、酸度の高い果実と香味の相性が良いため、酸度の高い果実である柑橘類果実や梅果実を用いるのがより好ましい。
【0030】
(容器詰めアルコール飲料)
本実施形態に係るアルコール飲料は、各種容器に入れて提供することができる。各種容器にアルコール飲料を詰めることにより、長期間の保管による品質の劣化を好適に防止することができる。
そして、容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル、紙容器、パウチ容器などを適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。
【0031】
以上説明したように、本実施形態に係るアルコール飲料は、もったり感とぬめり感とが低減している。
また、本実施形態に係るアルコール飲料は、飲み込みやすさが増強しているとともに、香味の評価にも優れている。
【0032】
[アルコール飲料の製造方法]
次に、本実施形態に係るアルコール飲料の製造方法を説明する。
本実施形態に係るアルコール飲料の製造方法は、混合工程と、後処理工程と、を含む。
【0033】
混合工程では、混合タンクに、水、ナトリウム、増粘剤(ペクチン、キサンタンガムなど)、酸味料、飲用アルコール、添加剤などを適宜投入して混合後液を製造する。
この混合工程において、ナトリウムの含有量や粘度などが前記した所定範囲内となるように各原料を混合し、調整すればよい。
【0034】
そして、後処理工程では、例えば、ろ過、殺菌、炭酸ガスの付加、容器への充填などの処理を必要に応じて選択的に行う。
なお、後処理工程のろ過処理は、一般的なフィルター又はストレーナーによって行うことができる。また、後処理工程の殺菌処理は、処理速度等の観点から、プレート殺菌によって行うのが好ましいが、同様の処理を行うことができるのであればこれに限定されることなく適用可能である。また、後処理工程の充填処理は、飲料品の製造において通常行われる程度にクリーン度を保ったクリーンルームにおいて充填するのが好ましい。そして、後処理工程での各処理の順序は特に限定されない。
【0035】
なお、混合工程及び後処理工程において行われる各処理は、RTD飲料などを製造するために一般的に用いられている設備によって行うことができる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態に係るアルコール飲料の製造方法は、もったり感とぬめり感とが低減しているアルコール飲料を製造することができる。
また、アルコール飲料の製造方法は、飲み込みやすさが増強しているとともに、香味の評価にも優れたアルコール飲料を製造することができる。
【0037】
[アルコール飲料の飲用感向上方法]
次に、本実施形態に係るアルコール飲料の飲用感向上方法を説明する。
本実施形態に係るアルコール飲料の飲用感向上方法は、ナトリウムの含有量が所定値以上であるアルコール飲料のもったり感とぬめり感とを低減させる飲用感向上方法であって、前記アルコール飲料の液温20℃における粘度を所定範囲内とする方法である。
なお、各成分の含有量等については、前記した「アルコール飲料」において説明した値と同じである。
【0038】
以上説明したように、本実施形態に係るアルコール飲料の飲用感向上方法は、ナトリウムの含有量が所定値以上であるアルコール飲料のもったり感とぬめり感とを低減させることができる。
また、本実施形態に係るアルコール飲料の飲用感向上方法は、ナトリウムの含有量が所定値以上であるアルコール飲料について、飲み込みやすさを増強させるとともに、香味の評価も優れたものとすることができる。
【実施例
【0039】
次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明について説明する。
【0040】
[サンプルの準備]
表に示す量となるように、ウォッカ、ナトリウム(クエン酸三ナトリウム、塩化ナトリウム、L-アスコルビン酸ナトリウムのうちのいずれか1種)、ペクチン、キサンタンガム、クエン酸、果糖ぶどう糖液糖、梅フレーバー、炭酸水、純水を適宜配合してサンプルを準備した。
なお、表の各サンプルについて、表に記載していない成分の含有量は、原則、サンプル間で統一した。ただし、表4に示すサンプル4-2、4-3は、クエン酸の含有量を変化させて、酸度を表に示す値に調製し、表6に示すサンプル6-1、6-2は、他のサンプルと異なり、別途、梅果汁、梅フレーバー、レモン果汁、レモンフレーバーを更に添加することによって、これらの成分の含有量を表に示す値に調製した。
そして、各サンプルの20℃におけるガス圧(全圧)は約2.1kg/cmとした。
【0041】
[試験内容]
前記の方法により製造した各サンプルについて、訓練された識別能力のあるパネル5名が下記評価基準に則って「もったり感」、「ぬめり感」、「飲み込みやすさ」、「アルコール飲料としての評価」について、1~5点の5段階評価で個別に点数付けし、その平均値を算出した。
なお、全ての評価は、サンプルを飲んで評価した。
【0042】
(もったり感:評価基準)
もったり感の評価は、サンプル1-2の5点を基準とし、「もったり感を全く感じない」場合を1点、「もったり感を非常に強く感じる(サンプル1-2と同程度である)」場合を5点と評価した。そして、もったり感については、点数が低いほど、低減されており好ましいと判断できる。
ここで、「もったり感」とは、味全体が重く残るようなもったりとした感覚である。
【0043】
(ぬめり感:評価基準)
ぬめり感の評価は、サンプル1-2の5点を基準とし、「ぬめり感を全く感じない」場合を1点、「ぬめり感を非常に強く感じる(サンプル1-2と同程度である)」場合を5点と評価した。そして、ぬめり感については、点数が低いほど、低減されており好ましいと判断できる。
ここで、「ぬめり感」とは、口腔内におけるぬるぬるとした感覚である。
【0044】
(飲み込みやすさ:評価基準)
飲み込みやすさの評価は、サンプル1-2の1点を基準とし、「非常に飲み込みにくい(サンプル1-2と同程度である)」場合を1点、「非常に飲み込みやすい」場合を5点と評価した。そして、飲み込みやすさについては、点数が高いほど、増強されており好ましいと判断できる。
ここで、「飲み込みやすい」とは、飲料を飲み込む際に引っかかるような感覚を受けない様子を示している。
【0045】
(アルコール飲料としての評価:評価基準)
アルコール飲料としての評価については、「アルコール飲料の香味として悪いと感じる」場合を1点、「アルコール飲料の香味として良いと感じる」場合を5点と評価した。
【0046】
[粘度、酸度]
サンプルの粘度は、サンプルの液温を20℃に調整した後、東機産業社製のB型粘度計(10cp未満は19号ロータ(L/Adp)、10cp以上は20号ロータ(M1)使用)を用いて60rpmの回転速度で測定した。
また、サンプルの酸度は、前記した中和滴定の方法に基づいて測定した。
【0047】
表に、各サンプルの配合量等を示すとともに、各評価の結果を示す。なお、表に示す各成分の数値は、最終製品における含有量である。また、表のナトリウムの含有量は、ナトリウムの由来となる各物質の添加量と、当該物質の式量とナトリウムの原子量とから算出した値である。そして、表中の粘度の項目における斜め罫線は、測定を実施していないことを示している。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
【表5】
【0053】
【表6】
【0054】
(結果の検討)
表1の結果から、アルコール飲料を本発明において希求する塩味の強いテイストとするためにナトリウムの含有量を多くすると(サンプル1-1→1-2)、もったり感とぬめり感とを非常に強く感じてしまうことが確認できた。
なお、サンプル1-1は、一般的な塩味レベルのアルコール飲料であって、もったり感とぬめり感との点数は低かったものの、そもそも本発明が対象とする塩味の強いアルコール飲料には該当しない。
【0055】
表2の結果から、粘度が所定範囲内となると、もったり感が低減するとともに(例えば、4.5点未満、好ましくは4点未満)、ぬめり感も低減し(例えば、4.5点未満、好ましくは4点未満)、飲み込みやすさが増強する(例えば、2点以上)ことが確認できた。言い換えると、表2の結果から、ペクチンの含有量が所定範囲内となると、もったり感とぬめり感とが低減するとともに、飲み込みやすさが増強することが確認できた。
そして、全ての評価を考慮すると、サンプル2-1~2-6の中でも、サンプル2-2~2-4(特に、サンプル2-3~2-4)について非常に好ましい結果が得られた。
【0056】
表3の結果から、ペクチンの代わりにキサンタンガムを含有させた場合であっても、粘度が所定範囲内となると、所望の効果(もったり感とぬめり感との低減、飲み込みやすさの増強)が得られることが確認できた。
つまり、本発明の所望の効果は、増粘剤の種類は特に問題とはならず、粘度に左右される効果であることが確認できた。
なお、表3のサンプル3-1と表2のサンプル2-3とを比較すると、キサンタンガムの含有量がペクチンの含有量の1/10程度で同じような粘度の値を示すとともに、同じような結果(もったり感、ぬめり感)となることも確認できた。
【0057】
表4の結果から、酸度が所定値以上となると、粘度に起因する所望の効果(もったり感とぬめり感との低減、飲み込みやすさの増強)が増強されることが確認できた。
【0058】
表5の結果から、ナトリウムの由来となる物資がクエン酸三ナトリウムとは異なる場合であっても、所望の効果(もったり感とぬめり感との低減、飲み込みやすさの増強)にはあまり影響はないことが確認できた。
つまり、本発明の所望の効果は、ナトリウムの由来となる物質の種類にはあまり左右されないことが確認できた。
ただ、サンプル5-1、5-2と比較して、サンプル4-1(2-3)の方が、飲み込みやすさの点数とアルコール飲料としての評価の点数とが高かった。
【0059】
表6の結果によると、梅果汁と梅フレーバーとを含有させたサンプル6-1と、レモン果汁とレモンフレーバーとを含有させたサンプル6-2と、サンプル4-1(2-3)との結果において、大きな差は確認できなかった。
この結果から、粘度に起因する本発明の所望の効果は、各種果汁やフレーバーの影響をあまり受けることなく発揮されることが確認でき、本発明は様々な香味タイプのアルコール飲料に適用できることがわかった。