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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】シートスライド装置及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/06 20060101AFI20240729BHJP
【FI】
B60N2/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020030347
(22)【出願日】2020-02-26
(65)【公開番号】P2021133769
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】521452902
【氏名又は名称】アディエント ユーエス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ミンホ
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2006-0133720(KR,A)
【文献】特開2005-119499(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0265463(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に延在し、前記第1の方向に延びるスリットを有するレールと、
前記スリットを通して外部に突出し、前記第1の方向の両方の縁部が前記第1の方向に対し傾斜した傾斜縁部とされた突出部を有すると共に前記第1の方向に往復移動可能なように前記レールに係合したスライダと、
前記レールにおいて、前記スリットを塞ぐ伏臥姿勢と、移動する前記突出部の通過を許容する起立姿勢との間で回動可能に支持され、前記第1の方向に並べて配置された板状の複数のフラップと、
前記レールにおいて、前記板状の複数のフラップそれぞれに対応して設けられ、各前記フラップを前記伏臥姿勢に向け回動付勢する複数の付勢部材と、
を備え、
前記フラップそれぞれは、前記第1の方向の両方の縁部が前記第1の方向に対し傾斜しており、傾斜した前記縁部が移動する前記突出部の前記傾斜縁部に当接して前記伏臥姿勢から前記起立姿勢に向け回動し、前記突出部が通過し当接が解除して前記起立姿勢から前記伏臥姿勢に復帰することを特徴とするシートスライド装置。
【請求項2】
前記レールは、前記フラップの前記起立姿勢からの前記伏臥姿勢を越える回動を規制するフラップ支持部を有することを特徴とする請求項1記載のシートスライド装置。
【請求項3】
前記複数のフラップは、前記スリットに対する一方側と他方側とに交互に備えられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のシートスライド装置。
【請求項4】
前記傾斜縁部に取り付けられ、前記傾斜縁部と同じ傾斜角度で前記フラップの縁部に当接するカバーを有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のシートスライド装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のシートスライド装置と、
前記シートスライド装置の前記突出部に連結されたシートクッションと、
を備えた車両用シート。
【請求項6】
前記シートクッションは、下部に、前記起立姿勢の前記フラップを前記伏臥姿勢の前記フラップよりも外部から見えにくくするよう囲うカバーを備えていることを特徴とする請求項5記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートスライド装置及び車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両などに搭載されシートを往復移動させるシートスライド装置には、通常、レールの隙間への異物進入を防止すると共にその隙間を覆って外観品位を向上させる構造が搭載される。その例として、自然状態でレールの隙間を覆い、シートを支持するスライダの通過の際に撓んで隙間から退避するゴムフラップを備える構造が知られている。
【0003】
また、他の例として、特許文献1に、レールの端部で巻き取り巻き出し可能とされ、レール内をスライダと共に移動する帯状の移動部材を設けた構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-201268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ゴムフラップは、ハイヒールの踵或いは傘の先端などの細く硬い部材の隙間への進入を完全には阻止できない。また、ゴムフラップは、経年変化により弾力性が劣化して、隙間を確実に覆えなくなり外観品位を維持できなくなること、及び異部材の進入を阻止できなくなることが懸念される。
【0006】
また、特許文献1に記載されたようなスライダと共に移動する帯状の移動部材を設ける構造は、巻き出し巻き取りに伴う抵抗及び移動部材とレールとの間の摺動抵抗により、車両用シートのスライド移動に伴う抵抗が大きくなってシート移動をスムースに行えなくなることが懸念される。
【0007】
このように、シートスライド装置及びそれを備えた車両用シートは、長期間、確実にレールの隙間が塞がれ、異部材の隙間内への進入を防止でき、シートスライド操作がスムースに行えることが望まれている。換言するならば、シートスライド装置は、高い外観品位と良好な使い勝手が長期間維持されることが望まれている。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、高い外観品位と良好な使い勝手が長期間維持されるシートスライド装置及び車両用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は次の構成を有する。
1) 第1の方向に延在し、前記第1の方向に延びるスリットを有するレールと、
前記スリットを通して外部に突出し、前記第1の方向の両方の縁部が前記第1の方向に対し傾斜した傾斜縁部とされた突出部を有すると共に前記第1の方向に往復移動可能なように前記レールに係合したスライダと、
前記レールにおいて、前記スリットを塞ぐ伏臥姿勢と、移動する前記突出部の通過を許容する起立姿勢との間で回動可能に支持され、前記第1の方向に並べて配置された板状の複数のフラップと、
前記レールにおいて、前記板状の複数のフラップそれぞれに対応して設けられ、各前記フラップを前記伏臥姿勢に向け回動付勢する複数の付勢部材と、
を備え、
前記フラップそれぞれは、前記第1の方向の両方の縁部が前記第1の方向に対し傾斜しており、傾斜した前記縁部が移動する前記突出部の前記傾斜縁部に当接して前記伏臥姿勢から前記起立姿勢に向け回動し、前記突出部が通過し当接が解除して前記起立姿勢から前記伏臥姿勢に復帰することを特徴とするシートスライド装置である。
2) 前記レールは、前記フラップの前記起立姿勢からの前記伏臥姿勢を越える回動を規制するフラップ支持部を有することを特徴とする1)に記載のシートスライド装置である。
3) 前記複数のフラップは、前記スリットに対する一方側と他方側とに交互に備えられていることを特徴とする1)又は2)記載のシートスライド装置である。
4) 前記傾斜縁部に取り付けられ、前記傾斜縁部と同じ傾斜角度で前記フラップの縁部に当接するカバーを有することを特徴とする1)~3)のいずれか一つに記載のシートスライド装置である。
5) 1)~4)のいずれか一つに記載のシートスライド装置と、
前記シートスライド装置の前記突出部に連結されたシートクッションと、
を備えた車両用シートである。
6)前記シートクッションは、下部に、前記起立姿勢の前記フラップを前記伏臥姿勢の前記フラップよりも外部から見えにくくするよう囲うカバーを備えていることを特徴とする5)に記載の車両用シートである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高い外観品位と良好な使い勝手が長期間維持される、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施形態に係るシートスライド装置の実施例であるシートスライド装置91の斜視図である。
図2図2は、シートスライド装置91が備えるレール1を示す部分斜視図である。
図3図3は、図2におけるS3-S3位置での断面図である。
図4図4は、シートスライド装置91が備えるフラップアッセンブリ3Aの組み立て図である。
図5図5は、フラップアッセンブリ3Aをレール1に取り付ける作業手順を示した組み立て図である。
図6図6は、車両に搭載されたシートスライド装置9及び周辺部材の、図1のS6-S6位置に対応した横断面図である。
図7図7は、シートスライド装置91の部分上面図である。
図8図8は、シートスライド装置91におけるフラップ3の起立状態を説明するための左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態に係るシートスライド装置を、実施例であるシートスライド装置91により説明する。説明の便宜上、上下左右前後の各方向を図1に矢印で示された方向に規定する。
【0013】
まず、シートスライド装置91の構成の概要を斜視図である図1を参照して説明する。
シートスライド装置91は、レール1,スライダ2,及び複数のフラップ3を有する。図1には、レール1の端部に強嵌合で取り付けられた前後一対のエンドキャップ4も記載されている。
【0014】
レール1は、金属の押出成形により形成されている。金属は、例えばアルミニウムである。
レール1は、前後方向(第1の方向)に延在し、スライダ2を前後方向に往復移動可能に収容するレール基部12と、レール基部12の下縁部から左方及び右方にそれぞれ張り出した板状のフランジ部11L,11Rを有する。
【0015】
スライダ2は、レール基部12内に収容され、外部から付与される力によって、レール基部12内を前後方向に移動可能とされている(矢印DRa参照)。
例えば、シートスライド装置91が車両に搭載された場合、スライダ2は、上部に、車両用シートとしてのシートクッション92(図8参照)が連結されてシートクッション92と共に前後動する。
【0016】
フラップ3は、平面視で山形形状を有する板状部材である。複数のフラップ3は、レール1のレール基部12の上端部の一方側である左側に整列して取り付けられた複数のフラップ3Lと、他方側である右側に整列して配置された複数のフラップ3Rとを含む。
レール1において、フラップ3Lの群とフラップ3Rの群とは、山形形状の頂部が互いに対向する向きで前後方向に半ピッチずれて設置されている。各フラップ3は、自然状態での伏臥姿勢から起立方向に弾性回動可能に設置されている。
フラップ3Lの群とフラップ3Rの群とは、前後方向に半ピッチずれていることにより、伏臥姿勢の状態で、一方の外形の山-谷と他方の外形の谷-山とが組み合わされ、隙間がほとんど生じないようになっている。
【0017】
各フラップ3は、スライダ2の移動に伴い起立方向に回動し、スライダ2の通過を許容し、スライダ2の通過後に自ずと元の伏臥姿勢に復帰する。
エンドキャップ4は樹脂で形成され、レール1の端部に強嵌合ではめ込まれている。
【0018】
各部材について詳述する。
まず、レール1について、図2及び図3を参照して詳述する。図2は、レール1の部分斜視図であり、図3図2におけるS3-S3位置での断面図である。
【0019】
レール1は、左右方向の中心線CL1に対し左右対称形状で押出成形された成形品に対し、二次加工の切断で所定長さとし、切削によって上部に切り欠き13c,14cを交互に設けたものである。
図3に示されるように、レール1は、横断面形状として概ね矩形枠状に形成されたレール基部12と、レール基部12の下端から左方へ板状に張り出したフランジ部11Lと右方へ板状に張り出したフランジ部11Rとを有する。
フランジ部11L,11Rには、複数の貫通孔11aがそれぞれ形成されている。
【0020】
レール基部12は、底部12aと、底部12aの左端から傾斜支持部12b1を経て上方に延びる左側壁12b及び右端から傾斜支持部12c1を経て上方に延びる右側壁12cとを有する。
また、レール基部12は、左側壁12bの上下方向の中央やや上方から中心線CL1に向かって右上方に延びるフラップ支持部13と、右側壁12cの上下方向の中央やや上方から中心線CL1に向かって左上方に延びるフラップ支持部14とを有する。
また、レール基部12は、左側壁12b及び右側壁12cの上端部からそれぞれ左方及び右方に張り出した左サイドガード12f及び右サイドガード12gを有する。
【0021】
左側壁12bの上部とフラップ支持部13との間には、上方から下方に抉られた溝部12hが形成されている。
右側壁12cの上部とフラップ支持部14との間には、上方から下方に抉られた溝部12iが形成されている。
【0022】
傾斜支持部12b1及び傾斜支持部12c1は、それぞれ上方に向かうに従って互いに広がるようそれぞれ左方及び右方に傾斜する面を有する。
フラップ支持部13の先端とフラップ支持部14先端とは離隔して隙間15をもったスリット16とされている。
【0023】
左側壁12bとフラップ支持部13との接続部分には、左上方に向け抉れた逃げ部12b3と、左右方向に平坦な面を有する上規制部12b2とが形成されている。
右側壁12cとフラップ支持部14との接続部分には、右上方に向け抉れた逃げ部12c3と、左右方向に平坦な面を有する上規制部12c2とが形成されている。
【0024】
図2に示されるように、レール基部12は、押出成形された成形品におけるフラップ支持部13の一部である前後方向の長さL13cの範囲が、二次加工で切除されて切り欠き部13cとされている。切り欠き部13cは、前後方向にピッチPaで繰り返して複数形成されている。残されたフラップ支持部13の前後方向の長さを長さL13とする。
すなわち、レール1は、前後方向の長さL13のフラップ支持部13と、前後方向の長さL13cの切り欠き部13cが、ピッチPaで交互に形成されている。
ピッチPaは、長さL13と長さL13cとの和である。
【0025】
同様に、レール基部12は、押出成形された成形品におけるフラップ支持部14の一部である前後方向の長さL14cの範囲が、二次加工で切除されて切り欠き部14cとされている。切り欠き部14cは、前後方向にピッチPaで繰り返して複数形成されている。残されたフラップ支持部14の前後方向の長さを長さL14とする。
すなわち、レール1は、前後方向の長さL14の複数のフラップ支持部14と、前後方向の長さL14cの複数の切り欠き部14cが、ピッチPaで交互に形成されている。
ピッチPaは、長さL14と長さL14cとの和でもある。
【0026】
各切り欠き部13cと各切り欠き部14cとは、前後方向にピッチPaの半分の距離Pbだけずれて形成されている。
複数のフラップ支持部13及び複数のフラップ支持部14は、それぞれ同心かつ同内径の貫通孔13a及び貫通孔14aを有している。
【0027】
次に、フラップ3を含むフラップアッセンブリ3Aについて図4を参照して詳述する。
図4に示されるように、フラップアッセンブリ3Aは、フラップ3,2本のシャフト31,及びねじりコイルばね32を有して構成されている。
【0028】
フラップ3は、前後対称形状で概ね板状に形成された樹脂成形品である。フラップ3は、平面視において、山形に突出した山形基部3aと、山形基部3aの根元から同軸上に前方及び後方にそれぞれ延出した延出部3b1及び延出部3b2とを有する。
山形基部3aは、延出部3b1,3b2側から先端に向かうに従って互いに接近する前縁3af及び後縁3arを有する。前縁3afと後縁3arは、前後に延びる後述の軸線CL3に平行な軸線CL3aに対し角度θ3aで傾斜して山形形状を形成している。角度θ3aは、例えば45°である。
【0029】
図3において、手前側の面が、フラップアッセンブリ3Aをレール1に取り付けて伏臥姿勢となった状態でのフラップ3の下面3dである。
下面3dには、前後方向に離隔して紙面手前側に突出する軸支持部3c1,3c2が形成されている。
軸支持部3c1,3c2には、それぞれ前後に延びる軸線CL3を共通の軸線とする貫通孔3c1a,3c2aが、同じ内径で形成されている。
【0030】
ねじりコイルばね32は、圧縮可能なコイルばねである本体32cと、本体32cの一方端の処理として径方向外方に延出した第1腕部32aと、他方端の処理として径方向外方に延出した第2腕部32bとを有する。
【0031】
シャフト31は、基部31a,フランジ31b,及びばね係合軸部31cを有する。
基部31aは、貫通孔3c1a,3c2aの内径よりわずかに小さい外径の円柱状に形成されている。フランジ31bは、基部31aの一端部に形成され貫通孔3c1aの内径及びねじりコイルばねの外径のいずれの径よりも大きな外径を有する。ばね係合軸部31cは、外径がねじりコイルばね32の内径よりも小さい円柱状を呈し、ねじりコイルばね32の本体32c内に挿入可能である。
ねじりコイルばね32は、自然長がフラップ3の軸支持部3c1と軸支持部3c2との間の内法よりもわずかに小さく形成されている。
【0032】
フラップアッセンブリ3Aの組み立て方法を、図4を参照して説明する。
まず、二つのシャフト31のばね係合軸部31cを、それぞれねじりコイルばね32の本体32cに挿入して内嵌させる。
次いで、シャフト31を互いに近づくように軸方向に押してねじりコイルばね32を圧縮し、その圧縮状態のまま、シャフト31の基部31aを、フラップ3の軸支持部3c1,3c2の貫通孔3c1a,3c2aに内側から挿通する(矢印DRb参照)。
【0033】
この挿通動作により、ねじりコイルばね32の圧縮変形の弾性反発力で、一対のシャフト31は、フランジ31bが軸支持部3c1,3c2の対向面にそれぞれ当接するまで外方に向け移動する。シャフト31の移動が規制された状態で、基部31aは、軸支持部3c1,3c2から外方へ突出している。
【0034】
次いで、図5に示されるように、フラップアッセンブリ3Aに対し、シャフト31の基部31aを再度互いに接近するように押し込み(矢印DRc参照)ながら、軸支持部3c1,3c2をレール1における切り欠き部13c及び切り欠き部14cに収め、押し込みを解除する。このとき、ねじりコイルばね32は捩じられて、第1腕部32a及び第2腕部32bの一方がレール1に当接し、他方がフラップ3に当接してフラップ3を伏臥姿勢となる方向に回動付勢する。
このようにして、シャフト31の基部31aがフラップ支持部13,14の貫通孔13a,14aに係合し、複数のフラップアッセンブリ3Aは、それぞれレール1に取り付けられる。
【0035】
図6は、車両の床部材93に取り付けたシートスライド装置91の、図1におけるS6-S6に相当する位置での断面図である。
シートスライド装置91は、フランジ部11L,11Rの貫通孔11aにボルトBt1を通して床部材93にねじ締結される。
【0036】
図6に示されるように、スライダ2は、左右対称に形成されており、本体部21及び突出部22を有する。スライダ2は、前後方向を押出方向として鉄などの金属を押出成形してなる成形品を、2次加工で所定の長さに切断して本体部21として形成すると共に所定の形状に切削して突出部22とする。
【0037】
本体部21は、下方に突出した左右一対の下部ローラ21b,21bを有する。一対の下部ローラ21b,21bは、通常状態でレール基部12の一対の傾斜支持部12b1,12c1にそれぞれ接触して転動する。これにより、スライダ2は、レール基部12の内部を前後方向に滑らかに移動する。
本体部21は、上方に突出する左右一対の上部ローラ21cを有する。上部ローラ21cは、スライダ2と一体化されたシートクッション92が何らかの理由で上方に持ち上げられた際に、レール基部12の上規制部12b2,12c2に当接すると共に転動して、スライダ2の上方の移動を規制すると共に滑らかな前後移動を支援する。
【0038】
本体部21は、左上部及び右上部に、それぞれ左上方及び右上方に張り出した張り出し部21d,21dを有する。一方、レール1のレール基部12は、左右の張り出し部21dそれぞれに対応して外方に抉られた逃げ部12c3を有する。
これにより、スライダ2が、レール基部12の内部で左右方向及び斜め上方向などに過剰に移動しようとしたときに、張り出し部21dが逃げ部12c3の内面に当接してその過剰な移動を規制する。
【0039】
突出部22について、図1図6,及び図8を参照して説明する。図8は、シートスライド装置91の左側面図であり、突出部22の側面形状が示されている。
各図に示されるように突出部22は、前縁及び後縁が、上方に向かうに従って互いに接近するよう傾斜した傾斜縁部22bとなっている。
傾斜縁部22bの、水平面Hに対する傾斜角度である角度θcは、例えば45°である。この角度θcは45°に限定されない。
【0040】
図8に示されるように、傾斜縁部22bを、前方の前傾斜縁部22bfと、後方の後傾斜縁部22brと称して区別する。
突出部22は、前カバー23f及び後カバー23rを有する。すなわち、突出部22の前傾斜縁部22bf及び後傾斜縁部22brには、摺動性に優れた樹脂(POMなど)で形成された前カバー23f及び後カバー23rが、それぞれ前傾斜縁部22bf及び後傾斜縁部22brの傾斜に沿い同じ角度θcをもって取り付けられている。
【0041】
突出部22の上部には、前後方向に離隔して貫通孔22aが形成されている。図6及び図8に示されるように、貫通孔22aにはボルトBt2が通されてシートクッション92側の固定部材にねじ締結されている。これにより、スライダ2とシートクッション92は一体化されている。
【0042】
次に、フラップ3の回動について、図1図5図7を参照して説明する。図7は、レール1に対しフラップアッセンブリ3Aを取り付けた状態の部分上面図である。
既述のように、フラップ3は、ねじりコイルばね32のねじり反発力によって起立姿勢から伏臥姿勢となる方向に回動付勢されている。すなわち、ねじりコイルばね32は、フラップ3を回動付勢する付勢部材である。
【0043】
図5及び図6に示されるように、左側の切り欠き部13cに取り付けられたフラップ3Lの先端部は、ねじりコイルばね32のねじり反発力による起立姿勢から伏臥姿勢への回動時に、右側のフラップ支持部14に当接して、伏臥姿勢を越える回動が規制されるようになっている。同様に、右側の切り欠き部14cに取り付けられたフラップ3Rの先端部は、ねじりコイルばね32のねじり反発力による起立姿勢から伏臥姿勢への回動時に、左側のフラップ支持部13に当接して伏臥姿勢を越える回動が規制されるようになっている。
【0044】
複数のフラップ3L及び複数のフラップ3Rは、それぞれフラップ支持部14及びフラップ支持部13により回動が規制された状態で、レール基部12のスリット16の隙間15を覆ってほぼ平坦な平面となる。
【0045】
シートクッション92と共にスライダ2が前方へ移動すると、山形基部3aの前縁3afに取り付けられた前カバー23fが、フラップ3の後縁3arに当接する。また、スライダ2が後方へ移動すると、山形基部3aの後縁3arに取り付けられた後カバー23rが、フラップ3の前縁3afに当接する。
【0046】
ここで、スライダ2における山形基部3aの前縁3afに取り付けられた前カバー23fの前方縁及び後縁3arに取り付けられた後カバー23rの後方縁は、上方に向かうほど互いに接近するように傾斜している。すなわち、当接する2つの部材(フラップ3及びカバー23)の少なくとも一方の当接部位の当接角度が、2つの部材の相対移動方向である前後方向に対して直交した90°ではなく傾斜した角度となっている。
また、ねじりコイルばね32がフラップ3を付勢する回動トルクよりも、通常のシートスライド動作で移動する突出部22がフラップ3に付与する起立姿勢方向への回動トルクの方が十分大きくなるように設定されている。
【0047】
そのため、図1及び図6に示されるように、スライダ2の前後動に伴い前カバー23f或いは後カバー23rが、それぞれフラップ3の山形基部3aの後縁3ar或いは前縁3af当接することで、フラップ3は持ち上げられ、起立姿勢となる方向に回動し(図6:矢印DRc参照)、突出部22の通過を許容する。この状態で、フラップ3の先端は、移動中のスライダ2における突出部22の側面に接触し、摺動する。
また、突出部22によって持ち上げられていたフラップ3は、突出部22が通過した後、ねじりコイルばね32の付勢力によって元の伏臥姿勢に復帰する(図6:矢印DRd参照)。
フラップ3L,3Rの、伏臥姿勢でのそれぞれの左端部,右端部は、起立姿勢への回動時にそれぞれ溝部12h,12iに進入してその回動が許容される。
【0048】
さらに、図7に示されるように、フラップ3の前縁3af及び後縁3arは、それぞれ図4に示した軸線CL3aに対し角度θ3aで傾斜している。
これにより、当接する2つの部材(フラップ3及びカバー23)の両方の当接角度が、相対移動方向である前後方向に対して直交した90°ではなく傾斜した角度となっている。そのため、フラップ3の起立姿勢方向への回動がより少ない押し上げ力で可能となり、作業者は、シートクッションのスライド操作を、より少ない力で行うことができる。従って、シートスライド装置91は、使い勝手がより良好となる。
【0049】
図8に示されるように、スライダ2が固定されたシートクッション92は、シートクッション92の下部の、スライダ2を含むその周辺空間を外部から見えなくする、又は見えにくくするよう囲う不透明のレッグカバー921を備えている。
詳しくは、スライダ2の移動に伴って、その突出部22との当接によって行われるフラップ3の回動による姿勢転換は、起立姿勢に向けた回動開始から伏臥姿勢への復帰完了までのすべての動作が、レッグカバー921の内側で行われるようになっている。
【0050】
この構造について詳述する。
まず、図7及び図8に示される、フラップ3における一方の縁部(前縁3af)側の先端の位置P1と、他方の縁部(後縁3ar)の中心線CL12との交点の位置P2との間の前後方向距離を距離L3dとする。位置P2は、フラップ3において、後方側から前進するスライダ2の前カバー23fが当接する位置である。
【0051】
距離L3dは、図8に示されるレッグカバー921の前端の位置P3と、前カバー23fの上下方向におけるフラップ3の上面と一致する位置P4との間の前後方向の距離L4よりも小さく設定されている。
距離L3dと距離L4との関係は、レッグカバー921の後端側についても同様である。
【0052】
これにより、前カバー23f及び後カバー23rが当接して回動するそれぞれのフラップ3の外形全体が、レッグカバー921の内側に収まる。
従って、シートスライド装置91は、伏臥姿勢のフラップ3に対し、回動するフラップ3が外部から視認されない、或いは視認されにくい状態になっており、外観品位が向上する。
【0053】
また、フラップ3が回動して露出するスリット16の隙間15は、常にレッグカバー921の内側にあるので、外部からスリット16の隙間15に進入しようとするゴミや塵埃は、レッグカバー921によって進入が阻止される。これにより、シートスライド装置91のスライド動作は、長期間良好に維持される。
【0054】
以上詳述した構成により、フラップ3L,3Rがそれぞれフラップ支持部14,13に当接した状態で各フラップ3は水平姿勢となる。
各フラップ3同士の隙間は、微小の隙間となるように外形寸法及び公差が設定されているので、伏臥姿勢のフラップ3によってレール1のレール基部12におけるスリット16の隙間15は良好に塞がれ、隙間15は外部から実質的に視認できない。
【0055】
また、フラップ3は硬質樹脂で形成され、伏臥姿勢から隙間15内へ向かう回動が、金属で形成されたフラップ支持部13,14との当接で規制されている。そのため、フラップ3は、ハイヒールの踵や傘の先端などの硬く細い異部材で押されても実質的に変形することはなく、異部材の隙間15内への進入を確実に阻止する。
【0056】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形可能である。
【0057】
シートスライド装置91は、前カバー23f及び後カバー23rを備えてなくてもよく、突出部22が直接、フラップ3に当接するものであってもよい。
【0058】
シートスライド装置91は、フラップ3として、スリット16の左側と右側とに、それぞれ前後方向に並べて配置された複数のフラップ3Lの列とフラップ3Rの列とを有している。
シートスライド装置91は、フラップ3の列としてこの2列を備えるものに限定されず、左側及び右側のいずれか一方のみを有するものでもよい。この場合、フラップ3の形状は、先端細りの山形ではなく正方形又は長方形形状とする。これにより、フラップ3は、伏臥姿勢においてスリット16を良好に塞ぎ、かつスライダ2の傾斜縁部22b、又は、前カバー23f若しくは後カバー23rと当接した際に起立姿勢に回動して突出部22の通過を許容できる。
【符号の説明】
【0059】
1 レール
11L,11R フランジ部
12 レール基部
12a 底部
12b 左側壁
12b1 傾斜支持部
12b2 上規制部
12b3 逃げ部
12c 右側壁
12c1 傾斜支持部
12c2 上規制部
12c3 逃げ部
12f 左サイドガード
12g 右サイドガード
12h,12i 溝部
13,14 フラップ支持部
13a,14a 貫通孔
13c,14c 切り欠き部
15 隙間
16 スリット
2 スライダ
21 本体部
21b 下部ローラ
21c 上部ローラ
21d 張り出し部
22 突出部
22a 貫通孔
22b 傾斜縁部
22bf 前傾斜縁部
22br 後傾斜縁部
23f 前カバー
23r 後カバー
3,3L,3R フラップ
3A フラップアッセンブリ
3a 山形基部
3af 前縁
3ar 後縁
3b1,3b2 延出部
3c1,3c2 軸支持部
3c1a,3c2a 貫通孔
3d 下面
31 シャフト
31a 基部
31b フランジ
31c ばね係合軸部
32 ねじりコイルばね
32a 第1腕部
32b 第2腕部
32c 本体
4 エンドキャップ
91 シートスライド装置
92 シートクッション
921 レッグカバー
93 床部材
Bt1,Bt2 ボルト
CL1 中心線
CL3 軸線
H 水平面
L3d,L4 距離
L13,L13c,L14,L14c 長さ
Pa ピッチ
Pb 距離
P1~P4 位置
θc,θ3a 角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8