(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】所定の量のアブレーション用エネルギー対損傷の大きさの曲線に基づく損傷の形成
(51)【国際特許分類】
A61B 18/12 20060101AFI20240729BHJP
【FI】
A61B18/12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020031408
(22)【出願日】2020-02-27
【審査請求日】2022-12-05
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレス・クラウディオ・アルトマン
(72)【発明者】
【氏名】エラ・オゼリ
【審査官】滝沢 和雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-528039(JP,A)
【文献】特表平11-506947(JP,A)
【文献】特表2013-544130(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0144524(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0128853(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0097475(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0144653(US,A1)
【文献】特開2017-023732(JP,A)
【文献】米国特許第05830213(US,A)
【文献】米国特許第06030379(US,A)
【文献】特表2007-537000(JP,A)
【文献】特表2015-523106(JP,A)
【文献】特表2016-523135(JP,A)
【文献】特表2019-519271(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0274239(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0065348(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アブレーション用
のシステムであって、
コンピューティングシステムの1つ以上のプロセッサと、
複数の命令を記憶する非一過性のコンピュータ可読媒体であって、
前記複数の命令は、実行されたとき、前記1つ以上のプロセッサに、
組織における、標的損傷サイズとアブレーション中に維持すべき標的組織温度
と、を示す
、ユーザ入力を受信
することと、
i)損傷サイズと、アブレーション中に一定の組織温度を維持するのに必要なアブレーション用エネルギーの量と、の間の予め決められた関係と、ii)入力された前記標的損傷サイズと入力された前記標的組織温度と、のみに基づいて、入力された前記標的組織温度で入力された前記標的損傷サイズを達成するために、少なくとも1つの電極によって前記組織に印加されるのに必要なアブレーション用エネルギーの量を判定することであって、前記予め決められた関係は、複数の組織温度に対応する組織温度を維持するために必要な、損傷サイズとアブレーション用エネルギーとの間の複数の予め決められた関係のうちの1つであり、前記複数の予め決められた関係は、少なくとも1つのモデルから又は較正を通して、導出され、前記コンピューティングシステムによりアクセス可能なメモリに記憶される、判定することと、
少なくとも1つの電極によって、判定された前記量の前記アブレーション用エネルギーを印加するようにアブレーションプローブを制御することと、
前記少なくとも1つの電極の接触力のレベルを測定して、前記少なくとも1つの電極の、前記組織に前記アブレーション用エネルギーを通過させる有用性を判定することと、をさせる、非一過性のコンピュータ可読媒体と、を備える、システム。
【請求項2】
印加される前記アブレーション用エネルギーのレベルが低下される場合、前記標的組織温度を満たすために、判定された前記量の前記アブレーション用エネルギーを完全に送達して前記標的損傷サイズを達成するように、アブレーション時間を延長するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記
1つ以上のプロセッサが、示された前記損傷
サイズ及び
前記組織温度、並び
に前記
アブレーション用エネルギーの
判定された前記量を、ユーザに提示するように更に構成されている、請求項
1に記載のシステム。
【請求項4】
前記
複数の予め決められた関係が、ルックアップテーブルに記憶されている、請求項
1に記載のシステム。
【請求項5】
前記複数の命令がさらに、前記1つ以上のプロセッサに、前記アブレーションの間に前記組織温度を監視させて、予め決められた許容差範囲内に前記組織温度を維持する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記複数の命令がさらに、前記1つ以上のプロセッサに、潅注流量及び電力出力レベルを調節させて、予め決められた前記許容差範囲内に前記組織温度を維持する、請求項5に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般に高周波(RF)アブレーションに関し、特に、心臓組織RFアブレーションに関する。
【背景技術】
【0002】
RFアブレーションを計画するための様々な技術が、特許文献に提案されている。例えば、米国特許出願公開第2011/0144524号は、アブレーション処置中に標的組織の特徴を表示するためのシステムを記載している。このシステムは、ある期間にわたって標的組織の電気的特性に関するデータを受信するように構成された電子制御ユニット(ECU)を含む。ECUはまた、このデータに応答し、かつ標的組織内の損傷の深さの予測、標的組織の温度の予測、及びこの期間の標的組織のスチームポップの可能性のうちの少なくとも1つを示す値を決定するようにも構成されている。このシステムは、これらの値を受信し、かつ上記に列挙したそれぞれの指標パラメータの視覚的表現を表示するように構成された表示デバイスを更に含む。
【0003】
別の例として、米国特許出願公開第2014/0243813号は、実時間で損傷の形成についてのフィードバックを提供するためのアブレーションシステム及び方法を記載している。これらの方法及びシステムは、アブレーション電極と組織との間の電気的結合又は接触の程度に基づいて、組織の吸収率を評価する。次いで、電力レベル及び活性化時間を含む他の情報と共に、吸収率を使用して、形成される損傷についての実時間のフィードバックを提供することができる。フィードバックは、例えば、損傷の体積及び他の損傷の特徴の推定の形態で提供されてもよい。これらの方法及びシステムは、所与の物理的接触の程度、及び形成される損傷の深さについて、所望の損傷の特徴を達成するための処理時間の推定を提供することができる。
【0004】
米国特許出願公開第2014/0194869号は、力の時間積分を利用して、カテーテルベースのアブレーションシステムにおける損傷の大きさを実時間で推定する方法及び装置を記載している。この装置は、接触アブレーションプローブによって標的組織にかけられた力を測定し、接触アブレーションプローブの通電時間にわたる力を積分する。力の時間積分を計算し、利用して、損傷の大きさ(深さ、体積、及び/又は面積)の推定を実時間で提供することができる。力の時間積分はまた、標的組織に実時間で送達される電力の変動も説明して、損傷の大きさのより改善された推定を提供することができる。一実施形態では、力の計量は、スチームポップを防止するためにプローブに送達される所望の電力レベルを確立するためのフィードバックとして使用することができる。
【0005】
米国特許出願公開第2017/014181号は、ある期間にわたって組織をアブレーションすることと、この期間中に印加された接触力を測定することと、この期間中に使用された電力を測定することとからなる、方法を記載している。この方法は、組織内に生成された損傷が、この期間に対する、第1の1ではない指数でべき乗された接触力と第2の1ではない指数でべき乗された電力との積の積分を使用して推定した所望の大きさに達した場合に、組織のアブレーションを中止することを更に含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、1つ又は2つ以上の選択された温度の各々について、損傷の大きさとアブレーション用エネルギーの量との間の所定の関係をメモリに記憶することを含む、アブレーションの方法を提供する。プロセッサを使用して、損傷の大きさ及び組織温度を示すユーザ入力を受信する。この関係に基づいて、損傷の大きさ及び組織温度と一致するエネルギーの量を決定する。アブレーションプローブを制御して、選択された損傷の大きさと一致するアブレーション用エネルギーの量を印加する。
【0007】
いくつかの実施形態では、選択された組織温度は、アブレーション用エネルギーを印加するアブレーション用電極の温度を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、この方法は、示された損傷の大きさ及び組織温度、並びに決定されたエネルギーの量を、ユーザに提示することを更に含む。
【0009】
一実施形態では、エネルギーの量を決定することは、ルックアップテーブルから関係の少なくとも一部を読み取ることを含む。
【0010】
加えて、本発明の一実施形態によれば、メモリ及びプロセッサを含む、アブレーション用システムが提供される。メモリは、1つ又は2つ以上の選択された温度の各々について、損傷の大きさとアブレーション用エネルギーの量との間の所定の関係を記憶するように構成されている。プロセッサは、損傷の大きさ及び組織温度を示すユーザ入力を受信して、関連に基づいて、損傷の大きさ及び組織温度と一致するエネルギーの量を決定し、かつアブレーションプローブを制御して、選択された損傷の大きさと一致するアブレーション用エネルギーの量を印加するように構成されている。
【0011】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態による、心臓組織高周波(RF)アブレーション療法のためのシステムの概略描写図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、異なる一定温度での損傷の大きさとRFアブレーション用エネルギーとの間の所定の関係を概略的に示すグラフである。
【
図3】本発明の一実施形態による、
図2の関係を使用して、RFアブレーションを計画するための方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
概要
不整脈の治療は、熱エネルギー源を使用して(例えば、組織を加熱することによって)、心臓組織内の損傷をアブレーションすることを含み得る。損傷の臨床的有効性は、損傷の深さに大きく依存し、これは、損傷が形成される組織内に蓄積される有効(例えば、有用)アブレーション用エネルギーの量によって支配される。
【0014】
しかしながら、有効アブレーション用エネルギーは、例えば、脂肪含有量などの未知の組織特性に依存するため、正確には推定することができない。したがって、高周波(RF)発生器などの発生器の所与のエネルギー出力の場合、得られる有効RFエネルギーが低すぎる場合又は高すぎる場合がある。低い有効アブレーション用エネルギーは、不十分な深さの損傷の作製をもたらす場合がある一方で、過度に高い有効アブレーション用エネルギーは、(例えば、非常に高い組織温度による)スチームポップなどの副作用、並びに組織穿孔及び付帯的ダメージなどの副作用を引き起こす場合がある。
【0015】
アブレーション中の組織温度は、実際には、蓄積される有効RFエネルギーを示すと考えられ、より高い温度は、より深い損傷の形成を予測する。したがって、アブレーション中に維持される標的組織温度を事前決定することで、標的損傷の深さの達成、及び上記に列挙したものなどの副作用の回避の両方を支援することができる。
【0016】
本明細書以下に記載の本発明の実施形態は、(RF)アブレーションなどの熱アブレーション中の組織温度及び損傷の大きさ(例えば、損傷の深さ)の両方を正確に事前決定し、制御するための方法を提供する。開示される方法は、エネルギーモードでアブレーションを計画することを含み、このモードでは、損傷の深さ及び組織温度の両方の標的を満たすために、プロセッサが、異なる一定温度での損傷の深さと出力エネルギーとの間の所定の関係を使用して、組織に印加するための対応する量のアブレーション用RFエネルギーを選択する。
【0017】
開示される所定の関係は、モデルから導出されてもよく、かつ/又は較正に基づいてもよい。例えば、そのような関係は、インビトロで(かつ/又は動物モデルを使用して)事前測定され、アブレーションシステムのメモリに記憶されてもよい。所定の関係を使用して、開示される方法により、プロセッサが、2つの測定されたパラメータ(発生器のエネルギー出力及び組織温度)のみに基づいてアブレーションを計画することが可能になる。
【0018】
例えば、一実施形態では、医師は、(a)標的損傷の深さ、及び(b)スチームポップなどの副作用が組織内で生じないことが既知である十分低い温度、例えば、50℃のアブレーション中の組織温度を選択する。次いで、医師が操作するプロセッサは、選択された温度での損傷の深さとアブレーション用エネルギーの量との間の開示される所定の関係(ルックアップテーブルの形態であり得る)を抽出し、この関係から、選択された温度で選択された損傷の深さを達成するのに必要なアブレーション用エネルギーの量を決定する。
【0019】
この選択に基づいて、後続のアブレーション処置では、アブレーションシステムは、後述のアルゴリズムを適用し、このアルゴリズムでは、プロセッサは、アブレーションプローブを制御して、選択された損傷の大きさと一致するアブレーション用エネルギーの量を印加する。一実施形態では、プロセッサは、例えば、瞬間的なRF電力及び接触力を含み得る複数のパラメータを制御しようとするのではなく、灌注流量などの1つ又は2つの追加の制御パラメータを使用してもよい。一実施形態では、プロセッサは、アルゴリズムを操作して、アブレーションが計画どおり進んでいるかどうかを決定するように、かつ2つの測定されたパラメータ(すなわち、発生器のエネルギー出力及び組織温度)の読み取りからのフィードバックに基づいてアブレーションを制御するように構成されている。
【0020】
いくつかの実施形態では、例えば、標的組織温度を満たすために、印加されるRF電力のレベルがプロセッサによって低下される場合、選択された量のアブレーション用RFエネルギーを完全に送達して、標的損傷の深さを達成するように、プロセッサは、アブレーション時間を延長するように構成されている。
【0021】
開示される所定の関係を使用する、記載のRFアブレーション計画技術は、組織温度を維持しながら標的損傷の深さを達成することを可能にすることができ、したがって、カテーテルベースのRFアブレーション処置の有効性及び安全性を改善することができる。
【0022】
システムの説明
図1は、本発明の実施形態による、心臓組織高周波(RF)アブレーション療法のためのシステム12の概略描写図である。典型的には、システム20のメモリ45は、
図2に記載のプロトコルなどの、異なる臨床的シナリオのための多数のアブレーションプロトコルを記憶する。
【0023】
医師26は、血管を通して対象22の心室24内にカテーテル28を挿入し、カテーテルの遠位端32が治療対象の領域内の心内膜に接触するように、カテーテルを操作する。挿入画25に見られるカテーテル28の先端電極51は、1つ又は2つ以上の温度センサ50を備える。
【0024】
アブレーション部位に遠位端32を位置決めし、先端が心内膜に確実に接触するようにした後、操作者26は、制御コンソール42内のRFエネルギー発生器44を作動させて、ケーブル38を介して遠位端32にRFエネルギーを供給する。一方、灌注ポンプ48は、管40及びカテーテル28内の内腔を介して、正常生理食塩水などの冷却流体を、遠位端に供給する。典型的には、アブレーション前及びアブレーション中の両方において、ディスプレイ46は、以下の表I~IVに列挙されるものなどのアブレーションパラメータの値を、医師26に表示する。
【0025】
RFエネルギー発生器及び灌注ポンプの動作は、アブレーション中に適切な体積の灌注を与えるために調整されてもよく、これにより、灌注流体で心臓に過剰に負荷を与えることなく、カテーテルの先端及び組織を冷却する。温度センサ50内の各温度センサは、例えば、RF電力及び/又は灌注流量を制御して、所与の組織温度を維持する際に使用するフィードバックを、コンソール42に提供する。
【0026】
システム12を操作するために、プロセッサ41は、プロセッサによるシステムの操作に使用されるいくつかのモジュールを含む。これらのモジュールは、温度モジュール52、電力制御モジュール54、及び灌注モジュール55を含むものであり、これらの機能については後述する。特に、プロセッサ41は、以下で更に説明するとおり、プロセッサ41による開示されるステップの実行を可能にする、
図3を含む本明細書に開示される専用アルゴリズムを実行する。
【0027】
描写される実施形態は、具体的には、心臓組織のアブレーションのための先端アブレーション装置の使用に関するが、本明細書に記載の方法は、代替的に、プロセッサ41によって各電極の動作が独立して制御される場合、複数のアブレーション電極を備えるアブレーション装置に適用することができる。
【0028】
所定の量のアブレーション用エネルギー対損傷の大きさの曲線に基づいて、損傷を形成する
図2は、本発明の一実施形態による、異なる一定温度での損傷の大きさとRFアブレーション用エネルギーとの間の所定の関係100を概略的に示すグラフである。見られるように、関係100は、一組の曲線60~64を含み、各曲線は、3つの異なる一定の組織温度T
1<T
2<T
3それぞれでの予想される損傷の深さを、発生器44の出力RFエネルギーの関数としてもたらす。
【0029】
例えば、出力エネルギーレベル75では、温度T1は、損傷の深さ70に対応し、T2は、損傷の深さ72に対応し、T3は、損傷の深さ74に対応する。したがって、アブレーション中のより低い組織温度の維持は、より浅い損傷をもたらす。
【0030】
図2に更に見られるように、異なる温度T
1、T
2、及びT
3はそれぞれ、組織の深さ70、72、及び74に対応するだけでなく、それぞれ、全体としての異なる損傷の大きさ(例えば、体積)70a、72a、及び74aにも対応する。
【0031】
場合によっては、例えば、スチームポップのリスクがそれほど有意ではない場合、ユーザは、異なる温度曲線から同じ損傷の深さを達成することを選択することができる。そのような選択は要するに、開示される関係に基づいて、各温度で異なる量の有効アブレーション用エネルギーを使用するということになる。これは、アブレーション用エネルギー75、77、及び77によって見られ、これらは全てそれぞれ、点70、82、及び84によって曲線60~64に示される、同じ損傷の深さを生成する。
【0032】
RF電力及び灌注流量を変動させることができる(かつ、本明細書に開示される技術とは対照的に、温度の変動もまた可能にする)、エネルギーモードにおけるアブレーション方法は、本特許出願の譲受人に譲渡され、その開示が参照により本明細書に組み込まれる「Energy-Guided Radiofrequency(RF)Ablation」(代理人整理番号BIO6070USNP1/1002-1904)と題する米国特許出願に記載されている。
【0033】
最後に、組織温度は、電極51が組織表面58を通過する有効エネルギーによって影響される場合がある。エネルギーをその真下の組織に直接通過させる上での電極51の有効性は、電極51が組織表面58にかける接触力に依存し得る。
【0034】
図3は、本発明の一実施形態による、
図2の曲線を使用して、RFアブレーションを計画するための方法を概略的に示すフローチャートである。このプロセスは、医師26が、所定の関係アップロードステップ90で、損傷の深さを含む所定の関係100を曲線60~64などのアブレーション用エネルギーの関数としてアップロードすることによって開始する。次に、医師26は、損傷の深さ選択ステップ92で、損傷の深さを選択する。医師26は、組織温度選択ステップ94で、標的組織温度を更に選択する。ステップ90~94に基づいて、医師26が操作するプロセッサ41は、エネルギー選択ステップ96で、開示される関係(例えば、記憶されたルックアップテーブル)を使用して、必要なエネルギーを抽出する。次いで、医師は、パラメータ設定ステップ98で、ユーザインターフェースを使用して、システム20によって適用されるアブレーションアルゴリズムの入力として、システム20内に選択を設定する。
【0035】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、表I~IVのうちの1つにおける上記の選択を、例えば、システム20のディスプレイに提示する。典型的には、電力及び灌注流量の許容範囲は、システムによって自動的に設定される。
【0036】
表I~IVは、臨床的必要性に応じて、付帯的ダメージを最小化しながら、損傷の深さを最適化するために使用され得る、4つの異なる設定を提供する。
表I-低程度深さ
表II-中程度深さ
表III-高程度深さ
表IV-更に高程度深さ
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
医師26がアブレーションを実行する前に、関係アップロードステップ90が実施される。
【0042】
後続のアブレーションセッション100では、システム20は、開示される関係(例えば、ルックアップテーブルとして提供され得る曲線60~64)に基づいて選択されたパラメータを使用して、標的組織温度を維持しながら、必要な損傷の深さを達成する。
【0043】
システム20のディスプレイは、当該技術分野で既知の方法によって、電極へのRF送達の進行状況を、医師26に表示するように更に構成されてもよい。
【0044】
図3に示される例のフローチャートは、単に概念を明確にする目的で選択されている。本実施形態はまた、電極51と組織との接触力のレベルを確認することなどの、アルゴリズムの追加のステップも含む。一実施形態では、後続のアブレーション処置中に、開示される計画方法を適用するプロセッサは、実際の組織温度を監視して、温度を所与の許容差内に維持するように構成されている。アブレーション中、組織温度を所与の許容差内に維持するために、潅注流量及びRF電力出力のレベルの両方は、プロセッサによって自動的に調節され得る。
【0045】
本明細書に記載の実施形態は、主として心臓組織への適用に取り組むものであるが、本明細書に記載の方法及びシステムはまた、例えば、身体の他の臓器のアブレーションの計画にも使用することができる。
【0046】
したがって、上述の実施形態は、例として引用されるものであること、及び本発明は、本明細書上記に具体的に示され、記載されたものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、本明細書上記に記載の様々な特徴の組み合わせ及びその一部の組み合わせの両方、並びに上述の説明の閲読時に当業者により想到されるであろう、また先行技術において開示されていない、それらの変形及び修正を含むものである。参照により本特許出願に組み込まれる文献は、いずれかの用語が、これらの組み込まれる文献において、本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾する様式で定義される限り、本明細書の定義のみが考慮されるものとすることを除き、本出願の不可欠な一部と見なされるものとする。
【0047】
〔実施の態様〕
(1) アブレーションの方法であって、
1つ又は2つ以上の選択された温度の各々について、損傷の大きさとアブレーション用エネルギーの量との間の所定の関係をメモリに記憶することと、
プロセッサを使用して、
損傷の大きさ及び組織温度を示すユーザ入力を受信し、
前記関係に基づいて、前記損傷の大きさ及び前記組織温度と一致するエネルギーの量を決定し、かつ
アブレーションプローブを制御して、選択された前記損傷の大きさと一致する前記アブレーション用エネルギーの量を印加することと、を含む、方法。
(2) 選択された前記組織温度が、前記アブレーション用エネルギーを印加するアブレーション用電極の温度を含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 示された前記損傷の大きさ及び組織温度、並びに決定された前記エネルギーの量を、前記ユーザに提示することを含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記エネルギーの量を決定することが、ルックアップテーブルから前記関係の少なくとも一部を読み取ることを含む、実施態様1に記載の方法。
(5) アブレーション用システムであって、
メモリであって、1つ又は2つ以上の選択された温度の各々について、損傷の大きさとアブレーション用エネルギーの量との間の所定の関係を記憶するように構成されている、メモリと、
プロセッサであって、
損傷の大きさ及び組織温度を示すユーザ入力を受信し、
前記関係に基づいて、前記損傷の大きさ及び前記組織温度と一致するエネルギーの量を決定し、かつ
アブレーションプローブを制御して、選択された前記損傷の大きさと一致する前記アブレーション用エネルギーの量を印加するように構成されている、プロセッサと、を備える、システム。
【0048】
(6) 選択された前記組織温度が、前記アブレーション用エネルギーを印加するアブレーション用電極の温度を含む、実施態様5に記載のシステム。
(7) 前記プロセッサが、示された前記損傷の大きさ及び組織温度、並びに決定された前記エネルギーの量を、ユーザに提示するように更に構成されている、実施態様5に記載のシステム。
(8) 前記所定の関係が、ルックアップテーブルに記憶されている、実施態様5に記載のシステム。