(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】付加製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/34 20140101AFI20240729BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20240729BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20240729BHJP
B29C 64/268 20170101ALI20240729BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240729BHJP
B29C 64/277 20170101ALI20240729BHJP
【FI】
B23K26/34
B23K26/21 Z
B29C64/153
B29C64/268
B33Y10/00
B29C64/277
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020054854
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2023-03-23
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン, ポール ナサニエル
(72)【発明者】
【氏名】バリー, ファトゥマタ ハジャ
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0039318(US,A1)
【文献】特表2018-524476(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0039183(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/34
B23K 26/21
B29C 64/153
B29C 64/268
B33Y 10/00
B29C 64/277
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体床付加製造のための方法であって、
所定の移動速度で移動するレーザのための均一なピッチのラスター経路を画定することであって
、前記レーザの出力密度レベルが最大出力の少なくとも80%であり、前記所定の移動速度
がスキャン幅方向
に1,000mm/秒以上
の移動速度になる
ように、
前記ラスター経路が0.5mm未満のストリップ幅内で前後交互に配置される、均一なピッチのラスター経路を画定することと、
粉体の層を基板上に堆積することと、
前記レーザ
で、画定された前記ラスター経路及び前記レーザの出力設定に従って、ある量の前記粉体を凝固させることと
を含む方法。
【請求項2】
前記ラスター経路が、約0.1mmから約5mmの
ピッチ間隔を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ラスター経路が、約0.5mmから約1mmの
ピッチ間隔を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ラスター経路が、約0.08mmから約0.2mmのスキャン幅距離を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ラスター経路が、約0.15mmから約0.18mmのスキャン幅距離を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ラスター経路が、1m
2あたり約5,000レーザパスから1m
2あたり約25,000レーザパスのスキャン密度を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ラスター経路が、1m
2あたり約8,750レーザパスから1m
2あたり約18,750レーザパスのスキャン密度を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記所定の移動速度により、横断方向の移動速度が1,000mm/秒以上になる、請求項1から
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記所定の移動速度により、横断方向の移動速度が約1,700mm/秒から約2,200mm/秒になる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記レーザが、約200Wから約1,000Wのレーザビーム平均出力を有しており、前記レーザが、約0.05mmから約0.2mmのビーム直径を有するレーザビームを含む、請求項1から
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ストリップ幅が、
0.3mm未満である、請求項1から
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記レーザが、前記基板のレーザ接触面に対して約85
oから約95
oの入射角で配置されたレーザビームを含む、請求項1から
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
約50Wから約400Wのレーザビーム平均出力で前記粉体を前処理することを更に含み、前記前処理することが、前記粉体の層を前記基板上に堆積した後に実行される、請求項1から
12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、1つ又は複数のレーザを使用して製品を形成する方法を提示する。
【背景技術】
【0002】
航空機などの輸送体は、多くの金属構成要素を含む。これまで、金属付加製造は、主にチタニウム、ニッケル及び鋼合金に焦点を当ててきた。これは、堆積の容易さから、これらの合金を使用する際の有利な経済的要因までに及ぶ、様々な理由からであった。
【0003】
しかしながら、最近の対象はアルミニウム合金に向けられており、特に、アルミニウム合金を体床融合(L-PBF)プロセスでどのように使用できるかに焦点を当てている。付加製造されたアルミニウムにより、設計者は、性能と軽量化の両方の点で、付加製造の利点を得ることができる。しかしながら、現在、設計者は、他の従来の高強度アルミニウム合金(2XXX、7XXXシリーズ)の処理が困難なため、性能が比較的低いアルミニウム-ケイ素鋳造合金に制限されている。現在、主要な付加製造アルミニウム合金は、Al10SiMgである。Al10SiMgは、容易に堆積されるが、機械的特性が、Al10SiMgの広範な用途を制限するほど劣っている。高強度の従来の鍛造合金は、凝固割れの高い感受性と堆積中の元素損失のため、容易に製造することができない。
【0004】
残留応力割れを抑制することができる高強度合金の付加製造法が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、1つ又は複数のレーザを使用して製品を形成する方法を提示する。
【0006】
少なくとも1つの態様では、粉体床付加製造のための方法は、所定の移動速度で移動するレーザのための均一なピッチのラスター経路を画定することを含む。ラスター経路は、0.5mm未満のストリップ幅内で交互に前後し、レーザの出力密度レベルは、最大出力の少なくとも80%であり、所定の移動速度により、スキャン幅方向の移動速度が1,000mm/秒以上になる。方法は、粉体の層を基板上に堆積することと、レーザに、画定されたラスター経路及びレーザの出力設定に従って、ある量の粉体を凝固させることとを含む。
【0007】
少なくとも1つの態様では、付加製造のための方法は、材料の層を基板上に堆積することを含む。方法は、レーザをスキャン幅方向に1,000mm/秒以上の移動速度で、基板に対してラスター経路で移動することによって、材料をレーザで処理することを含む。ラスター経路は、約0.1mmから約5mmの横断距離、約0.08mmから約0.2mmのスキャン幅距離、及び約0.04mmから約2mmの平均ハッチ間隔を有する。レーザは、約200Wから約1,000Wのレーザビーム平均出力、及び約0.05mmから約0.2mmのビーム直径を有するレーザビームを有する。
【0008】
本開示の上述の特徴を詳しく理解できるように、上記で簡単に要約されている本開示のより詳細な説明が、実施例を参照することによって得られ、それらの実施例の一部が、添付図面に示される。しかしながら、添付図面は、本開示の典型的な実施例のみを示しており、それゆえ、本開示の範囲を限定するとみなすべきではなく、本開示は、その他の等しく有効な実施例を許容しうることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】1つ又は複数の態様による、航空機の製造及び保守方法の例のフロー図である。
【
図2】1つ又は複数の態様による、航空機の1つの例のブロック図である。
【
図3】1つ又は複数の態様による、付加製造装置の概略斜視図である。
【
図4】1つ又は複数の態様による、付加製造システムの1つの例、及び付加製造システムによって製造された部品又は製品の1つの例の一部の底部等角図である。
【
図5】1つ又は複数の態様による、
図4に示す付加製造システムの一部の上部等角図である。
【
図6】1つ又は複数の態様による、
図4に示す付加製造システムの正面図である。
【
図7】1つ又は複数の態様による、
図4に示す付加製造システムの部分的分解立体図である。
【
図8】1つ又は複数の態様による、
図7の線7-7に沿った断面図である。
【
図9】1つ又は複数の態様による、
図4の付加製造システムのブロック図の1つの例である。
【
図10】1つ又は複数の態様による、製品の表面を処理するように構成された一対の表面処理装置の1つの例の拡大図である。
【
図11】1つ又は複数の態様による、レーザビームが含みうる複数の形状の例を示す。
【
図12】1つ又は複数の態様による、様々な異なるサイズを有する複数のレーザビームを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
理解を容易にするために、可能な場合には、図に共通する同一の要素を示すのに同一の参照番号を使用した。1つの実施例の要素及び特徴は、更なる記述がなくとも、他の実施例に有益に組み込まれることがあると想定されている。
【0011】
本開示は、高強度合金の付加製造方法を提示する。1つの例では、粉体床付加製造のための方法は、所定の一定な移動速度で移動するレーザのための均一なピッチのラスター経路を構築チャンバ内に画定することを含み、ここで、ラスター経路が0.5mm未満のストリップ幅内で交互に前後し、よってレーザの出力設定及び関連する出力密度レベルが最大出力の少なくとも80%になり、所定の一定の移動速は、1000mm/秒以上の前方移動速度になる。方法は、粉体の層を構築チャンバ内に堆積することと、レーザに、画定されたラスター経路及びレーザの出力設定に従って、ある量の電力供給された金属(powered metal)を凝固させることとを含む。
【0012】
本開示の方法は、処理中の合金の固化率を変更することにより、残留応力割れを抑制することができる。例えば、レーザの狭いストリップ幅を使用することによって、ストライプ内のレーザ移動経路の振動の振幅が減少する。したがって、設定された移動速度について、レーザヘッドは、ストライプに沿ってより速く移動することができる。レーザヘッドをより速く移動させることにより、従来のレーザ焼結プロセスと比較して、増加したレーザ出力を使用できるようになる。加えて、レーザをより速く移動させることにより、スキャンされたラスターの次のラインの前に、また、以前のスキャンパスの溶融池を完全に冷却できるようにし、著しく遅い凝固正面を形成し、凝固収縮率(ひいては、溶融の粒界で液膜にかかる歪み速度)を低下させる可能性がある。隣接するレーザパスの重なる入熱(例えば、重なる溶融池)により、所定の部品のストライプにわたって均一な入熱と低減された温度勾配がもたらされ、これにより、CTEによって誘発される歪みが減少し、凝固速度が低下して、形成された部品の割れが減少する。
【0013】
図面を更に具体的に参照しながら、本開示の態様が、
図1に示す航空機の製造及び保守方法100、及び
図2に示す航空機102に照らして説明されうる。製造前の段階では、方法100は、航空機102の仕様及び設計104と、材料調達106とを含みうる。製造段階では、航空機102の構成要素及びサブアセンブリの製造108と、システムインテグレーション110とが行われる。その後、航空機102は、認可及び納品112を経て運航114に供される。顧客により運航される間に、航空機102は、改造、再構成、改修なども含みうる、定期的な整備及び保守116が予定される。
【0014】
方法100の各プロセスは、システムインテグレータ、第三者、及び/又はオペレータ(例えば顧客)によって実施又は実行されうる。本明細書の適用上、システムインテグレータは、任意の数の航空機製造業者及び主要システムの下請業者を含むがこれらに限定されず、第三者は、任意の数のベンダー、下請業者及び供給業者を含むがこれらに限定されず、且つ、オペレータは、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス機関等でありうる。
【0015】
図2に示すように、方法100によって製造された航空機202は、複数のシステム220及び内装222を備えた機体218を含みうる。高レベルのシステム220の実施例には、推進システム224、電気システム226、油圧システム228、及び環境システム230のうちの1つ又は複数が含まれる。任意の数の他のシステムが含まれてよい。航空宇宙産業の例を示したが、本発明の原理は、自動車産業やその他の産業などの他の産業に適用されてもよい。
【0016】
本明細書で具現化された装置及び方法は、製造及び保守方法100の1つ又は複数の任意の段階で採用してもよい。例えば、製造プロセス206に対応する構成要素又はサブアセンブリは、航空機202の運航中に製造される構成要素又はサブアセンブリと類似の方法で作製又は製造されうる。また、1つ又は複数の装置の態様、方法の態様、もしくはそれらの組み合わせは、例えば、航空機202の組立を実質的に効率化するか、又は航空機12のコストを削減することにより、製造段階208及び210において利用されうる。同様に、装置の態様、方法の態様、又はこれらの組み合わせのうちの1つ又は複数は、航空機202の運航中、例えば、限定しないが、整備及び保守216に利用することができる。
【0017】
レーザアブレーション
本開示の付加製造プロセスは、材料出力及びレーザ出力を含む付加製造ヘッドを動作させることを含むことができる。材料出力の材料は、構成要素(輸送体の構成要素等)の表面上に堆積される付加製造材料(例えば、アルミニウム粉)である。材料は、表面のレーザアブレーションの前、間、又は後に、構成要素の表面上に堆積されうる。
【0018】
概して
図3を参照すると、付加製造装置300は、レーザ出力に加えて、材料出力も含む。レーザアブレーションの前、間、又は後に、材料が材料出力によって、表面320上に堆積される。材料出力は、材料を表面320上に重力堆積(又は加圧堆積)するように構成されたホッパでありうる。材料は、アルミニウム、アルミニウム合金、チタニウム、チタニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、ステンレス鋼及び合金鋼、コバルト合金、プラスチック、ポリマー、ウレタン、ナイロン、又はこれらの組み合わせとすることができ、又はこれらを含むことができる。アルミニウム合金は、2XXXシリーズ、7XXXシリーズ、又はこれらの組み合わせといった高強度アルミニウム合金であってもよく、又はこれらを含んでもよい。材料は、細粉等の粉体形態とすることができる。
【0019】
一旦堆積すると、材料(例えば、アルミニウム粉)は、前処理レーザパスを受けるが、これは、アブレーションされる材料(例えば粉体)にわたる低電力ラスターである。レーザのワット数の低い粉体が、材料に付着した水分を取り除き、気泡により、アブレーションされた製品材料に多孔性が発生する可能性を低下させる。加えて、前処理により、アブレーションされるエリアが予熱され、溶融が発生すると、固化時の温度勾配が、前処理がない場合よりも小さくなる。したがって、そのような前処理は、アブレーションされる製品材料の割れを減らす。前処理段階で使用されるレーザのレーザビーム平均出力は、約50Wから約400W、例えば約100Wから約350W、例えば約200Wから約300Wとすることができる。
【0020】
図3に戻ると、付加製造装置300は、レーザビーム344を放射するように構成された1つ又は複数のレーザを有する付加製造システム304を含む。システム304は、レーザビーム344を表面320上に伝達するように構成される。システム304の位置は、表面320とシステム304の相対位置に対して調節することができる。コントローラ(図示されず)は、動作パラメータを決定して表面320をスキャンするようにプログラムされる。コントローラは、表面320のエリア330のスキャン領域336の各々に対して、横断スキャン速度、幅スキャン速度、レーザビーム平均出力、及びレーザビーム直径といった動作パラメータを決定するようにプログラムされる。スキャン領域33のいずれか1つに対応する横断スキャン速度、幅スキャン速度、レーザビーム平均出力、及びレーザビーム直径は、レーザビーム344のターゲットフルエンス及びターゲット放射照度を生成する。レーザアブレーションの効果は、レーザ波長、表面材料、及びアブレーションされる材料などの他の要因の間で、放射照度(レーザ出力の表面密度)及びフルエンス(蓄積されたレーザエネルギーの表面密度)によって、決定される。レーザがスキャン幅方向に移動する間、レーザは、基板表面にわたってストリップを形成する。したがって、レーザビーム直径は、ストリップの幅(「ストリップ幅」とも称される)に対応する。
【0021】
スキャン領域336は、表面320のエリア330すべてがレーザビーム344でスキャンできるように、配置される。スキャン領域336の各々は、ストリップ幅340に対応する幅を有している。コントローラは、スキャン領域336の特定の1つに対応するスキャン速度で、かつスキャン領域336の特定の1つに対応するストリップ幅340にわたって、スキャン領域336の各々をスキャンすることによって、ターゲットフルエンス及びターゲット放射照度において、表面320のエリア330をレーザビーム344でスキャンするようにプログラムされる。レーザビーム344は、スキャン領域336の特定の1つに対応するレーザビーム平均出力、及びスキャン領域336の特定の1つに対応するレーザビーム直径を有している。
【0022】
レーザは、スキャン幅方向342及び横断方向346を含むラスター態様でスキャンすることができる。レーザは、スキャン幅方向342には比較的迅速に、横断方向346には比較的ゆっくりとスキャンされる。スキャン幅方向342へのスキャニングは、非常に迅速なため、レーザビームは、幅がストリップ幅(例えば、ストリップ幅340)のレーザシートと見なされてもよい。しかしながら、レーザビーム自体が、ストリップ幅340に及ぶ幅を有していなくてもよいが、レーザはストリップ幅340に沿って移動し、その後、レーザは、横断方向346に均一なピッチ間隔を移動して、次のストリップ幅340を開始することに留意されたい。レーザシートの出力は、完全ではないにせよ、レーザビームの出力と実質的には同一であるが、レーザシートの放射照度(出力の表面密度であり、出力密度とも称される)は、レーザビームの放射照度から低下する。放射照度は、レーザシートの幅(ストリップ幅)に反比例する。よって、ストリップ幅が小さくなればなるほど、生成される放射照度が大きくなり、ストリップ幅が大きくなればなるほど、生成される放射照度は小さくなる。本開示の方法のストリップ幅は、約0.5mm以下、例えば約0.3mm以下、例えば約0.18mm以下、例えば約0.15mm以下、例えば約0.12mm以下、例えば約0.1mm以下、例えば約0.1mmから約5mm、例えば約0.1mmから約2mm、例えば約0.1mmから約0.18mm、例えば約0.2mmから約0.15mm、例えば約0.2mmから約0.12mm、例えば約0.5mmから約1mmとすることができる。ストリップ幅が狭いと、基板に沿ったレーザの移動をより速くすることができ、使用されるレーザ出力を増加させることができることが分かった。これらのパラメータは、ハッチ間隔を減少させることができ、ひいてはアブレーションされた製品材料の割れや応力を低減する。
【0023】
レーザアブレーションのアブレーション有効性(即ち、アブレーションの有効性)は、レーザ出力の表面密度及び表面320でのレーザエネルギーの表面密度によって決定される。レーザ出力の表面密度(レーザ出力をその出力を受け取る表面積で除算する)は、放射照度として知られている。レーザエネルギーの表面密度(レーザエネルギーをそのようなエネルギーを受け取る表面積で除算する)は、フルエンスとして知られている。レーザ波長、表面材料、及びアブレーションされる材料といった他のファクタもまた、アブレーション効果に影響を及ぼすことがある。
【0024】
付加製造装置300は、スキャン領域336の各々に対して動作パラメータを調節するように構成され、スキャン領域336の各々が、同一のターゲットフルエンス及び同一のターゲット放射照度でスキャンされる。同一のフルエンス及び放射照度でスキャンすることは、スキャン領域336の各々に対して、同一のアブレーション効果を提供する。フルエンス及び放射照度は、主にストリップ幅によって決定される。ストリップ幅が変わる(スキャニング速度が一定もままで)と、フルエンス及び/又は放射照度は変更されるが、これは、表面でのレーザの滞留時間が調節されるからである。
【0025】
スキャン領域336は、表面320のエリア330内に配置される。表面320は、装置300によるレーザアブレーションによってアブレーションされるワークピース324の表面である。概して、ワークピース324は、金属(高強度アルミニウム等)及び/又はセラミックなどの硬質及び/又は弾性材料を含む。表面320は、実質的に金属及び/又はセラミック表面でありうる。
【0026】
ワークピース324は、風力タービンのブレード等の構成要素とすることができる。少なくとも1つの態様では、ワークピース324は、輸送体である。輸送体構成要素は、輸送体の任意の適切な構成要素、例えば、航空機、自動車などのパネル又は継手のような構造的構成要素である。輸送体構成要素の例は、翼(回転子ブレードなど)、補助動力装置、航空機の機首、燃料タンク、テールコーン、パネル、2つ以上のパネル間のコーティングされた重ね継手、翼と胴体のアセンブリ、航空機の構造複合材、胴体の本体継手、翼のリブと外板の継手、及び/又はその他の内部構成要素を含む。
【0027】
スキャン領域336は各々、エリア330の別個の領域である(スキャン領域336は、部分的に重なってもよい)。スキャン領域336の各々は、エリア330の小さなセクションであり、実質的に、レーザビーム344によってスキャン幅方向342に掃引されるエリアである。レーザビーム344は、付加製造システム304によって方向付けられ、スキャン領域336間で実質的に連続して順次移動する。したがって、スキャン領域336の1つが完成すると、続いて、スキャン領域336の別の1つが開始する。スキャン領域336の個々の領域は、横断方向346に分配される。
【0028】
ラスター形式で、レーザは横断距離及びスキャン幅距離を移動し、このスキャン幅距離はストリップ幅340に対応し、レーザが沿って移動するストリップ幅340の各々が、横断距離に対応する均一なピッチ間隔だけ、次のストリップ幅から分離している。したがって、本開示の方法のスキャン幅が狭いため、横断距離もまた小さくなる可能性があり、これにより、所与の部品のストライプ全体に均一な入熱と温度勾配の減少がもたらされ、歪みと凝固速度が低下する。本開示の方法の横断距離は、約5mm以下、例えば約2mm以下、例えば約0.18mm以下、例えば約0.15mm以下、例えば約0.12mm以下、例えば約0.1mm以下、例えば約0.1mmから約5mm、例えば約0.1mmから約2mm、例えば約0.1mmから約0.18mm、例えば約0.2mmから約0.15mm、例えば約0.2mmから約0.12mm、例えば約0.5mmから約1mmとすることができる。本開示の方法のスキャン幅距離は、約0.3mm以下、例えば約0.25mm以下、例えば約0.2mm以下、例えば約0.15mm以下、例えば約0.1mm以下、例えば約0.08mm以下、例えば約0.05mmから約0.3mm、例えば約0.08mmから約0.25mm、例えば約0.1mmから約0.25mm、例えば約0.1mmから約0.2mm、例えば約0.15mmから約0.2mm、例えば約0.15mmから約0.18mmとすることができる。横断距離及びスキャン幅距離は、集合的に、特定の表面積のスキャン密度を提供し、本開示の方法が、スキャン密度で実行される。例えば、スキャン密度は、例えば、1m2あたり約5,000レーザパスから1m2あたり約25,000レーザパス、例えば、1m2あたり約8,750レーザパスから1m2あたり約18,750レーザパス等、高くすることができる。スキャン密度が高いと、所与の部品のストライプにわたって均一な入熱と温度勾配の低減がもたらされる可能性があり、歪みと固化率が低下することが分かった。
【0029】
更に、本開示の小さな横断距離により、小さなハッチ間隔がもたらされる。本明細書で使用される際に、「ハッチ間隔(hatch spacing)」という用語は、2つの隣接したスキャン幅パスの間の均一なピッチ間隔又は距離を指すことがある。所与のスキャンされるエリア(例えば、1m2あたり1つのパス)のハッチ間隔の平均は、「平均ハッチ間隔」と称される。本開示の方法は、低い平均ハッチ間隔で実行することができる。例えば、平均ハッチ間隔は、約0.04mmから約2mm、例えば約0.07mmから約0.15mm、例えば約0.09mmから約0.13mm、例えば約0.11mmとすることができる。
【0030】
レーザ及びレーザビーム344は、スキャン領域336の各々で放射照度及びフルエンスを制御するように調節可能ないくつかの特性を有している。本開示のレーザは、一定の出力を有することができる(例えば、出力はパルス化されない)。レーザビーム344は、レーザビーム平均出力及びレーザビームスポットエリア(表面320に衝突するときのレーザビーム344の領域)を有している。レーザビーム344は、スキャン幅方向342に、ラスター経路スキャン速度(スキャン領域336の異なる領域で異なることがある)で、スキャン領域336にわたって掃引される。レーザビーム344は、横断方向346に、横断スキャン速度(スキャン領域336の異なる領域で異なることがある)で、スキャン領域336の間で掃引される。特性(横断スキャン速度、ラスター経路スキャン速度、レーザビーム平均出力、及びレーザビームスポットエリア)の各々は、スキャン領域336の各々に対して独立して、付加製造装置300によって、制御可能又は調節可能である。特性のすべてというわけではないが一部が、スキャン領域336ごとに同一でありうる。少なくとも1つの態様では、本開示の方法は、スキャン幅方向に、1,000mm/秒以上、例えば約1,100mm/秒から約3,000mm/秒、例えば約1,300mm/秒から約2,800mm/秒、例えば約1,500mm/秒から約2,500mm/秒、例えば約1,700mm/秒から約2,200mm/秒のラスター経路スキャン速度で、レーザ(及びレーザビーム)を掃引することを含む。少なくとも1つの態様では、本開示の方法は、所定の移動速度で、均一なピッチのラスター経路に沿って移動するレーザ(及びレーザビーム)を含み、ラスター経路が0.5mm未満のストリップ幅内で交互に前後し、レーザの出力密度レベルが最大出力の少なくとも80%であり、所定の移動速度により、スキャン幅方向の移動速度が1,000mm/秒以上になる。本開示の方法は、1,000mm/秒以上、例えば約1,100mm/秒から約3,000mm/秒、例えば約1,300mm/秒から約2,800mm/秒、例えば約1,500mm/秒から約2,500mm/秒、例えば約1,700mm/秒から約2,200mm/秒の横断スキャン速度で、レーザ(及びレーザビーム)を掃引することを含む。少なくとも1つの態様では、レーザ(及びレーザビーム)は、スキャン幅方向に、横断スキャン速度と実質的に同一のラスター経路スキャン速度で、移動(掃引)される。レーザは、約200Wから約1,000W、例えば約300Wから約600W、例えば約400Wから約500W、例えば約400Wから約450Wのレーザビーム平均出力を有することができる。レーザの狭いストリップ幅を使用することによって、レーザの狭いストリップ幅を使用することによって、ストライプ内のレーザ移動経路の振動の振幅が減少する。したがって、設定された移動速度について、レーザヘッドは、ストライプに沿ってより速く移動することができる。レーザヘッドをより速く移動させることにより、従来のレーザ焼結プロセスと比較して、増加したレーザ出力を使用できるようになる(減少した熱勾配を得ながら)。少なくとも1つの態様では、レーザは、レーザの最大出力の少なくとも80%、例えば少なくとも約85%、例えば少なくとも約90%、例えば少なくとも約95%、例えば少なくとも約99%、例えば約100%の出力密度レベルを有することができる。
【0031】
付加製造装置300について、放射照度は、レーザビーム平均出力及びレーザビームスポットエリア(レーザビーム直径によって決定される)の関数である。本明細書で使用される際、ターゲット放射照度は、ピーク放射照度(即ち、レーザビームピーク出力を、レーザビーム344によって覆われた表面で除算する)を指す。概して、レーザビームピーク出力は、レーザビーム平均出力の関数である。ターゲット放射照度は、レーザビーム平均出力を増加させること及び/又はレーザビームスポットエリアを減少させること(例えば、ビーム直径を減少させること)によって、増加させることができる。レーザビーム平均出力が減少すると、ターゲット放射照度は、レーザビームスポットエリアの減少(比例)を補償することによって、維持することができる。少なくとも1つの態様では、本開示のレーザビームは、約0.05mmから約0.2mmのビーム直径、例えば約0.05mmから約0.18mm、例えば約0.08mmから約0.15mm、例えば約0.1mmから約0.14mm、例えば約0.13mmのビーム直径を有している。
【0032】
付加製造装置300について、フルエンスは、レーザビーム平均出力、ストリップ幅340、及び横断スキャン速度の関数である。本明細書で使用されるように、ターゲットフルエンスは、エリア330にわたってスキャンされる際のレーザビーム344のフルエンスを指す。ターゲットフルエンスは、以下の方程式に従って計算することができる。
F = P Sw × Ts (方程式1)
ここで、Fはターゲットフルエンス、Pはレーザビーム平均出力、Swはストリップ幅340、かつTsは横断スキャン速度である。ターゲットフルエンスは、レーザビーム平均出力を低下させ、ストリップ幅340を増加させ、及び/又は横断スキャン速度を増加させることによって、低下させることができる。ストリップ幅340が低下する場合、ターゲットフルエンスは、横断スキャン速度の補償増加(反比例)によって、維持することができる。
【0033】
ラスター経路スキャン速度、ストリップ幅340、及び横断スキャン速度は、付加製造システム304によって実装される。付加製造システム304は、レーザビーム344をエリア330(例えばスキャン領域336内)の表面320に伝達するように構成された1つ又は複数のレーザを有している。付加製造システム304は、スキャン領域336ごとに、ラスター経路スキャン速度で、スキャンライン332に沿って、スキャン幅方向342に、ストリップ幅340に対応するスキャン幅距離だけレーザビーム344をスキャンするように構成される。スキャンライン332は、必ずしも真っ直ぐな線ではなく、円弧、曲線、及び/又はセグメント化された線であってもよい。概して、ラスター経路スキャン速度は、横断スキャン速度よりもはるかに速く、レーザビーム344は、ラスター経路スキャン速度でスキャンされる際に、レーザシートとして取り扱うことができ又は見なすことができる。例えば、ラスター経路スキャン速度は、横断スキャン速度の1,000倍大きい可能性がある。付加製造システム304は、レーザビーム344を光学的にスキャンするように構成されるが、これは、レーザビーム344を光学的にスキャンすることが、概して、レーザビーム344を機械的にスキャンするよりもはるかに速いからである。付加製造システム304は、反照検流計及び/又は多面鏡などの高速スキャンのためのレーザスキャニング装置を含む。ラスター経路スキャン速度及び横断スキャン速度は、別個に変更することができる。
【0034】
公称ストリップ幅、ターゲットフルエンス、及びターゲット放射照度の選択は、公称レーザビーム平均出力、公称横断スキャン速度、及び/又は公称レーザビームスポットエリアを決定するための十分な情報を提供することができる。代替的には、公称パラメータは、ターゲットフルエンス及びターゲット放射照度を定義することができる。公称ストリップ幅、ターゲットフルエンス、及び/又はターゲット放射照度の選択は、付加製造装置300を調整し、様々なワークピース324上に存在しうる様々な材料を製造するのに有用でありうる。
【0035】
スキャン領域336は、表面320の検査又はモデリングによって、決定することができる。スキャン領域336は、エリア330を一連の領域に分割することによって決定することができ、その領域の各々が、領域(スキャン領域336の個々の領域)のただ1つのストリップ幅によって説明されうる。スキャン領域336は、他の装置及び/又はオペレータによって決定することができ、次にコントローラ310に提供され、提供されたスキャン領域336のパターンに従う。よって、コントローラ310は、スキャニング動作専用にすることができ、スキャン領域136を決定するために必要でないこともある。
【0036】
スキャン領域336は、表面320のエリア330を識別し、エリア330をスキャン領域336に分割することによって、決定することができる。表面320及び/又はワークピース324の仮想モデルは、エリア330及び/又はスキャン領域336の正確な位置決定を容易にしうる。仮想モデルは、2次元(2D)又は3次元(3D)モデルであり、表面、境界、並びに/又は表面320及び/若しくはワークピース124を記述する点の電子的記述でありうる。例えば、仮想モデルは、CAD(コンピュータ支援設計)モデル、境界表現、及び/又は表面モザイク状配列でありうる。
【0037】
スキャン領域336の各領域は、異なるストリップ幅340を有することができる(少なくとも1つのストリップ幅340は異なる)。スキャン領域336の各領域のストリップ幅340は、表面320の仮想モデルから決定されるスキャン領域336及び/又はエリア330のサイズによって、決定することができる。表面320及び/又はワークピース324の仮想モデルは、スキャン領域336の各々に対するストリップ幅340の正確な決定を促進しうる。
【0038】
表面320のレーザアブレーションは、スキャン領域336の1つから始まり、他のスキャン領域336の各々で続行する。スキャン領域336の最初の領域は、エリア330のエッジへの近接度及び/又は他のスキャン領域336への近接度に基づき、選択される。スキャン領域336の順序は、表面320のエリア330の有効なレーザアブレーションを可能にする。例えば、スキャン領域336の第1の領域(及び後続のスキャン領域336)の完了が、スキャン領域336の次の1つ又はその近くにあるように、スキャン領域336の第1の領域と後続のスキャン領域336を配置することにより、付加製造装置300がスキャン領域336間を移動することに費やされる時間がほとんど(又は全く)なく、エリア330をスキャンできるようになる。
【0039】
上記のように、ストリップ幅340が、第1の臨界ストリップ幅より小さく、かつ第2の臨界ストリップ幅以上であるとき、横断スキャン速度を最大の横断スキャン速度に等しくし、スキャン領域336の各々に対してストリップ幅340に比例してスキャン速度を決定することによって、コントローラは、横断スキャン速度、レーザビーム平均出力、及びレーザビームスポットエリアを決定するようにプログラムされる。第1の臨界(critical)ストリップ幅は、第2の臨界ストリップ幅より大きい。
【0040】
付加製造装置300は、最大の横断スキャン速度を有する。例えば、横断スキャン速度は、付加製造システム304及び/又はワークピース324を並進させる機械的構成要素の信頼できる動作によって、限定することができる。ストリップ幅340が第1の臨界ストリップ幅より小さいスキャン領域336については、最大の横断スキャン速度より大きい横断スキャン速度を選択することによって、ターゲットフルエンスを実現することができる。ストリップ幅340が小さくなればなるほど、同一のターゲットフルエンスを作成するために必要な横断スキャン速度がますます大きくなりうる。ストリップ幅340が、横断スキャン速度が最大の横断スキャン速度より大きいことを意味するほど十分に小さい(即ち、第1の臨界ストリップ幅より小さい)場合、横断スキャン速度を最大の横断スキャン速度に設定し、レーザビーム平均出力を低減し、最大の横断スキャン速度、及び第1の臨界ストリップ幅より小さいストリップ幅340に基づいて、ターゲットフルエンスに達することができる。レーザビーム平均出力は、ターゲットフルエンスに達するように、ストリップ幅340に比例して(方程式1にしたがって)低下しうる。
【0041】
スキャン領域336は、互いに連続し、即ち、スキャン領域336に隣接し、互いに接触し、部分的に重なり、及び/又は連結する。連続的なスキャン領域336で、レーザビーム344は、スキャン領域336の1つの領域からスキャン領域336の次の領域に連続運動でスキャンすることができ、スキャン領域336の間で付加製造システム304に対して表面320を並進させる必要がない。よって、連続的なスキャン領域336により、スキャン領域336の間での遅延、ひいてはエリア330のアブレーションの非有効性が発生する必要はない。連続的なスキャン領域336は、エリア330を提供し、そのエリア330は、連続的であり、かつスキャン領域336のすべてを包含するために単一の境界を有することを特徴とする。連続的なエリア330は、内部ボイド又は空間(スキャン領域336の1つに含まれない領域)を有していないこともある。
【0042】
付加製造システム304を表面320のエリア330から分離するスキャン間隔348は、各スキャン領域336内で実質的に一定である。スキャン領域336の1つの内部の実質的に一定の(又は均一な)スキャン間隔348は、スキャン領域336のその1つの中に、実質的に一定の(又は均一な)レーザビームスポットエリアを構築することがある。スキャン領域336の各々に対して、スキャン間隔348は、実質的に一定(又は均一)でありうるが、スキャン領域336の異なる領域は、異なるスキャン間隔348値でスキャンすることができる。スキャン間隔348(あるいはレーザビームスポットエリア)は、スキャン領域336の各々に対して、独立して調節可能である。
【0043】
スキャン間隔348は、スキャン領域336の間で変更しなくてもよく、これにより、付加製造システム304に対して表面320を並進させずに、スキャン領域336の間での移行を容易にすることができる。すべてのスキャン領域336に対する実質的に一定の(又は均一な)スキャン間隔348は、レーザビームスポットエリア(例えば直径)の調節を排除しないことがある。レーザビームスポットエリアは、表面320の、付加製造システム304からの焦点距離を調節することによって、必要又は希望に応じて変更可能である。
【0044】
直角(垂直)な入射角で各スキャン領域336をスキャンすることにより、スキャン領域336に効果的なアブレーションを提供することができる。レーザビーム344が表面320に対して垂直に配向されるときに、レーザビーム344は、より高い(又は最大の)ターゲット放射照度を有することができる。レーザビーム344が垂直(直角)とは大幅に異なる角度で表面320に当たると、レーザビーム344のスポットは歪んで大きくなる(したがって、ターゲット放射照度が低下する)ことがある。本明細書で使用される際に、垂直な入射角は、表面320に対しておよそ直角(約90o、例えば約80oから約100o、例えば約85oから約95oなど)である。
【0045】
ターゲットフルエンス及びターゲット放射照度を適切に選択することにより、エリア330は、エリアオーバー330の外側の領域の大幅なオーバーアブレーション、大幅なアンダーアブレーション、又はエリア330の外側の領域を意図なくスキャンすることなく、効率的にアブレーションすることができる。従来のレーザアブレーションと比較して、スキャン領域336の間のストリップ幅340の変化は、スキャン領域336のすべてのターゲットフルエンス及びターゲット放射照度を維持するように補償される。
【0046】
動作パラメータ(例えば、横断スキャン速度、レーザビーム平均出力、及びレーザビームスポットエリア)は、スキャン領域336のうちの1つのストリップ幅340、ターゲットフルエンス、及びターゲット放射照度に基づき、スキャン領域336のその1つに対して独立して決定することができる。動作パラメータは、ターゲットフルエンス及びターゲット放射照度に基づき、決定されてもよい。
【0047】
スキャン領域336は、スキャン領域336が表面320のエリア330内に配置され順序付けられるように、順次スキャンすることができる。順次スキャンすることは、各スキャン領域336を次々順番にスキャンすることを含む。順次スキャンすることは、付加製造システム304、レーザビーム344、及び/又はワークピース324をスキャン領域336の間で移動させる時間を短縮し、よって、順不同のスキャンに比べて効率を上げることができる。
【0048】
表面320の順次のスキャンは、スキャン領域336の1つで開始し、スキャン領域336の別の各領域で続けることができる。スキャン領域336の最初の領域は、エリア330のエッジへの近接度及び/又は他のスキャン領域336への近接度に基づき、選択される。スキャン領域336の順序は、表面320のエリア330の有効なレーザアブレーションを可能にする。例えば、スキャン領域336の第1の領域(及び後続のスキャン領域336)の完了が、スキャン領域336の次の1つ又はその近くにあるように、スキャン領域336の第1の領域と後続のスキャン領域336を配置することにより、付加製造装置300がスキャン領域336間を移動することに費やされる時間がほとんど(又は全く)なく、エリア330をスキャンできるようになる。
【0049】
スキャン領域336の少なくとも1つのストリップ幅340がスキャン領域336の別の1つのストリップ幅340と異なるとき、スキャン領域336の少なくとも1つに対するレーザビーム344の横断スキャン速度、レーザビーム平均出力、又はレーザビームスポットエリアのうちの少なくとも1つは、スキャン領域336の他の1つの領域に対するレーザビーム344の横断スキャン速度、レーザビーム平均出力、又はレーザビームスポットエリアのうちの少なくとも1つとは異なる。
【0050】
スキャン領域336のすべてに対してターゲットフルエンス及びターゲット放射照度を維持するために、スキャン領域336間でのストリップ幅340の変更を補償するように、横断スキャン速度、レーザビーム平均出力、及び/又はレーザビームスポットエリアの1つ又は複数の変更を使用することができる。
【0051】
横断スキャン速度は、レーザビーム平均出力を、ストリップ幅340とターゲットフルエンスとの積で除算したものである。初期のレーザビーム平均出力及びストリップ幅340(スキャン領域336の少なくとも1つに対する)が、横断スキャン速度の設定に適している(例えば、計算される横断スキャン速度が動作の制限内にある)場合、横断スキャン速度は、スキャン領域336の少なくとも1つのストリップ幅340とターゲットフルエンスとの積である。
【0052】
レーザビーム344は、初期のレーザビーム平均出力を有している。スキャン領域336は、適合されたスキャン領域を含む。スキャン領域336の各々に対して、横断スキャン速度、レーザビーム平均出力、及びレーザビームスポットエリアを決定することは、適合されたスキャン領域に対する予測横断スキャン速度が、最大の横断スキャン速度よりも大きいと決定することを含む。適合されたスキャン領域に対する予測横断スキャン速度は、初期のレーザビーム平均出力が、適合されたスキャン領域のストリップ幅340とターゲットフルエンスとの積で除算されたものである。本開示の方法は、適合されたレーザビーム平均出力を決定することを含み、この適合されたレーザビーム平均出力は、ターゲットフルエンス、適合されたスキャン領域のストリップ幅340、及び最大の横断スキャン速度の積である。
【0053】
付加製造装置300は、最大の横断スキャン速度を有することがある。例えば、横断スキャン速度は、付加製造システム304及び/又はワークピース324の機械的構成要素(即ち、レーザ位置決め装置306の構成要素)の信頼できる動作によって制限することができる。ストリップ幅340が第1の臨界ストリップ幅より小さいスキャン領域336については、最大の横断スキャン速度より大きい予測横断スキャン速度を選択することによって、ターゲットフルエンスを実現することができる。そのようなスキャン領域336は、適合されたスキャン領域と称されうるが、これは、ターゲットフルエンスを達成し、最大の横断スキャン速度を超えないようにするのに、動作パラメータの適合が要求されるからである。適合されたスキャン領域については、予測横断スキャン速度を最大の横断スキャン速度に設定することができ、適合されたレーザビーム平均出力を初期のレーザビーム平均出力から低下させることができ、最大の横断スキャン速度及び適合されたスキャン領域のストリップ幅340に基づき、ターゲットフルエンスに到達する。適合されたレーザビーム平均出力は、方程式1に従って設定することができ、即ち、適合されたレーザビーム平均出力は、ターゲットフルエンス、適合されたスキャン領域のストリップ幅340、及び最大の横断スキャン速度の積である。
【0054】
表面320のエリア330をスキャンすることは、レーザビーム344が、適合されたレーザビーム平均出力、及び適合されたスキャン領域に対するレーザビームスポットエリアを有する一方で、適合されたスキャン領域のストリップ幅340にわたって最大の横断スキャン速度で、適合されたスキャン領域をスキャンすることを含む。
【0055】
スキャン領域336の各々に対して、横断スキャン速度、レーザビーム平均出力、及びレーザビームスポットエリアを決定することは、適合されたスキャン領域の予測レーザパルス繰り返し率が、最小のレーザパルス繰り返し率よりも低いと決定することを含む。適合されたスキャン領域に対する予測レーザパルス繰り返し率は、適合されたレーザビーム平均出力を、ターゲット放射照度、及び適合されたスキャン領域に対するレーザビームスポットエリアの積で除算したものである。
【0056】
スキャン領域336の各々に対して同一のターゲットフルエンス及びターゲット放射照度を使用することにより、エリア330にわたる均一なアブレーションが容易になる。
【0057】
公称ストリップ幅、ターゲットフルエンス、及びターゲット放射照度の選択は、公称レーザビーム平均出力、公称横断スキャン速度、及び/又は公称レーザビームスポットエリアを決定するための十分な情報を提供することができる。代替的には、公称パラメータは、ターゲットフルエンス及びターゲット放射照度を定義することができる。公称ストリップ幅、ターゲットフルエンス、及び/又はターゲット放射照度を選択することは、付加製造装置300を調整し、様々なワークピース324上に存在しうる(表面320の)異なる材料をアブレーションするのに有用でありうる。
【0058】
本開示の方法は、レーザビーム344の最大の平均出力を、ターゲットフルエンス及び最大の横断スキャン速度の積によって除算したものである最大のストリップ幅を決定することを含む。レーザビーム344の最大の平均出力は、レーザ302の動作制限によって制限されてもよい。最大の横断スキャン速度は、付加製造装置300の機械的制限によって制限されてもよい。決定されると、最大ストリップ幅を使用して、エリア330にアブレーションの可能性があると認定し、最大のストリップ幅よりも大きいストリップ幅340を含まない別個のサブエリアに領域330を分割し、及び/又は最大ストリップ幅以下のストリップ幅340を各々が有するスキャン領域336に領域330をセクション分けすることができる。
【0059】
動作パラメータ(例えば、横断スキャン速度、レーザビーム平均出力、及びレーザビームスポットエリア)を決定することは、スキャン領域336のスキャン中に実行することができる。スキャン領域336の個々の領域をスキャンする前に、スキャン領域336のその個々の領域の動作パラメータが決定される。スキャン領域336の1つの領域の動作パラメータを決定することは、スキャン領域336のその1つの領域をスキャンするためだけの必要条件である。動作パラメータを決定することは、一度に(例えば、スキャン領域336の個々の領域のスキャンを開始する直前に、並びに/又はスキャン領域336の個々の領域が受け取られる及び/若しくは決定されるとき際に)、スキャン領域336の1つの領域に対して実行することができる。スキャンすることと少なくとも部分的に同時に動作パラメータを決定することにより、スキャン中の動作パラメータ及び/又はスキャン領域336が動的に変化する可能性がある。加えて又は代替的には、スキャンすることと少なくとも部分的に同時に動作パラメータを決定することにより、動作パラメータを決定するために必要な計算オーバーヘッド時間を、スキャン中に、付加製造システム304、レーザビーム344、及び/又はワークピース324と重ねることができ、動作の有効性が増加する。
【0060】
ラスタースキャン速度は、アブレーションされる材料の量及び/又は種類、アブレーションされる材料の吸光度、並びにレーザ波長に従って決定することができる。より遅いラスタースキャン速度は、より速いラスタースキャン速度よりも短い時間で、表面320の小さな領域(つまり、レーザビームスポットのサイズの領域)により多くのエネルギーを堆積することができる。レーザビーム344が上に重なる材料をアブレーションする際に、より速いラスタースキャン速度は、表面320の下に重なる材料に対する熱の影響を低減するのに有益でありうる。より速いラスタースキャン速度は、蒸気及び/又は微粒子(例えば煙)が十分に散逸して、レーザビーム344との光学干渉を(より遅いラスタースキャン速度と比較して)低減できるようにする。概して、ラスタースキャン速度は、十分速いため、スキャンされたレーザビーム344がレーザシートとして扱われる。ラスタースキャン速度は、ストリップ幅340と横断スキャン速度の積を、スキャン領域336の各領域のレーザビームスポットエリアの有効平均直径で除算したものより大きい(又はそれに等しい)可能性がある。
【0061】
レーザビーム344が横断スキャン速度で横断方向346にレーザビームの有効平均直径の距離だけ移動する前に、ラスタースキャン速度は、スキャン領域336の各領域の全体がレーザビーム344によってスキャンされるのに十分なほど大きくなる可能性がある。そのようなラスタースキャン速度でのスキャンは、スキャン領域336及び領域330の均一な適用範囲を提供する。レーザビームスポット領域の有効平均直径は、レーザビームスポット領域と同じ面積を有する円の直径である。レーザビームスポット領域は、円形の輪郭を有していても有していなくてもよい。
【0062】
ラスタースキャン速度は、所与の装置(付加製造装置300等)に対して達成することができる最大のストリップ幅及び最大の横断スキャン速度に対応するよう設定される。このようなラスタースキャン速度は、スキャン領域336の各々に使用することができる。したがって、ターゲットフルエンス又はターゲット放射照度を維持するために、ラスタースキャン速度がスキャン領域336の間で変更される必要はない。
【0063】
図示した付加製造機器及びプロセスと、本明細書の付加製造機器及びプロセスの他の例についての記載は、何らかの方法で本開示を限定することを意図していない。むしろ、図示及び記載した付加製造機器は、本開示の態様を論証することを意図している。付加製造装置300は、任意の種類の付加製造機器を含むことができ、そのような可能性のすべてが、本開示の主旨及び範囲内にあることが意図される。
【0064】
方法を実行するためのハードウェア
ここで
図4-12を参照すると、付加製造システム304の一例が示されており、付加製造システムは、非限定的に航空宇宙、自動車等を含む様々な産業で用いられることがある、部品又は製品404(
図4を参照)(
図3のワークピース324とすることができる)を形成するように構成される。付加製造システム304は、異なる形状及びサイズを有し、様々なレベルの複雑性を有する幅広い種類の製品404を制作するように構成される。製品404は、金属、アルミニウム、アルミニウム合金、チタニウム、チタニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、ステンレス鋼及び合金鋼、コバルト合金、プラスチック、ポリマー、ウルテム(ultem)、ナイロン、又はこれらの組み合わせを含む様々な材料から作られてよい。
【0065】
本開示の1つ又は複数の態様による付加製造システム304は、幅広い種類の付加製造機器を備えることができる。例示のシステムでは、システム304は、レーザの付加製造機器を含む。本開示のシステムの他の例は、例えば、溶融堆積モデリング(FDM)、多重ジェットモデリング(MJM)、3D印刷、高速プロトタイピング、直接デジタル製造、積層製造、及び積層造形機器等の代替的な付加製造機器を組み込んでもよい。
【0066】
システム304は、付加製造ヘッド408によって形成される製品404の2つの表面416、420を処理するための2つの表面処理装置412を含みうる。表面416、420は、例えば、それぞれ内面及び外面であってよい。システム304はまた、付加製造ヘッド408によって形成される製品の単一の表面を処理するための単一の表面処理装置412を含むように構成されてもよい。また更に、システム400は、付加製造ヘッド408によって形成される製品404の任意の数の表面416、420を処理するための3つ以上の表面処理装置412を含んでもよい。図示したシステム304では、2つの表面処理装置412は、構造及び機能において実質的に類似する。システム304の他の例では、システムは、2つ以上の表面処理装置412を含んでもよく、上記そのような装置は、構造及び機能において異なっていてもよい。本明細書の説明及び関連する図面には、類似の構造及び機能を有する2つの類似する表面処理装置412が含まれる。
【0067】
表面処理装置412は、付加製造ヘッド408によって形成される製品の表面を滑らかにするよう構成することができる。言い換えれば、表面処理装置412は、付加製造ヘッド408によって形成される製品の表面の粗さを低減するように構成することができる。表面処理装置412は、付加製造ヘッド408に移動可能に連結される。表面処理装置412は、付加製造ヘッド408に回転可能に連結されてもよい。表面処理装置412は、様々な方法で付加製造ヘッド408に連結されてよい。付加製造システム304はまた、付加製造ヘッド408に回転可能に連結された筐体424も含む。表面処理装置412は、筐体424に連結される。筐体424は、付加製造ヘッド408を通って長手方向にかつ中心に延びる、仮想の縦中心軸428(
図6)を中心として回転するように構成される。例えば
図9に示されるように、システム304は、筐体424を付加製造ヘッド408に対して回転可能に位置決めするための手段426を含みうる。1つの態様では、手段426は、筐体424に連結されたサーボモータであってよい。再び
図3を参照すると、筐体424は、例えば、付加製造ヘッド408と筐体424との間の玉軸受440を介して、付加製造ヘッドに回転可能に連結されうる。1つの例では、筐体424を製造ヘッド408に対して回転可能に位置決めするために、手段426は、筐体424に連結されてもよい。
【0068】
例えば
図4及び
図6を参照すると、表面処理装置412は、形成されている製品404に対してヘッド408が移動する際に、付加製造ヘッド408に対して後方に位置する。手段426は、表面処理装置412が付加製造ヘッド408に対して後方に位置するように、筐体424を付加製造ヘッド408に対して回転可能に位置決めする。表面処理装置412は、製品が付加製造ヘッド408によって形成されている際に、その場で製品を処理する。
【0069】
図4-
図12に示すシステム400では、表面処理装置412は、レーザビーム444を放射するように構成されたレーザ放射装置412である(
図10)。例えば
図4に示すシステム400は、支持部材448、レーザエネルギー源452(
図9)、及びレーザエネルギー源452に光学的に接続された第1の端部460と、支持部材448に連結された第2の端部464とを含むレーザ伝送装置456を更に含む。本開示の1つの態様によれば、レーザ放射装置450は、レーザ伝送装置456の第2の端部464でありうる。1つの例では、レーザ伝送装置456の第2の端部464は、おおむね多角形の断面を有するレーザビーム444を放射するためにおおむね多角形の形状になるように構成される。
【0070】
1つの例では、レーザ伝送装置456の第2の端部464は、おおむね多角形の断面を有するレーザビーム444を放射するために、多角形の形状のレーザ放射装置450に連結される。1つの変形例では、レーザ放射装置450は、おおむね長方形の断面を有するレーザビーム444を放射するために、長方形の形状であってもよい。長方形の形状には、正方形の形状が含まれる。例えば、システム400のいくつかの態様では、レーザ放射装置450が長方形の形状である場合、レーザビームが処理中の表面に衝突する際に、レーザビーム444が、レーザビーム444の全寸法H(例えば
図11及び12を参照)に沿って製品の表面に一定量のエネルギーを印加する。上述のレーザビームの構成により、レーザビームが衝突している製品の表面が、レーザビームの全寸法Hに沿って、確実に均等に処理される(例:均等に滑らかになる)。処理中の表面に衝突するレーザビームの全寸法Hに沿って製品表面を均等に処理することが可能になるレーザビーム444の形状のいくつかの例は、非限定的に、正方形、長方形、レーザビームの全寸法Hに沿って等しい寸法Wを有する何らかの他の形状を含む。
【0071】
例えば、
図11を参照すると、システムの他の例において、レーザ放射装置450は、外周がおおむねアーチ状の形状を有するレーザビーム444を放射するように構成される。システムの更なる例では、レーザ放射装置450は、おおむね円形のレーザビーム444を放射するように構成される。外周がおおむねアーチ状の形状を有するレーザビーム444を放射するようにシステムが構成される場合、そのような外周がアーチ状の形状は、少なくとも部分的にアーチ状の外周を有する任意の形状でありうる。外周がアーチ状の形状をしたいくつかの例は、非限定的に、円、半環、半円、長円形、又は不均一な形状を含む。レーザ放射装置450は、任意の形状を有するレーザビーム444を放射できると理解すべきである(
図11参照)。
【0072】
例えば
図9を参照すると、レーザ伝送装置456は、レーザ源452と、レーザ放射装置450に光学的に接続される。
図4-10に示されるシステムでは、レーザ伝送装置456は、光ファイバーケーブル456でありうる。例えば、
図4に示すように、システム304には、2つのレーザ伝送装置456が含まれる。付加製造システム304は、レーザビーム444(複数可)をレーザエネルギー源452からレーザ放射装置450へ伝送するための、任意の数のレーザ伝送装置456を含みうる。他の例では、レーザ伝送装置456は、レーザ源452から、付加製造ヘッド408によって形成される製品の表面に、レーザビーム444を光学的に伝送するように構成された他の装置であってもよい。いくつかの例は、非限定的に、鏡、他の光及びエネルギー反射部材、導光装置等を含む。レーザ放射装置450は、付加製造ヘッド408によって形成される製品の表面から間隔を置いて配置されるように構成される。付加製造システム304は、付加製造ヘッド408によって形成された製品と係合して、表面処理装置412を製品に対して配向するように構成されたガイド部材468を更に含む。ガイド部材468は、表面処理装置412aを製品の表面からある程度間隔を空けて配置する。図示したシステム304では、ガイド部材468はガイドローラ468である。ガイド部材468のホイールが、処理された表面416に直角な表面420と係合するように示されているが、例えば、使用中に付加製造システム304がラスター内で移動される場合などに、ホイールが、処理された表面416等の処理された表面と係合するように、ホイールを配置することができると理解すべきである。ホイールはまた、ラスタープロセス中に付加製造システム304を容易に操作するためのソケット継手のボールであってもよい。システムの他の例では、ガイド部材468は、例えば、製品の表面に係合して滑動する表面トラッキングシュー、又は他の何らかの種類のガイド部材等の他の種類のガイド部材であってよい。
【0073】
付加製造ヘッド408は、複数の層Lから製品を形成するように構成される(例えば
図4及び
図10を参照)。表面処理装置412は、付加製造ヘッド408によって様々な方法で形成される製品を処理するように構成される。1つの態様では、表面処理装置412は、複数の層Lのうちの1つを処理するように構成される(例えば
図10参照)。別の態様では、表面処理装置412は、複数の層Lのうちの2つ以上の層を同時に処理するように構成される。表面処理装置412は、多数の層Lを同時に処理するように構成されうる。
図12を参照すると、付加製造ヘッド408によって形成される製品の多数の層Lを処理する能力を示すために、レーザビーム444の様々なサイズの長方形の断面が示されている。任意の形状のレーザビーム444は、製品の様々な数の層を処理するために、様々な異なるサイズを有しうる。
【0074】
上述したように、表面処理装置412は、付加製造ヘッド408に対して移動するように構成される。
図6を参照すると、表面処理装置412は、付加製造ヘッド408に対し、表面処理装置412が付加製造ヘッド408によって形成される製品を処理することができる第1の(又は動作)位置と、表面処理装置412が製品を処理することができない第2の(又はアイドリング)位置との間で移動するように構成される。図示したシステム400では、表面処理装置412は、筐体424に回転可能に連結され、表面処理装置412は、第1の位置と第2の位置との間で回転する。続いて
図6、更には
図4、
図5、
図7及び
図8を参照すると、システム400は、仮想の縦中心軸470を有するシャフト469を含む。表面処理装置412は、シャフト469、及び第1の位置と第2の位置との間で関連する縦中心軸470を中心として回転するように構成される。代替的には、表面処理装置412は、任意の数の異なる方法を使って、付加製造ヘッド408に連結され、様々な異なる方法で第1の位置と第2の位置との間で移動してもよい。
【0075】
続いて
図4-8を参照すると、付加製造システム304はまた、連結部材446と、支持部材448とを含む。連結部材446は、筐体424と支持部材448との間で筐体424と支持部材448に連結され、支持部材448は、表面処理装置412を支持する。支持部材448は、連結部材446に対して、連結部材446の仮想の縦中心軸447(
図7)を中心として回転するように構成される。付加製造システム304は、連結部材446を受ける第1の開口部454と、第1の開口部454に対しておおむね垂直の第2の開口部455と、それぞれの支持部材448を受ける基部の対向面に画定される一対の凹部又はチャネル457を画定する基部453を更に含む。スナップ式リング458は、基部453を連結部材446に連結する。支持部材448の端部は、カウンタボア開口部459を含む。付加製造システム304はまた、ガイド部材468によって製品の表面に印加される力を調節する手段451も含む。製品の表面に対して表面処理装置412が一定の間隔を置いて維持されるように、ガイド部材468が製品の表面に当接して事前に設置される。1つの例において、事前の設置を調節する手段451は、カウンタボア開口部459と、バイアス部材461とカウンタボア開口部459を通って延びるファスナ462の内部に位置決めされる、コイルばね等のバイアス部材461を含む。ファスナ462は、基部453の第2の開口部455の中に螺入される。連結部材446は、内部の開口部又はスロット463を画定し、これにより、軸447を中心とした連結部材446に対する基部453の回転が可能になる。このため、基部453、バイアス部材461、ファスナ462、支持部材448、及び表面処理装置412が、1つのユニットとして、軸447を中心として連結部材446に対して回転する。それぞれ、ばね461を圧縮することによって、又はばねを緩ませることによって、ファスナ462を締め、又は緩ませて、ガイド部材468にかかる力、及び製品404の表面416、420に対する事前の設置状態を調節することができる。開口部又はスロット463は、連結部材446を部分的に貫通するように画定されてもよく、又は連結部材446を完全に貫通するように画定されてもよい。連結部材446を部分的に貫通するように、又は完全に貫通するように開口部又はスロット463を画定することで、ファスナ462と連結部材446との間に隙間ができ、ファスナ462が連結部材446に対して回転しやすくなる。
【0076】
1つの態様では、表面処理装置412は、少なくとも1つの軸を中心として回転するように構成される。少なくとも1つの軸は、軸428、447、470(
図6-8を参照)のうちの任意の1つ又は複数の軸でありうる。別の態様では、表面処理装置412は、少なくとも2つの軸を中心として回転するように構成される。少なくとも2つの軸は、軸428、447、470(
図6-8を参照)のうちの任意の2つ以上でありうる。更なる態様では、表面処理装置412は、3つの軸を中心として回転するように構成される。3つの軸は、3つの軸428、447、470(
図6-8を参照)の全てを含む。
【0077】
ここで
図4-10を参照すると、付加製造システム304は、上述したように、複数の表面処理装置412を含むように構成される。システム304の1つの態様では、表面処理装置412は、第1の表面処理装置412と、第1の表面処理装置412から間隔を置いて配置された第2の表面処理装置412とを含む。例えば
図5において示したように、第1の表面処理装置412と第2の表面処理装置412との間に空間472が提供される。第1の表面処理装置412と第2の表面処理装置412は、付加製造ヘッド408に対して後方に位置する。このため、付加製造ヘッド408によって形成された製品404(例えば
図10)の一部が、第1の表面処理装置412と第2の表面処理装置412との間の空間472に位置決めされる。1つの態様では、空間472に位置決めされた製品の一部は、製品404の少なくとも1つの層Lである。別の態様では、空間472に位置決めされた製品の一部は、同時に、製品204の少なくとも2つの層Lである。更なる態様では、空間472に位置決めされた製品の一部は、同時に、製品204の複数の層Lである。
【0078】
続いて
図4-10を参照すると、付加製造システム304は、上記のガイド部材468を含む。ガイド部材468は、第1のガイド部材468であり、付加製造システム304は、第1のガイド部材468に対向する第2のガイド部材468を更に含みうる。第1のガイド部材468と第2のガイド部材468は、付加製造ヘッド408によって形成された製品と係合するように構成され、これにより、第1の表面処理装置412及び第2の表面処理装置412と製品との間に隙間がもたらされる。第1のガイド部材468は、製品404の外面420と係合するように構成され、第2のガイド部材468は、製品404の内面416と係合するように構成される。図示したシステム400では、第1のガイド部材468と第2のガイド部材468とは、ガイドローラ468である。他の例では、第1及び第2のガイド部材468は、例えば製品の表面と係合して、製品の表面に当接して滑動する表面トラッキングシューといった、いかなる種類のガイド部材であってもよい。第1の表面処理装置412は、付加製造ヘッド408によって形成された製品の第1の表面を処理するように構成され、第2の表面処理装置412は、製品の第2の表面を処理するように構成される。第1の表面は、製品の外面420であり、第2の表面は、製品の内面416である。
【0079】
表面処理装置412は、様々な異なる種類の処理装置412であってよい。付加製造システム304が単一の表面処理装置412を含む例では、表面処理装置412は、電磁エネルギー(
図5、
図7、及び
図10を参照)を放射するように構成された開口部476を含む。付加製造システム304が2つ以上の表面処理装置412を含む例では、開口部は第1の開口部476であり、表面処理装置412は、第1の開口部476に対向し、電磁エネルギー(
図4、
図6、及び
図9を参照)を放射するように構成された第2の開口部476を更に含む。1つ例として、第1及び第2の開口部476は、おおむね同じ形状を有していてよい。別の例では、第1の開口部は、第1の形状を有していてよく、第2の開口部は、第1の形状とは異なる第2の形状を有していてよい。1つの態様では、第1の開口部476は、第1のレーザ伝送装置456の第2の端部464であってよく、第2の開口部476は、第2のレーザ伝送装置456の第2の端部464であってよい。
【0080】
続いて
図4-12、特に
図9を参照すると、付加製造装置300(
図3)のブロック図の例が示される。付加製造装置300は、付加製造システム304と、表面処理装置480と、電源984と、レーザ源452と、駆動機構988と、材料源992と、プロセッサ及び/又は中央処理装置(CPU)996と、メモリ900と、入力装置904と、出力装置908とを含む。装置300は、
図9に示すように配置され、本明細書に記載される特徴及び機能を有する、上述した構成要素のみを含むことに限定されない。むしろ、装置300は、より多くの、より少ない、又は異なる構成要素を含むことができ、より多くの、より少ない、又は異なる特徴及び機能を有することができ、そのような可能性は全て、本開示の主旨及び範囲内にあることが意図される。
【0081】
続けて
図9を参照すると、電源984は、必要に応じて、装置300の構成要素に電力を供給するように構成される。電源984は、単一の電源であってもよく、又は必要な電力出力を供給するために協働する複数の電源からなっていてもよい。あるいは、複数の電源は個別に動作可能であり、装置300の特定の構成要素に個別に電力を供給してもよい。電源984は、AC電源又はCD電源のどちらかであってもよく、又はAC及びDCの組み合わせを用いてもよい。
【0082】
レーザ源452は、レーザビーム944を生成し、レーザビーム944を、放射のために付加製造システム304の1つ又は複数のレーザ出力912(例えば
図6)に伝送する。1つ又は複数のレーザ出力912から放射されたレーザビーム944を、結合体又は収束点に集中させる。材料源992は、製品404を製造するために使用されることになる付加製造システム304に原材料を供給する。原材料は、任意の種類の形態(例えば、粉体、液体、固体等)を有する任意の種類の材料であってよい。材料は、付加製造システム304に配設された1つ又は複数の材料出口916から放出される。材料出口316は、例えば、開口部、ノズル等の様々な構成を含みうる。図示した例において、付加製造システム304は、複数のレーザ出力912の結合体又は収束点に対して位置合わせされた開口部490(
図9の916)からなる、単一の材料出口490(
図9の916)を含む。原材料は、材料出口916から放出され、レーザ出力912の結合体又は収束点に入り、ここで材料が溶けて溶融池が形成される。付加製造システム304が形成中の製品に対して前進すると、溶けた材料により、製品404の新たな層Lが形成される。材料が溶融池から出ると、溶けた材料は冷えて固まり始める。
【0083】
更に
図9を参照すると、プロセッサ又はCPU496は、装置300の様々な構成要素と通信し、及び/又は装置300の様々な構成要素を制御する。メモリ900は、コンピュータ可読メモリ媒体900であってよく、付加製造システム304の動作に必要なデータを記憶するように構成される。コンピュータ可読メモリ媒体900は、後にプロセッサ996によってアクセス可能な情報を記憶するのに使用することができる任意の媒体である。コンピュータ可読記憶媒体900は、コンピュータメモリ及びデータ記憶装置を含みうる。コンピュータメモリは、高速アクセスメモリであり、プロセッサ996によって実行可能なプログラム命令を実行するために使用されてもよい。コンピュータメモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリ、及び読取専用メモリ(ROM)を含みうる。データ記憶装置は、物理的な装置であってよく、オペレーティングシステム、コンピュータプログラム、プログラムモジュール、及びプログラムデータ等のプロセッサ996によってアクセス可能な任意の情報又はコンピュータプログラムを記憶するために使用してもよい。データ記憶装置及びそれらの関連するコンピュータ可読メモリ媒体は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール及び他のデータのストレージをシステムに提供する。データ記憶装置は、フロッピーディスク、ハードディスクドライブ、及び磁気テープ等の磁気媒体、コンパクトディスク(CD)、デジタルビデオディスク(DVD)、及びブルーレイディスク等の光媒体、及びランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリ、及び読み取り専用メモリ(ROM)等の固体メモリを含みうる。
【0084】
装置300のいくつかの態様では、メモリ900は、付加製造システム304の制御された動作に必要なデータからなるデータパケット920を含む。1つのデータパケット920は、付加製造ヘッド908を制御するのに必要なデータを含み、別のデータパケット920は、表面処理装置480を制御するのに必要なデータを含んでもよい。表面処理装置480は、付加製造システム304に連結され、付加製造システム304に対して後方に位置する。表面処理装置480は、付加製造システム304によって材料が堆積された後に、製品の1つ又は複数の表面を処理する。プロセッサ996はメモリ900と通信して、付加製造システム304に対する表面処理装置480の向きを制御するのに必要なデータを読み出す。
【0085】
特に指示のない限り、1つ又は複数のコンピュータ又はコンピュータシステムによって実行される工程の動作及び記号表現を参照しながら、本開示の主題が説明されることになる。これにより、コンピュータでて実行可能であると言われることがある、そのような動作及び工程が、データを構造的な形式で表す電気信号を介した装置300のプロセッサ996による操作を含むと理解されるだろう。この操作によりデータが変換され、又はデータが装置300のメモリ900の特定の場所に維持され、このデータにより、当業者に既知の方法で、装置300の工程が再構成され又は変更される。データが維持されるデータ構造は、データの形式によって規定される特有の性質を有するメモリの物理的な場所である。本出願の主題が上述の文脈で説明されているが、限定することを意図するものではなく、当業者に明らかであるように、本明細書に記載される動作及び工程のいくつかが、ハードウェア、ソフトウェア、及び/又はファームウェア及び/又はこれらいくつかの組み合わせで実装されてもよい。
【0086】
図9を更に参照すると、入力装置904により、ユーザは、装置300にデータを入力することができる。入力装置904は、幅広い種類の構成を有することができ、これらは全て本開示の主旨及び範囲内にあることが意図される。例えば、入力装置904は、キーボード、キーパッド、タッチスクリーンディスプレイ、アクチュエータ、スイッチ、ダイヤル、スライド機構、又はユーザが少なくとも一部において装置300に情報を入力し及び/又は装置300を制御することができるように構成された他の何らかの種類の機械装置、電気装置、又は電気機械装置でありうる。更に、装置300は、複数の入力装置904を含んでもよい。
【0087】
続いて
図9を参照すると、出力装置908は、ユーザによって認識可能な装置300から情報を出力する。出力装置908は、幅広い種類の構成を有することができ、これらは全て本開示の主旨及び範囲内にあることが意図される。例えば、出力装置908は、ディスプレイ、モニター、英数字インジケータ、照明装置(例えば、電球、LED、LEDアレイ等)、プリンタ又は他の画像生成装置、又はユーザによって認識可能な形式で装置300から情報を出力するように構成された他の何らかの種類の機械装置、電気装置、又は電気機械装置でありうる。更に、装置300は、複数の出力装置908を含んでもよい。
【0088】
駆動機構988は、付加製造システム304に連結され、プロセッサ996によって、付加製造システム304を所望の方法で移動させるように制御可能である。あるいは、付加製造システム304は、固定したままで、装置300によって製造される製品を基部又はテーブル上で支持して、この基部又はテーブルを駆動機構988によって付加製造システム304に対して移動させてもよい。いずれの場合にも、駆動機構988は、形成されている製品904と、付加製造装置300との間に、所望の相対並進運動をもたらす。装置300のいくつかの態様では、駆動機構988は、必要な相対並進運動を全て実施するための単一の駆動機構を備える。装置300の別の態様では、駆動機構988は、協働する複数の駆動機構を備える。
【0089】
表面処理装置480は、付加製造システム304によって形成される製品の1つ又は複数の表面を処理するように構成される。表面処理装置480は、付加製造システム304の後に続いて、付加製造システム304によって堆積される材料を処理する。表面処理装置480は、様々な方法で形成されている製品の表面を処理しうる。例えば、図示した装置300では、表面処理装置480により、製品の表面の粗さを滑らかにし又はその粗さを軽減することができる。この表面処理の例は、本開示を限定することを意図するものではない。むしろ、装置300は、例えば、コーティング又は熱処理といった任意の種類の表面処理を実施することができ、そのような可能性は全て、本開示の主旨及び範囲内にあることを意図している。表面処理装置480は、製品404の一部を、製品がその場で形成され動作している際に、処理してもよい。本開示のいくつかの態様では、表面処理装置480は、付加製造システム304によって堆積される材料の単一の層Lを処理しうる。他の態様では、表面処理装置480は、付加製造システム304によって堆積される材料の2つ以上の層Lを処理しうる。表面処理装置480はまた、付加製造システム304によって形成される製品の複数の層Lを処理するように構成されてもよい。
【0090】
ここで
図4-12を参照すると、図示した装置300において、表面処理装置480は、第1の表面処理装置412と第2の処理装置412とを含む。第1及び第2の処理装置412は、幅広い種類の処理装置を含むことができ、この結果、様々な方法で付加製造システム304によって形成される製品の表面を処理することができる。図示した装置300において、第1及び第2の表面処理装置412は、レーザ放射装置である。表面処理装置480はまた、第1の位置又は動作位置と第2の位置又はアイドリング位置との間で第1及び第2の表面処理装置412を移動するように構成された第1の駆動機構も含み、第1の位置又は動作位置において、第1及び第2の処理装置412は、付加製造システム304によって形成される製品の表面を処理するように構成され(例えば、
図6の実線を参照)、第2の位置又はアイドリング位置において、第1及び第2の処理装置412は、製品の表面を処理するようには構成されていない(例えば
図6の点線を参照)。1つの例では、第1の駆動機構は、サーボモータ又はステッピングモータである。別の例では、第1の駆動機構は、空気駆動式(例えば、回転式、線形型等)、油圧駆動式(例えば、回転式、線形型等)、又は電磁駆動式(例えば、ソレノイド)であってよい。
【0091】
本開示のいくつかの態様では、装置300は、付加製造システム304によって形成される製品の単一表面を処理するための、単一の表面処理装置412のみを含んでいてもよい。従って、本開示の代替態様を示すために、第2の表面処理装置412が、
図9に点線で示される。
【0092】
例えば、
図9を参照すると、表面処理装置480は、付加製造システム304に対して、表面処理装置480の筐体424を回転可能に位置決めする手段426を更に含む。いくつかの態様では、手段426は、付加製造システム304に連結されたオープンフレーム型サーボモータであってよい。他の態様では、手段426は、他の種類の駆動機構であってもよく、他の構成を有していてもよい。
【0093】
表面処理装置412はまた、第1及び第2の表面処理装置412に光学的に伝送されるレーザビーム444を生成するように構成された第2のレーザ源932も含みうる。この例では、第2のレーザ源932は、表面処理工程においてレーザビーム444を提供し、レーザ源452は、付加製造システム304にレーザビーム444を提供することになろう。
【0094】
図9に示すように、装置300の様々な構成要素を連結する線は、装置300の様々な構成要素間の幅広い種類の相互作用を表すことがある。更に、構成要素間のそのような相互作用は、いずれかの方向に発生してもよく、又は両方向に同時に発生してもよい。相互作用は、非限定的に、構成要素に電力供給する目的の電気エネルギー又は電力の伝送、構成要素間での電子データの通信、構成要素間の物理的物質の伝送、機械的結合、接続、取付け、又は構成要素間の係合、又は付加製造装置300の1つ又は複数の態様において付加製造システム200に起こりうる何らかの他の種類の相互作用を含みうる。装置300の様々な構成要素を連結する破線は、実線によって表される構成要素と機能及び目的において同様の相互作用を表しうるが、破線で表される相互作用は、本開示の代替態様に関連するものである。同様に、破線で表される構成要素は、本開示の代替態様を表す。
【0095】
例えば
図4及び
図9を参照すると、1つ例では、付加製造システム304の表面処理装置480が提示される。表面処理装置480は、付加製造システム304に連結されるように構成された筐体424と、筐体424に連結された表面処理装置412を含む。表面処理装置412は、機械装置又は光学装置のいずれかを含む。表面処理装置412は、付加製造システム304に対して移動するように構成される。1つの態様では、筐体424は、付加製造システム304に回転可能に連結される。そのような態様では、表面処理装置480は、付加製造ヘッド408に対して筐体424を回転可能に位置決めする手段426を更に含む。
【0096】
例えば
図4及び
図6に示すように、表面処理装置412は、付加製造システム304に対して後方に位置する。表面処理装置212は、付加製造システム304によって形成される製品404の表面から間隔を置いて配置されるように構成される。
【0097】
ここで
図4-10を参照すると、1つの態様では、表面処理装置412は、レーザビーム444を放射するように構成される。表面処理装置480は、レーザエネルギー源452、932から、付加製造システム304によって形成される製品の表面にレーザビーム444を伝送するために、レーザエネルギー源452、932、及びレーザエネルギー源452、932に連結されたレーザ伝送装置456を更に含む。表面処理装置412は、筐体424に連結された支持部材448も含み、レーザ伝送装置456は、レーザエネルギー源452、932に連結された第1の端部460と、支持部材448に連結された第2の端部464とを含む。1つの態様では、レーザ伝送装置456の第2の端部464の形状は、おおむね多角形であり、おおむね多角形の断面を有するレーザビーム444を放射する。別の態様では、レーザ伝送装置456の第2の端部464の形状は、おおむね長方形であり、おおむね長方形の断面を有するレーザビーム444を放射する。更なる態様では、レーザ伝送装置456は、外周がおおむね弓形の断面を有するレーザビーム444を放射するように構成される。1つの態様では、レーザ伝送装置は、光ファイバーケーブル456である。
【0098】
表面処理装置412は、付加製造システム304によって形成される製品と係合するように構成される。1つの態様では、表面処理装置412は、付加製造システム304によって形成される製品と光学的に係合するように構成される。
【0099】
1つの態様では、付加製造システム304は、複数の層Lから製品を形成するように構成され(
図4参照)、表面処理装置412は、複数の層Lのうちの少なくとも1つを処理するように構成される(
図4及び10を参照)。別の態様では、付加製造システム304は、複数の層Lから製品を形成するように構成され、表面処理装置412は、複数の層Lのうちの2つ以上の層を同時に処理するように構成される。
【0100】
表面処理装置412は、付加製造システム304に対して第1の(動作)位置と、第2の(アイドリング)位置との間で移動するように構成され、第1の(動作)位置では、表面処理装置412が、付加製造システム304によって形成される製品を処理することができ(例えば、
図6の実線を参照)、第2の(アイドリング)位置では、表面処理装置412が、製品を処理することができない(例えば、
図6の破線を参照)。1つの態様では、表面処理装置412は、筐体424に回転可能に結合され、第1の位置と第2の位置との間で回転する。表面処理装置480はまた、連結部材446と支持部材448とを含む。連結部材446は、筐体424と支持部材448との間で筐体424と支持部材448に連結され、支持部材448は、表面処理装置412を支持する。1つの態様では、支持部材448は、連結部材446に対して回転するように構成される。支持部材448は、連結部材446縦中心軸を中心として回転するように構成される。
【0101】
いくつかの例では、装置300は、複数の表面処理装置412を含む。そのような態様では、第1の表面処理装置412及び第2の表面処理装置412は、第1の表面処理装置412から間隔を空けて配置されている。第1及び第2の表面処理装置412はいずれも、付加製造システム304に対して後方に位置する。第1の表面処理装置412は、付加製造システム304によって形成される製品の第1の表面を処理するように構成され、第2の表面処理装置412は、製品の第2の表面を処理するように構成される。1つの態様では、第1の表面は製品404の外面420であり、第2の表面は製品404の内面416である。
【0102】
表面処理装置480は、ガイド部材468を更に含む。ガイド部材468は、付加製造システム304によって形成される製品と係合するように構成され、表面処理装置412を製品に対して方向付けするように構成される。ガイド部材468は、表面処理装置412を、製品の表面からある距離だけ離れるように、間隔を空けて配置するように構成される。1つの態様では、ガイド部材468はガイドローラである。1つの態様では、表面処理装置412は光学装置である。表面処理装置412は、付加製造システム304によって形成される製品の表面を滑らかにするように構成される。1つの態様では、表面処理装置412は、軸428、447、470のうちの少なくとも1つを中心として回転するように構成される。別の態様では、表面処理装置212は、軸428、447、470のうちの少なくとも2つを中心として回転するように構成される。更なる態様では、表面処理装置412は、3つの軸428、447、470を中心として回転するように構成される。装置300の1つの例では、表面処理装置412は、電磁エネルギーを放射するように構成された開口部476を含む。
【0103】
更に、本開示は、以下の条項による実施形態を含む。
【0104】
態様
本開示は、とりわけ、以下の態様を提示し、それらの態様の各々は、オプションで任意の代替的態様を含むと考えられる。
条項1. 粉体床付加製造のための方法であって、
所定の移動速度で移動するレーザのための均一なピッチのラスター経路を画定することであって、ラスター経路が0.5mm未満のストリップ幅内で交互に前後し、レーザの出力密度レベルが最大出力の少なくとも80%であり、所定の移動速度により、スキャン幅方向の移動速度が1,000mm/秒以上になる、均一なピッチのラスター経路を画定することと、
粉体の層を基板上に堆積することと、
レーザに、画定されたラスター経路及びレーザの出力設定に従って、ある量の粉体を凝固させることと
を含む方法。
条項2. ラスター経路が、約0.1mmから約5mmの横断距離を含む、条項1に記載の方法。
条項3. ラスター経路が、約0.5mmから約1mmの横断距離を含む、条項1又は2に記載の方法。
条項4. ラスター経路が、約0.08mmから約0.2mmのスキャン幅距離を含む、条項1から3のいずれか一項に記載の方法。
条項5. ラスター経路が、約0.15mmから約0.18mmのスキャン幅距離を含む、条項1から4のいずれか一項に記載の方法。
条項6. ラスター経路が、1m2あたり約5,000レーザパスから1m2あたり約25,000レーザパスのスキャン密度を含む、条項1から5のいずれか一項に記載の方法。
条項7. ラスター経路が、1m2あたり約8,750レーザパスから1m2あたり約18,750レーザパスのスキャン密度を含む、条項1から6のいずれか一項に記載の方法。
条項8. ラスター経路が、約0.04mmから約2mmの平均ハッチ間隔を含む、条項1から7のいずれか一項に記載の方法。
条項9. ラスター経路が、約0.09mmから約0.11mmの平均ハッチ間隔を含む、条項1から8のいずれか一項に記載の方法。
条項10. 所定の移動速度により、スキャン幅方向の移動速度が約1,700mm/秒から約2,200mm/秒になる、条項1から9のいずれか一項に記載の方法。
条項11. 所定の移動速度により、横断方向の移動速度が1,000mm/秒以上になる、条項1から10のいずれか一項に記載の方法。
条項12. 所定の移動速度により、横断方向の移動速度が約1,700mm/秒から約2,200mm/秒になる、条項1から11のいずれか一項に記載の方法。
条項13. レーザが、約200Wから約1,000Wのレーザビーム平均出力を有する、条項1から12のいずれか一項に記載の方法。
条項14. レーザが、約400Wから約500Wのレーザビーム平均出力を有する、条項1から13のいずれか一項に記載の方法。
条項15. レーザが、約0.05mmから約0.2mmのビーム直径を有するレーザビームを含む、条項1から14のいずれか一項に記載の方法。
条項16. レーザが、約0.1mmから約0.14mmのビーム直径を有するレーザビームを含む、条項1から15のいずれか一項に記載の方法。
条項17. ストリップ幅が約0.5mmから約1mmである、条項1から16のいずれか一項に記載の方法。
条項18. レーザが、基板のレーザ接触面に対して約85oから約95oの入射角で配置されたレーザビームを含む、条項1から17のいずれか一項に記載の方法。
条項19. 約50Wから約400Wのレーザビーム平均出力で粉体を前処理することを更に含む、条項1から18のいずれか一項に記載の方法。
条項20. 前処理することが、粉体の層を基板上に堆積した後に実行される、条項1から19のいずれか一項に記載の方法。
条項21. 粉体が、アルミニウム、アルミニウム合金、チタニウム、チタニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、ステンレス鋼、合金鋼、コバルト合金、プラスチック、ポリマー、ナイロン、又はこれらの組み合わせから選択される、条項1から20のいずれか一項に記載の方法。
条項22. 粉体が、アルミニウム、アルミニウム合金、チタニウム、チタニウム合金、又はこれらの組み合わせから選択される、条項1から21のいずれか一項に記載の方法。
条項23. 基板が、アルミニウム、アルミニウム合金、チタニウム、チタニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、テンレス鋼、合金鋼、コバルト合金、プラスチック、ポリマー、ナイロン、又はこれらの組み合わせを含む、条項1から22のいずれか一項に記載の方法。
条項24. 基板が、アルミニウム、アルミニウム合金、チタニウム、チタニウム合金、又はこれらの組み合わせを含む、条項1から23のいずれか一項に記載の方法。
条項25. 付加製造のための方法であって、
材料の層を基板上に堆積することと、
、レーザをスキャン幅方向に1,000mm/秒以上の移動速度で、基板に対してラスター経路で移動することによって、材料をレーザで処理することと
を含み、
ラスター経路が、約0.1mmから約5mmの横断距離を含み、
ラスター経路が、約0.08mmから約0.2mmのスキャン幅距離を含み、
ラスター経路が、約0.04mmから約2mmの平均ハッチ間隔を含み、
レーザが、約200Wから約1,000Wのレーザビーム平均出力を有しており、
レーザが、約0.05mmから約0.2mmのビーム直径を有するレーザビームを含む、方法。
条項26. ラスター経路が、約0.5mmから約1mmの横断距離を含む、条項25に記載の方法。
条項27. ラスター経路が、約1mmから約5mmのスキャン幅距離を含む、条項25又は26に記載の方法。
条項28. ラスター経路が、1m2あたり約5,000レーザパスから1m2あたり約25,000レーザパスのスキャン密度を含む、条項25から27のいずれか一項に記載の方法。
条項29. ラスター経路が、約0.09mmから約0.11mmの平均ハッチ間隔を含む、条項25から28のいずれか一項に記載の方法。
条項30. スキャン方向の移動距離が、約1,700mm/秒から約2,200mm/秒である、条項25から29のいずれか一項に記載の方法。
条項31. 材料をレーザで処理することが、レーザを約1,700mm/秒から約2,200mm/秒の横断方向の移動速度で移動することを含む、条項25から30のいずれか一項に記載の方法。
条項32. レーザが、約400Wから約500Wのレーザビーム平均出力を有する、条項25から31のいずれか一項に記載の方法。
条項33. レーザが、約0.1mmから約0.14mmのビーム直径を有するレーザビームを含む、条項25から32のいずれか一項に記載の方法。
条項34.レーザが、基板のレーザ接触面に対して約85oから約95oの入射角で配置されたレーザビームを含む、条項25から33のいずれか一項に記載の方法。
条項35. 約50Wから約400Wのレーザビーム平均出力で材料を前処理することを更に含む、条項25から34のいずれか一項に記載の方法。
条項36. 前処理することが、材料の層を基板上に堆積した後に実行される、条項25から35のいずれか一項に記載の方法。
条項37. 材料が、アルミニウム、アルミニウム合金、チタニウム、チタニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、ステンレス鋼、合金鋼、コバルト合金、プラスチック、ポリマー、ナイロン、又はこれらの組み合わせから選択される、条項25から36のいずれか一項に記載の方法。
条項38. 材料が、アルミニウム、アルミニウム合金、チタニウム、チタニウム合金、又はこれらの組み合わせから選択される、条項25から37のいずれか一項に記載の方法。
条項39. 基板が、アルミニウム、アルミニウム合金、チタニウム、チタニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、テンレス鋼、合金鋼、コバルト合金、プラスチック、ポリマー、ナイロン、又はこれらの組み合わせを含む、条項25から38のいずれか一項に記載の方法。
条項40. 基板が、アルミニウム、アルミニウム合金、チタニウム、チタニウム合金、又はこれらの組み合わせを含む、条項25から39のいずれか一項に記載の方法。
【0105】
全体を通して、本開示は、例えば高強度合金の、付加製造方法を提示する。本開示の方法は、処理中の合金の固化率を変更することにより、残留応力割れを抑制することができる。例えば、レーザのストリップ幅を通常の動作パラメータの1/10に変更することにより、ストリップ内のレーザの移動経路の振動の振幅が減少する。したがって、設定された移動速度の場合、(装置製造システムの)レーザヘッドは、ストリップに沿ってより速く移動する。より速く移動することで、より高いレーザ出力を使用できるようになる。加えて、より速く移動させることにより、スキャンされたラスターの次のラインの前に、また、以前のスキャンパスの溶融池を完全に冷却できるようにし、著しく遅い凝固正面を形成し、凝固収縮率(ひいては、溶融の粒界で液膜にかかる歪み速度)を低下させる可能性がある。
【0106】
以上は本開示の実施例を対象としているが、本開示の他の実施例及び更なる実施例が、その基本的な範囲を逸脱しない範囲で考案されてもよい。更に、前述の内容は、航空宇宙産業等の輸送体の構成要素に適用される方法を対象としているが、本開示の実施例は、自動車産業、海洋産業、エネルギー産業、風力タービン、衛星などでの用途といった、航空機に関連しない他の用途を対象としてもよい。
【0107】
本開示の様々な実施例の記載が例示の目的で提示されてきたが、網羅的であること又は開示の実施例に限定することは意図されていない。記載された実施例の範囲及び精神から逸脱することなく、多くの修正例及び変形例が当業者には明らかであろう。本明細書で使用される用語は、実施例、実際的な適用、又は市場で見出される技術に対する技術的改善の諸原理を最もよく説明するため、或いは、他の当業者が本明細書で開示された実施例を理解することを可能にするために選択された。以上は本開示の実施例を対象としているが、本開示の他の実施例及び更なる実施例が、その基本的な範囲を逸脱しない範囲で考案されてもよい。