IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友重機械エンバイロメント株式会社の特許一覧

特許7527836ユニット型固液分離装置、ユニット型固液分離装置の製造方法及びユニット型固液分離装置の搬送方法
<>
  • 特許-ユニット型固液分離装置、ユニット型固液分離装置の製造方法及びユニット型固液分離装置の搬送方法 図1
  • 特許-ユニット型固液分離装置、ユニット型固液分離装置の製造方法及びユニット型固液分離装置の搬送方法 図2
  • 特許-ユニット型固液分離装置、ユニット型固液分離装置の製造方法及びユニット型固液分離装置の搬送方法 図3
  • 特許-ユニット型固液分離装置、ユニット型固液分離装置の製造方法及びユニット型固液分離装置の搬送方法 図4
  • 特許-ユニット型固液分離装置、ユニット型固液分離装置の製造方法及びユニット型固液分離装置の搬送方法 図5
  • 特許-ユニット型固液分離装置、ユニット型固液分離装置の製造方法及びユニット型固液分離装置の搬送方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】ユニット型固液分離装置、ユニット型固液分離装置の製造方法及びユニット型固液分離装置の搬送方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/06 20060101AFI20240729BHJP
   B01D 21/08 20060101ALI20240729BHJP
   B01D 21/24 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
B01D21/06 A
B01D21/08 B
B01D21/24 D
B01D21/24 S
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020082868
(22)【出願日】2020-05-08
(65)【公開番号】P2021176620
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】岡野 文之
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-047435(JP,A)
【文献】特開2014-004569(JP,A)
【文献】特開2002-143875(JP,A)
【文献】産業排水対策に関する環境管理・計測装置リスト,2013年11月,https://www.env.go.jp/en/water/wq/ine/pdf/technology/Technologies%20List-jp.pdf[retrieved on 2023-12-26]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D21/00-34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水から固体を分離するユニット型固液分離装置の製造方法であって、
複数の部品は、製造者によって規格化され、
使用者に前記複数の部品の配置を選択させるステップと
前記使用者の選択に基づいて前記複数の部品を組み立てステップと、を備え、
前記複数の部品は、前記固液分離装置に被処理水を導入する流入部と、固体が分離された処理水を前記固液分離装置から導出する流出部と、を含み、
前記使用者に複数の部品の配置を選択させるステップは、前記流入部及び又は流出部を、前記固液分離装置の周方向の任意の位置に配置可能であることを特徴とする、ユニット型固液分離装置の製造方法
【請求項2】
被処理水から固体を分離するユニット型固液分離装置であって、
製造者によって規格化された複数の部品を含み、
前記複数の部品は、前記固液分離装置に前記被処理水を導入する流入部と、
固体を分離した処理水を前記固液分離装置から導出する流出部と、を含み、
前記流入部及び又は前記流出部は、前記固液分離装置の周方向の任意の位置に固定可能であることを特徴とする、ユニット型固液分離装置。
【請求項3】
前記複数の部品は、
前記固液分離装置の略中央に配置され、被処理水を前記固液分離装置に供給するためのセンターウェルと、を含み、
前記流入部は、前記センターウェルに連結され
前記センターウェルは、前記固液分離装置の周方向の任意の位置に固定できることを特徴とする、請求項に記載のユニット型固液分離装置。
【請求項4】
前記流出部は、固体が分離された処理水を導出するための樋を有し、
前記樋を前記固液分離装置の周方向の任意の位置に固定可能な樋固定部と、を有することを特徴とする、請求項2に記載のユニット型固液分離装置。
【請求項5】
前記複数の部品は、固液分離槽を含み、
前記固液分離槽は、最外径が3.5m以下であることを特徴とする、請求項2~4のいずれか一項に記載のユニット型固液分離装置。
【請求項6】
前記複数の部品は、固体を分離した処理水を導出するための樋を含み、
前記樋は、多角形状であることを特徴とする、請求項~4のいずれか一項に記載のユニット型固液分離装置。
【請求項7】
前記樋は、前記多角形状の辺部に処理水を越流する越流部を有し、前記越流部は樋から取り外し可能であり、2以上の前記越流部の幅長が同じ長さであることを特徴とする、請求項に記載のユニット型固液分離装置。
【請求項8】
請求項2に記載のユニット型固液分離装置の搬送方法であって
造者によって規格化された複数の部品を組み立たてるステップと
記複数の部品を組み立てた状態で搬送するステップと、を備えることを特徴とする、ユニット型固液分離装置の搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各部品が規格化されたユニット型固液分離装置、ユニット型固液分離装置の製造方法及びユニット型固液分離装置の搬送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
排水などの被処理水を処理する水処理手段の一つとして、反応槽内に被処理水を供給した後、反応槽内で処理を行うものが知られている。このような水処理としては、沈殿処理を行う沈殿処理部内に被処理水を供給し、被処理水中の固形物などの不純物を除去する固液分離処理が挙げられる。
例えば、特許文献1では、固液分離処理を行う装置として、センターウェル及びトラフを備えた固液分離装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-088999公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、水処理設備を設置する際には、恒久的な設備として設置され、設置する場所に合わせて沈殿槽や凝集槽の流入管及び流出管の設置角度が決定される。それらに合わせて、槽内部品、固定ブラケット、槽内配管の位置や構造が決定される。したがって、設置する場所ごとに、槽内部品などの位置や構造を見直し、処理性能を確保するための設計が必要である。したがって、特許文献1に開示された固液分離装置のような水処理設備の完成には時間がかかるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明の課題は、水処理設備の設置において、水処理設備の完成までの工期を短縮することができるユニット型固液分離装置、ユニット型固液分離装置の製造方法及びユニット型固液分離装置の搬送方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、複数の部品を設置場所に合わせることなく規格化して製造し、複数の部品が設置場所に合わせて適した配置に組み立て可能なユニット型固液分離装置、ユニット型固液分離槽の製造方法及びユニット型固液分離装置の搬送方法を見出し、本発明を完成した。
【0007】
上記課題を解決するための本発明のユニット型固液分離装置は、被処理水から固体を分離するユニット型固液分離装置であって、製造者によって規格化された複数の部品を備え、使用者に複数の部品の配置を選択させ、使用者の選択に基づいて複数の部品を組み立たてることを特徴とするものである。
【0008】
本発明のユニット型固液分離装置によれば、複数の部品を設置場所に合わせることなく規格化して製造し、使用者により選択された複数の部品が設置場所に合わせて適した配置に組み立て可能なユニット型とすることにより、設置場所に合わせた部品の設計をすることがなく、工期の短縮をすることができる。
【0009】
また、本発明のユニット型固液分離装置の一実施態様としては、複数の部品は、被処理水を貯留する固液分離槽と、被処理水を導入する流入部と、固体を分離した処理水を導出する流出部と、を含み、流入部及び/又は流出部は、使用者の選択した設置方向に応じて組み立て可能であることを特徴とするものである。
この特徴によれば、流入部及び流出部の配置において、使用者が選択した自由な位置に流入部及び流出部を配置でき、設置場所に合わせた部品の設計をすることがなく、より工期の短縮をすることができる。
【0010】
また、本発明のユニット型固液分離装置の一実施態様としては、複数の部品は、被処理水を貯留する固液分離槽と、固液分離槽の略中央に配置され、被処理水を固液分離槽に供給するためのセンターウェルと、センターウェルに連結し、被処理水を導入する流入部と、を含み、センターウェルは、使用者の選択した流入部の設置方向に応じて固液分離槽に固定できることを特徴とするものである。
本発明のユニット型固液分離装置によれば、センターウェルに対する流入部の配置おいて、使用者の選択した自由な位置に流入部を配置でき、設置場所に合わせた部品の設計をすることがなく、より工期の短縮をすることができる。
【0011】
また、本発明のユニット型固液分離装置の一実施態様としては、固液分離槽は、最外径が3.5m以下であることを特徴とするものである。
この特徴によれば、固液分離槽の最大外径が3.5m以下であることから、車両による運搬が可能となる。これにより、設置場所で固液分離槽を組み立てる必要がなく、より工期の短縮をすることができる。
【0012】
また、本発明のユニット型固液分離装置の一実施態様としては、複数の部品は、固体を分離した処理水を導出するための樋を含み、樋は、多角形状であることを特徴とする。
この特徴によれば、多角形の樋を構成する部品が直線状であることから、部品の構造が簡単になり、設置場所に合わせた部品の設計をすることがなく、より工期の短縮をすることができる。
【0013】
また、本発明のユニット型固液分離装置の一実施態様としては、樋は、多角形状の辺部に処理水を越流する越流部を有し、越流部は樋から取り外し可能であり、2以上の越流部の幅長が同じ長さであることを特徴とする。
この特徴によれば、2以上の越流部を同じ部品として共通して製造でき、樋の製造が簡単になり、設置場所に合わせた部品の設計をすることがなく、より工期の短縮をすることができる。
【0014】
上記課題を解決するための本発明のユニット型固液分離装置の製造方法は、被処理水から固体を分離するユニット型固液分離装置の製造方法であって、製造者によって規格化された複数の部品を製造するステップと、使用者に上記複数の部品の配置を選択させるステップと、上記選択に基づいて複数の部品を組み立てるステップと、を備えることを特徴とする。
本発明のユニット型固液分離装置の製造方法によれば、複数の部品を設置場所に合わせることなく規格化して製造しておき、使用者により選択された複数の部品が設置場所に合わせて適した配置に組み立て可能なユニット型とすることにより、設置場所に合わせた部品の設計をすることがなく、工期の短縮をすることができる。
【0015】
上記課題を解決するための本発明の固液分離装置の搬送方法は、被処理水から固体を分離する固液分離装置の搬送方法であって、被処理水を貯留する固液分離槽と、製造者によって規格化された複数の部品を組み立たてるステップと、固液分離槽と、複数の部品を組み立てた状態で搬送するステップと、を備えることを特徴とする、固液分離装置の搬送方法。
本発明の沈殿処理装置の搬送方法によれば、複数の部品を設置場所に合わせることなく規格化して製造し、それらの部品を組み立てた状態で搬送することから、設置場所での据付工数の削減ができ、工期の短縮が可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、水処理設備の設置において、水処理設備の完成までの工期を短縮することができるユニット型固液分離装置、ユニット型固液分離装置の製造方法及びユニット型固液分離装置の搬送方法の提供を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施態様のユニット型固液分離装置を示す概略説明図である。
図2】本発明の第1の実施態様のユニット型固液分離装置における部品(流入部)の組み立てについて説明する概略説明図である。
図3】本発明の第1の実施態様のユニット型固液分離装置のセンターウェルの上部フランジの構造について説明する概略説明図である。
図4】本発明の第1の実施態様のユニット型固液分離装置における部品(流出部)の組み立てについて説明する概略説明図である。
図5】本発明の第1の実施態様のユニット型固液分離装置の樋の構造について説明する概略説明図である。
図6】本発明の第2の実施態様のユニット型固液分離装置を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るユニット型固液分離装置、ユニット型固液分離装置の製造方法及びユニット型固液分離装置の搬送方法の実施態様を詳細に説明する。なお、実施態様に記載するユニット型固液分離装置、ユニット型固液分離装置の製造方法及びユニット型固液分離装置の搬送方法については、本発明に係るユニット型固液分離装置、ユニット型固液分離装置の製造方法及びユニット型固液分離装置の搬送方法を説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。
【0019】
本発明のユニット型固液分離装置とは、被処理水から固体を分離するユニット型固液分離装置であって、製造者によって規格化された複数の部品を備え、使用者に複数の部品の配置を選択させ、使用者の選択に基づいて複数の部品を組み立たてることを特徴とするものである。つまりは、本発明のユニット型固液分離装置は、従来の受注生産型の固液分離装置ではなく、固液分離装置を構成する部品の少なくとも一つを製造者があらかじめ規格化し、使用者は、規格化された部品の配置を選択するものである。なお、規格化された部品は、使用者の配置の選択に応じて、溶接、穴開けなどの加工を行ってもよい。
【0020】
〔第1の実施態様〕
図1は、本発明の第1の実施態様におけるユニット型固液分離装置1Aの構造を示す概略説明図である。
【0021】
本実施態様に係る被処理水Wは、分離処理対象である固形物を含むものであればよく、発生源や固形物の種類は特に限定されない。被処理水Wとしては、例えば、工場排水や生活排水のほか、河川水や他の水処理設備からの一次処理水などが挙げられる。
【0022】
また、被処理水Wは、ユニット型固液分離装置1Aに導入する前に、凝集剤を添加してもよい。凝集剤に添加する手段は、例えば、ユニット型固液分離装置1Aの前段に設けられた混合槽により被処理水Wと凝集剤を撹拌混合する手段や、被処理水Wを移送するための配管や樋に凝集剤を添加する手段や、ユニット型固液分離装置1Aの固液分離槽10の内部に設置されたセンターウェルに供給する手段などが挙げられる。配管や樋、あるいはセンターウェルに凝集剤を供給する場合には、センターウェルに撹拌手段を設けることが好ましい。
【0023】
被処理水Wに混合される凝集剤としては、無機凝集剤及び高分子凝集剤が挙げられる。凝集剤は、無機凝集剤あるいは高分子凝集剤のみを用いるものであってもよく、無機凝集剤と高分子凝集剤を併用するものであってもよい。なお、無機凝集剤及び高分子凝集剤を併用する場合、無機凝集剤、高分子凝集体の順に被処理水Wに添加することが好ましい。これにより、安定したフロック形成が可能となる。
凝集剤の具体例としては、例えば、無機凝集剤としては、硫酸バンドやPAC等のAl系無機凝集剤や、ポリ硫酸鉄等のFe系無機凝集剤が挙げられる。あるいは、NaOH、Ca(OH)等のアルカリ又はHSO、HCl等の酸によるpH調整剤や、Ca、Al、Fe系化合物の添加や、酸化剤・還元剤の添加等により結晶を析出させるものとしてもよい。また、高分子凝集剤としては、ポリアミノアルキルメタクリレート、ポリエチレンイミン、ハロゲン化ポリジアリルアンモニウム、キトサン、尿素-ホルマリン樹脂等のカチオン性高分子凝集剤、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド部分加水分解物、部分スルホメチル化ポリアクリルアミド、ポリ(2-アクリルアミド)-2-メチルプロパン硫酸塩等のアニオン性高分子凝集剤、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド等のノニオン性高分子凝集剤、アクリルアミドとアミノアルキルメタクリレートとアクリル酸ナトリウムの共重合体等の両性高分子凝集剤が挙げられる。
【0024】
<ユニット型固液分離装置>
本実施態様に係るユニット型固液分離装置1Aは、図1に示すように、固液分離槽10を備え、固液分離槽10内に被処理水Wを導入する流入部20、導入された被処理水Wを分配するディストリビュータ30と、固形分が分離された処理水を導出する流出部40と、分離された固形分を排出する汚泥排出部50と、沈降した固形分を汚泥排出部50側に掻き寄せる掻き寄せ部69を備える。
以下、ユニット型固液分離装置1Aに係る各構成について説明する。
【0025】
(固液分離槽)
固液分離槽10は、被処理水Wを貯留することができるものであればよく、具体的な構造については特に限定されない。例えば、有底かつ底面が円形あるいは多角形からなる筒体などが挙げられる。
第1の実施態様の固液分離槽10は、周壁11と、天井に駆動装置Mを設置する架台12と、底部2により構成される。図1に示すように、架台12には、後述するセンターウェル21を固定するための固定部14を備え、固定部14には、固定部側フランジ15が形成されている。
また、図1に示すように、固液分離槽10の底部は、固液分離槽10の中心に向かって傾斜した構造を有し、固液分離槽10の底部中央には、後述する汚泥引抜用凹部51を設けるものとすることが挙げられる。これにより、フロックF(沈殿物P)の回収及び排出を容易に行うことが可能となる。
【0026】
固液分離槽10の大きさは、最外径が3.5m以下であることが好ましい。日本国においては、「制限外積載許可」を受けることにより、車両積載時の幅が3.5m以下になるものまで車両輸送が認められている。したがって、固液分離槽10の最外径を3.5m以下とすることにより、工場生産した固液分離槽やその構造部品を設置場所に輸送して設置することが可能になるため、より工期の短縮をすることができる。
また、「制限外積載許可」を受けることにより、車両積載時の高さが4.3m以下になるものまで車両輸送が認められている。荷台の高さを確保するという観点から、最大外径は、3.5m以下であることがより好ましい。
【0027】
(流入部)
流入部20は、固液分離槽10内に被処理水Wを導入するための部品である。流入部20の形状としては、被処理水Wが流れる形状であれば特に制限されないが、例えば、管状、樋状などが挙げられる。流入部20から固液分離槽10内に被処理水Wを導入する際、沈降分離に良好な環境を形成するという観点から、ディストリビュータ30を介して供給することが好ましい。第1の実施態様では、流入部20として管状の流入管が設けられ、固液分離槽10の略中央に設置されたセンターウェル21に側方から連結し、センターウェル21の下部にディストリビュータ30が設定されている。
【0028】
センターウェル21は、内部が空洞の部品であり、上部に上側フランジ22、下部には下側フランジ23が形成されている。上側フランジ22は、固液分離槽10の固定部14に連結され、下側フランジ23は、後述する下部材24に連結される。下部材24には、ディストリビュータ30の洗浄に使用するための洗浄水を供給するディストリビュータ洗浄水供給管70aが連結されている。また、センターウェル21及び下部材24は、内部にディストリビュータ30及び掻き寄せ部60を回転駆動するためのシャフトSが貫通している。
【0029】
図2には、本発明の第1の実施態様のユニット型固液分離装置100Aにおける流入部20の組み立てについての概略説明図を示す。図2に示すように、固液分離槽10の固定部側フランジ15と、センターウェル21の上側フランジ22には、貫通孔22aが形成されており、ボルトなどの連結部材Lにより固定する。また、流入部20は、センターウェル21の側方から流入部連結部26を介して、連結されている。
【0030】
固定部側フランジ15と上側フランジ22に形成された貫通孔22aは、センターウェル21に連結された流入部20が矢印Aに示す回転方向の任意の位置に固定できるように配置されている。固定部側フランジ15と上側フランジ22の連結は、センターウェル21が周方向の任意の位置に固定できれば、特に制限されないが、例えば、複数の貫通孔22aを備え、2以上の配置を選択できる固定手段や、ヘルールとクランプからなる固定手段などが挙げられる。センターウェル21を周方向の任意の位置に固定可能とすることにより、使用者の設備状況に応じて、流入部20の方向を任意に設定することができる。これにより、規格化された部品であっても、使用者に対して配置を選択させることが可能となる。なお、流入部20の方向が決定後、固液分離槽10の周壁11に穴を開けることにより流入部20を設置することができる。
【0031】
図3には、センターウェル21の上部フランジ22の貫通孔22aの配置の例を示す。図3(A)は、8個の貫通孔22aを周方向に均等に配置した例であり、図3(B)は、16個の貫通孔22aを周方向に均等に配置した例である。図3に示すように、複数の貫通22aを周方向に均等に配置することにより、センターウェル21を周方向の任意の位置に固定することができる。ここで、貫通孔22aの数は、特に制限されないが、例えば、2以上であり、好ましくは4以上であり、より好ましくは6以上であり、更に好ましくは8以上である。貫通孔22aの数が多くなると、センターウェル21の周方向における設置可能な位置が増えるため、使用者の配置の選択の自由度が高くなる。
【0032】
下部材24は、側面に、ディストリビュータ洗浄水供給管70aを連結するためのディストリビュータ洗浄水供給管連結部71が形成されており、上部に、センターウェル21の下側フランジ23と連結する下部材側フランジ25が形成されている。また、下部は、ディストリビュータ30と摺動可能に連結されている。センターウェル21と下部材24の連結は、下部材24に連結されたディストリビュータ洗浄水供給管70aが矢印Bに示す回転方向の任意の位置に固定できるように連結する。下部材24を周方向の任意の位置に固定する手段は、センターウェル21と固液分離槽10の固定部14との固定手段と同様の手段とすればよい。
【0033】
(ディストリビュータ)
ディストリビュータ30は、フロックFを含む被処理水Wは、固液分離槽10内に均等に分配供給する部品であり、図1に示すように、センターウェル21の内部と連通した複数本の供給管31が、水平かつ放射状に延びるように設けられている。また、供給管31には、フロックFを含む被処理水Wを吐出するための吐出孔32が、固液分離槽10底部に向けた状態で複数設けられている。ディストリビュータ30は、シャフトSを介して駆動装置Mと連結しており、回転駆動する。
【0034】
ここで、シャフトSが回転駆動することで、シャフトSと共にディストリビュータ30が回転し、センターウェル21内のフロックFを含む被処理水Wは、固液分離槽10内に均等に分配供給される。これにより、固液分離槽10底部に沈殿したフロックF(沈殿物P)からなる層を乱すことなく沈降分離処理を行うことができ、処理効率を高めることが可能となる。
【0035】
(流出部)
流出部40は、沈降分離により固体が分離された清澄層Cを処理水W1として導出するための部品である。流出部40の形状としては、処理水W1が流れる形状であれば特に制限されないが、例えば、管状、樋状などが挙げられる。
流出部40には、清澄層Cの処理水W1を回収するための樋41を備える。樋41は、固液分離槽10の液面に配置され、越流部42から処理水W1が流れ込んで回収する。樋41に流れ込んだ処理水W1は、連通する流出部40から固液分離槽10の外部へ導出する。
【0036】
図4には、本発明の第1の実施態様のユニット型固液分離装置100Aにおける流出部40の組み立てについての概略説明図を示す。図4に示すように、樋41は、平面視して四角形状に形成されており、角部を固液分離槽10の内壁面に形成された複数の樋固定部16(ブラケット)に固定されている。なお、樋41の形状は、特に制限されず、平面視して、円形状、楕円形状、多角形状などが挙げられる。また、固液分離槽10の周壁11の内周面に沿って形成してもよい。多角形状とする場合には、樋41の製造が容易であるという利点がある。
【0037】
複数の樋固定部16は、流出部40が周方向の任意の方向に向けて配置することができるように形成されている。これにより、規格化された部品であっても、使用者に対して配置を選択させることが可能となる。なお、流出部40の方向が決定後、固液分離槽10の周壁11に穴を開けることにより流出部40を設置することができる。
【0038】
図5には、本発明の第1の実施態様のユニット型固液分離装置100Aの樋41の構造についての概略説明図を示す。図5に示すように、樋41は、樋部材43と越流部42により構成される。桶部材43は、樋壁部43a及び43bと、樋底部43cにより形成され、内部に処理水を回収するための部品である。また、越流部41は、処理水が越流するための越流堰を有する部品である。なお、桶部材43と越流部42は、別の部品としてもよいし、一体の部品としてもよい。
【0039】
越流堰の形状は、特に制限されないが、例えば、平板状、V字状、角波状、丸波状などが挙げられる。越流堰の形状が、V字状、角波状、丸波状などの凹凸形状である場合、越流負荷が小さい場合にも越流部の長さ方向全体から越流し、安定した運転が可能となる。一方で、細かい加工が必要となるため、加工の容易性の観点から、越流部42と樋部材43は、取り外し可能とし、別の部品とすることが好ましい。
【0040】
樋41は、四角形状の内側に形成された内側越流部41aと、外側に形成された外側越流部41bを備える。内側越流部41a及び外側越流部41bは、四角形状の樋41の内周及び外周の一部又は全部に形成されていてもよい。第1の実施態様の樋41において、内側越流部41a及び外側越流部41bは、樋41の内周及び外周の辺部に形成されており、処理水W1が越流するための越流部の幅長(図4参照)がすべて同一である。越流部の幅長をすべて同一とすることにより、越流部41を量産化することが可能であり、部品の作製が容易になる。
【0041】
なお、図4に示すように、内側越流部41aにより囲われた液面の領域を内側領域R1、外側越流部、外側越流部41bの外側の液面の領域を外側領域R2とすると、内側越流部41aの幅長の総和に対する内側領域R1の総面積(R1/41aの長さ)と、外側越流部41bの幅長の総和に対する外側領域R2の総面積(R2/41bの長さ)との比は、略同一であることが好ましい。具体的には、(R1/41aの幅長):(R2/41bの幅長)は、好ましくは1:0.8~1.2であり、より好ましくは1:0.9~1.1であり、更に好ましくは1:0.95~1.05である。この比を略同一とすることにより、内側越流部41aと外側越流部41bにおいて、処理水W1が均等に越流するため、安定した運転を行うことができる。
【0042】
(汚泥排出部)
汚泥排出部50は、固液分離槽10の底部に沈殿した沈殿物Pをユニット型固液分離装置100Aの外に排出するための部品である。汚泥排出部5の具体的な構造については特に限定されないが、例えば、図1に示すように、固液分離槽10の底部に設けられた汚泥引抜用凹部51、汚泥引抜管52、汚泥引抜ポンプ(不図示)などからなるものが挙げられる。また、図1に示すように、汚泥引抜用凹部51内の沈殿物Pを掻き落とすためのスクレーパ53をシャフトSに取り付けるものとすること等が挙げられる。
【0043】
(掻き寄せ部)
シャフトSには、センターウェル21及びディストリビュータ30よりもさらに下方側に、掻き寄せ部60が取り付けられている。この掻き寄せ部60により、ディストリビュータ30から供給されて固液分離槽10底部に沈殿したフロックF(沈殿物P)を汚泥排出部50側に掻き寄せることができる。
【0044】
掻き寄せ部60は、固液分離槽10の底部に沈殿した沈殿物Pを掻き寄せ、汚泥排出部50側に掻き寄せるための部品である。掻き寄せ部60の具体的な構造については特に限定されないが、例えば、図1に示すように、旋回シャフト61、支持ロッド62、掻き寄せブレード63などからなるものが挙げられる。
【0045】
<ユニット型固液分離装置の製造方法>
本発明のユニット型固液分離装置の製造方法は、被処理水から固体を分離するユニット型固液分離装置の製造方法であって、製造者によって規格化された複数の部品を製造するステップと、使用者に上記複数の部品の配置を選択させるステップと、上記選択に基づいて複数の部品を組み立てるステップと、を備えることを特徴とする。
【0046】
製造者によって規格化された複数の部品を製造するステップは、固液分離装置を構成する部品の少なくとも一つを製造者があらかじめ規格化し、その規格に従って部品を製造するステップである。規格化された部品とは、使用者の仕様が決定する前に、サイズや形状が決められた部品であり、例えば、固液分離槽10、流入部20、ディストリビュータ30、流出部40、汚泥排出部50、掻き寄せ部60を構成する各部品などが挙げられる。
【0047】
使用者に規格化された複数の部品の配置を選択させるステップとは、ユニット型固液分離装置を使用者の施設内の設置場所を決定後、被処理水Wの発生する方向や、処理水W1を送液する方向に応じて、流入部や流出部などの部品の配置を調整するステップである。本発明のユニット型固液分離装置に使用する規格化された部品は、配置の自由度があり、使用者に選択させることができる。これにより、固液分離装置の設計において、設置場所に合わせた部品の設計をすることがなく、工期の短縮をすることができる。
【0048】
さらに、本発明のユニット型固液分離装置の製造方法は、使用者に規格化された複数の部品の配置を選択させるステップの後に、使用者の配置の選択に応じて、規格化された部品に対して、溶接、穴開けなどの加工を行ってもよい。例えば、流入部や流出部の方向が決定した後に、固液分離槽の周壁に流入部や流出部が貫通する穴を形成する加工などが挙げられる。
【0049】
さらに、本発明のユニット型固液分離装置の製造方法は、使用施設以外で各部品を組み立てるステップを備えてもよい。すなわち、各部品の製造場所や、組み立て工場など、ユニット型固液分離装置の使用施設以外で各部品を組み立てた後に、使用施設に搬送してもよい。
【0050】
<ユニット型固液分離装置の搬送方法>
本発明のユニット型固液分離装置の搬送方法は、被処理水から固体を分離するユニット型固液分離装置の搬送方法であって、被処理水を貯留する固液分離槽と、製造者によって規格化された複数の部品を組み立たてるステップと、前記固液分離槽と、前記複数の部品を組み立てた状態で搬送するステップと、を備えることを特徴とする。
【0051】
本発明のユニット型固液分離装置は、搬送可能なサイズとすることにより、規格化された複数の部品を組み立てた状態で搬送することができる。また、設置場所での細かな調整や組み立て工程などを減少することができるため、現場における作業を簡潔化することができる。これにより、工期の短縮が可能となる。搬送する部品点数を減少できるため、輸送コストが削減されるなどの効果もある。
【0052】
〔第2の実施態様〕
図6は、本発明の第2の実施態様におけるユニット型固液分離装置1Bの構造を示す概略説明図である。図6に示すように、第2の実施態様のユニット型固液分離装置1Bでは、センターウェル21の内部に、凝集剤を添加し、被処理水Wと凝集剤を混合してフロックFを形成するものである。その他の部品については、第2の実施態様におけるユニット型固液分離装置1Aと同じであるため説明を省略する。
【0053】
また、センターウェル21内には、流入部20から供給される被処理水Wに対し、被処理水W中の固形物を凝集しフロック化するために、凝集剤を添加する凝集剤供給管70bを備える。より具体的には、凝集剤供給管70bは、架台12からセンターウェル21の内部に吊下し、所定の間隔を空けて設置されている。センターウェル21内に、ノズル72から凝集剤を添加する。
【0054】
また、センターウェル21内には、被処理水Wと凝集剤を混合し撹拌するための円筒状の回転ミキサ27が配設されている。この回転ミキサ27は、シャフトSに取り付けられており、駆動装置Mにより回転駆動する。第2の実施態様のユニット型固液分離装置1Bによれば、外部に被処理水Wと凝集剤の混合槽を設ける必要がないという利点がある。
【0055】
第2の実施態様のユニット型固液分離装置1Bの他の態様としては、センターウェル21の内部に凝集剤を添加する凝集剤供給管70bに代えて、流入部20に凝集剤を添加してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のユニット型固液分離装置は、工場排水や生活排水のほか、河川水や他の水処理設備からの被処理水の固液分離処理に利用することができる。
また、本発明のユニット型固液分離装置は、あらかじめ部品が規格化されているため、固液分離装置の設計において、設置場所に合わせた部品の設計をすることがなく、工期の短縮をすることができる。
【符号の説明】
【0057】
100A,100B ユニット型固液分離装置、10 固液分離槽、11 周壁、12 架台、13 底部、14 固定部、15 固定部側フランジ、16 樋固定部、20 流入部、21 センターウェル、22 上側フランジ、22a 貫通孔、23 下側フランジ、24 下部材、25 下部材側フランジ、26 流入部連結部、27 回転ミキサ、30 ディストリビュータ、31 供給管、32 吐出孔、40 流出部、41 樋、42 越流部、42a 内側越流部、42b 外側越流部、43 樋部材、43a,43b 樋壁部、43c 樋底部、50 汚泥排出部、51 汚泥引抜用凹部、52 汚泥引抜管、53 スクレーパ、60 掻き寄せ部、61 旋回シャフト、62 支持ロッド、63 掻き寄せブレード、70a ディストリビュータ洗浄水供給管、70b 凝集剤供給管、71 ディストリビュータ洗浄水供給管連結部、W 被処理水、W1 処理水、P 沈殿物、C 清澄層、M 駆動装置、S シャフト、F フロック、L 連結部材、R1 内側領域、R2 外側領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6