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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】自動血圧測定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/022 20060101AFI20240729BHJP
【FI】
A61B5/022 100A
A61B5/022 400E
A61B5/022 200G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020083511
(22)【出願日】2020-05-11
(65)【公開番号】P2021177834
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】522193547
【氏名又は名称】株式会社エー・アンド・デイ
(74)【代理人】
【識別番号】110003100
【氏名又は名称】弁理士法人池田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古越 雅貴
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 直嵩
(72)【発明者】
【氏名】諸留 昇平
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-174029(JP,A)
【文献】特開2001-333888(JP,A)
【文献】特開2007-125247(JP,A)
【文献】特開昭52-062994(JP,A)
【文献】特開2008-188237(JP,A)
【文献】特開昭54-160085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02 - 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の被圧迫部位に巻き付けられる圧迫帯を備え、前記圧迫帯の圧迫圧力値を変化させる過程で前記圧迫帯内の圧力振動である脈波を逐次抽出し、前記脈波の変化に基づいて前記生体の血圧値を測定する自動血圧測定装置であって、
前記圧迫帯は、幅方向に連ねられて前記生体の被圧迫部位を各々圧迫する独立した気室を形成する複数の膨張袋を有するものであり、
前記複数の膨張袋のうち前記被圧迫部位内の動脈の最下流側に位置する膨張袋からの前記脈波を表す脈波信号から所定の特定周波数帯域の脈波信号波を抽出するフィルタ処理部と、前記所定の特定周波数帯域の脈波信号波の変化に基づいて前記生体の最高血圧値及び最低血圧値の少なくとも一方を決定する血圧値決定部と、を備え、
前記所定の特定周波数帯域は、所定の第1特定周波数帯域であり、
前記所定の第1特定周波数帯域の脈波信号波において、振れの最大値と基準値との差である最大側振れ値及び前記基準値と振れの最小値との差である最小側振れ値の間における不均衡の程度を表す不均衡度合が所定の度合未満の状態から前記所定の度合以上の状態となる変化に基づいて、前記血圧値決定部は前記最低血圧値を決定する
ことを特徴とする自動血圧測定装置。
【請求項2】
前記所定の特定周波数帯域は、所定の第1特定周波数帯域であり、
前記血圧値決定部は、前記所定の第1特定周波数帯域の脈波信号波における振れの大きさが所定の第1判定値未満の状態から前記所定の第1判定値以上の状態となる変化に基づいて前記最高血圧値を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の自動血圧測定装置。
【請求項3】
前記フィルタ処理部は、前記脈波信号から前記所定の特定周波数帯域として所定の第1特定周波数帯域の脈波信号波を抽出し、
前記フィルタ処理部は、前記脈波信号から前記所定の特定周波数帯域として前記所定の第1特定周波数帯域とは異なる所定の第2特定周波数帯域の脈波信号波を抽出し、
前記血圧値決定部は、前記所定の第1特定周波数帯域の脈波信号波及び前記所定の第2特定周波数帯域の脈波信号波の両方の変化に基づいて前記生体の最高血圧値及び最低血圧値の少なくとも一方を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の自動血圧測定装置。
【請求項4】
前記所定の第1特定周波数帯域は、10~40Hzの帯域であり、
前記所定の第2特定周波数帯域は、40~70Hzの帯域である
ことを特徴とする請求項に記載の自動血圧測定装置。
【請求項5】
生体の被圧迫部位に巻き付けられる圧迫帯を備え、前記圧迫帯の圧迫圧力値を変化させる過程で前記圧迫帯内の圧力振動である脈波を逐次抽出し、前記脈波の変化に基づいて前記生体の血圧値を測定する自動血圧測定装置であって、
前記圧迫帯は、幅方向に連ねられて前記生体の被圧迫部位を各々圧迫する独立した気室を形成する複数の膨張袋を有するものであり、
前記複数の膨張袋のうち前記被圧迫部位内の動脈の最下流側に位置する膨張袋からの前記脈波を表す脈波信号から所定の特定周波数帯域の脈波信号波を抽出するフィルタ処理部と、前記所定の特定周波数帯域の脈波信号波の変化に基づいて前記生体の最高血圧値及び最低血圧値の少なくとも一方を決定する血圧値決定部と、を備え、
前記所定の特定周波数帯域は、所定の第2特定周波数帯域であり、
前記フィルタ処理部は、前記所定の第2特定周波数帯域の帯域脈波信号波から前記所定の第2特定周波数帯域よりも低い所定の低周波数脈波信号波を抽出し、
前記血圧値決定部は、前記所定の低周波数脈波信号波における振れの大きさが所定の第3判定値以上の状態から前記所定の第3判定値未満の状態となる変化に基づいて前記最低血圧値を決定する
ことを特徴とする自動血圧測定装置。
【請求項6】
生体の被圧迫部位に巻き付けられる圧迫帯を備え、前記圧迫帯の圧迫圧力値を変化させる過程で前記圧迫帯内の圧力振動である脈波を逐次抽出し、前記脈波の変化に基づいて前記生体の血圧値を測定する自動血圧測定装置であって、
前記圧迫帯は、幅方向に連ねられて前記生体の被圧迫部位を各々圧迫する独立した気室を形成する複数の膨張袋を有するものであり、
前記複数の膨張袋のうち前記被圧迫部位内の動脈の最下流側に位置する膨張袋からの前記脈波を表す脈波信号から所定の特定周波数帯域の脈波信号波を抽出するフィルタ処理部と、前記所定の特定周波数帯域の脈波信号波の変化に基づいて前記生体の最高血圧値及び最低血圧値の少なくとも一方を決定する血圧値決定部と、を備え、
前記フィルタ処理部は、前記脈波信号から前記所定の特定周波数帯域として10~40Hzの第1特定周波数帯域の脈波信号波を抽出し、
前記フィルタ処理部は、前記脈波信号から前記所定の特定周波数帯域として前記所定の第1特定周波数帯域とは異なる40~70Hzの第2特定周波数帯域の脈波信号波を抽出し、
前記血圧値決定部は、前記所定の第1特定周波数帯域の脈波信号波及び前記所定の第2特定周波数帯域の脈波信号波の両方の変化に基づいて前記生体の最高血圧値及び最低血圧値の少なくとも一方を決定する
ことを特徴とする自動血圧測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腕、足首のような生体の肢体である被圧迫部位に巻き付けられる圧迫帯を備えた自動血圧測定装置に関し、特にその圧迫帯から得られる脈波信号に基づいて生体の血圧値を自動的に測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、血圧測定方法として、コロトコフ音を用いた測定方法である聴診法が標準となっている。聴診法では、生体の被圧迫部位に圧迫帯が巻き付けられ、その圧迫帯の圧迫圧力値が変化させられる過程で、被圧迫部位よりも動脈の下流側、例えば2~3cm下流側に聴診器があてられてコロトコフ音が聞き取られる。例えば、圧迫圧力値が徐速降圧させられる過程において、コロトコフ音の発生時が最高血圧であり、コロトコフ音の消滅時が最低血圧である。
【0003】
コロトコフ音を圧迫帯内に設けられたマイクロフォン(高周波圧力センサ)を用いて検知することに基づいて生体の血圧値を測定する自動血圧測定装置が知られている。例えば、特許文献1に記載のものがそれである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/166554号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の自動血圧測定装置では、マイクロフォンによるコロトコフ音の検知であるため、コロトコフ音を聴診器により音として判別していることと同義である。しかし、測定環境は必ずしも静粛な環境とは限らないため、マイクロフォンによる検知ではコロトコフ音が正確に測定されず、血圧値(最高血圧値、最低血圧値)が正しく測定されないおそれがあった。
【0006】
本発明の目的とするところは、マイクロフォン等の音響センサを用いずに、圧迫帯の圧力情報により、聴診法の基準となるコロトコフ音の発生及び消滅に対応した血圧値を正確に決定することができる自動血圧測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、以上の事情を背景として、生体の被圧迫部位に巻き付けられる圧迫帯を備え、前記圧迫帯の圧迫圧力値を変化させる過程で前記圧迫帯内の圧力振動である脈波を逐次抽出し、前記脈波の変化に基づいて前記生体の血圧値を測定する自動血圧測定装置において、幅方向に連ねられて前記生体の被圧迫部位を各々圧迫する独立した気室を形成する複数の膨張袋を有する前記圧迫帯からの脈波信号を研究するうちに、以下の事実を発見した。すなわち、複数の膨張袋のうち被圧迫部位内の動脈の最下流側に位置する膨張袋からの脈波を表す脈波信号から所定の第1特定周波数帯域の脈波信号波を抽出すると、その脈波信号波がコロトコフ音の発生及び消滅に対応した変化を示すことを見い出した。本発明は係る知見に基づいて為されたものである。
【0008】
第1発明の要旨とするところは、生体の被圧迫部位に巻き付けられる圧迫帯を備え、前記圧迫帯の圧迫圧力値を変化させる過程で前記圧迫帯内の圧力振動である脈波を逐次抽出し、前記脈波の変化に基づいて前記生体の血圧値を測定する自動血圧測定装置であって、(a)前記圧迫帯は、幅方向に連ねられて前記生体の被圧迫部位を各々圧迫する独立した気室を形成する複数の膨張袋を有するものであり、(b)前記複数の膨張袋のうち前記被圧迫部位内の動脈の最下流側に位置する膨張袋からの前記脈波を表す脈波信号から所定の特定周波数帯域の脈波信号波を抽出するフィルタ処理部と、前記所定の特定周波数帯域の脈波信号波の変化に基づいて前記生体の最高血圧値及び最低血圧値の少なくとも一方を決定する血圧値決定部と、を備え、(c)前記所定の特定周波数帯域は、所定の第1特定周波数帯域であり、(d)前記所定の第1特定周波数帯域の脈波信号波において、振れの最大値と基準値との差である最大側振れ値及び前記基準値と振れの最小値との差である最小側振れ値の間における不均衡の程度を表す不均衡度合が所定の度合未満の状態から前記所定の度合以上の状態となる変化に基づいて、前記血圧値決定部は前記最低血圧値を決定することにある。
【0009】
第2発明の要旨とするところは、第1発明において、(a)前記所定の特定周波数帯域は、所定の第1特定周波数帯域であり、(b)前記血圧値決定部は、前記所定の第1特定周波数帯域の脈波信号波における振れの大きさが所定の第1判定値未満の状態から前記所定の第1判定値以上の状態となる変化に基づいて前記最高血圧値を決定することにある。
【0015】
発明の要旨とするところは、第1発明において、(a)前記フィルタ処理部は、前記脈波信号から前記所定の特定周波数帯域として所定の第1特定周波数帯域の脈波信号波を抽出し、(b)前記フィルタ処理部は、前記脈波信号から前記所定の特定周波数帯域として前記所定の第1特定周波数帯域とは異なる所定の第2特定周波数帯域の脈波信号波を抽出し、(c)前記血圧値決定部は、前記所定の第1特定周波数帯域の脈波信号波及び前記所定の第2特定周波数帯域の脈波信号波の両方の変化に基づいて前記生体の最高血圧値及び最低血圧値の少なくとも一方を決定することにある。
【0016】
発明の要旨とするところは、第発明において、(a)前記所定の第1特定周波数帯域は、10~40Hzの帯域であり、(b)前記所定の第2特定周波数帯域は、40~70Hzの帯域であることにある。
発明の要旨とするところは、生体の被圧迫部位に巻き付けられる圧迫帯を備え、前記圧迫帯の圧迫圧力値を変化させる過程で前記圧迫帯内の圧力振動である脈波を逐次抽出し、前記脈波の変化に基づいて前記生体の血圧値を測定する自動血圧測定装置であって、(a)前記圧迫帯は、幅方向に連ねられて前記生体の被圧迫部位を各々圧迫する独立した気室を形成する複数の膨張袋を有するものであり、(b)前記複数の膨張袋のうち前記被圧迫部位内の動脈の最下流側に位置する膨張袋からの前記脈波を表す脈波信号から所定の特定周波数帯域の脈波信号波を抽出するフィルタ処理部と、前記所定の特定周波数帯域の脈波信号波の変化に基づいて前記生体の最高血圧値及び最低血圧値の少なくとも一方を決定する血圧値決定部と、を備え、(c)前記所定の特定周波数帯域は、所定の第2特定周波数帯域であり、(d)前記フィルタ処理部は、前記所定の第2特定周波数帯域の帯域脈波信号波から前記所定の第2特定周波数帯域よりも低い所定の低周波数脈波信号波を抽出し、(e)前記血圧値決定部は、前記所定の低周波数脈波信号波における振れの大きさが所定の第3判定値以上の状態から前記所定の第3判定値未満の状態となる変化に基づいて前記最低血圧値を決定することにある。
発明の要旨とするところは、生体の被圧迫部位に巻き付けられる圧迫帯を備え、前記圧迫帯の圧迫圧力値を変化させる過程で前記圧迫帯内の圧力振動である脈波を逐次抽出し、前記脈波の変化に基づいて前記生体の血圧値を測定する自動血圧測定装置であって、(a)前記圧迫帯は、幅方向に連ねられて前記生体の被圧迫部位を各々圧迫する独立した気室を形成する複数の膨張袋を有するものであり、(b)前記複数の膨張袋のうち前記被圧迫部位内の動脈の最下流側に位置する膨張袋からの前記脈波を表す脈波信号から所定の特定周波数帯域の脈波信号波を抽出するフィルタ処理部と、前記所定の特定周波数帯域の脈波信号波の変化に基づいて前記生体の最高血圧値及び最低血圧値の少なくとも一方を決定する血圧値決定部と、を備え、(c)前記フィルタ処理部は、前記脈波信号から前記所定の特定周波数帯域として10~40Hzの第1特定周波数帯域の脈波信号波を抽出し、(d)前記フィルタ処理部は、前記脈波信号から前記所定の特定周波数帯域として前記所定の第1特定周波数帯域とは異なる40~70Hzの第2特定周波数帯域の脈波信号波を抽出し、(e)前記血圧値決定部は、前記所定の第1特定周波数帯域の脈波信号波及び前記所定の第2特定周波数帯域の脈波信号波の両方の変化に基づいて前記生体の最高血圧値及び最低血圧値の少なくとも一方を決定することにある。
【発明の効果】
【0017】
第1発明の自動血圧測定装置によれば、(a)前記圧迫帯は、幅方向に連ねられて前記生体の被圧迫部位を各々圧迫する独立した気室を形成する複数の膨張袋を有するものであり、(b)前記複数の膨張袋のうち前記被圧迫部位内の動脈の最下流側に位置する膨張袋からの前記脈波を表す脈波信号から所定の特定周波数帯域の脈波信号波を抽出するフィルタ処理部と、前記所定の特定周波数帯域の脈波信号波の変化に基づいて前記生体の最高血圧値及び最低血圧値の少なくとも一方を決定する血圧値決定部と、が備えられる。複数の膨張袋のうち被圧迫部位内の動脈の最下流側に位置する膨張袋からの前記脈波を表す脈波信号から所定の特定周波数帯域の脈波信号波が抽出されると、その脈波信号波がコロトコフ音の発生及び消滅に対応した変化を示す。これにより、コロトコフ音の発生時や消滅時に対応した所定の特定周波数帯域の脈波信号波の変化に基づいて生体の最高血圧値及び最低血圧値の少なくとも一方を正確に決定することができる。また、第1発明の自動血圧測定装置によれば、(c)前記所定の特定周波数帯域は、所定の第1特定周波数帯域であり、(d)前記所定の第1特定周波数帯域の脈波信号波において、振れの最大値と基準値との差である最大側振れ値及び前記基準値と振れの最小値との差である最小側振れ値の間における不均衡の程度を表す不均衡度合が所定の度合未満の状態から前記所定の度合以上の状態となる変化に基づいて、前記血圧値決定部は前記最低血圧値を決定する。これにより、コロトコフ音の消滅時に、所定の第1特定周波数帯域の脈波信号波における最大側振れ値と最小側振れ値とが不均衡となる変化が表れる場合があるため、この変化に基づいて生体の最低血圧値を正確に決定することができる。
【0018】
第2発明の自動血圧測定装置によれば、第1発明において、(a)前記所定の特定周波数帯域は、所定の第1特定周波数帯域であり、(b)前記血圧値決定部は、前記所定の第1特定周波数帯域の脈波信号波における振れの大きさが所定の第1判定値未満の状態から前記所定の第1判定値以上の状態となる変化に基づいて前記最高血圧値を決定する。コロトコフ音の発生時には、所定の第1特定周波数帯域の脈波信号波における振れの大きさが所定の第1判定値未満の状態から前記所定の第1判定値以上の状態となる変化が表れるため、この変化に基づいて生体の最高血圧値を正確に決定することができる。
【0024】
発明の自動血圧測定装置によれば、第1発明において、(a)前記フィルタ処理部は、前記脈波信号から前記所定の特定周波数帯域として所定の第1特定周波数帯域の脈波信号波を抽出し、(b)前記フィルタ処理部は、前記脈波信号から前記所定の特定周波数帯域として前記所定の第1特定周波数帯域とは異なる所定の第2特定周波数帯域の脈波信号波を抽出し、(c)前記血圧値決定部は、前記所定の第1特定周波数帯域の脈波信号波及び前記所定の第2特定周波数帯域の脈波信号波の両方の変化に基づいて前記生体の最高血圧値及び最低血圧値の少なくとも一方を決定する。このように、最下流側に位置する膨張袋からの脈波を表す脈波信号から複数の周波数帯域の脈波信号波が抽出され、その抽出された複数の脈波信号波の両方の変化に基づいて、生体の最高血圧値及び最低血圧値の少なくとも一方が決定される。そのため、単数の脈波信号波の変化に基づく場合に比較して、生体の最高血圧値及び最低血圧値をより正確に決定することができる。
【0025】
発明の自動血圧測定装置によれば、第発明において、(a)前記所定の第1特定周波数帯域は、10~40Hzの帯域であり、(b)前記所定の第2特定周波数帯域は、40~70Hzの帯域である。このように、最下流側に位置する膨張袋からの脈波を表す脈波信号から、10~40Hzの周波数帯域の脈波信号波と40~70Hzの周波数帯域の脈波信号波とが抽出されることで、その脈波信号波の両方の変化に基づいて生体の最高血圧値及び最低血圧値の少なくとも一方を正確に決定することができる。
発明の自動血圧測定装置によれば、生体の被圧迫部位に巻き付けられる圧迫帯を備え、前記圧迫帯の圧迫圧力値を変化させる過程で前記圧迫帯内の圧力振動である脈波を逐次抽出し、前記脈波の変化に基づいて前記生体の血圧値を測定する自動血圧測定装置であって、(a)前記圧迫帯は、幅方向に連ねられて前記生体の被圧迫部位を各々圧迫する独立した気室を形成する複数の膨張袋を有するものであり、(b)前記複数の膨張袋のうち前記被圧迫部位内の動脈の最下流側に位置する膨張袋からの前記脈波を表す脈波信号から所定の特定周波数帯域の脈波信号波を抽出するフィルタ処理部と、前記所定の特定周波数帯域の脈波信号波の変化に基づいて前記生体の最高血圧値及び最低血圧値の少なくとも一方を決定する血圧値決定部と、を備え、(c)前記所定の特定周波数帯域は、所定の第2特定周波数帯域であり、(d)前記フィルタ処理部は、前記所定の第2特定周波数帯域の帯域脈波信号波から前記所定の第2特定周波数帯域よりも低い所定の低周波数脈波信号波を抽出し、(e)前記血圧値決定部は、前記所定の低周波数脈波信号波における振れの大きさが所定の第3判定値以上の状態から前記所定の第3判定値未満の状態となる変化に基づいて前記最低血圧値を決定する。コロトコフ音の消滅時に、所定の第1特定周波数帯域の脈波信号波における最大側振れ値及び最小側振れ値が不均衡となる場合がある。そのような場合、所定の第1特定周波数帯域とは異なる所定の第2特定周波数帯域の脈波信号波からその所定の第2特定周波数帯域よりも低い所定の低周波数脈波信号波が抽出されると、前記所定の第1特定周波数帯域の脈波信号波の基準値に比べて、その所定の低周波数脈波信号波の基準値の方が振れの最大値と振れの最小値との中間値(真ん中の値)に近づく。そのため、所定の低周波数脈波信号波における振れの大きさが所定の第3判定値以上の状態から所定の第3判定値未満の状態となる変化を判定することによって、前記所定の第1特定周波数帯域の脈波信号波における最大側振れ値及び最小側振れ値が不均衡となる場合に対応する変化が検出されて生体の最低血圧値を正確に決定することができる。
発明の自動血圧測定装置によれば、生体の被圧迫部位に巻き付けられる圧迫帯を備え、前記圧迫帯の圧迫圧力値を変化させる過程で前記圧迫帯内の圧力振動である脈波を逐次抽出し、前記脈波の変化に基づいて前記生体の血圧値を測定する自動血圧測定装置であって、(a)前記圧迫帯は、幅方向に連ねられて前記生体の被圧迫部位を各々圧迫する独立した気室を形成する複数の膨張袋を有するものであり、(b)前記複数の膨張袋のうち前記被圧迫部位内の動脈の最下流側に位置する膨張袋からの前記脈波を表す脈波信号から所定の特定周波数帯域の脈波信号波を抽出するフィルタ処理部と、前記所定の特定周波数帯域の脈波信号波の変化に基づいて前記生体の最高血圧値及び最低血圧値の少なくとも一方を決定する血圧値決定部と、を備え、(c)前記フィルタ処理部は、前記脈波信号から前記所定の特定周波数帯域として10~40Hzの第1特定周波数帯域の脈波信号波を抽出し、(d)前記フィルタ処理部は、前記脈波信号から前記所定の特定周波数帯域として前記所定の第1特定周波数帯域とは異なる40~70Hzの第2特定周波数帯域の脈波信号波を抽出し、(e)前記血圧値決定部は、前記所定の第1特定周波数帯域の脈波信号波及び前記所定の第2特定周波数帯域の脈波信号波の両方の変化に基づいて前記生体の最高血圧値及び最低血圧値の少なくとも一方を決定する。このように、最下流側に位置する膨張袋からの脈波を表す脈波信号から、10~40Hzの周波数帯域の脈波信号波と40~70Hzの周波数帯域の脈波信号波とが抽出されることで、その脈波信号波の両方の変化に基づいて、生体の最高血圧値及び最低血圧値の少なくとも一方が決定される。そのため、単数の脈波信号波の変化に基づく場合に比較して、生体の最高血圧値及び最低血圧値をより正確に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施例1に係る自動血圧測定装置の概略構成図であるとともに、自動血圧測定装置が備える電子制御装置の制御機能の要部を説明するための機能ブロック図である。
図2図1の圧迫帯の外周面を示す図であって、外周面の一部を切り欠いた図である。
図3図2の圧迫帯内に備えられた上流側膨張袋、中間膨張袋、及び下流側膨張袋を示す平面図である。
図4図3に示すIV-IV視断面図である。
図5図1に示すカフ圧制御部により複数の膨張袋の圧迫圧力値が徐速降圧させられる過程において発生する上記複数の膨張袋からの脈波を表す脈波信号から10~40Hzの周波数帯域成分が抽出された帯域脈波信号波の測定結果をそれぞれ示す図である。
図6図5に示す矢印VIの期間における複数の膨張袋からの脈波を表す脈波信号から10~40Hzの周波数帯域成分が抽出された帯域脈波信号波の測定結果をそれぞれ示す図である。
図7図1に示す電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートの一例である。
図8】本発明の実施例2に係る自動血圧測定装置において、実施例1に係る図5に示す矢印VIIIの期間における下流側膨張袋からの脈波を表す脈波信号から種々の周波数成分が抽出された脈波信号波の測定結果をそれぞれ示す図である。
図9】本発明の実施例2に係る自動血圧測定装置が備える電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートの一例である。
図10】本発明の実施例3に係る自動血圧測定装置が備える電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の各実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比及び形状等は必ずしも正確に描かれていない。また、血圧の測定では、単位として水銀柱ミリメートル[mmHg]が広く使用されているため、本明細書でも水銀柱ミリメートルを使用する。なお、1[mmHg]は、約133.3(=101,325/760)[Pa]である。
【実施例1】
【0028】
図1は、本発明の実施例1に係る自動血圧測定装置14の概略構成図であるとともに、自動血圧測定装置14が備える電子制御装置90の制御機能の要部を説明するための機能ブロック図である。図1において括弧内に記された符号は、後述する実施例2,3についてのものである。自動血圧測定装置14は、被圧迫部位である生体の肢体、例えば上腕10に巻き付けられる上腕用の圧迫帯(カフ)12を備える。図1に示す自動血圧測定装置14は、上腕10に圧迫帯12が巻き付けられた状態を示している。自動血圧測定装置14は、上腕10内の動脈16を止血するのに十分な値まで昇圧させた圧迫帯12の圧迫圧力を降圧させる過程において、動脈16の容積変化に応答して発生する圧迫帯12内の圧力振動である脈波を逐次抽出し、その脈波の変化に基づいてその生体の最高血圧値SBP[mmHg]及び最低血圧値DBP[mmHg]を測定するものである。
【0029】
図2は、図1の圧迫帯12の外周面を示す図であって、外周面の一部を切り欠いた図である。圧迫帯12は、PVC(ポリ塩化ビニル)等の合成樹脂により裏面が相互にラミネートされた合成樹脂繊維製の外周側不織布20a及び図示しない内周側不織布から成る帯状外袋20と、その帯状外袋20内において幅方向に順次収容され、例えば軟質ポリ塩化ビニールシートなどの可撓性シートから構成されて独立して上腕10を圧迫可能な上流側膨張袋22,中間膨張袋24,及び下流側膨張袋26と、を備える。圧迫帯12は、外周側不織布20aの端部に取り付けられた面ファスナ28に前記内周側不織布の端部に取り付けられた図示しない起毛パイルが着脱可能に接着されることにより、上腕10に着脱可能に構成されている。
【0030】
圧迫帯12が上腕10に装着された状態においては、下流側膨張袋26が上流側膨張袋22及び中間膨張袋24よりも上腕10内の動脈16の下流側に位置し、上流側膨張袋22が下流側膨張袋26及び中間膨張袋24よりも動脈16の上流側に位置し、中間膨張袋24が下流側膨張袋26と上流側膨張袋22との間に位置している。下流側膨張袋26は、上流側膨張袋22,中間膨張袋24,及び下流側膨張袋26のうち被圧迫部位である上腕10内の動脈16の最も下流側すなわち最下流側に位置する膨張袋である。上流側膨張袋22、中間膨張袋24、及び下流側膨張袋26は、圧迫帯12の幅方向に連ねられて上腕10を各々圧迫する独立した気室をそれぞれ形成するとともに、管接続用コネクタ32,34,36をそれぞれの外周面側に備える。それら管接続用コネクタ32,34,36は、外周側不織布20aを通して圧迫帯12の外周面に露出している。なお、上流側膨張袋22,中間膨張袋24,及び下流側膨張袋26は、本発明における「複数の膨張袋」に相当し、下流側膨張袋26は、本発明における「最下流側に位置する膨張袋」に相当する。
【0031】
図3は、図2の圧迫帯12内に備えられた上流側膨張袋22、中間膨張袋24、及び下流側膨張袋26を示す平面図であり、図4は、図3に示すIV-IV視断面図である。上流側膨張袋22、中間膨張袋24、及び下流側膨張袋26は、それらにより圧迫された動脈16の容積変化に応答して発生する圧力振動である脈波を検出するためのものであり、それぞれ長手状を成している。上流側膨張袋22及び下流側膨張袋26は、中間膨張袋24の幅方向の両側に隣接した状態で配置されている。中間膨張袋24は、上流側膨張袋22及び下流側膨張袋26の間に挟まれた状態で圧迫帯12の幅方向の中央部に配置されている。なお、圧迫帯12が上腕10に巻き付けられた状態においては、上流側膨張袋22及び下流側膨張袋26は上腕10の長手方向に所定間隔を隔てて位置させられ、中間膨張袋24は上腕10の長手方向において連なるように上流側膨張袋22及び下流側膨張袋26の間に配置させられる。
【0032】
中間膨張袋24は、所謂マチ構造の側縁部をその幅方向の両側に備える。すなわち、中間膨張袋24における幅方向の両端部24a,24bには、互いに接近するほど深くなるように互いに接近する方向に折れ込まれた可撓性シートから成る一対の折込溝24fがそれぞれ形成されている。上流側膨張袋22における中間膨張袋24に隣接する側である隣接側端部22aが一方の折込溝24f内に差し入れられて配置されるようになっている。下流側膨張袋26における中間膨張袋24に隣接する側である隣接側端部26aが他方の折込溝24f内に差し入れられて配置されるようになっている。これにより、中間膨張袋24の両端部24a,24bと、上流側膨張袋22の隣接側端部22a及び下流側膨張袋26の隣接側端部26aと、が相互に重ねられた構造すなわちオーバラップ構造となる。そのため、上流側膨張袋22、中間膨張袋24、及び下流側膨張袋26が等圧で上腕10を圧迫した場合に、それらの境界付近においても均等な圧力分布が得られる。
【0033】
上流側膨張袋22及び下流側膨張袋26は、所謂マチ構造の側縁部を中間膨張袋24とは反対側の端部22b及び端部26bにそれぞれ備える。すなわち、上流側膨張袋22の端部22b及び下流側膨張袋26の端部26bには、互いに接近するほど深くなるように互いに接近する方向に折れ込まれた可撓性シートから成る折込溝22f及び折込溝26fがそれぞれ形成されている。折込溝22f及び折込溝26fを構成するシートは、圧迫帯12の幅方向に飛び出ないように、上流側膨張袋22及び下流側膨張袋26内に配置された貫通穴を備える接続シート38,40を介してその反対側部分すなわち中間膨張袋24側の部分に接続されている。上流側膨張袋22及び下流側膨張袋26における端部22b及び端部26bにおいても、上腕10の動脈16に対する圧迫圧力が上流側膨張袋22及び下流側膨張袋26における他の部分と同様に得られる。これにより、圧迫帯12の幅方向の有効圧迫幅がその幅寸法と同等になる。
【0034】
上流側膨張袋22の隣接側端部22a及び下流側膨張袋26の隣接側端部26aと、それが差し入れられている一対の折込溝24fの内壁面すなわち相対向する溝側面と、の間には、圧迫帯12の長手方向の曲げ剛性よりもその圧迫帯12の幅方向の曲げ剛性が高い剛性の異方性を有する長手状の異方性部材42がそれぞれ介在させられている。異方性部材42は、上流側膨張袋22及び下流側膨張袋26と中間膨張袋24との重なり寸法同様の長さ寸法を備える。本実施例では、図3図4に示すように、上流側膨張袋22の隣接側端部22aとそれが差し入れられている折込溝24fとの間の隙間のうち外周側の隙間、及び、下流側膨張袋26の隣接側端部26aとそれが差し入れられている折込溝24fとの間の隙間のうち外周側の隙間に、異方性部材42がそれぞれ介在させられているが、内周側の隙間にも介在させられても良い。
【0035】
異方性部材42は、圧迫帯12の幅方向に平行な樹脂製の複数本の可撓性中空管44が互いに平行な状態で、圧迫帯12の長手方向に連ねて配列されるとともに、それら複数本の可撓性中空管44が型成形若しくは接着により直接に又は粘着テープなどの可撓性シート等の他の部材を介して間接的に相互に連結されることにより構成されている。異方性部材42は、上流側膨張袋22及び下流側膨張袋26の隣接側端部22a,26aの外周側の複数箇所に設けられた掛止シート46に掛け止められている。
【0036】
図1に戻って、自動血圧測定装置14では、空気ポンプ50、急速排気弁52、及び排気制御弁54が主配管56にそれぞれ接続されている。その主配管56からは、上流側膨張袋22に接続された第1分岐管60、中間膨張袋24に接続された第2分岐管62、及び下流側膨張袋26に接続された第3分岐管64がそれぞれ分岐させられている。第1分岐管60には、空気ポンプ50と上流側膨張袋22との間を開閉するための第1開閉弁60vが設けられている。第2分岐管62には、空気ポンプ50と中間膨張袋24との間を開閉するための第2開閉弁62vが設けられている。第3分岐管64には、空気ポンプ50と下流側膨張袋26との間を開閉するための第3開閉弁64vが設けられている。主配管56には、急速排気弁52及び排気制御弁54が接続されている。第1開閉弁60v、第2開閉弁62v、第3開閉弁64v、急速排気弁52、及び排気制御弁54は、例えば常時開の弁(言い換えるとノーマルオープン弁)である。主配管56内の圧力値である圧迫圧力値PC0[mmHg]を検出するための主配管圧力センサ70が主配管56に接続されている。上流側膨張袋22内の圧力値である圧迫圧力値PC1[mmHg]を検出するための第1圧力センサ72が第1分岐管60に接続され、中間膨張袋24内の圧力値である圧迫圧力値PC2[mmHg]を検出するための第2圧力センサ74が第2分岐管62に接続され、下流側膨張袋26内の圧力値である圧迫圧力値PC3[mmHg]を検出するための第3圧力センサ76が第3分岐管64に接続されている。
【0037】
電子制御装置90は、CPU、RAM、ROM、及びI/Oポートなどを含む所謂マイクロコンピュータである。電子制御装置90は、CPUがRAMの記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って入力信号を処理し、電動式の空気ポンプ50、急速排気弁52、排気制御弁54、第1開閉弁60v、第2開閉弁62v、及び第3開閉弁64vをそれぞれ制御する。
【0038】
電子制御装置90には、主配管圧力センサ70、第1圧力センサ72、第2圧力センサ74、及び第3圧力センサ76から、主配管56内の圧迫圧力値PC0を示す出力信号、上流側膨張袋22内の圧迫圧力値PC1を示す出力信号、中間膨張袋24内の圧迫圧力値PC2を示す出力信号、及び下流側膨張袋26内の圧迫圧力値PC3を示す出力信号がそれぞれ入力される。電子制御装置90は、これら圧迫圧力値PC1,PC2,PC3を示す出力信号から、上流側膨張袋22、中間膨張袋24、及び下流側膨張袋26にそれぞれ圧迫された上腕10の動脈16の容積変化に応答してそれぞれ発生する圧力振動である脈波を示す上流側脈波信号SM1、中間脈波信号SM2、及び下流側脈波信号SM3をそれぞれ採取する。
【0039】
電子制御装置90からは、複数の膨張袋22,24,26の圧迫圧力値PC1,PC2,PC3がそれぞれカフ圧信号PKが示す圧迫圧力値PC[mmHg]となるように、空気ポンプ50、急速排気弁52、排気制御弁54、第1開閉弁60v、第2開閉弁62v、及び第3開閉弁64vに、空気ポンプ50を駆動制御するための制御信号Sp、急速排気弁52を開閉制御するための制御信号Sex1、排気制御弁54を開閉制御するための制御信号Sex2、第1開閉弁60vを開閉制御するための制御信号Sv1、第2開閉弁62vを開閉制御するための制御信号Sv2、及び第3開閉弁64vを開閉制御するための制御信号Sv3が、それぞれ出力される。
【0040】
電子制御装置90は、下流側脈波信号SM3に基づいて生体の最高血圧値SBP及び最低血圧値DBPを決定し、表示装置82にその演算結果である測定値を表示させる。電子制御装置90には、前述の第1圧力センサ72、第2圧力センサ74、及び第3圧力センサ76からの出力信号に加え、血圧測定スタートセンサ80からの出力信号が入力される。血圧測定スタートセンサ80は、血圧測定開始の合図となる信号を出力するものであり、例えば図示しない起動操作装置が操作されることで上記信号を出力するようになっている。なお、下流側脈波信号SM3は、本発明における「脈波信号」に相当する。
【0041】
図1に戻り、電子制御装置90は、カフ圧制御部92、信号値決定部94、フィルタ処理部96、及び血圧値決定部98を機能的に備える。
【0042】
自動血圧測定装置14において、図示しない電源スイッチが投入されると、自動血圧測定装置14は初期状態とされる。初期状態では、第1開閉弁60v、第2開閉弁62v、第3開閉弁64v、急速排気弁52、及び排気制御弁54は、常時開の弁であるため開状態(非作動状態)とされる。また。空気ポンプ50は非作動状態とされる。次いで、図示しない起動操作装置が操作されると、血圧測定スタートセンサ80から血圧測定開始の合図となる信号が出力される。
【0043】
カフ圧制御部92は、血圧測定開始の合図となる信号が血圧測定スタートセンサ80から入力された場合に、空気ポンプ50、急速排気弁52、排気制御弁54、第1開閉弁60v、第2開閉弁62v、及び第3開閉弁64vをそれぞれ制御することにより、上流側膨張袋22、中間膨張袋24、及び下流側膨張袋26による上腕10の動脈16への圧迫圧力値PC1、圧迫圧力値PC2、及び圧迫圧力値PC3をその動脈16における最高血圧値SBPよりも充分に高い値に予め設定された昇圧目標圧力値PCM[mmHg](例えば180[mmHg])まで同時に急速に昇圧する。具体的には、急速排気弁52及び排気制御弁54が閉状態とされるとともに、空気ポンプ50が作動状態とされてその空気ポンプ50から圧送される圧縮空気により主配管56内及びそれに連通された複数の膨張袋22,24,26内の圧力が急速に高められる。そして、圧迫帯12による上腕10の圧迫が開始される。以下、特に区別しない場合には、上流側膨張袋22、中間膨張袋24、及び下流側膨張袋26を「複数の膨張袋22,24,26」と記す。
【0044】
例えば、カフ圧制御部92は、第1開閉弁60v、第2開閉弁62v、及び第3開閉弁64vをいずれも開状態とするとともに、空気ポンプ50、急速排気弁52、排気制御弁54、第1開閉弁60v、第2開閉弁62v、及び第3開閉弁64vを制御して主配管56の圧迫圧力値PC0がカフ圧信号PKが示す圧迫圧力値PCとなるように制御する。第1開閉弁60v、第2開閉弁62v、及び第3開閉弁64vがいずれも開状態とされているため、複数の膨張袋22,24,26の圧迫圧力値PC1,PC2,PC3は、それぞれ主配管56の圧迫圧力値PC0と同じ圧力値とされる。カフ圧信号PKは、複数の膨張袋22,24,26の圧迫圧力値PC1,PC2,PC3を示すものでもある。カフ圧制御部92がカフ圧信号PKが示す圧迫圧力値PCが昇圧目標圧力値PCM以上となるまで昇圧するように制御することで、複数の膨張袋22,24,26の圧迫圧力値PC1,PC2,PC3は、それぞれ昇圧目標圧力値PCM以上の同じ圧力値とされる。
【0045】
続いて、カフ圧制御部92は、上記昇圧させた複数の膨張袋22,24,26の圧迫圧力値PC1,PC2,PC3を例えば3~5[mmHg/sec]程度に予め設定された徐速降圧速度でそれぞれ同時に連続的に或いは段階的に徐速降圧させる。
【0046】
例えば、段階的に徐速降圧させる所謂ステップ降圧の場合、カフ圧制御部92は、第1開閉弁60v、第2開閉弁62v、及び第3開閉弁64vをいずれも開状態とするとともに、空気ポンプ50、急速排気弁52、排気制御弁54、第1開閉弁60v、第2開閉弁62v、及び第3開閉弁64vを制御して主配管56の圧迫圧力値PC0が所定量(例えば1~10[mmHg]の範囲内)だけ減圧されたカフ圧信号PKが示す圧迫圧力値PCとなるように制御する。これにより、複数の膨張袋22,24,26の圧迫圧力値PC1,PC2,PC3は、それぞれ所定量だけ減圧された同じ圧力値とされる。また、カフ圧制御部92は、所定量(例えば1~10[mmHg]の範囲内)の段階的な降圧毎に、第1開閉弁60v、第2開閉弁62v、及び第3開閉弁64vをいずれも所定期間T[sec]だけ閉状態とする。これにより、所定期間Tだけ第1開閉弁60v、第2開閉弁62v、及び第3開閉弁64vが閉状態とされるそれぞれのステップ期間TS内において、複数の膨張袋22,24,26の圧迫圧力値PC1,PC2,PC3は、所定量だけ減圧されたカフ圧信号PKが示す圧迫圧力値PCとされるとともに、複数の膨張袋22,24,26はそれぞれ独立した気室を形成する。
【0047】
そして、カフ圧制御部92は、カフ圧信号PKが示す圧迫圧力値PCによって制御された複数の膨張袋22,24,26の圧迫圧力値PC1,PC2,PC3が動脈16における最低血圧値DBPよりも充分に低い値に予め設定された測定終了圧力値PCE[mmHg](例えば30[mmHg])よりも小さくなったときに、急速排気弁52を用いて複数の膨張袋22,24,26内の圧力がそれぞれ大気圧となるように排圧する。
【0048】
信号値決定部94は、カフ圧制御部92により複数の膨張袋22,24,26の圧迫圧力値PC1,PC2,PC3がそれぞれ徐速降圧させられる過程において、上流側膨張袋22、中間膨張袋24、及び下流側膨張袋26内の圧力振動である脈波を示す上流側脈波信号SM1、中間脈波信号SM2、及び下流側脈波信号SM3をそれぞれ逐次採取する。
【0049】
上流側脈波信号SM1は、第1圧力センサ72からの出力された上流側膨張袋22内の圧迫圧力値PC1を示す出力信号に基づいて、脈拍周期よりも十分に短いサンプリング周期(例えば、数百マイクロ秒~数ミリ秒程度の周期)で逐次採取されたものである。中間脈波信号SM2は、第2圧力センサ74からの出力された中間膨張袋24内の圧迫圧力値PC2を示す出力信号に基づいて、脈拍周期よりも十分に短いサンプリング周期で逐次採取されたものである。下流側脈波信号SM3は、第3圧力センサ76からの出力された下流側膨張袋26内の圧迫圧力値PC3を示す出力信号に基づいて、脈拍周期よりも十分に短いサンプリング周期で逐次採取されたものである。上流側脈波信号SM1、中間脈波信号SM2、及び下流側脈波信号SM3には、ステップ降圧においてステップ期間TSの遷移によりノイズが発生するノイズ発生期間のデータは含まれない。なお、本発明では、最高血圧値SBP及び最低血圧値DBPの決定は、下流側脈波信号SM3に基づき、上流側脈波信号SM1及び中間脈波信号SM2には基づかない。しかし、後述の図5及び図6では、下流側脈波信号SM3に基づいた場合と、上流側脈波信号SM1及び中間脈波信号SM2に基づいた場合と、を比較しているため、上流側脈波信号SM1及び中間脈波信号SM2についても合わせて説明している。
【0050】
信号値決定部94は、相互に同期した上流側脈波信号SM1、中間脈波信号SM2、及び下流側脈波信号SM3の信号値を、一脈波内で、脈拍周期よりも十分に短いサンプリング周期(例えば数百マイクロ秒~数ミリ秒程度の周期)毎に逐次決定する。信号値決定部94は、上流側脈波信号SM1、中間脈波信号SM2、及び下流側脈波信号SM3における決定した信号値を、それら信号値が決定された時の複数の膨張袋22,24,26の圧迫圧力値PC1,PC2,PC3を示すカフ圧信号PKとともに、電子制御装置90が有するRAMの所定の記憶領域に記憶する。
【0051】
血圧値決定部98は、RAMに記憶された上流側脈波信号SM1、中間脈波信号SM2、及び下流側脈波信号SM3における決定された信号値に対してフィルタ処理を実行するようにフィルタ処理部96を制御する。フィルタ処理部96は、例えば周知のデジタルフィルタで構成され、演算によりローパスフィルタ処理、バンドパスフィルタ処理、ハイパスフィルタ処理、或いはこれらのフィルタ処理を組み合わせた処理(例えば、バンドパスフィルタ処理及びローパスフィルタ処理)が可能とされている。
【0052】
血圧値決定部98は、生体の最高血圧値SBPを決定する最高血圧値決定部98aと、生体の最低血圧値DBPを決定する最低血圧値決定部98bと、を機能的に備える。
【0053】
最高血圧値決定部98aは、下流側脈波信号SM3における決定された信号値から10~40Hzの周波数帯域成分を抽出するフィルタ処理をフィルタ処理部96に実行させる。これにより、帯域脈波信号波BW3a[mmHg]が抽出される。本実施例における下流側脈波信号SM3から抽出される10~40Hzの周波数帯域は、本発明における「所定の特定周波数帯域」としての「所定の第1特定周波数帯域」に相当し、帯域脈波信号波BW3aは、本発明における「所定の特定周波数帯域の脈波信号波」としての「所定の第1特定周波数帯域の脈波信号波」に相当する。最高血圧値決定部98a(血圧値決定部98)は、フィルタ処理部96により抽出された帯域脈波信号波BW3aにおける最大振幅値γ[mmHg]が判定振幅値γ_jdg1[mmHg]未満の状態から判定振幅値γ_jdg1以上の状態に変化した場合に、その変化したステップ期間TSにおけるカフ圧信号PKが示す圧迫圧力値PCを最高血圧値SBPとして決定する。なお、最大振幅値γは、帯域脈波信号波BW3aにおける振れの最大値と最小値との差(正の値)であり、本発明における「振れの大きさ」に相当する。
【0054】
コロトコフ音の発生に対応して帯域脈波信号波BW3aにおける最大振幅値γが大きくなるが、判定振幅値γ_jdg1は、コロトコフ音が発生したことを判定する判定値として予め実験的に定められたものである。なお、判定振幅値γ_jdg1は、本発明における「所定の第1判定値」に相当する。このように、コロトコフ音の発生時には、下流側脈波信号SM3から10~40Hzの周波数帯域成分が抽出された帯域脈波信号波BW3aが比較的急激に増加する性質があることを利用して、その急激な増加が判定された場合のカフ圧信号PKが示す圧迫圧力値PCに基づいて生体の最高血圧値SBPが決定される。
【0055】
最低血圧値決定部98bは、下流側脈波信号SM3における決定された信号値から10~40Hzの周波数帯域成分を抽出するフィルタ処理をフィルタ処理部96に実行させる。最低血圧値決定部98b(血圧値決定部98)は、フィルタ処理部96により下流側脈波信号SM3から10~40Hzの周波数帯域成分が抽出された帯域脈波信号波BW3aにおける最大振幅値γが判定振幅値γ_jdg2[mmHg]以上の状態から判定振幅値γ_jdg2未満の状態に変化した場合に、その変化したステップ期間TSにおけるカフ圧信号PKが示す圧迫圧力値PCを最低血圧値DBPとして決定する。
【0056】
コロトコフ音の消滅に対応して帯域脈波信号波BW3aにおける最大振幅値γが小さくなるが、判定振幅値γ_jdg2は、コロトコフ音が消滅したことを判定する判定値として予め実験的に定められたものである。なお、判定振幅値γ_jdg2は、本発明における「所定の第2判定値」に相当する。このように、コロトコフ音の消滅時には、下流側脈波信号SM3から10~40Hzの周波数帯域成分が抽出された帯域脈波信号波BW3aが比較的急激に減少する性質があることを利用して、その急激な減少が判定された場合のカフ圧信号PKが示す圧迫圧力値PCに基づいて生体の最低血圧値DBPが決定される。
【0057】
図5は、図1に示すカフ圧制御部92により複数の膨張袋22,24,26の圧迫圧力値PC1,PC2,PC3が徐速降圧させられる過程において発生する上記複数の膨張袋22,24,26からの脈波を表す上流側脈波信号SM1、中間脈波信号SM2、及び下流側脈波信号SM3から10~40Hzの周波数帯域成分が抽出された帯域脈波信号波BW1a[mmHg],BW2a[mmHg],BW3a[mmHg]の測定結果をそれぞれ示す図である。図5における横軸は、時間t[sec]であり、縦軸は、上から順にカフ圧信号PKが示す圧迫圧力値PC、コロトコフ音を検知するために設けられたマイクロフォンにより音波が電気信号に変換されたマイク出力[mV]、帯域脈波信号波BW1a、帯域脈波信号波BW2a、及び帯域脈波信号波BW3aである。図5図6も同様)では、マイク出力、帯域脈波信号波BW1a、帯域脈波信号波BW2a、及び帯域脈波信号波BW3aに関して、後述する振れの基準値(振動していない期間における脈波信号波の平均値)をそれぞれ「0」としている。
【0058】
図5に示すように、圧迫圧力値PCは、ステップ期間TSx(x=1~19)毎に段階的に徐速降圧されている。ステップ期間TSx毎に、帯域脈波信号波BW1a、帯域脈波信号波BW2a、及び帯域脈波信号波BW3aがそれぞれ2拍分採取されている。なお、ステップ期間TSxは、段階的に徐速降圧されるステップ期間TSのうちx番目のステップ期間である。
【0059】
各ステップ期間TSxからその次のステップ期間TSx+1へ遷移する時には、圧迫圧力値PCの変動すなわち複数の膨張袋22,24,26の圧迫圧力値PC1,PC2,PC3の変動に伴って、マイク出力、帯域脈波信号波BW1a,BW2a,BW3aのそれぞれで、ノイズが発生している。
【0060】
コロトコフ音は、ステップ期間TS4からステップ期間TS16までの期間で聴取可能であり、このコロトコフ音が聴取可能なステップ期間TS4からステップ期間TS16までの期間がコロトコフ音可聴範囲Sである。
【0061】
コロトコフ音が発生する前後のステップ期間TS、すなわちコロトコフ音の発生直前のステップ期間TS3及びコロトコフ音の発生直後のステップ期間TS4において、帯域脈波信号波BW1a,BW2a,BW3aにおける最大振幅値α[mmHg],β[mmHg],γ[mmHg]をそれぞれ比較すると、帯域脈波信号波BW3aにおける最大振幅値γの変化が最も大きい。具体的には、帯域脈波信号波BW1aのステップ期間TS3における最大振幅値α3に対するステップ期間TS4における最大振幅値α4の比(=α4/α3)、帯域脈波信号波BW2aのステップ期間TS3における最大振幅値β3に対するステップ期間TS4における最大振幅値β4の比(=β4/β3)、及び帯域脈波信号波BW3aのステップ期間TS3における最大振幅値γ3に対するステップ期間TS4における最大振幅値γ4の比(=γ4/γ3)のうち、帯域脈波信号波BW3aにおける比(=γ4/γ3)が最も大きい。このように、帯域脈波信号波BW1a,BW2a,BW3aのうち、帯域脈波信号波BW3aの最大振幅値γの変化(増大)が最もコロトコフ音の発生に対応した変化を示していることを本発明者は見い出した。
【0062】
コロトコフ音が消滅する前後のステップ期間TS、すなわちコロトコフ音の消滅直前のステップ期間TS16及びコロトコフ音の消滅直後のステップ期間TS17において、帯域脈波信号波BW1a,BW2a,BW3aにおける最大振幅値α,β,γをそれぞれ比較すると、帯域脈波信号波BW3aにおける最大振幅値γの変化が最も大きい。具体的には、帯域脈波信号波BW1aのステップ期間TS16における最大振幅値α16に対するステップ期間TS17における最大振幅値α17の比(=α17/α16)、帯域脈波信号波BW2aのステップ期間TS16における最大振幅値β16に対するステップ期間TS17における最大振幅値β17の比(=β17/β16)、及び帯域脈波信号波BW3aのステップ期間TS16における最大振幅値γ16に対するステップ期間TS17における最大振幅値γ17の比(=γ17/γ16)のうち、帯域脈波信号波BW3aにおける比(=γ17/γ16)が最も小さい。このように、帯域脈波信号波BW1a,BW2a,BW3aのうち、帯域脈波信号波BW3aの最大振幅値γの変化(減少)が最もコロトコフ音の消滅に対応した変化を示していることを本発明者は見い出した。
【0063】
図6は、図5に示す矢印VIの期間における複数の膨張袋22,24,26からの脈波を表す上流側脈波信号SM1、中間脈波信号SM2、及び下流側脈波信号SM3から10~40Hzの周波数帯域成分が抽出された帯域脈波信号波BW1a,BW2a,BW3aの測定結果をそれぞれ示す図である。
【0064】
図5及び図6に示すように、コロトコフ音が発生したステップ期間TS4の後、すなわち最高血圧値SBPの近傍であるステップ期間TS5において、マイク出力による検知ではコロトコフ音が一時的に消滅する所謂聴診間隙と言われる現象が発生している。
【0065】
聴診間隙が発生しているステップ期間TS5の前後のステップ期間TS、すなわちステップ期間TS4~TS6において、帯域脈波信号波BW1a,BW2a,BW3aにおける最大振幅値α,β,γをそれぞれ比較すると、帯域脈波信号波BW3aにおける最大振幅値γの変化が最も聴診間隙の現象を反映したものとなっている。具体的には、帯域脈波信号波BW1aのステップ期間TS4における最大振幅値α4に対するステップ期間TS5における最大振幅値α5の比(=α5/α4)、帯域脈波信号波BW2aのステップ期間TS4における最大振幅値β4に対するステップ期間TS5における最大振幅値β5の比(=β5/β4)、及び帯域脈波信号波BW3aのステップ期間TS4における最大振幅値γ4に対するステップ期間TS5における最大振幅値γ5の比(=γ5/γ4)のうち、帯域脈波信号波BW3aにおける比(=γ5/γ4)が最も小さい。また、帯域脈波信号波BW1aのステップ期間TS6における最大振幅値α6に対するステップ期間TS5における最大振幅値α5の比(=α5/α6)、帯域脈波信号波BW2aのステップ期間TS6における最大振幅値β6に対するステップ期間TS5における最大振幅値β5の比(=β5/β6)、及び帯域脈波信号波BW3aのステップ期間TS6における最大振幅値γ6に対するステップ期間TS5における最大振幅値γ5の比(=γ5/γ6)のうち、帯域脈波信号波BW3aにおける比(=γ5/γ6)が最も小さい。帯域脈波信号波BW3aにおける比(=γ5/γ4)や比(=γ5/γ6)が小さいことは、コロトコフ音が聴診間隙により消滅していることに対応したものである。このように、帯域脈波信号波BW1a,BW2a,BW3aのうち、帯域脈波信号波BW3aの最大振幅値γの変化が最も聴診間隙によるコロトコフ音の消滅に対応した変化を示していることを本発明者は見い出した。
【0066】
図7は、図1に示す電子制御装置90の制御作動の要部を説明するフローチャートの一例である。図7のフローチャートは、血圧測定スタートセンサ80からの出力信号が入力されると実行される。
【0067】
まず、カフ圧制御部92の機能に対応するステップS10において、複数の膨張袋22,24,26による上腕10の動脈16への圧迫圧力値PC1,PC2,PC3が昇圧される。そして、ステップS20が実行される。
【0068】
カフ圧制御部92の機能に対応するステップS20において、カフ圧信号PKが示す圧迫圧力値PCが昇圧目標圧力値PCM以上であるか否かが判定される。ステップS20の判定が肯定された場合には、ステップS30が実行される。ステップS20の判定が否定された場合には、ステップS10が再度実行される。
【0069】
カフ圧制御部92の機能に対応するステップS30において、昇圧された複数の膨張袋22,24,26の圧迫圧力値PC1,PC2,PC3が予め設定された所定量(例えば1~10[mmHg]の範囲内)だけ降圧される。そして、ステップS40が実行される。
【0070】
信号値決定部94の機能に対応するステップS40において、下流側膨張袋26内の圧力振動である脈波を示す下流側脈波信号SM3が、脈拍周期よりも十分に短いサンプリング周期で逐次採取され、圧迫圧力値PCを示すカフ圧信号PKとともに、電子制御装置90が有するRAMの所定の記憶領域に記憶される。そして、ステップS50が実行される。
【0071】
カフ圧制御部92の機能に対応するステップS50において、カフ圧信号PKが示す圧迫圧力値PCが測定終了圧力値PCE未満であるか否かが判定される。ステップS50の判定が肯定された場合には、ステップS60が実行される。ステップS50の判定が否定された場合には、ステップS30が再度実行される。
【0072】
カフ圧制御部92の機能に対応するステップS60において、急速排気弁52を用いて複数の膨張袋22,24,26内の圧力がそれぞれ大気圧となるように排圧される。そして、ステップS70が実行される。
【0073】
最高血圧値決定部98aの機能に対応したステップS70において、最高血圧値決定のために用いられる脈波データが、例えば100[mmHg]程度の予め設定された下限値以上の脈波データに限定されるとともに、各ステップ期間TS内では下流側脈波信号SM3のステップ降圧によるノイズ発生期間を除いたデータに限定される。そして、ステップS80が実行される。
【0074】
最高血圧値決定部98aの機能に対応したステップS80において、ステップS70で限定された範囲内のステップ期間TSについて、下流側脈波信号SM3から10~40Hzの周波数帯域成分が帯域脈波信号波BW3aとして抽出され、その帯域脈波信号波BW3aにおける最大振幅値γが算出される。ステップS80の最初の実行では、最大振幅値γが算出されるステップ期間TSは、ステップS70で限定された範囲内における最初のステップ期間とされる。そして、ステップS90が実行される。
【0075】
最高血圧値決定部98aの機能に対応したステップS90において、ステップS80で算出された最大振幅値γが判定振幅値γ_jdg1未満であるか否かが判定される。ステップS90の判定が肯定された場合には、最大振幅値γが算出されるステップ期間TSを1つ後のものに変更してステップS80が再度実行される。ステップS90の判定が否定された場合には、ステップS100が実行される。
【0076】
最高血圧値決定部98aの機能に対応したステップS100において、帯域脈波信号波BW3aにおける最大振幅値γが判定振幅値γ_jdg1未満の状態から判定振幅値γ_jdg1以上の状態に変化したとして、そのステップ期間TSにおけるカフ圧信号PKが示す圧迫圧力値PCが最高血圧値SBPとして決定される。そして、ステップS110が実行される。
【0077】
最低血圧値決定部98bの機能に対応したステップS110において、最低血圧値決定のために用いられる脈波データが、例えば100[mmHg]程度の予め設定された上限値以下の脈波データに限定されるとともに、各ステップ期間TS内では下流側脈波信号SM3のステップ降圧によるノイズ発生期間を除いたデータに限定される。そして、ステップS120が実行される。
【0078】
最低血圧値決定部98bの機能に対応したステップS120において、ステップS110で限定された範囲内のステップ期間TSについて、下流側脈波信号SM3から10~40Hzの周波数帯域成分が帯域脈波信号波BW3aとして抽出され、その帯域脈波信号波BW3aにおける最大振幅値γが算出される。ステップS120の最初の実行では、最大振幅値γが算出されるステップ期間TSは、ステップS110で限定された範囲内における最初のステップ期間とされる。そして、ステップS130が実行される。
【0079】
最低血圧値決定部98bの機能に対応したステップS130において、ステップS120で算出された最大振幅値γが判定振幅値γ_jdg2以上であるか否かが判定される。ステップS130の判定が肯定された場合には、最大振幅値γが算出されるステップ期間TSを1つ後のものに変更してステップS120が再度実行される。ステップS130の判定が否定された場合には、ステップS140が実行される。
【0080】
最低血圧値決定部98bの機能に対応したステップS140において、帯域脈波信号波BW3aにおける最大振幅値γが判定振幅値γ_jdg2以上の状態から判定振幅値γ_jdg2未満の状態に変化したとして、そのステップ期間TSにおけるカフ圧信号PKが示す圧迫圧力値PCが最低血圧値DBPとして決定される。そして、ステップS300が実行される。
【0081】
血圧値決定部98の機能に対応したステップS300において、決定された生体の最高血圧値SBP及び最低血圧値DBPが表示装置82に表示される。そして、終了となる。
【0082】
本実施例によれば、(a)圧迫帯12は、幅方向に連ねられて生体の被圧迫部位である上腕10を各々圧迫する独立した気室を形成する上流側膨張袋22,中間膨張袋24,及び下流側膨張袋26の複数の膨張袋を有するものであり、(b)それら複数の膨張袋のうち上腕10内の動脈16の最下流側に位置する下流側膨張袋26からの脈波を表す下流側脈波信号SM3から10~40Hzの周波数帯域の帯域脈波信号波BW3aを抽出するフィルタ処理部96と、その帯域脈波信号波BW3aの変化に基づいて生体の最高血圧値SBP及び最低血圧値DBPの少なくとも一方を決定する血圧値決定部98と、が備えられる。複数の膨張袋22,24,26のうち上腕10内の動脈16の最下流側に位置する下流側膨張袋26からの脈波を表す下流側脈波信号SM3から10~40Hzの周波数帯域成分が帯域脈波信号波BW3aとして抽出されると、その帯域脈波信号波BW3aがコロトコフ音の発生及び消滅に対応した変化を示す。これにより、コロトコフ音の発生時や消滅時に対応した帯域脈波信号波BW3aの変化に基づいて、生体の最高血圧値SBP及び最低血圧値DBPの少なくとも一方を正確に決定することができる。
【0083】
本実施例によれば、血圧値決定部98は、帯域脈波信号波BW3aにおける最大振幅値γが判定振幅値γ_jdg1未満の状態から判定振幅値γ_jdg1以上の状態となる変化に基づいて、最高血圧値SBPを決定する。コロトコフ音の発生時には、帯域脈波信号波BW3aにおける最大振幅値γが判定振幅値γ_jdg1未満の状態から判定振幅値γ_jdg1以上の状態となる変化が表れるため、この変化に基づいて生体の最高血圧値SBPを正確に決定することができる。
【0084】
本実施例によれば、血圧値決定部98は、帯域脈波信号波BW3aにおける最大振幅値γが判定振幅値γ_jdg2以上の状態から判定振幅値γ_jdg2未満の状態となる変化に基づいて、最低血圧値DBPを決定する。コロトコフ音の消滅時には、帯域脈波信号波BW3aにおける最大振幅値γが判定振幅値γ_jdg2以上の状態から判定振幅値γ_jdg2未満の状態となる変化が表れるため、この変化に基づいて生体の最低血圧値DBPを正確に決定することができる。
【0085】
本実施例によれば、帯域脈波信号波BW3aとして下流側脈波信号SM3から抽出されるのは、10~40Hzの周波数帯域である。このように、下流側膨張袋26からの脈波を表す下流側脈波信号SM3から10~40Hzの周波数帯域の帯域脈波信号波BW3aが抽出されることで、その帯域脈波信号波BW3aの変化に基づいて生体の最高血圧値SBP及び最低血圧値DBPの少なくとも一方を正確に決定することができる。
【実施例2】
【0086】
本発明の実施例2に係る自動血圧測定装置114(図1参照)は、前述の実施例1に係る自動血圧測定装置14の構成と略同じであるが、電子制御装置90の替わりに電子制御装置190となっている点が異なる。また、電子制御装置190は、前述の実施例1に係る電子制御装置90の構成と機能的に略同じであるが、最高血圧値決定部98a及び最低血圧値決定部98bを機能的に備える血圧値決定部98の替わりに最高血圧値決定部98a及び最低血圧値決定部198bを機能的に備える血圧値決定部198となっている点が異なる。そのため、本実施例では、前述の実施例1と異なる部分を中心に説明することとし、前述の実施例1と機能において実質的に共通する部分には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0087】
血圧値決定部198は、生体の最高血圧値SBPを決定する最高血圧値決定部98aと、生体の最低血圧値DBPを決定する最低血圧値決定部198bと、を機能的に備える。
【0088】
最低血圧値決定部198bは、下流側脈波信号SM3における決定された信号値から10~40Hzの周波数帯域成分を抽出するフィルタ処理をフィルタ処理部96に実行させる。これにより、帯域脈波信号波BW3aが抽出される。本実施例における下流側脈波信号SM3から抽出される10~40Hzの周波数帯域は、本発明における「所定の特定周波数帯域」としての「所定の第1特定周波数帯域」に相当し、帯域脈波信号波BW3aは、本発明における「所定の特定周波数帯域の脈波信号波」としての「所定の第1特定周波数帯域の脈波信号波」に相当する。最低血圧値決定部198bは、フィルタ処理部96により抽出された帯域脈波信号波BW3aにおける最大側振れ値Gx[mmHg]及び最大振幅値γを算出するとともに、最大側振れ値比ρ(=Gx/γ)を算出する。最大側振れ値比ρは、振れの最大値と基準値との差である最大側振れ値Gx及び振れの基準値と最小値との差である最小側振れ値Gy[mmHg]の間における不均衡の程度を表すものである。最大側振れ値比ρは、「0.5」であるの場合が最大側振れ値Gx及び最小側振れ値Gyの均衡が最も取れており、「0.5」を超えて大きくなるほど最大側振れ値Gx及び最小側振れ値Gyは不均衡となっている。最大側振れ値比ρは、本発明における「不均衡度合」に相当する。振れの基準値は、振動していない期間における脈波信号波の平均値である。
【0089】
最低血圧値決定部198b(血圧値決定部198)は、最大側振れ値比ρが判定振れ値比ρ_jdg未満の状態から判定振れ値比ρ_jdg以上の状態に変化した場合に、その変化したステップ期間TSにおけるカフ圧信号PKが示す圧迫圧力値PCを最低血圧値DBPとして決定する。コロトコフ音の消滅時に、10~40Hzの帯域脈波信号波BW3aにおける最大側振れ値Gxと最小側振れ値Gyとが不均衡となる変化が表れる場合がある性質を利用して、この変化に基づいて生体の最低血圧値DBPが決定される。なお、判定振れ値比ρ_jdgは、コロトコフ音が消滅したことを判定する判定値として予め実験的に定められた「0.5」よりも大きい値である。判定振れ値比ρ_jdgは、本発明における「所定の度合」に相当する。
【0090】
本発明者の研究によれば、コロトコフ音の消滅時に、10~40Hzの帯域脈波信号波BW3aにおける最大側振れ値Gxと最小側振れ値Gyとが不均衡となる変化が表れるか否かは、被測定者の個人差による。この最大側振れ値Gxと最小側振れ値Gyとが不均衡となる変化が表れる理由は、以下のように推測される。
【0091】
生体内で発生するコロトコフ音は、圧迫帯12の進展性(コンプライアンス)と、動脈16と上腕10を含む生体の進展性と、のバランスで生じていると推測される。圧迫帯12により上腕10内の動脈16に外圧が加わっている状態においては、一拍毎に動脈16の内圧が圧迫帯12の外圧に抗して動脈16の容積が増大する状態と、動脈16の内圧が圧迫帯12の外圧に負けて動脈16の容積が縮小する状態と、が交互に発生する。動脈16の容積が増大すると圧迫帯12内の圧力は上昇し、動脈16の容積が縮小すると圧迫帯12内の圧力は下降する。最低血圧値DBPの近傍では、一拍内において動脈16の内圧に比べ圧迫帯12の外圧の方が低い状態が長く、動脈16の容積が縮小させられる期間と量はわずかである。この結果、圧迫帯12内の圧力振動である脈波を表す脈波信号としては、圧力増加方向であるプラス側の最大側振れ値Gxに比較して圧力減少方向であるマイナス側の最小側振れ値Gyが小さくなる変化が発生するものと思われる。これにより、結果としてコロトコフ音がマイクロフォンに伝達されなくなる、すなわちコロトコフ音が消失すると推測される。個人差がある理由としては、被測定者の生体の進展性に個人差があるためと思われる。一方、最高血圧値SBPの近傍では、一拍内において動脈16の内圧に比べ圧迫帯12の外圧の方が高い状態が長く、動脈16の容積が増大させられる期間と量はわずかである。そのため、図6のステップ期間TS4における帯域脈波信号波BW3aに示すように、帯域脈波信号波BW3aとしては、圧力減少方向であるマイナス側の最小側振れ値Gy4に比較して圧力増加方向であるプラス側の最大側振れ値Gx4が小さくなる変化が発生している。
【0092】
図8は、本発明の実施例2に係る自動血圧測定装置114において、実施例1に係る図5に示す矢印VIIIの期間における下流側膨張袋26からの脈波を表す脈波信号から種々の周波数成分が抽出された脈波信号波の測定結果をそれぞれ示す図である。図8における縦軸は、上から順にマイク出力、帯域脈波信号波BW3a[mmHg]、帯域脈波信号波BW3b[mmHg]、低周波数脈波信号波BLW3a[mmHg]、及び低周波数脈波信号波BLW3b[mmHg]である。帯域脈波信号波BW3aは、下流側脈波信号SM3から10~40Hzの周波数帯域成分が抽出された脈波信号波であり、帯域脈波信号波BW3bは、下流側脈波信号SM3から40~70Hzの周波数帯域成分が抽出された脈波信号波である。低周波数脈波信号波BLW3aは、帯域脈波信号波BW3aから1Hz以下の低周波数成分が抽出された脈波信号波であり、低周波数脈波信号波BLW3bは、帯域脈波信号波BW3bから1Hz以下の低周波数成分が抽出された脈波信号波である。低周波数脈波信号波BLW3a及び低周波数脈波信号波BLW3bは、1Hz以下の信号成分である。図8では、マイク出力、帯域脈波信号波BW3a、帯域脈波信号波BW3b、低周波数脈波信号波BLW3a、及び低周波数脈波信号波BLW3bに関して、前述した振れの基準値をそれぞれ「0」としている。帯域脈波信号波BW3b、低周波数脈波信号波BLW3a、及び低周波数脈波信号波BLW3bについては、実施例3において後述する。
【0093】
前述したように、コロトコフ音が消滅する前後のステップ期間TSおいて、帯域脈波信号波BW1a,BW2a,BW3aのうち、帯域脈波信号波BW3aの最大振幅値γの変化(減少)が最もコロトコフ音の消滅に対応した変化を示している。図8に示すように、コロトコフ音が消滅する前後のステップ期間TS、すなわちコロトコフ音の消滅直前のステップ期間TS16及びコロトコフ音の消滅直後のステップ期間TS17において、帯域脈波信号波BW3aにおける振れの最大値と基準値との差である最大側振れ値Gx及び振れの基準値と最小値との差である最小側振れ値Gyとを比較すると、コロトコフ音の消滅直前のステップ期間TS16に比べて、コロトコフ音の消滅直後のステップ期間TS17の方が不均衡となっている。具体的には、コロトコフ音の消滅直前のステップ期間TS16における最大側振れ値比ρ(=Gx16/γ16)に比べて、コロトコフ音の消滅直後のステップ期間TS17における最大側振れ値比ρ(=Gx17/γ17)の方が「0.5」を超えて急激に大きくなっている。なお、最大側振れ値比ρが「0.5」を超えて前述の判定振れ値比ρ_jdg以上に大きくなって最大側振れ値Gx及び最小側振れ値Gyが不均衡となると、コロトコフ音は聴取不能なものとなって消滅する。
【0094】
図9は、本発明の実施例2に係る自動血圧測定装置114が備える電子制御装置190の制御作動の要部を説明するフローチャートの一例である。図9のフローチャートは、血圧測定スタートセンサ80からの出力信号が入力されると実行される。
【0095】
図9のフローチャートは、前述の実施例1に係る図7のフローチャートと略同じであるが、ステップS120~S140の替わりにステップS150~S170となっている点が異なる。
【0096】
最低血圧値決定部198bの機能に対応したステップS150において、ステップS110で限定された範囲内のステップ期間TSについて、帯域脈波信号波BW3aが抽出され、その帯域脈波信号波BW3aにおける最大側振れ値Gx及び最大振幅値γが算出されるとともに、最大側振れ値比ρ(=Gx/γ)が算出される。ステップS150の最初の実行では、最大側振れ値比ρが算出されるステップ期間TSは、ステップS110で限定された範囲内における最初のステップ期間とされる。そして、ステップS160が実行される。
【0097】
最低血圧値決定部198bの機能に対応したステップS160において、ステップS150で算出された最大側振れ値比ρが判定振れ値比ρ_jdg未満であるか否かが判定される。ステップS160の判定が肯定された場合には、最大側振れ値比ρが算出されるステップ期間TSを1つ後のものに変更してステップS150が再度実行される。ステップS160の判定が否定された場合には、ステップS170が実行される。
【0098】
最低血圧値決定部198bの機能に対応したステップS170において、帯域脈波信号波BW3aにおける最大側振れ値比ρが判定振れ値比ρ_jdg未満の状態から判定振れ値比ρ_jdg以上の状態に変化したとして、そのステップ期間TSにおけるカフ圧信号PKが示す圧迫圧力値PCが最低血圧値DBPとして決定される。そして、ステップS300が実行される。
【0099】
本実施例によれば、下流側膨張袋26からの脈波を表す下流側脈波信号SM3から抽出された10~40Hzの帯域脈波信号波BW3aにおいて、振れの最大値と基準値との差である最大側振れ値Gx及び振れの基準値と最小値との差である最小側振れ値Gyの間における不均衡の程度を表す最大側振れ値比ρ(=Gx/γ)が判定振れ値比ρ_jdg未満の状態から判定振れ値比ρ_jdg以上の状態となる変化に基づいて、血圧値決定部198は最低血圧値DBPを決定する。コロトコフ音の消滅時に、帯域脈波信号波BW3aにおける最大側振れ値Gxと最小側振れ値Gyとが不均衡となる変化が表れる場合があるため、この変化に基づいて生体の最低血圧値DBPを正確に決定することができる。
【実施例3】
【0100】
本発明の実施例3に係る自動血圧測定装置214(図1参照)は、前述の実施例2に係る自動血圧測定装置114の構成と略同じであるが、電子制御装置190の替わりに電子制御装置290となっている点が異なる。電子制御装置290は、前述の実施例2に係る電子制御装置190の構成と機能的に略同じであるが、最高血圧値決定部98a及び最低血圧値決定部198bを機能的に備える血圧値決定部198の替わりに最高血圧値決定部98a及び最低血圧値決定部298bを機能的に備える血圧値決定部298となっている点が異なる。そのため、本実施例では、前述の実施例2と異なる部分を中心に説明することとし、前述の実施例2と機能において実質的に共通する部分には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0101】
血圧値決定部298は、生体の最高血圧値SBPを決定する最高血圧値決定部98aと、生体の最低血圧値DBPを決定する最低血圧値決定部298bと、を機能的に備える。
【0102】
最低血圧値決定部298bは、下流側脈波信号SM3における決定された信号値から40~70Hzの周波数帯域成分を抽出するフィルタ処理をフィルタ処理部96に実行させる。これにより、帯域脈波信号波BW3bが抽出される。最低血圧値決定部298bは、帯域脈波信号波BW3bから1Hz以下の低周波数成分を抽出するフィルタ処理をフィルタ処理部96に実行させる。これにより、低周波数脈波信号波BLW3bが抽出される。最低血圧値決定部298bは、フィルタ処理部96により抽出された低周波数脈波信号波BLW3bにおける最大振幅値σ[mmHg]を算出する。本実施例における下流側脈波信号SM3から帯域脈波信号波BW3bとして抽出される「40~70Hzの周波数帯域」は、本発明における「所定の特定周波数帯域」としての「所定の第2特定周波数帯域」に相当し、「帯域脈波信号波BW3b」は、本発明における「所定の特定周波数帯域の脈波信号波」としての「所定の第2特定周波数帯域の脈波信号波」に相当し、「低周波数脈波信号波BLW3b」は、本発明における「低周波数脈波信号波」に相当する。
【0103】
最低血圧値決定部298b(血圧値決定部298)は、最大振幅値σが判定振幅値σ_jdg[mmHg]以上の状態から判定振幅値σ_jdg未満の状態に変化した場合に、その変化したステップ期間TSにおけるカフ圧信号PKが示す圧迫圧力値PCを最低血圧値DBPとして決定する。前述の実施例2で説明したように、コロトコフ音の消滅時に下流側膨張袋26からの脈波を表す下流側脈波信号SM3から抽出された所定の第1特定周波数帯域である10~40Hzの帯域脈波信号波BW3aにおける最大側振れ値Gx及び最小側振れ値Gyが不均衡となる場合がある。このように所定の第1特定周波数帯域の帯域脈波信号波BW3aにおける最大側振れ値Gx及び最小側振れ値Gyが不均衡となる場合、下流側脈波信号SM3から抽出された所定の第2特定周波数帯域である40~70Hzの帯域脈波信号波BW3bから、さらに前記抽出された40~70Hzの帯域よりも低い1Hz以下の低周波数脈波信号波BLW3bが抽出されると、帯域脈波信号波BW3aの基準値に比べて、低周波数脈波信号波BLW3bの基準値の方が振れの最大値と最小値との中間値(真ん中の値)に近づく。そのため、低周波数脈波信号波BLW3bにおける最大振幅値σが判定振幅値σ_jdg以上の状態から判定振幅値σ_jdg未満の状態となる変化を判定することによって、帯域脈波信号波BW3aにおける最大側振れ値Gx及び最小側振れ値Gyが不均衡となる場合に対応した変化が検出されて生体の最低血圧値DBPを決定することができる。なお、判定振幅値σ_jdgは、コロトコフ音が消滅したことを判定する判定値として予め実験的に定められたものである。判定振幅値σ_jdgは、本発明における「所定の第3判定値」に相当する。
【0104】
前述の図8に示すように、コロトコフ音が消滅する前後のステップ期間TS、すなわちコロトコフ音の消滅直前のステップ期間TS16及びコロトコフ音の消滅直後のステップ期間TS17において、低周波数脈波信号波BLW3bにおける最大振幅値σを比較すると、コロトコフ音の消滅直前のステップ期間TS16における最大振幅値σ16に比べて、コロトコフ音の消滅直後のステップ期間TS17における最大振幅値σ17の方が小さくなっている。なお、コロトコフ音の消滅直後のステップ期間TS17においては、低周波数脈波信号波BLW3aの基準値に比べて、低周波数脈波信号波BLW3bの基準値の方が振れの最大値と最小値との中間値に近くなっている。
【0105】
図10は、本発明の実施例3に係る自動血圧測定装置214が備える電子制御装置290の制御作動の要部を説明するフローチャートの一例である。図10のフローチャートは、血圧測定スタートセンサ80からの出力信号が入力されると実行される。
【0106】
図10のフローチャートは、前述の実施例1に係る図7のフローチャートと略同じであるが、ステップS120~S140の替わりにステップS180~S200となっている点が異なる。
【0107】
最低血圧値決定部298bの機能に対応したステップS180において、ステップS110で限定された範囲内のステップ期間TSについて、低周波数脈波信号波BLW3bが抽出され、その低周波数脈波信号波BLW3bにおける最大振幅値σが算出される。ステップS180の最初の実行では、最大振幅値σが算出されるステップ期間TSは、ステップS110で限定された範囲内における最初のステップ期間とされる。そして、ステップS190が実行される。
【0108】
最低血圧値決定部298bの機能に対応したステップS190において、ステップS180で算出された最大振幅値σが判定振幅値σ_jdg以上であるか否かが判定される。ステップS190の判定が肯定された場合には、最大振幅値σが算出されるステップ期間TSを1つ後のものに変更してステップS180が再度実行される。ステップS190の判定が否定された場合には、ステップS200が実行される。
【0109】
最低血圧値決定部298bの機能に対応したステップS200において、低周波数脈波信号波BLW3bにおける最大振幅値σが判定振幅値σ_jdg以上の状態から判定振幅値σ_jdg未満の状態に変化したとして、そのステップ期間TSにおけるカフ圧信号PKが示す圧迫圧力値PCが最低血圧値DBPとして決定される。そして、ステップS300が実行される。
【0110】
本実施例によれば、(a)フィルタ処理部96は、下流側膨張袋26からの脈波を表す下流側脈波信号SM3から抽出された40~70Hzの周波数帯域の帯域脈波信号波BW3bから、さらに前記抽出された40~70Hzの帯域よりも低い1Hz以下の低周波数脈波信号波BLW3bを抽出し、(b)血圧値決定部298は、低周波数脈波信号波BLW3bにおける最大振幅値σが判定振幅値σ_jdg以上の状態から判定振幅値σ_jdg未満の状態となる変化に基づいて最低血圧値DBPを決定する。前述の実施例2で説明したように、コロトコフ音の消滅時に所定の第1特定周波数帯域である10~40Hzの周波数帯域成分が抽出された帯域脈波信号波BW3aにおける最大側振れ値Gx及び最小側振れ値Gyが不均衡となる場合がある。そのような場合、所定の第2特定周波数帯域である40~70Hzの周波数帯域成分が抽出された帯域脈波信号波BW3bから、さらに前記抽出された40~70Hzよりも低い1Hz以下の低周波数脈波信号波BLW3bが抽出されると、帯域脈波信号波BW3aに比べて、低周波数脈波信号波BLW3bの基準値の方が振れの最大値と最小値との中間値(真ん中の値)に近づく。そのため、低周波数脈波信号波BLW3bにおける最大振幅値σが判定振幅値σ_jdg以上の状態から判定振幅値σ_jdg未満の状態となる変化を判定することによって、所定の第1特定周波数帯域の帯域脈波信号波BW3aにおける最大側振れ値Gx及び最小側振れ値Gyが不均衡となる場合に対応する変化が検出されて生体の最低血圧値DBPを正確に決定することができる。
【0111】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0112】
前述の実施例1,2,3では、昇圧目標圧力値PCM及び測定終了圧力値PCEが予め設定されていたが、設定されていなくても良い。例えば、自動血圧測定装置14の電源スイッチが投入されてから操作者により入力された前回測定の最高血圧値SBP及び最低血圧値DBPに基づいて、上記入力された最高血圧値SBPに所定値(例えば30[mmHg])を足した値に昇圧目標圧力値PCMが設定され、上記入力された最低血圧値DBPに所定値(例えば30[mmHg])を引いた値に測定終了圧力値PCEが設定されても良い。また、カフ圧制御部92による急速昇圧時に、例えば下流側膨張袋26からの下流側脈波信号SM3を抽出してエンベロープを作成し、そのエンベロープに基づいてよく知られたオシロメトリックアルゴリズムに従って生体の最高血圧値SBP及び最低血圧値DBPを予測し、昇圧目標圧力値PCMがその予測された最高血圧値SBPに所定値(例えば20[mmHg])を足した値に設定され、測定終了圧力値PCEが上記予測された最低血圧値DBPに所定値(例えば20[mmHg])を引いた値に設定されても良い。
【0113】
前述の実施例1,2,3では、本発明における「振れの大きさ」として振れの最大値と最小値との差である最大振幅値γ,σが用いられたが、この態様に限らない。例えば、本発明における「振れの大きさ」として、振れの基準値からの振れの大きさ、すなわち最大側振れ値Gx及び最小側振れ値Gyのいずれが大きい方とする構成であっても良いし、最小側振れ値Gyとする構成であっても良い。このような構成では、これに応じてコロトコフ音の発生又は消滅に対応した判定値が予め実験的に定められる。
【0114】
前述の実施例1,2,3では、カフ圧制御部92による徐速降圧過程における各ステップ期間TSにおいて、信号値決定部94により下流側膨張袋26からの脈波を表す下流側脈波信号SM3が2拍分採取され、その2拍分について最大振幅値γ、最大側振れ値比ρ、及び最大振幅値σが算出される態様であったが、この態様に限らない。例えば、1拍分毎に最大振幅値γ、最大側振れ値比ρ、及び最大振幅値σが算出された後に2拍分の平均が算出され、その平均に基づいて最高血圧値SBP及び最低血圧値DBPが決定される構成であっても良い。このような構成の場合には、より精度の高い血圧値BPが得られる。
【0115】
前述の実施例1,2,3では、血圧測定時において、カフ圧信号PKが示す圧迫圧力値PCが昇圧目標圧力値PCMまで昇圧された後に、予め設定された徐速降圧速度でステップ的に降圧されていたが、この態様に限らない。例えば、圧迫圧力値PCは連続的に降圧させられても良い。また、最高血圧値SBP及び最低血圧値DBPの測定付近だけ徐速降圧とし、他の区間は急速降圧として測定時間が短くされる構成であっても良い。
【0116】
前述の実施例1,2,3では、圧迫帯12の圧迫圧力が降圧させられる過程で最高血圧値SBP及び最低血圧値DBPを決定する降圧測定が実施されていたが、この態様に限らず、圧迫帯12の圧迫圧力が昇圧させられる過程で最高血圧値SBP及び最低血圧値DBPを決定する昇圧測定が実施されても良い。このような昇圧測定においても前述の最高血圧値SBPや最低血圧値DBPの決定アルゴリズムを用いることができ、同様の効果を得ることができる。
【0117】
前述の実施例1,2,3では、圧迫帯12が備える膨張袋は3つである態様であったが、これに限らず、2つや4つ以上の態様であっても良い。
【0118】
前述の実施例1,2,3では、図7図9、及び図10のフローチャートで例示したように、最高血圧値決定部98aは、一のステップ期間TSxにおける最大振幅値γが判定振幅値γ_jdg1未満であって、その直後のステップ期間TSx+1における最大振幅値γが判定振幅値γ_jdg1以上である場合に、最大振幅値γが判定振幅値γ_jdg1以上となったステップ期間TSx+1におけるカフ圧信号PKが示す圧迫圧力値PCが最高血圧値SBPとして決定されたが、この態様に限らない。例えば、最大振幅値γが判定振幅値γ_jdg1を横切る前後のステップ期間TSx,TSx+1におけるそれぞれの最大振幅値γの値に基づいて、周知の補間計算によりステップ期間TSxにおけるカフ圧信号PKが示す圧迫圧力値PCとステップ期間TSx+1におけるカフ圧信号PKが示す圧迫圧力値PCとの間の値が最高血圧値SBPとして決定される構成であっても良い。同様に、最低血圧値DBPも、周知の補間計算により状態が変化する前後のステップ期間TSxにおけるカフ圧信号PKが示す圧迫圧力値PCとステップ期間TSx+1におけるカフ圧信号PKが示す圧迫圧力値PCとの間の値に決定される構成であっても良い。
【0119】
前述の実施例2では、最大側振れ値Gx及び最小側振れ値Gyの間における不均衡の程度を表すものとして最大側振れ値比ρ(=Gx/γ)が用いられたが、この態様に限らない。例えば、前記不均衡の程度を表すものとして最小側振れ値Gyに対する最大側振れ値Gxの比(=Gx/Gy)が用いられる構成であっても良い。このような構成の場合、最小側振れ値Gyに対する最大側振れ値Gxの比は、「1」である場合が最大側振れ値Gx及び最小側振れ値Gyの均衡が最も取れており、「1」を超えて大きくなるほど最大側振れ値Gx及び最小側振れ値Gyは不均衡となっている。したがって、帯域脈波信号波BW3aにおける最小側振れ値Gyに対する最大側振れ値Gxの比(=Gx/Gy)が、予め実験的に定められた「1」よりも大きい値である所定の比未満の状態からその所定の比以上の状態に変化した場合に、その変化したステップ期間TSにおけるカフ圧信号PKが示す圧迫圧力値PCが最低血圧値DBPとして決定されても良い。
【0120】
前述の実施例1では、「所定の第1特定周波数帯域」が10~40Hzの周波数帯域とされていたが、この態様に限らない。例えば、「所定の第1特定周波数帯域」が40~70Hzの周波数帯域とされる態様であっても良い。この態様の場合には、下流側脈波信号SM3における決定された信号値から40~70Hzの周波数帯域成分の帯域脈波信号波BW3bが抽出され、この帯域脈波信号波BW3bの変化に基づいて最高血圧値SBP及び最低血圧値DBPの少なくとも一方が決定される。
【0121】
具体的には、帯域脈波信号波BW3bにおける最大振幅値δが判定振幅値δ_jdg1[mmHg]未満の状態から判定振幅値δ_jdg1以上の状態となる変化に基づいて最高血圧値SBPが決定され、帯域脈波信号波BW3bにおける最大振幅値δが判定振幅値δ_jdg2[mmHg]以上の状態から判定振幅値δ_jdg2未満の状態となる変化に基づいて最低血圧値DBPが決定される。なお、最大振幅値δは、帯域脈波信号波BW3bにおける振れの最大値と最小値との差(正の値)であり、本発明における「振れの大きさ」に相当する。判定振幅値δ_jdg1及び判定振幅値δ_jdg2は、それぞれ帯域脈波信号波BW3bにおける最大振幅値δについてコロトコフ音が発生及び消滅したことを判定する判定値として予め実験的に定められたものであり、本発明における「所定の第1判定値」及び「所定の第2判定値」にそれぞれ相当する。
【0122】
前述の実施例1では、1つの帯域脈波信号波BW3aの変化に基づいて最高血圧値SBP及び最低血圧値DBPが決定されていたが、この態様に限らない。例えば、(a)下流側脈波信号SM3における決定された信号値から、所定の第1特定周波数帯域である10~40Hzの周波数帯域成分の帯域脈波信号波BW3aと、所定の第1特定周波数帯域とは異なる所定の第2特定周波数帯域である40~70Hzの周波数帯域成分の帯域脈波信号波BW3bと、が抽出され、(b)所定の第1特定周波数帯域の帯域脈波信号波BW3a及び所定の第2特定周波数帯域の帯域脈波信号波BW3bの両方の変化に基づいて最高血圧値SBP及び最低血圧値DBPの少なくとも一方が決定されても良い。なお、所定の第1特定周波数帯域と所定の第2特定周波数帯域とが異なるとは、一部の周波数成分が重なっていても完全に一致していなければ良い。
【0123】
具体的には、帯域脈波信号波BW3aにおける最大振幅値γが判定振幅値γ_jdg1未満の状態から判定振幅値γ_jdg1以上の状態となり且つ帯域脈波信号波BW3bにおける最大振幅値δが判定振幅値δ_jdg1未満の状態から判定振幅値δ_jdg1以上の状態となる変化に基づいて、最高血圧値SBPが決定される。また、帯域脈波信号波BW3aにおける最大振幅値γが判定振幅値γ_jdg2以上の状態から判定振幅値γ_jdg2未満の状態となり且つ帯域脈波信号波BW3bにおける最大振幅値δが判定振幅値δ_jdg2以上の状態から判定振幅値δ_jdg2未満の状態となる変化に基づいて、最低血圧値DBPが決定される。このように、最下流側に位置する下流側膨張袋26からの脈波を表す下流側脈波信号SM3から複数の特定周波数帯域の帯域脈波信号波BW3a,BW3bが抽出され、その抽出された複数の帯域脈波信号波BW3a,BW3bの両方の変化に基づいて、最高血圧値SBP及び最低血圧値DBPの少なくとも一方が決定される。そのため、単数の帯域脈波信号波の変化に基づいて最高血圧値SBP及び最低血圧値DBPが決定される場合に比較して、最高血圧値SBP及び最低血圧値DBPをより正確に決定することができる。また、前述の実施例2,3と同様の最高血圧値SBPや最低血圧値DBPの決定アルゴリズムを複数の特定周波数帯域の帯域脈波信号波のそれぞれに適用して、複数の帯域脈波信号波の両方の変化に基づいて最高血圧値SBP及び最低血圧値DBPの少なくとも一方が決定されても良い。
【0124】
なお、上述したのはあくまでも本発明の実施例であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0125】
10:上腕(被圧迫部位)
12:圧迫帯
14、114、214:自動血圧測定装置
16:動脈
22:上流側膨張袋(複数の膨張袋)
24:中間膨張袋(複数の膨張袋)
26:下流側膨張袋(複数の膨張袋、最下流側に位置する膨張袋)
96:フィルタ処理部
98、198、298:血圧値決定部
BLW3b:低周波数脈波信号波
BP:血圧値
BW3a:帯域脈波信号波(所定の第1特定周波数帯域の脈波信号波)
BW3b:帯域脈波信号波(所定の第2特定周波数帯域の脈波信号波)
DBP:最低血圧値
Gx:最大側振れ値
Gy:最小側振れ値
SBP:最高血圧値
SM3:下流側脈波信号(脈波信号)
γ:最大振幅値(振れの大きさ)
γ_jdg1:判定振幅値(所定の第1判定値)
γ_jdg2:判定振幅値(所定の第2判定値)
δ:最大振幅値(振れの大きさ)
δ_jdg1:判定振幅値(所定の第1判定値)
δ_jdg2:判定振幅値(所定の第2判定値)
ρ:最大側振れ値比(不均衡度合)
ρ_jdg:判定振れ値比(所定の度合)
σ:最大振幅値(振れの大きさ)
σ_jdg:判定振幅値(所定の第3判定値)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10