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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】農作業機
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20240729BHJP
   A01D 41/12 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
A01B69/00 303G
A01D41/12 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020086287
(22)【出願日】2020-05-15
(65)【公開番号】P2021007385
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2019121781
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】中林 隆志
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】江戸 俊介
(72)【発明者】
【氏名】宮下 隼輔
(72)【発明者】
【氏名】石見 憲一
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-106104(JP,A)
【文献】特開2006-121952(JP,A)
【文献】特開2019-028688(JP,A)
【文献】特開2001-258310(JP,A)
【文献】特開2017-211733(JP,A)
【文献】特表2010-510918(JP,A)
【文献】特開2018-093799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00 - 69/08
A01D 41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場の植立作物に対して作業を行う作業部と、
衛星測位モジュールからの測位データに基づいて機体位置を算出する機体位置算出部と、
前記圃場を自動走行するための走行経路を設定する走行経路設定部と、
前記機体位置が前記走行経路に沿うように自動走行制御を行う自動走行制御部と、
作業幅方向にて隣接する前記植立作物の間隔である作物間隔を検知する植立作物検知ユニットと、
機体における特定部位が前記植立作物の間に進入するように、前記植立作物検知ユニットが検知した前記作物間隔に基づいて前記自動走行制御部による操向制御信号をオフセット補正する走行制御補正部と、を備えた農作業機。
【請求項2】
圃場の植立作物に対して作業を行う作業部と、
衛星測位モジュールからの測位データに基づいて機体位置を算出する機体位置算出部と、
前記圃場を自動走行するための走行経路を設定する走行経路設定部と、
前記機体位置が前記走行経路に沿うように自動走行制御を行う自動走行制御部と、
作業幅方向にて隣接する前記植立作物の間隔である作物間隔を検知する植立作物検知ユニットと、
機体における特定部位が前記植立作物の間に進入するように、前記植立作物検知ユニットが検知した前記作物間隔に基づいて前記特定部位の前記植立作物の中央位置からの位置ずれを算出し当該位置ずれに基づいて前記走行経路を横方向に変位させる走行制御補正部と、を備えた農作業機。
【請求項3】
前記植立作物検知ユニットは、少なくとも2つの前記植立作物の位置及び条間を検知すると共に前記特定部位の目標位置からの位置ずれを算出し、
前記走行制御補正部は、前記植立作物検知ユニットが算出した前記位置ずれに基づいて補正を行う請求項1又は2に記載の農作業機。
【請求項4】
前記植立作物を撮影して、撮影画像を出力する撮影部が備えられ、
前記植立作物検知ユニットは、前記撮影画像と、前記機体位置から算出される前記撮影部の位置と、前記撮影部の撮影画角とに基づいて、前記植立作物の位置を検知する請求項1から3のいずれか1項に記載の農作業機。
【請求項5】
前記撮影部は、前記作業部の前部に配置されている請求項4に記載の農作業機。
【請求項6】
前記植立作物検知ユニットは、前記撮影画像を入力画像として前記作物間隔を検知するように機械学習されたニューラルネットワークを含んでいる請求項4又は5に記載の農作業機。
【請求項7】
前記植立作物検知ユニットは、超音波ビーム、光ビーム、電磁波ビームなどを用いた走査型センサで構成されている請求項1から3のいずれか1項に記載の農作業機。
【請求項8】
前記走行経路を表示するタッチパネルが備えられ、前記タッチパネルを用いて前記植立作物が並ぶ方向が手動入力される請求項1から7のいずれか一項に記載の農作業機。
【請求項9】
前記特定部位が、前記作業部に設けられたデバイダである請求項1から8のいずれか1項に記載の農作業機。
【請求項10】
前記特定部位が、前記機体に設けられた走行車輪である請求項1からのいずれか1項に記載の農作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1によるコンバインは、自動操向制御装置を備えている。この自動操向制御装置は、刈取部の分草板(デバイダの一種)の先端近傍に設けられた操向センサにより未刈り穀桿を検出して、自動的に条合わせを行う。操向センサは、リミットスイッチからなる左右一対の操向センサからなり、左操向センサが「OFF」で右操向センサが「ON」の時は左旋回走行が行われ、左操向センサが「ON」で右操向センサが「OFF」の時は右旋回走行が行われる。左操向センサと右操向センサの両方が「OFF」又は「ON」の時は、分草体が条と呼ばれる穀稈列の中央に位置しているとみなして、直進走行が行われる。この構成により、コンバインは、手動操作によってコンバインを未刈り穀桿領域に達すると、あとは、分草板がほぼ条の間に進入するように自動操向制御が行われる。
【0003】
特許文献2には、自動走行可能な圃場作業車のための走行経路を生成する走行経路生成装置が開示されている。この走行経路生成装置は、タッチパネルを通じて手書き入力された手書き軌跡に基づいて、圃場における自動走行のための走行経路を生成する。これにより、圃場作業車は、ユーザのイメージに合致した走行経路に沿った自動走行が可能となる。しかしながら、この走行経路生成装置では、穀稈列(条)の方向と走行方向との関係は考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-180130号公報
【文献】特開2018-093799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1によるコンバインは、分草板が条間の中央に収まるように操向制御されるので、刈取り作業の途中で分草板が植立穀稈の茎部に衝突するような問題は解決される。しかしながら、操向センサが植立穀稈の茎部との接当によるリミットスイッチの変位を検出するように構成されているので、太い茎部又は細い茎部によって検出タイミングが異なることになり、その結果、操向制御が不正確になるという問題がある。
【0006】
本発明の課題は、特定部位を植立作物の間に進入させながら、前もって設定された走行経路に沿って自動走行することができる農作業機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による第1の農作業機は、圃場の植立作物に対して作業を行う作業部と、衛星測位モジュールからの測位データに基づいて機体位置を算出する機体位置算出部と、前記圃場を自動走行するための走行経路を設定する走行経路設定部と、前記機体位置が前記走行経路に沿うように自動走行制御を行う自動走行制御部と、作業幅方向にて隣接する前記植立作物の間隔である作物間隔を検知する植立作物検知ユニットと、機体における特定部位が前記植立作物の間に進入するように、前記植立作物検知ユニットが検知した前記作物間隔に基づいて前記特定部位の前記植立作物の中央位置からの位置ずれを算出し当該位置ずれに基づいて前記走行経路を横方向に変位させる走行制御補正部と、を備える。
前記植立作物検知ユニットは、少なくとも2つの前記植立作物の位置及び条間を検知すると共に前記特定部位の目標位置からの位置ずれを算出し、前記走行制御補正部は、前記植立作物検知ユニットが算出した前記位置ずれに基づいて補正を行うと好ましい。
【0008】
この構成によれば、植立作物検知ユニットによって植立作物の間隔が非接触で検知されるので、機体から離れている植立作物の間隔も迅速に検知することができる。さらに、走行制御補正部は、走行経路設定部によって設定された走行経路を基準として、特定部位が作物の間に進入するために要求されるオフセット量を算出する。つまり、制御目標となる走行経路に沿うように操向制御されるので、特許文献1のように制御目標が1つの植立穀稈の茎部に対する左右のずれに即座に反応して操向制御する形態に比べて、安定した操向制御が可能となる。
【0009】
本発明による第2の農作業機は、圃場の植立作物に対して作業を行う作業部と、衛星測位モジュールからの測位データに基づいて機体位置を算出する機体位置算出部と、前記圃場を自動走行するための走行経路を設定する走行経路設定部と、前記機体位置が前記走行経路に沿うように自動走行制御を行う自動走行制御部と、作業幅方向にて隣接する前記植立作物の間隔である作物間隔を検知する植立作物検知ユニットと、機体における特定部位が前記植立作物の間に進入するように、前記植立作物検知ユニットが検知した前記作物間隔に基づいて前記走行経路を補正する走行制御補正部と、を備える。
前記植立作物検知ユニットは、少なくとも2つの前記植立作物の位置及び条間を検知すると共に前記特定部位の目標位置からの位置ずれを算出し、前記走行制御補正部は、前記植立作物検知ユニットが算出した前記位置ずれに基づいて補正を行うと好ましい。
【0010】
この第2の農作業機は、上述の第1の農作業機に比べて、特定部位が作物の間に進入するための位置ずれ補正の方法が異なっている。第1の農作業機では、位置ずれ補正は、制御基準としての走行経路からのオフセット量で行われるのに対して、この第2の農作業機では、位置ずれ補正は、走行経路設定部によって設定されている走行経路自体を補正(変位)させることになる。この方法では、補正された走行経路が新たな走行目標となるので、上述の第1の農作業機と同様に、特許文献1によるコンバインの操向制御に比べて、安定した操向制御が可能となる。
【0011】
植立作物の間隔を非接触で検知するために適した検知方法の1つは、撮影画像を用いて、植立作物を画像認識することである。撮影部の位置及び撮影部の撮影画角を考慮することで、撮影画像において認識された作物と特定部位との位置関係が正確に算出可能である。このことから、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記植立作物を撮影して、撮影画像を出力する撮影部が備えられ、前記植立作物検知ユニットは、前記撮影画像と、前記機体位置から算出される前記撮影部の位置と、前記撮影部の撮影画角とに基づいて、前記植立作物の位置を検知する。その際、走行方向前方の植立作物を明確に撮影するためには、撮影部が、作業部の前部に配置されることが好ましい。
【0012】
撮影画像を入力データとして、植立作物を検知するためには、パターンマッチングを用いた画像認識が好適である。しかしながら、近年、画像認識の分野において、機械学習されたニューラルネットワークを用いることで、良好な結果が得られており、これを利用することにより、雑草が混在している植立作物や倒伏した作物でも検知可能となる。このことから、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記植立作物検知ユニットは、前記撮影画像を入力画像として前記作物間隔を検知するように機械学習されたニューラルネットワークを含んでいる。なお、経時的に取得した撮影画像に対してエピポーラ画像処理を施すことで、特定部位から植立作物までの正確な距離も算出可能である。
【0013】
植立作物を非接触で検知するために適した検知方法の他の1つは、超音波ビーム、光ビーム、電磁波ビームなどを用いた走査型センサを用いて、走査位置毎の反射ビームの伝播時間を解析することである。これにより、走行前方領域の三次元点群データ(レーダスキャン画像又は距離画像とも呼ばれる)が生成されるので、この三次元点群データから植立作物の位置を算出することができる。このことから、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記植立作物検知ユニットは、超音波ビーム、光ビーム、電磁波ビームなどを用いた走査型センサで構成されている。
【0014】
植立作物が並ぶ方向は、最初に走行経路を設定する際の重要な条件の一つとなる。このことから、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記走行経路を表示するタッチパネルが備えられ、前記タッチパネルを用いて前記植立作物が並ぶ方向が手動入力される。これにより、植立作物が並ぶ方向を条件として、走行経路が設定される。
【0015】
作業部がデバイダを備える場合、デバイダが作物の間に進入するように、機体が制御されると好ましい。本発明の好適な実施形態の1つでは、前記特定部位が、前記作業部に設けられたデバイダである。
【0016】
機体が走行車輪を備える場合、走行車輪が作物の間に進入するように、機体が制御されると好ましい。本発明の好適な実施形態の1つでは、前記特定部位が、前記機体に設けられた走行車輪である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】農作業機の側面図である。
図2】農作業機の平面図である。
図3】圃場で作業を行うための走行経路を例示する説明図である。
図4】農作業機の制御系を示す機能ブロック図である。
図5】機械学習ユニットにおける植立作物の認識処理を説明する説明図である。
図6】作物間隔の検知に伴う操向制御変更の一例を説明するための模式図である。
図7図6に示す操向制御変更時の制御の流れを示す説明図である。
図8】作物間隔の検知に伴う操向制御変更の一例を説明するための模式図である。
図9図8に示す操向制御変更時の制御の流れを示す説明図である。
図10】農作業機の平面図である。
図11】農作業機の平面図である。
図12】農作業機の平面図である。
図13】農作業機の平面図である。
図14】作物間隔の検知に伴う操向制御変更の一例を説明するための模式図である。
図15】作物間隔の検知に伴う操向制御変更の一例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る農作業機の一例である自脱型のコンバインの実施形態が、図面に基づいて以下に記載されている。なお、特に断りがない限り、図1及び図2に示す矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」とする。また、図2に示す矢印Lの方向を「左」、矢印Rの方向を「右」とする。また、図1に示す矢印Uの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」とする。
【0019】
図1及び図2に示されるように、この自脱型コンバインは、クローラ式の走行装置11、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14(図2にのみ示されている)、作業部としての刈取部15、搬送装置16、穀粒排出装置18、衛星測位モジュール80を備えている。コンバインの機体10は、コンバインの主な構成要素の集合体を意味するが、場合によっては、走行装置11や刈取部15などの個別の構成要素を意味することがある。
【0020】
走行装置11は、コンバインにおける下部に備えられている。また、走行装置11は、エンジン(図示せず)からの動力によって駆動する。そして、コンバインは、走行装置11によって自走可能である。
【0021】
また、運転部12、脱穀装置13、穀粒タンク14は、走行装置11よりも上側に備えられている。穀粒排出装置18は、脱穀装置13及び穀粒タンク14よりも上側に設けられている。運転部12には、コンバインの作業を監視するオペレータが搭乗可能である。
なお、オペレータは、コンバインの機外からコンバインの作業を監視していてもよい。
【0022】
刈取部15は機体10の前部に支持されている。搬送装置16は刈取部15よりも後側に隣接して設けられている。この実施形態では、刈取部15は圃場における植立作物としての植立穀稈を刈り取って収穫する。植立穀稈には、稲、小麦、大豆、トウモロコシが含まれる。コンバインは、走行しながら圃場の植立穀稈を収穫する。刈取部15は、植立穀稈の刈取作業を行う。
【0023】
図2に示すように、刈取部15には、特定部位としてのデバイダ15Cが備えられている。デバイダ15Cの先端は、刈取対象となる隣接する植立穀稈を分草するため、前方に突き出ている。デバイダ15Cの先端が植立穀稈の茎部の列(条又は条列と呼ばれる)の間に進入するように機体10は操向される。なお、植立穀稈の茎部には、刈り取られた植立穀稈の刈り跡としての茎部もふくまれており、デバイダ15Cが、刈取り前の植立穀稈の茎部と刈り取られた植立穀稈の茎部との間に進入することも少なくない。
【0024】
刈取部15によって刈り取られた植立穀稈は刈取穀稈として、搬送装置16により脱穀装置13へ搬送される。刈取穀稈は脱穀装置13によって脱穀処理される。脱穀処理により得られた収穫物としての穀粒は、穀粒タンク14に貯留される。穀粒タンク14に貯留された穀粒は、必要に応じて、穀粒排出装置18によって機外に排出される。穀粒排出装置18は機体後部の縦軸芯回りに揺動可能に構成されている。即ち、穀粒排出装置18の排出部が機体10よりも機体横外側へ張り出して作物を排出可能な排出状態と、穀粒排出装置18の排出部が機体10の機体横幅の範囲内に位置する収納状態と、に切換可能なように穀粒排出装置18は構成されている。穀粒排出装置18が収納状態である場合、穀粒排出装置18の排出口部は運転部12よりも前側に位置するとともに刈取部15の上方に位置する。
【0025】
衛星測位モジュール80が、運転部12の天井上面に取り付けられている。衛星測位モジュール80は、人工衛星GSからのGNSS(Global Navigation Satellite System)の信号(GPS信号を含む)を受信して、機体位置を取得する。なお、衛星測位モジュール80による衛星航法を補完するために、ジャイロ加速度センサや磁気方位センサを組み込んだ慣性航法ユニットが衛星測位モジュール80に組み込まれている。もちろん、慣性航法ユニットは、コンバインにおいて衛星測位モジュール80と別の箇所に配置されてもよい。
【0026】
この実施形態では、右端のデバイダ15Cの上面に、CCDカメラ又はCMOSカメラで構成される撮影部21が設けられている。この撮影部21は、刈取り走行時に、進行方向前方で横方向に並んだ植立穀稈の茎部及び刈り取られた植立穀稈の刈り跡としての茎部あるいはその両方の茎部を撮影できるように設定された撮影画角を有する。撮影画像には、収穫幅方向にて隣接している少なくとも2つの茎部が含まれるので、その撮影画像から、植立穀稈の茎部の間隔、つまり条間を検知することができる。撮影部21は、右端のデバイダ15Cだけでなく、左端のデバイダ15Cやその他のデバイダ15Cに設けることも可能である。
【0027】
この実施形態のコンバインは自動走行と手動走行との両方で走行可能である。自動走行では、コンバインは、圃場に設定される走行経路に沿って自動的に作業走行する。図3には、圃場における標準的な収穫作業の一例が示されている。ここでは、コンバインが圃場に入ると、圃場の境界(畔など)に沿って手動で回り刈り作業走行が行われ、圃場の外周に既作業領域(既刈領域)である外周領域SAが形成される。なお、この周囲刈り走行で形成される外周領域SAがコンバインのアルファ形状ターン走行が可能となる大きさになれば、自動走行での回り刈りが可能である。次に、中央刈り作業走行として、外周領域SAの内側領域CAである未作業領域(未刈領域)に対する自動走行のための走行経路が設定される。図3では、中央刈り作業走行の走行経路として、直線走行とUターン走行とを組み合わせた往復走行経路が用いられている。この直線走行の走行経路には、直線経路だけでなく、大きな湾曲経路や蛇行経路も含まれる。
【0028】
図4には、コンバインの制御系の機能ブロック図が示されている。この実施形態の制御系は、多数のECUと呼ばれる電子制御ユニットと、各種動作機器、センサ群やスイッチ群、それらの間のデータ伝送を行う車載LANなどの配線網から構成されている。報知デバイス84は、運転者等に障害物の検出結果や作業走行の状態などの警告を報知するためのデバイスであり、ブザー、ランプ、スピーカ、ディスプレイなどである。
【0029】
制御ユニット6は、この制御系の中核要素であり、複数のECUの集合体として示されている。衛星測位モジュール80からの測位データ、撮影部21からの撮影画像、運転部12に設置されているタブレットコンピュータ85からの制御指令は、車載LANなどの配線網を通じて制御ユニット6に入力される。
【0030】
制御ユニット6は、入出力インタフェースとして、出力処理部6Bと入力処理部6Aとを備えている。出力処理部6Bは、車両走行機器群7A及び作業装置機器群7Bと接続している。車両走行機器群7Aには、車両走行に関する制御機器、例えばエンジン制御機器、変速制御機器、制動制御機器、操舵制御機器などが含まれている。作業装置機器群7Bには、刈取部15、搬送装置16、脱穀装置13、穀粒排出装置18における動力制御機器などが含まれている。入力処理部6Aには、走行系検出センサ群8Aや作業系検出センサ群8Bなどが接続されている。走行系検出センサ群8Aには、エンジン回転数調整具、アクセルペダル、ブレーキペダル、変速操作具などの状態を検出するセンサが含まれている。作業系検出センサ群8Bには、刈取部15、搬送装置16、脱穀装置13、穀粒排出装置18における装置状態及び穀稈や穀粒の状態を検出するセンサが含まれている。
【0031】
制御ユニット6には、走行制御モジュール60、走行経路設定部64、走行制御補正部65、機体位置算出部66、報知部67、走行軌跡管理部68、植立作物検知ユニット50が備えられている。
【0032】
機体位置算出部66は、衛星測位モジュール80から逐次送られてくる測位データに基づいて、機体10の少なくとも1つの特定箇所、例えば刈取部15などの地図座標(又は圃場座標)である機体位置を算出する。
【0033】
走行制御モジュール60には、自動走行制御部61と手動走行制御部62と作業制御部63とが備えられている。自動操舵で走行する自動走行モードと、手動操舵で走行する手動操舵モードとのいずれかを選択する走行モードスイッチ(非図示)が運転部12内に設けられている。この走行モードスイッチを操作することで、手動操舵走行から自動操舵走行への移行、あるいは自動操舵走行から手動操舵走行への移行が可能である。
【0034】
自動走行制御部61及び手動走行制御部62は、エンジン制御機能、操舵制御機能、車速制御機能などを有し、車両走行機器群7Aに走行制御信号を与える。自動走行制御部61は、位置ずれ算出部61aと操向制御量算出部61bとを有する。位置ずれ算出部61aは、走行経路設定部64によって設定された走行経路と、機体位置算出部66によって算出された機体位置との間の走行位置ずれを算出する。操向制御量算出部61bは、機体10が走行位置ずれを解消するように自動操向されるための操向制御量を算出する。自動走行時の車速は、前もって設定されている車速値に基づいて自動走行制御部61によって生成される車速指令に基づいて決まる。手動走行時の操向制御量や車速は、手動操作に基づいて手動走行制御部62により生成される操向制御量や車速指令に基づいて決まる。作業制御部63は、刈取部15、脱穀装置13、穀粒排出装置18などの動きを制御するために、出力処理部6Bを介して作業装置機器群7Bに作業制御信号を与える。
【0035】
走行経路設定部64は、作成された自動走行のための走行経路をメモリに展開し、順次自動走行における目標走行経路として設定する機能を有する。報知部67は、制御ユニット6の各機能部からの要求に基づいて報知データを生成し、報知デバイス84に与える。
走行軌跡管理部68は、機体位置算出部66からの機体位置及び走行制御モジュール60からの作業走行情報に基づいて、圃場における未作業領域と既作業領域とを管理する。
【0036】
植立作物検知ユニット50は、収穫幅方向(作業幅方向)にて隣接する植立穀稈の茎部の間隔である条間(「作物間隔」の一例)を、非接触で検知する。植立穀稈を刈り取った後に残される茎部は、圃場面から数センチ以上の高さを有する。従って、植立穀稈を刈り取った後に残される茎部は、植立作物検知ユニット50によって検知され、植立穀稈の茎部として取り扱われる。
【0037】
この実施形態では、植立作物検知ユニット50は、撮影部21からの撮影画像と、機体位置算出部66からの機体位置に基づいて算出される撮影部21の位置と、撮影部21の撮影画角とに基づいて、少なくとも2つの植立穀稈の茎部の位置及び条間を検知し、条間におけるデバイダ15Cの収穫幅方向での位置関係を算出する。
【0038】
このため、この実施形態の植立作物検知ユニット50には、画像取得部51、機械学習ユニット52、デバイダ位置算出部53が含まれている。画像取得部51は、撮影部21から所定周期で送られてくる撮影画像を、機体位置算出部66によって算出された自機位置とリンクさせてメモリに格納する。
【0039】
機械学習ユニット52は、機械学習されたニューラルネットワークによって構築されている。この機械学習されたニューラルネットワークでは、図5に模式的に示されているように、撮影部21によって取得された撮影画像を入力画像として、この撮影画像に含まれている植立穀稈の茎部を認識して、茎部の位置を出力する。このため、そのような認識に優れたディープラーニングアルゴリズムが用いられている。図5では、植立穀稈の茎部が矩形枠で示されている。この矩形枠のサイズ及び撮影画像における矩形枠の位置が出力される。
【0040】
デバイダ位置算出部53は、図6に模式的に示されているように、デバイダ15Cの取付位置と、機体10に対する茎部の位置と、目標デバイダ位置(ここでは、条間の中央位置)から、デバイダ15Cの目標デバイダ位置からの位置ずれであるデバイダ位置ずれ(図6ではαで示されている)を算出する。
【0041】
走行制御補正部65は、デバイダ15Cが植立穀稈の条間に適切に進入するように、自動走行制御部61による操向制御信号をオフセット補正する。この操向制御の流れが図7に示されている。この実施形態では、走行制御補正部65は、オフセット量算出部65aを備えている。オフセット量算出部65a、植立作物検知ユニット50から出力されたデバイダ位置ずれに基づいて、デバイダ15Cが目標デバイダ位置に近づくために必要な機体10の横方向(走行経路に直交する方向)の変位量をオフセット量(図7ではβで示されている)として算出する。簡単には、デバイダ位置ずれがそのままオフセット量として用いられる(β=α)。しかしながら、デバイダ位置ずれと、位置ずれ算出部61aによって算出された走行位置ずれとのどちらかに重みをおくことで、より適切な操向制御が実現できる場合もある。デバイダ位置ずれに重きをおく場合、オフセット量はデバイダ位置ずれより大きな値をとり、走行位置ずれに重きをおく場合、オフセット量はデバイダ位置ずれより小さな値をとる。このことから、デバイダ位置ずれから所定の関数(β=f(α))を用いてオフセット量が算出されてもよい。この関数fは、線形関数でもよいし、非線形関数でもよい。
【0042】
このオフセット量は、位置ずれ算出部61aによって算出された走行位置ずれに加えられ、その混合値が操向制御量算出部61bに与えられる。図7において、当該混合値は「Δd+β」で示されているが、混合値の算出手法は必ずしも加算に限られない。例えば、重み演算等を用いて混合値が算出されてもよい。操向制御量算出部61bは、PI制御等を用いて操向制御量(図7ではSで示されている)を算出して、操向制御信号に変換して車両走行機器群7Aに送る。なお、図示されていないが、操向制御量算出部61bは、方位偏差(走行経路の方位と機体方位と偏差)も制御パラメータとして用いることができる。
【0043】
図8図9には、走行制御補正部65の別実施形態が示されている。ここでは、走行制御補正部65は、オフセット量算出部65aに代えて経路補正量算出部65bを備えている。この経路補正量算出部65bは、デバイダ15Cが植立穀稈の条間に適切に進入するように、走行経路設定部64によって設定されている走行経路を変位させる経路変位指令を走行経路設定部64に与える。図8に示されているように、デバイダ15Cの目標デバイダ位置からの位置ずれ(図8ではαで示されている)の距離だけ走行経路を横方向に変位させることで、デバイダ15Cは目標デバイダ位置に近づくことになる。この走行経路の横方向の変位量は経路補正量(図8ではγで示されている)と称す。簡単には、デバイダ位置ずれがそのまま経路補正量として用いられる(γ=α)。ここでも、先の実施形態と同様に、デバイダ位置ずれから所定の関数(γ=g(α))を用いて経路補正量を算出してもよい。この関数gも、線形関数でもよいし、非線形関数でもよい。
【0044】
この経路補正量は、経路変位指令の形で、走行経路設定部64に送られる。走行経路設定部64は、経路変位指令に含まれている経路補正量を用いて、現時点で設定されている走行経路を補正し、補正走行経路として、位置ずれ算出部61aに送られる。
【0045】
タブレットコンピュータ85は、タッチパネル85a(タッチパネル式表示装置)を備えており、オペレータによる操作によって種々の制御指令を制御ユニット6に与えることができる。この実施形態では、オペレータは、タッチパネル85aを用いて植立穀稈の条方向を手書き入力(手動入力)することができる。例えば、圃場の外形が示されたタッチパネル85aに、オペレータが条方向(植付方向、刈取り方向)を手書き入力する。走行経路設定部64は、入力された条方向に沿うように、走行経路の作成や設定を行う。
【0046】
なお、図4に示された走行制御モジュール60、走行経路設定部64、走行制御補正部65、植立作物検知ユニット50などの制御機能要素は、主に説明目的で分けられており、当該制御機能要素の統合や、当該制御機能要素の分割は、自由に行われてよい。
〔別実施の形態〕
【0047】
(1)上述した実施形態では、撮影部21として広角レンズを装着した可視光カメラが採用された。撮影部21は、白黒カメラでもよいし、赤外光カメラ、あるいは可視光カメラと赤外光カメラとからなるハイブリッドカメラでもよい。
【0048】
(2)上述した実施形態では、撮影部21は、デバイダ15Cの上面に取り付けられていた。撮影部21は、植立穀稈の茎部が撮影部21の撮影視野に入る限り、その他の部位に取り付けられてもよい。
【0049】
(3)上述した実施形態では、機械学習ユニット52は、ディープラーニングアルゴリズムを用いて機械学習されたニューラルネットワークで構成されていたが、もちろん、ディープラーニングアルゴリズム以外のアルゴリズムを用いたニューラルネットワーク、例えばリカレントニューラルネットワークで構成されてもよい。さらには、機械学習されたニューラルネットワーク以外の画像認識技術が採用されてもよい。
【0050】
(4)上述した実施形態では、植立穀稈の茎部の非接触での検知のために、植立作物検知ユニット50において撮影画像を入力画像とする機械学習ユニット52が用いられている。植立作物検知ユニット50が、超音波ビーム、光ビーム、電磁波ビームなどを用いた走査型センサで構成してもよい。走査型センサによって得られる走行前方領域の三次元点群データから、反射体の形状を評価し、植立作物の位置を算出することができる。
【0051】
(5)上述した実施形態では、農作業機の一例として、自脱型のコンバインが説明された。農作業機は、普通型のコンバインであってもよい。
【0052】
(6)農作業機は、トウモロコシ収穫機であってもよい。図10には、農作業機の一例としてのトウモロコシ収穫機が示されている。本実施形態のトウモロコシ収穫機は、普通型コンバインのヘッダ(刈取部)を収穫前処理装置115に換装したものである。このトウモロコシ収穫機は、植立するトウモロコシから房状体を分離し、房状体から穀粒を分離し、穀粒を貯留する。
【0053】
このトウモロコシ収穫機は、クローラ式の走行装置(図示なし)、運転部112、脱穀装置113、穀粒タンク114、作業部としての収穫前処理装置115、搬送装置116、穀粒排出装置118、衛星測位モジュール180等の構成要素を備えている。トウモロコシ収穫機の機体110は、構成要素の集合体を意味するが、場合によっては、走行装置や収穫前処理装置115などの個別の構成要素を意味することがある。
【0054】
収穫前処理装置115は、植立するトウモロコシから房状体を分離させて、房状体を搬送装置116へ送り出す。脱穀装置113は、搬送装置116により搬送された房状体から穀粒を分離する。収穫前処理装置115は、特定部位としてのデバイダ115C、掻込オーガ115D等を備えている。右端のデバイダ115Cの上面に、撮影部121が設けられている。
【0055】
(7)図11には、別の形態のトウモロコシ収穫機が示されている。このトウモロコシ収穫機は、植立するトウモロコシから房状体を分離し、房状体から包葉を取り除き、房状体を貯留する。
【0056】
このトウモロコシ収穫機は、車輪式の走行装置(図示なし)、運転部212、包葉除去部213、貯留タンク214、作業部としての収穫部215、搬送装置216、衛星測位モジュール280等の構成要素を備えている。トウモロコシ収穫機の機体210は、構成要素の集合体を意味するが、場合によっては、走行装置や収穫部215などの個別の構成要素を意味することがある。
【0057】
収穫部215は、植立するトウモロコシから房状体を分離させて、房状体を搬送装置216へ送り出す。包葉除去部213は、搬送装置216により搬送された房状体から包葉を取り除く。収穫部215は、特定部位としてのデバイダ215C等を備えている。右端のデバイダ215Cの上面に、撮影部221が設けられている。
【0058】
(8)農作業機は、サトウキビ収穫機であってもよい。図12には、農作業機の一例としてのサトウキビ収穫機が示されている。このサトウキビ収穫機は、植立するサトウキビを収穫し、サトウキビと夾雑物とを分離して、サトウキビを機体後方へ排出する。
【0059】
このサトウキビ収穫機は、車輪式の走行装置311、運転部312、分離装置313、作業部としての収穫部315、搬送装置316、排出装置318、衛星測位モジュール380等の構成要素を備えている。サトウキビ収穫機の機体310は、構成要素の集合体を意味するが、場合によっては、走行装置311や収穫部315などの個別の構成要素を意味することがある。
【0060】
収穫部315は、植立するサトウキビを刈り取って、サトウキビを搬送装置316へ送り出す。分離装置313は、搬送装置316により搬送されたサトウキビから夾雑物を分離する。排出装置318は、分離装置313により夾雑物から分離されたサトウキビを機体310の後方へ排出する。収穫部315は、特定部位としてのデバイダ315C等を備えている。右端のデバイダ315Cの上面に、撮影部321が設けられている。
【0061】
(9)農作業機がデバイダを備えない実施形態も可能である。例えば、農作業機は、乗用型管理機であってもよい。この場合、特定部位が、機体に設けられた走行車輪であってもよい。走行制御補正部は、走行車輪が植立作物の間に進入するように、自動走行制御部による操向制御信号をオフセット補正する。又は、走行制御補正部は、走行車輪が植立作物の間に進入するように、走行経路を補正する。
【0062】
図13には、農作業機の一例としての乗用型管理機が示されている。この乗用型管理機は、圃場を走行しながら植立作物へ薬剤(農薬や肥料等)を散布する散布作業を行う。
【0063】
この乗用型管理機は、走行車輪411(車輪式の走行装置)、運転部412、作業部としての薬剤散布部415、薬剤タンク425、ブロードキャスター426、衛星測位モジュール480等の構成要素を備えている。乗用型管理機の機体410は、構成要素の集合体を意味するが、場合によっては、走行車輪411や薬剤散布部415などの個別の構成要素を意味することがある。
【0064】
薬剤散布部415は、薬剤タンク425に貯留された薬剤を圃場に散布する。薬剤散布部415は、センターブーム415Dと、左右のサイドブーム415Eと、を備えている。センターブーム415Dの右端部の上面に、撮影部421が設けられている。
【0065】
乗用型管理機は、上述の実施形態(図4図7の図示例)と同様の構成の制御ユニット6を備える。本実施形態では、制御ユニット6は、デバイダ位置算出部53に替えて、走行車輪位置算出部を備える。走行車輪位置算出部は、デバイダ位置ずれ(図6におけるα)に替えて、走行車輪位置ずれ(図14におけるδ)を算出する。詳しくは、走行車輪位置算出部は、図14に模式的に示されているように、走行車輪411の取付位置と、機体410に対する茎部の位置と、目標走行車輪位置(ここでは、条間の中央位置)から、走行車輪411の目標走行車輪位置からの位置ずれである走行車輪位置ずれ(図14におけるδ)を算出する。
【0066】
本実施形態では、走行制御補正部65は、走行車輪411が植立穀稈の条間に適切に進入するように、自動走行制御部61による操向制御信号をオフセット補正する。走行制御補正部65は、デバイダ位置ずれ(α)に替えて走行車輪位置ずれ(δ)を用いて、図7の図示例と同様の処理により、操向制御信号をオフセット補正する。
【0067】
乗用型管理機が、図8及び図9に示された別実施形態に係る走行制御補正部65を備えてもよい。この場合、走行制御補正部65は、オフセット量算出部65aに代えて経路補正量算出部65bを備えている。この経路補正量算出部65bは、走行車輪411が植立穀稈の条間に適切に進入するように、走行経路設定部64によって設定されている走行経路を変位させる経路変位指令を走行経路設定部64に与える。図15に示されているように、走行車輪411の目標走行車輪位置からの位置ずれ(図15ではδで示されている)の距離だけ走行経路を横方向に変位させることで、走行車輪411は目標走行車輪位置に近づくことになる。この走行経路の横方向の変位量は経路補正量(γ)と称す。簡単には、走行車輪位置ずれがそのまま経路補正量として用いられる(γ=δ)。
【0068】
(10)農作業機は、野菜収穫機であってもよい。野菜収穫機は、圃場を走行しながら、植立作物としての野菜(人参、大根、キャベツ、白菜等)を収穫する。野菜収穫機がデバイダ(特定部位の一例)を備える場合は、野菜収穫機は、図4の図示例と同様の構成の制御ユニット6を備える。図7に示される態様にて、走行制御補正部65は、デバイダが植立作物(野菜)の間に適切に進入するように、自動走行制御部61による操向制御信号をオフセット補正する。又は、走行制御補正部65は、オフセット量算出部65aに代えて経路補正量算出部65bを備える。図9に示される態様にて、経路補正量算出部65bは、デバイダが植立作物の間に適切に進入するように、走行経路設定部64によって設定されている走行経路を変位させる経路変位指令を走行経路設定部64に与える。
【0069】
野菜収穫機は、デバイダを備えていなくてもよい。野菜収穫機がデバイダを備えない場合には、走行制御補正部65が、走行車輪(特定部位の一例)が植立作物(野菜)の間に適切に進入するように、自動走行制御部61による操向制御信号をオフセット補正する。
又は、経路補正量算出部65bが、走行車輪が植立作物の間に適切に進入するように、走行経路設定部64によって設定されている走行経路を変位させる経路変位指令を走行経路設定部64に与える。
【0070】
(11)撮影部21が、デバイダ15Cの周辺の作物の検出に用いられてもよい。例えば、植立作物検知ユニット50が、撮影部21による撮影画像に基づいて、デバイダ15Cが植立作物の条に突っ込んだ状態になっていることを検知してもよい。当該検知結果に応じて、走行制御モジュール60は、デバイダ15Cが植立作物の間を通るように、機体10を停止及び後進させた後、適切な走行経路にて前進させ自動走行を継続する。例えば、植立作物検知ユニット50が、撮影部21による撮影画像に基づいて、デバイダ15Cが刈取作物を引き摺る状態になっていることを検知してもよい。当該検知結果に基づいて、走行制御モジュール60は、刈取作物がデバイダ15Cから離れるように、機体10を停止及び後進させた後、再度前進させる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、圃場の植立作物に対して作業を行う農作業機に適用可能である。
【符号の説明】
【0072】
10 :機体
15 :刈取部(作業部)
15C :デバイダ(特定部位)
21 :撮影部
50 :植立作物検知ユニット
61 :自動走行制御部
64 :走行経路設定部
65 :走行制御補正部
66 :機体位置算出部
80 :衛星測位モジュール
85a :タッチパネル
110 :機体
115 :収穫前処理装置(作業部)
115C :デバイダ(特定部位)
121 :撮影部
180 :衛星測位モジュール
210 :機体
215 :収穫部(作業部)
215C :デバイダ(特定部位)
221 :撮影部
280 :衛星測位モジュール
310 :機体
315 :収穫部(作業部)
315C :デバイダ(特定部位)
321 :撮影部
380 :衛星測位モジュール
410 :機体
411 :走行車輪(特定部位)
415 :薬剤散布部(作業部)
421 :撮影部
480 :衛星測位モジュール
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10
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