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  • 特許-ノロウイルス結合ペプチド 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】ノロウイルス結合ペプチド
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20240729BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
C07K7/06 ZNA
C12Q1/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020093743
(22)【出願日】2020-05-28
(65)【公開番号】P2020196708
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2019100758
(32)【優先日】2019-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 淑貴
(72)【発明者】
【氏名】森本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】熊地 重文
(72)【発明者】
【氏名】根本 直人
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0061835(US,A1)
【文献】特開2019-043946(JP,A)
【文献】特開2015-042159(JP,A)
【文献】国際公開第2013/183707(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0153991(US,A1)
【文献】Biosensors and Bioelectronics,2017年,Vol.87,pp.164-170
【文献】Nucleic Acid Research,2009年,Vol.37, No.16,e108 (pp.1-13)
【文献】Biotechnology and Bioprocess Engineering,2019年05月18日,Vol.24,pp.318-325
【文献】Biosensors and Bioelectronics,2018年08月28日,Vol.123,pp.223-229
【文献】Journal of Biotechnology,2015年,Vol.212,pp.174-180
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS (STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号103、283及び302から選ばれるいずれかのアミノ酸配列からなる、ノロウイルス結合ペプチド。
【請求項2】
請求項1記載のノロウイルス結合ペプチドを用いるノロウイルスの検出方法。
【請求項3】
請求項1記載のノロウイルス結合ペプチドを含有するノロウイルス検出キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノロウイルスに親和性を有するノロウイルス結合ペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
ノロウイルスは従来SRSV(Small Round Structured Virus:小型球形ウイルス)と呼ばれており、また、NLV(Norwalk-like virus:ノーウォーク関連ウイルス)ともいわれるウイルスであり、その遺伝子型によりGI(genogroupI)からGV(genogroup V)まで5つに分類され、このうちヒトに感染するのはGI,GII,GIVである。ノロウイルスはヒトの腸管細胞内で増殖し、下痢、嘔吐、腹痛、吐き気、発熱等の症状を伴う食中毒の原因となるウイルスであり、主な感染源は食品で、しばしば生カキが問題となっている。また、近年ではウイルス保菌者の排泄物等によるヒトからヒトへの感染も多くなっている。
【0003】
現在、ノロウイルスの検出には、電子顕微鏡による観察の他、抗体を用いる方法、ノロウイルスRNAの増幅産物量を測定する方法が存在する。また、最近では、ノロウイルスに対して親和性を有し、ノロウイルスの検出に有用な18アミノ酸からなるポリペプチドも見出されているが、その結合力はこれまでに報告されているノロウイルス抗体と比べて低いことが報告されている(非特許文献1)。
【0004】
しかしながら、RNAを検出する方法は逆転写や増幅工程が必要であり、操作が煩雑で時間とコストがかかる。また、抗体においては、特異性が低い場合があること、動物や培養細胞を用いて作製・生産するために、品質が安定しない、コストがかかる、という問題が存在する。
したがって、より有効で、簡便なノロウイルスの特異的検出法、並びにノロウイルス感染の予防及び治療法の開発が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Hye Jin Hwang et al. Biosensors and Bioelectronics 87(2017)164-170
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ノロウイルスの特異的検出や感染制御に有用な、ノロウイルスに特異的に結合するペプチドを提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者は、1014オーダーのcDNAを包含するcDNAライブラリを作製し、これからcDNAディスプレイ法を用いて、ノロウイルスと特異的に結合するペプチドを取得することに成功し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は以下の1)~4)に係るものである。
1)配列番号1~327から選ばれるいずれかのアミノ酸配列からなる、ノロウイルス結合ペプチド。
2)配列番号1~327から選ばれるいずれかのアミノ酸配列のN末端及びC末端のいずれか又は両方にシステイン残基が付加したアミノ酸配列からなる、ノロウイルス結合ペプチド。
3)上記1)又は2)のノロウイルス結合ペプチドを用いるノロウイルスの検出方法。
4)上記1)又は2)のノロウイルス結合ペプチドを含有するノロウイルス検出キット。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ノロウイルスと親和性が高いノロウイルス結合ペプチドが提供される。本発明のペプチドによれば、ノロウイルスを特異的に高感度で検出することができ、またノロウイルスのヒトへの感染を制御できると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】VLPsの作製フローを示す模式図。
図2】ノロウイルス結合ペプチドのスクリーニングの概略を示す模式図。
図3】mRNA-リンカー連結体を示す模式図(A:セレクション用、B:解析用)。
図4】ELISAによる相互作用の評価結果。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のノロウイルス結合ペプチドは、配列番号1~327から選ばれるいずれかのアミノ酸配列からなる、10アミノ酸で構成されるペプチドである(表18~20)。
当該ペプチドは、1014オーダーのcDNAを包含するcDNAライブラリからcDNAディスプレイ法を用いて、試験管内淘汰によりノロウイルスを標的分子としてスクリーニングされたものであり、ノロウイルスと特異的に結合する能力を持ったノロウイルス結合のペプチドアプタマーである。当該ペプチドは、疎水性アミノ酸が27.6%、親水性アミノ酸が72.4%からなるライブラリ配列から構成された10アミノ酸である。本発明のノロウイルス結合ペプチドは、試験管内淘汰によりノロウイルスを標的分子としてスクリーニングされたノロウイルス結合ペプチドのうちアミノ酸配列の類似度によるクラスター解析でクラスターとして認められたもの、又は出現頻度が高いものである。クラスター解析の視点ではハミング距離が5以下に該当するクラスターのうち配列番号6~10、21~25、31~35、71~75、101~110、164~172及び205~260から選ばれるいずれかのアミノ酸配列からなるノロウイルス結合ペプチドが好ましく、3文字列に分割したq-gram距離が4以下で3配列以上のクラスターのうち配列番号261~263、282~284及び288~290から選ばれるいずれかのアミノ酸配列からなるノロウイルス結合ペプチドが好ましく、ノロウイルス結合ペプチド出現頻度の視点では配列番号301、302、305、308、310~312、316、317、320及び323のアミノ酸配列からなるノロウイルス結合ペプチドが好ましい。また、これらの配列群のうち配列番号配列番号101~105、164~172、205~260、261~263、282~284、288~290及び302から選ばれるいずれかのアミノ酸配列からなるノロウイルス結合ペプチドがより好ましく、配列番号103、167、205、263、283、288及び302から選ばれるいずれかのアミノ酸配列からなるノロウイルス結合ペプチドが特に好ましい。
【0012】
本発明のペプチドには、一態様として、配列番号1~327から選ばれるいずれかのアミノ酸配列のN末端及びC末端のいずれか又は両方にシステイン残基が付加したアミノ酸配列からなるものが包含される。そして、両末端にシステイン残基を有するペプチドは、当該システイン残基がジスルフィド結合し、環状ペプチドを形成することができる。
【0013】
また、本発明のペプチドには、別の一態様として、ノロウイルスとの特異的結合能力が保持される限りにおいて、上記の配列番号1~327から選ばれるいずれかのアミノ酸配列、又は当該アミノ酸配列のN末端及びC末端のいずれか又は両方にシステイン残基が付加したアミノ酸配列からなるペプチドのN末端又はC末端のいずれか又は両方に、さらに1~20個の任意のアミノ酸残基が付加したアミノ酸配列からなるものが包含される。
【0014】
ヒトに感染するノロウイルスに属するウイルスは、現在、Genogroup I(GI)とGenogroup II(GII)、及びGenogroup IV(GIV)の3つの遺伝子群に分類され、感染が報告される事例の9割以上はGII群である。また、各遺伝子型に対応した血清型があると考えられている。本発明においてノロウイルスには、斯かるノロウイルスに属するウイルスが包含される。また、ノロウイルスゲノムの構造蛋白質領域をバキュロウイルスに組み込み、昆虫細胞で発現させると、ウイルス粒子と酷似した中空ウイルス粒子(VLPs)を作出できる。VLPsは構造がノロウイルスそのものであり、ウイルス粒子と同等の抗原性を有するが、内部にゲノムRNAを持たず、中空で感染性はない。したがって、本発明においてノロウイルスには、斯かるVLPsも包含される。
VLPsとしては、GII.4 Saga1株(Genbank No.AB447456)、GII.4 Sydney株(Genbank No.JX459908.1)、GII.3 TCH株(Genbank No.KF006265),GII.2 Ehime株(Genbank No.LC145808)、GII.17 Kawasaki株(Genbank No.AB983218)、GII.17 Saitama株(Genbank No.KJ196286.1)等のノロウイルスゲノムを用いて作成したVLPsが挙げられる。
【0015】
本発明のペプチドは、ノロウイルス(中空ウイルス粒子;VLPs)を標的分子として、当該分野で公知の試験管内進化法、例えばcDNAディスプレイ法(Nucleic Acid Research, vol37, No.16, e108(2009))を用いて作製することができる。すなわち、cDNAを包含するcDNAライブラリ(ペプチド-リンカー-mRNA/cDNA結合体のライブラリ)を作製し、これを、cDNAディスプレイ法を用いて試験管内選別することにより作製することができる。
具体的には、以下のa)~c)の工程により製造できる(図2参照)。
a)所望のランダムペプチドライブラリをコードするDNA断片(コンストラクト)の準備工程
b)前記工程で準備されたコンストラクトを使用し、cDNAディスプレイ法を用いてペプチド-リンカー-mRNA/cDNAをインビトロで作製するcDNAディスプレイ作製工程
c)前記工程で得られたcDNAディスプレイをVLPsと混合させ、VLPsと結合したcDNAディスプレイを回収し、VLPs結合cDNAディスプレイをスクリーニングする選択工程
【0016】
a.コンストラクトの準備工程
ノロウイルス結合ペプチドの作製用コンストラクトとして、5’側から3’側に向かって、プライマー領域と、プロモーター領域と、非翻訳領域と、ランダム領域と、タグ領域とを含む、所望のランダムペプチドライブラリをコードするDNA断片が構築される。ここで、プライマー領域として使用するDNA配列は、市販されている一般的なものを使用することができる。また、プロモーター領域としては、T7、SP6等を使用することができる。非翻訳領域としては、Ω配列等を使用することができる。
【0017】
ランダム領域は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンからなる疎水性アミノ酸が27.6%、グリシン、セリン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、システインからなる極性アミノ酸が36.0%、リジン、アルギニン、ヒスチジンからなる塩基性アミノ酸が18.4%、アスパラギン酸、グルタミン酸からなる酸性アミノ酸が12.0%となるようにDNAが構成されている。
【0018】
b.cDNAディスプレイ作製工程
cDNAディスプレイの作製は、図2に示すように、(b1)mRNA調製工程と;(b2)リンカー-mRNA連結体形成工程と;(b3)ペプチド-リンカー-mRNA連結体形成工程と;(b4)粒子結合工程と;(b5)cDNAディスプレイ形成工程と;(b6)ペプチドの架橋工程と;(b7)cDNAディスプレイ遊離工程を備える。
【0019】
(b1)mRNA調製工程では、前記のコンストラクトから転写によってmRNAを調製する。そして、(b2)前記mRNA調製工程で得られたmRNAを、ピューロマイシンを結合させたリンカーに結合させて、リンカー-mRNA連結体を形成する。
次に、(b3)無細胞翻訳系により翻訳された前記mRNA配列に対応するアミノ酸配列を有するペプチドをピューロマイシンに結合させ、ペプチド-リンカー-mRNA連結体を形成する。
次いで、(b4)粒子結合工程において、上記のようにして得られたペプチド-リンカー-mRNA連結体を、磁性粒子に結合させる。
続いて、(b5)前記磁性粒子と結合したペプチド-リンカー-mRNA連結体のmRNAを逆転写し、cDNAを形成させ、ペプチド-リンカー-mRNA/cDNAを得る(「cDNAディスプレイ」)。
次に、(b6)前記工程で得られたcDNAディスプレイにおけるペプチドのランダム領域のN末端とC末端にあるシステインに対して架橋反応を施して架橋する。
次に、(b7)複合体遊離工程において、前記工程で得られたcDNAディスプレイを前記磁性粒子から遊離させ、必要に応じて精製が行われる。
【0020】
c.VLPs結合cDNAディスプレイの選択工程
VLPs結合cDNAディスプレイの選択は、(c1)溶液添加工程と、(c2)分離工程と;(c3)回収工程とを備える。
(c1)溶液添加工程では、VLPs溶液に、cDNAディスプレイ含有溶液が添加される。引き続き、(c2)分離工程で、VLPsとcDNAディスプレイ溶液との混合液を、例えば130,000×gで5分間遠心してVLPsを沈殿させることで、VLPsと結合しなかったcDNAディスプレイと分離される。その後、(c3)回収工程で、VLPsに結合したcDNAディスプレイがVLPsごと回収される。
【0021】
本発明のペプチドは、以上のようにして、所定のDNAライブラリから試験管内選別可能である。
また、本発明のペプチドは、液相法、固相法、液相法と固相法を組み合わせたハイブリッド法等の化学合成法;遺伝子組み換え法等、公知のペプチドの製造方法によって製造することができる。
【0022】
本発明のペプチドは、ノロウイルスに特異的に結合することから、これを、ノロウイルスを含有するか、または含有する可能性のあるサンプルと接触させることによって、サンプル中にノロウイルスが存在すること、あるいは存在しないことを確認できる。
すなわち、例えば、ELISA法等のイムノアッセイにおける抗ノロウイルス抗体に代えて、本発明のペプチドを用いて試料中のノロウイルスを検出することができる。
検出薬として用いる場合、本発明のペプチドは、検出可能に標識され得る。ペプチドの標識は、例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ等の酵素の他、放射性物質、蛍光物質、発光物質等が用いられる。その他、金コロイド、量子ドット等のナノ粒子を用いることもできる。また、イムノアッセイでは、本発明のペプチドをビオチンで標識し、酵素等で標識したアビジン又はストレプトアビジンを結合させて検出することもできる。
【0023】
イムノアッセイの中でも、酵素標識を用いるELISA法は、簡便且つ迅速に抗原を測定することができる点で好ましい。本発明のペプチドを用い、ELISA法によってノロウイルスを検出する場合、例えば、固相担体にノロウイルスを固定化し、そこへ予めビオチン標識したペプチドを結合させる。洗浄後、アビジン修飾した酵素をビオチンに結合させ、その後酵素基質と反応、発色させ、吸光度を測定することにより、ノロウイルスを検出することができる。または本発明のペプチドを固相化し、そこへノロウイルスを結合させる。洗浄後、酵素標識した抗ノロウイルス抗体または、抗ノロウイルス抗体及び酵素標識した二次抗体を結合させた後、酵素基質と反応、発色させ、吸光度を測定する事により、ノロウイルスを検出することが出来る。
酵素基質としては、酵素がアルカリホスファターゼの場合、p-ニトロフェニルリン酸(NPP)等を用いることができ、ペルオキシターゼの場合は、3、3’、5,5’-テトラメチルベンジジン等を用いることができる。また、固相担体としては、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルトルエン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリメタクリレート、ラテックス、ゼラチン、アガロース、セルロース、セファロース、ガラス、金属、セラミックス又は磁性体等の材質よりなるビーズ、マイクロプレート、試験管、スティック又は試験片等の形状の不溶性担体を用いることができる。本発明のペプチド等の前記固相担体への固定は、物理的吸着法、化学的結合法又はこれらの併用する方法等、公知の方法に従って結合させることにより行うことができる。
【0024】
本発明のペプチドは、ノロウイルス検出用キットの構成成分となり得る。当該検出キットは、本発明のペプチドの他、検出に必要な試薬及び器具、例えば抗体、固相担体、緩衝液、酵素反応停止液、マイクロプレートリーダー等を含むことができる。
当該検出キットの対象となるサンプルとしては、例えば、ノロウイルスを含むか又は含む可能性があるものであれば特に限定されないが、例えば患者より採取された糞便や吐しゃ物等の臨床材料や、分離されたウイルス培養液及び、カキ等の食品や上下水道水等を挙げることができる。
【0025】
また、本発明のペプチドは、ノロウイルスのカプシドタンパク質等に特異的に結合し、ウイルスの細胞への結合を阻害することが考えられる。したがって、本発明のペプチドは、抗ノロウイルス製剤として、またノロウイルスの予防用または治療用の医薬として利用することも可能である。
本発明のペプチドを医薬として用いる場合には、その態様は、経口、非経口のいずれでもよく、適宜、周知の薬学的に許容可能な無毒性の担体、希釈剤と組み合わせて用いることができる。非経口投与としては、典型的には注射剤が挙げられるが、噴霧剤等と共に吸入による投与も可能である。
【0026】
上述した実施形態に関し、本発明においては以下の態様が開示される。
<1>配列番号1~327から選ばれるいずれかのアミノ酸配列からなる、ノロウイルス結合ペプチド。
<2>配列番号1~327から選ばれるいずれかのアミノ酸配列のN末端及びC末端のいずれか又は両方にシステイン残基が結合したアミノ酸配列からなる、ノロウイルス結合ペプチド。
<3>配列番号1~327から選ばれるいずれかのアミノ酸配列のN末端及びC末端にシステイン残基が結合したものである、<2>のノロウイルス結合ペプチド。
<4>配列番号1~327から選ばれるいずれかのアミノ酸配列からなるペプチドのN末端及びC末端に結合したシステイン残基がジスルフィド結合し環を形成してなる、<3>のノロウイルス結合ペプチド。
<5><1>~<4>のいずれかのペプチドのN末端及びC末端のいずれか又は両方に1~20個のアミノ酸が結合したアミノ酸配列からなる、ノロウイルス結合ペプチド。
<6><1>~<5>のいずれかのノロウイルス結合ペプチドを用いるノロウイルスの検出方法。
<7><1>~<5>のいずれかのノロウイルス結合ペプチドを含有するノロウイルス検出キット。
<8>配列番号1~327から選ばれるいずれかのアミノ酸配列が、配列番号6~10、21~25、31~35、71~75、101~110、164~172、205~263、282~284、288~290、301、302、305、308、310~312、316、317、320及び323から選ばれるいずれかのアミノ酸配列である、<1>~<6>のいずれかのノロウイルス結合ペプチド、又は<7>のノロウイルス検出キット。
<9>配列番号1~327から選ばれるいずれかのアミノ酸配列が、配列番号101~105、164~172、205~260、261~263、282~284、288~290及び302から選ばれるいずれかのアミノ酸配列である、<1>~<6>のいずれかのノロウイルス結合ペプチド、又は<7>のノロウイルス検出キット。
<10>配列番号1~327から選ばれるいずれかのアミノ酸配列が、配列番号103、167、205、263、283、288及び302から選ばれるいずれかのアミノ酸配列である、<1>~<6>のいずれかのノロウイルス結合ペプチド、又は<7>のノロウイルス検出キット。
【実施例
【0027】
以下、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。
参考例 VLPsの作製
(1)pDEST8へのVP1、VP2遺伝子の導入
ノロウイルス(以下、NoVと略す場合がある) GII.4 Saga1株 (Genbank No:AB447456)、GII.3 TCH株(Genbank No.KF006265)、GII.17 Saitama株(Genbank No.KJ196286.1)の構造タンパク質領域であるVP1,VP2領域をコードするDNAについては株式会社ファスマックにて人工合成を委託し、pUCFaプラスミドのlacZα領域である5’-CAGACGTGTGCTCTTCCGATCTGAT/ATCAGATCGGAAGAGCGTCGTTAAG-3’(配列番号328)のスラッシュをクローニングサイトとして目的遺伝子を導入した。GII.4について、合成したpUC-Saga1(図1)DNAを鋳型として、プライマー1(5’-CATCACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTGTGA-3’:配列番号329)及びプライマー2(5’-TATCACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGGTT-3’:配列番号330)を用いてPCR反応を行い、断片(図1-A)を得た。GII.3については合成したpUC-TCHのDNAを鋳型として、プライマー3(5’-ATCACAAGTTTGTACTGGGAGGGCGATCGCA-3’:配列番号331)及びプライマー4(5’-CTATCACCACTTTGTTCGCTACCTCGCGAA-3’:配列番号332)を用いてPCR反応を行い、断片(図1-A)を得た。また、pDEST8プラスミド(Invitrogen)を鋳型として、プライマー5(5’-ACAAGTGGTGATAGCTTGTCGAGAAGTA-3’:配列番号333)及びプライマー6(5’-GTACAAACTTGTGATGATCCGCGCCCGAT-3’:配列番号334)を用いてPCR反応を行い、断片(図1-B)を得た。得られたPCR断片A及び断片Bを混合し、InFusion HD Cloning Kit(Clontech)を用いて反応を行い、得られたDNA(図1-C)1ngを用いて、Competent Quick DH5α(TOYOBO製)を形質転換し、100μg/mLのアンピシリンを含有したLB寒天平板培地にて選択を行い、得られたコロニーを100μg/mLアンピシリン含有LB液体培地にて培養し、得られた細胞からQIAprep Spin Miniprep Kit(Qiagen製)を用いてプラスミドの抽出を行った。得られたNoV遺伝子導入プラスミドは、DNAシークエンサーを用いて配列の決定を行い、目的の配列が挿入されていることの確認を行った。
GII.17についてはVP1領域の開始コドンから4塩基上流にattL1配列(5’-ccccaaataatgattttattttgactgatagtgacctgttcgttgcaacaaattgatgagcaatgcttttttataatgccaactttgtacaaaaaagcaggct-3’:配列番号335)を、またVP2領域の終止コドンから55塩基下流にポリアデニンを30配列と、続いてattL2配列(5’-agcttacccagctttcttgtacaaagttggcattataagaaagcattgcttatcaatttgttgcaacgaacaggtcactatcagtcaaaataaaatcattatttg-3’:配列番号336)を導入した配列を人工合成し、得られたpUC-Saitamaと、pDEST8とを等量混合し、表1の通り混合し25℃で1時間反応させた。反応後、1μLのproteinase K(タカラバイオ製)を加え37℃で10分反応させた。反応液1ngを用いて、Competent Quick DH5α(TOYOBO製)を形質転換し、100μg/mLアンピシリン含有LB寒天平板培地にて選択を行い、得られたコロニーを100μg/mLアンピシリン含有LB液体培地にて培養し、得られた細胞からQIAprep Spin Miniprep Kit(Qiagen製)を用いて精製し、GII.17をコードしたpDEST8を得た。
【0028】
【表1】
【0029】
(2)bMON14272 Bacmid(Invitrogen製)へのVP1、VP2遺伝子の導入
得られたプラスミドは製品添付のプロトコルに従い下記の方法でBacmidへの導入を行った(図1-D)。
得られたNoV遺伝子導入プラスミドとMAX Efficiency DH10Bac Competent Cells(Invitrogen製)を用い、NoV VP1,VP2領域をbMON14272 bacmid(Invitrogen製)へ導入した(図1-D)。bacmidへの遺伝子導入の有無は40μg/mL IPTG(isopropyl β-D-1-thiogalactopyranoside: Wako製),100 μg/mL X-Gal (5-bromo-4-chloro-3-indolyl β-D-galactopyranoside:Wako製)、50μg/mLカナマイシン、7μg/mLゲンタマイシン、10μg/mLテトラサイクリン含有LB培地にて選択を行い(bMON14272にカナマイシン耐性遺伝子、DH10Bac Competent Cell内に存在するヘルパープラスミドにテトラサイクリン耐性遺伝子、pDESTのbacmidへ挿入される領域にゲンタマイシン耐性遺伝子がそれぞれコードされている)、さらにカラーセレクションで目的部位への断片挿入を確認した。得られた白色コロニーを、50μg/mLカナマイシン、7μg/mLゲンタマイシン、10μg/mLテトラサイクリン含有LB液体培地にて培養し、得られた細胞からQIAprep Spin Miniprep Kit(Qiagen製)を用いてbacmidの抽出を行った。抽出したDNA溶液の濃度はNanoDrop(Thermofisher Scientific製)にて確認した。
【0030】
(3)NoV VP1,VP2導入Bacmidのトランスフェクションによる組み換えバキュロウイルス(rBV)の生産
NoV VP1,VP2遺伝子を導入したbacmidを、Lipofecctamine LTX Reagent & Plus Reagent(Invitrogen製)を用い、添付のプロトコルに従い、Sf9細胞(Invitrogen製)にトランスフェクションした(図1-E)。トランスフェクションした細胞はSf900III(Invitrogen製)培地を用いて27℃で1週間培養した。培養後培地を遠心し、上清を回収してNoV遺伝子を有する組み換えバキュロウイルス(rBV)を得た。
【0031】
(4)rBV感染によるNoV VLPの生産
High Five細胞 (Invitrogen製)1.0×10 cells/flaskに対し、MOI=2になるよう1.0×10 pfu/mLのrBVを添加して感染させ、Express five(Invitrogen製)培地を用いて27 ℃で培養した(図1-F)。感染7日後に遠心によって培養上清を回収し、さらに回収した上清を10,000xgで1時間遠心し、バキュロウイルスをペレットダウンし、細胞上清を回収した。更にNoV VLPを含む回収した上清を、SW32Tiローター(Beckman Coulter製)を用い32,000rpmで2時間遠心し、NoV VLPをペレットダウンさせた。上清を除いたペレットは1.9mgのCsCl(密度勾配遠心用、WAKO製)をExpress five培地に溶解させたSW55Ti(Bechman Coulter製)を用い40,000rpmで20時間遠心して分離精製を行い、白色光の照射により目視で確認された画分を回収した。回収画分は再度SW32Tiローターで32,000rpmで遠心しペレットダウンを行い、上清を除き、Express five培地500μLに懸濁した。VLP濃度はbradford法で定量した。標準タンパク質はBSA(WAKO製)を用いた。
【0032】
実施例1 ノロウイルス結合ペプチドの製造(図2参照)
(1)DNAライブラリの作製
ペプチドライブラリは、長さ10アミノ酸のものとなるようにDNAライブラリをデザインした。
(DNAライブラリの塩基配列)
5’-GATCCCGCGAAATTAATACGACTCACTATAGGGGAAGTATTTTTACAACAATTACCAACAACAACAACAAACAACAACAACATTACATTTTACATTCTACAACTACAAGCCACCATGGGCTGCQRSQRSQRSQRSQRSQRSQRSQRSQRSQRSTGCGGGGGAGGCAGCCATCATCATCATCATCACGGCGGAAGCAGGACGGGGGGCGGCGTGGAAA-3’(配列番号337)
【0033】
【表2】
【0034】
上記DNAライブラリは、T7-PRO-Ω領域(配列番号338)、ランダム領域(配列番号339)及びHis-Ytag領域(配列番号340)という3種類のDNA配列断片を、伸長PCRによって結合することで作製した。このライブラリはランダム領域のN末端とC末端にシステインが出現するよう設計している。ランダム領域、His-Ytag領域及びT7-PRO-Ω領域は、つくばオリゴサービス(株)に、それぞれDNA合成を依頼して入手した。これらを用いて下記伸長PCRを行ない、上記のDNAライブラリを作製した。
【0035】
[配列番号338]
5’GATCCCGCGAAATTAATACGACTCACTATAGGGGAAGTATTTTTACAACAATTACCAACAACAACAACAAACAACAACAACATTACATTTTACATTCTACAACTACAAGCCACCATG3’
【0036】
[配列番号339]
5’-ACAACTACAAGCCACCATGGGCTGCQRSQRSQRSQRSQRSQRSQRSQRSQRSQRSTGCGGGGGAGGCAGCCATCATCA-3’
【0037】
上記配列中の、ATCG以外の塩基の出現頻度の割合(A:T:G:C)は以下の通りである。
Q: A=0.1,T=0.2,G=0.3,C=0.4
R: A=0.4,T=0.1,G=0.3,C=0.2
S: A=0.4,T=0.2,G=0.2,C=0.2
【0038】
[配列番号340]
5’TTTCCACGCCGCCCCCCGTCCTGCTTCCGCCGTGATGATGATGATGATGGCTGCCTCCCCC 3’
【0039】
合成1段階目の伸長PCRは、下記表3に示す組成の反応液を超純水で50μLに調製し、ランダム領域とHis-Ytag領域が結合したDNA断片を以下のPCRプログラムで増幅させた。PCRプログラムは、(a)96℃(2分)、(b)94℃(20秒)、(c)69℃(5秒)、(d)72℃(20秒)、及び(e)72℃(2分)とし、ステップ(b)~(d)を5サイクル行った。
【0040】
【表3】
【0041】
2段階目伸長PCRは、下記表4に示す組成の反応液を超純水で50μLに調製し、以下のPCRプログラムでT7-PRO-SD領域を伸長させることで、DNAライブラリを増幅させた。PCRプログラムは、(a)96℃(2分)、(b)94℃(20秒)、(c)59℃(5秒)、(d)72℃(30秒)及び(e)72℃(2分)とし、ステップ(b)~(d)を15サイクル行った。その後、Poly Acrylamide Gel Electrophoresis(PAGE)によりDNAライブラリを精製した。
【0042】
【表4】
【0043】
(2)DNAライブラリの転写
DNAライブラリの転写はRiboMAX Large Scale RNA Production Systems -T7(Promega製)を使用し、付属するプロトコルに従い行った。反応スケールは、1μgのDNAライブラリを使用して20μLで行った。転写反応により得られたmRNAは、After Tri-Reagent RNA Clean-Up Kit (Favogen製)を使用して精製した。
【0044】
次いで、得られたmRNAと後述するピューロマイシンリンカーとのライゲーションを、以下のようにして行った(図3(A))。まず、ピューロマイシンリンカー及びmRNAを各20pmol、0.25M Tris-HCl(pH7.5)を4μL、1M NaClを4μL混合し、超純水で20μLにメスアップした。反応液を90℃で2分及び70℃で1分インキュベートした後、4℃まで降温させた後25℃で1時間アニーリングさせた。その後、CL-1000 Ultraviolet Crosslinkerを用いて、波長365nmの紫外光を405mJ/cmの条件で照射してピューロマイシンリンカーと架橋を行った。
【0045】
<ピューロマイシンリンカーのDNA>
ピューロマイシンリンカーDNA1(図3(A))は、2つのセグメント(ピューロマイシンセグメント(PS)と短いビオチンセグメント(SBS))をEMCS(N-(6-マレイミドカプロイルオキシ)スクシンイミド:同仁化学製)を用いて、化学架橋させて合成した。リンカーは文献(Mochizuki Y., Suzuki T., Fujimoto K., Nemoto N.. (2015) A versatile puromycin-linker using cnvK for high-throughput in vitro selection by cDNA display. J Biotechnol. 212,174-80.)に記載のものを用いた。
【0046】
ピューロマイシンセグメント(PS)の配列構造を以下に示す。
5’-(S)-TCTCTC(F)-(PEG)(PEG)-CC-(Puro)-3’
ここで、(S)は5’-チオールモディファイヤーC6(化合物名:S-Trityl-6-mercaptohexyl-1-[(2-cyanoethyl)-(N,N-diisopropyl)]-phosphoramidite, Glen research製)を表し、(F)はフルオレセイン-dTを表す。(Puro)はピューロマイシンCPG(5’-Dimethoxytrityl-N-trifluoroacetyl-puromycin,2’-succinoyl-long chain alkylamino-CPG、Glen resarch製)を表す。
【0047】
続いて短いビオチンセグメント(SBS)の配列構造を以下に示す。
5’(B)-AA-(rG)-AATTTCCA(K)GCCGCCCCCCG(Y)CCT-3’(配列番号341)
ここで、(Y)はアミノモディファイヤーC6 デオキシチミン(5’-Dimethoxytrityl-5-[N-(trifluoroacetylaminohexyl)-3-acrylimido]-2’-deoxyUridine,3’-[(2-cyanoethyl)-(N,N-diisopropyl)]-phosphoramidite, Glen research製))を表し、(K)は3-Cyanovinylcarbazole(cnvK) を表し、(B)は、Biotin-Triethylene glycol(TEG), Glen research製)を表し、(rG)はリボグアニン(Glen research製)を表す。PS及びSBSはつくばオリゴ社に合成を委託し、常法に従い合成した。
【0048】
上記PSの5’チオール基を、100μLの50mMのリン酸バッファー(pH7.0)中にて、室温で6時間、1mMのトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンヒドロクロリド(TCEP:Thermofisher Scientific製)で還元し、その後、NAP-5カラム(GEヘルスケア製)で要時脱塩した。総量10nmolのビオチンループ及び2μmolのEMCSを、100μLの0.2Mのリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)に加えた。引き続き、混合物を、37℃で30分インキュベートし、4℃でエタノール沈殿を行い、過剰なEMCSを除去した。
【0049】
この沈殿を予め氷浴中で冷却しておいた70%エタノール500μLで2回洗浄し、予め冷却しておいた0.2Mのリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)10μLに溶解した。還元されたPSを直ちに加えて、4℃で終夜撹拌した。4mMのTCEPを加えて、15分間37℃でインキュベートすることにより、この反応を停止させた。その後、エタノール沈殿を行い、過剰なPSを室温で除去した。ビオチンループ及び未架橋のビオチンループ-EMCS複合体を除去するために、沈殿を0.1MのTEAA(Triethylamine Acetate:Glen research製)又はリン酸バッファーに溶解し、C18 HPLCカラムを用いて以下の条件で精製した。
【0050】
カラム:AR-300,4.6x250mm(ナカライテスク製)溶媒:溶媒A:0.1MのTEAA;溶媒B:アセトニトリル/水(80:20,v/v)グラジエント:B/A(15-35%,33分)流速:0.5mL/分 検出波長:吸光度254nm及び490nm
【0051】
吸光度254nmでの最終ピークからの画分(吸光度490nmでの単一のピークに対応する)からの画分を集めた。乾燥後、ジエチルピロカーボネート(DEPC)処理水に再懸濁し、保存した。以上のようにして、ピューロマイシン-リンカーDNA1を得ることができた。
【0052】
<mRNAとピューロマイシンリンカーDNA1との結合>
転写により得られたmRNA 20pmolあたり、ピューロマイシンリンカーDNA1 20pmol、0.25M Tris-HCl(pH7.5)4μL、1M NaCl 4μLを加え、Nuclease-free waterで合計20μLとなるように調製した(表5)。90℃で1minインキュベートした後に70℃で1minインキュベートし、0.04℃/sのスピードで25℃まで温度を下げた。紫外線(365nm)を405mj照射し、cnvKとmRNA中のウラシルと共有結合させることでmRNA-リンカー連結体を得た。ここは各ラウンドで必要量合成した。
【0053】
【表5】
【0054】
<翻訳>
上記のmRNA-リンカー連結体を無細胞翻訳系により以下のように翻訳した。下記表6に示す組成の比率の反応液を超純水で50μLに調製し、37℃で15分間反応させて、この反応液に、24μLの3M KCl及び6μLの1M MgClを加えた。その後、この溶液を更に37℃で20分間反応させ、翻訳されたペプチドのC末端とピューロマイシンを結合させることでmRNA-ペプチド連結体を得た。
【0055】
【表6】
【0056】
(3)磁性体ビーズによる精製
ストレプトアビジン(SA)磁性粒子(Dynabeads MyOne Streptavidin C1:Invitrogen製)を説明書に従って洗浄し、上記ペプチド-リンカー-mRNA連結体を固定するのに必要な量をエッペンドルフチューブにとり、磁気スタンド上に1分間静置した。その後、上清を除去し、溶液A(100mM NaOH,50mM NaCl)で再懸濁した。タッピングを1~2分間行った後に、磁気スタンド上に1分間静置した。その後、溶液Aでもう1回、同様の操作を行い、溶液B(100mM NaCl)で1回、同様の操作を行った。
【0057】
前記ペプチド-リンカー-mRNA連結体に、2×結合バッファー(20mM Tris-HCl(pH8.0),2mM EDTA,2M NaCl,0.2% Tween20,500mM EDTA)を等量加えて、上記ストレプトアビジン(SA)磁性粒子と室温で30分インキュベートした。エッペンドルフチューブを磁気スタンド上に1分間静置した後に、上清を除去した。1×結合バッファーを200μL加え、タッピングを1~2分間行った後に、磁気スタンド上に1分間静置して上清を除去した。この操作をさらに2回繰り返し、ストレプトアビジン(SA)磁性粒子に固定化されたペプチド-リンカー-mRNA連結体を得た。
【0058】
(4)逆転写反応によるcDNAの合成
上記固定化ペプチド-リンカー-mRNA連結体に、下記表7の反応液の比率で使用したストレプトアビジン(SA)磁性粒子と同体積の溶液を入れ、42度で30分間インキュベートして逆転写を行い、ストレプトアビジン(SA)磁性粒子に固定化された状態のまま、cDNAディスプレイを調製した。
【0059】
【表7】
【0060】
(5)ペプチドの架橋反応
上記ストレプトアビジン(SA)磁性ビーズに固定化されたcDNAディスプレイを架橋バッファー(100mM リン酸ナトリウム(pH7.4),0.15M NaCl,10mM EDTA,0.025%Tween-20を含む)で1回洗浄したのち、10mM トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンヒドロクロリド(TCEP: Thermofisher Scientific製)及び4mM ビスマレイミドエタン(BMOE:Thermofisher Scientific製)を含む架橋バッファー125μLを加え25℃で1時間インキュベートしてランダム領域のN末端とC末端にあるシステインに対し架橋反応を行った。
【0061】
(6)磁性体ビーズによる精製からの溶出
上記ストレプトアビジン(SA)磁性ビーズに固定化されたcDNAディスプレイを、1×His-タグ洗浄バッファー(10~30mM リン酸ナトリウム(pH7.4),0.25~0.75M NaCl,5~30mM イミダゾール,0.025~0.1%Tween-20を含む)で1回洗浄したのち、10UのRNase T1(Ambion製)を含む30μLの1×His-タグ洗浄バッファーを加え、37℃で15分間インキュベートし、ストレプトアビジン(SA)磁性ビーズからリンカー中の切断部位(リボG)から切断されたcDNAディスプレイを溶出させた。
【0062】
(7)Ni-NTAによる精製
Ni-NTA磁性ビーズ(His Mag Sepharose Ni:GEヘルスケア製)10μLをエッペンドルフチューブにとり、磁気スタンド上に1分間静置した。その後、上清を除去し1×His-タグ洗浄バッファーで再懸濁した。タッピングを1~2分間行った後に、磁気スタンド上に1分間静置した。その後、もう一度同じ作業を行った。
【0063】
前記cDNAディスプレイを上記Ni-NTA磁性ビーズと室温で30分インキュベートした。エッペンドルフチューブを磁気スタンド上に1分間静置した後に、上清を除去した。1×His-タグ洗浄バッファーを200μL加え、タッピングを1~2分間行った後に、磁気スタンド上に1分間静置して上清を除去した。この操作をさらに繰り返した後、His-タグ溶出バッファー(10~30mM リン酸ナトリウム(pH7.4), 0.25~0.75M NaCl,250~500mM イミダゾール,0.025~0.1%Tween-20を含む)を10μL加え、室温で15分インキュベートすることでcDNAディスプレイの精製を行った。
【0064】
(8)試験管内淘汰サイクル
下記表8に従い上記cDNAディスプレイとVLPsを混合し選択用のバッファー(10~30mM Tris-HCl(pH7.4),0.1~0.3M NaClを含む)で1mLにした後25℃で30分間インキュベートした。
【0065】
【表8】
【0066】
<遠心沈殿法によるVLP-cDNAディスプレイ複合体の分離>
遠心管に上記混合物を加え、超遠心機(日立製、CS150FNX)を用いて4℃で約2時間の間130,000×gで遠心した。上清を除去し、1mLの選択用のバッファーで壁面を洗浄した後に上清を除去した。100μLのRNaseフリー水を加えて沈殿物を再溶解した。
【0067】
<透析法によるVLP-cDNAディスプレイ複合体の分離>
作製したcDNAディスプレイとVLPsを下記の表9の濃度になるように透析用選択バッファー(20mM HEPES(pH7.4),150mM NaCl,0.05%tween20)100μL中で25℃、30分間インキュベートした。その後、透析用選択バッファーで1mLにメスアップしFloat-A-Lyzer G2 Dialysis Device CE, 1000 kD MWCO(スペクトラム・ラボラトリーズ製)に加え、外液1Lの透析用選択バッファーで、25℃で透析した。途中、2時間おきに3回外液を入れ替えて4回目に一晩(8時間)透析した。透析産物をAmicon Ultra 100K(Merck Millipore製)を用いて14,000×g、5分により濃縮した。
【0068】
(9)GII.3,GII.17 VLPを対象としたセレクション
イムノプレート(C-BOTTOM,CLEAR,MICROLON(登録商標),HIGH BINDING,Greiner社)に3μg/mLのGII.3またはGII.17 VLP溶液を100μL加え、4℃、O.N.で固定化した。その後、溶液を捨てて200μLのブロッキング試薬(EMD MilliporeTM BlokTM NSB Blocking Reagents,Thermo Fisher Scientific社)を加え、室温で2時間穏やかに攪拌することでブロッキングした。この際に、VLPを固定していないウェルもプレセレクションで使用するために同様にブロッキングを行った。
ウェルから溶液を捨てて、200μLのwash buffer(10 mM Hepes(pH7.4),150 mM NaCl,0.05% tween 20)で3回洗浄後、100μLのcDNA display(1.5 pmolのmRNA-Linkerから作製)をVLPが固定されていないウェルに投入し、室温で30分穏やかに攪拌してプレセレクションを行った。その後、ブロッキング剤に結合しなかったcDNA displayを含む上澄をVLPが固定されているウェルに投入し、室温で30分穏やかに攪拌することでVLPと結合させた。上澄を捨てた後、100μLのwash bufferで4回洗浄後、100μLの5% SDS溶液を加え、50℃で15分インキュベートすることで結合したcDNA displayを溶出した。
【0069】
この後、上記で得られたVLP-cDNAディスプレイ複合体を100μLに透析用選択バッファーでメスアップした後、共沈剤(Quick-Precip Plus Solution, EdgeBio製)を10μL、100%エタノールを220μL加え、20,000×g、5分遠心した。その後、上澄を捨て70%エタノールを1mL加えリンスを行った。チューブを10分間乾燥させた後に20μLのRNaseフリー水で溶出し、フォワードプライマーとしてGATCCCGCGAAATTAATACGACTCACTATAGGGGAAGTATTTTTACAACAATTACCAACA(配列番号342)、リバースプライマーとしてTTTCCACGCCGCCCCCCGTCCT(配列番号343)を用いてPCR反応を行った。PCRプログラムは(a)98℃2分、(b)95℃20秒、(c)69℃20秒、(d)72℃20秒(b~dを25サイクル)、(e)72℃1分とした。
【0070】
【表9】
【0071】
得られたPCR産物を次のサイクルのライブラリDNAとして用い、(2)に記載したライブラリの転写から同様の操作を行い、淘汰サイクルを繰り返した。
【0072】
<遺伝子配列情報の解析>
上記試験管内淘汰サイクル(GII.4を対象とした7サイクル及びGII.4透析法により得られた7サイクルのライブラリを基に、GII.3,GII.17を対象とした5サイクル)後、以下に示す方法で、シークエンスライブラリーの調製を行い、配列情報を解析した。シーケンスライブラリーの調製及びシーケンスは16S Metagenomic Sequencing Library Preparationプロトコル(Illumina製)に従い行った。
【0073】
1) Amplicon PCR
表10の試薬を混合し、以下のプログラムによりPCRを行った。
・95℃で3分間
・以下の反応を23サイクル
-95℃で30秒間
-55℃で30秒間
-72℃で30秒間
・72℃で5分間
・4℃でHold
【0074】
【表10】
【0075】
2)Clean up
Amplicon PCR産物はAMPure XPビーズ(Beckman Coulter製)を用いて精製した。PCR産物を含むプレートにAMPure XPビーズを20μL加え、マイクロピペットで穏やかに10回ピペッティング後室温で5分静置した。プレートをマグネットスタンド上に置き、2分間静置後、上清を廃棄した。プレートをマグネットスタンド上に置いたまま80%エタノールを各ウェルに200μLずつ添加し、30秒静置後上清を廃棄した。これを2度繰り返した。10分間静置してエタノールを風乾後、プレートをマグネットスタンドから取り出し、10mM Tris pH8.5溶液を各ウェルに52.5μLずつ添加して室温で2分間静置した。プレートをマグネットスタンド上に置き、再度2分間静置後、新しい96ウェルPCRプレートの対応するウェルへ50μLずつ移した。
【0076】
3)Index PCR
精製したAmplicon PCR産物にシークエンスのためのアダプターとIndex配列を付与するためのPCR反応を行った。
表11の試薬を混合し、以下のプログラムによりPCRを行った。
・95℃で3分間
・以下の反応を8サイクル
-95℃で30秒間
-55℃で30秒間
-72℃で30秒間
・72℃で5分間
・4℃でHold
【0077】
【表11】
【0078】
用いたIndex Primerのセットは下記表12に示す。
【0079】
【表12】
【0080】
4)Clean up2
Index PCR産物はAMPure XPビーズ(Beckman Coulter製)を用いて精製した。PCR産物を含むプレートにAMPure XPビーズを56μL加え、マイクロピペットで穏やかに10回ピペッティング後室温で5分静置した。プレートをマグネットスタンド上に置き、2分間静置後、上清を廃棄した。プレートをマグネットスタンド上に置いたまま80%エタノールを各ウェルに200μLずつ添加し、30秒静置後上清を廃棄した。これを2度繰り返した。10分間静置してエタノールを風乾後、プレートをマグネットスタンドから取り出し、10mM Tris pH8.5溶液を各ウェルに25μLずつ添加して室温で2分間静置した。プレートをマグネットスタンド上に置き、再度2分間静置後、新しい96ウェルPCRプレートの対応するウェルへ50μLずつ移した。
精製したIndex PCR産物はBioanalyzer DNA 1000 chip(Agilent Technologies製)を用いてバリデーションを行った。
【0081】
5)qPCR
精製したIndex PCR産物はKapa Library Quantification Kit(日本ジェネティクス製)を用いてqPCRを行った。
Primer Mixを予め添加したKapa SYBR FAST qPCR Master Mix 12μLと、UltraPure Water 4μL、Index PCR産物の100倍希釈物を4μLを混合しqPCRに供した。検量線用のサンプルはキット付属のStd1~6を用いた。
以下のプログラムによりPCRを行った。
・95℃で5分
以下の反応を35サイクル
・95℃で30秒
・60℃で45秒
Std1~6のCt値から検量線を引き、サンプル濃度を算出した。
【0082】
6)Preparing DNA Libraries for Sequencing
Miseq Reagent Kit V3 150 cycles(Illumina製)のReagent Cartridgeを水浴中で解凍させ、付属のHT1バッファーは常温で解凍させ、氷冷した。
qPCRによって濃度既知のIndex PCR産物は、UltraPure Waterを用いて4nMに希釈した。このサンプル4nM希釈物5μLと、0.2N NaOH(10N NaOH水溶液(Wako製)をUltraPure Waterを用いて0.2Nに希釈したものを使用)5μLとを混合し、室温で5分間静置した。その後氷冷HT1バッファー990μLを添加し、20pMの変性済みライブラリ1mLを得た。
変性済み20pMライブラリ180μLと、氷冷HT1バッファー420μLとを混合し、6pMライブラリ600μLを得た。また、予め変性させておいた20pM PhiX DNA 30μLと氷冷HT1バッファー10μLとを混合させ、15pM 変性済みPhiXを得た。15pM変性済みPhiX30μLと、6pM変性済みライブラリ570μLとを混合させ、水浴で解凍させたReagent Cartridgeの「Load Samples」(17番)に600μL全量を添加した。
【0083】
7)Starting the Run
0.5% Tween 20によるMaintainance Wash済みのMiseq(Illumina製)にMilliQ水及び99.5%エタノールで洗浄したFlow Cellをセットし、PR2ボトル及び試薬がアプライされたCartridgeをセットしてシーケンシングを行った。
【0084】
8)遺伝子情報の解析
得られたシーケンス配列のFastqファイルをFastaファイルに変換し、ソフトウェアのMEGAを用いて、ライブラリ配列(配列番号337)の115番目の開始コドン先頭(ATG)から156番目のシステインコドン末端(TGC)までについて、得られた配列全てを一斉に翻訳した。翻訳後、Excelのフィルター機能を用いて末端のシステインから7残基上流のアミノ酸をシステインでフィルタリングし、ペプチドアプタマー4357配列を得た。
【0085】
9)配列の選定
得られたペプチドアプタマー4357配列についてクラスター解析及び出現頻度解析を行い、配列番号1~327に示すペプチドをノロウイルスと特異的に結合するペプチドとして選定した。このうち、ハミング距離が5以下で5配列以上のクラスターを形成する条件に該当するペプチドアプタマー260配列を表18に、3文字列に分割したq-gram距離が4以下で3配列以上のクラスターを形成する条件に該当するペプチドアプタマー104配列を表19に、出現頻度が10以上のペプチドアプタマー31配列を表20に示す。
実施例2 VLPsとの相互作用
【0086】
<ペプチドの合成>
ペプチド自動合成装置Liberty Blue(CEM Japan製)を用い、窒素雰囲気下におけるFmoc固相合成法によりペプチドを合成した。樹脂はFmoc-Lys(Mtt)-Wang resin(Merck Millipore製)またはFmoc-Cys(Trt)-Wang Resin(ペプチド研究所製)を用いた。溶媒はN,N-ジメチルホルムアミド:DMF(和光純薬工業製)を用い、脱保護剤はピペリジン(和光純薬工業製)をDMFで所定濃度に希釈して使用した。カップリング反応促進剤及び光学活性制御剤として、ジイソプロピルカルボジイミド(東京化成工業製)及びEthyl cyanoglyoxylate-2-oxime:Oxyma(渡辺化学工業製)をDMFで所定濃度に希釈して使用した。合成反応は装置備え付けの合成プログラムに従って行った。
【0087】
<手動合成によるスペーサーの導入>
合成反応はペプチド手動合成機Petisyzer(ハイペップ研究所製)を用いて行った。樹脂にFmoc-Lys(Mtt)-Wang resinを用いて合成したペプチドは、20%Diboc(東京化成工業製)のDMF溶液及び、合成したペプチドに対し10当量のN,N-Diisopropylethylamine:DIEA(渡辺化学工業製)の混合液を用い、室温で2時間接触させN末端をBoc化した。DMF及びDichloromethane:DCM(和光純薬工業製)で洗浄後、トリフルオロ酢酸:TFA(和光純薬工業製)、Triisopropylsilane:TIS(東京化成工業製)、DCMの混合液(TFA:TIS:DCM=2:5:93)によりMtt基を脱保護した。
【0088】
Mtt基を脱保護したペプチドに、下記割合で調製した混合液(表13)を加え、室温で1時間攪拌しPEG3配列を導入した。反応後DMFで洗浄し、20%ピペリジンDMF溶液によりPEG3に付加しているFmoc基を脱保護した。
【0089】
【表13】
【0090】
続いて下記割合で調製した混合液(表14)を用いて、室温で1時間攪拌しPEG3配列のC末端側にトリプトファンを導入した。反応後DMFで洗浄し、20%ピペリジンDMF溶液によりトリプトファンに付加しているFmoc基を脱保護した。
【0091】
【表14】
【0092】
更に下記割合で調製した混合液(表15)を用いて、室温で1時間攪拌しトリプトファンののC末端側にビオチンを導入した。反応後DMFで洗浄した。
【0093】
【表15】
【0094】
樹脂にFmoc-Cys-Wang resinを用いて合成したペプチドは、Liberty BlueによってPEG3配列及びトリプトファンの付加反応までを行った。ビオチンの付加反応は表15の試薬を用い、Petisyzerによる手動合成にて行った。
【0095】
<スペーサー配列を付与したペプチドの樹脂からの切断>
スペーサー配列を付与したペプチドが結合している樹脂は、ジエチルエーテル(和光純薬工業製)を用いて洗浄・乾燥させた。この樹脂にTFA:TIS:H2O=95:2.5:2.5の混合液を室温で1時間接触させ、ペプチドを樹脂から切断した。ろ過により樹脂と溶液を分離し、溶液に5倍量の氷冷ジエチルエーテルを加え、転倒攪拌し沈殿を発生させた。生じた沈殿は13,000rpm、20℃、3分の条件で遠心分離し、再度ジエチルエーテルにより沈殿を洗浄・同条件による遠心を行った。沈殿物はドラフト内で乾燥させ、得られた粉体は4℃で保存した。
【0096】
<ELISAによる相互作用評価>
ペプチドは10%DMF水溶液中に分散させた。吸光光度計により濃度を算出し、10%DMF水溶液により50μMに調整した。これをPierceTM Streptavidin Coated Plates, Clear, 96-Well(ThermoFisher Scientific製)に100μL/well添加し室温で1時間静置した。 上清を除去し、PBS-T(PBSに0.05%のTween 20含有)200μLで3回洗浄後、PBS-Tで100ng/mLに希釈したGII.3、GII.4、GII.17 VLP溶液を100μL添加し、室温で50分静置した。上清を除去し、PBS-T200μLで3回洗浄後、ウサギ由来抗ノロウイルスVLPポリクローナル抗体(GII.3,GII.17 VLPの混合物を抗原としてユーロフィンジェノミクス株式会社へ提出し、作製依頼したもの)を1μg/mLにブロッキング剤で希釈したものを100μL添加し、室温で50分静置した。上清を除去し、PBS-T200μLで3回洗浄後、HRPで標識した抗ウサギ由来IgG抗体(Cell Signaling Technology製)をブロッキング液で1000倍に希釈したものを100μL添加し、室温で50分静置した。上清を除去し、PBS-T200μLで3回洗浄後、3、3’、5、5’-テトラメチルベンジジン(Abcam製)を100μL添加し、室温で15分静置した。反応停止液として0.5M硫酸を100μL添加し、マルチプレートリーダー(Molecular Device製)を用いて450nmの吸光度を測定した。結果を図4に示す。
【0097】
<Bio-Layer Interferometry:BLI法によるKD値の算出>
装置はBLItzTM(ForteBio社製)を用いた。SA chip(ForteBio社製)の先端を精製水に1分間接触させ水和させた後、1%BSA水溶液に1時間接触させブロッキングした。ブロッキング処理したSA chipをBLItzTM本体の測定部にセットし、表16のプログラムに従って測定を行った。ペプチドは配列番号103、167、205、263、283、288、302を用い、濃度は100μMに調整した。GII.3、GII.17各VLP濃度は1、0.1、0.01、0.001mg/mLに調整した。測定データは付属のソフトウェアを用いて解析し、Ka、Kd値を基にKD値を算出した。結果を表17に示す。
【0098】
【表16】
【0099】
【表17】
【0100】
【表18】
【0101】
【表19】
【0102】
【表20】
図1
図2
図3
図4
【配列表】
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