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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】受電装置及びワイヤレス給電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/10 20160101AFI20240729BHJP
   H02H 7/18 20060101ALI20240729BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240729BHJP
   H02H 7/20 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
H02J50/10
H02H7/18
H02J7/00 301D
H02J7/00 S
H02H7/20
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020102226
(22)【出願日】2020-06-12
(65)【公開番号】P2021197804
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】井戸垣 拓実
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-119759(JP,A)
【文献】特開2019-205296(JP,A)
【文献】実開平05-015641(JP,U)
【文献】特開2014-121137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00-50/90
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H02H 7/00
H02H 7/10-7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電装置から非接触により交流電力を受電する受電コイルと、
前記受電コイルで受電した交流電力を整流する整流回路と、
前記整流回路から出力される電力を平滑する平滑回路と、
前記平滑回路で平滑された電力を負荷に供給する保護部と、
を備え、
前記保護部は、
前記平滑回路と前記負荷とを接続する経路に並列に接続された第1容量と、
前記経路における前記第1容量よりも負荷側において前記経路に直列に接続された第1スイッチと、
前記経路における前記第1スイッチよりも負荷側において前記経路に並列に接続された第2容量と、
前記経路における前記第1スイッチよりも受電コイル側において前記経路に並列に接続された第2スイッチと、
前記経路における前記第1スイッチよりも負荷側において前記経路に並列に接続された第3スイッチと、
前記第2スイッチに直列に接続された第1抵抗器と、
前記第3スイッチに直列に接続された第2抵抗器と、を含み、
過電圧を検出した際に前記第1スイッチを開放することにより前記経路を遮断する、受電装置。
【請求項2】
前記保護部は、前記経路における電圧と所定の基準電圧とを比較する比較器と、前記基準電圧を調整するための可変抵抗器とを備え、前記比較器における比較結果に基づき前記過電圧を検出する、
請求項1に記載の受電装置。
【請求項3】
送電装置と、
前記送電装置から非接触により交流電力を受電する受電コイルと、
前記受電コイルで受電した交流電力を整流する整流回路と、
前記整流回路から出力される電力を平滑する平滑回路と、
前記平滑回路で平滑された電力を負荷に供給する保護部と、
を備え、
前記保護部は、
前記平滑回路と前記負荷とを接続する経路に並列に接続された第1容量と、
前記経路における前記第1容量よりも負荷側において前記経路に直列に接続された第1スイッチと、
前記経路における前記第1スイッチよりも負荷側において前記経路に並列に接続された第2容量と、
前記経路における前記第1スイッチよりも受電コイル側において前記経路に並列に接続された第2スイッチと、
前記経路における前記第1スイッチよりも負荷側において前記経路に並列に接続された第3スイッチと、
前記第2スイッチに直列に接続された第1抵抗器と、
前記第3スイッチに直列に接続された第2抵抗器と、を含み、
過電圧を検出した際に前記第1スイッチを開放することにより前記経路を遮断する、
イヤレス給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受電装置及びワイヤレス給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バッテリ等の給電対象に電力を供給するワイヤレス給電システムが開発されている。ワイヤレス給電システムでは、送電装置の送電コイルから受電装置の受電コイルに非接触で電力が伝送され、受電装置から給電対象に電力が供給される。このとき、例えば、給電対象が受電装置から切断される等によって、受電コイルの出力に異常が生じると、受電コイルの出力側に接続された回路(2次側回路)において過電圧が発生するおそれがある。
【0003】
過電圧から2次側回路を保護する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、2次側回路における過電圧の発生を検出すると、2次側回路及び受電コイルを短絡することにより2次側回路を保護する過電圧保護ユニットを備えた非接触給電装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-44762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のように2次側回路及び2次コイルを短絡する場合には、誤作動による給電対象の短絡を防止するため、逆流防止機能を受電装置に設ける必要がある。しかしながら、逆流防止機能を設けると、配線が複雑化する場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、簡便な構成により過電圧からの保護を実現することが可能な受電装置及びワイヤレス給電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る受電装置は、送電装置から非接触により交流電力を受電する受電コイルと、受電コイルで受電した交流電力を整流する整流回路と、整流回路から出力される電力を平滑する平滑回路と、平滑回路で平滑された電力を負荷に供給する保護部と、を備え、保護部は、過電圧を検出した際に平滑回路と負荷とを接続する経路を遮断する。
【0008】
この態様によれば、平滑回路の出力において過電圧が発生したときに、平滑回路と負荷とを接続する経路を遮断することができる。この場合、複雑な配線を受電装置に設けずとも、経路を遮断することができる。このため、簡便な構成により過電圧からの保護を実現することが可能となる。
【0009】
上記態様において、経路に並列に接続された第1容量をさらに備えてもよい。
【0010】
この態様によれば、平滑回路の出力電圧が上昇したときに、第1容量に電流が流れ込むことにより、出力電圧の上昇が緩和される。この結果、保護部における過電圧を検出する時間が確保される。
【0011】
上記態様において、経路における第1容量よりも負荷側において経路に直列に接続された第1スイッチをさらに備え、保護部は、第1スイッチを開放することにより経路を遮断してもよい。
【0012】
この態様によれば、第1スイッチを開放するだけで、平滑回路と負荷とを接続する経路を遮断することができる。このため、より簡便な構成により、過電圧からの保護を実現することが可能になる。
【0013】
上記態様において、経路における第1スイッチよりも負荷側において経路に並列に接続された第2容量をさらに備えてもよい。
【0014】
この態様によれば、第1スイッチが開放されたときに、第1スイッチSW1の寄生容量及び配線のインダクタンス成分等による、保護部の出力電圧の上昇を抑制することができる。この結果、保護部の出力電圧が過電圧になることが抑制される。
【0015】
上記態様において、経路における第1スイッチよりも受電コイル側において経路に並列に接続された第2スイッチと、経路における第1スイッチよりも負荷側において経路に並列に接続された第3スイッチと、第2スイッチに直列に接続された第1抵抗器と、第3スイッチに直列に接続された第2抵抗器と、をさらに備えてもよい。
【0016】
この態様によれば、第1容量及び第2容量が充電状態になったときに、第1スイッチ及び第2スイッチを短絡することにより、第1容量及び第2容量の電力のそれぞれを、第1抵抗器及び第2抵抗器により放電することが可能になる。
【0017】
上記態様において、保護部は、経路における電圧と所定の基準電圧とを比較する比較器と、基準電圧を調整するための可変抵抗器とを備え、比較器における比較結果に基づき過電圧を検出してもよい。
【0018】
この態様によれば、ワイヤレス給電システムの使用者等は、可変抵抗器を調整することにより、所望の電圧を基準電圧として簡便に設定することが可能になる。
【0019】
本発明の他の態様に係るワイヤレス給電システムは、送電装置と、送電装置から非接触により交流電力を受電する受電コイルと、受電コイルで受電した交流電力を整流する整流回路と、整流回路から出力される電力を平滑する平滑回路と、平滑回路で平滑された電力を負荷に供給する保護部と、を備え、保護部は、過電圧を検出した際に平滑回路と負荷とを接続する経路を遮断する。
【0020】
この態様によれば、平滑回路の出力において過電圧が発生したときに、平滑回路と負荷とを接続する経路を遮断することができる。この場合、複雑な配線を受電装置に設けずとも、経路を遮断することができる。このため、簡便な構成により過電圧からの保護を実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、簡便な構成により過電圧からの保護を実現することが可能な受電装置及びワイヤレス給電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係るワイヤレス給電システムの構成の概略図である。
図2】同実施形態に係る受電ユニットの概略構成図である。
図3】同実施形態に係る保護部の概略構成図である
図4】同実施形態に係る受電装置による処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0024】
図1は、本実施形態に係るワイヤレス給電システム1の構成の概略図である。本実施形態に係るワイヤレス給電システム1は、送電装置10及び受電装置20を備える。本実施形態では、送電装置10は地面に設置され、受電装置20は例えば車両等の移動体(図示しない。)に搭載されているものとする。
【0025】
送電装置10は、電源15から交流電力の供給を受けて、非接触により受電装置20に交流電力を送電する装置である。受電装置20は、送電装置10から交流電力を受電し、蓄電デバイス30(負荷)に電力を供給する装置である。搭載機器制御盤32は、蓄電デバイス30において蓄積された電力を用いて、搭載機器制御盤32に接続された各種の機器(図示しない。)の動作を制御する。なお、本実施形態では、負荷が蓄電デバイス30であるものとして説明するが、受電装置20から電力が供給される負荷は蓄電デバイス30に限定されるものではない。
【0026】
本実施形態では、ワイヤレス給電システム1が1つの送電装置10を備えるものとして説明するが、ワイヤレス給電システム1は、複数の送電装置10を備えてもよい。また、本実施形態では、ワイヤレス給電システム1が1つの受電装置20を備えるものとして説明するが、ワイヤレス給電システム1は、複数の受電装置20を備えてもよい。
【0027】
本実施形態に係る送電装置10は、送電ユニット100及び送電コイルユニット120を備える。送電ユニット100は、例えば、インバータ(図示しない。)等を備えている。送電ユニット100は、電源15から供給される商用周波数等の所定の周波数の交流電力を高周波の交流電力に変換して、送電コイルユニット120に供給する。送電コイルユニット120は、送電コイル122を備えている。送電コイル122は、送電ユニット100から供給された交流電力を、非接触により受電装置20に送電する。
【0028】
本実施形態に係る受電装置20は、受電コイルユニット200、受電ユニット220及び保護部240を備える。受電コイルユニット200は、受電コイル202を備えている。受電コイル202は、送電装置10の送電コイル122から非接触により交流電力を受電する。受電コイル202は、受電ユニット220に接続されており、受電した交流電力を受電ユニット220に伝送する。
【0029】
受電ユニット220は、受電コイル202が受電した交流電力を、整流及び平滑する。受電ユニット220の制御電圧は、蓄電デバイス30の電圧により確保されている。図2は、本実施形態に係る受電ユニット220の概略構成図である。受電ユニット220は、整流回路222及び平滑回路224を備える。なお、受電ユニット220は、整流回路222及び平滑回路224に加えて、これらの回路とは異なる回路を備えてもよい。
【0030】
整流回路222は、受電コイル202が受電した交流電力を整流して、整流した電力を平滑回路224に伝送する。また、平滑回路224は、整流回路222から出力される電力を平滑して、平滑した電力を保護部240に伝送する。
【0031】
保護部240は、平滑回路224から出力された電力を蓄電デバイス30に伝送する。また、保護部240は、平滑回路224と蓄電デバイス30とを接続する経路における過電圧を検出した際に、その経路を遮断する。図3は、本実施形態に係る保護部240の概略構成図である。保護部240は、主として、供給経路242、検出部250及び制御部258を備える。
【0032】
供給経路242は、受電ユニット220の平滑回路224と蓄電デバイス30とを接続する経路であり、平滑回路224で平滑された電力を蓄電デバイス30に供給する経路である。供給経路242は、ハイサイド側の第1経路243及びロ―サイド側の第2経路244を備える。
【0033】
供給経路242には、各種の素子が接続されている。例えば、供給経路242には、3つのスイッチ(第1スイッチSW1、第2スイッチSW2及び第3スイッチSW3)が接続されている。これらのスイッチは、例えば、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)又はリレー等により構成されてよい。これらのスイッチの状態が制御されることにより、保護部240における電流の流れが制御される。また、過電圧が検出されていない状態で非接触給電が行われている通常時には、第1スイッチSW1は短絡状態であり、第2スイッチSW2及び第3スイッチSW3は開放状態である。
【0034】
スイッチSW1は、第2経路244に直列に接続されている。スイッチSW1は、第2経路244を開放又は短絡することができる。例えば、スイッチSW1は、第2経路244を開放することにより、第2経路244を遮断することができる。これにより供給経路242が遮断され、受電ユニット220から蓄電デバイス30に大電流が流れないようにすることができる。
【0035】
本実施形態では、第1スイッチSW1が、ロ―サイド側の第2経路244に接続されている。このため、第1スイッチSW1が例えばMOSFETで構成されている場合には、MOSFETのソースがグラウンド電位となり、第1スイッチSW1を制御するための回路を単純化することが可能になる。
【0036】
スイッチSW2は、供給経路242における第1スイッチSW1よりも受電ユニット220側において、供給経路242に並列に接続されている。本実施形態では、第2スイッチSW2は、第3経路246に配置されている。ここで、第3経路246の一端は第1経路243に接続されており、第3経路246の他端は第1スイッチSW1よりも受電ユニット220側の第2経路244に接続されている。第2スイッチSW2は、第3経路246を開放又は短絡することができる。
【0037】
また、第3経路246には、第1抵抗器R1が配置されている。第1抵抗器R1は、第3経路246における第2スイッチSW2よりも第2経路244側において、第3経路246に直列に接続されている。
【0038】
また、供給経路242における第1スイッチSW1よりも受電ユニット220側において、供給経路242に並列に第1容量C1が接続されている。第1容量C1の一端は第1経路243に接続されており、第1容量C1の他端は第1スイッチSW1よりも受電ユニット220側の第2経路244に接続されている。
【0039】
何らかの原因により、蓄電デバイス30が保護部240から切り離されると、受電ユニット220の出力電圧が上昇する。このとき、第1容量C1に電流が流れ込むことにより、受電ユニット220の出力電圧の上昇が緩和され、後述する検出部250の比較器が過電圧を検出する時間が確保される。第1容量C1の容量が大きいほど、出力電圧の上昇がより緩和される。
【0040】
第3スイッチSW3は、供給経路242における第1スイッチSW1よりも蓄電デバイス30側において、供給経路242に並列に接続されている。本実施形態では、第3スイッチSW3は、第4経路248に配置されている。ここで、第4経路248の一端は第1経路243に接続されており、第4経路248の他端は第1スイッチSW1よりも蓄電デバイス30側の第2経路244に接続されている。第3スイッチSW3は、第4経路248を開放又は短絡することができる。
【0041】
また、第4経路248には、第2抵抗器R2が配置されている。第2抵抗器R2は、第4経路248における第3スイッチSW3よりも第2経路244側において、第4経路248に直列に接続されている。
【0042】
また、供給経路242における第1スイッチSW1よりも蓄電デバイス30側において、供給経路242に並列に第2容量C2が接続されている。第2容量C2の一端は第1経路243に接続されており、第2容量C2の他端は第1スイッチSW1よりも蓄電デバイス30側の第2経路244に接続されている。
【0043】
第2容量C2は、第1スイッチSW1が開放状態になったときに、第1スイッチSW1の寄生容量及び配線のインダクタンス成分による保護部240の出力電圧の上昇を抑制することができる。この結果、保護部240の出力電圧が過電圧になることが抑制され、保護部240に接続される機器を保護することが可能になる。第2容量C2の容量の大きさは、特に限定されないが、第1スイッチSW1の寄生容量程度の大きさであることが好ましい。
【0044】
検出部250は、平滑回路224と蓄電デバイス30とを接続する経路(供給経路242)における過電圧を検出することができる。検出部250は、第1経路243における第1接続点252と、第2経路244における第1スイッチSW1よりも受電ユニット220側の第2接続点254とに接続されている。検出部250は、各種の公知の電圧計を備えており、第1接続点252と第2接続点254との電圧を計測し、計測した電圧に基づいて過電圧を検出することができる。
【0045】
また、本実施形態では、検出部250は、供給経路242における電圧と所定の基準電圧とを比較する比較器256(コンパレータ)と、基準電圧を調整するための可変抵抗器257とを備えている。検出部250は、比較器256における比較結果に基づいて、過電圧を検出することができる。例えば、検出部250は、計測した電圧が基準電圧よりも高い場合には、供給経路242において過電圧が発生していることを検出することができる。また、使用者は、可変抵抗器257の抵抗値を調整することにより、例えば搭載機器の定格電圧に応じて、簡便に基準電圧を調整することが可能である。また、検出部250は、PIC(Peripheral Interface Controller)マイコンを備えていてもよく、PICマイコンにより過電圧を検出してもよい。
【0046】
制御部は258、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、CPU(Central Processing Unit)などを備えるマイクロコンピュータ及びFPGA(field-programmable gate array)などで構成される。制御部258は、検出部250により過電圧が検出された際に、供給経路242を遮断することができる。本実施形態では、制御部258は、保護部240において配置されている3つのスイッチの状態(開放状態又は短絡状態)を制御することができる。本実施形態では、制御部258は、過電圧が検出された際に、短絡状態の第1スイッチSW1を開放することにより、供給経路242を遮断することができる。
【0047】
図4は、本実施形態に係る受電装置20による処理の流れの一例を示すフローチャートである。図4に示す処理が開始される前には、送電装置10から受電装置20に非接触により送電が行われており、受電装置20から蓄電デバイス30に電力が供給されているものとする。また、第1スイッチSW1は短絡状態であり、第2スイッチSW2及び第3スイッチSW3は開放状態であるものとする。以下、図4に示すフローチャートに沿って、処理の流れを説明する。
【0048】
まず、制御部258は、検出部250により供給経路242における過電圧が検出されたか否かを判定する(ステップS101)。過電圧が検出されていないと判定された場合(ステップS101:NO)、ステップS101の処理が再び実施される。一方、過電圧が検出されたと判定された場合(ステップS101:YES)、ステップS103に進む。
【0049】
ステップS101においてYESと判定されると、制御部258は、短絡状態の第1スイッチSW1を開放する(ステップS103)。これにより、第1スイッチSW1が開放状態となり、供給経路242が遮断される。このとき、第1容量C1及び第2容量C2は充電状態となる。
【0050】
次いで、制御部258は、開放状態の第2スイッチSW2及び第3スイッチSW3を短絡する(ステップS105)。これにより、第1容量C1及び第2容量C2のそれぞれの電力が、第1抵抗器R1及び第2抵抗器R2により放電される。
【0051】
次いで、制御部258は、検出部250により過電圧が検出されていないか否かを判定する(ステップS107)。過電圧が検出されたと判定されると(ステップS107:NO)、ステップS107の処理が再び実施される。一方、過電圧が検出されていないと判定されると(ステップS107:YES)、図4に示す処理は終了する。
【0052】
なお、制御部258は、図4に示す処理が終了したときに給電対象が保護部240に接続されている場合には、開放状態の第1スイッチSW1を短絡して、短絡状態の第2スイッチSW2及び第3スイッチSW3を開放してよい。これにより、通常時の電力の供給が再開される。
【0053】
昨今では、リチウムイオンバッテリーを動力源とする装置が増えている。リチウムイオンバッテリーは、その特性上、BMS(バッテリマネジメントシステム)を有していることが多く、給電動作中に受電ユニットから切断されることがある。ワイヤレス給電システムにおいて給電動作中に給電対象が切断されると、電力の行き場がなくなり、上述したように受電ユニットの出力に過電圧が生じる。特に、本実施形態にように非接触による送電が行われる場合には、送電にタイムラグが生じるため過電圧が生じやすい。過電圧が生じると、受電ユニットに接続されている回路あるいは機器に影響が生じる可能性がある。
【0054】
本実施形態に係るワイヤレス給電システム1は、保護部240において過電圧が検出した際に、供給経路242を遮断することができる。受電ユニット220には、保護部240以外にも各種の回路あるいは装置などが接続されている場合がある。過電圧が検出された際に供給経路242が遮断されることにより、受電ユニット220に接続された回路あるいは機器などを過電圧から保護することができる。また、本実施形態に係るワイヤレス給電システム1によれば、逆流防止機能などの機能を加える必要がないため、簡便な構成により過電圧からの保護を実現することが可能である。
【0055】
また、上述したように、特許文献1に記載の技術では逆流防止機能が必要である。特許文献1に記載の技術では、本実施形態のように保護部240が受電ユニット220から独立している場合、受電ユニット220が蓄電デバイス30の電圧を使用するためには、供給経路242とは異なる経路を設ける必要がある。この結果、受電装置20の配線が複雑化していた。
【0056】
本実施形態に係るワイヤレス給電システム1によれば、保護部240が受電ユニット220から独立していても、供給経路242とは別に経路を設ける必要がない。このため、簡便な構成で保護部240が受電ユニット220から独立して構成を実現することが可能になる。保護部240が受電ユニット220から独立していると、保護部240及び受電ユニットのそれぞれが一体化している場合と比べて小型化されるため、より狭いスペースに分けてそれぞれを移動体等に搭載することができる。
【0057】
また、一般的に、充電電流が大きくなると、給電動作中に給電対象が切断されたときの受電ユニットの出力電圧の上昇が速くなる。例えば、充電電流が30Aであるときに給電対象が切断されると、数μ秒の間に出力電圧が約10V上昇することがある。このため、受電ユニットの出力電圧を所定の目標値に制御するためには、出力電圧の上昇に高速で反応できる高性能CPU等の高価な部品が必要となり、コストアップの要因となっていた。
【0058】
本実施形態に係るワイヤレス給電システム1によれば、受電ユニット220の出力電圧が上昇すると、供給経路242に並列に接続された第1容量C1に電流が流れる。これにより、受電ユニット220の出力電圧の上昇が緩和され、検出部250が過電圧を検出する時間が確保される。この結果、高性能CPUなどの高価な部品を用いずに比較的安価な構成により、過電圧を検出して回路あるいは機器を過電圧から保護することが可能になる。
【0059】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【0060】
上記実施形態では、第2スイッチSW2及び第3スイッチSW3が通常時には開放状態であるものとして説明したが、第2スイッチSW2及び第3スイッチSW3は通常時においても短絡状態であってもよい。
【0061】
上記実施形態では、蓄電デバイス30が、保護部240の出力側に接続されているものとして説明した。これに限らず、蓄電デバイス30は、保護部240の入力側に接続されていてもよい。すなわち、受電ユニット220は、蓄電デバイス30を介して保護部240に接続されていてもよい。この場合には、保護部240の出力側には、例えば搭載機器制御盤などの負荷が接続され得る。このとき、この搭載機器制御盤などの負荷が、保護部240における過電圧から保護される。
【0062】
また、上記実施形態では、保護部240が受電ユニット220とは独立しているものとして説明した。これに限らず、保護部240の一部又は全部は、受電ユニット220の内部に搭載されていてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1…ワイヤレス給電システム、10…送電装置、15…電源、20…受電装置、30…蓄電デバイス、32…搭載機器制御盤、100…送電ユニット、120…送電コイルユニット、122…送電コイル、200…受電コイルユニット、202…受電コイル、220…受電ユニット、222…整流回路、224…平滑回路、240…保護部、242…供給経路、250…検出部、258…制御部
図1
図2
図3
図4