IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社やまびこの特許一覧

<>
  • 特許-作業ロボット 図1
  • 特許-作業ロボット 図2
  • 特許-作業ロボット 図3
  • 特許-作業ロボット 図4
  • 特許-作業ロボット 図5
  • 特許-作業ロボット 図6
  • 特許-作業ロボット 図7
  • 特許-作業ロボット 図8
  • 特許-作業ロボット 図9
  • 特許-作業ロボット 図10
  • 特許-作業ロボット 図11
  • 特許-作業ロボット 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】作業ロボット
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20240729BHJP
【FI】
G05D1/43
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020105322
(22)【出願日】2020-06-18
(65)【公開番号】P2021197067
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】布施 陽一
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/111102(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/167203(WO,A1)
【文献】特開昭52-131831(JP,A)
【文献】特開平11-212642(JP,A)
【文献】特開2013-228821(JP,A)
【文献】特開平07-222509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律走行可能な走行部を備える機体と、
前記機体に設けられ、前記機体の走行経路に沿って作業軌跡を形成する作業部と、
前記機体に設けられ前記走行部と前記作業部を駆動する駆動部と、
前記走行部が自律走行を行うための制御を行う制御部とを備え、
前記制御部は、作業境界位置付近で前記機体の前方向きを作業領域内に向けてターンさせるターン動作に係る制御を行い、前記ターン動作の動作前又は動作後に、前記機体を前記前方向きの逆向きに走行させる後進動作に係る制御を行い、前記後進動作に係る制御は、前記作業部の作業範囲の半径分の移動距離だけ後進動作することで、前記作業軌跡の外側に発生する未作業箇所を無くすことを特徴とする作業ロボット。
【請求項2】
前記制御部は、
検出された前記機体の位置変動に基づいて、前記機体の前方向きを進行予定方向に合わせる向き調整を行うために、前記ターン動作の動作後に行われる前記後進動作に係る制御を行うことを特徴とする請求項1記載の作業ロボット。
【請求項3】
前記制御部は、
前記ターン動作の動作前に行う前記後進動作に係る制御を、前記機体が作業境界位置をオーバーランした後に行うことを特徴とする請求項1記載の作業ロボット。
【請求項4】
前記機体の前方には、物理的に作業境界位置を検知するセンサが設けられていることを特徴とする請求項3記載の作業ロボット。
【請求項5】
前記制御部は、
前記機体を直進走行させて直線状の前記作業軌跡を形成した後、前記ターン動作で前記前方向きを略直交向きに変更する動作を繰り返すように制御を行うことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項記載の作業ロボット。
【請求項6】
前記制御部は、
前記機体を直進走行させて直線状の前記作業軌跡を形成した後、前記ターン動作で任意の方向に前記前方向きを変更する動作を繰り返すように制御を行うことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項記載の作業ロボット。
【請求項7】
前記制御部は、前記機体に搭載されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項記載の作業ロボット。
【請求項8】
前記制御部は、通信手段を介して前記走行部の自律走行を遠隔制御するサーバーに設けられていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項記載の作業ロボット。
【請求項9】
前記作業部は、鉛直軸周りに回転する草刈り刃を備えることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項記載の作業ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行しながら草刈りなどの作業を行う作業ロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、作業領域内を自律走行しながら走行経路に沿って草刈りなどの作業を行う作業ロボットが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
作業ロボットは、GPSなどの衛星測位システムを活用するか、或いは作業現場に設置された電子タグやワイヤなどの基準位置を検知して、現在の自己位置が設定された作業領域内に位置するように自律走行を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5973608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した作業ロボットは、機体が作業領域の境界位置に到達すると、機体の進行方向が作業領域内に向くように機体を所定角度ターン(旋回)させる。
【0006】
この際、進行方向を決める機体の向きは、旋回動作の角度カウントや方位センサの検出値によって決められるが、作業現場の路面状態やセンサ誤差などの各種要因で、機体をターンした後の機体の向きと設定された進行方向との間にずれが生じる場合がある。
【0007】
このような方向ずれが生じると、それを修正するように自律走行の制御がなされることになるが、方向ずれが修正されるまでの間、作業ロボットは設定された走行経路から外れた作業を行うことになる。特に、機体を直進させて直線的な作業軌跡を得たい場合などは、ターン後の方向ずれが修正されるまでの間に作業軌跡が蛇行した状態になり、ターン直後の数メートルで安定した直線状の作業軌跡が形成できなくなる。
【0008】
また、草刈りなどの作業を行う作業ロボットは、停止状態での作業範囲が円形になるものが多い。このような作業ロボットは、自律走行によって形成される作業軌跡が、端部で円弧状になるので、作業領域の境界位置で機体をターンさせて作業領域内の全体を作業する際に、ターン箇所において、円弧の作業軌跡の外側に未作業箇所(草刈りの場合は刈り残し)が発生してしまう問題があった。
【0009】
このような未作業箇所は、作業領域の外縁に沿って作業ロボットを自律走行させて、追加の作業を行うことで無くすことはできるが、このような追加の作業は、多くの作業軌跡が作業済み箇所と重複した軌跡にならざるを得ず、非効率な作業になってしまう問題があった。
【0010】
本発明は、このような問題に対処するために提案されたものである。すなわち、作業ロボットにおいて、設定された走行経路に沿った作業軌跡を形成できるようにすること、また、作業軌跡の外側に残る未作業箇所を効率的に無くすことができるようにすること、などが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような課題を解決するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
自律走行可能な走行部を備える機体と、前記機体に設けられ、前記機体の走行経路に沿って作業軌跡を形成する作業部と、前記機体に設けられ前記走行部と前記作業部を駆動する駆動部と、前記走行部が自律走行を行うための制御を行う制御部とを備え、前記制御部は、作業境界位置付近で前記機体の前方向きを作業領域内に向けてターンさせるターン動作に係る制御を行い、前記ターン動作の動作前又は動作後に、前記機体を前記前方向きの逆向きに走行させる後進動作に係る制御を行い、前記後進動作に係る制御は、前記作業部の作業範囲の半径分の移動距離だけ後進動作することで、前記作業軌跡の外側に発生する未作業箇所を無くすことを特徴とする作業ロボット。
【発明の効果】
【0012】
このような特徴を有する作業ロボットは、ターン動作を繰り返した場合にも、設定された走行経路に沿った作業軌跡を形成することができる。また、このような特徴を有する作業ロボットは、作業軌跡の外側に残る未作業箇所を効率的に無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】作業ロボットの機体構成を示す説明図((a)が側面図、(b)が平面図)。
図2】作業ロボットのシステム構成の一例を示した説明図。
図3】作業ロボットのシステム構成のブロック図。
図4】制御部が実行するプログラム例を示す説明図。
図5】作業ロボットの作業動作例を示す説明図。
図6】作業ロボットが行う基本動作を示す説明図((a)が前進動作、(b)ターン動作、(c)が後進動作)。
図7】作業ロボットが行う基本動作を示す説明図((a)が前進オーバーラン動作、(b)が後進動作、(c)がターン動作)。
図8】基本動作を組み込んだ作業動作例の説明図。
図9】基本動作を組み込んだ作業動作例の説明図。
図10】基本動作を組み込んだ作業動作例の説明図。
図11】基本動作を組み込んだ作業動作例の説明図。
図12】基本動作を組み込んだ作業動作例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0015】
図1に示すように、作業ロボット1は、機体10を備えている。機体10には、自律走行可能な走行部2と、走行しながら草刈り作業や散布作業や回収作業などを行う作業部3と、走行部2と作業部3を駆動する駆動部4とが設けられている。また、図1に示した例では、機体10に、走行部2が自律走行を行うための制御を行う制御部5が設けられている。ここでは、制御部5を機体10に搭載している例を示しているが、制御部5は、走行部2の自律走行を遠隔制御するように、機体10から離れたところに設けてもよい。
【0016】
図1に示した例では、走行部2は、前輪走行部2Aと後輪走行部2Bを備えている。走行部2は、設定された作業領域内における任意の方向に向けて機体10を自律走行させることができる装備を備えている。駆動部4は、図1に示した例では、前輪駆動部4Aと後輪駆動部4Bをそれぞれ左右一対備えており、更に、作業部3を駆動する作業駆動部4Cを備えている。また、機体10には、前輪駆動部4A、後輪駆動部4B、作業駆動部4C、制御部5などの電源となるバッテリー11が設けられている。
【0017】
作業ロボット1において、走行部2が自律走行を行う際の動作は、前進動作と後進動作とターン動作である。作業ロボット1の機体10は、構造上前側10fと後側10bが設定されている。機体10の前側10fに向けて機体10を進行させる走行部2の動作が前進動作であり、機体10の後側10bに向けて機体10を進行させる走行部2の動作が後進動作である。機体10の前側10f(又は後側10b)の向きを機体10の進行を抑えながら変更する走行部2の動作がターン動作(旋回動作)になる。
【0018】
制御部5は、走行部2の前進動作と後進動作とターン動作に係る制御を行う。図1に示した例では、制御部5からの制御信号によって、前輪駆動部4Aと後輪駆動部4Bが制御され、これによって、走行部2の前進動作と後進動作とターン動作に係る制御がなされる。また、制御部5は、作業駆動部4Cも合わせて制御する。
【0019】
制御部5による前進動作の制御は、左右の前輪駆動部4Aと左右の後輪駆動部4Bを制御して、前輪走行部2Aと後輪走行部2Bの車輪周速度が左右全て一致するように動作させることで、直進の前進動作が実行できる。制御部5による後進動作の制御は、前輪走行部2Aと後輪走行部2Bの回転方向を前進動作とは逆向きに回転させる。制御部5によるターン動作の制御は、左右の前輪駆動部4A又は左右の後輪駆動部4Bをそれぞれ独立して制御し、左右の前輪走行部2Aと左右の後輪走行部2Bに周速度差を生じさせる。
【0020】
制御部5が出力する制御信号は、一例としては、制御部5の演算処理によって出力され、他の例としては、後述するように、通信手段を介して制御部5を遠隔制御するサーバー(コンピュータ)からの制御信号(指示信号)に基づいて出力される。
【0021】
作業部3は、機体10の走行経路に沿って作業軌跡を形成するように各種の作業を行う。以下、草刈り作業を行う作業部3を例にして説明する。図1に示した例では、作業部3は、平面視で円形の作業範囲を有しており、図示省略した草刈り刃を鉛直軸周りに回転することで、作業部3の直下の草を刈払う。これにより、機体10を走行させながら作業部3を駆動すると、機体10の走行経路に沿って、作業部3における平面視の円形作業範囲の直径を横幅とする刈払い作業済みの作業軌跡が形成される。
【0022】
作業ロボット1の機体10には、センサ部6が設けられている。センサ部6には、走行部2を自律走行させるため、或いは作業部3の駆動を制御するために、各種の検出手段が設けられている。センサ部6は機体10の前方に設けられており、センサ部6の検出信号は制御部5に送信される。
【0023】
図2は、自律走行を行うためのシステム構成の一例を示している。この例では、GPSなどの衛星測位システム(GNSS;Global Navigation Satellite System)を活用して、機体10の現在位置を検知している。
【0024】
この際、機体10のセンサ部6には、GNSS衛星100から発信される電波信号を受信するGNSSセンサ6Aが設けられ、GNSSセンサ6Aが受信した信号が制御部5に送信されている。機体10は、通信部5Aを備えており、ネットワークNTを介して、遠隔地にあるサーバー101や作業現場に居るユーザが所持する携帯情報端末102などが、通信部5Aを介して制御部5に接続可能になっている。
【0025】
図2に示したシステムの構成例(ブロック図)を図3に示す。機体10の制御部5には、前述した駆動部4とセンサ部6とバッテリー11が接続されていると共に、前述した通信部5A、制御部5に情報を入力する入力部5B、制御部5に入力された情報を記憶する記憶部5Cなどが接続されている。
【0026】
センサ部6には、前述したGNSSセンサ6Aが設けられると共に、機体10の進む方向を検出するための方位センサ6Bや、作業境界位置に設置された電子タグやワイヤを物理的に検知する境界検知センサ6Cなどが設けられている。
【0027】
サーバー101には、制御部50が設けられており、制御部50には、サーバー101をネットワークに接続するための通信部51と、制御部50に情報を入力するための入力部54、制御部50に入力された情報を記憶する記憶部52、制御部50或いは制御部5の制御状況等を表示する表示部53などが接続されている。
【0028】
機体10に設けた通信部5Aとサーバー101の通信部51がネットワークを介して接続されていることで、機体10に設けた制御部5とサーバー101の制御部50は互いに信号(情報)の送受信が可能な状態になっており、一つの統合された制御部5Uを構成している。
【0029】
作業ロボット1の制御は、制御部5Uに、図4に示す機能のプログラムを組み込むことで実行される。図4に示した制御部5Uが実行するプログラムは、機体10に搭載した制御部5にその一部又は全部を組み込むことができ、また、サーバー101の制御部50にその一部又は全部を組み込むことができる。また、図2に示した携帯情報端末102の制御部においても、制御部5Uに組み込まれるプログラムと同様の機能のプログラムを組み込むことができる。
【0030】
地図情報取得手段P1は、記憶部5C(52)に既に作業現場の地図情報が記憶されている場合には、作業領域を設定するために必要な地図情報を制御部5U(5,50)に取り込む。また、記憶部5C(52)に地図情報が記憶されていない場合には、ネットワークNTを介して必要な地図情報を取り込んで記憶部5C(52)に記憶させる。
【0031】
作業領域設定手段P2は、取り込んだ地図情報と入力された各種情報に基づいて、作業境界線(作業境界位置)で囲まれた作業領域を設定する。
【0032】
走行経路設定手段P3は、設定された作業領域内において、機体10が走行しながら作業を行う経路を設定する。
【0033】
機体位置検知手段P4は、GNSSセンサ6Aの受信結果と取得した地図情報に基づいて、作業領域内における機体10の現在位置を検知する。
【0034】
境界到達検知手段P5は、機体位置検知手段P4で検知された機体10の現在位置が、作業領域設定手段P2にて設定された作業領域の作業境界位置付近に到達したことを検知する。
【0035】
前進動作実行手段P6は、機体位置検出手段P4にて検知された機体10の位置が、走行経路設定手段P3にて設定された走行経路上の前進すべき経路上にあることを認知した場合に、前進動作を実行する。また、作業前に走行経路を設定しないでランダム走行を行う場合には、後述するターン動作の実行後に、機体10を直進走行させる。
【0036】
ターン動作実行手段P7は、境界到達検知手段P5によって機体10が作業境界位置付近に到達したことを検知した場合に、所定のタイミングで、機体10の前方向きを作業領域内に向けてターンさせるターン動作を実行する。ターン動作を行う際のターン角度(旋回角度)は、走行経路設定手段P3にて走行経路が設定されている場合は、その経路に機体10の向きが沿うように角度が設定される。作業前に走行経路を設定しないでランダム走行を行う場合には、作業領域内を効率よく作業できるように、ターン動作毎に所定のターン角度を設定する。
【0037】
後進動作実行手段P8は、ターン動作実行手段P7にてターン動作を行った後又はターン動作を行う前に、後進動作を実行する。後進動作を行う際の移動距離は、必要最小限の距離に設定され、例えば、作業部3の円形作業範囲における直径の1/2(半径)分の移動距離に設定される。
【0038】
オーバーラン走行実行手段P9は、後進動作実行手段P8がターン動作の動作前に後進動作を実行する場合に、作業境界位置に到達した機体10の位置を、設定移動距離だけ作業境界位置からオーバーランさせる。オーバーラン時の移動距離は、必要最小限の距離に設定され、例えば、作業部3の円形作業範囲における直径の1/2(半径)分の移動距離に設定される。
【0039】
作業動作実行手段P10は、機体10の走行に対して所定のタイミングで作業駆動部4Cの駆動を開始し、所定のタイミングで作業駆動部4Cの駆動を停止する。
【0040】
以下、作業ロボット1の作業動作例を説明する。図5に示す例では、矩形の作業境界線(作業境界位置)Wbで囲まれた作業領域Waを設定し、図示の波線で示す走行経路Drを設定している。そして、機体10を直進走行させて直線状の作業軌跡Wtを形成した後に、作業境界位置付近でのターン動作で機体10の前方向きを略直交向きに変更する動作を繰り返す作業動作を行っている。
【0041】
このような作業動作では、直進の前進動作とターン角度90°のターン動作のみで作業を行うと、作業部3が円形の作業範囲を有していることにより、ターン動作を行う箇所に未作業箇所(刈り残し箇所)Uaが発生する。また、ターン動作直後における直進の前進動作において、ターン動作時に生じる方向ずれが方位センサ6Bの検出によって修正される間に、安定した直線状の作業軌跡が形成できない場合がある。
【0042】
このような不具合を解消するために、作業ロボット1は、制御部5U(5,50)による制御で、ターン動作を行う際に、図6又は図7に示す基本動作を行っている。
【0043】
図6に示す基本動作は、図6(a)に示すように、機体10における作業部3の作業範囲が作業境界線Wbに到達するまで前進動作を行い、作業部3の作業範囲が作業境界線Wbに到達すると、図6(b)に示すように、作業領域Wa内に向けて所定のターン角度(図示の例では90°)のターン動作を行い、その後、図6(c)に示すように、機体10を作業範囲の半径分の移動距離だけ後進動作を行う。この際の動作は(a),(b),(c)の順に行われる。
【0044】
また、図7に示す基本動作は、図7(a)に示すように、機体10における作業部3の作業範囲が作業境界線Wbに到達するまで前進動作を行い、作業部3の作業範囲が作業境界線Wbに到達すると、更に、機体10を作業範囲の半径分の移動距離だけ前進動作させるオーバーランを行い、その後、図7(b)に示すように、機体10を作業範囲の半径分の移動距離だけ後進動作を行い、その後、図7(c)に示すように、作業領域Wa内に向けて所定のターン角度(図示の例では90°)のターン動作を行う。この際の動作は(a),(b),(c)の順に行われる。
【0045】
作業ロボット1は、作業領域Waでの自律走行中にこのような基本動作を行うことで、図5に示す未作業箇所Uaを効率よく無くすことができる。また、図6に示す基本動作のように、ターン動作の動作後に後進動作を行う場合には、後進動作を行う間に、GNSSセンサ6Aで検出される機体10の位置変動に基づいて、ターン動作時に生じる方向ずれを方位センサ6Bの検出によって修正することができる。これにより、その後に実行する前進動作時には、動作当初から安定した直線状の作業軌跡を形成することができる。
【0046】
図8図12は、前述した2つの基本動作の一方又は両方を組み込んだ作業動作例を示している。各基本動作は、(a),(b),(c)の順に動作が行われる。図8に示した例は、図6に示した基本動作を組み込むことで、矩形状の作業境界線Wbに囲まれた作業領域Wa内に、作業部3の進行方向が交互に異なる直線縞模様状(straight striping)の作業軌跡を形成している。
【0047】
図9に示した例は、図7に示した基本動作を組み込むことで、矩形状の作業境界線Wbに囲まれた作業領域Wa内に、作業部3の進行方向が交互に異なる直線縞模様状(straight striping)の作業軌跡を形成している。
【0048】
図10に示した例は、図6図7に示した基本動作を組み込むことで、矩形状の作業境界線Wbに囲まれた作業領域Wa内に、作業部3の進行方向が交互に異なる直線縞模様状(straight striping)の作業軌跡を形成し、作業領域Waの外側も全体的にきれいな模様を形成する。
【0049】
図11に示した例は、図7に示した基本動作を組み込むことで、矩形状の作業境界線Wbに囲まれた作業領域Wa内に、旋回ストライプ状の作業軌跡を形成している。
【0050】
図12に示した例は、図7に示した基本動作を組み込み、ターン角度を適宜設定することで、ランダム直進作業の作業軌跡を形成している。
【0051】
なお、前述の説明では、衛星測位システム(GNSS)を活用する例を示して説明しているが、センサ部6におけるGNSSセンサ6Aを省いて、作業現場に設置した電子タグやワイヤを物理的に検知する境界検知センサ6Cのみで、前述した境界到達検知手段P5を実行するようにしてもよい。
【0052】
この際には、作業ロボット1は、機体10の前方に境界検知センサ6Cを設置し、作業ロボット1がワイヤ等に向かう状態を境界検知センサ6Cで検知してオーバーラン走行を実行する。これによると、作業ロボット1は常に前進動作でワイヤ等に接近することになるので、作業ロボット1の後方に境界検知センサ6Cを設ける必要が無い。
【0053】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1:作業ロボット,
2:走行部,2A:前輪走行部,2B:後輪走行部,
3:作業部,
4:駆動部,4A:前輪駆動部,4B:後輪駆動部,
4C:作業駆動部,
5,50,5U:制御部,5A,51:通信部,
5B,54:入力部,5C,52:記憶部,53:表示部,
6:センサ部,6A:GNSSセンサ,
6B:方位センサ,6C:境界検知センサ,
10:機体,10f:前側,10b:後側,
11:バッテリー,
100:GNSS衛星,101:サーバー,102:携帯情報端末,
NT:ネットワーク,
P1:地図情報取得手段,P2:作業領域設定手段,
P3:走行経路設定手段,P4:機体位置検知手段,
P5:境界到達検知手段,P6:前進動作実行手段,
P7:ターン動作実行手段,P8:後進動作実行手段,
P9:オーバーラン走行実行手段,P10:作業動作実行手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12