(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】樹脂、その製造方法、熱硬化性樹脂組成物及び硬化物
(51)【国際特許分類】
C08G 61/12 20060101AFI20240729BHJP
C08G 73/00 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
C08G61/12
C08G73/00
(21)【出願番号】P 2020110089
(22)【出願日】2020-06-26
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000165000
【氏名又は名称】群栄化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【氏名又は名称】柳井 則子
(72)【発明者】
【氏名】海野 洋平
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 僚介
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-008228(JP,A)
【文献】特開2004-137376(JP,A)
【文献】特開2018-162434(JP,A)
【文献】特開2002-167367(JP,A)
【文献】特開2006-249186(JP,A)
【文献】米国特許第05246751(US,A)
【文献】中国特許出願公開第110305314(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G61/00-61/12
C08G65/00-67/04
C08G73/00-73/26
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール系モノマー
のヒドロキシ基を有する芳香環同士が2価の架橋基(X)を介して連結された樹脂であって、
前記フェノール系モノマーがビスフェノールイミド及びビスナフトールイミドからなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマー(m1)を含み、
前記モノマー(m1)が前記ビスフェノールイミドを含み、
前記2価の架橋基(X)が-CH
2-R
1-CH
2-で表される架橋基(X1)を含む、樹脂。
ただし、R
1は、置換基を有していてもよいフェニレン基、又は置換基を有していてもよいビフェニレン基である。
【請求項2】
前記
ビスフェノールイミドが、下記式(m11)で表される化合物
であり、前記ビスナフトールイミドが、下記式(m12)で表される化合
物である、請求項1に記載の樹脂。
【化1】
ただし、R
2は下記式(21)~(26)のいずれかで表される基であり、R
3は炭素数1~4のアルキル基であり、
b及びcはそれぞれ独立に1~2の整数であり、d及びeはそれぞれ独立に0~2の整数であり、b+dは1~3の整数であり、c+eは1~3の整数であり、d+eが2以上の場合、(d+e)個のR
3はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、
f及びgはそれぞれ独立に1~2の整数であり、h及びiはそれぞれ独立に0~2の整数であり、f+hは1~3の整数であり、g+iは1~3の整数であり、h+iが2以上の場合、(h+i)個のR
3はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【化2】
【請求項3】
前記フェノール系モノマーがクレゾールをさらに含む、請求項1又は2に記載の樹脂。
【請求項4】
前記2価の架橋基(X)が-CH
2-で表される架橋基(X2)をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂。
【請求項5】
フェノール系モノマーが2価の架橋基(X)を介して連結された樹脂であって、
前記フェノール系モノマーが
下記式(m11)で表される化合物及び
下記式(m12)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマー(m1)を含み、
前記2価の架橋基(X)が-CH
2-R
1-CH
2-で表される架橋基(X1)を含む、樹脂。
ただし、R
1は、置換基を有していてもよいフェニレン基、又は置換基を有していてもよいビフェニレン基である。
【化3】
ただし、R
2は下記式(21)~(26)のいずれかで表される基であり、R
3は炭素数1~4のアルキル基であり、
b及びcはそれぞれ独立に1~2の整数であり、d及びeはそれぞれ独立に0~2の整数であり、b+dは1~3の整数であり、c+eは1~3の整数であり、d+eが2以上の場合、(d+e)個のR
3はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、
f及びgはそれぞれ独立に1~2の整数であり、h及びiはそれぞれ独立に0~2の整数であり、f+hは1~3の整数であり、g+iは1~3の整数であり、h+iが2以上の場合、(h+i)個のR
3はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【化4】
【請求項6】
フェノール系モノマーが2価の架橋基(X)を介して連結された樹脂であって、
前記フェノール系モノマーがビスフェノールイミド及びビスナフトールイミドからなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマー(m1)
と、クレゾールとを含み、
前記2価の架橋基(X)が-CH
2-R
1-CH
2-で表される架橋基(X1)を含む、樹脂。
ただし、R
1は、置換基を有していてもよいフェニレン基、又は置換基を有していてもよいビフェニレン基である。
【請求項7】
フェノール系モノマーが2価の架橋基(X)を介して連結された樹脂であって、
前記フェノール系モノマーがビスフェノールイミド及びビスナフトールイミドからなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマー(m1)を含み、
前記2価の架橋基(X)が-CH
2-R
1-CH
2-で表される架橋基(X1)
と、-CH
2
-で表される架橋基(X2)とを含む、樹脂。
ただし、R
1は、置換基を有していてもよいフェニレン基、又は置換基を有していてもよいビフェニレン基である。
【請求項8】
フェノール系モノマーと架橋基材料とを反応させる工程を含み、
前記フェノール系モノマーがビスフェノールイミド及びビスナフトールイミドからなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマー(m1)を含み、
前記モノマー(m1)が前記ビスフェノールイミドを含み、
前記架橋基材料がY
1-CH
2-R
1-CH
2-Y
2で表される化合物を含む、樹脂の製造方法。
ただし、R
1は、置換基を有していてもよいフェニレン基、又は置換基を有していてもよいビフェニレン基であり、Y
1及びY
2はそれぞれ独立に、炭素数1~4のアルコキシ基、ヒドロキシ基、又はハロゲン原子である。
【請求項9】
前記
ビスフェノールイミドが、下記式(m11)で表される化合物
であり、前記ビスナフトールイミドが、下記式(m12)で表される化合
物である、請求項
8に記載の樹脂の製造方法。
【化5】
ただし、R
2は下記式(21)~(26)のいずれかで表される基であり、R
3は炭素数1~4のアルキル基であり、
b及びcはそれぞれ独立に1~2の整数であり、d及びeはそれぞれ独立に0~2の整数であり、b+dは1~3の整数であり、c+eは1~3の整数であり、d+eが2以上の場合、(d+e)個のR
3はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、
f及びgはそれぞれ独立に1~2の整数であり、h及びiはそれぞれ独立に0~2の整数であり、f+hは1~3の整数であり、g+iは1~3の整数であり、h+iが2以上の場合、(h+i)個のR
3はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【化6】
【請求項10】
前記フェノール系モノマーがクレゾールをさらに含む、請求項
8又は
9に記載の樹脂の製造方法。
【請求項11】
前記架橋基材料がホルムアルデヒドをさらに含む、請求項
8~
10のいずれか一項に記載の樹脂の製造方法。
【請求項12】
フェノール系モノマーと架橋基材料とを反応させる工程を含み、
前記フェノール系モノマーが
下記式(m11)で表される化合物及び
下記式(m12)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマー(m1)を含み、
前記架橋基材料がY
1-CH
2-R
1-CH
2-Y
2で表される化合物を含む、樹脂の製造方法。
ただし、R
1は、置換基を有していてもよいフェニレン基、又は置換基を有していてもよいビフェニレン基であり、Y
1及びY
2はそれぞれ独立に、炭素数1~4のアルコキシ基、ヒドロキシ基、又はハロゲン原子である。
【化7】
ただし、R
2は下記式(21)~(26)のいずれかで表される基であり、R
3は炭素数1~4のアルキル基であり、
b及びcはそれぞれ独立に1~2の整数であり、d及びeはそれぞれ独立に0~2の整数であり、b+dは1~3の整数であり、c+eは1~3の整数であり、d+eが2以上の場合、(d+e)個のR
3はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、
f及びgはそれぞれ独立に1~2の整数であり、h及びiはそれぞれ独立に0~2の整数であり、f+hは1~3の整数であり、g+iは1~3の整数であり、h+iが2以上の場合、(h+i)個のR
3はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【化8】
【請求項13】
フェノール系モノマーと架橋基材料とを反応させる工程を含み、
前記フェノール系モノマーがビスフェノールイミド及びビスナフトールイミドからなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマー(m1)
と、クレゾールとを含み、
前記架橋基材料がY
1-CH
2-R
1-CH
2-Y
2で表される化合物を含む、樹脂の製造方法。
ただし、R
1は、置換基を有していてもよいフェニレン基、又は置換基を有していてもよいビフェニレン基であり、Y
1及びY
2はそれぞれ独立に、炭素数1~4のアルコキシ基、ヒドロキシ基、又はハロゲン原子である。
【請求項14】
フェノール系モノマーと架橋基材料とを反応させる工程を含み、
前記フェノール系モノマーがビスフェノールイミド及びビスナフトールイミドからなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマー(m1)を含み、
前記架橋基材料がY
1-CH
2-R
1-CH
2-Y
2で表される化合物
とホルムアルデヒドとを含む、樹脂の製造方法。
ただし、R
1は、置換基を有していてもよいフェニレン基、又は置換基を有していてもよいビフェニレン基であり、Y
1及びY
2はそれぞれ独立に、炭素数1~4のアルコキシ基、ヒドロキシ基、又はハロゲン原子である。
【請求項15】
請求項1~
7のいずれか一項に記載の樹脂と、硬化剤とを含む、熱硬化性樹脂組成物。
【請求項16】
前記硬化剤が多官能アルコキシメチル化合物を含む、請求項
15に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項17】
請求項
15又は
16に記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂、その製造方法、熱硬化性樹脂組成物及び硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品の保護膜、層間絶縁膜、平坦化膜等を形成するために、熱硬化性樹脂組成物や感光性樹脂組成物が用いられる。
【0003】
特許文献1には、不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸無水物と、水酸基を有する不飽和化合物とを構成モノマーとする共重合体と、アミノトリアジン類と、溶剤とを含む熱硬化性樹脂組成物が記載されている。
【0004】
特許文献2には、特定の酸解離性基を有し、アルカリ不溶性若しくはアルカリ難溶性であり、酸解離性基が解離したときにアルカリ可溶性となる樹脂と、波長300nm以上の活性光線の照射により酸を発生する化合物と、架橋剤と、密着助剤とを含むポジ型感光性樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-215328号公報
【文献】特開2008-304902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の熱硬化性樹脂組成物は、硬化物の硬度が高い。硬度が高いと、クラックが発生しやすく、電子デバイスの歩留まり低下の要因となる。
特許文献2のポジ型感光性樹脂組成物も、硬化物(架橋剤による架橋後)の硬度が高い。また、架橋剤の種類によっては、耐薬品性に劣る問題もある。
【0007】
本発明は、耐薬品性と柔軟性に優れる硬化物が得られる樹脂及びその製造方法、耐薬品性と柔軟性に優れる硬化物が得られる熱硬化性樹脂組成物、並びに耐薬品性と柔軟性に優れる硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]フェノール系モノマーが2価の架橋基(X)を介して連結された樹脂であって、
前記フェノール系モノマーがビスフェノールイミド及びビスナフトールイミドからなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマー(m1)を含み、
前記2価の架橋基(X)が-CH2-R1-CH2-で表される架橋基(X1)を含む、樹脂。
ただし、R1は、置換基を有していてもよいフェニレン基、又は置換基を有していてもよいビフェニレン基である。
[2]前記モノマー(m1)が、下記式(m11)で表される化合物及び下記式(m12)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、前記[1]の樹脂。
【0009】
【0010】
ただし、R2は下記式(21)~(26)のいずれかで表される基であり、R3は炭素数1~4のアルキル基であり、
b及びcはそれぞれ独立に1~2の整数であり、d及びeはそれぞれ独立に0~2の整数であり、b+dは1~3の整数であり、c+eは1~3の整数であり、d+eが2以上の場合、(d+e)個のR3はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、
f及びgはそれぞれ独立に1~2の整数であり、h及びiはそれぞれ独立に0~2の整数であり、f+hは1~3の整数であり、g+iは1~3の整数であり、h+iが2以上の場合、(h+i)個のR3はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0011】
【0012】
[3]前記フェノール系モノマーがクレゾールをさらに含む、前記[1]又は[2]の樹脂。
[4]前記2価の架橋基(X)が-CH2-で表される架橋基(X2)をさらに含む、前記[1]~[3]のいずれかの樹脂。
[5]フェノール系モノマーと架橋基材料とを反応させる工程を含み、
前記フェノール系モノマーがビスフェノールイミド及びビスナフトールイミドからなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマー(m1)を含み、
前記架橋基材料がY1-CH2-R1-CH2-Y2で表される化合物を含む、樹脂の製造方法。
ただし、R1は、置換基を有していてもよいフェニレン基、又は置換基を有していてもよいビフェニレン基であり、Y1及びY2はそれぞれ独立に、炭素数1~4のアルコキシ基、ヒドロキシ基、又はハロゲン原子である。
[6]前記モノマー(m1)が、下記式(m11)で表される化合物及び下記式(m12)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、前記[5]の樹脂の製造方法。
【0013】
【0014】
ただし、R2は下記式(21)~(26)のいずれかで表される基であり、R3は炭素数1~4のアルキル基であり、
b及びcはそれぞれ独立に1~2の整数であり、d及びeはそれぞれ独立に0~2の整数であり、b+dは1~3の整数であり、c+eは1~3の整数であり、d+eが2以上の場合、(d+e)個のR3はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、
f及びgはそれぞれ独立に1~2の整数であり、h及びiはそれぞれ独立に0~2の整数であり、f+hは1~3の整数であり、g+iは1~3の整数であり、h+iが2以上の場合、(h+i)個のR3はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0015】
【0016】
[7]前記フェノール系モノマーがクレゾールをさらに含む、前記[5]又は[6]の樹脂の製造方法。
[8]前記架橋基材料がホルムアルデヒドをさらに含む、前記[5]~[7]のいずれかの樹脂の製造方法。
[9]前記[1]~[4]のいずれかの樹脂と、硬化剤とを含む、熱硬化性樹脂組成物。
[10]前記硬化剤が多官能アルコキシメチル化合物を含む、前記[9]の熱硬化性樹脂組成物。
[11]前記[9]又は[10]の熱硬化性樹脂組成物の硬化物。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、耐薬品性と柔軟性に優れる硬化物が得られる樹脂及びその製造方法、耐薬品性と柔軟性に優れる硬化物が得られる熱硬化性樹脂組成物、並びに耐薬品性と柔軟性に優れる硬化物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明において「フェノール系モノマー」は、ヒドロキシ基を有する芳香環を有する化合物である。芳香環としては、例えばベンゼン環、ナフタレン環が挙げられる。
【0019】
〔樹脂〕
本発明の一態様に係る樹脂(以下、「樹脂(A)」とも記す。)は、フェノール系モノマーが2価の架橋基(X)を介して連結されたものである。
2価の架橋基(X)は、典型的には、隣り合うフェノール系モノマーのヒドロキシ基を有する芳香環同士を連結する。すなわち、2価の架橋基(X)の一方の結合手が、隣り合うフェノール系モノマーのうち一方のフェノール系モノマーのヒドロキシ基を有する芳香環に結合し、他方の結合手が、他方のフェノール系モノマーのヒドロキシ基を有する芳香環に結合する。
【0020】
<フェノール系モノマー>
フェノール系モノマーは、ビスフェノールイミド及びビスナフトールイミドからなる群より選ばれる少なくとも1種のモノマー(m1)を含む。フェノール系モノマーの少なくとも一部がモノマー(m1)であることで、樹脂(A)を含む熱硬化性樹脂組成物の硬化物の耐薬品性、柔軟性、耐熱性が向上する。
【0021】
ビスフェノールイミドは、アミノフェノール化合物とカルボン酸二無水物とを脱水縮合することで得られる(特開2011-173827号公報参照)。
アミノフェノール化合物としては、2-アミノフェノール、3-アミノフェノール、4-アミノフェノール、4-アミノ-3-メチルフェノール、2-アミノ-4-メチルフェノール、3-アミノ-2-メチルフェノール、5-アミノ-2-メチルフェノール等が挙げられる。
カルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビフタル酸無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物等が挙げられる。
【0022】
ビスフェノールイミドの具体例としては、N,N’-ビス(2-ヒドロキシフェニル)-ピロメリットイミド、N,N’-ビス(3-ヒドロキシフェニル)-ピロメリットイミド、N,N’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-ピロメリットイミド、N,N’-ビス(2-ヒドロキシフェニル)-4,4’-オキシジフタルイミド、N,N’-ビス(3-ヒドロキシフェニル)-4,4’-オキシジフタルイミド、N,N’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4,4’-オキシジフタルイミド、N,N’-ビス(2-ヒドロキシフェニル)-3,3’-4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボジイミド、N,N’-ビス(3-ヒドロキシフェニル)-3,3’-4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボジイミド、N,N’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3’-4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボジイミド、N,N’-ビス(2-ヒドロキシフェニル)4,4’-ビフタルジイミド、N,N’-ビス(3-ヒドロキシフェニル)4,4’-ビフタルジイミド、N,N’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)4,4’-ビフタルジイミド、N,N’-ビス(2-ヒドロキシフェニル)4,4’-スルホニルジフタルイミド、N,N’-ビス(3-ヒドロキシフェニル)4,4’-スルホニルジフタルイミド、N,N’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)4,4’-スルホニルジフタルイミド等が挙げられる。
【0023】
ビスフェノールイミドとしては、構成される出発原料の入手のしやすさの点で、下記式(m11)で表される化合物が好ましい。
【0024】
【0025】
ただし、R2は下記式(21)~(26)のいずれかで表される基であり、R3は炭素数1~4のアルキル基であり、
b及びcはそれぞれ独立に1~2の整数であり、d及びeはそれぞれ独立に0~2の整数であり、b+dは1~3の整数であり、c+eは1~3の整数であり、d+eが2以上の場合、(d+e)個のR3はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0026】
【0027】
R2としては、式(21)、(22)又は(23)で表される基が好ましい。
R3は直鎖状でも分岐状でもよく、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基等が挙げられる。
b及びcはそれぞれ、1であることが好ましい。
d及びeはそれぞれ、0又は1であることが好ましい。
【0028】
ビスナフトールイミドは、アミノナフトール化合物とカルボン酸二無水物とを脱水縮合することで得られる。
アミノナフトール化合物としては、1-アミノ-2-ナフトール、3-アミノ-2-ナフトール、5-アミノ-1-ナフトール等が挙げられる。
カルボン酸二無水物としては、前記と同様のものが挙げられる。
【0029】
ビスフナフトールイミドとしては、構成される出発原料の入手のしやすさの点で、下記式(m12)で表される化合物が好ましい。
【0030】
【0031】
ただし、R2及びR3はそれぞれ前記と同様であり、
f及びgはそれぞれ独立に1~2の整数であり、h及びiはそれぞれ独立に0~2の整数であり、f+hは1~3の整数であり、g+iは1~3の整数であり、h+iが2以上の場合、(h+i)個のR3はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
f及びgはそれぞれ1であることが好ましい。
h及びiはそれぞれ0又は1であることが好ましい。
【0032】
モノマー(m1)としては、式(m11)で表される化合物及び式(m12)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、出発原料の工業的な入手のしやすさや溶剤溶解性の点で、式(m11)で表される化合物がより好ましい。
【0033】
フェノール系モノマーは、モノマー(m1)以外の他のフェノール系モノマーをさらに含むことが好ましい。他のフェノール系モノマーを含むことで、樹脂(A)の溶剤溶解性が高まる。
他のフェノール系モノマーとしては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール等が挙げられる。クレゾールとしては、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾールが挙げられる。キシレノールとしては、2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、3,5-キシレノールが挙げられる。
【0034】
フェノール系モノマーは、他のフェノール系モノマーのなかでも、クレゾールを含むことが好ましく、o-クレゾールを含むことが特に好ましい。クレゾール、特にo-クレゾールを含むことで、樹脂(A)の溶剤溶解性がより優れる。また、硬化物の経時安定性が高まり、経時で脆くなりにくくなる。
o-クレゾールとp-クレゾールとを併用してもよい。o-クレゾールとp-クレゾールとの比率によって樹脂(A)のアルカリ溶解性を調整できる。o-クレゾールの割合が増えると、樹脂(A)のアルカリ溶解性が高くなる傾向があり、p-クレゾールの割合が増えると、樹脂(A)のアルカリ溶解性が低くなる傾向がある。
【0035】
フェノール系モノマーの合計質量に対するモノマー(m1)の割合は、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。モノマー(m1)の割合が前記下限値以上であれば、硬化物の耐熱性や柔軟性がより優れる。
フェノール系モノマーが他のフェノール系モノマーを含む場合、フェノール系モノマーの合計質量に対するモノマー(m1)の割合は、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましい。モノマー(m1)の割合が前記上限値以下であれば、樹脂(A)の溶剤溶解性がより優れる。
【0036】
フェノール系モノマーがクレゾールを含む場合、フェノール系モノマーの合計質量に対するクレゾールの割合は、20~90質量%が好ましく、30~90質量%がより好ましく、45~85質量%がさらに好ましい。クレゾールの割合が前記範囲内であれば、樹脂(A)の溶剤溶解性、硬化物の経時安定性がより優れる。
【0037】
フェノール系モノマーがo-クレゾールを含む場合、フェノール系モノマーの合計質量に対するo-クレゾールの割合は、20~90質量%が好ましく、30~90質量%がより好ましく、45~85質量%がさらに好ましい。o-クレゾールの割合が前記範囲内であれば、樹脂(A)の溶剤溶解性、硬化物の経時安定性がより優れる。
【0038】
フェノール系モノマーがp-クレゾールを含む場合、フェノール系モノマーの合計質量に対するp-クレゾールの割合は、5~60質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましく、20~40質量%がさらに好ましい。
【0039】
<2価の架橋基(X)>
2価の架橋基(X)は、-CH2-R1-CH2-で表される架橋基(X1)を含む。フェノール系モノマーが架橋基(X1)を介して連結されることで、硬化物の柔軟性が向上する。
ただし、R1は、置換基を有していてもよいフェニレン基、又は置換基を有していてもよいビフェニレン基である。
フェニレン基としては、о-フェニレン基、m-フェニレン基、p-フェニレン基等が挙げられ、原料の入手のしやすさの点から、p-フェニレン基が好ましい。
ビフェニレン基としては、4,4’-ビフェニレン基、2,4’-ビフェニレン基等が挙げられ、原料の入手のしやすさの点から、4,4’-ビフェニレン基が好ましいい。
フェニレン基又はビフェニレン基における置換基としては、例えば炭素数1~4のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1~4のアルコキシ基が挙げられる。樹脂(A)にアルカリ溶解性が求められる場合は、ヒドロキシ基が好ましい。フェニレン基又はビフェニレン基が有する置換基は1種でも2種以上でもよい。
【0040】
樹脂(A)が2価の架橋基(X)を2以上有する場合、架橋基(X1)以外の他の架橋基をさらに含んでいてもよい。
他の架橋基としては、例えば-CH2-で表される架橋基(X2)、-CHR4-で表される架橋基(X3)が挙げられる。ただし、R4は、置換基を有していてもよいフェニル基である。置換基としては、例えば炭素数1~4のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1~4のアルコキシ基が挙げられる。
【0041】
他の架橋基としては、架橋基(X2)が好ましい。架橋基(X2)は、後述する樹脂の製造方法において架橋基材料としてホルムアルデヒドを用いることにより形成される。架橋基材料がホルムアルデヒドを含むと、樹脂(A)の分子量やアルカリ溶解性を制御しやすい。
【0042】
樹脂(A)中の全ての2価の架橋基(X)の合計質量に対する架橋基(X1)の割合は、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。架橋基(X1)の割合が前記下限値以上であれば、硬化物の柔軟性がより優れる。
2価の架橋基(X)が他の架橋基を含む場合、全ての2価の架橋基(X)の合計質量に対する架橋基(X1)の割合は、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましい。
【0043】
2価の架橋基(X)が架橋基(X2)を含む場合、全ての2価の架橋基(X)の合計質量に対する架橋基(X2)の割合は、10~80質量%が好ましく、15~70質量%がより好ましく、20~60質量%がさらに好ましい。
【0044】
<樹脂(A)の特性>
樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、3000~100000であることが好ましく、5000~50000であることがより好ましい。重量平均分子量が前記範囲内であれば、硬化物の耐薬品性、柔軟性がより優れる。
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算の値である。
【0045】
樹脂(A)は、後述する実施例に記載の測定方法により測定されるアルカリ溶解速度が5~4000Å/秒であることが好ましく、10~2000Å/秒であることがより好ましい。アルカリ溶解速度が前記範囲内であれば、感光性絶縁膜材料等の用途に有用である。
【0046】
<樹脂の製造方法>
樹脂(A)は、例えば、フェノール系モノマーと架橋基材料とを反応させる工程を含む製造方法により製造できる。フェノール系モノマーと架橋基材料とを反応させることで、フェノール系モノマーが、架橋基材料に由来する2価の架橋基(X)を介して連結される。
フェノール系モノマーは前記したとおりである。
【0047】
架橋基材料は、フェノール系モノマーとの反応により2価の架橋基(X)を形成する。
架橋基材料は少なくとも、Y1-CH2-R1-CH2-Y2で表される化合物(以下、「化合物(1)」とも記す。)を含む。化合物(1)は、フェノール系モノマーとの反応により架橋基(X1)を形成する。
化合物(1)において、R1は、架橋基(X1)におけるR1と同様である。
Y1及びY2はそれぞれ独立に、炭素数1~4のアルコキシ基、ヒドロキシ基、又はハロゲン原子である。炭素数1~4のアルコキシ基は直鎖状でも分岐状でもよい。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0048】
化合物(1)としては、例えば、p-キシレングリコールジメチルエーテル(以下、「PXDM」とも記す。)等のp-キシレングリコールジアルキルエーテル、m-キシレングリコールジアルキルエーテル、1,4-ビス(ハロゲン化メチル)ベンゼン、2,6-ジヒドロキシメチル-4-メチルフェノール(以下、「DMLPC」とも記す。)、4,4’-ビス(メトキシメチル)ビフェニル(以下、「BMMB」とも記す。)等の4,4’-ビス(アルコキシメチル)ビフェニル、2,2’-ビス(アルコキシメチル)ビフェニル、2,4’-ビス(アルコキシメチル)ビフェニル、4,4’-ビス(ハロゲン化メチル)ビフェニル、2,2’-ビス(ハロゲン化メチル)ビフェニル、2,4’-ビス(ハロゲン化メチル)ビフェニルが挙げられる。これらの化合物は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0049】
架橋基材料は、化合物(1)以外の他の架橋基材料をさらに含んでいてもよい。
他の架橋基材料としては、例えば、ホルムアルデヒド、サリチルアルデヒド、p-ヒドロキシベンズアルデヒド等のアルデヒドが挙げられる。これらのアルデヒドは1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
他の架橋基材料としては、ホルムアルデヒドが好ましい。架橋基材料がホルムアルデヒドを含むと、樹脂(A)の分子量やアルカリ溶解性を制御しやすい。
【0050】
架橋基材料の合計質量に対する化合物(1)の割合は、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。化合物(1)の割合が前記下限値以上であれば、硬化物の柔軟性がより優れる。
架橋基材料が他の架橋基材料を含む場合、架橋基材料の合計質量に対する化合物(1)の割合は、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましい。
【0051】
架橋基材料がホルムアルデヒドを含む場合、架橋基材料の合計質量に対するホルムアルデヒドの割合は、10~80質量%が好ましく、15~70質量%がより好ましく、20~60質量%がさらに好ましい。
【0052】
フェノール系モノマーと架橋基材料との反応において、フェノール系モノマーに対する架橋基材料のモル比(架橋基材料/フェノール系モノマー)は、0.6~1.0であることが好ましく、0.7~0.95であることがより好ましい。架橋基材料のモル比が前記範囲内であれば、硬化物の耐薬品性と柔軟性のバランスがより優れる傾向がある。フェノール系モノマーに対する架橋基材料のモル比が低すぎると、柔軟性が発現しにくくなるおそれがある。フェノール系モノマーに対する架橋基材料のモル比が高すぎると、反応中にゲル化しやすくなったり、架橋基材料の残留により経時安定性が低下したりするおそれがある。
【0053】
フェノール系モノマーと架橋基材料との反応は、酸触媒の存在下で行ってもよい。
反応を酸触媒の存在下で行うと、フェノール系モノマーと架橋基材料との反応速度が向上する。特に化合物(1)におけるY1及びY2がアルコキシ基の場合は、酸触媒の存在下で反応を行うことが好ましい。
Y1及びY2がヒドロキシ基又はハロゲン原子である場合は、酸触媒の不在下で反応を行ってもよい。Y1及びY2がハロゲン原子の場合は、反応時の熱によりハロゲン原子が脱離して酸(HY1、HY2)が発生し、この酸が酸触媒として機能するため、酸触媒の不在下で反応を行っても反応速度が充分に速くなる。
【0054】
酸触媒としては、反応が進行すれば特に制限はなく、例えば硫酸、塩酸等の鉱酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の有機酸が挙げられる。酸触媒は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
酸触媒の使用量は、例えばフェノール系モノマー100質量部に対して2~30質量部である。
【0055】
フェノール系モノマーと架橋基材料との反応は、溶媒の存在下で行ってもよい。
フェノール系モノマーと架橋基材料との反応に用いる溶媒(以下、「反応溶媒」とも記す。)としては、特に制限はないが、フェノール系モノマーを溶解させる溶媒が好ましい。
反応溶媒の例としては、ガンマブチロラクトン(以下、「GBL」とも記す。)、N-メチル-2-ピロリドン(以下、「NMP」とも記す。)、ジメチルアセトアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
【0056】
フェノール系モノマーと架橋基材料との反応温度は、60~220℃が好ましく、120~200℃がより好ましい。反応温度が低すぎると反応速度が遅く、反応温度が高すぎると反応中にゲル化しやすくなる。
反応時間は、例えば4~24時間である。
反応の終了時、必要に応じて、反応系にアルカリを添加して酸触媒を中和してもよい。
【0057】
上記のようにして、樹脂(A)を含む反応生成物が得られる。
必要に応じて、反応生成物に対し、蒸留等による未反応の原料の除去、濃縮、精製(析出、洗浄、カラムクロマトグラフィー等)等の処理を行ってもよい。
【0058】
<樹脂(A)の用途>
樹脂(A)は、硬化剤と配合することで熱硬化させることができる。得られる硬化物は、電子デバイスの絶縁膜、平坦化膜、封止材料等の用途に使用できる。
ただし、樹脂(A)の用途はこれに限定されるものではなく、例えば成型材料、合板、砥石等の連結剤等の用途に使用できる。
【0059】
〔熱硬化性樹脂組成物〕
本発明の一態様に係る熱硬化性樹脂組成物(以下、「本組成物」とも記す。)は、前記した樹脂(A)と、硬化剤とを含む。
本組成物は、必要に応じて、溶媒をさらに含んでいてもよい。
本組成物は、必要に応じて、上記以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0060】
硬化剤としては、フェノール樹脂等の多価ヒドロキシ樹脂の硬化剤として公知の硬化剤であってよく、例えば多官能アルコキシメチル化合物、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0061】
多官能アルコキシメチル化合物は、アルコキシメチル基を2以上有する化合物である。アルコキシメチル基におけるアルコキシ基は直鎖状でも分岐状でもよく、アルコキシ基の炭素数は1~6が好ましい。
多官能アルコキシメチル化合物としては、例えば、ポリアルコキシメチルメラミン、ポリアルコキシメチルベンゾグアナミン、ポリアルコキシメチルウレア、ポリアルコキシメチルグリコールウリル、ポリアルコキシメチルフェノール類等が挙げられる。ポリアルコキシメチルメラミンやポリアルコキシメチルベンゾグアナミンとしては、例えば、特開2008-304902号公報に記載の式(1)のメラミン類及び式(2)のベンゾグアナミン類が挙げられる。ポリアルコキシメチルウレアやポリアルコキシメチルグリコールウリルとしては、例えば、特開2009-215328号公報に記載の式(6)、(7)又は(8)で表される化合物が挙げられる。多官能アルコキシメチル化合物の具体例としては、ヘキサメトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラメトキシメチルビフェノール、ヘキサメトキシメチルトリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン等が挙げられる。
【0062】
エポキシ樹脂としては、公知のエポキシ樹脂であってよく、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有エポキシ樹脂、リン原子含有エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
硬化剤としては、硬化物の耐薬品性がより優れる点で、多官能アルコキシメチル化合物が好ましい。多官能アルコキシメチル化合物の中でも、ヘキサメトキシメチルメラミンが好ましい。
硬化剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
硬化剤の含有量は、樹脂(A)の100質量部に対し、5~30質量部が好ましく、10~20質量部がより好ましい。
【0065】
本組成物における溶媒(以下、「希釈溶媒」とも記す。)としては、樹脂(A)及び硬化剤を溶解できるものが好ましい。
希釈溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、N,N-ジメチルホルムアミド、NMP、ブタノール、乳酸エチル(以下、「EL」とも記す。)、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらの希釈溶媒はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
希釈溶媒の沸点は、250℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましく、160℃以下がさらに好ましい。希釈溶媒の沸点が前記上限値以下であれば、熱硬化性樹脂組成物を硬化させる際に希釈溶媒を揮発させやすく、硬化物中に希釈溶媒が残存しにくい。
希釈溶媒の沸点の下限は特に限定されないが、例えば60℃である。
沸点は、圧力1atmのもとでの値である。
【0067】
本組成物は、樹脂(A)、硬化剤、必要に応じて溶媒、必要に応じて他の成分を配合することにより調製できる。
【0068】
本組成物の用途に特に制限はなく、公知の熱硬化性成形材料の用途と同様であってよい。例えば封止材料、フィルム材料、積層材料、半導体絶縁材料等が挙げられる。積層材料は、積層板の製造に用いられる材料である。
【0069】
〔硬化物〕
本発明の一態様に係る硬化物は、本組成物が硬化されたものであり、樹脂(A)と硬化剤との反応物を含む。
【0070】
本態様の硬化物は、本組成物を熱硬化することにより製造できる。
本組成物を熱硬化する際の加熱温度は、100~350℃が好ましく、150~250℃がより好ましい。加熱時間は、加熱温度によっても異なるが、例えば15~120分間である。
【実施例】
【0071】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。以下において「部」は「質量部」を示す。
【0072】
[重量平均分子量(Mw)の測定]
樹脂の重量平均分子量(以下、「Mw」と記す。)は、東ソー社製 ゲルパーミエーションクロマトグラフィー HLC-8220 GPCを用いて測定した。Mwは標準ポリスチレン換算の値を用いた。
【0073】
[アルカリ溶解速度の測定]
樹脂を溶媒に溶解して固形分20質量%の樹脂溶液を調製した。3.5インチシリコンウェハー上に、調製した樹脂溶液をスピンコーターにて塗布し、次いでホットプレートを用いて110℃で1分間プリベークして塗膜を形成した。塗膜の膜厚を、Nanometrics社製 光干渉式膜厚測定装置 AFT M5100を用いて測定した。
次いで、塗膜が形成されたシリコンウェハーを、23℃の環境下で2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液に浸漬し、塗膜が完全に溶解するまでの時間を測定し、下記式によりアルカリ溶解速度(以下、「ADR」と記す。)を算出した。
ADR(Å/秒)=塗膜の膜厚(Å)/塗膜が完全に溶解するまでの時間(秒)
なお、本実施例においては、溶媒として、樹脂A1~A12についてはNMPを用い、樹脂A13~A26についてはELを用いた。樹脂が2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液に溶解しなかった場合は「不溶」とした。
【0074】
[耐薬品性の評価]
3.5インチシリコンウェハー上に、熱硬化性樹脂組成物をスピンコーターにて塗布し、次いでホットプレートを用いて120℃で3分間プリベークし、オーブンにて200℃で2時間熱硬化させて硬化被膜(硬化物)を形成した。硬化被膜の膜厚を、Nanometrics社製 光干渉式膜厚測定装置 AFT M5100を用いて測定した。
次いで、硬化被膜が形成されたシリコンウェハーを23℃の環境下でアセトンに1時間浸漬した後、シリコンウェハーを引き上げ、15分間風乾した。風乾後、シリコンウェハー上に硬化被膜が剥離せずに残存しているかどうかを観察し、硬化被膜が残存している場合は硬化被膜の膜厚を上記と同様に測定し、下記式により膜厚の変動率を算出した。
膜厚の変動率(%)=(アセトン浸漬前の硬化被膜の膜厚(Å)-アセトン浸漬後の硬化被膜の膜厚(Å))/アセトン浸漬前の硬化被膜の膜厚(Å)×100
アセトン浸漬前後の硬化被膜の膜厚の変動率及び剥離の有無から、下記基準で耐薬品性を評価した。
◎:膜厚の変動率が±5%未満。
○:膜厚の変動率が±5%以上±10%未満。
△:膜厚の変動率が±10%以上±15%未満。
×:膜厚の変動率が±15%以上、又は硬化被膜が剥離した。
【0075】
[柔軟性の評価]
アルミニウム板上に、熱硬化性樹脂組成物をバーコーターにて塗布し、オーブンにて200℃で2時間熱硬化させて膜厚1μmの硬化膜を形成した。硬化膜が形成されたアルミニウム板を、硬化膜側を外側にし、45°又は90°の角度で折り曲げた。その後、硬化膜の状態を目視で観察し、以下の基準で柔軟性を評価した。
◎:90°折り曲げにてヒビ割れなし。
○:45°折り曲げにてヒビ割れ無し、90°折り曲げにてヒビ割れ有り。
×:45°折り曲げにてヒビ割れ有り。
【0076】
[合成例1]
ディーン・スターク装置を備えた0.5L3口フラスコに、ビスフェノールイミドとしてN,N’-ビス(3-ヒドロキシフェニル)-ピロメリットイミド(以下、「BisPI-MAP」と記す。)の40.00部、架橋基材料として1,4-ビス(メトキシメチル)ビフェニル(以下、「BMMB」と記す。)の21.81部、反応溶媒としてNMPの123.70部、酸触媒としてp-トルエンスルホン酸(以下、「PTS」と記す。)の4.72部を加え、攪拌下、180℃にて反応副生物であるメタノールを脱液除去しながら6時間反応を行った後、40℃に冷却した。冷却後の反応液をイオン交換水1Lに滴下し、析出した樹脂を濾別した。濾別した樹脂を真空乾燥機にて80℃で12時間乾燥し、樹脂A1を得た。得られた樹脂のMw及びADRは表2に示す通りであった。
【0077】
[合成例2~26]
原料を表1に示すように変更した以外は合成例1と同様の操作を行って樹脂A2~A26を得た。得られた樹脂のMw及びADRは表2に示す通りであった。
【0078】
【0079】
【0080】
使用したフェノール系モノマー及び架橋基材料の構造を以下に示す。
【0081】
【0082】
[実施例1]
50mLポリエチレン製容器に、合成例1で得られた樹脂A1の10.0部、ヘキサメトキシメチルメラミンの1.0部、NMPの25.0部を加え、攪拌混合して熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0083】
[実施例2~30]
樹脂、硬化剤、溶媒を表3に示すように変更した以外は実施例1と同様の操作を行って熱硬化性樹脂組成物を得た。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、DIC社のエピクロン850を用いた。
なお、NMPの沸点は202℃であり、ELの沸点は154℃である。
【0084】
[合成例27]
窒素置換を行った1L3口フラスコに、p-t-ブトキシスチレンの88.2部、反応溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)の88.2部、重合開始剤としてV-601(富士フイルム和光純薬(株)、商品名)の10.3部を加え、攪拌下、80℃にて8時間反応を行った。反応終了後、35質量%塩酸の10部を加え、還流下にて6時間反応を行い、ポリp-ヒドロキシスチレン(以下、「樹脂B1」と記す。)の溶液を得た。得られた溶液を純水の580部に添加し、析出物を濾別し、真空乾燥機にて60℃で8時間乾燥して樹脂B1の粉末を得た。
【0085】
[比較例1]
合成例27で得られた樹脂B1の粉末の10.0部を乳酸エチルの25.0部に溶解し、硬化剤としてヘキサメトキシメチルメラミンの1.0部を加えて熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0086】
[比較例2~3]
硬化剤を表3に示すように変更した以外は比較例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を得た。
【0087】
得られた熱硬化性樹脂組成物について耐薬品性の評価、柔軟性の評価を行った。結果を表3に示す。
【0088】
【0089】
実施例1~30の熱硬化性樹脂組成物の硬化物は、耐薬品性及び柔軟性を有していた。
一方、樹脂B1とヘキサメトキシメチルメラミンとを組み合わせた比較例1~2の熱硬化性樹脂組成物の硬化物は、柔軟性に劣っていた。
樹脂B1とビスフェノールA型エポキシ樹脂とを組み合わせた比較例3の熱硬化性樹脂組成物の硬化物は、耐薬品性に劣っていた。