(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】ヒータユニット及びその応用品
(51)【国際特許分類】
H05B 3/10 20060101AFI20240729BHJP
H05B 3/20 20060101ALI20240729BHJP
H05B 3/16 20060101ALN20240729BHJP
【FI】
H05B3/10 A
H05B3/20 312
H05B3/16
(21)【出願番号】P 2020119636
(22)【出願日】2020-07-13
【審査請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000129529
【氏名又は名称】株式会社クラベ
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 達規
(72)【発明者】
【氏名】上瀬 大介
(72)【発明者】
【氏名】大杉 朋輝
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/225745(WO,A1)
【文献】実公昭49-001088(JP,Y1)
【文献】特開2006-236904(JP,A)
【文献】特開2017-220308(JP,A)
【文献】実開平06-033389(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/10
H05B 3/16
H05B 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面状の基材と、該基材に形成された導電体と、からなるヒータユニットであって、
リード部と、複数の環状発熱部を有し、
上記環状発熱部は中心部を欠いた形状の上記基材と、上記導電体からなり、
上記リード部における導電体と上記複数の環状発熱部における導電体が連続しており、上記リード部における基材と上記複数の環状発熱部における基材が連続しているヒータユニット。
【請求項2】
上記複数の環状発熱部における一つの環状発熱部ともう一つの環状発熱部との境界部で折り曲げられ、上記一つの環状発熱部と上記もう一つの環状発熱部とが重ねられて配置される請求項1記載のヒータユニット。
【請求項3】
上記環状発熱部における上記導電体が、折り返し部を有しており、複数の線により環形状を形成している請求項1または2記載のヒータユニット。
【請求項4】
上記リード部及び上記複数の環状発熱部における上記導電体が、全て直列接続されている請求項1~3何れか記載のヒータユニット。
【請求項5】
請求項1~4何れか記載のヒータユニットが、レンズの近傍に配置されているカメラユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両におけるカメラユニット等に付着した結露、氷、霜、水滴を除去するとともに、曇り、露、氷、霜の付着を防止するためのヒータユニット、及び、このヒータユニットが備えられたカメラユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今においては、自動運転や運転補助の装置として、車両前方の他車両や障害物の有無の検知に種々のカメラユニットが使用されている。また、車両側方や車両後方を視認する手段として、従来のミラーだけでなく、カメラ装置により映像撮影をして、その映像を車内モニターに映し出すものもある。また、事故や盗難等の状況を撮影し、その後の現場検証の資料とするためのいわゆるドライブレコーダと称されるものもある。これらは、車室内に配置されるものもあれば、車室外に配置されるものもある。ここで、車室内や周辺雰囲気の湿度が高い場合、カメラユニットと周辺雰囲気の温度差が大きい場合、或いは、レンズの温度が露点を下回る場合には、レンズ表面で結露してレンズに曇りが生じたり、露が付着したりすることがある。また、周辺雰囲気の温度が0℃を下回る場合には、レンズに霜や氷が付着することがある。それらを防止するため、カメラユニットのレンズ近傍に、レンズを加熱するためのヒータユニットが備えられるものがある。このヒータユニットから発せられる熱によって、レンズに付着した曇り、露、霜、氷などは溶融、蒸発して除去される。また、この熱によって、レンズが露点以下に下がることを防止して結露を防ぐこともできる。これにより、カメラユニットによる撮影は鮮明なものとなる。このような技術として、例えば特許文献1,2などが参照できる。
【0003】
また、本発明に関連する技術として、例えば、特許文献3,4などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-325603公報:京セラ
【文献】WO2019/225745公報:マクセル
【文献】特開2019-114330公報:ニフコ、クラベ
【文献】特開2019-145498公報:クラベ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、車載用のカメラユニットにおけるレンズは、直径が10mmにも満たないような小さい部品であり、レンズ周辺のスペースも極限まで削られているため、これに備えられるヒータユニットも同様に小さなものとなる。その場合、通常の導電体のパターン設計では、ヒータユニットの抵抗値を大きくすることが困難となるため、特に低電圧の専用電源を用意しない限り、電力量が大きくなり、過加熱となってしまうことになる。過加熱となると、レンズやレンズの保持部材に熱的な歪が生じてしまい、光学設計に狂いが生じてしまうことになる。
【0006】
本発明はこのような従来技術の問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、小さい寸法であっても過加熱とならず、省電力化や省スペース化にも寄与できるヒータユニットと、それを備えたカメラユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するべく、本発明によるヒータユニットは、面状の基材と、該基材に形成された導電体と、からなるヒータユニットであって、リード部と、複数の環状発熱部を有し、上記リード部における導電体と上記複数の環状発熱部における導電体が連続しており、上記リード部における基材と上記複数の環状発熱部における基材が連続しているものである。
また、上記複数の環状発熱部における一つの環状発熱部ともう一つの環状発熱部との境界部で折り曲げられ、上記一つの環状発熱部と上記もう一つの環状発熱部とが重ねられて配置されることが考えられる。
また、上記環状発熱部における上記導電体が、折り返し部を有しており、複数の線により環形状を形成していることが考えられる。
また、上記リード部及び上記複数の環状発熱部における上記導電体が、全て直列接続されていることが考えられる。
本発明によるカメラユニットは、上記のヒータユニットが、レンズの近傍に配置されているものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、連続した複数の環状発熱部を有することで、導体線の総延長が長くなり、必要な抵抗値を得ることができるようになる。そのため、過加熱とならないヒータ設計をすることができる。
また、環状発熱部同士の境界部で折り曲げて重ねることで、省スペース化にも寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態によるヒータユニットの構成を示す平面図である。
【
図2】本発明の他の形態によるヒータユニットの構成を示す平面図である。
【
図3】本発明の他の形態によるヒータユニットの構成を示す平面図である。
【
図4】本発明の他の形態によるヒータユニットの構成を示す平面図である。
【
図5】本発明の他の形態によるヒータユニットの構成を示す平面図である。
【
図6】本発明の他の形態によるヒータユニットの構成を示す平面図である。
【
図7】本発明によるカメラユニットの概要を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
まず、
図1に示すように、厚さ28μmのポリアミドイミドフィルムからなる基材3がある。本発明において用いられる基材3は、合成樹脂などの従来公知の高分子材料をフィルム状にしたもので、例えば、ポリアミドイミドフィルムの他、PETフィルム(ポリエステルフィルム)、ポリイミドフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルムなどが好ましく用いられる。
【0011】
この基材3上には、ステンレス鋼(SUS304)の箔をエッチング加工することにより得られた厚さ30μmの導電体1が形成される。上記導電体1としては、ステンレス鋼の他、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、ニッケルクロム、などの金属が好ましく用いられる。また、カーボンや導電樹脂などを用いても良い。これらは、例えば、エッチング加工、打抜き加工などの処理によりパターン化され、1枚の箔状のものとして得られる。また、蒸着や塗布などの工法により、導電体のパターンを形成しても良い。
図1において導電体1を黒塗り部にて示す。
【0012】
本発明におけるヒータユニットは、リード部7と複数の環状発熱部5a,5bを有しており、このリード部7と複数の環状発熱部5a,5bは連続して形成されている。導電体1におけるリード部7に存在する部分は、幅が広いことから抵抗値が低くなり実質的に発熱しない部分となる。また、導電体1における環状発熱部5a,5bに存在する部分は、幅が狭いことから抵抗値が高くなり発熱に寄与する部分となる。また、導電体1は、折り返し部1aを有しており、複数の線(本実施の形態では2本の線)により環形状を形成している。このような折り返し部を設けることで、導電体1の総延長が長くなり、導電体1の抵抗値を上げることができる。
【0013】
基材3については、導電体1を覆うように、導電体1よりやや幅広の形状となり、基材3における環状発熱部5a,5bに存在する部分は、環形状となっており中心部を欠いた形状となっている。また、本実施の形態に置いては、2枚の基材3によって、導電体1が挟持された構成となっており、導電体1は基材3によって絶縁されている。
【0014】
環状発熱部は、複数(本実施の形態では2つの環状発熱部5a,5b)形成されている。この2つの環状発熱部5a,5bの境界部5fで折り曲げ、2つの環状発熱部5a,5bを重ねて使用することができる。2つの環状発熱部5a,5bを重ねた際、それぞれの環状発熱部5a,5bにおける発熱体1の折り返し部1aの位置がずれており、重ならないことが好ましい。また、本実施の形態に置いては、リード部7、環状発熱部5a及び環状発熱部5bにおける導電体1が、全て直列接続されており、抵抗値は8.14Ωとなっている。
【0015】
また、基材3には、他部材と接着するための接着層(図示しない)が形成されていてもよい。接着層を構成する材料は種々のものが使用できるが、ヒータユニット31の使用環境やヒータユニット31の発熱特性に応じて設計される。また、特にヒータユニット31をカメラユニットに設置する場合、加熱により揮発する物質を含まないものが好ましい。
【0016】
上記のようにして得られた導電体1及び基材3については、
図1に示すようなパターン形状となる。ここで、リード部7における導電体1の端部2ヶ所は露出され、それぞれリード線25に接続され、電源や温度制御装置等に接続される。温度制御装置としては、温度制御回路の他、例えば、サーモスタット、サーミスタ、温度ヒューズ等も含まれる。
【0017】
このようなヒータユニット31は、カメラユニット内に取り付けることができる。
図7を参照してカメラユニットの例を説明する。
図7は、カメラユニット60の断面を概略的に示した図であり、第1レンズ61、第2レンズ62、レンズ群63が、鏡筒65内に配置され、鏡筒65の底部には、光学フィルタ66が配置され、これらはカメラケース69内に配置される。また、カメラケース69の底部には、第1レンズ61、第2レンズ62及びレンズ群63の光軸と直行するようにイメージセンサを含む撮像基板67が配置されている。また、第1レンズ61と鏡筒65が接する部分、及び、鏡筒65とカメラケース69が接する部分には、Oリング68が配置され、カメラユニット内への水等の侵入を防止している。ヒータユニット31は、環状発熱部5aと環状発熱部5bが重ねられ、環状発熱部5a,5bが第1レンズ61の周縁部に配される状態で、第1レンズ61と第2レンズ62の間に、挟み込まれるようにして設置される。ヒータユニット31のリード部7とリード線25は、鏡筒65に形成された孔から、鏡筒65とカメラケース69の間を通り、所定の電源に接続される。
【0018】
車室内や周辺雰囲気の湿度が高い場合、カメラユニットと周辺雰囲気の温度差が大きい場合、或いは、周辺雰囲気の温度が0℃を下回る場合、曇り、露、霜、氷などが第1レンズ表面に付着することがある。この曇り、露、霜、氷などによって光が散乱し、カメラユニット60による鮮明な撮影が阻害されるおそれがある。そのため、ヒータユニット31が第1レンズ61と第2レンズ62の間に設置され、ヒータユニット31から発せられる熱によって第1レンズ61を加熱することで、曇り、露、霜、氷が除去されることになる。また、ヒータユニット31からの熱によって鏡筒65内部が加熱され、特に寒冷時などにおいても、鏡筒65内部を常温に近い温度とすることができる。これにより、第1レンズ61、第2レンズ62、レンズ群63や鏡筒65の冷却による熱収縮によって光学特性が変化してしまうことを防止することもできる。
【0019】
本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。例えば、導電体1について、箔状のものでなく線状のものとすることもできる。このような線状の導電体1として、例えば、銀入り銅合金線、錫入り銅合金線、軟銅線、銅-ニッケル合金線、これらに錫メッキや銀メッキ等のメッキを施したもの、ニッケル-クロム合金線、鉄-クロム合金線、ステンレス鋼線、アルミニウム合金線、カーボン線等、種々の導体線を使用することができる。また、これらの導体線に絶縁被膜を形成したものを使用しても良い。これらについては、上記した特許文献4を参照することができる。
【0020】
本実施の形態では、導電体1が2枚の基材3によって挟持され絶縁された構成になっているが、導電体1が基材3で絶縁されず、導電体1の片面が露出した状態となっているものであっても良い。例えば、ヒータユニット31が完全に密封された箇所に設置される場合、防水特性も不要となり、導電体1を完全に絶縁する必要はなくなる。但し、この場合、境界部5fで折り曲げる際に、導電体1が露出している面を内側にして折り曲げるのではなく、導電体1が露出している面を外側にして折り曲げる必要がある。また、導電体1が2枚の基材3によって挟持されているような形態の場合、基材3が透明な材料であると、万が一導電体1に断線等の異常が生じた際に、目視で確認できるようになるため好ましい。
【0021】
本実施の形態では、2つの環状発熱部5a,5bを有するものであったが、環状発熱部は3つ以上であってもよく、また、環状発熱部が連結する形態も、本実施の形態のような直線状のものだけでなく、種々の態様が考えられる。例えば、
図2に示すように、3つの環状発熱部5a,5b,5cが直線状に連結した形態、
図3に示すように、環状発熱部5aと環状発熱部5bの接続方向が、リード部7と環状発熱部5aの接続方向と90度折れている形態、
図4,5に示すように、環状発熱部5aに2つの環状発熱部5b,5cが連結している形態などが考えられる。
図2~5において導電体1を黒塗り部にて示す。
【0022】
また、環状発熱部において、
図6に示すように、導電体1が折り返し部1aを有しておらず、1つの線により環形状を構成するものも考えられる。
図6において導電体1を黒塗り部にて示す。また、折り返し部1aにおいて、1回の折り返しだけでなく、2回以上の折り返しを行っても良い。また、環状発熱部について、上記実施の形態では略円環形としたが、例えば、三角形、四角形等の多角形や楕円、扇形等、他の形状であっても良い。
【0023】
本実施の形態では、この2つの環状発熱部5a,5bの境界部5fにおいて、導電体1が直線形状となっているが、境界部5fはこのような形状となっていなくても良く、
図3に示すように、環状の導電体1同士が接するような形状となっていても良い。また、
図5に示すように、境界部5fにおいて、導電体1の幅を広くし、発熱に寄与しない部分とすることも考えられる。
【0024】
また、被加熱部への熱伝導の効率を上げるため、被加熱部に接する面と逆の面に、発泡樹脂等からなる断熱シートを設置することも考えられる。この場合、断熱特性、耐熱性、衝撃吸収性、外観など、種々の特性が異なるような複数の材料を組合せた断熱シートを使用することもできる。また、導電体1からの発熱を均一化するため、均熱部材を設置することも考えられる。均熱部材としては、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、ステンレス鋼等の箔などを使用することができる。
【0025】
また、カメラユニット60において、ヒータユニット31を配置する箇所として、上記実施の形態では第1レンズ61と第2レンズ62の間としたが、勿論その他の箇所に配置しても良い。例えば、第1レンズ61の周囲、鏡筒65の内面、カメラケース69の内面等、種々の箇所に設置することができる。
【0026】
また、本発明のヒータユニット31は、カメラユニットだけでなく、種々のセンサユニットに適用することができる。例えば、レーダーユニット、レーザーライダーユニット、超音波センサユニットなどにも使用することができる。より具体的には、レーダーユニットの覆いであるレドームにヒータユニットを取付けることも考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上詳述したように本発明によれば、十分な安全機能を有するとともに、省電力化や省スペース化にも寄与できるヒータユニットを得ることができる。このようなヒータユニットは、例えば、家庭用暖房器具、自動車内装用暖房装置、産業用加熱装置、各種除雪解氷装置、防曇装置、加熱調理器具などの熱源として好適に使用することができる。また、被加熱物に接して使用されるような伝導伝熱用のヒータとしてだけでなく、被加熱物から距離をおいて設置されるような輻射伝熱用のヒータとしても使用することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 導電体
1a 折り返し部
3 基材
5a,5b,5c 環状発熱部
7 リード部
31 ヒータユニット