(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】弾性波デバイス
(51)【国際特許分類】
H03H 9/145 20060101AFI20240729BHJP
H03H 9/25 20060101ALI20240729BHJP
H03H 9/02 20060101ALI20240729BHJP
H03H 9/17 20060101ALI20240729BHJP
H01L 23/00 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
H03H9/145 D
H03H9/25 A
H03H9/02 A
H03H9/17 F
H01L23/00 C
(21)【出願番号】P 2020121309
(22)【出願日】2020-07-15
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎本 誠
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2003/069778(WO,A1)
【文献】特開2017-212628(JP,A)
【文献】特開2018-207144(JP,A)
【文献】特開2017-204827(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0036416(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/00- 9/76
H01L 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板上に設けられた弾性波素子と、
前記第1基板上に設けられ、前記弾性波素子に接続された第1配線と、
前記第1基板上に設けられ、平面視において前記弾性波素子の少なくとも一部を囲み、接地された複数の第2配線と、
を備え
、
前記複数の第2配線は、前記第1基板上に絶縁層を介し設けられている弾性波デバイス。
【請求項2】
前記弾性波素子が設けられた前記第1基板の第1面と空隙を挟み設けられた第2面を有する第2基板と、
前記第2面に設けられた素子と、
前記第2面に設けられ、前記素子に接続された第3配線と、
を備え、
前記複数の第2配線のうち少なくとも1つの第2配線が囲む前記第1基板の領域は平面視において前記素子および前記第3配線の少なくとも一部に重なる請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項3】
入力端子と出力端子との間の直列経路に設けられた複数の直列共振器と、一端が前記直列経路に接続され、他端が接地された1または複数の並列共振器と、を備えるフィルタを備え、
前記複数の第2配線のうち隣接する第2配線は、平面視において前記複数の直列共振器のうちの異なる直列共振器のそれぞれの少なくとも一部を囲む請求項1または2に記載の弾性波デバイス。
【請求項4】
入力端子と出力端子との間の直列経路に設けられた複数の直列共振器と、一端が前記直列経路に接続され、他端が接地された1または複数の並列共振器と、を備えるフィルタを備え、
前記複数の第2配線のうち隣接する第2配線は、平面視において前記複数の直列共振器のうち隣接する直列共振器のそれぞれの少なくとも一部を囲む請求項1または2に記載の弾性波デバイス。
【請求項5】
前記弾性波素子を含み、共通端子と第1端子との間に接続された第1フィルタと、
前記第2面に設けられ、前記共通端子と第2端子との間に接続された第2フィルタと、
を備える請求項2に記載の弾性波デバイス。
【請求項6】
前記複数の第2配線のうち隣接する第2配線は、PN接合を各々有し、前記隣接する第2配線のうち隣接する部分には互いに異なる向きに電流が流れる請求項1から5のいずれか一項に記載の弾性波デバイス。
【請求項7】
第1面を有する第1基板と、
前記第1面に向かい合う第2面を有する第2基板と、
前記第1面と前記第2面とを接続する金属層と、
前記金属層を囲んで設けられ、接地され、強磁性体である配線と、
前記金属層と電気的に接続され、前記第1面および前記第2面の少なくとも一方に設けられた弾性波素子と、
を備え
、
前記配線は、前記第1面上または前記第2面上に絶縁層を介し設けられている弾性波デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などの無線通信機器には特定の周波数帯域の高周波信号を送信または受信するために弾性波素子を用いたフィルタ等の弾性波デバイスが知られている。弾性波素子等の素子が設けられた基板上にシールドを設けることが知られている(例えば特許文献1、2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-212628号公報
【文献】特開2011-071874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば2つのフィルタを平面視において重なるように設けると、フィルタ間が例えば磁界により干渉し、アイソレーション特性が劣化する。フィルタ間にシールドを設けることで、アイソレーション特性を向上させることができる。このように、基板上に弾性波素子を覆うようにシールドを設けることで、弾性波素子との外部との干渉を抑制できる。しかしながら、基板上のパターンとシールドとの間に容量結合または磁界結合が生じてしまう。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、磁界による外部との干渉を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1基板と、前記第1基板上に設けられた弾性波素子と、前記第1基板上に設けられ、前記弾性波素子に接続された第1配線と、前記第1基板上に設けられ、平面視において前記弾性波素子の少なくとも一部を囲み、接地された複数の第2配線と、を備え、前記複数の第2配線は、前記第1基板上に絶縁層を介し設けられている弾性波デバイスである。
【0007】
上記構成において、前記弾性波素子が設けられた前記第1基板の第1面と空隙を挟み設けられた第2面を有する第2基板と、前記第2面に設けられた素子と、前記第2面に設けられ、前記素子に接続された第3配線と、を備え、前記複数の第2配線のうち少なくとも1つの第2配線が囲む前記第1基板の領域は平面視において前記素子および前記第3配線の少なくとも一部に重なる構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、入力端子と出力端子との間の直列経路に設けられた複数の直列共振器と、一端が前記直列経路に接続され、他端が接地された1または複数の並列共振器と、を備えるフィルタを備え、前記複数の第2配線のうち隣接する第2配線は、平面視において前記複数の直列共振器のうちの異なる直列共振器のそれぞれの少なくとも一部を囲む構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、入力端子と出力端子との間の直列経路に設けられた複数の直列共振器と、一端が前記直列経路に接続され、他端が接地された1または複数の並列共振器と、を備えるフィルタを備え、前記複数の第2配線のうち隣接する第2配線は、平面視において前記複数の直列共振器のうち隣接する直列共振器のそれぞれの少なくとも一部を囲む構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記弾性波素子を含み、共通端子と第1端子との間に接続された第1フィルタと、前記第2面に設けられ、前記共通端子と第2端子との間に接続された第2フィルタと、を備える構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記複数の第2配線のうち隣接する第2配線は、PN接合を各々有し、前記隣接する第2配線のうち隣接する部分には互いに異なる向きに電流が流れる構成とすることができる。
【0013】
本発明は、第1面を有する第1基板と、前記第1面に向かい合う第2面を有する第2基板と、前記第1面と前記第2面とを接続する金属層と、前記金属層を囲んで設けられ、接地され、強磁性体である配線と、前記金属層と電気的に接続され、前記第1面および前記第2面の少なくとも一方に設けられた弾性波素子と、を備え、前記配線は、前記第1面上または前記第2面上に絶縁層を介し設けられている弾性波デバイスである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、磁界による外部との干渉を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施例1に係るマルチプレクサの回路図である。
【
図2】
図2は、実施例1に係るマルチプレクサの断面図である。
【
図3】
図3(a)は、実施例1における弾性波共振器の平面図、
図3(b)は、弾性波共振器の断面図である。
【
図4】
図4は、実施例1における基板10の平面図である。
【
図5】
図5は、実施例1における基板20の下面を上から透視した図である。
【
図6】
図6は、実施例1における基板10の拡大平面図であり、直列共振器S12およびS13付近の拡大図である。
【
図7】
図7(a)は、
図6において、配線18aを矢印Aのようにみた側面図、
図7(b)は、
図6のB-B断面図である。
【
図8】
図8(a)は、
図6において、配線18aを矢印Cのようにみた側面図、
図8(b)および
図8(c)は、
図6のそれぞれD-D断面図およびE-E断面図である。
【
図9】
図9は、実施例1および比較例1におけるアイソレーション特性を示す図である。
【
図11】
図11は、実施例1の変形例1における基板10の拡大平面図であり、直列共振器S12およびS13付近の拡大図である。
【
図12】
図12は、実施例1の変形例2における基板10の拡大平面図であり、直列共振器S12およびS13付近の拡大図である。
【
図13】
図13(a)は、実施例1の変形例3における基板10の拡大平面図、
図13(b)は、
図13(a)のA-A断面図である。
【
図14】
図14(a)から
図14(f)は、それぞれ
図13(b)のXY平面に平行な断面のB-B断面図からG-G断面図である。
【
図15】
図15(a)は、実施例1の変形例4における基板10の拡大平面図、
図15(b)は、
図15(a)のA-A断面図である。
【
図16】
図16は、実施例1の変形例5における基板10の拡大平面図であり、直列共振器S12およびS13付近の拡大図である。
【
図17】
図17は、実施例2に係るマルチプレクサの断面図である。
【
図18】
図18は、実施例2における基板20aおよび20bの下面を上から透視した図である。
【
図20】
図20は、実施例2の変形例1における基板20の下面を上から透視した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0017】
実施例1では、弾性波デバイスとしてマルチプレクサを例に説明する。
図1は、実施例1に係るマルチプレクサの回路図である。
図1に示すように、共通端子Antと端子T1との間にフィルタ50が接続されている。共通端子Antと端子T2との間にフィルタ52が接続されている。フィルタ50および52は例えば送信フィルタおよび受信フィルタである。フィルタ50の通過帯域とフィルタ52の通過帯域とは重なっていない。フィルタ50が送信フィルタのとき、フィルタ50は、端子T1に入力した高周波信号のうち送信帯域の信号を共通端子Antに出力し、他の周波数帯域の信号を抑圧する。フィルタ52が受信フィルタのとき、フィルタ52は、共通端子Antに入力した高周波信号のうち受信帯域の信号を端子T2に出力し、他の周波数の信号を抑圧する。
【0018】
フィルタ50はラダー型フィルタである。フィルタ50では、共通端子Antと端子T1との間の直列経路に直列共振器S11からS18が設けられている。並列共振器P11からP18の一端は直列経路に接続され、他端はグランド端子Tgに接続されている。
【0019】
フィルタ52はラダー型フィルタである。フィルタ52では、共通端子Antと端子T2との間の直列経路に直列共振器S21からS29が設けられている。並列共振器P21からP28の一端は直列経路に接続され、他端はグランド端子Tgに接続されている。
【0020】
図2は、実施例1に係るマルチプレクサの断面図である。
図2に示すように、基板10上に基板20が搭載されている。基板10は支持基板10aと支持基板10a上に接合された圧電基板10bとを有する。支持基板10aは例えばサファイア基板、スピネル基板、アルミナ基板、水晶基板またはシリコン基板である。圧電基板10bは、例えばタンタル酸リチウム基板、ニオブ酸リチウム基板または水晶基板である。
【0021】
基板10の上面に弾性波共振器12および配線14が設けられている。基板10の下面に端子18が設けられている。端子18は、弾性波共振器12および22を外部と接続するためのフットパッドである。基板10を貫通するようにビア配線16が設けられている。ビア配線16は、配線14と端子18とを電気的に接続する。配線14、ビア配線16および端子18は例えば銅層、アルミニウム層または金層等の金属層である。端子18は、共通端子Ant、送信端子Tx、受信端子Rxおよびグランド端子Tgを含む。
【0022】
弾性波共振器12を囲むように絶縁層35が設けられている。絶縁層35上に環状配線38が設けられている。環状配線38は弾性波共振器12を囲むように設けられている。環状配線38は、例えば、銅、金もしくはアルミニウム等の非磁性金属、または、鉄、ニッケルおよびコバルトの少なくとも1つを含む磁性体金属である。絶縁層35は、例えばポリイミド樹脂等の樹脂層または酸化シリコン膜等の無機絶縁体膜である。
【0023】
支持基板10aの厚さをT10a、圧電基板10bの厚さをT10b、基板10の上面と基板20の下面との距離をT28、基板10の上面と保護膜36の上面との距離をT30とすると、T10a、T10b、T28およびT30は、例えば75μm、10μm、10μmおよび155μmである。
【0024】
基板20の下面に弾性波共振器22および配線24が設けられている。配線24は例えば銅層、アルミニウム層または金層等の金属層である。基板10の配線14と基板20の配線24はバンプ26を介し接合されている。バンプ26ははんだバンプ、銅バンプまたは金バンプ等の金属バンプである。基板10の上面と基板20の下面とは空隙28を介し対向する。基板20を囲むように封止部30が設けられている。封止部30は基板10上に設けられた環状金属層32に接合されている。基板20および封止部30上にリッド34が設けられている。封止部30およびリッド34を覆うように保護膜36が設けられている。封止部30およびリッド34は弾性波共振器12および22を空隙28に封止する。封止部30は、はんだ等の金属または樹脂等の絶縁体である。リッド34は、コバール板等の金属板または絶縁板である。保護膜36は、ニッケル膜等の金属膜または絶縁膜である。
【0025】
弾性波共振器12および22の例を説明する。
図3(a)は、実施例1における弾性波共振器の平面図であり、弾性波共振器12および22として弾性表面波共振器の例である。
図3(a)に示すように、基板10および20上にIDT(Interdigital Transducer)42と反射器41が形成されている。IDT42は、互いに対向する1対の櫛型電極42dを有する。櫛型電極42dは、複数の電極指42aと複数の電極指42aを接続するバスバー42cとを有する。反射器41は、IDT42の両側に設けられている。IDT42が基板10および20に弾性表面波を励振する。IDT42および反射器41は例えばアルミニウム膜または銅膜により形成される。基板10は支持基板10a上に圧電基板10bが接合されていてもよいし、支持基板10aが設けられておらず、基板10は圧電基板10bの単体でもよい。基板20も同様である。支持基板10aと圧電基板10bとの間に各々酸化シリコン膜または酸化アルミニウム膜等の絶縁膜が設けられていてもよい。基板10および20上にIDT42および反射器41を覆うように保護膜または温度補償膜が設けられていてもよい。
【0026】
図3(b)は、実施例1における弾性波共振器の断面図であり、弾性波共振器12および22として圧電薄膜共振器の例である。
図3(b)に示すように、基板10および20上に圧電膜46が設けられている。圧電膜46を挟むように下部電極45および上部電極47が設けられている。下部電極45と基板10および20との間に空隙49が形成されている。圧電膜46の少なくとも一部を挟み下部電極45と上部電極47とが対向する領域が共振領域48である。共振領域48内の下部電極45および上部電極47は圧電膜46内に、厚み縦振動モードの弾性波を励振する。基板10および20は、例えばサファイア基板、スピネル基板、アルミナ基板、ガラス基板、水晶基板またはシリコン基板である。下部電極45および上部電極47は例えばルテニウム膜等の金属膜である。圧電膜46は例えば窒化アルミニウム膜である。空隙49の代わりに弾性波を反射する音響反射膜が設けられていてもよい。
【0027】
弾性波共振器12および22は、弾性波を励振する電極を含む。このため、弾性波の励振を阻害しないように、弾性波共振器12および22は空隙28に覆われている。
【0028】
図4は、実施例1における基板10の平面図である。
図4に示すように、基板10の上面にフィルタ50として、弾性波共振器12、配線14および環状金属層32が設けられている。弾性波共振器12は、IDT42および反射器41を有する弾性表面波共振器である。配線14は弾性波共振器12に接続されている。基板10の周縁に封止部30が設けられている。弾性波共振器12は、直列共振器S11からS18および並列共振器P11からP18を含む。配線14は、パッドPa1、Pt1、Pr1およびPg1を含む。パッドPa1、Pt1、Pr1およびPg1は、それぞれ共通端子Ant、端子T1、T2およびグランド端子Tgにビア配線16を介し電気的に接続される。平面視において、直列共振器S11からS17をそれぞれ囲むように、基板10の上方に環状配線38が設けられている。環状配線38はグランドに接続された配線14aに電気的に接続されている。環状金属層32は基板10の周縁に設けられている。
【0029】
図5は、実施例1における基板20の下面を上から透視した図である。
図5に示すように、基板20の上面にフィルタ52として弾性波共振器22および配線24が設けられている。弾性波共振器22は、IDT42および反射器41を有する弾性表面波共振器である。配線24は弾性波共振器22に接続されている。弾性波共振器22は、直列共振器S21からS29および並列共振器P21からP28を含む。配線24は、パッドPa2、Pr2およびPg2を含む。パッドPa2、Pr2およびPg2は、それぞれパッドPa1、Pr1およびPg1にバンプ26を介し電気的に接続される。
【0030】
基板10の上面に設けられた直列共振器S11からS15は、基板20の下面に設けられた並列共振器P21からP25に平面視においてそれぞれ重なる。基板10の上面に設けられた並列共振器P11からP15は、基板20の下面に設けられた直列共振器S22からS26に平面視においてそれぞれ重なる。
【0031】
図6は、実施例1における基板10の拡大平面図であり、直列共振器S12およびS13付近の拡大図である。
図7(a)は、
図6において、環状配線38aを矢印Aのようにみた側面図、
図7(b)は、
図6のB-B断面図である。
図8(a)は、
図6において、環状配線38aを矢印Cのようにみた側面図、
図8(b)および
図8(c)は、
図6のそれぞれD-D断面図およびE-E断面図である。
【0032】
図6から
図8(c)に示すように、直列共振器S12およびS13をそれぞれ囲むように環状配線38aおよび38bが設けられている。基板10上に環状の絶縁層35が設けられている。絶縁層35上に環状配線38aおよび38bが設けられている。環状配線38aおよび38bと絶縁層35との平面形状は略同じである。直列共振器S12およびS13上に絶縁層35は設けられていない。絶縁層35の-X側の面に沿って接続部39が設けられている。接続部39は、環状配線38aおよび38bと配線14aとを電気的に接続する。
【0033】
絶縁層35および環状配線38の形成方法は以下である。まず基板10上に弾性波共振器12および配線14を形成する。基板10上にポリイミド樹脂等の絶縁層35を形成する。絶縁層35上に環状配線38となる金属層を形成する。金属層および絶縁層35を所望形状にエッチングする。これにより絶縁層および環状配線38が形成される。その後、接続部39を形成する。なお、環状配線38はリフトオフ法により形成してもよい。
【0034】
環状配線38aおよび38bの厚さをT38、絶縁層35の厚さをT35、環状配線38a、38bおよび絶縁層35の幅をW38、接続部39の厚さをT39、接続部39の幅をW39とする。T38、T35、W38、T39およびW39は、例えばそれぞれ0.2μm~5μm、0.5μm~5μm、0.5μm~10μm、0.1μm~1μm、および2μm~10μmである。T38、T35、W38、T39およびW39は、上記に限られない。
【0035】
実施例1に係るマルチプレクサと、環状配線38を設けない比較例1のマルチプレクサとで、端子T1からT2へのアイソレーション特性をシミュレーションした。シミュレーション条件は以下である。
支持基板10a:厚さT10aが75μmのサファイア基板
圧電基板10b:厚さT10bが10μmの42°YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板
基板10の上面と基板20の上面との距離T28:10μm
基板20:42°YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板
絶縁層35:厚さT35が3μm、幅W38が2μmのポリイミド層
環状配線38:厚さT38が2μm、幅W38が2μmの鉄層
フィルタ50:バンド3の送信フィルタ
フィルタ52:バンド3の受信フィルタ
バンド3の送信帯域は1710MHz~1785MHzであり、受信帯域は1805MHz~1880MHzである。
【0036】
図9は、実施例1および比較例1におけるアイソレーション特性を示す図である。
図9に示すように、送信帯域および受信帯域において、実施例1のアイソレーションは比較例1のアイソレーションより小さい。このように、環状配線38を設けることで、フィルタ50と52との間のアイソレーションを向上できる。
【0037】
環状配線38として金または銀を用いアイソレーション特性をシミュレーションした。環状配線38として金または銀を用いても鉄とアイソレーション特性は大きく変わらない。このように、環状配線38は非磁性金属でもよく、磁性体金属でもよい。絶縁層35として酸化シリコンを用いアイソレーション特性をシミュレーションした。絶縁層35として酸化シリコンを用いてもポリイミドとアイソレーション特性は大きく変わらない。このように、絶縁層35は樹脂層でもよく、無機絶縁体層でもよい。
【0038】
環状配線38の厚さT38を0.5μmとしてアイソレーション特性をシミュレーションした。厚さT38を0.5μmとしても厚さT38を2μmとしたときとアイソレーション特性は大きく変わらない。このように、厚さT38は0.5μmでもよい。絶縁層35の厚さT35を500nmとしてアイソレーション特性をシミュレーションした。厚さT35を0.5μmとすると、厚さT35を3μmとしたときとアイソレーション特性は若干劣化する。このように、厚さT35は大きい方がよく、0.5μm以上が好ましい。
【0039】
図10(a)および
図10(b)は、実施例1の作用を説明する模式図である。
図10(a)は、比較例1の模式図であり、
図10(b)は、実施例1の模式図である。
図10(a)に示すように、基板10の上面の弾性波共振器12および配線14を便宜上コイル62で表し、基板20の下面の弾性波共振器22および配線24を便宜上コイル64で表す。弾性波共振器12および配線24から弾性波共振器22および配線24への高周波信号の漏れ(干渉)を磁界63で表す。コイル62に高周波電力60が加わると、コイル62に高周波の電流61が流れる。コイル62により磁界63が発生する。磁界63によりコイル64に誘導電流65が流れる。このように、弾性波共振器12および配線に加わる高周波電力により磁界63が発生し弾性波共振器22および配線24に誘導電流が流れる。これにより、比較例1ではアイソレーション特性が劣化する。
【0040】
図10(b)に示すように、実施例1では、コイル62と64との間にコイル66を設ける。コイル66は接地する。コイル62により生成された磁界63によりコイル66に誘導電流67が流れる。誘導電流67はグランドに至る。これにより、コイル64に至る磁界63は比較例1より小さくなる。よって、コイル64を流れる誘導電流65は比較例1より小さくなる。このように、弾性波共振器12および配線24により生成された磁界63はコイル66に誘導電流67を生成する。これにより弾性波共振器22および配線24に至る磁界63が小さくなる。よって、コイル64を流れる誘導電流65が小さくなることで、実施例1では比較例1よりアイソレーション特性が向上すると考えられる。
【0041】
また、
図6のように、環状配線38aと38bが隣接しており、環状配線38aと38bに流れる誘導電流70aおよび70bの回転方向が同じ(例えば時計方向)である。このとき、環状配線38aと38bのY方向に隣接する線路では、互いに逆方向に誘導電流70aおよび70bが流れる。例えば環状配線38aと38bの互いに隣接する線路をL1およびL2とすると、線路L1には-X方向に誘導電流70aが流れ、線路L2には+X方向に誘導電流70bが流れる。
【0042】
線路L1の自己インダクタンスをL、線路L1の線路L2との相互インダクタンスをM、誘導電流70aの電流値をIとすると、線路L1の自己誘導起電力V0=L・dI/dtであり、相互誘導起電力V1=M・dI/dtである。よって、線路L1に生じる起電力はV0-V1=(L-M)・dI/dtとなる。すなわち、線路L1のインダクタンスはL-Mとなる。よって、誘導電流70aのIによって誘起される磁界は相互インダクタンスM分小さくなる。これにより、誘導電流70aおよび70bによって生成される磁界が小さくなる。よって、弾性波共振器12および配線14と弾性波共振器22および配線24とのアイソレーションが向上する。
【0043】
[実施例1の変形例1]
図11は、実施例1の変形例1における基板10の拡大平面図であり、直列共振器S12およびS13付近の拡大図である。
図11に示すように、環状配線38aおよび38bは完全な環状でなく、弾性波共振器12の3辺を囲み環状配線38aおよび38bの両端は個別に接続部39を介し配線14aに接続されている。環状配線38aおよび38bには
図6と同様に時計回りの誘導電流70aおよび70bが流れる。Y方向に隣接する線路では、互いに逆方向に誘導電流70aおよび70bが流れる。よって、
図6と同様に、弾性波共振器12と22とのアイソレーションを向上できる。
【0044】
[実施例1の変形例2]
図12は、実施例1の変形例2における基板10の拡大平面図であり、直列共振器S12およびS13付近の拡大図である。
図12に示すように、環状配線38aおよび38bの平面形状はスパイラル状である。環状配線38aおよび38bの両端は個別に接続部39を介し配線14aに接続されている。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0045】
[実施例1の変形例3]
図13(a)は、実施例1の変形例3における基板10の拡大平面図、
図13(b)は、
図13(a)のA-A断面図である。
図14(a)から
図14(f)は、それぞれ
図13(b)のXY平面に平行な断面のB-B断面図からG-G断面図である。
図13(b)は、
図14(a)から
図14(f)のA-A断面図でもある。
【0046】
図13(a)から
図14(f)示すように、基板10上に弾性波共振器12を囲むように絶縁層35が設けられている。絶縁層35上に環状配線38eが設けられている。環状配線38e上に絶縁層35bが設けられている。絶縁層35b上に環状配線38dが設けられている。環状配線38d上に絶縁層35aが設けられている。絶縁層35a上に環状配線38cが設けられている。環状配線38cと38dを電気的に接続する接続部39aと、環状配線38dと環状配線38eとを電気的に接続する接続部39bが設けられている。接続部39は、環状配線38eと配線14aとを電気的に接続する。このように、環状配線38では、複数の環状配線38cから38eがZ方向に積層されており、環状配線38cから38eは接続部39aおよび39bにより電気的に接続されている。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0047】
[実施例1の変形例4]
図15(a)は、実施例1の変形例4における基板10の拡大平面図、
図15(b)は、
図15(a)のA-A断面図である。
図15(a)および
図15(b)に示すように、環状配線38dの平面形状は環状配線38eの平面形状より小さく、環状配線38cの平面形状は環状配線38dの平面形状より小さい。このように、複数の環状配線38cから38eの平面形状は互いに異なっていてもよい。その他の構成は実施例3と同じであり説明を省略する。
【0048】
[実施例1の変形例5]
図16は、実施例1の変形例5における基板10の拡大平面図であり、直列共振器S12およびS13付近の拡大図である。
図16に示すように、環状配線38aおよび38bは、シリコン等の半導体であり、各々p型半導体部38pとn型半導体部38nを各々有している。p型半導体部38pとn型半導体部38nとのPN接合38jは、p型半導体部38pからn型半導体部38nに電流が流れるPNダイオードとして機能する。このため、誘導電流70aおよび70bは同じ方向に流れる。このように、p型半導体部38pとn型半導体部38nを設けることで、環状配線38aおよび38bを流れ電流の方向を同じ方向にできる。これにより、Y方向に隣接する線路では、互いに逆方向に誘導電流70aおよび70bが流れる。よって、
図6と同様に、弾性波共振器12と22とのアイソレーションを向上できる。その他の構成は実施例1の変形例1と同じであり説明を省略する。
【0049】
実施例1およびその変形例によれば、基板10(第1基板)上に弾性波共振器12(弾性波素子)および弾性波共振器12に接続された複数の配線14(第1配線)が設けられている。環状配線38(第2配線)は、基板10上方に設けられ、平面視において弾性波共振器12を囲み、接地されている。これにより、
図10(b)のように、コイル66に相当する環状配線38が弾性波共振器12から上方に向かう磁界を抑制する。基板10上に基板20が設けられていない場合においても、弾性波共振器12および配線14と外部との干渉を抑制することができる。環状配線38は、平面視において弾性波共振器12の全部を囲んでもよいし、弾性波共振器12の一部を囲んでもよい。
【0050】
基板20(第2基板)は、基板10の上面(第1面)と空隙28を挟み設けられた下面(第2面)を有する。基板20の下面に弾性波共振器22(素子)および弾性波共振器22に接続された配線24(第3配線)が設けられている。少なくとも1つの環状配線38が囲む基板10の領域は平面視において弾性波共振器22および配線24の少なくとも一部に重なる。これにより、弾性波共振器12および配線14と弾性波共振器22および配線24との干渉を抑制できる。環状配線38が囲む領域は、平面視において弾性波共振器22の少なくとも一部に重なることが好ましい。
【0051】
図5のようなラダー型フィルタでは、入力端子(共通端子Ant(入力端子)と端子T1(出力端子))を接続する直列経路に大きな高周波電力が加わる。隣接する環状配線38(すなわち間に他の環状配線が設けられてない環状配線)は、平面視において複数の直列共振器S11からS18のうち異なる直接共振器のそれぞれの少なくとも一部を囲む。このとき、直列経路の異なる直列共振器を流れる電流の向きは互いにほぼ同じである。よって、複数の環状配線38を流れる誘導電流の回転方向は同じとなる。これにより、
図6のように、複数の環状配線38から放出される磁界を小さくできる。なお、直列経路は、直列共振器S11からS18、およびこれらと同電位となる配線14であり、直列共振器S11からS18、直列共振器S11からS18を接続する配線14、および直列共振器S11からS18と並列共振器P11からP19を接続する配線14を含み、並列共振器P11からP18および並列共振器P11からP18とグランドとを接続する配線14を含まない。
【0052】
また、隣接する環状配線38は、平面視において複数の直列共振器S11からS18のうち隣接する直列共振器S12およびS13のそれぞれの少なくとも一部を囲む。直列共振器S11からS18には並列共振器P11からP18より大きな電流が流れ、大きな磁界が発生する。よって、環状配線38は直列共振器S11からS18の少なくとも1つに設けることが好ましい。さらに、隣接する直列共振器S12およびS13にはほぼ同じ方向に電流が流れるため、環状配線38aおよび38bに流れる誘導電流70aおよび70bの回転方向は同じとなる。これにより、
図6のように、複数の環状配線38から放出される磁界を小さくできる。
【0053】
図1から
図5のように、基板10の上面には、弾性波共振器12を含む共通端子Antと端子T1(第1端子)との間に接続されたフィルタ50(第1フィルタ)が設けられている。基板20の下面には、共通端子Antと端子T2(第2端子)との間に接続されたフィルタ52(第2フィルタ)が設けられている。このとき、環状配線38を設けることで、フィルタ50と52とのアイソレーションを向上できる。
【0054】
フィルタ50が送信フィルタでありフィルタ52が受信フィルタのとき、フィルタ50には大電力の高周波信号が入力する。よって、フィルタ50の弾性波共振器12に環状配線38を設けることが好ましい。
【0055】
実施例1のように、少なくとも1つの環状配線38は閉じたループ状の配線でもよい。実施例1の変形例1および2のように、少なくとも1つの環状配線38はループ状でない開いた配線でもよい。少なくとも1つの環状配線38は対応する弾性波共振器12における少なくとも一部の領域に対し開いてもよい。
【0056】
基板10に設けられている弾性波共振器12の全てに対応し環状配線38を設けてもよい。環状配線38を設けるとチップサイズが大きくなる。そこで、
図4のように、基板10に設けられている弾性波共振器12のうち一部の弾性波共振器12に対応し環状配線38を設けてもよい。例えば直列共振器S11からS18には並列共振器P11からP18に比べ大きな電流が流れる。さらに、高周波信号が入力する共通端子Antに近い直列共振器S11は共通端子Antから遠い直列共振器S18より大きな電流が流れ、大きな磁界が発生する。そこで、大きな磁界が発生する直列共振器S11からS17に環状配線38を設け、他の共振器に環状配線38を設けない。これにより、外部への干渉を抑制しかつ小型化が可能となる。
【0057】
複数の環状配線38は、基板10の上面に絶縁層35を介し設けられている。環状配線38を基板10の上方に設けることで、弾性波共振器12と外部との干渉をより抑制できる。絶縁層35の厚さは0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。
【0058】
実施例1の変形例5のように、隣接の環状配線38aおよび38bのうち隣接する部分は、互いに異なる向きに誘導電流70aが流れるように設けられたPN接合38jを有する。これにより、複数の環状配線38aおよび38bから放出される磁界を小さくできる。
【0059】
環状配線38は絶縁層35により基板10に支持される例を説明したが、環状配線38は基板20に支持されていてもよい。
【0060】
基板20の下面に設けられる素子として弾性波素子を例に説明したが、素子は、キャパシタまたはインダクタ等の受動素子でもよく、トランジスタまたはダイオード等の能動素子でもよい。
【実施例2】
【0061】
実施例2では、弾性波デバイスとしてマルチプレクサを例に説明する。
図17は、実施例2に係るマルチプレクサの断面図である。
図17に示すように、基板11上に基板20aおよび20bが搭載されている。基板11は、多層基板であり、積層された複数の絶縁層11aおよび11bを備える。絶縁層11aおよび11bは、例えばガラスエポキシ等の樹脂、またはLTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)もしくはHTCC(High Temperature Co-fired Ceramics)等のセラミックスである。絶縁層11aおよび11bの上面にそれぞれ配線14および14bが設けられている。絶縁層11bの下面に端子18が設けられている。絶縁層11aおよび11bを貫通するビア配線16aおよび16bが設けられている。ビア配線16aは配線14と14bとを電気的に接続し、ビア配線16bは配線14bと端子18とを電気的に接続する。配線14、14b、ビア配線16a、16bおよび端子18は例えば銅層、アルミニウム層または金層等の金属層である。
【0062】
基板20aの下面に弾性波共振器22aおよび配線24aが設けられている。基板20bの下面に弾性波共振器22bおよび配線24bが設けられている。配線24aおよび24bは例えば銅層、アルミニウム層または金層等の金属層である。基板11の配線14と配線24aおよび24bとはバンプ26を介し接合されている。バンプ26ははんだバンプ、銅バンプまたは金バンプ等の金属バンプである。基板11の上面と基板20aの下面、基板11の上面と基板20bの下面とは空隙28を介し対向する。基板20aおよび20bを囲むように封止部30が設けられている。封止部30は基板11上に設けられた環状金属層32に接合されている。基板20および封止部30上にリッド34が設けられている。封止部30およびリッド34を覆うように保護膜36が設けられている。封止部30およびリッド34は弾性波共振器22aおよび22bを空隙28に封止する。封止部30は、はんだ等の金属または樹脂等の絶縁体である。リッド34は、コバール板等の金属板または絶縁板である。保護膜36は、ニッケル膜等の金属膜または絶縁膜である。
【0063】
バンプ26を囲むように絶縁層35が設けられている。絶縁層35上に環状配線38が設けられている。環状配線38はバンプ26を囲むように設けられている。
【0064】
図18は、実施例2における基板20aおよび20bの下面を上から透視した図である。
図18に示すように、基板20aの下面にフィルタ50として弾性波共振器22aおよび配線24aが設けられている。弾性波共振器22aは、IDT42および反射器41を有する弾性表面波共振器である。配線24aは弾性波共振器22aに接続されている。弾性波共振器22aは、直列共振器S11からS14および並列共振器P11からP13を含む。配線24aは、パッドPaa、PtaおよびPgaを含む。パッドPaa、PtaおよびPgaは、それぞれ共通端子Ant、端子T1およびグランド端子Tgにバンプ26、配線14、ビア配線16a、配線14bおよびビア配線16bを介し電気的に接続される。
【0065】
基板20bの下面にフィルタ52として弾性波共振器22bおよび配線24bが設けられている。弾性波共振器22bは、圧電薄膜共振器である。配線24bは弾性波共振器22bに接続されている。弾性波共振器22bは、直列共振器S21からS23および並列共振器P21およびP22を含む。配線24bは、パッドPab、PrbおよびPgbを含む。パッドPab、PrbおよびPgbは、それぞれ共通端子Ant、端子T2およびグランド端子Tgにバンプ26、配線14、ビア配線16a、配線14bおよびビア配線16bを介し電気的に接続される。
【0066】
図19(a)は、実施例2における環状配線38付近の平面図、
図19(b)は、
図19(a)のA-A断面図である。
図19(a)および
図19(b)に示すように、バンプ26を囲むように、基板11上に絶縁層35が設けられている。絶縁層35上に環状配線38が設けられている。環状配線38は接地されている。絶縁層35は基板20aの下面に支持され、絶縁層35上に環状配線38が設けられていてもよい。バンプ26に電流74が+Z方向に流れると、バンプ26の周りに反時計回りに磁界75が生成される。これにより、外部と干渉する可能性がある。実施例2では、環状配線38に誘導電流が流れることにより、バンプ26により発生した磁界を抑制することができる。特に、環状配線38が鉄、ニッケルまたはコバルト等の磁性体金属の場合、磁束が環状配線38内に集中し、環状配線38外の磁束密度を小さくできる。
【0067】
[実施例2の変形例1]
図20は、実施例2の変形例1における基板20の下面を上から透視した図である。
図20に示すように、基板11上に単一の基板20が搭載されている。基板20の下面にフィルタ50と52が設けられている。フィルタ50の構成は実施例2と同じである。フィルタ52として弾性波共振器22bおよび配線24bが設けられている。弾性波共振器22bは、弾性表面波共振器である。配線24bは弾性波共振器22bに接続されている。弾性波共振器22bは、共振器R1とDMS(Double Mode Surface Acoustic Wave)である多重モードフィルタDMS1およびDMS2を備えている。その他の構成は実施例2と同じであり説明を省略する。
【0068】
実施例2およびその変形例によれば、環状配線38は、基板11と20とを接続するバンプ26(金属層)を囲むように設けられ、接地されている。これにより、バンプ26を流れる電流により生じる磁界が外に広がることを抑制できる。よって、外部と干渉することを抑制できる。基板11の上面および基板20の下面の少なくとも一方には、弾性波素子以外にキャパシタまたはインダクタ等の受動素子、トランジスタ等の能動素子、その他の電子素子が設けられていてもよい。
【0069】
環状配線38は、鉄、コバルトまたはニッケル等の強磁性体を含む。これにより、磁束を環状配線38内に閉じ込めることができる。
【0070】
バンプ26と電気的に接続された弾性波素子が基板11の上面または基板20、20aおよび20bの少なくとも一方に設けられていてもよい。これにより、バンプ26を流れる電流が弾性波素子に影響することを抑制できる。
【0071】
基板20の下面に設けられる素子は弾性波素子以外にもキャパシタまたはインダクタ等の受動素子でもよく、トランジスタまたはダイオード等の能動素子でもよい。
【0072】
実施例1および2における各フィルタの直列共振器および並列共振器の個数は適宜に設定できる。実施例2の変形例1のようにフィルタの少なくとも一部を多重モードフィルタとしてもよい。実施例1、2およびその変形例では、デュプレクサを例に説明したがマルチプレクサはトリプレクサまたはクワッドプレクサでもよい。基板10と基板20(または基板20aおよび20b)との間に環状の封止部が設けられていてもよい。
【0073】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0074】
10、11、20、20a、20b 基板
12、22、22a、22b 弾性波共振器
14、14a、14b、24、24a、24b、 配線
26 バンプ
28 空隙
35、35a、35b 絶縁層
38、38a-38e 環状配線
39、39a、39b 接続部
50 送信フィルタ
52 受信フィルタ