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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】分析装置の状態をチェックする技術
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20240729BHJP
   G01N 30/72 20060101ALI20240729BHJP
   G01N 30/86 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
G01N27/62 X
G01N30/72 C
G01N30/86 V
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020142803
(22)【出願日】2020-08-26
(65)【公開番号】P2021032901
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2023-08-18
(31)【優先権主張番号】19193868.7
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501205108
【氏名又は名称】エフ ホフマン-ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ステファン クイント
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン ティマン
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン シュヴァインベルガー
(72)【発明者】
【氏名】マルティン スティングル
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第03/065406(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0155497(US,A1)
【文献】特開2012-199027(JP,A)
【文献】米国特許第08941060(US,B2)
【文献】特開昭62-121359(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03425369(EP,A1)
【文献】特表2020-525798(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0108479(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/60 - G01N 27/70
G01N 30/00 - G01N 30/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体クロマトグラフィ(LC)流に結合されたエレクトロスプレーイオン化(ESI)源(45)を備えた質量分析計(MS)を含む分析装置の状態を監視する自動化された方法であって、前記方法が、
前記ESI源(45)のエレクトロスプレーイオン化電流を監視するステップ(101)と、
前記ESI源(45)の監視されるイオン化電流に基づいて、前記分析装置の複数の状態のうちのある状態を識別するステップ(107)と
を含み、
前記状態のうちの1つは、前記LC流のLCカラム(9a、9b)の下流にある前記分析装置の液体クロマトグラフィ流にデッドボリューム(13)が存在することである、方法。
【請求項2】
前記分析装置の液体クロマトグラフィ(LC)流内の圧力を含む1つまたは複数の追加のパラメータを監視するステップをさらに含み、状態の前記識別は、前記複数の状態を区別するために、監視される追加のパラメータにさらに基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分析装置の液体クロマトグラフィ(LC)流のクロマトグラムの1つまたは複数のクロマトグラフ特徴を含む1つまたは複数の追加のパラメータを監視するステップをさらに含み、状態の前記識別が、前記複数の状態を区別するために、監視される追加のパラメータにさらに基づく、請求項1または2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記クロマトグラフ特徴が、ピーク幅パラメータ、保持時間パラメータ、ピーク高さパラメータ、ピーク面積パラメータ、およびピーク対称性パラメータからなるリストから選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記状態が、前記分析装置の特定の構成要素の経時劣化、または前記分析装置の特定の構成要素のエラーもしくは欠陥のうちの1つまたは複数を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の状態が、
プレカラム・デッドボリューム(15)の存在と、
バルブエラーと、
スプレーニードルの経時劣化と、
カラムの欠陥と、
カラムの経時劣化と、
不安定な噴霧と、
詰まりと、
漏れと、
イオン源汚染と
のうちの1つまたは複数をさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
複数の状態のうちのある状態の前記識別が、監視されるパラメータの減少、監視されるパラメータの増加、監視されるパラメータの変動、前記監視されるパラメータの時系列(21、22、31a、31b、32a、32b)におけるプロファイルシフト、前記監視されるパラメータの時系列(21、22、31a、31b、32a、32b)のプロファイル変化のうちの1つまたは複数を判定するステップを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ESI源(45)の前記監視されるイオン化電流に基づいて、液体クロマトグラフィ流内のデッドボリューム(13)の存在を識別するステップは、前記ESI源(45)の前記監視されるイオン化電流の時系列におけるプロファイルシフトを評価するステップを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
追加の測定パラメータが内部標準において測定される、請求項2から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記分析装置の判定された状態に応じて、複数の応答のうちの1つまたは複数の選択された応答(74)を誘発するステップ
をさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
複数の応答が、
前記分析装置の前記判定された状態を記録することと、
自動保守動作を開始またはスケジュール設定することと、
エラーメッセージを生成することと、
所定の保守動作を行うように操作者に要求することと、
サービスプロバイダに通知することと、
予防保守動作をスケジュール設定すること
のうちの1つまたは複数を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記保守動作が、前記ESI源(45)の細管の再接続、前記分析装置のLC流のLCカラム(9a、9b)の交換、前記ESI源(45)のイオン源の洗浄、および前記ESI源(45)の細管の洗浄または交換のうちの1つである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
監視されるエレクトロスプレーイオン化電流に基づいて、前記エレクトロスプレーイオン化電流の発生を経時的に予測するステップと、
前記エレクトロスプレーイオン化電流の予測された発生に基づいて、応答を誘発するステップと
をさらに含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
監視されるエレクトロスプレーイオン化電流および1つまたは複数の追加の測定パラメータに基づいて、前記エレクトロスプレーイオン化電流および1つまたは複数の追加の測定パラメータの発生を経時的に予測するステップと、
前記エレクトロスプレーイオン化電流および1つまたは複数の追加の測定パラメータの予測された発生に基づいて、応答を誘発するステップと
をさらに含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から14に記載の方法のうちのいずれか1つのステップを実行するように構成されているコンピュータシステム。
【請求項16】
内部に格納された命令を有するコンピュータ可読媒体であって、前記命令が、コンピュータシステムによって実行されたときに、前記コンピュータシステムに請求項1から14に記載の方法のうちのいずれか1つのステップを実行するように促す、コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動分析装置のエレクトロスプレーイオン化(ESI)源を備えた質量分析計(MS)の状態を監視するための自動化された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置(in-vitro分析装置など)は、今日の研究室や病院の環境で普及している。これらの装置は、追加された機能、向上したスループット、および分析タスクの自動化された方法での実行の必要、のために、ますます複雑になる傾向がある。その結果、複数の構成要素でエラーや誤動作が発生し、分析装置の生産性の低下や測定結果の信頼性の低下につながることがある。いくつかの例では、外部のサービス担当者は、エラーを特定して修正する必要があり、これは数時間または数日かかることがあり、この間分析装置またはその一部は利用できないことがある。
【発明の概要】
【0003】
一般的な一態様では、本発明は、液体クロマトグラフィ(LC)流に結合されたエレクトロスプレーイオン化(ESI)源を備えた質量分析計(MS)を含む分析装置の状態を監視する自動化された方法に関する。この方法は、ESI源のエレクトロスプレーイオン化電流を監視するステップと、ESI源の監視されるイオン化電流に基づいて、分析装置の複数の状態のうちのある状態を識別するステップとを含む。状態のうちの1つは、LC流のLCカラムの下流にある分析装置の液体クロマトグラフィ流にデッドボリュームが存在することである。
【0004】
第2の一般的な態様では、エレクトロスプレーイオン化(ESI)源を備えた質量分析計(MS)を含む分析装置の状態を監視する自動化された方法は、ESI源のエレクトロスプレーイオン化電流を監視するステップと、ESI源の監視されるイオン化電流に基づいて、分析装置の構成要素の状態を識別するステップとを含む。
【0005】
第3の一般的な態様では、本発明は、第1の一般的な態様の技術のステップを実行するように構成されているコンピュータシステムに関する。
【0006】
第1から第3の一般的な態様の技術は、有利な技術的効果を有することができる。
【0007】
第一に、本開示の第1の一般的な態様の監視技術は、LC流のLCカラムの下流にあるデッドボリューム(本開示では「ポストカラム・デッドボリューム」とも呼ばれる)の識別を可能にすることができる。ポストカラム・デッドボリュームはエラーであり、LC流の他のパラメータを検討する際に検出が困難なことがある。例えば、図3bに示すように、ポストカラム・デッドボリュームが圧力曲線にほとんどまたは全く影響を及ぼさないことがあるため、LC流の圧力を監視しても役に立たないことがある。さらに、図3aに見られるように、ポストカラム・デッドボリュームにより、クロマトグラフ特徴(保持時間、ピーク幅、またはピーク高さなど)が変化する。ただし、クロマトグラフ特徴の同様の変化はまた、ポストカラム・デッドボリュームの存在以外の様々な他の状態によっても発生し得る。例えば、カラムの経年劣化は、図3aに示されるように、クロマトグラフ特徴の変化を引き起こし得る。したがって、ESI源のエレクトロスプレーイオン化電流(本開示ではESI電流とも呼ばれる)を考慮した本開示の技術は、分析装置の状態のより正確な識別を可能にする。
【0008】
第二に、ポストカラム・デッドボリュームを正確に識別することは、チェックまたは保守動作をより効果的にするのに役立つことができる。多数のエラー源を経由する代わりに、操作者または別のサービス担当者は、判定された状態を迅速にチェックまたは処置できる。さらに、ポストカラム・デッドボリュームを正確に識別できるため、経験の浅い担当者でもチェックや保守動作を実行できる。この結果、状況によっては、分析装置(またはそのモジュール)のダウンタイムを短縮できる。例えば、いくつかの例では、外部のサービス担当者を連れてくる必要がないことがある。
【0009】
第三に、本開示の監視技術を使用して、分析装置の異なる状態を区別し、特定の応答を誘発することができる。このようにして、検出および/または監視技術は、分析装置の状態の改善された知識によりこれらの資源のより正確な割り当てを可能にすることにより、資源(例えば、操作者時間または外部サービス担当者)のより効率的な利用を促進することができる。
【0010】
第四に、いくつかの例では、監視技術を既存の分析装置ワークフローにシームレスに統合できる。例えば、監視技術は、分析装置の初期化ワークフローの一部として実行できる。ESI電流を監視するには、ESI電流検出装置をESI源に追加する必要があることがある。ただし、これは分析装置のパフォーマンス(スループットなど)に影響を与えないことがあり、いくつかの例では、周知の比較的安価な構成要素を使用して実行できる。
【0011】
本開示では、いくつかの用語が特定の意味を有するものとして使用されている。
【0012】
本開示における「デッドボリューム」という用語は、溶質がLC流を通過するときに溶質が遭遇する余分な容積部、特に移動相流に曝された掃過されなかった容積部を指す。
【0013】
「状態」という用語は、分析装置またはその一部(例えば、LCカラムもしくはESI源またはそれらの副構成要素の1つ)の特定の状態を指す。状態は、分析装置またはその一部(例えば、LCカラムもしくはESI源またはそれらの副構成要素の1つ)のエラーまたは欠陥であることがある。しかしながら、本開示による用語「状態」はまた、許容できる状態(例えば、本明細書では「通常動作」とも呼ばれる、仕様内の動作を可能にする状態)または依然として許容できる状態(例えば、構成要素を許容範囲外に近づける分析装置の構成要素の経年劣化状態)を含む。さらに、状況によっては、「通常動作」とエラーを明確に区別できないことがある。
【0014】
本開示による「時系列」は、2つの異なる時点(例えば、少なくとも1つの以前の時点および少なくとも1つの後の時点)における少なくとも2つの特定のパラメータ値(例えば、ESI源のイオン化電流)を指す。時系列は、いくつかの例では、それぞれの時点で2つの値を(かなり)超える値を含み得る。「時点」という用語は、時系列に含まれる測定値を得るための測定ウィンドウを特定の精度に制限するものではない。例えば、本開示によれば、パラメータの複数の測定にわたって平均することによって得られる平均測定値もまた、時系列に含めることができる。時系列には、等間隔の時点または非等間隔の時点の値を含めることができる。「時系列」という用語は、本開示では、処理ステップが、監視されるパラメータ(例えば、ESI源のイオン化電流)の時間依存性を依然として反映する限り、「生データ」(例えば、電流センサから取得される)および(例えば、信号処理技術を使用して)処理された生データの両方を指すように使用される。
【0015】
本開示による「自動化された」または「自動で」という用語は、ユーザとの対話なしに機械によって実行される動作を指す。自動化されたステップは、ユーザとの対話を必要とするステップも含む方法の一部であり得る。例えば、ユーザは、本開示の技術の自動化されたステップをスケジュール設定または誘発し得る。
【0016】
本開示による「分析装置」は、分析機能を実行するための専用の装置である。いくつかの例では、分析装置は、試料(例えば、in vitro診断用の試料)の分析を実行するように構成することができる。例えば、分析装置は、vitro診断を行うための臨床診断システムであり得る。本開示の分析装置は、エレクトロスプレーイオン化源を備えた質量分析計(MS)に接続された少なくとも1つの液体クロマトグラフィ(LC)流を含む。
【0017】
本開示の分析装置は、必要性および/または所望のワークフローに従って、異なる構成を有することができる。追加の構成は、複数の装置および/またはモジュールを一緒に結合することによって得られることがある。「モジュール」は作業セルであり、通常は専用の機能を有する分析装置全体よりもサイズが小さい。この機能は分析的であることもあるが、分析前または分析後であることもあれば、分析前機能、分析機能または分析後機能のうちのいずれかの補助機能であることもある。特に、モジュールは、例えば、1つ以上の分析前および/または分析および/または分析後のステップを実行することによって、試料処理ワークフローの専用タスクを実行するための1つ以上の他のモジュールと協働するように構成することができる。
【0018】
特に、分析装置は、特定のタイプの分析用に最適化されたそれぞれのワークフローを実行するように設計された1つ以上の分析装置を含み得る。
【0019】
分析装置は、臨床化学、免疫化学、凝固作用、血液学などの1つ以上のための分析装置を含み得る。
【0020】
したがって、分析装置は、1つの分析装置、またはそのような分析装置のいずれかとそれぞれのワークフローとの組み合わせを含むことがあり、分析前および/または分析後モジュールは、個々の分析装置に結合され得るか、または複数の分析装置によって共有され得る。代替では、分析前および/または分析後の機能は、分析装置に統合されたユニットによって実行され得る。分析装置は、試料および/または試薬および/またはシステム流体のピペット操作および/またはポンピングおよび/または混合用の液体処理ユニットなどの機能ユニットと、分類、保管、移送、識別、分離、検出用の機能ユニットとを備えることができる。
【0021】
「試料」という用語は、1つ以上の目的の分析物を含むことが疑われ、定性的および/または定量的なその検出が特定の状態(例えば、臨床状態)に関連し得る生物学的材料を指す。
【0022】
試料は、血液、唾液、眼の水晶体液、脳脊髄液、汗、尿、乳、腹水、粘液、滑液、腹水、羊水、組織、細胞などを含む生理液などの生物学的供給源に由来する。試料は、血液からの血漿の調製、粘性流体の希釈、溶解など使用前に前処理されることができ、処理方法には、ろ過、遠心分離、蒸留、濃縮、妨害成分の不活性化、試薬の添加などが含まれることがある。試料は、場合によっては供給源から取得したまま直接使用されることも、例えば1つ以上のin vitro診断テストを実行できるようにするため、または目的の分析物を濃縮(抽出/分離/濃縮)するため、および/または目的の分析物の検出に干渉する可能性のある基質成分を除去するため、例えば、内部標準を追加した後、別の溶液で希釈した後、または試薬と混合した後、試料の特性を変更するために前処理や試料調製ワークフローの後に使用されることもある。
【0023】
「試料」という用語は、試料調製前の試料または試料調製後の試料のいずれか、または両方を示すために使用される傾向がある。例えば、「試料」という用語は、LC流への注入前の試料および移動相中のLC流への注入後の試料を指すことができる。
【0024】
目的の分析物の例は、ビタミンD、乱用薬物、治療薬、ホルモン、および一般的な代謝物である。ただし、リストは網羅的ではない。
【0025】
特に、分析装置は、試料の自動調製のための試料調製ステーションを含み得る。「試料調製ステーション」は、試料中の干渉基質成分を除去または少なくとも低減する、あるいは試料中の目的の分析物を濃縮することを目的とした一連の試料処理ステップを実行するように設計された1つ以上の分析装置または分析装置のユニットに接続された分析前モジュールである。このような処理ステップには、試料または複数の試料に対して、順次、並行して、または交互に実行される以下の処理動作、液体のピペット操作(吸引および/または分配)、液体のポンピング、試薬との混合、特定の温度での培養、加熱または冷却、遠心分離、分離、フィルタにかける、ふるい分け、乾燥、洗浄、再懸濁、分取、移送、保管...の任意の1つ以上が含まれることがある。
【0026】
試料は、例えば、一次管および二次管を含む試料管などの試料容器、またはマルチウェルプレート、または任意の他の試料運搬支持体中に提供され得る。試薬は、例えば、個々の試薬または試薬のグループを含む容器またはカセットの形態で配置されることがあり、また貯蔵区画またはコンベヤ内の適切な容器または位置に置かれることがある。他のタイプの試薬またはシステム流体は、バルク容器中に、またはライン供給を介して提供され得る。
【0027】
それぞれの文脈において異なるように指定されていない限り、パラメータの値に関連付けられた「約」という用語は、本開示において、指定された値からの±10%の偏差を含むことを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本開示の監視技術のフロー図。
図2】本開示に従って監視することができるESI源のエレクトロスプレーイオン化電流の例示的な時系列の図。
図3a】例示的なクロマトグラムの時系列の図(図3a)。
図3b】LC流内の圧力の図(図3b)。
図4】ESI源の電流測定装置の略図。
図5a】ESI源に結合された複数のLC流を含む例示的なシステムの図(図5a)。
図5b】ネブライザとサンプリング細管の直交配置を有するESI源(図5b)。
図6】ESI電流および異なるさらに監視されるパラメータを評価することを含む、例示的な監視技術のフロー図。
図7】本開示による実施例において、異なる監視されるパラメータの変化が、分析装置の異なる状態および応答にどのように関連付けられ得るかを要約する表。
【発明を実施するための形態】
【0029】
まず、本開示の監視技術の概要を、図1図4に関連して与える。続いて、本開示の監視技術を使用することができる分析装置および特にESI源の態様について、図5a~図5bに関連して説明する。本開示の監視技術の追加の態様および具体例は、図6および図7に関連して説明される。
【0030】
概要
図1は、本開示の監視技術のフロー図である。
【0031】
分析装置の状態を監視する自動化された方法は、ESI源のエレクトロスプレーイオン化電流を監視するステップ101と、ESI源の監視されるイオン化電流に基づいて、分析装置の複数の状態のうちのある状態を識別するステップ107とを含む。状態のうちの1つは、LC流のLCカラムの下流にある分析装置の液体クロマトグラフィ流にデッドボリュームが存在することである。
【0032】
これらのステップについては、後続のセクションで詳しく説明する。
【0033】
ESI電流を監視するステップには、時系列のESI電流値を生成するために任意の適切なセンサを使用するステップが含まれる。例えば、電流測定装置をESI源に接続して、ESI源のESI電流を測定できる。
【0034】
いくつかの例では、ESI電流は、1Hzを超える(例えば、5Hzを超える、または10Hzを超える)最小サンプリング周波数でサンプリングされる。この最小サンプリング周波数のサンプリングレートにより、一定の変更が時系列に反映され、複数の状態を識別できるようになる。
【0035】
図4は、ESI源の電流測定装置の略図である。ESIイオン源は、(例えば、第1の電極2に結合された高電圧源1を使用して)高電圧を印加するため2つの電極2、5を含み、その結果、ESIイオン源は質量分析計に入力するためのイオンを生成できる(ESI源の可能な構成についての詳細は、図5bに関連して以下で説明する)。
【0036】
図4の例では、第1の電極2は、LCカラムからESI源に移送される移動相を噴霧化できるESI源に含まれる。第2の電極5は、ESI源に生成されたイオンを収集するように構成されたサンプリング装置5a(例えば、サンプリング細管)に隣接して(例えば、図4に示されるようなカウンタープレートとして)配置される。
【0037】
ESI源の動作中、噴霧された試料が連続的にイオン化されると、電極2と電極5との間に電流が流れる(印加電圧の符号に応じて、負または正に帯電したイオンが生成され、ESI電流が一方向または反対方向に流れる)。このESI電流は、ESI源の電流測定装置3によって検出することができる。図4の例では、電流測定装置は、第2の電極5と第2の電圧源6aとを結合する導体に挿入された抵抗素子4に結合される。例えば、電流測定装置の2つの端子は、(例えば、ESI電流を示す抵抗素子4上の電圧降下を検出するため)抵抗素子4の2つのそれぞれの端子に電気的に接続されている。
【0038】
図4の例では、電流測定装置3は、検出された信号を処理するための電圧クランプ回路(例えば、信号を前処理するための増幅器およびローパスフィルタならびに信号をデジタル領域に変換するためのアナログデジタルコンバータ(「ADC」)回路)を含む。
【0039】
図4の構成は、単なる例示である。他の例では、ESI電流は様々な方法で、様々な装置を使用して検出できる。例えば、電流測定装置は、ESI源の様々な部分に結合できる。さらに、ESI電流を示す任意のパラメータを測定することができる(例えば、図4に示されるように、抵抗素子上の電圧降下)。その点で、ESI電流は直接または間接的に検出できる。
【0040】
さらに、本開示で使用される表現「監視されるイオン化電流」は、監視が電流値(例えば、アンペアの単位で)を定量化することを含むことを意味しない。これはいくつかの例では発生し得るが、他の例では、ESI電流を示すパラメータ(例えば、ESI電流に比例する電圧)が検出され得る。監視されるパラメータがESI電流に関する情報を保持することだけが必要である。以降の節では、ESI源の監視されるイオン化電流は、説明のために電流値の時系列として測定される。
【0041】
いくつかの例では、ESIに関する情報を保持する時系列は、1つ以上の信号処理ステップを経ることができる。例えば、システム圧力の単一の時系列を平滑化でき、異常値を削除できる。追加または代替として、複数の時系列(例えば、それぞれが単一の注入プロセスの少なくとも一部にわたる)は平均化され得る。次に、平均化された時系列はさらに処理され得る。さらに別の例では、時系列の1つ以上の部分が削除され得る。
【0042】
監視されるイオン化電流の時系列は、試料のLCカラムへの注入プロセスの特定の部分および/または試料注入プロセスに続く特定の圧力特性を有するLCグラジエントにわたることがある。場合によっては、監視されるイオン化電流の時系列は、実質的に完全なLCグラジエント(例えば、LCグラジエントの持続時間の90%超)にわたる可能性がある。他の例では、監視されるイオン化電流は、LCグラジエントおよび/または注入プロセスの特定の部分(例えば、LCグラジエントの持続時間の20%以下または10%以下をカバーするウィンドウ)にわたることがある。
【0043】
図2は、本開示に従って監視することができるESI源のエレクトロスプレーイオン化電流の例示的な時系列20の図である。見て分かるように、通常動作中に監視される第1の時系列21と、LCカラムの下流にあるデッドボリュームが存在するときに記録される第2の時系列22とは、目に見える異なる特性を有する。これらの違いは、LCカラムの下流にあるデッドボリュームの存在を識別するために使用できる。
【0044】
いくつかの例では、LCカラムの下流にあるデッドボリュームの存在の識別は、以前に監視された時系列と比較した、または参照時系列と比較した時系列の変化を評価するステップを含む。追加または代替として、LCカラムの下流にあるデッドボリュームの存在の識別は、時系列の全体的または局所的特徴を評価するステップを含む。
【0045】
以前に監視された時系列と比較した、または参照時系列と比較した時系列の変化を評価するステップは、ESI電流の減少、ESI電流の増加、ESI電流の変動、ESI電流の時系列におけるプロファイルシフト(つまり、時系列のプロファイルは実質的に変化しないままであるが、時間の参照点に対して時間において移動する)、およびESI電流の時系列のプロファイル変化(例えば、時系列が開始もしくは停止して振動動作を示す、または時系列のプロファイルにおいて異なる変化を示す)のうちの1つ以上を判定するステップを含み得る。判定は、時系列における変化の2値化もしくは定性的な評価(「減少した」など)、または定量的(「XXX減少した」)であり得る。
【0046】
時系列の全体的または局所的特徴の評価は、信号の立ち下がりまたは立ち上がりの大きさ、信号の立ち下がりまたは立ち上がりの速度、特定の点での信号値、局所的または全体的な最小値もしくは最大値、またはスペクトル特徴(例えば、特定の周波数帯域のエネルギー量)のうちの1つ以上を含み得る。
【0047】
いくつかの例では、ESI源の監視されるイオン化電流に基づいて、液体クロマトグラフィ流内のデッドボリュームの存在を識別するステップは、ESI源の監視されるイオン化電流の時系列におけるプロファイルシフトを評価するステップを含む。この場合、(参照時系列と比較して)ESI源の監視されるイオン化電流の時系列における時間シフトがある所定の閾値プロファイルシフトを超える場合(例えば、5秒超または10秒超)、液体クロマトグラフィ流内のデッドボリュームの存在が識別され得る。図2に示されるように、監視されるイオン化電流の時系列における時間シフトは、LCカラムの下流にあるデッドボリュームを識別するための適切な特性であり得る。見て分かるように、第1の時系列21および第2の時系列22は、比較的類似した形状すなわちプロファイルを有するが、一定の量だけ時間的にシフトしている。しかしながら、時系列の時間シフトは、LCカラムの下流にあるデッドボリュームを識別するための特定の適切な特性であり得るが、他の例では、ESI電流の他の特性を代替的または追加的に使用できる。
【0048】
いくつかの例では、LC流のLCカラムの下流にある分析装置の液体クロマトグラフィ流にデッドボリュームが存在することを識別するステップは、エレクトロスプレーイオン化電流の波形が、参照波形と比較された位相シフトを有するか否かを判定するステップを含む。
【0049】
時系列のプロファイルシフト(または本明細書で説明する時系列の任意の他の変化)は、監視される時系列を参照時系列と比較することによって判定できる。参照時系列は、静的であることがある(例えば、分析装置のセットアップもしくは保守動作後に記録される時系列)、または分析装置の動作中に動的に更新されることがある(例えば、参照時系列は、分析装置の動作中の現在の時系列よりも早い時点で監視される時系列であり得る)。
【0050】
他の例では、ESI電流(または本開示で論じられる任意の他の監視されるパラメータ)を評価するステップは、それぞれのパラメータについての単一の測定値(例えば、特定の参照時点での測定値)を比較するステップを含み得る。例えば、ESI電流またはその他のパラメータが特定の参照点で減少、増加、または一定のままか否かが評価され得る。
【0051】
本開示の監視技術では、ESI電流に加えて、追加のさらなるパラメータが監視され得る。これについては、次に説明する。
【0052】
さらに監視されるパラメータ
いくつかの例では、本開示の監視技術は、分析装置の液体クロマトグラフィ(LC)流内の圧力を含む1つ以上の追加のパラメータを監視するステップをさらに含む。分析装置の状態の識別は、複数の状態を区別するために、LC流内の監視される圧力にさらに基づく。
【0053】
例えば、本開示の監視技術は、分析装置の液体クロマトグラフィ(LC)流のクロマトグラムの1つ以上のクロマトグラフ特徴を含む1つ以上の追加のパラメータを監視するステップをさらに含む。これらの状況では、状態の識別は、複数の状態を区別するために、監視されるクロマトグラフ特徴にさらに基づく。
【0054】
クロマトグラフ特徴は、ピーク幅パラメータ(例えば、FWHMピーク幅または1/eピーク幅)、保持時間パラメータ、ピーク高さパラメータ、ピーク面積パラメータ、およびピーク対称性パラメータからなるリストから選択され得る。
【0055】
分析装置の状態を識別するプロセスでは、上記のESI電流と同じ方法でさらなるパラメータが処理され得る。例えば、上記のように相対的な変化が評価され得る。
【0056】
いくつかの例において、時系列は、複数の(例えば、それぞれの)追加のパラメータについて監視される。状態の識別は、以前に監視された時系列と比較した、または参照時系列と比較した時系列の変化を評価するステップを含む。追加または代替として、状態の識別は、時系列の全体的または局所的特徴を評価するステップを含み得る。
【0057】
追加の監視されるパラメータは、内部標準または既知の組成の別の試料において測定され得る。しかしながら、他の例では、追加の監視されるパラメータはまた、未知の組成の試料(例えば、患者の試料)において測定され得る。
【0058】
一例では、状態の識別は、少なくとも監視されるESI電流、監視される圧力、および2つ以上のクロマトグラフ特徴(例えば、保持時間、ピーク高さ、およびピーク幅)に基づく。1セットのパラメータの具体例は、以下に図7に関連して説明される。
【0059】
図3aは、クロマトグラムの2つの例示的な時系列を示す。第1の時系列31aは、分析装置が(仕様内で)正常に動作するときの(例えば、内部標準の物質の)クロマトグラムである。第2の時系列31bは、LCカラムの下流にあるデッドボリュームが存在するときの(例えば、内部標準の第1の時系列31aと同じ物質の)クロマトグラムである。ポストカラム・デッドボリュームが存在する場合、異なるクロマトグラフ特徴(例えば、ピークの高さおよびピーク幅)は、第1の時系列31aと第2の時系列31bとの間で異なることが分かる。したがって、ESI電流に加えてクロマトグラフ特徴を使用して、ポストカラム・デッドボリュームが識別され得る。しかしながら、上述のように、第1の時系列31aと第2の時系列31bとの間の変化には他の原因もあり得るため、ポストカラム・デッドボリュームを明確に識別するにはそれらだけでは十分でないことがある。
【0060】
図3bは、注入プロセスおよびLCグラジエント中の圧力の2つの例示的な時系列を示す。第1の時系列32aは、分析装置が正常に(仕様範囲内で)動作するときに取得される。第2の時系列32bは、LCカラムの下流のデッドボリュームが存在するときに取得される。これも上記で説明したように、ポストカラム・デッドボリュームが存在する場合、圧力の時系列は実質的に変化しない。ただし、以下で説明するように、圧力の時系列を使用して、分析装置の他の状態を識別できる。
【0061】
分析装置ハードウェア
次のセクションでは、本開示の監視技術を使用することができる液体クロマトグラフィ(LC)流に結合されたエレクトロスプレーイオン化源を備えた質量分析計(MS)を含む分析装置の追加の態様について、図5aおよび図5bに関連して説明する。
【0062】
図5aおよび図5bは、ネブライザとサンプリング細管の直交配置とを有するESI源(図5b)に結合された複数のLC流を含む例示的なシステム(図5a)を示す。
【0063】
図5aの例では、各LC流は、ローディングポンプ7a、7b、回転バルブを含む注入アセンブリ8a、8b、およびLCカラム9a、9bを含む。複数のLC流は、図5bに示されるように、流のそれぞれをESI源(および質量分析計)に接続することができる流選択バルブ12に接続される。
【0064】
動作中、ローディングポンプ7a、7bは、それぞれの注入アセンブリ8a、8bに移動相(例えば、水性液体と有機液体の混合物)を提供する。注入アセンブリ8a、8bは、試料をLC流に注入するための注入ポート10と、注入された試料を受け取るための試料ループ11とを含む。LC流の構成要素は、細管または他の流体コネクタによって接続できる。
【0065】
さて、図5aに示すように、LC流の流体経路において異なるデッドボリュームが生じ得る。例えば、図5aは、プレカラム・デッドボリューム14が生じ得るLCカラム9aの上流の可能な位置と、LCカラム9aの下流のポストカラム・デッドボリューム13の可能な位置とを示す(位置は、LC流の動作中に経時的に変化し得る)。
【0066】
いくつかの例では、本開示の監視技術を使用して、複数の流れを有する分析装置の複数のLC流のそれぞれにおける状態(例えば、ポストカラム・デッドボリューム)が検出され得る。
【0067】
図5aは、本発明の監視技術を使用できる分析装置のLC流の単なる構成例を示す。いくつかの例では、分析装置は追加のLC流を有する。さらに、注入アセンブリ8a、8bは、図5aに示されるものとは異なるように配置され得る。
【0068】
分析装置の流体経路は、図5bに示されるように、流れ選択バルブ12とESI源45とを接続する細管16によって、流れ選択バルブの下流に続く。
【0069】
図5bは、ネブライザとサンプリング細管の直交配置を備えたESI源45を示す。この例では、LCカラムの1つを出るLCの流れは、噴霧器針18を含むESIプローブ17を通って導かれる。このようにして、(上記でも議論されているように)LCの流れは、噴霧器針18の下流の容積で噴霧化され、そこでイオン化が発生し、イオン化された物質が気相に変化する。気相43内のイオンを収集するために、サンプリング装置19(例えば、サンプリング細管)が提供される。図5bの例では、ESIプローブ17とサンプリング装置19とは直交して配置されている。他の例では、ESIプローブとサンプリング装置を同軸に配置できる。
【0070】
ESI源45は、MSへのバックグラウンドイオン(例えば、溶媒クラスタ)の侵入を低減するカーテンガス(例えば、N2)を提供するためのアセンブリ42をさらに含む。アセンブリは、カーテンガスを提供するためのカーテンプレート41およびオリフィスアセンブリ42を有することができる。
【0071】
上述したように、例えば噴霧器針18とカーテンプレート41との間に高電圧が印加される。これらの要素間を流れるESI電流は(例えば、上記の装置によって)監視でき、分析装置の状態の識別プロセスで使用できる。
【0072】
他のESI源のESI電流もまた、適切なハードウェアで監視され得る。
【0073】
状態および応答
以降のセクションでは、本開示の技術を使用して(ポストカラム・デッドボリュームの存在に加えて)識別できる分析装置の異なる追加の状態について説明する。
【0074】
一般に、状態は、分析装置の特定の構成要素の経時変化、または分析装置の特定の構成要素のエラーもしくは欠陥のうちの1つ以上を含み得る。構成要素は、LCカラム、LCカラムヒータ、LC流またはその部分の1つ(例えば試料ループ)の流路に含まれるバルブ、およびESI源またはその部分の1つ(例えば、イオン源または噴霧器針)を含むリストから選択できる。他の例では、構成要素は、図5aまたは図5bに関連して説明された構成要素の1つであり得る。
【0075】
例えば、複数の状態は、プレカラム・デッドボリュームの存在、バルブエラー、噴霧器針の経年劣化、カラムの欠陥、カラムの経年劣化、カラムヒータの欠陥、および不安定な噴霧状態のうちの1つ以上を含み得る。
【0076】
エラーは、分析装置の構成要素(例えば、図5aまたは図5bに関連して説明された構成要素)の汚染によって引き起こされることがある。例えば、状態は、イオン源汚染またはESI源の噴霧器針の汚染に関連し得る。
【0077】
他の例では、状態は、LC流の流体経路の詰まりまたは漏れであり得る。状態は、いくつかの例では、LC流の経路の特定の部分における詰まりまたは漏れを含み得る。本開示の監視技術を使用して識別され得るさらなる例示的な状態は、以下で議論される。
【0078】
本開示の監視技術は、分析装置の判定された状態に応じて、複数の応答のうちの1つ以上の選択された応答を誘発するステップをさらに含む。一般に、誘発された応答は、識別された状態に関して操作者または第三者に通知するステップを含み得る。追加または代替として、誘発された応答は、エラーまたは欠陥に対処するための誘発手段を含み得る。
【0079】
例えば、複数の応答は、(例えば、分析装置のログまたは分析装置が使用される実験室もしくは他のユニットの中央ログにおいて)分析装置の判定された状態を記録することを含む応答を含む。追加または代替として、応答は、複数の状態のうちの特定の状態が識別されたことを示すフラグを設定することを含み得る。
【0080】
追加または代替として、複数の応答は、エラーメッセージを生成するステップを含む。例えば、エラーメッセージは、分析装置のグラフィカル・ユーザインタフェースに表示できる。追加または代替として、エラーメッセージを遠隔サイト(外部サービスプロバイダのサイトなど)に送信できる。
【0081】
追加または代替として、複数の応答は、自動保守動作の開始またはスケジュール設定を含む応答を含む。
【0082】
追加または代替として、複数の応答は、所定のチェックまたは保守動作を行うように操作者に要求することを含む。例えば、応答は、特定のエラーが発生したことを確認するよう操作者に要求することを含み得る。他の例では、応答は、分析装置の特定のエラーを解決するように操作者に要求することを含み得る。いくつかの例では、操作者または第三者に、(例えば、チェックリストおよび/またはチュートリアルの形式で)それぞれのチェックまたは保守動作を実行する方法に関する命令が与えられる。
【0083】
追加または代替として、複数の応答は、予防保守動作のスケジュール設定を含む。例えば、識別された状態(または識別された状態の傾向)を評価して、分析装置により重大なエラーが発生する可能性がある時点を判定することができる。この情報に基づいて、本開示の技術は、判定された時点の前に、(例えば、外部サービスプロバイダに通知することによって)対応する保守動作をスケジュール設定することを含み得る。
【0084】
チェックまたは保守動作は、分析装置の構成要素(例えば、上で論じられた、または図5aもしくは図5bに関連して説明された構成要素)の洗浄、再構成または交換を含み得る。例えば、チェックもしくは保守動作は、ESI源の細管の再接続、分析装置のLC流のカラムの交換、ESI源のイオン源の洗浄、ESI源の細管の洗浄もしくは交換、またはESI源の噴霧器針の洗浄もしくは交換のうちの1つであり得る。
【0085】
上記のように、分析装置の状態を判定するステップは、分析装置のエラー、任意選択で複数の所定のエラーのうちの1つのエラーを識別するステップを含み得る。
【0086】
いくつかの例では、複数の潜在的エラーのうちの1つのエラーは、ESI源のエレクトロスプレーイオン化電流および任意選択で分析装置の1つ以上の追加の測定パラメータが、許容範囲内または許容範囲外にあるか否かの判定に基づいて識別される。
【0087】
例えば、エラーは、ESI源の噴霧器針につながる細管内のエラーであり得る(例えば、エラーは、細管内の漏れを含み得る)。追加または代替として、エラーは、ESI源の噴霧器針の不安定な噴霧であり得る。追加または代替として、エラーはLCカラムのカラム経年劣化によって引き起こされるエラーであり得る。追加または代替として、エラーは、ESI源のESI噴霧器の経年劣化によって引き起こされるエラーであり得る。
【0088】
エレクトロスプレーイオン化電流、および任意選択で分析装置の1つ以上の追加の測定パラメータの評価は、分析装置の複数の状態を識別するための任意の適切な数値技術を含み得る。
【0089】
いくつかの例では、エレクトロスプレーイオン化電流および任意選択で分析装置の1つ以上の追加の測定パラメータに基づいて分析装置の状態を判定するステップが、複数の状態に対応する複数のクラスのうちの1つを識別する分級機を使用するステップを含む。分級機は、機械学習アルゴリズム(例えば、人工ニューラルネットワーク)によって訓練された分級機であり得る。
【0090】
いくつかの例では、本開示の監視技術は、監視されるエレクトロスプレーイオン化電流および任意選択で1つ以上の追加の測定パラメータに基づいて、エレクトロスプレーイオン化電流および任意選択で1つ以上の追加の測定パラメータの発生を経時的に予測するステップを含み得る。この方法は、エレクトロスプレーイオン化電流および任意選択で1つ以上の追加の測定パラメータの予測された発生に基づいて、応答を誘発するステップをさらに含み得る。例えば、ESI電流の予測は、ESI電流が(例えば、特定の一定または非一定の速度で)増加することをもたらし得る。本開示の監視技術は、分析装置の状態の識別の一部として、特定の時点で監視されるパラメータをそれぞれのパラメータの予測値と比較することができる。
【0091】
図6は、ESI電流および異なるさらに監視されるパラメータを評価することを含む、例示的な監視技術のフロー図である。
【0092】
第1のステップで、試料注入が開始される71。ESI電流および複数のクロマトグラフ特徴が監視される72。ESI電流および複数のクロマトグラフ特徴を含む監視されるパラメータに基づいて、分析装置の状態が識別される73。図6の例では、識別できる状態の6つのクラスがある。
【0093】
第1のクラスは、分析装置が正常に(つまり、仕様の範囲内で)動作する状態に関係する。ESI電流および複数のクロマトグラフ特徴の評価により、分析装置が正常に動作している場合、誘発された応答がこの結果をログに記録できる。
【0094】
第2のクラスは、ESI針に接続された細管に漏れがある状態に関する。ESI電流および複数のクロマトグラフ特徴の評価が第2のクラスをもたらす場合、誘発された応答は、(例えば、対応する情報をグラフィカル・ユーザディスプレイに表示すること、および/または対応する情報を含むメッセージを送信することによって)操作者がLC流の細管を再接続することの誘発であり得る。
【0095】
第3のクラスは、上記のようにポストカラム・デッドボリュームの存在に関連する。ESI電流および複数のクロマトグラフ特徴の評価が第3のクラスをもたらす場合、誘発された応答は、(例えば、対応する情報をグラフィカル・ユーザディスプレイに表示すること、および/または対応する情報を含むメッセージを送信することによって)操作者がデッドボリュームのために細管をチェックすることの誘発であり得る。
【0096】
第4のクラスは、LCカラムの経年劣化状態に関する。ESI電流および複数のクロマトグラフ特徴の評価が第4のクラスをもたらす場合、誘発された応答は、(例えば、対応する情報をグラフィカル・ユーザディスプレイに表示すること、および/または対応する情報を含むメッセージを送信することによって)操作者がそれぞれのLCカラムを交換することの誘発であり得る。
【0097】
第5のクラスは、ESI源の不安定な噴霧状態に関する。ESI電流および複数のクロマトグラフ特徴の評価が第5のクラスをもたらす場合、誘発された応答は、(例えば、対応する情報をグラフィカル・ユーザディスプレイに表示すること、および/または対応する情報を含むメッセージを送信することによって)操作者がESI源のイオン源を洗浄することの誘発であり得る。
【0098】
第6のクラスは、ESI源における放電の発生に関する。ESI電流および複数のクロマトグラフ特徴の評価が第6のクラスをもたらす場合、誘発された応答は、保守動作を実行するために外部サービスを呼び出すことであり得る。
【0099】
第7のクラスは、ESI源における噴霧器針の経年劣化に関する。ESI電流および複数のクロマトグラフ特徴の評価が第7のクラスをもたらす場合、誘発された応答は、(例えば、対応する情報をグラフィカル・ユーザディスプレイに表示すること、および/または対応する情報を含むメッセージを送信することによって)操作者が噴霧器針を洗浄または交換することの誘発であり得る。
【0100】
他の例では、本開示の監視技術は、図6に示されるクラス(例えば、クラス0から3のみ)のサブセットを識別することのみを含み得る。
【0101】
追加または代替として、操作者が特定のチェックまたは保守動作を実行することを誘発する代わりに、応答はまた、自動的なチェックまたは保守動作(例えば、イオン源またはESI源の噴霧器針の洗浄)を誘発することを含み得る。
【0102】
状態ロジック表の例
図7は、本開示による実施例において、異なる監視されるパラメータの変化が、分析装置の異なる状態および応答にどのように関連付けられ得るかを要約する表である。
【0103】
図7の表において、18個の異なるエラークラスが応答例とともにリストされている。図7の例では、識別プロセスは、特定のパラメータが減少する(v)、増加する(^)、変動する(~)、一定のままである(-)、またはプロファイルシフト(Δ)を経験するか否かを判定するステップを含む。いずれの場合も、変化は、それが所定のしきい値を超えている場合にのみ登録できる(「少なくともxだけ減少」)。いくつかの例では、前述の挙動の2つ以上が組み合わされて検出され得る(例えば、パラメータが減少し、同時に変動し得る)。見て分かるように、図7の例は、(上記で説明したように)相対メトリックを使用して、監視されるパラメータまたは時系列を、同じパラメータまたは同じ時系列の以前の測定値と比較する。
【0104】
図7の例では、7つの異なるパラメータが監視される。ESI電流(「x1i」)と、LC流圧力(「x2p」)と、ピーク幅パラメータ(「x3Δ」)、ピーク面積パラメータ(「x4A」)、保持時間パラメータ(「x5RT」およびピーク高さパラメータ(「x6H」を含む4つのクロマトグラフ特徴である。クロマトグラフパラメータは、予想されるパラメータが分かっている内部標準に基づいて判定される。他の例では、これらのパラメータのサブセットのみを識別プロセスで使用できる。
【0105】
ここで、図7は、分析装置の状態を識別するための判定ロジックを指定する。それぞれが1つの状態を指定するそれぞれのカラムに示されているように、各監視されるパラメータの挙動が評価される。検出された挙動に基づいて、状態が識別される。例えば、ESI電流およびピーク面積が一定、圧力が一定または増加、ピーク面積が増加、ピーク高さが減少、保持時間が増加または減少の場合、カラムの経年劣化状態が識別される。フラグの設定、各LCカラムの交換および品質管理試料の実行の保守動作の誘発を含む、それぞれの応答が誘発され得る。
【0106】
見て分かるように、図7の例は、監視されるパラメータの動作に基づいて特定の状態を識別するために、明示的な規則が定義される。他の例では、そのような明示的なルールは定義されない。例えば、機械学習分級機は、監視されるパラメータ(または監視されるパラメータの時系列から抽出された1つ以上の特徴)を受け取り、対応する状態を識別できる。
【0107】
図7に戻ると、表は、上述のパラメータのセットに基づいて識別できる18の状態をリストしている。これらの状態については、後のセクションで簡単に説明する。
【0108】
ESI電流が一定のままであり、監視される圧力が一定であるもしくは増加しており、監視されるピーク面積が増加しており、監視されるピーク面積が一定のままであり、監視される保持時間が増加または減少し、監視されるピーク高さが減少する場合、LCカラムの欠陥が識別され得る。
【0109】
ESI電流プロファイルがシフトし、監視される圧力プロファイルがシフトし、監視されるピーク面積が一定のままであり、監視される保持時間が増加し、監視されるピーク高さが一定であるまたは減少する場合、プレカラム・デッドボリュームが識別され得る。
【0110】
ESI電流プロファイルがシフトし、監視される圧力が一定のままであり、監視されるピーク面積が増加し、監視されるピーク面積および監視される保持時間が一定のままであり、監視されるピーク高さが減少する場合、ポストカラム・デッドボリュームが識別され得る。
【0111】
ESI電流プロファイルがシフトし、監視される圧力が減少もしくは増加し、プロファイルがシフトし、監視されるピーク面積が増加し、監視されるピーク面積が一定であるかもしくは減少し、監視される保持時間が減少もしくは増加し、監視されるピーク高さが減少するもしくは一定である場合、溶離液組成エラーが識別され得る。
【0112】
ESI電流が減少し、監視される圧力が一定のままであるかもしくはプロファイルシフトを示し、監視されるピーク面積が増加し、監視されるピーク面積が減少するかもしくは一定のままであり、監視される保持時間が減少もしくは増加し、監視されるピーク高さが減少するもしくは一定である場合、LCカラムの上流の漏れ(「前漏れ」)が識別され得る。
【0113】
追加または代替として、ESI電流が減少し、監視される圧力が増加し、監視されるピーク面積が増加し、監視されるピーク面積が一定のままであり、監視される保持時間が増加し、監視されるピーク高さが減少する場合、LCカラムの上流の漏れ(「前漏れ」)が識別され得る。
【0114】
ESI電流が減少し、監視される圧力が一定のままであり、監視されるピーク面積が一定のままであり、監視されるピーク面積が減少し、監視される保持時間が一定のままであり、監視されるピーク高さが減少する場合、LCカラムの下流の漏れ(「後漏れ」)が識別され得る。
【0115】
流路の詰まりは、ESI電流が減少し、監視される圧力が増加する場合に識別され得る。
【0116】
ESI電流がプロファイルシフトを示し、監視される圧力が減少および変動し、監視されるピーク面積が増加し、監視されるピーク面積が一定のままであり、監視される保持時間が減少もしくは増加し、監視されるピーク高さが減少する場合、(例えば、分析装置のローディングポンプ内の)バルブエラーが識別され得る。
【0117】
追加または代替として、ESI電流が減少し、監視される圧力が減少し、監視されるピーク面積が増加し、監視されるピーク面積が一定のままであり、監視される保持時間が減少もしくは増加し、監視されるピーク高さが減少する場合、(例えば、分析装置のローディングポンプ内の)バルブエラーが識別され得る。
【0118】
ESI電流が減少および変動し、監視される圧力が減少および変動し、監視されるピーク面積が増加し、監視されるピーク面積が一定のままであり、監視される保持時間が増加し、監視されるピーク高さが減少する場合、LC流内の空気の存在が識別され得る。
【0119】
ESI電流が一定のままであり、監視される圧力が増加し、監視されるピーク面積が増加し、監視されるピーク面積が一定のままであり、監視される保持時間が増加し、監視されるピーク高さが減少する場合、LCカラム・ヒータエラーが識別され得る。
【0120】
ESI電流が変動し、監視される圧力が一定のままであり、監視されるピーク面積が一定のままであり、監視されるピーク面積が減少し、監視される保持時間が一定のままであり、監視されるピーク高さが減少する場合、不安定なESI噴霧状態が識別され得る。
【0121】
ESI電流が変動および減少し、監視される圧力が一定のままであり、監視されるピーク面積が一定のままであり、監視されるピーク面積が減少し、監視される保持時間が一定のままであり、監視されるピーク高さが減少する場合、ESI針の経年劣化が識別され得る。
【0122】
監視される圧力が一定のままであり、監視されるピーク面積が一定のままであり、監視されるピーク面積が減少し、監視される保持時間が一定のままであり、監視されるピーク高さが減少する場合、供給源汚染状態が識別され得る。
【0123】
ESI電流および監視される圧力が一定のままであり、監視されるピーク面積が一定のままであり、監視されるピーク面積が減少し、監視される保持時間が一定のままであり、監視されるピーク高さが減少する場合、質量シフト状態が識別され得る。
【0124】
ESI電流が減少し、監視される圧力が一定のままであり、監視されるピーク面積が一定のままであり、監視されるピーク面積が減少し、監視される保持時間が一定のままであり、監視されるピーク高さが減少する場合、流れ制御装置エラーが識別され得る。
【0125】
見て分かるように、本開示の技術は、ESI電流および1つ以上の追加の監視されるパラメータが、2つ以上の定性的挙動(例えば、増加する、減少する、一定のままである、振動するもしくはプロファイルシフトを示す、またはこれらの挙動の2つ以上の組み合わせ)のうちの1つを示すか否かを判定し、判定された挙動に基づいて状態を識別することを含み得る。
【0126】
図7に関連して説明した各状態または、2つ以上の状態の組み合わせ(および監視されたパラメータに基づいてそれらを識別する特定の方法)は、本開示の例では、ポストカラム・デッドボリュームに加えて、複数の状態に含まれ得る。さらに、以下で説明するように、2つ以上の状態の組み合わせ(および監視されたパラメータに基づいてそれらを識別する特定の方法)はまた、いくつかの例では、識別される状態の1つとして、LC流のLCカラムの下流にある分析装置の液体クロマトグラフィ流におけるデッドボリュームを含まない、分析装置の状態を監視する方法において使用できる。
【0127】
図7はまた、それぞれの状態が検出されたときに誘発され得る特定の応答を定義する。応答は上記で詳細に説明されており、簡潔にするために繰り返さない。
【0128】
代替の状態識別技術
前のセクションでは、識別された状態の1つが、LC流のLCカラムの下流にある分析装置の液体クロマトグラフィ流内のデッドボリュームの存在である、本開示による技術が説明された。しかしながら、本開示はまた、ポストカラム・デッドボリューム以外の分析装置の構成要素の他の状態が検出される(そしてポストカラム・デッドボリュームは検出された状態の1つではない可能性がある)他の例もカバーする。
【0129】
一般に、エレクトロスプレーイオン化源を備えた質量分析計(MS)を含む分析装置の状態を監視する自動化された方法は、ESI源のエレクトロスプレーイオン化電流を監視するステップと、ESI源の監視されるイオン化電流に基づいて、分析装置の構成要素の状態を識別するステップとを含み得る。
【0130】
この方法は、特定の態様がポストカラム・デッドボリューム検出に固有でない限り、識別された状態の1つがポストカラム・デッドボリュームであることを必ず含む監視技術の文脈で、上記および下記のいずれかの技術を使用できる。
【0131】
例えば、状態は、分析装置の特定の構成要素の経時変化、または分析装置の特定の構成要素のエラーもしくは欠陥のうちの1つ以上を含み得る。いくつかの例では、複数の状態は、プレカラム・デッドボリュームの存在、バルブエラー、噴霧器針の経年劣化、カラムの欠陥、カラムの経年劣化、不安定な噴霧、詰まり、漏れ、およびイオン源汚染のうちの1つ以上を含み得る。他の例では、状態は、図7に関連して上記で説明された状態の1つを含み得る。
【0132】
いくつかの例では、自動化された方法は、分析装置の液体クロマトグラフィ(LC)流の圧力を含む1つ以上の追加のパラメータ(例えば、分析装置の液体クロマトグラフィ(LC)流のクロマトグラムの1つ以上のクロマトグラフ特徴および/または分析装置の液体クロマトグラフィ(LC)流の圧力)を監視するステップを含むことができ、状態の識別が、複数の状態を区別するために、監視される追加のパラメータにさらに基づく。
【0133】
コンピュータ実装
本開示はまた、液体クロマトグラフィ(LC)流に結合されたエレクトロスプレーイオン化源を備えた質量分析計(MS)を含む分析装置の状態の技術を実行するように構成されているコンピュータシステムに関する。
【0134】
いくつかの例では、コンピュータシステムは、分析装置(またはその一部)の制御装置であり得る。しかしながら、他の例では、コンピュータシステムは、ネットワークを介して分析装置にのみ接続することができ、分析装置の制御装置の一部ではない。例えば、コンピュータシステムは、病院または研究室の管理システム、または分析装置のベンダーまたはサービスプロバイダのコンピュータシステムであり得る。
【0135】
コンピュータシステムは、液体クロマトグラフィ流の注入アセンブリのシステム圧力の時系列を取得することのみが必要である。これは、コンピューティングシステムがこの情報をネットワーク経由で受信することを意味する。しかしながら、他の例では、上述のように、コンピューティングシステムはまた、分析装置の機能(例えば、圧力の測定または応答の誘発)も制御し、これは、分析装置の制御装置であることを意味する。
【0136】
本開示のコンピューティングシステムは、特定のソフトウェアまたはハードウェア構成に限定されない。ソフトウェアまたはハードウェア構成が、本開示による液体クロマトグラフィ(LC)流に結合されたエレクトロスプレーイオン化源を備えた質量分析計(MS)を含む分析装置の状態を監視するための技術のステップを実行できる限り、コンピューティングシステムは、このソフトウェアまたはハードウェア構成を有することができる。
【0137】
本開示はまた、コンピュータシステムによって実行されたときに、コンピュータシステムに、本開示による液体クロマトグラフィ(LC)流に結合されたエレクトロスプレーイオン化源を備えた質量分析計(MS)を含む分析装置の状態を監視するための技術のステップを実行するように促す命令が格納されたコンピュータ可読媒体に関する。
【0138】
プログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されるときに、本明細書に含まれる1つ以上の実施形態において、本開示による方法を実行するためのコンピュータ実行可能命令を含むコンピュータプログラムがさらに開示および提案される。具体的には、コンピュータプログラムは、コンピュータ可読データキャリアに格納され得る。したがって、具体的には、本明細書に開示される1つ、2つまたはそれ以上、またはすべての方法ステップは、コンピュータまたはコンピュータネットワークまたは任意の適切なデータ処理器具を使用して、好ましくはコンピュータプログラムを使用して実行され得る。
【0139】
プログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されるときに、本明細書に含まれる1つ以上の実施形態において、本開示による方法を実行するために、プログラムコードを有するコンピュータプログラム製品がさらに開示および提案される。具体的には、プログラムコードは、コンピュータ可読データキャリアに格納され得る。
【0140】
データ構造が格納されたデータキャリアがさらに開示および提案されており、これは、コンピュータまたはコンピュータネットワークのワーキングメモリまたはメインメモリなどのコンピュータまたはコンピュータネットワークにロードした後、本明細書で開示される1つ以上の実施形態による方法を実行し得る。
【0141】
プログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されるときに、本明細書に含まれる1つ以上の実施形態による方法を実行するために、マシン可読キャリアに格納されたプログラムコードを有するコンピュータプログラム製品がさらに開示および提案される。本明細書で使用される場合、コンピュータプログラム製品は、取引可能な製品としてのプログラムを指す。製品は一般に、紙のフォーマットなどの任意のフォーマットで、またはコンピュータ可読データキャリア上に存在する。具体的には、コンピュータプログラム製品は、データネットワークを介して配布されてもよい。
【0142】
本明細書で開示される1つ以上の実施形態による方法を実行するための、コンピュータシステムまたはコンピュータネットワークによって読み取り可能な命令を含む変調データ信号がさらに開示および提案される。
【0143】
本開示のコンピュータ実施態様を参照すると、本明細書に開示される実施形態の1つ以上による方法のうちの1つ以上の方法ステップまたはすべての方法ステップは、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用することによって実行され得る。したがって、一般に、データの提供および/または操作を含む方法ステップのいずれかは、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用することによって実行され得る。一般に、これらの方法ステップは、試料の提供および/または測定を実行する特定の態様などの手作業を必要とする方法ステップを通常除いて、任意の方法ステップを含み得る。
【0144】
少なくとも1つのプロセッサを備えるコンピュータまたはコンピュータネットワークがさらに開示および提案され、プロセッサは、この記述で説明される実施形態のうちの1つによる方法を実行するように適合される。
【0145】
データ構造がコンピュータ上で実行されている間に、本明細書に記載された実施形態の1つによる方法を実行するように適合されたコンピュータロード可能データ構造がさらに開示および提案される。
【0146】
記憶媒体がさらに開示および提案され、データ構造が記憶媒体に記憶され、データ構造がコンピュータまたはコンピュータネットワークのメイン記憶部および/または作業用記憶部にロードされた後、本明細書に記載された実施形態の1つによる方法を実行するように適合される。
【0147】
さらなる態様
本開示の液体クロマトグラフィ(LC)流に結合されたエレクトロスプレーイオン化源を備えた質量分析計(MS)を含む分析装置の状態を監視するための技術のいくつかの態様が、前のセクションで議論された。さらに、本開示の液体クロマトグラフィ(LC)流に結合されたエレクトロスプレーイオン化源を備えた質量分析計(MS)を含む分析装置の状態を監視するための技術はまた、以下の態様に従って実施することができる。
【0148】
態様1.液体クロマトグラフィ(LC)流に結合されたエレクトロスプレーイオン化(ESI)源を備えた質量分析計(MS)を含む分析装置の状態を監視する自動化された方法であって、この方法が、
ESI源のエレクトロスプレーイオン化電流を監視するステップと、
ESI源の監視されるイオン化電流に基づいて、分析装置の複数の状態のうちのある状態を識別するステップと
を含み、
状態のうちの1つは、LC流のLCカラムの下流にある分析装置の液体クロマトグラフィ流にデッドボリュームが存在することである、自動化された方法。
【0149】
態様2.エレクトロスプレーイオン化(ESI)源を備えた質量分析計(MS)を含む分析装置の状態を監視する自動化された方法であって、この方法が、
ESI源のエレクトロスプレーイオン化電流を監視するステップと、
ESI源の監視されるイオン化電流に基づいて、分析装置の構成要素の状態を識別するステップと
を含む、自動化された方法。
【0150】
態様3.分析装置の液体クロマトグラフィ(LC)流内の圧力を含む1つ以上の追加のパラメータを監視するステップをさらに含み、状態の識別が、複数の状態を区別するために、監視される追加のパラメータにさらに基づく、態様1または態様2に記載の方法。
【0151】
態様4.分析装置の液体クロマトグラフィ(LC)流のクロマトグラムの1つ以上のクロマトグラフ特徴を含む1つ以上の追加のパラメータを監視するステップをさらに含み、状態の識別が、複数の状態を区別するために、監視される追加のパラメータにさらに基づく、態様1から3のいずれか1つに記載の方法。
【0152】
態様5.クロマトグラフ特徴が、ピーク幅パラメータ、保持時間パラメータ、ピーク高さパラメータ、ピーク面積パラメータ、およびピーク対称性パラメータからなるリストから選択される、態様4に記載の方法。
【0153】
態様6.状態が、分析装置の特定の構成要素の経時変化、または分析装置の特定の構成要素のエラーもしくは欠陥のうちの1つ以上を含む、態様1から5のいずれか1つに記載の方法。
【0154】
態様7.複数の状態が、
プレカラム・デッドボリュームの存在と、
バルブエラーと、
スプレーニードルの経年劣化と、
カラムの欠陥と、
カラムの経年劣化と、
不安定な噴霧と、
詰まりと、
漏れと、
イオン源汚染と
のうちの1つ以上をさらに含む、態様1から6のいずれか1つに記載の方法。
【0155】
態様8.複数の状態のうちのある状態の識別が、監視されるパラメータの減少、監視されるパラメータの増加、監視されるパラメータの変動、監視されるパラメータの時系列におけるシフト、および監視されるパラメータの時系列のプロファイル変化のうちの1つ以上を判定するステップを含む、態様1から7のいずれか1つに記載の方法。
【0156】
態様9.ESI源の監視されるイオン化電流に基づいて、液体クロマトグラフィ流内のデッドボリュームの存在を識別するステップは、ESI源の監視されるイオン化電流の時系列におけるプロファイルシフトを評価するステップを含む、態様8に記載の方法。
【0157】
態様10.ESI源の監視されるイオン化電流の時系列におけるプロファイルシフトがある所定の閾値プロファイルシフトを超える場合、液体クロマトグラフィ流内のデッドボリュームの存在が識別される、態様9に記載の方法。
【0158】
態様11.追加の測定パラメータが内部標準において測定される、態様2から10のいずれか1つに記載の方法。
【0159】
態様12.
分析装置の判定された状態に応じて、複数の応答のうちの1つ以上の選択された応答を誘発するステップ
をさらに含む、態様1から11のいずれか1つに記載の方法。
【0160】
態様13.複数の応答が、分析装置の判定された状態を記録することを含む応答を含む、態様12に記載の方法。
【0161】
態様14.複数の応答が、自動保守動作を開始またはスケジュール設定することを含む応答を含む、態様12または態様13に記載の方法。
【0162】
態様15.複数の応答がエラーメッセージを生成することを含む、態様12から14のいずれか1つに記載の方法。
【0163】
態様16.複数の応答が、所定の保守動作を行うように操作者に要求することを含む、態様12から15のいずれか1つに記載の方法。
【0164】
態様17.複数の応答が、サービスプロバイダに通知することを含む、態様12から16のいずれか1つに記載の方法。
【0165】
態様18.複数の応答が、予防保守動作をスケジュール設定することを含む、態様12から17のいずれか1つに記載の方法。
【0166】
態様19.保守動作が、ESI源の細管の再接続、分析装置のLC流のカラムの交換、ESI源のイオン源の洗浄、およびESI源の細管の洗浄または交換のうちの1つである、態様14、16または18のいずれか1つに記載の方法。
【0167】
態様20.分析装置の状態を判定するステップが、分析装置のエラー、任意選択で複数の所定のエラーのうちの1つのエラーを識別するステップを含む、態様1から19のいずれか1つに記載の方法。
【0168】
態様21.LC流のLCカラムの下流にある分析装置の液体クロマトグラフィ流にデッドボリュームが存在することを識別するステップは、エレクトロスプレーイオン化電流の波形が、参照波形と比較された位相シフトを有するか否かを判定するステップを含む、態様1から20のいずれか1つに記載の方法。
【0169】
態様22.エラーがESI源の噴霧器針につながる細管のエラーであり、任意選択で細管内の漏れである、態様20または21に記載の方法。
【0170】
態様23.エラーが、ESI源の噴霧器針の不安定な噴霧である、態様20から22のいずれか1つに記載の方法。
【0171】
態様24.エラーが、LCカラムのカラム経年劣化によって引き起こされる、態様20から23のいずれか1つに記載の方法。
【0172】
態様25.エラーが、ESI源のESI噴霧器の経年劣化によって引き起こされる、態様20から24のいずれか1つに記載の方法。
【0173】
態様26.分析装置の状態を判定するステップは、ESI源のエレクトロスプレーイオン化電流および任意選択で分析装置の1つ以上の追加の測定パラメータが、それぞれの許容範囲内または許容範囲外にあるか否かを判定するステップを含む、態様1から25のいずれか1つに記載の方法。
【0174】
態様27.1つ以上の許容範囲が、それぞれのパラメータの参照データに基づいて定義される、態様26に記載の方法。
【0175】
態様28.複数の潜在的エラーのうちの1つのエラーが、ESI源のエレクトロスプレーイオン化電流および任意選択で分析装置の1つ以上の追加の測定パラメータが、許容範囲内または許容範囲外にあるか否かの判定に基づいて識別される、態様26または態様27に記載の方法。
【0176】
態様29.エレクトロスプレーイオン化電流および任意選択で分析装置の1つ以上の追加の測定パラメータに基づいて分析装置の状態を判定するステップが、複数のエラークラスのうちの1つを識別する分級機を使用するステップを含む、態様1から28のいずれか1つに記載の方法。
【0177】
態様30.分級機が、機械学習アルゴリズムによって訓練された分級機である、態様29に記載の方法。
【0178】
態様31.監視されるエレクトロスプレーイオン化電流および任意選択で1つ以上の追加の測定パラメータに基づいて、エレクトロスプレーイオン化電流および任意選択で1つ以上の追加の測定パラメータの発生を経時的に予測するステップをさらに含む、態様1から30のいずれか1つに記載の方法。
【0179】
態様32.
エレクトロスプレーイオン化電流および任意選択で1つ以上の追加の測定パラメータの予測された発生に基づいて、応答を誘発するステップをさらに含む、態様31に記載の方法。
【0180】
態様33.エレクトロスプレーイオン化電流が、噴霧針と対向電極との間を流れる電流である、態様1から32のいずれか1つに記載の方法。
【0181】
態様34.態様1から33に記載の方法のうちのいずれか1つのステップを実行するように構成されているコンピュータシステム。
【0182】
態様35.コンピュータシステムが分析装置の制御装置である、態様34に記載のコンピュータシステム。
【0183】
態様36.内部に格納された命令を有するコンピュータ可読媒体であって、命令が、コンピュータシステムによって実行されたときに、コンピュータシステムに態様1から33に記載の方法のうちのいずれか1つのステップを実行するように促す、コンピュータ可読媒体。
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5a
図5b
図6
図7