(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
H03H 9/25 20060101AFI20240729BHJP
【FI】
H03H9/25 A
H03H9/25 C
(21)【出願番号】P 2020149887
(22)【出願日】2020-09-07
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北島 正幸
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-053812(JP,A)
【文献】特開平06-045866(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0179919(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/00-9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の第1面から前記第1面とは反対の第2面に貫通して設けられる第1ビア配線と、
前記基板の前記第2面上に設けられ、前記第1ビア配線に電気的に接続される第1端子と、
前記基板の前記第1面上に設けられ、前記第1ビア配線の前記基板の前記第1面における第1領域のうちの一部である第1部分領域
に他の部材を介さずに重な
り、前記第1部分領域に重なる位置に圧電層を有する絶縁層と、
前記圧電層上に設けられる
弾性波素子と、
前記第1ビア配線の前記第1領域のうちの前記第1部分領域とは異なる第2部分領域に接して、前記
弾性波素子と前記第1ビア配線とを電気的に接続する配線と、を備える電子部品。
【請求項2】
前記第1ビア配線の前記第1部分領域は、前記第1ビア配線の前記第1領域の中心を少なくとも含む領域である、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記第1ビア配線の前記第1部分領域は、前記第1ビア配線の前記第1領域の半分以上の領域である、請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記基板の前記第1面上に設けられ、前記
弾性波素子を囲む環状金属層と、
前記
弾性波素子との間に空間を有するように前記環状金属層上に設けられるリッドと、
前記基板の前記第2面上に設けられる第2端子と、
前記基板の前記第1面から前記第2面に貫通して設けられ、前記環状金属層と前記第2端子とを電気的に接続する第2ビア配線と、を備え、
前記絶縁層は、前記第2ビア配線の前記基板の前記第1面における第2領域のうちの一部である第3部分領域
に他の部材を介さずに重なり、
前記第3部分領域に重なる位置に前記圧電層を有し、
前記環状金属層は、前記第2ビア配線の前記第2領域のうちの前記第3部分領域とは異なる第4部分領域に接して、前記第2ビア配線に電気的に接続される、請求項1から3のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項5】
前記環状金属層と前記絶縁層は、前記第2ビア配線の前記第3部分領域上において重なる、請求項4に記載の電子部品。
【請求項6】
前記絶縁層は前記基板に直接接合されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項7】
前記絶縁層は前記第1部分領域に接触している、請求項1から6のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項8】
前記基板はサファイア基板であり、
前記圧電層はタンタル酸リチウム層又はニオブ酸リチウム層である、請求項
1から7のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項9】
前記圧電層上に複数の前記弾性波素子で構成されるフィルタが設けられ、
前記フィルタに電気的に接続される複数の前記第1ビア配線が設けられ、
前記圧電層は前記複数の第1ビア配線の全てで前記第1部分領域と重なる、請求項
1から8のいずれか一項に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
基板の第1面上に設けられた絶縁層上に素子が設けられ、第1面とは反対の第2面上に端子が設けられ、素子と端子が基板及び絶縁層を貫通するビア配線を介して電気的に接続された電子部品が知られている(例えば特許文献1から3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-157922号広報
【文献】特開2017-169139号広報
【文献】特開2020-65158号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板の第1面上の絶縁層上に設けられた素子と第1面とは反対の第2面上に設けられた端子とが基板を貫通するビア配線を介して電気的に接続される場合、温度変化に伴う基板の変形によってビア配線に応力が掛かり、ビア配線にクラック及び/又は断線が生じてしまうことがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、ビア配線にクラック及び断線が生じることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基板と、前記基板の第1面から前記第1面とは反対の第2面に貫通して設けられる第1ビア配線と、前記基板の前記第2面上に設けられ、前記第1ビア配線に電気的に接続される第1端子と、前記基板の前記第1面上に設けられ、前記第1ビア配線の前記基板の前記第1面における第1領域のうちの一部である第1部分領域に他の部材を介さずに重なり、前記第1部分領域に重なる位置に圧電層を有する絶縁層と、前記圧電層上に設けられる弾性波素子と、前記第1ビア配線の前記第1領域のうちの前記第1部分領域とは異なる第2部分領域に接して、前記弾性波素子と前記第1ビア配線とを電気的に接続する配線と、を備える電子部品である。
【0007】
上記構成において、前記第1ビア配線の前記第1部分領域は、前記第1ビア配線の前記第1領域の中心を少なくとも含む領域である構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記第1ビア配線の前記第1部分領域は、前記第1ビア配線の前記第1領域の半分以上の領域である構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記基板の前記第1面上に設けられ、前記弾性波素子を囲む環状金属層と、前記弾性波素子との間に空間を有するように前記環状金属層上に設けられるリッドと、前記基板の前記第2面上に設けられる第2端子と、前記基板の前記第1面から前記第2面に貫通して設けられ、前記環状金属層と前記第2端子とを電気的に接続する第2ビア配線と、を備え、前記絶縁層は、前記第2ビア配線の前記基板の前記第1面における第2領域のうちの一部である第3部分領域に他の部材を介さずに重なり、前記第3部分領域に重なる位置に前記圧電層を有し、前記環状金属層は、前記第2ビア配線の前記第2領域のうちの前記第3部分領域とは異なる第4部分領域に接して、前記第2ビア配線に電気的に接続される構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記環状金属層と前記絶縁層は、前記第2ビア配線の前記第3部分領域上において重なる構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記絶縁層は前記基板に直接接合されている構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記絶縁層は前記第1部分領域に接触している構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記基板はサファイア基板であり、前記圧電層はタンタル酸リチウム層又はニオブ酸リチウム層である構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記圧電層上に複数の前記弾性波素子で構成されるフィルタが設けられ、前記フィルタに電気的に接続される複数の前記第1ビア配線が設けられ、前記圧電層は前記複数の第1ビア配線の全てで前記第1部分領域と重なる構成とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ビア配線にクラック及び断線が生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施例1に係る弾性波デバイスの断面図である。
【
図3】
図3は、ビア配線と圧電層及び配線との位置関係を示す平面図である。
【
図4】
図4(a)から
図4(c)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図5】
図5(a)から
図5(c)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図6】
図6は、比較例に係る弾性波デバイスの断面図である。
【
図7】
図7(a)及び
図7(b)は、比較例に係る弾性波デバイスで生じる課題を示す断面図である。
【
図8】
図8は、実施例2に係る弾性波デバイスの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照し、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は、実施例1に係る弾性波デバイスの断面図である。
図1のように、実施例1の弾性波デバイス100は、基板10の上面11上に圧電層20が設けられている。圧電層20は基板10の上面11の全面には設けられていない。言い換えると、基板10の上面11には圧電層20が設けられていない領域がある。このように、圧電層20が基板10の上面11の一部に設けられているのは、後述するビア配線42及び43が基板10及び圧電層20を貫通して形成される場合では圧電層20にクラック等が発生することがあるため、ビア配線42及び43が基板10のみに形成されるようにするためである。圧電層20は基板10の上面11に、例えば表面活性化による直接接合法によって接合されている。圧電層20と基板10の接合面は平面であり平坦である。基板10は、例えばサファイア基板、アルミナ基板、スピネル基板、又はシリコン基板であり、厚さが50μm~150μm程度である。圧電層20は、例えばタンタル酸リチウム基板又はニオブ酸リチウム基板であり、厚さが10μm~30μm程度である。圧電層20と基板10との間に温度補償層及び/又は境界層が設けられていてもよい。この場合、圧電層20と温度補償層及び/又は境界層とを合わせて、基板10の上面11上に設けられた絶縁層となる。
【0019】
圧電層20上に弾性波素子30が設けられている。弾性波素子30は例えば弾性表面波共振器である。弾性波素子30を覆って保護膜60が設けられている。保護膜60は、例えば酸化シリコン膜である。
【0020】
図2は、弾性波素子の平面図である。
図2のように、弾性波素子30は、圧電層20上にIDT(Interdigital Transducer)31と反射器35が形成されている。IDT31は、互いに対向する一対の櫛型電極32を有する。櫛型電極32は、複数の電極指33と複数の電極指33が接続するバスバー34とを有する。反射器35は、IDT31の両側に設けられている。IDT31は圧電層20に弾性表面波を励振する。反射器35は弾性表面波を反射する。IDT31及び反射器35は例えばアルミニウム膜又は銅膜によって形成される。
【0021】
図1のように、基板10の上面11上に、圧電層20を囲んで環状金属層50が設けられている。環状金属層50は銅層及び/又は金層等を含む金属層であり、高さが40μm~60μm程度である。例えば環状金属層50は、厚さが1μm程度のチタン層と厚さが3μm程度の金層と厚さが40μm程度の銅層と厚さが5μm程度のニッケル層と厚さが1μm程度の金層との積層膜である。環状金属層50上に弾性波素子30との間に空間53が形成されるようにリッド52が設けられている。リッド52は、はんだ51によって環状金属層50に接合されている。弾性波素子30は環状金属層50とリッド52とによって空間53内に気密封止されている。リッド52は例えばコバール等で形成された金属リッドであり、厚さが10μm~20μm程度である。
【0022】
基板10の上面11とは反対の下面12上に端子40及び41が設けられている。端子40は弾性波素子30を外部と接続するためのフットパッドである。端子41は環状金属層50及びリッド52をグランドに接続するためのフットパッドである。端子40及び41は、銅層、アルミニウム層、及び/又は金層等を含む金属層であり、厚さが数μm程度である。例えば端子40及び41は、基板10側から厚さが2μm程度の銅層と厚さが5μm程度のニッケル層と厚さが0.5μm程度の金層との積層膜である。
【0023】
基板10を上面11から下面12に貫通するビア配線42及び43が設けられている。ビア配線42は端子40に接することで端子40に電気的に接続され、ビア配線43は端子41に接することで端子41に電気的に接続されている。環状金属層50は、ビア配線43を覆って設けられ、ビア配線43に接することでビア配線43に電気的に接続されている。基板10の上面11におけるビア配線42及び43の直径は50μm程度であり、下面12におけるビア配線42及び43の直径は40μm程度である。ビア配線42及び43は、例えば銅層、アルミニウム層、又は金層等を含む金属層である。
【0024】
図3は、ビア配線と圧電層及び配線との位置関係を示す平面図である。
図3では、図の明瞭化のために、圧電層20及び配線36にハッチングを付している。
図1及び
図3のように、圧電層20は、ビア配線42の基板10の上面11における領域44のうちの一部である部分領域45と重なって基板10上に設けられている。すなわち、圧電層20はビア配線42の領域44のうちの部分領域45を覆って設けられている。圧電層20は例えばビア配線42の領域44のうちの半分以上の領域を覆っている。ビア配線42の領域44のうちの部分領域45とは異なる部分領域46は圧電層20で覆われていない。
【0025】
図1及び
図3のように、基板10の上面11上から圧電層20上に延在して、弾性波素子30とビア配線42を電気的に接続する配線36が設けられている。配線36はビア配線42の領域44のうちの部分領域46に接していて、これにより配線36とビア配線42は電気的に接続されている。配線36は例えば銅層、アルミニウム層、又は金層等を含む金属層であり、厚さが数μm程度である。配線36は、例えばチタン層と銅層が積層された積層膜であってもよい。
【0026】
図4(a)から
図5(c)は、実施例1に係る弾性波デバイスの製造方法を示す断面図である。
図4(a)のように、基板10の上面11に例えばレーザ光照射によってビアホールを形成する。ビアホールはレーザ光照射以外の方法で形成されてもよく、例えばエッチングによって形成されてもよい。ビアホール内にシード層(不図示)を形成する。シード層に電流を供給し、電解めっき法を用いてビアホール内にビア配線42及び43を形成する。ビア配線42及び43を銅層とする場合、シード層は例えば基板10側からチタン層と銅層が積層された積層膜とすることができる。CMP(Chemical Mechanical Polishing)法等を用いて不要なめっき層及びシード層を除去する。これにより、基板10の上面11とビア配線42及び43の上面とはほぼ平坦となる。
【0027】
図4(b)のように、基板10の上面11に圧電基板を接合した後、圧電基板を研磨又は研削等によって薄膜化して圧電層20を形成する。基板10と圧電基板の接合方法は、基板10の上面11と圧電基板の表面を活性化させて常温接合による直接接合法が用いられるが、接着剤で接合する方法が用いられてもよい。圧電層20上に弾性波素子30を形成する。弾性波素子30を覆って保護膜60を形成する。弾性波素子30及び保護膜60の形成方法は一般的に知られている方法を用いる。
【0028】
図4(c)のように、圧電層20上に弾性波素子30を覆うレジスト膜(不図示)を形成した後、レジスト膜をマスクとして圧電層20をエッチングする。圧電層20のエッチングは例えばドライエッチングを用いるが、ウェットエッチングを用いてもよい。圧電層20のエッチングは、圧電層20がビア配線42の一部を覆って残存するようにエッチングする。
【0029】
図5(a)のように、基板10の上面11上から圧電層20上に延在し、弾性波素子30とビア配線42を電気的に接続する配線36を、例えば蒸着法及びリフトオフ法によって形成する。配線36と同時に環状金属層50が形成される領域に金属層54を形成する。配線36は、ビア配線42の圧電層20で覆われていない部分でビア配線42に接することでビア配線42に電気的に接続される。配線36と金属層54は、例えば基板10側からチタン層と銅層が積層された積層膜とすることができる。
【0030】
図5(b)のように、金属層54に電流を供給し、電解めっき法を用いて金属層54上に金属層(例えば基板10側から銅層、ニッケル層、及び金層)を堆積して環状金属層50を形成する。環状金属層50上にはんだ51を形成した後、はんだ51によって環状金属層50上にリッド52を接合する。弾性波素子30とリッド52との間には空間53が形成される。
【0031】
図5(c)のように、基板10の下面12に対して研磨又は研削等を行う。これにより、基板10の下面12にビア配線42及び43が露出する。ビア配線42及び43に接するように、基板10の下面12に端子40及び41を形成する。例えば、基板10の下面12にシード層を形成する。シード層上に開口を有するレジスト膜を形成する。シード層に電流を供給し電解めっき法を用いて開口内にめっき層を形成する。その後、めっき層以外のシード層を除去する。シード層は、例えば基板10側からチタン層と銅層が積層された積層膜とすることができる。めっき層は、例えば基板10側から銅層、ニッケル層、及び金層とすることができる。以上により、実施例1の弾性波デバイス100が形成される。
【0032】
図6は、比較例に係る弾性波デバイスの断面図である。
図6のように、比較例の弾性波デバイス500では、圧電層20はビア配線42を覆ってなくビア配線42から離れて基板10の上面11上に設けられている。配線36がビア配線42の全体を覆って設けられている。その他の構成は実施例1の弾性波デバイス100と同じであるため説明を省略する。
【0033】
図7(a)及び
図7(b)は、比較例に係る弾性波デバイスで生じる課題を示す断面図である。
図7(a)のように、弾性波デバイス500を配線基板に搭載するとき及び/又は弾性波デバイス500が動作するとき等において弾性波デバイス500に温度変化が生じると、熱応力によって基板10に変形(反り)が生じることがある。例えば、基板10がサファイア基板、リッド52がコバールリッドである場合、サファイアの線膨張係数は7×10
-6/℃程度で、コバールの線膨張係数は5×10
-6/℃程度であるため、弾性波デバイス500の温度が高くなると基板10は凹状に反る。弾性波デバイス500の温度上昇と温度下降が繰り返されることで、基板10は凹状に反ったり、凹状の反りが解消したりする。このため、基板10に設けられたビア配線42に基板10の厚さ方向の応力が掛かり、
図7(b)のように、ビア配線42にクラック及び/又は断線等の異常個所62が生じることがある。
【0034】
これに対し、実施例1によれば、
図1及び
図3のように、圧電層20(絶縁層)はビア配線42(第1ビア配線)の基板10の上面11(第1面)における領域44(第1領域)のうちの一部である部分領域45(第1部分領域)と重なって設けられている。圧電層20は配線36に比べて厚く且つ硬いことから、弾性波デバイス100の温度変化によって基板10に変形が生じてビア配線42に基板10の厚さ方向の応力が掛かった場合でも、ビア配線42は圧電層20によって押さえ込まれるようになる。このため、ビア配線42にクラック及び断線が生じることを抑制できる。配線36がビア配線42の領域44のうちの部分領域45とは異なる部分領域46(第2部分領域)に接して設けられることで、弾性波素子30を端子40に電気的に接続させることができる。
【0035】
図1及び
図3のように、圧電層20はビア配線42の領域44のうちの半分以上の領域を覆うことが好ましい。言い換えると、ビア配線42の領域44のうち圧電層20と重なる部分領域45は領域44の半分以上の領域であることが好ましい。これにより、基板10に変形が生じてビア配線42に応力が掛かった場合でも、ビア配線42を圧電層20によって効果的に押さえ込むことができ、ビア配線42にクラック及び断線が生じることを抑制できる。
【0036】
圧電層20は基板10に直接接合されている場合が好ましい。これにより、圧電層20は基板10に強固に接合されるため、基板10に変形が生じてビア配線42に応力が掛かった場合でも、ビア配線42を圧電層20によって効果的に押さえ込むことができる。
【実施例2】
【0037】
図8は、実施例2に係る弾性波デバイスの平面図である。
図9(a)は
図8のA-A間の断面図、
図9(b)は
図8のB-B間の断面図である。
図8では、リッド52を透視して、圧電層20及び弾性波素子30等を図示している。
図8、
図9(a)、及び
図9(b)のように、実施例2の弾性波デバイス200は、基板10の上面11上に設けられた圧電層20上に弾性波素子30からなる直列共振器S1~S4と並列共振器P1~P3が設けられている。直列共振器S1~S4は、入力用の端子40aと出力用の端子40bとの間に配線36によって直列に接続されている。並列共振器P1~P3は、入力用の端子40aと出力用の端子40bとの間に並列に接続されている。すなわち、並列共振器P1~P3は、配線36とグランド用の端子40cとの間に接続されている。このように、圧電層20上にはラダー型のフィルタ70が形成されている。
【0038】
圧電層20は、端子40a~40cに接続するビア配線42a~42cの基板10の上面11における領域44のうちの一部である部分領域45を覆っている。配線36はビア配線42a~42cの領域44のうちの部分領域45とは異なる部分領域46に接してビア配線42a~42cに電気的に接続されている。また、圧電層20は、グランド用の端子41に接続するビア配線43の基板10の上面11における領域47のうちの一部である部分領域48を覆っている。環状金属層50は、ビア配線43の領域47のうちの部分領域48とは異なる部分領域49に接してビア配線43に電気的に接続されている。ビア配線43の部分領域48上において、環状金属層50は圧電層20と重なるように圧電層20上に設けられている。その他の構成は、実施例1の弾性波デバイス100と同じであるため説明を省略する。
【0039】
図8及び
図9(a)のように、実施例2においても、圧電層20はビア配線42a~42cの領域44のうちの一部である部分領域45と重なって設けられている。よって、弾性波デバイス200の温度変化によって基板10に変形が生じてビア配線42a~42cに基板10の厚さ方向の応力が掛かった場合でも、ビア配線42a~42cは圧電層20によって押さえ込まれるため、ビア配線42a~42cにクラック及び断線が生じることを抑制できる。
【0040】
図8及び
図9(b)のように、圧電層20はビア配線43(第2ビア配線)の基板10の上面11における領域47(第2領域)のうちの一部である部分領域48(第3部分領域)と重なって設けられることが好ましい。環状金属層50及びリッド52をグランドに接続するためにビア配線43上には環状金属層50が設けられるが、環状金属層50は銅等の金属で形成されることから圧電層20に比べて柔らかい。このため、
図6に示した比較例の弾性波デバイス500では、温度変化によって基板10に変形が生じてビア配線43に基板10の厚さ方向の応力が掛かった場合に、ビア配線43を環状金属層50で押さえ込みきれずに、ビア配線43にクラック及び/又は断線等の異常個所が生じることがある。これに対し、実施例2のように、圧電層20がビア配線43の領域47のうちの部分領域48と重なって設けられることで、基板10に変形が生じてビア配線43に基板10の厚さ方向の応力が掛かった場合でも、ビア配線43を圧電層20によって押さえ込むことができ、ビア配線43にクラック及び断線が生じることを抑制できる。環状金属層50がビア配線43の領域47のうちの部分領域48とは異なる部分領域49(第4部分領域)に接して設けられることで、環状金属層50及びリッド52をグランドに接続させることができる。
【0041】
実施例1では、
図3のように、圧電層20はビア配線42の領域44のうちの半分程度の領域を覆う場合を例に示した。実施例2では、
図8のように、圧電層20はビア配線42a~42cの領域44のうちの3/4程度の領域を覆う場合を例に示した。しかしながら、これらの場合に限られるわけではない。
図10(a)から
図10(f)は、ビア配線と圧電層の位置関係を示す平面図である。
図10(a)から
図10(f)では、図の明瞭化のために、圧電層20にハッチングを付している。
図10(a)から
図10(f)では、ビア配線42と圧電層20の位置関係を例に示すが、ビア配線43と圧電層20の位置関係も同様の配置とすることができる。
【0042】
図10(a)のように、圧電層20はビア配線42の半分程度を覆っていてもよい。
図10(b)及び
図10(c)のように、圧電層20はビア配線42の一部の周囲を覆うようにU字状部分を有していてもよく、U字状部分はビア配線42の半分程度でもよいし(
図10(b))、ビア配線42の半分よりも大きくてもよい(
図10(c))。
図10(d)のように、圧電層20はビア配線42の直径よりも幅が狭い棒状部分21を有し、棒状部分21の一端が圧電層20の本体に接続し、他端がビア配線42の領域44の中心64近傍に位置することで、圧電層20がビア配線42を覆っていてもよい。
図10(e)のように、圧電層20の棒状部分21がビア配線42を橋状に横切り、棒状部分21の両端が圧電層20の本体に接続することで、圧電層20がビア配線42を覆っていてもよい。
図10(f)のように、圧電層20は、ビア配線42の一部の領域(例えば1/4程度の領域)を露出させる開口を有することで、ビア配線42を覆っていてもよい。
【0043】
圧電層20によってビア配線42を押さえ込んでビア配線42にクラック及び断線が生じることを抑制する点から、
図10(a)、
図10(d)、
図10(e)、及び
図10(f)のように、圧電層20は、ビア配線42の領域44の中心64を少なくとも覆うことが好ましい。言い換えると、ビア配線42の領域44のうち圧電層20で覆われる部分領域45は領域44の中心64を少なくとも含む領域であることが好ましい。
【0044】
図9(b)のように、ビア配線43の領域47のうちの部分領域48上において、圧電層20と環状金属層50は重なる場合が好ましい。これにより、ビア配線43は圧電層20と環状金属層50とで押さえ込まれるようになり、ビア配線43にクラック及び断線が生じることを効果的に抑制できる。
【0045】
図8のように、圧電層20上に複数の弾性波素子30で構成されるフィルタ70が設けられ、フィルタ70に電気的に接続される複数のビア配線42a~42cが設けられる場合、圧電層20は複数のビア配線42a~42cの全てで部分領域45と重なる場合が好ましい。これにより、複数のビア配線42a~42cにクラック及び断線が生じることを抑制できる。
【0046】
実施例1及び実施例2では、基板10の上面11上に設けられた絶縁層が圧電層20で、絶縁層上に設けられた素子が弾性波素子30である弾性波デバイスの場合を例に示したが、この場合に限られない。圧電層20以外の絶縁層上に弾性波素子30以外の素子(例えばインダクタ及びキャパシタのような受動素子)が設けられた電子部品の場合でもよい。
【0047】
以上、本願発明の実施形態について詳述したが、本願発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本願発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0048】
10 基板
11 上面
12 下面
20 圧電層
21 棒状部分
30 弾性波素子
31 IDT
32 櫛型電極
33 電極指
34 バスバー
35 反射器
36 配線
40、40a、40b、40c、41 端子
42、42a、42b、42c、43 ビア配線
44 領域
45、46 部分領域
47 領域
48、49 部分領域
50 環状金属層
51 はんだ
52 リッド
53 空間
60 保護膜
62 異常個所
64 中心
70 フィルタ
100、200、500 弾性波デバイス