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特許7527913ラックマウントシャーシの可変インテーク機構
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】ラックマウントシャーシの可変インテーク機構
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20240729BHJP
   G06F 1/16 20060101ALI20240729BHJP
   G06F 1/20 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
H05K7/20 G
G06F1/16 313
G06F1/20 B
G06F1/20 C
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020159538
(22)【出願日】2020-09-24
(65)【公開番号】P2022052980
(43)【公開日】2022-04-05
【審査請求日】2023-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000209751
【氏名又は名称】池上通信機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145470
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 健一
(72)【発明者】
【氏名】福尾 敏正
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 豪
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-022268(JP,A)
【文献】特開2013-254450(JP,A)
【文献】国際公開第2006/086246(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
G06F 1/16
G06F 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器を正面又は背面から収容するためのラックにおいて、
前記ラック内部に搭載され前記電子機器が取り付けられるマウントシャーシと、
前記マウントシャーシの側面に設けられた側板の所定範囲が前記ラックの外壁方向へスライドして拡幅することにより前記マウントシャーシと前記ラックの外壁との間に導風空間を形成可能な可変インテーク機構と、
を有し、
前記可変インテーク機構は、スライドするためのノブが前記ラックの正面側に設けられているとともに、
前記可変インテーク機構は、前記ノブから設けられて他端に雄ねじ部が形成されたシャフトと、 前記シャフトの雄ねじ部に雌ねじ部を介して連接されたリンク機構と、を有し、前記ノブを回転させると前記シャフトが連動して回転し、前記シャフトの雄ねじ部と前記リンク機構の雌ねじ部とのかみ合い部分の長さが変化することによって前記リンク機構が作動されて前記側板が外側方向へスライドして拡幅することにより前記マウントシャーシと前記ラックの外壁との間に導風空間を形成すること、
を特徴とするラックマウントシャーシの可変インテーク機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器を収容するラックのマウントシャーシにおいて、内部温度の冷却性能向上のための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
放送や産業分野等で広く用いられている電子機器を収容するラック(キャビネット)の電子機器取り付けのための開口部は、JISとEIAの各規格に準拠した寸法で作られており、そこに搭載する機材も規格寸法に合わせた設計となる。ラックは、外装部分と、電子機器を取り付けるマウントシャーシを有している。
【0003】
近年の高消費電力化つまり高発熱する機材に対応するためには、マウントシャーシのサイズUP(容積率UP)、FAN性能UP、前面側の風穴を多くして開口率UPが一般的な設計となっている。
【0004】
消費電力(=発熱)UPを伴うバージョンアップ等で、設計値以上の冷却性能を求められた場合、通風面積拡大のカスタマイズ設計や、物理的上限を超えると全体的な熱の再設計にまで至ることがある。
【0005】
ラック内部の冷却能力向上のための工夫としては、特許文献1(特開2017-22268号公報)の電子機器のように、ラックと、内部に電子部品を収容するとともに、前記ラックの前面側又は後面側から該ラック内に搭載されるマウント筐体と、前記マウント筐体の側壁部に形成された開口から該マウント筐体内に収納される収納状態と、前記開口から前記マウント筐体の外側へ移動されて該マウント筐体の外側に前記開口に通じる通風路を形成する展開状態とに変化される可動ダクトと、を備える電子機器では、マウント筐体に設けられた可動ダクトによって通風路を形成してマウント筐体に取り付けられた電子機器に直接導風する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-22268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ラックの間口寸法は規格で決まっているので、熱要素技術の視点で容積率をUPさせるためにはマウントシャーシの高さ方向を大きくすることになり、小型化の実現には至ることができない。
【0008】
ラックの本体幅は、側面にネジ頭やシャーシを受ける支え金具等があるため、規格幅=ラック本体の幅とすることはなく、両側に5~10mm程度の隙間を設ける設計としている。しかし、電子機器をラック(マウントシャーシ)の間口を通過して固定してしまえば両側の隙間は無用空間としての存在になる。
【0009】
また、特許文献1はマウント筐体に取り付けられた電子機器の特定部分のみの冷却には効果的ではあるが、装置全体の冷却性能の向上には貢献しづらい構造となっている。さらに、吸気口面積は変化しないため、外気(冷気)を取り込む能力には自ずと限界がある。
【0010】
このように、ラック内部の冷却効率向上のためには改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、請求項1に記載の発明は、電子機器を正面又は背面から収容するためのラックにおいて、 前記ラック内部に搭載され前記電子機器が取り付けられるマウントシャーシと、 前記マウントシャーシの側面に設けられた側板の所定範囲が前記ラックの外壁方向へスライドして拡幅することにより前記マウントシャーシと前記ラックの外壁との間に導風空間を形成可能な可変インテーク機構と、を有し、前記可変インテーク機構は、スライドするためのノブが前記ラックの正面側に設けられているとともに、前記可変インテーク機構は、前記ノブから設けられて他端に雄ねじ部が形成されたシャフトと、 前記シャフトの雄ねじ部に雌ねじ部を介して連接されたリンク機構と、を有し、前記ノブを回転させると前記シャフトが連動して回転し、前記シャフトの雄ねじ部と前記リンク機構の雌ねじ部とのかみ合い部分の長さが変化することによって前記リンク機構が作動されて前記側板が外側方向へスライドして拡幅することにより前記マウントシャーシと前記ラックの外壁との間に導風空間を形成すること、を特徴とするラックマウントシャーシの可変インテーク機構である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のラックマウントシャーシの可変インテーク機構は、マウントシャーシの側面に設けられた側板の所定範囲が導風空間を形成可能な可変インテーク機構を構成しているため、発熱する電子機器へ効果的に外気を導風することができ、電子機器及びラック内部の冷却効率を大幅に高めることができる。
【0015】
また、可変インテーク機構は拡幅幅を調整できるので、導風する電子機器の発熱度合いに応じて導風量を調整することにより、電子機器以外への導風も効率的に行うことができる。
【0016】
また、可変インテーク機構は、スライドするためのノブがラックの正面側に設けられていること、を特徴としているので、可変インテーク機構の拡幅幅をラック外装を取り外さずに簡単に調整することができ、電子機器の使用状況、発熱状況に応じて拡幅幅を調整したり、電子機器を取り替えた場合でも簡便に適切に拡幅幅を調整することができる。
【0017】
また、可変インテーク機構は、ノブから設けられて他端に雄ねじ部が形成されたシャフトと、シャフトの雄ねじ部に雌ねじ部を介して連接されたリンク機構と、を有し、ノブを回転させるとシャフトが連動して回転し、シャフトの雄ねじ部とリンク機構の雌ねじ部とのかみ合い部分の長さが変化することによってリンク機構が作動されて側板が外側方向へスライドして拡幅することによりマウントシャーシとラックの外壁との間に導風空間を形成すること、を特徴としているので、特別な動力機構を必要とせずに拡幅幅を調整することができる。また、ノブの回転によりかみ合い部分の長さを変化させてリンク機構により拡幅幅を調整するので、簡単に調整できるだけでなく、可変インテーク機構の位置保持も確実に行うことができる利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のマウントシャーシの可変インテーク機構が格納状態の全体図であり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は右側面図、(d)は斜視図である。
図2】本発明のマウントシャーシの可変インテーク機構が拡幅状態の全体図であり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は右側面図、(d)は斜視図である。
図3】本発明のマウントシャーシの外板の一部を取り外した状態の概略図であり、(a)は正面図、(b)は平面断面図、(c)は右側面図、(d)は斜視図である。
図4】本発明の可変インテーク機構部分の図であり、(a)は格納状態の図、(b)は拡幅状態の図である。
図5】本発明の可変インテーク機構の格納状態の詳細拡大図であり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は右側面図、(d)は斜視図である。
図6】本発明の可変インテーク機構の拡幅状態の詳細拡大図であり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は右側面図、(d)は斜視図である。
図7】本発明の可変インテーク機構の温度測定の構成であり、(a)は可変インテーク機構が無いマウントシャーシ、(b)は可変インテーク機構があるマウントシャーシ、(c)は測定場所の概略図である。
図8】本発明のラックの一例であり、(a)は全体斜視図、(b)は間口部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のラックマウントシャーシの可変インテーク機構について、図面を参照して説明する。図1はマウントシャーシの可変インテーク機構が格納状態の全体図、図2はマウントシャーシの可変インテーク機構が拡幅状態の全体図、図3はマウントシャーシの外板の一部を取り外した状態の概略図、図4は可変インテーク機構部分の図であり、(a)は格納状態の図、(b)は拡幅状態の図、図5は可変インテーク機構の格納状態の詳細拡大図、図6は可変インテーク機構の拡幅状態の詳細拡大図、図7は温度測定の構成図、図8はラックの一例となっている。
【0020】
マウントシャーシ10は、ラック規格に応じた正面若しくは背面に間口を有した直方体形状で、通常ではラック100に複数収納する構成となっている。マウントシャーシ10には複数の電子機器が収納できるようになっており、通常は4つほどの電子機器が収納され、マウントシャーシ10の重量は本実施例では40kgほどになる。
【0021】
マウントシャーシ10は側板11で覆われており、所定の側面部には開口部が設けられている。また背面部又は/及び側面部には排気用のファンが設けられる。本実施例では、マウントシャーシ10右側面の側板11に開口部が設けられている。また、本実施例では図示していない左側面部にファンが設けられている。
【0022】
可変インテーク機構20は図4図6のように、マウントシャーシ10の右側面の側板11の一部の開口部を覆うような構成で設けられている。なお本実施例ではマウントシャーシ10の右側面側のみに可変インテーク機構20が設けられているが、左側面でもいいし、両側面に機構を設けてもよい。
【0023】
可変インテーク機構20は側板21と、ノブ22と、シャフト23、リンク機構24とによって構成されている。側板21はリンク機構24を介してシャフト23(ノブ22)が取り付けられる構成である。
【0024】
側板21はマウントシャーシ10の右側面の側板11の開口部を覆うような形状で取り付けられている。
側板21の内壁にはリンク機構24が取り付けられていて、このリンク機構24が作動することによって側板21が外側へスライドして拡幅される機構となっている。
ノブ22とシャフト23は本実施例では一体形状の丸棒状であり、ノブ22がマウントシャーシ10正面部間口付近に設けられていてシャフト23が背面部方向へ向けて取り付けられている。また、シャフト23にはノブ22とは反対側の端部に雄ねじ部23aが設けられている。
【0025】
図4図6のように、可変インテーク機構20は、ノブ22を回転させるだけで開閉動作を行えるように構成されている。
【0026】
リンク機構24には一部に雌ねじ部24aが設けられていて、この雌ねじ部24aとシャフト23の雄ねじ部23aとがねじ連接されている。
【0027】
ノブ22を回すと、雌ねじ部24aと雄ねじ部23aとの作用により、シャフト23とリンク機構24の雌ねじ部24aを含めた全長が変化する。これによりリンク機構24が作動し、側板21が開閉する。本実施例では右に回すと全長が短くなることにより、リンク機構24を介して側板21が外側へスライドして拡幅される。逆に、左に回すと全長が短くなって側板21が内側へスライドする構成となっている。当然のことながら、ノブ22の回転量は調節できるので、側板21の開閉度合いを任意で調整でき、収納される電子機器の発熱度に応じて適切な開閉(拡幅)を行うことができる。
【0028】
可変インテーク機構20の効果として、図7の構成で測定を行った。最も条件が悪い場所に配置されているデバイスのジャンクション温度を対象にして、右側面のみの拡幅有無による冷却性能の検証を行った。
結果は拡幅なし(閉状態)の場合の温度が72℃、拡幅あり(開状態)の場合の温度が67℃となり、冷却効果として-5℃の結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明に係るラックマウントシャーシの可変インテーク機構は主に電子機器のラックに好適であるが、その他発熱体を有する装置のデッドスペースを活用し冷却効率向上のために適用可能である。
【符号の説明】
【0030】
100 ラック
10 マウントシャーシ
11 側板
20 可変インテーク機構
21 側板
22 ノブ
23 シャフト
23a 雄ねじ部
24 リンク機構
24a 雌ねじ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8