(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
F02D 43/00 20060101AFI20240729BHJP
B60K 6/46 20071001ALI20240729BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20240729BHJP
B60W 20/50 20160101ALI20240729BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
F02D43/00 301Y
B60K6/46 ZHV
B60W10/06 900
B60W20/50
F02D45/00 366
F02D45/00 364G
(21)【出願番号】P 2020168027
(22)【出願日】2020-10-02
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 晋太郎
【審査官】上田 真誠
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-093923(JP,A)
【文献】特開2005-315095(JP,A)
【文献】特開2013-170513(JP,A)
【文献】実開平01-162055(JP,U)
【文献】特開2011-231748(JP,A)
【文献】特開2010-163950(JP,A)
【文献】特開2019-148184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 43/00
B60K 6/46
B60W 10/06
B60W 20/50
F02D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンにより駆動される発電機と、前記発電機により発電された電力を充電するバッテリと、前記バッテリに充電された前記電力により駆動される走行用モータと、前記エンジンに空気を供給するスロットルと、前記エンジンに供給される空気量を調整するスロットル弁と、を備えるハイブリッド車両の制御装置であって、
前記制御装置は、前記スロットル弁の開度を制御可能であり、
前記スロットルの吸気管内の圧力を検出する圧力検出部と、
前記吸気管内を流れる空気量を検出する流量検出部と、
前記スロットル弁を駆動するスロットルモータの電流値を検出する電流値検出部と、
検出した前記電流値
及び前記エンジンの回転数と、前記エンジンのトルクとの相関関係を示す第1のデータマップに基づいて前記エンジンのトルクを推定するトルク推定部と、
検出した前記圧力
及び前記エンジンの回転数と、前記スロットル弁の開度との相関関係を示す第2のデータマップに基づいて前記スロットル弁の開度を推定する第1開度推定部と、
検出した前記空気量
及び前記エンジンの回転数と、前記スロットル弁の開度との相関関係を示す第3のデータマップに基づいて前記スロットル弁の開度を推定する第2開度推定部と、
前記エンジンの回転数及び推定した前記トルク
と、前記スロットル弁の開度との相関関係を示す第4のデータマップに基づいて前記スロットル弁の開度を推定する第3開度推定部と、
を備え
、
前記制御装置は、前記第1開度推定部、前記第2開度推定部、及び前記第3開度推定部のいずれかにより推定した前記スロットル弁の開度に基づいて、前記スロットル弁の開度を目標開度に一致するように制御する、制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって
、
前記目標開度に一致するまでの時間が、所定の閾値を超えた場合に、異常が生じていると判断する、制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の制御装置であって、
前記第1開度推定部、前記第2開度推定部、及び前記第3開度推定部のいずれかにより前記スロットル弁の開度を推定し、前記スロットル弁の開度を目標開度に一致させる第1制御を実行し、
前記第1制御において異常が生じたと判断する場合に、他のいずれかの開度推定部により前記スロットル弁の開度を推定し、前記スロットル弁の開度を目標開度に一致させる第2制御を実行し、
前記第2制御において異常が生じたと判断する場合に、残りの開度推定部により前記スロットル弁の開度を推定し、前記スロットル弁の開度を目標開度に一致させる第3制御を実行する、制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の制御装置であって、
前記第3制御において異常が生じたと判断する場合に、前記エンジンを停止して前記走行用モータを駆動させる、制御装置。
【請求項5】
請求項3に記載の制御装置であって、
前記第3制御において異常が生じたと判断する場合に、前記スロットル弁の開度を予め定められた開度に制御する、制御装置。
【請求項6】
請求項2~5のいずれか一項に記載の制御装置であって、
前記第3開度推定部により推定した前記スロットル弁の開度が、前記目標開度に一致するまでの時間が、前記所定の閾値を超えた場合に、前記スロットルモータに異常が生じていると判断する、制御装置。
【請求項7】
請求項2~6のいずれか一項に記載の制御装置であって、
前記第1開度推定部又は前記第2開度推定部により推定した前記スロットル弁の開度が、前記目標開度に一致するまでの時間が、前記所定の閾値を超えた場合に、前記スロットル弁に異常が生じていると判断する、制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、制御装置が開示されている。制御装置は、スロットル弁の開度を調整する。スロットル弁の開度が調整されると、エンジンに流れる空気の量が調整される。特許文献1の制御装置では、スロットル弁の開度を検出するスロットルセンサを用いて、スロットル弁の開度を算出する。また、スロットルセンサが故障した場合、制御装置は、スロットルの吸気管内の圧力や、当該吸気管内を流れる空気量に基づいて、スロットル弁の開度を推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、吸気管内の圧力を検出する圧力センサや、吸気管内を流れる空気量を検出する流量センサが故障した場合、スロットル弁の開度を推定することができない。したがって、スロットル弁の開度を精度よく調整することが難しい。本明細書は、圧力センサや流量センサに加えて、さらに異なる手法によりスロットル弁の開度を精度よく推定することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する制御装置は、エンジンと、前記エンジンにより駆動される発電機と、前記発電機により発電された電力を充電するバッテリと、前記バッテリに充電された前記電力により駆動される走行用モータと、前記エンジンに空気を供給するスロットルと、前記エンジンに供給される空気量を調整するスロットル弁と、を備えるハイブリッド車両の制御装置である。前記制御装置は、前記スロットル弁の開度を制御可能であり、前記スロットルの吸気管内の圧力を検出する圧力検出部と、前記吸気管内を流れる空気量を検出する流量検出部と、前記スロットル弁を駆動するスロットルモータの電流値を検出する電流値検出部と、検出した前記電流値に基づいて前記エンジンのトルクを推定するトルク推定部と、検出した前記圧力に基づいて前記スロットル弁の開度を推定する第1開度推定部と、検出した前記空気量に基づいて前記スロットル弁の開度を推定する第2開度推定部と、前記エンジンの回転数及び推定した前記トルクに基づいて前記スロットル弁の開度を推定する第3開度推定部と、を備える。
【0006】
上述した制御装置では、スロットルの吸気管内の圧力を検出する圧力検出部と、吸気管内を流れる空気量を検出する流量検出部に加えて、スロットル弁を駆動するスロットルモータの電流値を検出する電流値検出部を備えている。スロットルモータの電流値は、エンジンの出力(すなわち、トルク)と相関関係があるため、トルク推定部により、当該電流値に基づいて、エンジンのトルクを推定することができる。また、エンジンのトルクは、エンジンに供給される空気量(すなわち、スロットル弁の開度)と相関関係がある。したがって、スロットル弁の開度は、スロットルモータの電流値に基づいて推定することができる。このように、上記の制御装置は、検出された圧力に基づいてスロットル弁の開度を推定する第1開度推定部と、検出された空気量に基づいてスロットル弁の開度を推定する第2開度推定部に加えて、エンジンのトルクに基づいてスロットル弁の開度を推定する第3開度推定部を備えている。したがって、仮に、第1開度推定部及び第2開度推定部に異常が生じた場合であっても、第3開度推定部により、スロットル弁の開度を精度よく推定することができる。
【0007】
前記制御装置は、推定した前記スロットル弁の開度に基づいて、前記スロットル弁の開度を目標開度に一致するように制御してもよい。前記制御装置は、前記目標開度に一致するまでの時間が、所定の閾値を超えた場合に、異常が生じていると判断してもよい。
【0008】
いずれかの開度推定部により推定されたスロットル弁の開度を目標開度に一致させるまでの時間が比較的長い場合、開度推定部やスロットル弁、またスロットルモータに問題が生じている可能性が高い。上記の構成では、スロットル弁の開度を目標開度に一致させるまでの時間が所定の閾値を超えた場合に、何等かの異常が生じていると判断することができる。
【0009】
前記制御装置は、前記第1開度推定部、前記第2開度推定部、及び前記第3開度推定部のいずれかにより前記スロットル弁の開度を推定し、前記スロットル弁の開度を目標開度に一致させる第1制御を実行してもよい。前記制御装置は、前記第1制御において異常が生じたと判断する場合に、他のいずれかの開度推定部により前記スロットル弁の開度を推定し、前記スロットル弁の開度を目標開度に一致させる第2制御を実行してもよい。前記制御装置は、前記第2制御において異常が生じたと判断する場合に、残りの開度推定部により前記スロットル弁の開度を推定し、前記スロットル弁の開度を目標開度に一致させる第3制御を実行してもよい。
【0010】
上記の通り、制御装置が3つの開度推定部を備えているため、第1制御において異常が生じた場合には第2制御を実行し、第2制御において異常が生じた場合にはさらに第3制御を実行することができる。このように、従来と比較して、エンジンの回転数及び推定したトルクに基づいてスロットル弁の開度を推定する3つ目の開度推定部を備えているため、その他2つの開度推定部に異常が生じた場合であっても精度よく開度を推定し、スロットル弁の開度を目標開度に調整することができる。
【0011】
前記制御装置は、前記第3制御において異常が生じたと判断する場合に、前記エンジンを停止して前記走行用モータを駆動させてもよい。
【0012】
第3制御において異常が生じた場合、スロットル弁の開度を推定することが難しくなる。上記の構成では、このような場合に、エンジンを停止してバッテリに充電された電力を利用して走行用モータを駆動させることにより、ハイブリッド車両の走行を継続することができる。
【0013】
前記制御装置は、前記第3制御において異常が生じたと判断する場合に、前記スロットル弁の開度を予め定められた開度に制御してもよい。
【0014】
第3制御中に異常が生じた場合、スロットル弁の開度を推定することが難しくなる。上記の構成では、このような場合に、スロットル弁の開度を予め定められた開度に制御する。これにより、エンジンに所定の空気が供給されて発電機による発電が行われ、ハイブリッド車両の走行を継続することができる。
【0015】
前記制御装置は、前記第3開度推定部により推定した前記スロットル弁の開度が、前記目標開度に一致するまでの時間が、前記所定の閾値を超えた場合に、前記スロットルモータに異常が生じていると判断してもよい。
【0016】
エンジンのトルク(すなわち、スロットルモータの電流値)に基づいて推定したスロットル弁の開度を目標開度に調整する時間が比較的長い場合とは、例えば、スロットルモータに電流が流れているにも関わらず、スロットルモータが正常に動作していない状況が挙げられる。したがって、上記の構成では、第3開度推定部を利用してスロットル弁の開度を目標開度に調整する時間が比較的長い場合には、スロットルモータに異常(例えば、動作遅れ等)が生じていると判断することにより、異常が生じた箇所を特定することができる。
【0017】
前記制御装置は、前記第1開度推定部又は前記第2開度推定部により推定した前記スロットル弁の開度が、前記目標開度に一致するまでの時間が、前記所定の閾値を超えた場合に、前記スロットル弁に異常が生じていると判断してもよい。
【0018】
吸気管内の圧力や空気量に基づいてスロットル弁の開度を目標開度に調整する時間が比較的長い場合とは、例えば、圧力や空気量の検出値は正常であるにも関わらず、スロットル弁が正常に動作していない状況が挙げられる。したがって、上記の構成では、第1開度推定部又は第2開度推定部を利用してスロットル弁の開度を目標開度に調整する時間が比較的長い場合には、スロットル弁に異常(例えば、開固着や閉固着等)が生じていると判断することにより、異常が生じた箇所を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】実施例の開度調整処理のフローチャートである。
【
図3】実施例の吸気管圧力に基づく開度調整処理のフローチャートである。
【
図4】実施例の吸気管空気量に基づく開度調整処理のフローチャートである。
【
図5】実施例のエンジントルクに基づく開度調整処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施例)
図面を参照して、実施例のハイブリッド車両2について説明する。ハイブリッド車両2は、エンジン10の駆動により発電された電力を使用して走行する車両である。
図1に示すように、ハイブリッド車両2は、アクセル操作センサ6と、エンジン10と、発電機22と、バッテリ24と、走行用モータ26と、スロットル30と、排気部46と、制御装置60と、を備えている。
【0021】
アクセル操作センサ6は、ハイブリッド車両2の運転者がアクセルペダル(不図示)を踏み込んだ量(以下、踏み込み量という。)を検出する。
【0022】
エンジン10は、インテークマニホールド12と、エンジン本体14と、エキゾーストマニホールド16と、回転数センサ18と、を備えている。エンジン本体14は、インテークマニホールド12とエキゾーストマニホールド16とに接続されている。エンジン本体14の回転数は、例えば、アクセル操作センサ6により検出される踏み込み量に応じて変化する。回転数センサ18は、エンジン本体14のクランクシャフト20の回転数を検出する。
【0023】
発電機22は、エンジン本体14のクランクシャフト20に接続されている。発電機22は、例えば、オルタネータである。発電機22は、クランクシャフト20が回転することにより発電する。すなわち、エンジン10は、発電機22で発電を行うために駆動する。
【0024】
バッテリ24は、発電機22に電気的に接続されている。バッテリ24は、例えば、リチウムイオン式バッテリである。バッテリ24は、発電機22により発電された電力を充電する。また、バッテリ24は、充電された電力を走行用モータ26に供給する。これにより、走行用モータ26が駆動し、ハイブリッド車両2が走行する。
【0025】
スロットル30は、吸気管32と、フィルタ34と、スロットル弁36と、スロットルモータ38と、電流センサ39と、流量センサ40と、圧力センサ42と、を備えている。吸気管32は、インテークマニホールド12に接続されている。吸気管32には、ハイブリッド車両2の外部からインテークマニホールド12に向かって空気が流れる。フィルタ34は、吸気管32を流れる空気に含まれる異物を捕集する。
【0026】
スロットル弁36は、吸気管32の内部に配置されている。スロットル弁36は、例えば、バタフライ弁である。スロットル弁36が開くと、空気がインテークマニホールド12に向かって流れる。スロットル弁36の開度が大きいほど、スロットル弁36を流れてエンジン10に供給される空気量が多くなる。
【0027】
スロットルモータ38は、スロットル弁36に接続されている。スロットルモータ38は、例えば、ステッピングモータである。スロットルモータ38は、スロットル弁36を駆動する。これにより、スロットル弁36の開度が調整される。
【0028】
電流センサ39は、スロットルモータ38の電流値を検出する。流量センサ40及び圧力センサ42は、吸気管32の内部に配置されている。流量センサ40は、吸気管32を流れる空気量を検出する。圧力センサ42は、吸気管32内の圧力を検出する。
【0029】
排気部46は、排気管48と、触媒装置50と、フィルタ52と、を備えている。排気管48は、エキゾーストマニホールド16に接続されている。排気管48には、エンジン10から排出される排ガスが、エキゾーストマニホールド16からハイブリッド車両2の外部に向かって流れる。
【0030】
触媒装置50及びフィルタ52は、排気管48の内部に配置されている。触媒装置50は、例えば、三元触媒である。触媒装置50は、排ガスに含まれる炭化水素と、一酸化炭素と、窒素酸化物と、を化学反応により無毒化する。無毒化された排ガスが、ハイブリッド車両2の外部に排出される。フィルタ52は、例えば、排ガスに含まれる微粒子を捕集する。
【0031】
制御装置60は、ECU(Engine Control Unit)に内蔵されている。制御装置60は、CPUと、ROM又はRAM等のメモリと、備える。制御装置60は、アクセル操作センサ6とエンジン本体14と、回転数センサ18と、発電機22と、バッテリ24と、スロットルモータ38と、電流センサ39と、流量センサ40と、圧力センサ42と、のそれぞれに電気的に接続されている。なお、
図1では、制御装置60とアクセル操作センサ6との接続線、制御装置60と回転数センサ18との接続線、及び制御装置60とバッテリ24との接続線のみが図示されている。制御装置60は、エンジン本体14、発電機22、バッテリ24、及びスロットルモータ38の動作を制御する。制御装置60は、アクセル操作センサ6、回転数センサ18、流量センサ40、及び圧力センサ42から各種信号を受信する。
【0032】
次に、制御装置60が実行する処理について説明する。本実施例では、ハイブリッド車両2は、スロットル弁36の開度を直接検出するスロットルセンサを備えていない。このため、制御装置60は、上述した各センサ18、39、40、42のいずれかの出力に基づいて、スロットル弁36の実際の開度を推定する。そして、制御装置60は、推定した開度に基づいて、スロットル弁36を目標開度に調整する。以下、
図2を参照して、制御装置60が、スロットル弁36の開度を調整する開度調整処理について説明する。開度調整処理は、ハイブリッド車両2の走行中に、バッテリ24に充電されている電力を用いて実行される。
【0033】
S10において、制御装置60は、発電機22に対して発電要求を行う必要があるか否かを判断する。制御装置60は、例えば、バッテリ24に充電されている電力の残量が所定値以下となった場合や、ハイブリッド車両2の運転者によるアクセルペダルの踏み込み量が所定量以上となった場合に、発電機22に対して発電要求を行う必要があると判断する。制御装置60は、発電要求を行う必要がないと判断する場合(S10でNO)、開度調整処理を終了する。この場合、エンジン10が駆動しないため、発電機22により電力が発電されない状態で、ハイブリッド車両2が走行する。すなわち、バッテリ24に充電されている電力を利用してハイブリッド車両2が走行する。一方、発電要求を行う必要がある場合(S10でYES)、S12において、「吸気管圧力に基づく開度調整処理」を実行する。S12は、
図3に示すサブルーチンに従って実行される。
【0034】
図3のS40において、制御装置60は、スロットル弁36の目標開度を算出する。スロットル弁36の目標開度は、スロットル弁36の目標開度に関するデータマップを用いて、アクセル操作センサ6により検出されるアクセルペダルの踏み込み量と、バッテリ24に充電されている電力の残量に基づいて算出される。当該データマップでは、アクセルペダルの踏み込み量が大きくなるほど目標開度が大きくなり、また、バッテリ24の電力の残量が少ないほど目標開度が大きくなる。制御装置60は、スロットル弁36の目標開度を算出すると、エンジン10を駆動し、発電機22による発電を開始する。なお、当該データマップは、制御装置60に予め格納されている。
【0035】
S42において、制御装置60は、スロットル弁36の実際の開度を推定する。ここでは、スロットル弁36の開度が、吸気管32内の圧力に基づいて推定される。具体的には、スロットル弁36の開度は、スロットル弁36の推定開度に関するデータマップを用いて、検出された吸気管32内の圧力と、クランクシャフト20の回転数(すなわち、エンジン10の回転数)に基づいて推定される。当該データマップでは、吸気管32内の圧力が高くなるほどスロットル弁36の推定開度が大きくなり、また、クランクシャフト20の回転数が大きくなるほどスロットル弁36の推定開度が大きくなる。なお、当該データマップは、制御装置60に予め格納されている。
【0036】
S44において、制御装置60は、スロットル弁36の開度をS40で算出した目標開度に調整する。制御装置60は、S42で推定された実際の開度に基づいて、スロットル弁36の開度が目標開度に一致するようにフィードバック制御する。すなわち、制御装置60は、スロットル弁36の推定開度に関するデータマップ上において、スロットル弁36の推定開度が算出した目標開度に一致するように、吸気管32内の圧力とクランクシャフト20の回転数を調整する。制御装置60は、フィードバック制御を行っている間、スロットル弁36の実際の開度を推定し続ける。S44の処理を実行すると、制御装置60は、「吸気管圧力に基づく開度調整処理」のサブルーチンを終了し、
図2のS14へ進む。
【0037】
S14において、制御装置60は、スロットル弁36の推定開度が目標開度に一致するまでの時間(以下、第1一致時間という。)が、第1閾値よりも長いか否か判断する。第1閾値は、特に限定されないが、例えば、3秒である。制御装置60は、第1一致時間が第1閾値よりも長いと判断する場合(S14でYES)にはS16へ進み、第1一致時間が第1閾値よりも短いと判断する場合(S14でNO)には開度調整処理を終了する。
【0038】
S16において、制御装置60は、異常が生じていることを運転者に報知する。S14における第1一致時間が第1閾値よりも長い場合とは、スロットル弁36の開度を目標開度に制御するまでに比較的長い時間を要した場合である。このような場合には、圧力センサ42やスロットル弁36等に異常が生じている可能性が高い。例えば、圧力センサ42が故障している場合や、スロットル弁36が開固着又は閉固着している場合等が挙げられる。このため、S16では、制御装置60は、例えば、ハイブリッド車両2の運転席のダッシュボードにおいて、圧力センサ42又はスロットル弁36に異常が生じていることを表す表示灯を点灯させる。
【0039】
S18において、制御装置60は、「吸気管空気量に基づく開度調整処理」を実行する。S18は、
図4に示すサブルーチンに従って実行される。
【0040】
図4のS50において、制御装置60は、スロットル弁36の目標開度を算出する。S50の処理は、
図3のS40の処理と同様である。
【0041】
S52において、制御装置60は、スロットル弁36の実際の開度を推定する。ここでは、スロットル弁36の開度が、吸気管32内を流れる空気量に基づいて推定される。具体的には、スロットル弁36の開度は、スロットル弁36の推定開度に関するデータマップを用いて、検出された吸気管32内を流れる空気量と、クランクシャフト20の回転数(すなわち、エンジン10の回転数)に基づいて推定される。当該データマップでは、吸気管32内を流れる空気量が多くなるほどスロットル弁36の推定開度が大きくなり、また、クランクシャフト20の回転数が大きくなるほどスロットル弁36の推定開度が大きくなる。なお、当該データマップは、制御装置60に予め格納されている。
【0042】
S54において、制御装置60は、スロットル弁36の開度をS50で算出した目標開度に調整する。制御装置60は、S52で推定された実際の開度に基づいて、スロットル弁36の開度が目標開度に一致するようにフィードバック制御する。すなわち、制御装置60は、スロットル弁36の推定開度に関するデータマップ上において、スロットル弁36の推定開度が算出した目標開度に一致するように、吸気管32内を流れる空気量とクランクシャフト20の回転数を調整する。制御装置60は、フィードバック制御を行っている間、スロットル弁36の実際の開度を推定し続ける。S54の処理を実行すると、制御装置60は、「吸気管空気量に基づく開度調整処理」のサブルーチンを終了し、
図2のS20へ進む。
【0043】
S20において、制御装置60は、スロットル弁36の推定開度が目標開度に一致するまでの時間(以下、第2一致時間という。)が、第2閾値よりも長いか否か判断する。第2閾値は、特に限定されないが、例えば、3秒である。制御装置60は、第2一致時間が第2閾値よりも長いと判断する場合(S20でYES)にはS22へ進み、第2一致時間が第2閾値よりも短いと判断する場合(S20でNO)には開度調整処理を終了する。
【0044】
S22において、制御装置60は、異常が生じていることを運転者に報知する。S20における第2一致時間が第2閾値よりも長い場合とは、S14でYESと判断される場合と同様、スロットル弁36の開度を目標開度に制御するまでに比較的長い時間を要した場合である。このような場合には、流量センサ40やスロットル弁36等に異常が生じている可能性が高い。例えば、流量センサ40が故障している場合や、スロットル弁36が開固着又は閉固着している場合等が挙げられる。S22では、例えば、制御装置60は、ハイブリッド車両2の運転席のダッシュボードにおいて、流量センサ40又はスロットル弁36に異常が生じていることを表す表示灯を点灯させる。
【0045】
S24において、制御装置60は、「エンジントルクに基づく開度調整処理」を実行する。S24は、
図5に示すサブルーチンに従って実行される。
【0046】
図5のS60において、制御装置60は、スロットル弁36の目標開度を算出する。S60の処理は、
図3のS40の処理と同様である。
【0047】
S62において、制御装置60は、エンジン10のトルクを推定する。エンジン10のトルクは、エンジン10のトルクに関するデータマップを用いて、回転数センサ18により検出されるクランクシャフト20の回転数(すなわち、エンジン10の回転数)と、スロットルモータ38の電流値に基づいて推定される。エンジン10のトルクに関するデータマップでは、クランクシャフト20の回転数が大きくなるほどエンジン10のトルクが大きくなり、また、スロットルモータ38の電流値が大きくなるほどエンジン10のトルクが大きくなる。すなわち、エンジン10のトルクは、クランクシャフト20の回転数とスロットルモータ38の電流値のそれぞれと相関関係がある。なお、エンジン10のトルクに関するデータマップは、制御装置60に予め格納されている。
【0048】
S64において、制御装置60は、スロットル弁36の実際の開度を推定する。ここでは、スロットル弁36の開度が、エンジン10のトルクに基づいて推定される。具体的には、スロットル弁36の開度は、スロットル弁36の推定開度に関するデータマップを用いて、推定されたエンジン10のトルクと、クランクシャフト20の回転数に基づいて推定される。当該データマップでは、エンジン10のトルクが大きくなるほどスロットル弁36の推定開度が大きくなり、また、クランクシャフト20の回転数が大きくなるほどスロットル弁36の推定開度が大きくなる。なお、当該データマップは、制御装置60に予め格納されている。
【0049】
S66において、制御装置60は、スロットル弁36の開度をS60で算出した目標開度に調整する。制御装置60は、S64で推定された実際の開度に基づいて、スロットル弁36の開度が目標開度に一致するようにフィードバック制御する。すなわち、制御装置60は、スロットル弁36の推定開度に関するデータマップ上において、スロットル弁36の推定開度が算出した目標開度に一致するように、エンジン10のトルク(すなわち、スロットルモータ38の電流値)とクランクシャフト20の回転数を調整する。制御装置60は、フィードバック制御を行っている間、スロットル弁36の実際の開度を推定し続ける。S66の処理を実行すると、制御装置60は、「エンジントルクに基づく開度調整処理」のサブルーチンを終了し、
図2のS26へ進む。
【0050】
S26において、制御装置60は、スロットル弁36の推定開度が目標開度に一致するまでの時間(以下、第3一致時間という。)が、第3閾値よりも長いか否か判断する。第3閾値は、特に限定されないが、例えば、3秒である。制御装置60は、第3一致時間が第3閾値よりも長いと判断する場合(S26でYES)にはS28へ進み、第3一致時間が第3閾値よりも短いと判断する場合(S26でNO)には開度調整処理を終了する。
【0051】
S28において、制御装置60は、異常が生じていることを運転者に報知する。S26における第3一致時間が第3閾値よりも長い場合とは、スロットル弁36の開度を目標開度に制御するまでに比較的長い時間を要した場合である。このような場合には、電流センサ39やスロットルモータ38等に異常が生じている可能性が高い。例えば、電流センサ39が故障している場合や、スロットル弁36を駆動するスロットルモータ38の動作が制御装置60による指令値より遅れている場合等が挙げられる。S28では、例えば、制御装置60は、ハイブリッド車両2の運転席のダッシュボードにおいて、電流センサ39又はスロットルモータ38に異常が生じていることを表す表示灯を点灯させる。
【0052】
S30において、制御装置60は、エンジン10を停止させて、バッテリ24に充電された電力を利用して走行用モータ26を駆動させる。すなわち、制御装置60は、ハイブリッド車両2の走行モードを、エンジン10による走行モードから走行用モータ26による走行モードに切り換える。制御装置60は、S30の処理を実行すると開度調整処理を終了する。
【0053】
以上、実施例の制御装置60について説明した。本実施例の制御装置60は、スロットルの吸気管32内の圧力を検出する圧力センサ42と、吸気管32内を流れる空気量を検出する流量センサ40に加えて、スロットル弁36を駆動するスロットルモータ38の電流値を検出する電流センサ39を備えている。スロットルモータ38の電流値は、エンジン10の出力(すなわち、トルク)と相関関係があるため、当該電流値に基づいて、エンジン10のトルクを推定することができる。また、エンジン10のトルクは、エンジン10に供給される空気量(すなわち、スロットル弁36の開度)と相関関係がある。したがって、スロットル弁36の開度は、スロットルモータ38の電流値に基づいて推定することができる。このように、本実施例の制御装置60は、スロットル弁36の開度を、検出された圧力、検出された空気量に加えて、エンジン10のトルクに基づいて推定することができる。したがって、仮に、いずれか2つの態様によるスロットル弁36の開度の推定において異常が生じた場合であっても、3つ目の態様により、スロットル弁36の開度を精度よく推定することができる。
【0054】
また、上述した実施例では、推定したスロットル弁36の開度に基づいて、スロットル弁36の開度を目標開度に一致するように制御する(
図3のS44、
図4のS54、
図5のS66)。制御装置60は、目標開度に一致するまでの時間が、所定の閾値(第1閾値、第2閾値、又は第3閾値)を超えた場合(
図2のS14、S20、S26でYES)に、異常が生じていると判断する。いずれかの態様により推定されたスロットル弁36の開度を目標開度に一致させるまでの時間が比較的長い場合、スロットル弁36の開度の推定に利用する値(電流センサ39、流量センサ40、又は圧力センサ42の出力値)やスロットル弁36に問題が生じている可能性が高い。したがって、本実施例では、スロットル弁36の開度を目標開度に一致させるまでの時間が所定の閾値を超えた場合に、何等かの異常が生じていると判断することができる。
【0055】
また、本実施例では、吸気管32内の圧力に基づいてスロットル弁36の開度を推定し(
図3のS42)、スロットル弁36の開度が目標開度に一致するように制御する(S44)。そして、制御装置60は、当該制御において異常が生じたと判断する場合(
図2のS14でYES)に、吸気管32内の空気量に基づいてスロットル弁36の開度を推定し(
図4のS52)、スロットル弁36の開度が目標開度に一致するように制御する(S54)。制御装置60は、この制御においても異常が生じたと判断する場合(
図2のS20でYES)に、エンジン10のトルクに基づいてスロットル弁36の開度を推定し(
図5のS64)、スロットル弁36の開度が目標開度に一致するように制御する(S66)。このように、本実施例の制御装置60では、3つの態様によりスロットル弁36の開度を推定することができるため、吸気管32内の圧力に基づく開度の推定を主の制御として実行し、当該態様について異常が生じた場合であっても、さらに異なる2つの態様により開度の推定を実行することができる。
【0056】
また、本実施例では、制御装置60は、エンジン10のトルクに基づいて推定した開度に基づいてスロットル弁36の開度を目標開度に調整したときに、異常が生じたと判断する場合(
図2のS26でYES)に、エンジン10を停止して走行用モータ26を駆動させる(S30)。本実施例では、S26でYESと判断された場合、スロットル弁36の開度を推定することが難しくなる。したがって、このような場合には、制御装置60は、エンジン10を停止してバッテリ24に充電された電力を利用して走行用モータ26を駆動させることにより、ハイブリッド車両2の走行を継続することができる。
【0057】
(対応関係)
圧力センサ42、流量センサ40、電流センサ39が、それぞれ「圧力検出部」、「流量検出部」、「電流値検出部」の一例である。
図5のS62、
図3のS42、
図4のS52、
図5のS64の処理が、それぞれ「トルク推定部」、「第1開度推定部」、「第2開度推定部」、「第3開度推定部」によって実行される処理の一例である。
図2のS12、S18、S24の処理が、それぞれ「第1制御」、「第2制御」、「第3制御」の一例である。
【0058】
以上、実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。上述した実施例の変形例を以下に列挙する。
【0059】
(変形例)
図2のフローチャートにおいて、サブルーチン(「吸気管圧力に基づく開度調整処理」、「吸気管空気量に基づく開度調整処理」、「エンジントルクに基づく開度調整処理」)は、どのような順序で実行してもよい。すなわち、S12~S16の処理、S18~S22の処理、及び、S24~S28の処理は、順不同に実行してもよい。
【0060】
図2のS30では、スロットル弁36の開度を予め定められた開度に制御してもよい。S26でYESと判断される場合、スロットル弁36の実際の開度を推定することが難しくなる。このような構成では、スロットル弁36の開度を予め定められた開度に制御することにより、エンジン10に所定の空気が供給されて発電機22による発電が行われ、ハイブリッド車両2の走行を継続することができる。
【0061】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書又は図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0062】
2:ハイブリッド車両、6:アクセル操作センサ、10:エンジン、12:インテークマニホールド、14:エンジン本体、16:エキゾーストマニホールド、18:回転数センサ、20:クランクシャフト、22:発電機、24:バッテリ、26:走行用モータ、30:スロットル、32:吸気管、34:フィルタ、36:スロットル弁、38:スロットルモータ、39:電流センサ、40:流量センサ、42:圧力センサ、46:排気部、48:排気管、50:触媒装置、52:フィルタ、60:制御装置