(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】キサンテン色素の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09B 11/28 20060101AFI20240729BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20240729BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
C09B11/28 C CSP
C09B67/20 F
G02B5/20 101
(21)【出願番号】P 2020168977
(22)【出願日】2020-10-06
【審査請求日】2023-08-16
(31)【優先権主張番号】P 2019227717
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】大熊 寛史
(72)【発明者】
【氏名】青木 良和
(72)【発明者】
【氏名】神田 大三
(72)【発明者】
【氏名】山縣 直哉
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/103958(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第109608429(CN,A)
【文献】特開2010-254965(JP,A)
【文献】国際公開第2016/084711(WO,A1)
【文献】特開昭51-087534(JP,A)
【文献】国際公開第2019/003915(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/011467(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 11/28
C09B 67/20
G02B 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キサンテン色素の製造方法であって、
工程1および工程2を行うことを特徴とする製造方法。
工程1:下記式(2)で表される化合物と、
下記一般式(3)で表される化合物を反応させること。
【化2】
【化3】
[式(3)中、R
1
は、水素原子、または
炭素原子数が1~8であって、置換基を有していてもよい直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表し、
R
2
は、炭素原子数が6~20であって、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。]
工程2:前記工程1で得られる化合物を、
アルコールを含む2種以上の有機溶媒、および、塩基を用いて溶解した後に、
酸または水を混合して再結晶すること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キサンテン色素、該色素を含有する着色組成物、該色素または該着色組成物を含有するカラーフィルター用着色剤および該着色剤を用いるカラーフィルター、ならびに該色素の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や電界発光(EL)表示装置およびCCDやCMOSなどの撮像素子に、カラーフィルターが用いられる。カラーフィルターは、ガラスや透明樹脂などの透光性基板上に、染色法、顔料分散法、印刷法、電着法などにより、色素薄膜や色素-樹脂複合体膜などの着色層を積層することによって製造される。カラーフィルターを構成する色素材料として、色相や耐熱性に優れたキサンテン骨格を有する化合物(キサンテン色素)が多く用いられている(特許文献1~4)。
【0003】
キサンテン色素は、一般に水溶性の染料として広く利用されているが、中には有機溶媒に対する溶解性が低いものがあり、主な溶剤に有機溶媒を用いるカラーフィルター用着色剤としては、微細な粒子状の色材として用いることが多い。そのため所期の色相を示すカラーフィルターを製造しようとする場合、色材の固体粉末(粒子)状態の色相(粉末色度)を制御する必要がある。
【0004】
色素化合物は同一の分子構造であってもその粒子状態(結晶構造)により色相が変化することが知られている(非特許文献1)。目的の構造のキサンテン色素を有機溶媒中で合成する反応において、溶解性が不十分なキサンテン色素の場合、色素製造の反応中から固体の析出が起こり、その粒子状態を制御することが困難になり、所期の色相を示す固体(粉末)が得られない場合がある。
【0005】
キサンテン色素の粉末の結晶構造とカラーフィルター特性には、相関があることが示唆されている(特許文献5)。しかしながら、基本骨格が同じキサンテン分子であっても、置換基の種類によって色相が変化するだけでなく、結晶構造が製造条件によっても大きく異なると考えられる。そのため、目的の色特性(輝度、コントラスト比など)を示すカラーフィルター用着色剤として適したキサンテン色素の粉末を得るためには、種々の方法で調製した試料について、固体物性、耐熱性、溶解性もしくは分散性を評価し、最適の製造方法を策定する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-265834号公報
【文献】特開2012-207224号公報
【文献】特開2010-254964号公報
【文献】特開2014-12814号公報
【文献】国際公開第2019/003915号
【非特許文献】
【0007】
【文献】社団法人有機合成化学協会編、「新版 染料便覧」、丸善株式会社、1970年、p.159
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、所期の色相を示すキサンテン色素、該色素の粉末、該色素を含有する着色組成物、該色素または該着色組成物を含有するカラーフィルター用着色剤および該着色剤を用いるカラーフィルター、ならびに該色素の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題の解決のため鋭意検討した結果、キサンテン色素を、本発明に記載の方法で再結晶することで、所期の色相を示す色素の粉末が得られること、および、その特性を粉末X線回折により分析可能であること、さらにカラーフィルター用着色剤として適していることを見出した。すなわち本発明は以下を要旨とする。
【0010】
1.下記一般式(1)で表されるキサンテン色素であって、
CuKα線の粉末X線回折における
回折角(2θ)=5°~34°の回折パターンにおいて、
2θ=21.0°~22.1°の範囲に存在する回折ピークの相対強度を1とするときに、
2θ=13.7°~14.5°の範囲に存在する回折ピークの相対強度が0.1以下であり、
2θ=8°~10°の範囲に存在する回折ピークの相対強度が0.03以下である
キサンテン色素。
【0011】
【0012】
[式(1)中、R1およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、または
炭素原子数が1~8であって、置換基を有していてもよい直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表し、
R2およびR4は、それぞれ独立に、
炭素原子数が6~20であって、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表す。]、或いは
[式(1)中、R1およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、または
置換基を有していてもよい炭素原子数1~8の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表し、
R2およびR4は、それぞれ独立に、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基を表す。]
【0013】
2.前記キサンテン色素において、粉末の色度座標が、
0.460≦x≦0.500、
0.285≦y≦0.305 であるキサンテン色素。
【0014】
3.前記キサンテン色素において、R2およびR4が、炭素原子数が6~10であって、置換基を有していてもよいフェニル基であるキサンテン色素。或いは
3.前記キサンテン色素において、R2およびR4が置換基を有していてもよい炭素原子数6~10のフェニル基であるキサンテン色素。
【0015】
4.前記キサンテン色素を含有する着色組成物。
【0016】
5.前記キサンテン色素または着色組成物を含有するカラーフィルター用着色剤。
【0017】
6.前記カラーフィルター用着色剤を用いるカラーフィルター。
または、前記キサンテン色素を含むカラーフィルター。
または、前記キサンテン色素、前記着色組成物、又は前記カラーフィルター用着色剤の、カラーフィルターの製造のための使用。
または、前記キサンテン色素、前記着色組成物、又は前記カラーフィルター用着色剤を用いるカラーフィルターの製造方法。
【0018】
7.キサンテン色素、または前記キサンテン色素の製造方法であって、
工程1および工程2を行うことを特徴とする製造方法。
【0019】
工程1:下記式(2)で表される化合物と、
下記一般式(3)で表される化合物を反応させること。
【0020】
【0021】
【0022】
[式(3)中、R1およびR2は、前記一般式(1)の定義と同意義を示す。]
【0023】
工程2:前記工程1で得られる化合物を、
アルコールを含む2種以上の有機溶媒、および、塩基を用いて溶解した後に、
酸および/または水を混合して再結晶すること。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、所期の色相を示すキサンテン色素および該色素の粉末が得られるため、該色素を含有する着色組成物はカラーフィルター用着色剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施例および比較例の色素の粉末X線回折(XRD)の図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。まず、前記一般式(1)で表されるキサンテン色素について説明する。なお、以下において、官能基が置換基を有する場合、官能基に含まれる炭素原子だけではなく、置換基に含まれる炭素原子も炭素原子数に算入するものとする。
【0027】
一般式(1)において、R1およびR3で表される「炭素原子数が1~8であって、置換基を有していてもよい直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」における「直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」としては、具体的に、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの直鎖状のアルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基などの分岐状のアルキル基があげられる。
【0028】
一般式(1)において、R2およびR4で表される「炭素原子数が6~20であって、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基」における「芳香族炭化水素基」は、アリール基および縮合多環芳香族基を含み、具体的に、フェニル基、ビフェニリル基、テルフェニリル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基などの芳香族炭化水素基があげられる。
【0029】
一般式(1)において、R1およびR3で表される「置換基を有していてもよい直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、または、R2およびR4で表される「置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基」における「置換基」としては、具体的に、
水酸基、シアノ基、トリフルオロメチル基、ニトロ基;スルホン酸基またはカルボン酸基(なおアルカリ金属Mにより、―SO3Mまたは―COOMを形成してもよい。);
フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;
炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基;
炭素原子数3~20のシクロアルキル基;
炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基;
炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基;
炭素原子数3~20のシクロアルコキシ基または1-アダマンチルオキシ基、2-アダマンチルオキシ基;
炭素原子数1~20のアシル基;
炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;
炭素原子数2~20の複素環基;
炭素原子数6~20のアリールオキシ基;
無置換アミノ基;炭素原子数1~20の一置換もしくは二置換アミノ基、などがあげられる。これらの「置換基」は1つのみ含まれてもよく、複数含まれてもよく、複数含まれる場合は互いに同一でも異なっていてもよい。また、これら「置換基」はさらに前記例示した置換基を有していてもよい。なお「置換基」が炭素原子を含む場合、その炭素原子は、上記の「炭素原子数が1~8であって、置換基を有していてもよい直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」における「炭素原子数が1~8であって」、および、「炭素原子数が6~20であって、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基」における「炭素原子数が6~20であって」に算入される。また、これらの置換基同士が単結合、二重結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0030】
なお、一般式(1)中、R1~R4で表される「基」であって、「置換基」を有する上記の各種の「基」において「置換基」の例としてあげられている、
「炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、
「炭素原子数3~20のシクロアルキル基」、
「炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」、
「炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基」、
「炭素原子数3~20のシクロアルコキシ基」、
「炭素原子数1~20のアシル基」、
「炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基」、
「炭素原子数2~20の複素環基」、
「炭素原子数6~20のアリールオキシ基」、および
「炭素原子数1~20の一置換もしくは二置換アミノ基」としては、具体的に、
メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基などの直鎖状もしくは分岐状のアルキル基;
シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基などのシクロアルキル基;
ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、1-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基などのアルケニル基、またはが複数結合した直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基;
メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、イソオクチルオキシ基などの直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基;
シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロノニルオキシ基、シクロデシルオキシ基などの炭素原子数3~20のシクロアルコキシ基;
ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、アクリリル基、ベンゾイル基などのアシル基;
フェニル基、ビフェニリル基、テルフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基(アントリル基)、テトラセニル基、フェナントリル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基などの芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;
チエニル基、フリル基、ピロリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフラニル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾトリアゾリル基、プリニル基、カルバゾリル基、ジベンゾチエニル基、ジベンゾフラニル基、ピリジル基、ピリミジリニル基、トリアジニル基、キノリル基、イソキノリル基、ナフチリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、ナフチリジニル基、カルボリニル基などの複素環基;
フェニルオキシ基、トリルオキシ基、ビフェニリルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントラセニルオキシ基、フェナントレニルオキシ基などのアリールオキシ基;
メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジ(2-エチルヘキシル)基、ジ-t-ブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などの直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または、芳香族炭化水素基を有する一置換もしくは二置換アミノ基、などがあげられる。
【0031】
一般式(1)において、R1およびR3としては、水素原子または炭素原子数1~6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基が好ましい。R1およびR3は、それぞれ独立に同一でも異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。
【0032】
一般式(1)において、R2およびR4としては、炭素原子数が6~12であって、置換基を有していてもよいフェニル基が好ましい。R2およびR4は、それぞれ独立に同一でも異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。
【0033】
一般式(1)で表される本発明のキサンテン色素として好ましい化合物の具体例を以下の式(A-1)~(A-16)に示すが、本発明はこれらの化合物に限定されない。なお下記構造式では、水素原子を一部省略している。また、立体異性体が存在する場合であっても、その平面構造式を記載している。
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
本発明の一般式(1)で表されるキサンテン色素は、1種または分子構造の異なる2種以上を組み合わせて使用(例えば混合)してもよく、これらのキサンテン色素を含有する着色組成物において、キサンテン色素全体において最も占有率の小さい方の1種のキサンテン色素の重量濃度比は0.1~50重量%である。キサンテン色素の種類は1種または2種であるのが好ましい。
【0043】
次に、一般式(1)で表されるキサンテン色素である化合物(以下「化合物(1)」と記載することがある。)の製造方法について説明する。本発明のキサンテン色素は、以下の工程1および工程2を行うことを特徴とする製造方法により合成される。
【0044】
工程1は、下記式(2)で表される化合物(以下「化合物(2)」と記載することがある)と、下記一般式(3)で表される化合物(以下「化合物(3)」と記載することがある)を反応させることを含む工程であり、工程1により、一般式(1)で表されるキサンテン色素を得ることができる。これらの化合物(2)および(3)は、市販のものも使用でき、また、任意の公知方法で合成して得ることもできる。
【0045】
【0046】
【0047】
[式(3)中、R1およびR2は、前記一般式(1)の定義と同意義を示す。]
【0048】
工程1は、具体的には、化合物(2)と、相当する基であるR1およびR2を有する化合物(3)とを、適当な比率で適当な溶媒中で混合し、適当な反応温度および反応時間、適当な撹拌条件などで反応させることにより、前記一般式(1)で表されるキサンテン色素またはその中間体、およびこれらを含む混合物を得ることができる。さらに工程1を繰り返して目的とするキサンテン色素を合成してもよい。この場合、使用する化合物(3)は同一でも異なっていてもよく、R1、R2の部位をR3、R4に置換した化合物を使用してもよい。
【0049】
工程1においては、溶媒を用いてもよく、また、無溶媒でも反応を行うことができるが、利便性や効率などの点から、溶媒を使用して反応させることが好ましい。
【0050】
工程1における溶媒としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ブタノール、2-エトキシエタノール、ペンタノール、ヘキサノールなどのアルコール;エチレングリコールなどのグリコール;1-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)などのアミド;ジメチルスルホキシド(DMSO)などのスルホキシド;スルホランなどのスルホン;などがあげられる。
【0051】
工程1における溶媒は、1種のみ用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。溶媒の使用量(体積(mL))の、化合物(2)の使用量(質量(g))に対する比率(体積/質量)は、1~30が好ましく、1~10がより好ましい。
【0052】
工程1における反応温度は60~200℃であることが好ましく、副生成物を抑制する点から100~160℃であることがより好ましい。なお、反応温度は一定であってもよく、また上記範囲内で適宜変更してもよい。
【0053】
工程1における化合物の使用量は、化合物(2)1molに対して、化合物(3)が2~20molであることが好ましく、2~10molであることがより好ましい。
【0054】
工程1の反応を行う雰囲気は特に限定されない。窒素またはアルゴンなどの不活性ガス中で反応を行ってもよく、大気中で反応を行ってもよい。
【0055】
上記の工程1で得られる化合物は、溶液、反応液中に(微小な)固体(粉末)が分散した状態(本発明ではこの分散液についても溶液と表すことがある)、または粉末が沈殿した状態などで得ることができる。通常は、目的のキサンテン色素を含有する混合物の状態で得ることができる(混合物中の他の成分としては、目的のキサンテン色素以外の生成物、溶媒、未反応成分、その他の成分)。続いて、前記工程1で得られる化合物(または該化合物を含む混合物)は、反応に用いた溶媒や他の溶媒で洗浄してもよい。また、目的の化合物をろ過、濃縮、抽出、乾燥(加熱、減圧など)など公知の方法で固形物(粉末など)として取り出してもよい。さらに、公知の種々の方法で精製を行ってもよい。工程1の後、そのままで、または、上記の洗浄、乾燥、精製などを経て、カラーフィルター用着色剤としての製造工程に移行してもよいが、本発明の製造方法においては、工程1の次に下記の工程2を行うことによってキサンテン色素または該色素の粉末を得ることが好ましい。
【0056】
工程2は、「前記工程1で得られる化合物を、アルコールを含む2種以上の有機溶媒、および、塩基を用いて溶解した後に、酸または水を混合して再結晶すること」を特徴とする工程である。工程2は、この工程2により一般式(1)で表されるキサンテン色素(以下「化合物(1)」と記載することがある)を得る工程を含む。具体的な方法の一例を以下に説明するが、この方法に限定されない。
【0057】
工程2において、「前記工程1で得られる化合物」とは、主成分として化合物(1)を含有する混合物であってもよく、工程1の反応後に得られた前記混合物であってもよい。
「アルコールを含む2種以上の有機溶媒」とは、2種以上の有機溶媒であって、少なくともその1種がアルコールであるものをいう。「アルコールを含む2種以上の有機溶媒・・・を用いて溶解」とは、前記工程1で得られる化合物を、アルコールである有機溶媒と、アルコール以外の有機溶媒とを用いて溶解することをいい、アルコールである有機溶媒と、アルコール以外の有機溶媒とは、前記工程1で得られる化合物を溶解(または分散)させる前に予め混合しておいてもよく、溶解(または分散)させるときにその場で混合してもよい。
また、溶解(または分散)の手順としては、最初に、前記工程1で得られる化合物を、アルコールを含む2種以上の有機溶媒に溶解(または分散)させ、その後に水酸化ナトリウムなどの塩基(アルカリ)を加え、前記工程1で得られる化合物を溶解させてもよい。また、前記化合物を、該アルコールを含む2種以上の有機溶媒と塩基を予め混合しておいた液中に、同時に溶解させてもよい。さらに、前記化合物を、先に塩基(または塩基を含む水溶液)に溶解させ、その後前記有機溶媒を混合し溶解してもよい。
【0058】
工程2において、上記のように、「前記工程1で得られる化合物を、アルコールを含む2種以上の有機溶媒、および、塩基を用いて溶解」した状態で、その後、酸または水を加え、混合することにより、目的のキサンテン色素を再結晶(または晶析)して得ることができる。以上の工程2は、複数回繰り返してもよく、また、添加の間に、洗浄、乾燥の工程を行ってもよい。
【0059】
工程2における「アルコールを含む2種以上の有機溶媒」としては、一般に用いられている溶媒を使用することができる。工程2の「アルコール」としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコールがあげられる。アルコールは1種でも2種以上混合して用いてもよい。アルコール以外の有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)などのケトン;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ヘキサンなどの脂肪族炭化水素;四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンなどのエーテル、などを用いることができる。これらのアルコール以外の有機溶媒は、1種のみ用いても2種以上混合して用いてもよい。アルコールを含め2種以上の有機溶媒を用いる場合、混合比率に関しては任意の比率で用いることができる。
【0060】
溶媒の使用量(体積(mL))の、化合物(1)の理論収量(質量(g))に対する比率(体積/質量)は、2~20が好ましく、5~10がより好ましい。
【0061】
工程2における「塩基」(アルカリ)としては特に限定されず、一般に、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属を含有する塩;カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属を含有する塩が好ましく、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムがより好ましい。また、塩基の使用量は、化合物(1)の理論収量1molに対し、塩基が0.5~5molであることが好ましく、1~3molであることがより好ましい。さらに塩基は水溶液として用いるのが好ましい。
【0062】
工程2において、有機溶媒および塩基を用いて混合し溶解した後、加熱することにより溶解を促進させることが好ましい。溶解時の温度は60~200℃が好ましく、60~160℃がより好ましい。なお、温度は一定であってもよく、また上記範囲内で適宜変更してもよい。
【0063】
工程2における「酸」としては、特に限定されず、具体的には、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などがあげられ、塩酸が好ましい。また、酸の使用量は、化合物(1)の理論収量1molに対し、酸が0.5~5molであることが好ましく、1~3molであることがより好ましい。さらに酸は水溶液として用いるのが好ましい。
【0064】
工程2における「水」としては、特に制限されず、通常の水でよく、具体的には、例えば、水道水、工業用水、イオン交換水、蒸留水などがあげられる。
【0065】
以上説明した方法によって、前記一般式(1)で表されるキサンテン色素、該色素の粉末、該色素を少なくとも1種含有する本発明の着色組成物が得られる。本発明の着色組成物においては、キサンテン色素以外の、上記したような製造方法の過程で使用した溶媒などの成分を、カラーフィルターの製造に影響しない範囲で含んでいてもよい。以下、この粉末について、本発明が解決しようとする課題である、カラーフィルター用着色剤として適した形態を含めた粉末を得る方法について説明する。
【0066】
本発明のキサンテン色素の粉末の形状は、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)などを用いて観察することができる。本発明の粉末は、通常、結晶状、微結晶状、微粉末状、フレーク状、針結晶状、顆粒状などの形状を有する固体の粉末の状態で用いられるが、これらに限定されない。
【0067】
本発明のキサンテン色素の粉末は、粒度分布(コールター法、遠心沈降法、レーザ回折・散乱法など)、表面積、細孔径分布、粉体密度などを測定することによって、粉末の形状の全体的・平均的な情報が詳細に得られる。本発明の粉末は、0.1μm~数mmの粒径の範囲にあるものが好ましいが、製造条件や乾燥後の粉末の回収方法により粒子の形状が変化するため特定の粒径に限定されない。高い溶解性のためには粒径がより小さいものが好ましく、粒径分布の中央値が、0.1~100μmの範囲にあるものが好ましい。
【0068】
本発明のキサンテン色素の粉末は、元素分析、質量分析、粉末X線回折(XRD)による結晶構造解析を行うことにより、分子レベルや原子レベルの微細構造に関する情報を推定することができる。その他の物性として、溶解度などの測定方法に関しては、特許文献5などに記載の方法と同様な公知の方法を使用することができる。
【0069】
本発明のキサンテン色素または該色素を含有する着色組成物の熱重量測定-示差熱分析(TG-DTA)を行うことによって、分解開始温度を分析することができる。分解開始温度は、250℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましく、360℃以上であることが特に好ましい。カラーフィルターに応用する場合、分解開始温度は高いほど好ましい。また、分解開始温度に相当する温度として、試料の加熱後に一定割合(%)重量減少した時点の温度(例:5%重量減少温度)を用いても良い。
【0070】
本発明のキサンテン色素の粉末X線回折(XRD)を測定することにより、その粉末がカラーフィルター用着色剤として適した粉末の状態かどうかを分析することができる。
キサンテン色素の粉末が溶解性の低い粉末である場合、カラーフィルター着色剤中で、固体の微粉末の状態で存在する。粉末の粒子の形状や大きさは、製膜時の塗工ムラを生じ、耐光性や耐熱性に影響し、また、透過光の消偏作用も複雑化し、発色性に影響する。
さらに、カラーフィルター中では、キサンテン色素が他の色の顔料と凝集体を形成し色の調色が行われているが、光励起された顔料とキサンテン色素の間の分子同士の電荷移動についても、キサンテン色素の結晶状態の違いは少なからず影響していると推定される。
このように、キサンテン色素の粉末の分散性、熱特性、色特性などについて、適した粉末の結晶構造を有しているかどうかを判断・推測するための方法として、粉末X線回折は適している。粉末X線回折では、通常、X線源としてCuKα線(hν=8.048keV(hはプランク定数、νは振動数)、波長λ=0.15418nm、)やMoKα線(hν=17.5keV、波長λ=0.071073nm)が用いられるが、CuKα線を用いた粉末X線回折が好ましい。また、照射するX線強度は、測定範囲における回折ピークの相対強度比が、X線強度に応じて変化しない強度であることが好ましい。
【0071】
回折角(2θ)の測定範囲は、50°以下が好ましく、5°~40°であってもよい。これらの結晶構造もしくは分子の凝集状態に関する情報が正しく得られるためには、2θの測定間隔(走査ステップ)は、0.05°以下であることが好ましい。
【0072】
得られる回折パターンにおいて、回折強度が大きい回折角においてピークとして観測される。観測される回折ピーク(またはピーク近傍の肩)の存在は、粉末中の、キサンテン分子内もしくは分子間の周期的な結晶状態に関する情報を表している。回折ピークの位置は試料に特徴的な格子定数に関する情報を有している。回折ピークの形状は、対称でも非対称でもよい。
【0073】
回折ピークの幅は半値幅(FWHM)を用いて表してもよい。回折ピーク幅は、一般に、結晶粒径が大きくなるほどピーク幅が小さくなる傾向があるため、結晶子の大きさに関する情報が得られ、また、結晶子の歪みの程度に関する情報も得られる。本発明のキサンテン色素の粉末の作製条件、粉末X線回折の測定条件から、最も強度が大きく観測されるピークにおいては、少なくとも0.2°~0.5°の半値幅のピークが観測されることが好ましい。
【0074】
ピークの強度は、ピークの最高部とベースラインの間の距離で表すことができる。一般に回折パターンは、高回折角側から低回折角側にかけて、緩やかに回折強度が高くなる傾向がある。本発明においては、ベースラインの描き方は特に限定されず、例えば、解析を行う回折ピーク群を含む回折角の範囲内で、回折ピーク位置から離れた位置にあるピーク間の谷の部分や平坦部を、曲線または直線を用いて結んだベースラインを描いてもよい。ピーク強度は、ベースラインからとピークの最高点との間の長さによって表してもよい。回折パターンにおける最小の強度のピークの構造が観測されるためには、回折パターンのSN比は3以上であることが好ましい。回折パターンにおける大小のピークの強度比は、粉末中における結晶相の定量に関する情報が得られる。
【0075】
本発明におけるキサンテン色素の粉末X線回折の回折パターンにおいて、2θ=5°~40°の範囲には、少なくとも10程度から最大50以上の回折ピークや肩の構造が観測される場合があるが、10~40個の回折ピーク(肩を含む)が観察されることが好ましい。粉末X線回折において、2θ=5°~40°の範囲にピークが現れる場合、約0.2nm~約1.8nmの原子の周期性がその固体粉末試料中に存在していることを示している。例えば、代表的なキサンテン色素であるアシッドレッド52のようなキサンテン分子内において、最短の原子間結合距離は約0.14nm前後であり、2個の窒素間原子の距離は約1nmである。上記の回折角の範囲に観測される回折パターンは、そのキサンテン分子内の各原子(C、O、Nなど)間の周期性に関する情報を有しており、これらは互いに直接結合していてもよく、間に他の原子を介してもよく、間に空間があってもよい。周期性の長さは、少なくとも6員環の幅程度のものから、キサンテン分子内の置換基間の配置に関する情報や、粉末内のキサンテン分子間の配置に関する長さまでの情報を示している。このような理由により粉末X線回折は、キサンテン色素を含有する粉末における状態を分析する方法として優れている。
【0076】
本発明において、発明者らは、キサンテン色素の粉末の製造方法と、その結果得られる粉末X線回折パターンとその色素粉末の色相、特にカラーフィルター用着色剤として適した特性に相関性があることを見出した。具体的には、一般式(1)で表されるキサンテン色素は、製造方法の違いにより、CuKα線の粉末X線回折における回折パターンの特徴が異なるものがあり、例えば、特定の回折角(2θ)におけるピークの強度が顕著であるものとそうでないものがある。
例えば、2θ=21°~22.1°の範囲に観測される強度の大きいピークを含め、2θ=17.5°~34.0°の範囲に観測される回折ピーク群は、ある特定の製造条件で得られる一般式(1)で表されるキサンテン色素について、ピーク位置の回折角や強度がほぼ同様に共通して観測されることから、固体中の分子の凝集状態に影響を受けない特徴、例えば「3H-キサンテン」またはその3位および6位に結合する窒素原子を含めた原子群内の、0.5nm以下の周期的構造に起因すると考えられる。
【0077】
一方、2θ=5°~17.5°の範囲には、いくつかの回折ピークがほぼ同様な回折角に観測されるものの、それらの強度比やピーク幅など相違点があるものも観測される。この範囲の回折角は0.5nm以上の周期性があるものであり、キサンテン色素の分子内では、9位の置換基(フェニル基)やそれに結合する基、または、窒素の位置に結合する置換基の存在によって引き起こされると推察される。つまり、同一の基本骨格3H-キサンテンを有するキサンテン色素であっても、一定の構造と大きさの置換基を有する場合、固体(粉末)の製造条件の違いにより結晶系が異なる場合があることを示唆している。例えば、固体が昇華し再び固体として再結晶する場合と、溶液の状態から固体として再結晶して色素を取り出す場合などでは、分子の凝集の過程は、それぞれ異なることが推察される。さらに、溶媒からの回収の場合でも、再結晶などの製造条件の違いによりキサンテン分子の配置が異なるものが得られることを示唆している。
【0078】
このように、粉末中の凝集状態の違いは、キサンテン分子間の分子間力の大きさや相互作用にも影響するため、結果として溶媒中の溶解性、分散性、色相、カラーフィルター用の他の顔料や樹脂材料などとの相互作用にも大きく影響し、カラーフィルターの諸物性に直接作用する。本発明のキサンテン色素は、CuKα線の粉末X線回折における
回折角(2θ)=5°~34°の回折パターンにおいて、
2θ=21.0°~22.1°の範囲に存在する回折ピークの相対強度を1とするときに、
2θ=13.7°~14.5°の範囲に存在する回折ピークの相対強度が0.1以下であり、
2θ=8°~10°の範囲に存在する回折ピークの相対強度が0.03以下である特徴を有するキサンテン色素である。さらに、2θ=13.7°~14.5°の範囲にピークが観測されないことが好ましく、2θ=8°~10°の範囲にピークが観測されないことが好ましい。
ここで相対強度の測定方法としては、例えば、観測した全体の回折パターンにおける最も強度の大きいピークについて、その高さもしくはピーク面積を基準(例えば1)として、他のピークの強度を求める方法が好ましい。
【0079】
本発明のキサンテン色素は、その色特性(色相)を、溶液、分散液、薄膜または粉末(固体)の状態で、可視光吸収スペクトルもしくは反射スペクトル、分光測色計や色差計を用いたCIE 1931表色系のxy色度図による色度座標(x,y)、濃度(K/Sd)、CIE 1976表色系による色味(L*、a*、b*)、色差(ΔE*)などを測定し、評価することができる。同一の分子構造の化合物の溶液、粉末や薄膜であっても、目視により色が明らかに異なっていることがあり、そのような色の違いを客観的に数値化するために分光測色計や色差計を用いて測定することができる。
【0080】
本発明のキサンテン色素の粉末の色相は、色度座標(x,y)の値が、
0.460≦x≦0.500、
0.285≦y≦0.305 であることが好ましい。この色度を有する粉末は、赤~赤紫色~紫を示す。
【0081】
本発明のカラーフィルター用着色剤は、一般式(1)で表されるキサンテン色素を少なくとも1種含有する着色組成物と、カラーフィルターの製造に一般的に使用される成分とを含む。一般的なカラーフィルターは、例えば、フォトリソグラフィー工程を利用した方法の場合、染料や顔料などの色素を樹脂成分(モノマー、オリゴマーを含む)や溶媒と混合して調製した液体を、ガラスや樹脂などの基板の上に塗布し、フォトマスクを用いて光重合させ、溶媒に可溶/不溶な色素-樹脂複合膜の着色パターンを作製し、洗浄後、加熱することにより得られる。また電着法や印刷法においても、色素を樹脂やその他の成分と混合したものを用いて着色パターンを作製する。よって、本発明のカラーフィルター用着色剤における具体的な成分としては、少なくとも1種の一般式(1)で表されるキサンテン色素、その他の染料や顔料などの色素、樹脂成分、有機溶媒、および光重合開始剤などその他の添加剤があげられる。また、これらの成分から取捨選択してもよく、必要に応じて他の成分を追加してもよい。
【0082】
本発明のキサンテン色素を含有する着色組成物をカラーフィルター用着色剤として用いる場合、各色用カラーフィルターに用いてもよいが、赤色カラーフィルター用着色剤として用いるのが好ましい。
【0083】
本発明のキサンテン色素を含有するカラーフィルター用着色剤は、色素として1種または2種以上のキサンテン色素のみを使用してもよく、色調の調整のために、他の染料または顔料などの公知の色素を混合して使用してもよい。赤色カラーフィルター用着色剤に用いる場合、特に限定されないが、C.I.ピグメントレッド177、209、242、254、255、264、269、C.I.ピグメントオレンジ38、43、71などの赤色系顔料;その他の赤色系レーキ顔料;C.I.ピグメントイエロー138、139、150などの黄色系顔料;C.I.アシッドレッド88、C.I.ベーシックバイオレット10などの赤色染料、などがあげられる。青色カラーフィルター用着色剤に用いる場合、特に限定されないが、C.I.ベーシックブルー3、7、9、54、65、75、77、99、129などの塩基性染料;C.I.アシッドブルー9、74などの酸性染料;ディスパースブルー3、7、377などの分散染料;スピロン染料;シアニン系、インディゴ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、メチン系、トリアリールメタン系、インダンスレン系、オキサジン系、ジオキサジン系、アゾ系、本発明に属さないキサンテン系;その他の青色系レーキ顔料、などの青色系の染料または顔料があげられる。
【0084】
本発明のキサンテン色素を含有するカラーフィルター用着色剤における他の色素の混合比は、キサンテン色素(2種以上の場合にはそれらの合計)に対して5~2000重量%であるのが好ましく、10~1000重量%とするのがより好ましい。液状のカラーフィルター用着色剤中における染料などの色素成分の混合比は、着色剤全体に対して0.5~70重量%であるのが好ましく、1~50重量%であるのがより好ましい。
【0085】
本発明のカラーフィルター用着色剤における樹脂成分としては、これらを使用して形成されるカラーフィルター樹脂膜の製造方式や使用時に必要な性質を有するものであれば、公知のものを使用することができる。例えば、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、スチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエーテル樹脂、フェノール(ノボラック)樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロース樹脂その他の透明樹脂、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、およびこれらの樹脂の複合体があげられ、これらのモノマーまたはオリゴマー成分とを適宜組み合わせて使用することができる。また、これらの樹脂の共重合体を組み合わせて使用することもできる。これらのカラーフィルター用着色剤における樹脂の含有量は、液状の着色剤の場合、5~95重量%であるのが好ましく、10~50重量%であるのがより好ましい。
【0086】
本発明の着色組成物は、カラーフィルター用着色剤としての性能を高めるために、化合物の他の成分として、界面活性剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、その他のカラーフィルター用着色剤の製造時に混合する添加剤、などの有機化合物などを添加することができる。ただし、着色組成物におけるこれらの添加剤の含有率は適量であることが好ましく、本発明の着色組成物の溶媒中の溶解性を低下させたり、もしくは必要以上に向上させたり、また、カラーフィルター製造時に用いる他の同種の添加剤の効果に影響しない範囲の含有率であることが好ましい。これらの添加物は、着色組成物の調製の任意のタイミングで投入することができる。
【0087】
本発明のカラーフィルター用着色剤におけるその他の添加剤としては、光重合開始剤や架橋剤などの樹脂の重合や硬化に必要な成分があげられ、また、液状のカラーフィルター用着色剤中の成分の性質を安定させるために必要な界面活性剤や分散剤などがあげられる。これらはいずれも、カラーフィルター製造用の公知のものを使用することができ、特に限定されない。カラーフィルター用着色剤の固形分全体におけるこれらの添加剤の総量の混合比は、5~60重量%であるのが好ましく、10~40重量%であるのがより好ましい。
【実施例】
【0088】
以下、本発明の実施の形態について、実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されない。なお、実施例で得られた化合物の同定は、1H-NMR分析(ブルカー社製核磁気共鳴装置、型番:Magnet System 300MHz/54mm UltraShield)により行い、測定結果を下記実施例中に示す。
【0089】
[実施例1] 化合物(A-1)の合成実施例1
以下の反応は、窒素気流下で行った。1L容器に化合物(2)60.0g、2,6-ジメチルアニリン120g、1,2-ジクロロベンゼン300mLを入れ、130℃で78時間撹拌し反応させた。撹拌後、反応液を40℃以下に冷却し、析出した固体をろ取した。容器に、ろ取した固体、トルエン240mL、メタノール240mLを入れ、還流下(約65℃)で1時間撹拌し、40℃以下に冷却し、固体をろ取した。容器に、ろ取した固体、トルエン60mL、メタノール300mL、24%水酸化ナトリウム水溶液26.1gを入れ混合し、65℃で加熱し、固体を溶解(分散)させた。加熱後の混合液を50℃に冷却し、35%塩酸水溶液16.3gを滴下した。混合液を40℃以下に冷却し、析出した固体をろ取し、容器に、ろ取した固体、水360gを入れ混合し、室温で2時間撹拌した。撹拌後の混合物をろ過し、得られた固体を80℃で24時間、減圧乾燥し、下記化合物(A-1)を赤紫色の固体として得た(53.7g,収率63%)。
【0090】
1H-NMR(300MHz、DMSO-d6):δ(ppm)=9.89(2H)、8.01(1H)、7.62(2H)、7.24-7.14(11H)、5.94(2H)、2.15(12H)。
【0091】
【0092】
[実施例2] 化合物(A-1)の合成実施例2
以下の反応は、窒素気流下で行った。1L容器に、化合物(2)60.0g、2,6-ジメチルアニリン120g、2-エトキシエタノール300mLを入れ、130℃で43時間撹拌し反応させた。撹拌後、反応液を40℃以下に冷却し、析出した固体をろ取した。容器に、ろ取した固体、メタノール600mLを入れ、還流下(約65℃)で1時間撹拌した後、40℃以下まで冷却し、固体をろ取した。容器に、ろ取した固体、トルエン60mL、メタノール300mL、24%水酸化ナトリウム水溶液26.1gを入れ混合し、65℃で加熱し、固体を溶解(分散)させた。加熱後の混合液を50℃に冷却し、35%塩酸水溶液16.3gを滴下した。混合液を40℃以下に冷却後、析出した固体をろ取し、容器に、ろ取した固体、水360gを入れ混合し、室温で2時間撹拌した。撹拌後の混合物をろ過し、得られた固体を80℃で24時間減圧乾燥し、化合物(A-1)を赤紫色の固体として得た(58.6g,収率69%)。
【0093】
[実施例3] 化合物(A-1)の合成実施例3
実施例2の反応に用いた2-エトキシエタノールを1-メチル-2-ピロリドンに変えた以外は、実施例2と同様に行い、化合物(A-1)を赤紫色の固体として得た(47.3g,収率56%)。
【0094】
[比較例1]
以下の反応は、窒素気流下で行った。1L容器に、化合物(2)60.0g、2,6-ジメチルアニリン120g、1,2-ジクロロベンゼン300mLを130℃で78時間撹拌し反応させた。撹拌後、反応液を40℃以下に冷却し、析出した固体をろ取した。容器に、ろ取した固体、メタノール400mLを入れ混合し、還流下(約65℃)で1時間撹拌した後、40℃以下に冷却し、固体をろ取した。得られた固体を80℃で24時間乾燥し、化合物(A-1)を赤色の固体として得た(53.7g,収率70%)。
【0095】
[粉末X線回折測定]
実施例1~実施例3および比較例1で得られた化合物の色素粉末について、粉末X線回折(XRD)測定(PANalytical B.V.社製、多目的X線回折装置、型式:Empyrean、X線源:CuKα線(hν=0.15418nm、40kV、30mA)、発散スリット:1/2°、散乱スリット:1°、受光スリット:7.5mm、走査ステップ:0.0131°、走査速度:0.034°/秒、走査回折角範囲:2θ=5°~50°)を行った。回折角(2θ)=5°~40°における測定結果を
図1および
図2(2θ=7°~10.5°および13.0°~14.8°の拡大図)に示す。各回折パターンは、2θ=10°におけるピーク間の谷の平坦部と、2θ=34°における平坦部を直線で結び、ベースラインとした。各回折パターンにおいて、2θ=21°~22.1°に観測される最も強度の大きいピークの高さ(ベースラインからピーク頂点までの距離)を基準値1とした。表1に、特徴的な回折ピークが観測される回折角2θ(°)の範囲と、その範囲に観測される回折ピークの相対強度を示す。また、表1に示す各回折ピークの半値幅(FWHM)(°)を表2に示す。なお表2中、空白部はピークが存在しないか小さ過ぎるため測定不可であることを表す。
【0096】
【0097】
【0098】
表1および表2から、実施例の回折パターンは、
2θ=21.0°~22.1°の範囲に存在する回折ピークの相対強度を1としたときに、2θ=13.7°~14.5°の範囲に存在する回折ピークの相対強度が0.1以下であり、2θ=8°~10°の範囲に存在する回折ピークの相対強度が0.03以下であり、かつ0.02以下であり、比較例のものと異なる特徴を有していることがわかった。
【0099】
[色度測定]
実施例1~実施例3および比較例1で得られた色素化合物の固体の粉末の色度を測定した。得られた色素粉末をガラスシャーレ上に隙間なく乗せ、分光測色計(コニカミノルタ社製、型式:CM-5、光源:CIE標準光源D65)を用いて色度座標(x,y)を測定した。結果を表3に示す。
【0100】
【0101】
表3に示すように、本発明により、所期の色相を示すキサンテン色素(粉末)を得ることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明のキサンテン色素および該色素を含有する着色組成物は、液晶表示装置、電界発光(EL)表示装置、CCDやCMOSなどの撮像素子に用いられるカラーフィルターの作製において、所期の色相を示すカラーフィルター用着色剤として有用である。