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  • 特許-密封装置 図1
  • 特許-密封装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】密封装置
(51)【国際特許分類】
   F16J 3/04 20060101AFI20240729BHJP
   F16J 15/3232 20160101ALI20240729BHJP
   F16J 15/52 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
F16J3/04 B
F16J15/3232 201
F16J15/52 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020179416
(22)【出願日】2020-10-27
(65)【公開番号】P2022070382
(43)【公開日】2022-05-13
【審査請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100160864
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 政治
(74)【代理人】
【識別番号】100158698
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 基樹
(74)【代理人】
【識別番号】100217892
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】樽川 雄一
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-351385(JP,A)
【文献】特開2010-091077(JP,A)
【文献】特開2010-274820(JP,A)
【文献】国際公開第2008/062585(WO,A1)
【文献】特開平09-196187(JP,A)
【文献】特開平07-259994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 3/04
F16J 15/3232
F16J 15/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸と、前記軸が貫通している開口部を有する前記軸に対して相対的に移動可能な機体と、の隙間を密封する密封装置であって、
円筒形であり、内周面が前記軸の軸心に対して平行になるように前記開口部に固定され、前記内周面に前記軸心を中心とする円をなす溝である係合溝が、前記軸心に平行な方向において特定間隔で2つ形成されている、樹脂製の環状取付部と、
前記軸の外周面に密接され、前記軸心に平行な方向において特定間隔で配置された2つのリップ部と、
2つの前記リップ部の各々の外周側に、前記軸心に平行な方向において特定間隔で配置された2つのバンパー部と、
2つの前記バンパー部の各々の外周側に、前記軸心に平行な方向において特定間隔で配置された、弾性材料からなる2つのベロー部と、
2つの前記ベロー部の各々の外周側端部に存し、前記ベロー部と一体であり、前記環状取付部における2つの前記係合溝の各々に嵌り、これに固定される、前記軸心に平行な方向において特定間隔で配置された2つの外径係合部と、
を有する、密封装置。
【請求項2】
前記リップ部、前記バンパー部、前記ベロー部および前記外径係合部が一体となっている、請求項1に記載の密封装置。
【請求項3】
2つの前記バンパー部の各々の内周側に、前記軸心に平行な方向において特定間隔で配置された、2つの低摩擦摺動部をさらに有する、請求項1または2に記載の密封装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は密封装置に関する。具体的には、自動車のフロントダッシュパネルにおけるステアリングシャフトの貫通部を密封するステアリング用ダストシールや、他の機器におけるダストシールとして好ましく用いることができる密封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車が備えるステアリングシャフトは車室とエンジンルームとを隔てるダッシュパネルを貫通している。ここで、ステアリングシャフトはステアリングホイールの回転を車輪に伝えるものであり、走行中の振動等によって移動するため、ステアリングシャフトとダッシュパネルとの間には隙間が設けられている。そして、この隙間から粉塵等の異物を含む外気やエンジンルームで生じる音が車室へ侵入することを防ぐために、ステアリングシャフトとダッシュパネルとの隙間にダストカバーが設けられる。
【0003】
従来のダストカバーとして、例えば特許文献1に記載の密封装置が挙げられる。
特許文献1には、相対移動可能な機体と、この機体に開設された開口部を貫通した軸との間を密封する密封装置であって、前記開口部に固定される固定環部と、前記軸の外周面に密接されるシールリップと、このシールリップの根元に形成されたバンパー部と、前記固定環部と前記バンパー部との間に形成されて自在に変形可能なベロー部と、前記バンパー部の内周に保持された低摩擦摺動環とを備え、この低摩擦摺動環が金属環で補強されたことを特徴とする密封装置が記載されている。そして、このような密封装置によれば、軸偏心による径方向荷重を受けても低摩擦摺動環が真円性を損なうような変形を受けることがなく、このため、低摩擦摺動環がバンパー部の内周から外れてしまうことがなく、軸の外周面に対するシールリップの密接状態が損なわれることもないので良好なシール性が維持されると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-91077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1に記載の密封装置では、第一固定環部の内周側に第二固定環部を配置して、ここに第二シール部の端部を固定するため、第一固定環部よりも第二ベロー部の径方向の長さが短くなる。これに対して第二ベロー部の径方向の長さをより長くすることできれば、偏心追随性(軸が偏心しても軸と開口部との隙間のシール性が確保される性能)をより高めることができる。また、特許文献1に記載の密封装置では第一固定環部および第二固定環部が金属製であるが、これを別の材料等で形成することができれば、より軽量化することができる。さらに、特許文献1に記載の密封装置では2つのシール部が異なるものであるが、これを同じものとすることができれば、原材料量はより減少し、製造過程を簡略化することもできる。
【0006】
本発明は上記のような課題を解決することを目的とする。すなわち、本発明は、ベロー部の径方向の長さを確保できるため偏心追随性が高く、軽量化、省資源化、さらに製造過程の簡略化が達成された密封装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明者は鋭意検討し、本発明を完成させた。
本発明は以下の(1)~(3)である。
(1)軸と、前記軸が貫通している開口部を有する前記軸に対して相対的に移動可能な機体と、の隙間を密封する密封装置であって、
円筒形であり、内周面が前記軸の軸心に対して平行になるように前記開口部に固定され、前記内周面に前記軸心を中心とする円をなす溝である係合溝が、前記軸心に平行な方向において特定間隔で2つ形成されている、樹脂製の環状取付部と、
前記軸の外周面に密接され、前記軸心に平行な方向において特定間隔で配置された2つのリップ部と、
2つの前記リップ部の各々の外周側に、前記軸心に平行な方向において特定間隔で配置された2つのバンパー部と、
2つの前記バンパー部の各々の外周側に、前記軸心に平行な方向において特定間隔で配置された、弾性材料からなる2つのベロー部と、
2つの前記ベロー部の各々の外周側端部に存し、前記ベロー部と一体であり、前記環状取付部における2つの前記係合溝の各々に嵌り、これに固定される、前記軸心に平行な方向において特定間隔で配置された2つの外径係合部と、
を有する、密封装置。
(2)前記リップ部、前記バンパー部、前記ベロー部および前記外径係合部が一体となっている、上記(1)に記載の密封装置。
(3)2つの前記バンパー部の各々の内周側に、前記軸心に平行な方向において特定間隔で配置された、2つの低摩擦摺動部をさらに有する、上記(1)または(2)に記載の密封装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ベロー部の径方向の長さを確保できるため偏心追随性が高く、軽量化、省資源化、さらに製造過程の簡略化が達成された密封装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の密封装置における好適態様について、その軸心を通る平面で切断した状態を示す半断面図である。
図2】本発明の密封装置における好適態様の環状取付部を、その軸心を通る平面で切断した状態を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について説明する。
本発明は、軸と、前記軸が貫通している開口部を有する前記軸に対して相対的に移動可能な機体と、の隙間を密封する密封装置であって、円筒形であり、内周面が前記軸の軸心に対して平行になるように前記開口部に固定され、前記内周面に前記軸心を中心とする円をなす溝である係合溝が、前記軸心に平行な方向において特定間隔で2つ形成されている、樹脂製の環状取付部と、前記軸の外周面に密接され、前記軸心に平行な方向において特定間隔で配置された2つのリップ部と、2つの前記リップ部の各々の外周側に、前記軸心に平行な方向において特定間隔で配置された2つのバンパー部と、2つの前記バンパー部の各々の外周側に、前記軸心に平行な方向において特定間隔で配置された、弾性材料からなる2つのベロー部と、2つの前記ベロー部の各々の外周側端部に存し、前記ベロー部と一体であり、前記環状取付部における2つの前記係合溝の各々に嵌り、これに固定される、前記軸心に平行な方向において特定間隔で配置された2つの外径係合部と、を有する、密封装置である。
このような密封装置を、以下では「本発明の密封装置」ともいう。
【0011】
本発明の密封装置は、軸と機体との隙間を密封する密封装置である。ここで機体は開口部を有し、この開口部には軸が貫通している。また、機体は軸に対して相対的に移動可能なものである。
例えば自動車のステアリングシャフト(軸)は、車室とエンジンルームとを隔てるダッシュパネル(機体)の開口部を貫通している。ダッシュパネルはステアリングシャフトに対して相対的に移動可能である。そして、ステアリングシャフトとダッシュパネルとの隙間にはダストカバーとして、本発明の密封装置を設けることができる。
【0012】
本発明の密封装置について図を用いて説明する。
図1は、本発明の密封装置における好適態様について、軸心ω(軸の中心線)を通る平面で切断した状態を示す半断面図である。
なお、図1には軸心ωは示しているが、軸および機体は示していない。図1において軸は、その外周面が本発明の密封装置におけるリップ部およびバンパー部の内周側となるように配置される。また、図1において機体は本発明の密封装置の外周側に配置され、機体における開口部の内周面に、本発明の密封装置における環状取付部の外周面が固定される。
【0013】
図1において、Bは、エンジンルーム等の異物や騒音の発生源が存在する側を示しており、Aは、車室等、B側において発生した異物や騒音の侵入を防ぎたい空間が存在する側を意味している。
【0014】
図1において本発明の密封装置1は、環状取付部10と、2つのリップ部20、20´と、2つのベロー部30、30´と、2つの外径係合部40、40´と、2つのバンパー部50、50´と、2つの低摩擦摺動部60、60´とを有する。
本発明の密封装置は低摩擦摺動部60、60´を有さなくてもよいが、図1に示すように低摩擦摺動部60、60´を有することがより好ましい。
【0015】
図1に示す好適態様のように、リップ部、バンパー部、ベロー部および外径係合部が一体となっていることが好ましい。これらは別々に成形され、接着剤等によって接合されて一体となったものであってもよいが、一体に成形加工されて得られたものであって、リップ部、バンパー部、ベロー部および外径係合部が連続体となっていることが好ましい。
【0016】
なお、リップ部、バンパー部、ベロー部および低摩擦摺動部の形状、大きさ等は従来公知のものと同様であってよい。
また、リップ部、バンパー部および外径係合部の材質は特に限定されず、例えば従来公知のゴム材料であってよい。ゴム材料としては、例えば、ニトリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(H-NBR),アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM)等の合成ゴムが挙げられる。
さらに、ベロー部の材質は特に限定されず、リップ部、バンパー部および外径係合部と同様のゴム材料であってよく、弾性材料であってもよい。弾性材料として、例えば、エチレンプロピレンゴム(EPDM)やクロロプレンゴム(CR)が挙げられる。
【0017】
<環状取付部>
環状取付部について図1に加え、図2を用いて説明する。
図2は、本発明の密封装置1における円筒形の環状取付部10を、円筒の中心軸を通る平面で切断した状態を示す概略斜視図である。環状取付部10の中心軸は、軸と機体とが相対的に移動していない状態(止まっている状態)において、原則、軸心ωと一致する。
【0018】
環状取付部10は軸と機体とが相対的に移動していない状態(止まっている状態)では、図1に示すような断面において環状取付部10の内周面10sが軸心ωに対して、原則、平行になるように、ダッシュパネル等の機体の開口部に固定される。
【0019】
環状取付部10の内周面10sには、図1図2に示すように、2つの溝が形成されている。これらの溝は軸心ωの方向が法線方向となる平面において、各々、軸心ωを中心とする円をなしている。また、これらの溝は、軸心ωに平行な方向において離れて形成されている。すなわち、2つの溝は軸心ωに平行な方向において特定間隔L1をもって形成されている。
特定間隔L1は、本発明の密封装置1における径方向および軸方向の長さ等によって決定される。
この2つの溝を本発明の密封装置では係合溝ともいう。図1図2において、これらを係合溝12、12´とする。
【0020】
係合溝12、12´の形状や深さ等は特に限定されない。後に詳細に説明するように、係合溝12、12´には外径係合部が嵌り、固定されるので、外径係合部が嵌り、固定されやすい形状や深さ等とすることが必要となる。図1図2に示すように、断面が矩形である溝であってよい。係合溝12、12´の深さや幅は周方向において一定であることが好ましい。
【0021】
環状取付部10は樹脂製である。具体的にはナイロン(ポリアミド)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、塩ビ等からなることが好ましい。このため本発明の密封装置は軽量化が達成される。
【0022】
環状取付部10の径方向および軸方向の長さ等は、本発明の密封装置1の大きさや用途等によって決定される。
【0023】
図1図2に示すように、環状取付部10は、そのA側の端部にツバ14を有していてもよい。この場合、環状取付部10の外周面を機体における開口部の内周面に取り付ける際に位置決めしやすい。
【0024】
<リップ部>
リップ部について説明する。
リップ部20、20´は、軸の外周面に接触する。具体的には、リップ部20、20´における先端部22、22´が軸の外周面に摺動可能に密接されるように配置される。ここでリップ部20、20´の先端部22、22´は、図1に示すようにリップ部20、20´におけるB側の先端部分を意味する。
【0025】
また、リップ部20、20´は2つ存在し(リップ部20およびリップ部20´の2つが存在し)、これらは前述の係合部12、12´の場合と同様に、軸心ωに平行な方向において特定間隔で配置されている。この特定間隔は、前述の2つの係合部12、12´における特定間隔L1と同じであることが好ましい。
【0026】
2つのリップ部20、20´は同一ものであることが好ましい。2つのリップ部20、20´が異なるものである場合と比べて省資源化に寄与し、また、製造過程が簡略化されるからである。
【0027】
<バンパー部>
バンパー部について説明する。
図1に示すように、本発明の密封装置1は、2つのバンパー部50、50´を有する。
【0028】
2つのバンパー部50、50´の各々は、図1に示す概略断面図においてリップ部20、20´の根元からA側へ延びるように配置される。バンパー部50、50´はリップ部20、20´の軸への密接状態を安定させる役割を果たす。バンパー部50、50´はリップ部20、20´の根元からA側へ向けて、漸次大径になる略円錐筒状をなしている。
図1に示す好適態様の場合、バンパー部50、50´はリップ部20、20´と連続体となっている。これらは一体に成形加工されて得られたものであることが好ましい。
【0029】
また、バンパー部50、50´の内周面には、低摩擦摺動部60、60´の外周面と凹凸嵌合させるための環状突条50a、50a´、50b、50b´および環状溝50c、50c´が形成されている。これらによって低摩擦摺動部60、60´はバンパー部50、50´の内周面に固定される。
【0030】
さらに図1に示す好適態様の場合、バンパー部50、50´のリップ部20、20´側の端部にリング状の金属環52、52´が埋設されている。この金属環52、52´は低摩擦摺動部60、60´のバンパー部50、50´内周面へ固定を強化し、加えて、低摩擦摺動部60、60´の形状を真円に保持する役割を果たし、さらに、リップ部20、20´の軸への密着度を高める役割を果たす。
金属環52、52´は金属板(好ましくはSPCC等の鋼板)をワッシャ状に打ち抜いて得たものであってよい。
【0031】
2つのバンパー部50、50´は、図1に示すような断面において、軸心ωに平行な方向において特定間隔で並んで配置される。この特定間隔は、前述の2つの係合部12、12´における特定間隔L1と同じであることが好ましい。
【0032】
2つのバンパー部50、50´は同一ものであることが好ましい。2つのバンパー部が異なるものである場合と比べて省資源化に寄与し、また、製造過程が簡略化されるからである。
【0033】
<低摩擦摺動部>
低摩擦摺動部について説明する。
本発明の密封装置において低摩擦摺動部は必須構成要素ではないが、本発明の密封装置は低摩擦摺動部を有することが好ましい。
図1に示す本発明の密封装置1は、2つの低摩擦摺動部60、60´をバンパー部50、50´の内周側に備える。
本発明の密封装置1が低摩擦摺動部60、60´を備えると、軸が大きく偏心しても、軸の外周面がバンパー部の内周面に直接、接することを防ぐことができる。そして、軸の外周面とバンパー部の内周面との摺動に伴うスティック-スリップ現象による異音発生を防止することができる。
【0034】
2つの低摩擦摺動部60、60´は、ナイロン(ポリアミド)、PTFEなど、低摩擦で耐摩耗性に優れた材料からなる。
【0035】
低摩擦摺動部60、60´は略円錐筒状であってよく、その内周面には、図1に示されるように多数の潤滑溝62、62´が円周方向等間隔で形成されている。潤滑溝にはグリースなどの潤滑剤が保持され得るので、スティック-スリップ現象による異音の発生がより抑制される。
【0036】
また、低摩擦摺動部60、60´の外周面には図1に示すような凹凸が形成されており、これによってバンパー部50、50´の外周面に形成された環状突条50a、50a´、50b、50b´および環状溝50c、50c´と凹凸嵌合する。低摩擦摺動部60、60´はバンパー部50、50´の外周面に形成された環状突条50a、50b、50a´、50b´によって軸方向両側から押えられ、バンパー部50、50´の内周面に固定される。
【0037】
低摩擦摺動環部60、60´の内径は、軸の外径より僅かに大きい。
【0038】
上記以外の低摩擦摺動部60、60´の形状、大きさ等は、従来公知のものと同様であってよい。
【0039】
2つの低摩擦摺動部60、60´は、図1に示す概略断面図において、軸心ωに平行な方向において特定間隔で並んで配置される。この特定間隔は、前述の2つの係合部12、12´における特定間隔L1と同じであることが好ましい。
【0040】
2つの低摩擦摺動部60、60´は同一ものであることが好ましい。2つの低摩擦摺動部が異なるものである場合と比べて省資源化に寄与し、また、製造過程が簡略化されるからである。
【0041】
<ベロー部>
ベロー部について説明する。
本発明の密封装置は2つのベロー部を有する。図1において本発明の密封装置1は2つのベロー部30、30´を有し、各々は図1に示すような断面においてバンパー部50、50´の外周側に配置されている。
図1に示す好適態様の場合、ベロー部30、30´は、その内周側の端部がバンパー部50、50´の外周側の端部と繋がり、連続体となっている。これらは一体に成形加工されて得られたものであることが好ましい。
ベロー部は、通常、図1に示すような断面において、B側に凸の波状をなす。
【0042】
また、2つのベロー部30、30´は、図1に示す概略断面図において、軸心ωに平行な方向において特定間隔で並んで配置される。この特定間隔は、前述の2つの係合部12、12´における特定間隔L1と同じであることが好ましい。
【0043】
2つのベロー部は同一ものであることが好ましい。2つのベロー部が異なるものである場合と比べて省資源化に寄与し、また、製造過程が簡略化されるからである。
【0044】
<外径係合部>
外径係合部について説明する。
本発明の密封装置は2つの外径係合部40、40´を有する。
外径係合部40、40´は、各々、ベロー部30、30´の外周側端部に存する。また、ベロー部30、30´と一体である。外径係合部はベロー部の外周側端部に接着剤等を用いて強固に接合されたものであってよいが、外径係合部とベロー部とが連続体であって、一体に成形加工されて得られたものであることが好ましい。
【0045】
外径係合部40、40´の各々は、軸心ωを中心とするリング状をなしている。
【0046】
図1に示すように、外径係合部40、40´の各々は、環状取付部10における2つの係合溝12、12´の各々に嵌り、固定される。固定方法は特に限定されない。例えば係合溝12、12´の内面に凸部が形成されていて、これに対して外径係合部40、40´の表面には、その突起が嵌る凹部が形成されていて、係合溝12、12へ外径係合部40、40´を嵌めると、その凸部と凹部とが嵌り、固定される構成であることが好ましい。また、接着剤等を用いて外径係合部40、40´を環状取付部10における係合溝12、12´に固定することもできる。
【0047】
このような本発明の密封装置は、例えば特許文献1に記載の密封装置と比較して、ベロー部の径方向の長さを確保できる。そのため偏心追随性が高い。
また、軽量化、省資源化、さらに製造過程の簡略化が達成されている。
【符号の説明】
【0048】
1 本発明の密封装置
10 環状取付部
10s 環状取付部の内周面
12、12´ 係合溝
14 ツバ
20、20´ リップ部
22、22´ 先端部
30、30´ ベロー部
40、40´ 外径係合部
50、50´ バンパー部
52、52´ 金属環
50a、50a´50b、50b´ 環状突条
50c、50c´ 環状溝
60、60´ 低摩擦摺動部
62、62´ 潤滑溝
ω 軸心
図1
図2