(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】免震構造物
(51)【国際特許分類】
E04H 9/02 20060101AFI20240729BHJP
【FI】
E04H9/02 301
E04H9/02 351
(21)【出願番号】P 2020179780
(22)【出願日】2020-10-27
【審査請求日】2023-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】518148618
【氏名又は名称】小川 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100139206
【氏名又は名称】戸塚 朋之
(72)【発明者】
【氏名】小川 亨
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-187476(JP,A)
【文献】特開平10-184094(JP,A)
【文献】特開平08-303054(JP,A)
【文献】特開平05-222866(JP,A)
【文献】特開2018-004046(JP,A)
【文献】特開昭50-106078(JP,A)
【文献】特開平10-127394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/00 - 9/16
E04B 1/62 - 1/99
F16F 15/00 -15/36
F16C 11/00-11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面から鉛直方向に立ち上がった鉛直部材と、
前記鉛直部材の間に水平方向に架け渡された固定スラブと、
前記固定スラブの上に載置された複数の転動体と、
前記複数の転動体の上に水平方向に移動可能に載置された可動スラブと、
前記可動スラブが水平方向の所定の位置に配置されるように前記可動スラブを付勢するバネと、
前記可動スラブから、前記固定スラブに形成された孔部を通って下方へ延びる第1の懸垂材と、
下端に開口を有する中空の球状をして、前記第1の懸垂材の下端に固定された笠部材と、
前記笠部材の内側に配置された球状体と、
前記球状体から下方へ延びる第2の懸垂材と、
前記第2の懸垂材に吊り下げられた居室と、
前記居室の揺れを抑制するダンパーと、を有する免震構造物。
【請求項2】
前記複数の転動体の間隔を確保するスペーサーを更に有する請求項1に記載の免震構造物。
【請求項3】
前記球状体に塗布された潤滑剤を更に有する請求項1又は2に記載の免震構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震による水平荷重を軽減する免震構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤中の支持地盤から鉛直上方に向けて突出するよう構築した杭と、杭の上端部に一体に設けた十字状の梁と、梁に吊りワイヤーを介して吊下した住戸本体とからなり、住戸本体と杭との間に、住戸本体の振動を抑える粘弾性ダンパーを介装させた免震建物が提案されている(下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献に記載の免震建物は、住戸本体を吊りワイヤーによって吊り下げることでのみ地震による水平荷重を軽減するものとしており、水平荷重の軽減率が低いという問題がある。
【0005】
そこで、本願は、地震による水平荷重の軽減率を高めた免震構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の免震構造物は、
地面から鉛直方向に立ち上がった鉛直部材と、
前記鉛直部材の間に水平方向に架け渡された固定スラブと、
前記固定スラブの上に載置された複数の転動体と、
前記複数の転動体の上に水平方向に移動可能に載置された可動スラブと、
前記可動スラブが水平方向の所定の位置に配置されるように前記可動スラブを付勢するバネと、
前記可動スラブから、前記固定スラブに形成された孔部を通って下方へ延びる第1の懸垂材と、
下端に開口を有する中空の球状をして、前記第1の懸垂材の下端に固定された笠部材と、
前記笠部材の内側に配置された球状体と、
前記球状体から下方へ延びる第2の懸垂材と、
前記第2の懸垂材に吊り下げられた居室と、
前記居室の揺れを抑制するダンパーと、を有するものとする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、地震による水平荷重の軽減率を高めた免震構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は本願の実施形態に係る免震構造物を示す断面図である。
図1(a)は
図1(b)に示すA-A断面図、
図1(b)は
図1(a)に示すB-B断面図である。
【
図2】
図2は本願の実施形態に係る免震構造物の笠部材と球状体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1及び2を参照しながら本願の実施形態に係る免震構造物100について説明する。免震構造物100は、
図1に示すように、鉛直部材2と、固定スラブ3と、複数の転動体4と、可動スラブ5と、バネ6と、第1の懸垂材7と、笠部材8と、球状体9と、第2の懸垂材10と、居室11と、ダンパー12と、を有する。
【0010】
鉛直部材2は、地面から鉛直方向に立ち上がっている。鉛直部材2は、柱又は壁とすることができる。鉛直部材2は、木造、鉄筋コンクリート造、鉄骨造など、既存の建築構造とすることができる。
【0011】
固定スラブ3は、鉛直部材2の間に水平方向に架け渡される。固定スラブ3の中央には上下方向に貫通した孔部3aが形成される。固定スラブ3は、木造、鉄筋コンクリート造、鉄骨造など、既存の建築構造とすることができる。固定スラブ3は、その外周から中央に向かって緩やかな下り傾斜としてもよい。
【0012】
転動体4は、固定スラブ3の上に複数載置されている。転動体4は例えば鋼製の球体とすることができる。転動体4の間隔を確保するスペーサーを設けることが好ましい。
【0013】
可動スラブ5は、複数の転動体4の上に水平方向に移動可能に載置されている。可動スラブ5は、木造、鉄筋コンクリート造、鉄骨造など、既存の建築構造とすることができる。可動スラブ5は、その外周から中央に向かって緩やかな下り傾斜としてもよい。
【0014】
バネ6は、可動スラブ5が水平方向の所定の位置に配置されるように可動スラブ5を付勢する。バネ6は、例えば、鉛直部材2を固定スラブ3よりも上方に延ばしたバネ固定部2aに固定することができる。バネ6は、可動スラブ5を付勢するものであれば、つるまきバネに限らない。
図1(a)において、バネ6は、
図1(a)の左右方向に付勢するもののみを示しているが、
図1(a)の奥行方向に付勢するものも設ける。
【0015】
第1の懸垂材7は、可動スラブ5から固定スラブ3に形成された孔部3aを通って下方へ延びる。第1の懸垂材7としては、金属製のケーブル、コイルバネなどを用いることができるが、これに限られず、居室11を吊り下げる強度を有すれば良い。
【0016】
笠部材8は、
図2に示すように、下端に開口を有する中空の球状をして、第1の懸垂材7の下端に固定される。笠部材8は、例えば、鋼材から形成することができる。
【0017】
球状体9は、笠部材8の内側に配置される。笠部材8と球状体9の間にはグリースなどの潤滑剤を塗布することが好ましい。球状体9は、例えば、鋼材から形成することができる。球状体9は、例えば、笠部材8を形成する半球状の2つの部材の中に入れた後、その2つの部材を溶接等により接合して笠部材8とすることで、笠部材8の中に入れる。
【0018】
第2の懸垂材10は、球状体9から下方へ延びる。第2の懸垂材10も第1の懸垂材7と同様に金属製のケーブル、コイルバネなどを用いることができる。
【0019】
居室11は、第2の懸垂材10に吊り下げられる。第1の懸垂材7、笠部材8、球状体9及び第2の懸垂材10を1セットとする場合、これらは居室11の重心の直上に固定される。しかし、これらのセットは1セットに限られず、複数設けることもでき、その場合、居室11のバランスが保てる位置に配置する。
【0020】
ダンパー12は居室11の揺れを抑制する。ダンパー12は、例えば、
図1(b)に示すように、居室11と鉛直部材2との間に配置される。ダンパー12としては、例えば、オイルダンパー、鋼材ダンパー、鉛ダンパーなどの既存のダンパーを用いることができる。ダンパーの種類によっては、居室11の上又は下に配置しても良い。
【0021】
以上に説明した本願の免震構造物100によれば、地震により鉛直部材2と固定スラブ3に水平荷重が入力した場合であっても、複数の転動体4が転動することで可動スラブ5に入力する水平荷重を軽減し、更に、笠部材8と球状体9が相対回転することで、第2の懸垂材10から居室11へ入力される水平荷重を大幅に軽減することができる。なお、本願発明は上記実施形態に限られるものではなく、種々の変更、改良が可能である。
【符号の説明】
【0022】
100 免震構造物
2 鉛直部材
2a バネ固定部鉛直部材
3 固定スラブ
3a 孔部
4 転動体
5 可動スラブ
6 バネ
7 第1の懸垂材
8 笠部材
9 球状体
10 第2の懸垂材
11 居室
12 ダンパー