(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】金属部材の表面形状の調整方法
(51)【国際特許分類】
C25D 7/00 20060101AFI20240729BHJP
C25D 5/06 20060101ALI20240729BHJP
C25D 5/48 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
C25D7/00 C
C25D5/06
C25D5/48
C25D7/00 A
(21)【出願番号】P 2020196152
(22)【出願日】2020-11-26
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【氏名又は名称】前川 英明
(72)【発明者】
【氏名】志鷹 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠介
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-152384(JP,A)
【文献】特開2008-274948(JP,A)
【文献】実開平06-051266(JP,U)
【文献】特開平10-305351(JP,A)
【文献】特開平03-102198(JP,A)
【文献】特開2003-268596(JP,A)
【文献】特開2002-227842(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101240438(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101514467(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103806048(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104911658(CN,A)
【文献】米国特許第9193012(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 5/00
C25D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品製造時に予め溶射皮膜またはメッキ皮膜が形成されている金属部材の表面の傷または
減肉部を調整する方法であって、
前記金属部材の
表面が、前記金属部材と共に機器を構成する、対となる他の部材の接触面と接触する面であり、
メッキ素材、メッキ液成分、メッキ液濃度および電解メッキ電流値を、成膜する
第一のメッキ皮膜の硬度
と、前記対となる他の部材の接触面の硬度との間に硬度差を持たせる所定硬度となるように選定し、
前記金属部材の
表面に形成されている溶射皮膜またはメッキ皮膜を除去することなく、前記金属部材の表面に、前記選定したメッキ条件で筆メッキ法により第一のメッキ皮膜を成膜し、
前記成膜した第一のメッキ皮膜の表面を機械加工ないしは手仕上げによって成形することを特徴とする、金属部材の表面形状の調整方法。
【請求項2】
前記金属部材の表面が、
前記対となる他の部材との摺動面である、請求項1に記載の金属部材の表面形状の調整方法。
【請求項3】
金属部材の表面形状を調整する方法であって、
前記金属部材の表面が、前記金属部材と共に機器を構成する、対となる他の部材の接触面と接触する面であり、
メッキ素材、メッキ液成分、メッキ液濃度および電解メッキ電流値を、成膜する第一のメッキ皮膜の硬度と、前記対となる他の部材の接触面の硬度との間に硬度差を持たせる所定硬度となるように選定し、
前記金属部材の表面に、前記選定したメッキ条件で筆メッキ法により第一のメッキ皮膜を成膜し、
前記成膜した第一のメッキ皮膜の表面を機械加工ないしは手仕上げによって所定寸法形状となるように成形することを特徴とする、金属部材の表面形状の調整方法。
【請求項4】
前記
金属部材の表面が、
前記対となる他の部材とのメタルタッチ面である、請求項3に記載の金属部材の表面形状の調整方法。
【請求項5】
前記第一のメッキ皮膜は、膜厚0.5mm以下のNiメッキである、請求項
1~4のいずれか1項に記載の金属部材の表面形状の調整方法。
【請求項6】
前記第一のメッキ皮膜は、前記金属部材の表面よりも硬度が70HV以上高い、請求項
1~3および5のいずれか1項に記載の金属部材の表面形状の調整方法。
【請求項7】
前記第一のメッキ皮膜は、前記金属部材の表面よりも硬度が110HV以上低い、請求項1~
6のいずれか1項に記載の金属部材の表面形状の調整方法。
【請求項8】
前記金属部材の表面に形成された前記第一のメッキ皮膜の表面硬度と、前記
対となる他の部材の接触面の表面硬度との差が、250HV以上であ
り、前記対となる他の部材の接触面の表面硬度が150~200HVである、請求項1~3および5~7のいずれか1項に記載の金属部材の表面形状の調整方法。
【請求項9】
前記第一のメッキ皮膜は、膜厚が3mm以内である、請求項1~4および6~8のいずれか1項に記載の金属部材の表面形状の調整方法。
【請求項10】
前記金属部材の表面と、前記調整方法を実施した後
に形成された第一のメッキ皮膜の表面とが、連続的になめらかにつながっている、請求項1~9のいずれか1項に記載の金属部材の表面形状の調整方法。
【請求項11】
前記金属部材は、発電プラント機器の少なくとも一部を構成する金属部材である、請求項1~10のいずれか1項に記載の金属部材の表面形状の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、各種機械ないしは構造物で用いられる金属材料部材の表面形状の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、発電プラント機器において、機器を構成する部材同士の締結部、嵌合部、摺動部など接触面は多い。この部材接触面の傷やゆがみによる部材同士の密着性低下が機器性能低下につながる場合があるため、接触面の傷およびゆがみの補修が必要となる。
【0003】
接触面の一例として、蒸気加減弁の制御駆動装置の一部である油筒内面の摺動面がある。油筒内のピストンを作動油によって駆動させ、この駆動量によって蒸気加減弁を制御する。この時、ピストンの移動によって油筒内面の一部に摺動傷が生じる。この摺動傷によって、油筒内で作動油がリークすることで、ピストンの移動速度や出力などの性能が低下する。性能回復のためには、油筒内面の摺動傷補修が必要となる。
【0004】
他にも接触面の例として、蒸気配管継手のフランジ面がある。蒸気配管継手では、ガスケットを使用してシールする場合が多い。フランジ面に設けた溝に、フランジ素材より柔らかいガスケット合わせ、継手のフランジ面同士を締め付けることでガスケットを挟み込む。この時、接触したフランジ面に合わせてガスケットが変形し、密着することで配管継手からの蒸気漏れを防ぐ。しかしながら、フランジ接触面のゆがみや溝形状の誤作によってガスケットを挟む間隙が大きくなった場合、ガスケットに不均一な変形が生じ、フランジ面との密着性が低下することで蒸気リークの原因となる。また、フランジ接触面同士を密着させるメタルタッチによるシール部では、接触面のゆがみが蒸気リークの原因となる。これらを原因とする蒸気リークを防ぐため、機器組み立て時にフランジ接触面の寸法形状調整が必要となる。
【0005】
これらの部材接触面の傷補修および寸法形状調整は、発電プラントの定期検査期間内に実施する場合が多い。しかしながら、大型発電プラントでは稼働率向上が望まれ、プラントを停止させる定期検査期間の短縮が求められる。これに伴い、機器点検や補修、形状調整も短期間で実施が求められる。機器の大規模な分解や製造工場への搬送を伴う補修では、これらの工程によりリードタイムが増加する。そこで、大規模な分解および搬送を伴わず、発電プラント内でも簡便に実施可能な補修、調整技術へのニーズが高い。
【0006】
前述の油筒内面やフランジ面などの部材接触面の補修ないしは形状調整において、接触面の形状精度が機器性能に影響するため、加工精度に優れる機械加工を選択する場合が多い。機械加工による補修および形状調整では、切削加工によって傷やゆがみを除去し、対となる接触部材形状に合う寸法形状に仕上げる。
【0007】
また、発電プラントのタービンや発電機、熱交換機など大型機械構造物に生じた割れなどの表面欠陥の補修では、補修速度や補修後の強度特性から、溶接補修を選択する場合が多い。また、運用時に生じた摩耗や浸食による減肉部位に対しても溶接肉盛することで形状補修および寸法調整する場合が多い。
【0008】
また、例えば印刷ロールの傷補修やジャッキの腐食部分の補修など、微細な損傷部位ではメッキによって補修する場合もある。これらの部位で耐摩耗性や耐食性が要求される場合には、これらに優れるCrメッキやNiメッキを選定することが多い。
【0009】
ここで、先述した油筒内面の摺動傷の補修を例とし、補修時の技術課題を説明する。
機械加工によって摺動傷を補修する場合、油筒内面にボーリング加工およびホーニング加工を施し、摺動傷を除去する。この時、内面全面に対して均一に除去加工を施すことで、ゆがみが無く、円筒度の高い内面形状が得られることが特徴である。しかしながら、これらの加工には大型工作機械が必要となり、プラント内での実施は困難である。そのため、製品の分解および製造工場への搬送が必要となり、この工程によるリードタイム増加が課題となる。
【0010】
また、摺動面では接触する部材間に硬度差を持たせ耐摩耗性を向上させるため、メッキ皮膜や溶射皮膜が形成される場合が多く、例えば油筒内面にはCrメッキが施されている。この油筒内面に生じた摺動傷を機械加工によって補修した場合、内面全面のCrメッキ皮膜が除去されるため、再度メッキ処理が必要となる。広範囲に均一にメッキ皮膜を成膜する場合、槽メッキによってメッキ皮膜を形成する場合が多いが、こちらもプラント内で実施できないため、輸送によるリードタイムの増加につながる。
【0011】
このように機械加工による摺動傷補修では、補修後の形状精度に優れる一方で、製造工場への移動によるリードタイムの増加が課題となる。また、部分的な補修ができず、内面のメッキ皮膜が全て除去されるため、再メッキ処理によるリードタイム増加も課題となる。
【0012】
一方、プラント内で実施可能な溶接補修は大型のプラント機器の補修に幅広く適用されている。適切な施工条件を設定することで、補修部位は補修前と同等、ないしはこれを上回る強度特性が得られる。また、補修速度が速く、比較的安価に広い体積の補修が可能である。しかしながら、被補修物への入熱が避けられず、これによって熱ひずみが発生し、被補修物が変形する。油筒内面などの摺動面では、接触面の傷やゆがみが機器性能に影響するため、この変形は許容できない場合が多い。機械加工によってこの変形を補修する場合、大規模な加工が必要となり前述と同様に分解や輸送によるリードタイム増加につながる。
【0013】
また、溶接変形以外の問題点として、メッキ皮膜が溶接部に混入することで溶接補修部位での割れの発生や溶接金属の剥離(密着性低下)につながる。そのため、油筒内面の摺動傷を補修する場合、補修部位とその周辺を含む広い範囲でメッキ皮膜除去が必要となり、この工程によってリードタイムが増加する。この溶接補修部位を再メッキ処理することなく仕上げる場合、耐摩耗性を維持するため所定硬度にて仕上げることが求められる。しかし、硬度調整するためには熱処理が必要であり、この熱処理工程もリードタイム増加の要因となる。
【0014】
このように溶接による補修は、プラント内で実施可能であり補修後の強度特性や補修速度に利点がある一方で、入熱による熱ひずみ・変形や補修時にメッキ皮膜の除去が必要になるなどの課題がある。また、摺動面のように表面の寸法形状精度ないしは硬度に制約がある接触面では、熱処理や機械加工などの追加工程によるリードタイム増加の問題がある。
【0015】
次に、前述の蒸気配管継手フランジの接触面を例として寸法形状調整の技術課題を説明する。
機械加工によって接触面形状を調整する場合、接触面全面に対して除去加工を施すことで、ゆがみを無くし、対となる接触部材形状に合う寸法形状に仕上げる。機械加工によって平面度の高い接触面が得られるが、大規模な機械加工になるため、プラント内での実施は困難となる。そのため、機器分解および製造工場への輸送によるコストおよびリードタイムが増加する。
【0016】
このように、先述の機械加工による傷補修と同様に、形状寸法精度に優れる一方で、製造工場への移動によるリードタイムの増加が課題となる。
【0017】
一方、接触面に溶接肉盛することで接触面形状を補修する方法も考えられる。しかしながら、前述の溶接による傷補修と同様に、接触面に変形が生じ、ゆがみが大きくなることも考えられる。その場合、機械加工による補修が必要となり、リードタイムが増加する。
【0018】
また、接触面に対して肉盛した場合、肉盛金属の硬度を被補修材より柔らかくすることで、対となる接触面に合わせて肉盛金属が変形し、密着性が向上する。しかしながら肉盛金属の硬度を調整するためには熱処理を施す必要があり、この熱処理工程でもリードタイムが増加する。
このように、溶接変形の補修や硬度調整の熱処理が必要となり、リードタイム増加が問題となる。
【0019】
これに対し、微細な傷補修や寸法調整ではメッキ皮膜を成膜し、補修する場合もある。
例えば、メッキ処理の手法として、メッキ薬液をプール状に保持したメッキ液槽に被メッキ材を入れメッキ処理する槽メッキ法と、電極先端に具備した筆によってメッキ液を保持し、被メッキ材に押し当てることでメッキ処理する筆メッキ法がある。筆メッキ法は、部分的なメッキ処理が可能であり、傷補修に採用される場合が多い。また、簡便な装置で施工可能であり、移動が容易なことから製造工場内で施工する必要が無く、機器の設置場所での補修作業を実施できる。
【0020】
筆メッキであれば、部分的に皮膜形成して傷を補修することが可能である。被メッキ面に対し、脱脂・洗浄などの適切な前処理を施すことで密着性良好なメッキ皮膜が成膜可能である。また、施工時に被メッキ材への入熱がなく、被メッキ材に変形が生じないため、補修後の大規模な機械加工による仕上げ加工が必要ない。その一方で、溶接に比べ成膜速度が遅く、時間を要する。また、手作業で成膜する際はメッキ皮膜の品質管理が難しく、特にメッキ硬度の管理手法が確立されていない。このため、メッキによる補修は傷や摩耗などの微細な損傷部位に対し、形状復旧を目的に選択される場合が多い。
【0021】
このように筆メッキによる傷補修ないしは形状寸法調整は、プラント内で実施可能であり、部分的なメッキ皮膜形成が可能である。また、被メッキ材への入熱が無いため変形が生じない。しかしながら、補修後のメッキ硬度調整および管理手法が無いことが問題となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0022】
【文献】小岩仁子,“筆めっき/ブラシめっき”,表面技術,Vol.67,No.4,p.206(2016).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
以上より、金属部材、特に発電プラント機器等の金属部材では、部材接触面が機器性能に影響する場合が多く、補修や寸法形状調整が必要となる一方で、補修のリードタイム短縮が求められている。従来から実施されてきた機械加工による部材接触面の傷補修および寸法形状調整では、その形状寸法精度の点で優れるが、プラント内での傷補修および寸法形状調整が困難であり、機器の分解および製造工場への移動が必要となる。また、表面を所定硬度にて仕上げる場合、機械加工後に皮膜形成工程も必要となる。これらによるリードタイム増加が課題であった。
【0024】
一方、溶接による接触面の傷補修および寸法形状調整は、プラント内で実施可能である。しかしながら、溶接時の入熱により変形が生じた場合、機械加工による形状補修が必要となる。また、硬度調整のため熱処理が必要となり、これらによるリードタイム増加が課題となる。
【0025】
また、筆メッキ法による傷補修および寸法形状調整は、プラント内で実施可能であり、施工時の入熱が無いため被メッキ材に変形は生じない。しかしながら、メッキ皮膜の硬度調整手法が確立されておらず、表面を所定硬度に調整できないことが課題となる。
【0026】
これより、発電プラント機器の部材接触面の傷補修および寸法形状調整において、リードタイムの制約を満足しつつ、接触面を所定硬度に仕上げる傷補修および寸法形状調整方法は、いまだ確立されていない。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明はこれらの上記課題を克服した金属部材の表面形状の調整方法を提供するものである。
したがって、本発明の実施形態による金属部材の表面形状の調整方法は、
金属部材の表面の傷または形状を調整する方法であって、
メッキ素材、メッキ液成分、メッキ液濃度および電解メッキ電流値を、成膜するメッキ皮膜の硬度が被メッキ材である金属部材と異なる硬度となるように選定し、
前記金属部材の表面に、前記選定したメッキ条件(即ち、前記で選定したメッキ素材、メッキ液成分、メッキ液濃度および電解メッキ電流値)で、筆メッキ法により第一のメッキ皮膜を成膜し、
前記成膜した第一のメッキ皮膜の表面を機械加工ないしは手仕上げによって成形すること、を特徴とするものである。
【0028】
ここで、「金属部材の表面の傷または形状を調整する」とは、「金属部材の表面ないしある深さまでに存在する、連続的あるいは断続的に存在する傷ないし欠損を修復したり、金属部材の大きさや形状を変更すること」をいう。例えば、金属部材の使用によって生じた傷や欠損部分の補修や、金属部材の表面を所望の形状に変更することも包含される。なお、金属部材とは、既に使用されたものに限定されずに、未使用の金属部材も、本発明における金属部材の対象になる。
【0029】
本発明の実施形態では、金属部材の表面に、選定されたメッキ条件で第一のメッキ皮膜が成膜されることから、金属部材の表面特性が、この第一のメッキ皮膜によって変更ないし調整されることがある。よって、本発明の実施形態によれば、金属部材表面の特性(例えば、機械的特性、化学的特性等)も変更ないし調整されることになる。
【0030】
したがって、本発明の実施形態による金属部材の表面形状の調整方法は、単に、金属部材の表面形状のみが調整されるもののみに限定されずに、表面形状の調整に伴って金属部材の表面特性も調整されるものをも包含する。特に、表面硬度を上昇(硬化)または低下(軟化)、あるいは所望範囲内に制御する方法を包含する。
【発明の効果】
【0031】
本発明の実施形態による調整方法によれば、金属部材表面の必要な部分のみを、選択的に、形状調整ならびに硬度調整等を行うことができる。そして、実施の際に、金属部材を加熱する必要がなく、変形や歪み等が生じないために、精密、正確に表面形状、硬度等を調整することができ、かつ強度や耐久性等の低下等が抑制される。
【0032】
そして、大規模な施設や装置等を必要とせず、比較的簡便で容易に移動できる機器等で実施できることから、金属部材をそれが組み込まれている装置やプラント等から取り外すことを必須とせずに、容易に実施することができる。従って、リードタイムやコスト等を大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】第一の実施形態に係るメッキ施工部位の断面模式図。
【
図2】第一の実施形態に係る補修手順を示すフローチャート図。
【
図3】第一の実施形態に係る工程2でのメッキ施工を説明する模式図。
【
図4】第一の実施形態に係る工程2でのメッキ施工例の概要を示す図。
【
図5】第一の実施形態に係る工程3でのメッキ皮膜成形例を示す図。
【
図6】第一の実施形態に係るメッキ皮膜硬度を示す図。
【
図7】第一の実施形態に係るメッキ施工部位の断面模式図。
【
図8】第二の実施形態に係る補修手順を示すフローチャート図。
【
図9】第二の実施形態に係る工程2でのメッキ施工例の概要を示す図。
【
図10】第二の実施形態に係る工程3でのメッキ皮膜成形後の断面を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、実施の形態を図面に基づき説明する。
〔第一の実施形態〕
上記の通り、本発明の実施形態による金属部材の表面形状の調整方法は、
金属部材の表面の傷または形状を調整する方法であって、
メッキ素材、メッキ液成分、メッキ液濃度および電解メッキ電流値を、成膜するメッキ皮膜の硬度が被メッキ材である金属部材と異なる硬度となるように選定し、
前記金属部材の表面に、前記選定したメッキ条件で筆メッキ法により第一のメッキ皮膜を成膜し、
前記成膜した第一のメッキ皮膜の表面を機械加工ないしは手仕上げによって成形すること、を特徴とするものである。
このような本発明の一つの実施態様としては、例えば、使用によって傷や摩耗が生じたり、劣化した金属部材の修復に適用する態様を挙げることができる。
【0035】
図1に示すように、第一の実施形態では、製品製造時に予め溶射皮膜やメッキ皮膜(第二のメッキ皮膜)2が形成された金属部材1であって、使用によって、摺動面3に生じた傷4や摩耗による減肉部5が生じた金属部材1に対し、選定されたメッキ条件で筆メッキ法により第一のメッキ皮膜6を形成し、その後、機械加工によって成形することで、金属部材の表面の傷または形状を調整することができる。この第一の実施形態では、金属部材1の摺動面に形成されている溶射皮膜やメッキ皮膜2(第二のメッキ皮膜)を除去することなく、傷4や減肉部5のみを補修することで、形状を補修するとともに耐摩耗性を維持ないし向上させることができる。
【0036】
これを実現する第一の実施形態は、好ましくは、
図2に示すように、
・補修対象の金属部材と異なるメッキ硬度となるようにメッキ施工条件を選定する工程(工程1)と、
・傷や摩耗による減肉部位にメッキ皮膜を成膜し、埋める工程(工程2)と、
・機械加工ないしは研磨により、周囲の接触面と滑らかにつながるメッキ皮膜表面を成形する工程(工程3)
を採用することで、構成することができる。
【0037】
なお、本明細書において「摺動面」とは、相対的にこすれながら滑り合う部分を言う。なお、2または3以上の金属部材の間に存在する摺動面には、金属材料自体が直接こすれあう場合および他の媒体(典型的には、潤滑オイル)等が介在する場合等が包含される。
以下に、各工程について詳細に説明する。
【0038】
<メッキ施工条件を選定する工程(工程1)>
工程1では、補修対象の金属部材と異なるメッキ硬度を選定し、その硬度条件を満たすように、メッキ素材およびメッキ液の成分・濃度、電解メッキの電流値、これらの各メッキ条件の組み合わせを選定する工程である。本工程の主目的は、メッキ硬度を調整することで、補修後の金属部材接触面において、耐摩耗性など所定の表面性能を維持ないしは向上させることである。
【0039】
従来、金属部材の摺動面において、部材間に硬度差を持たせることで、耐摩耗性を向上させる事例も提案されている。例えばCrメッキやタングステンカーバイドの溶射により皮膜形成し、摺動面を金属部材より硬化させる場合がある。また、潤滑性をもたらす耐摩耗性メッキとして、軟らかいスズメッキを施す場合もある。このように金属部材摺動面を異なる硬度に仕上げることで、所定の表面性能を満足させることもある。
【0040】
しかしながら、摺動面に生じた傷や摩耗によって、部材表面の皮膜が消失する。この傷や摩耗部位のメッキ補修において、メッキ皮膜硬度を調整することで、表面性能を維持、向上させることが期待できる。
【0041】
メッキ皮膜の硬度は、メッキ素材だけでなく、皮膜中の不純物量や結晶粒径などに関係する。そのため、同一組成の皮膜であっても、メッキ液の成分・濃度および電解メッキ施工時の電流値などのメッキ施工条件によって、メッキ皮膜の硬度を制御することができる。なお、このメッキ皮膜(第一のメッキ皮膜)の成膜は、摺動面にメッキ皮膜(第二のメッキ皮膜)もしくは溶射皮膜が形成されている部材に限られるものではない。例えば、表面に皮膜形成されていない鋼材部材摺動面の傷補修において、鋼材より硬いNiメッキ皮膜(第一のメッキ皮膜)を成膜することで、耐摩耗性を向上させることができる。
【0042】
<メッキ皮膜を成膜し、傷や減肉部位を埋める工程(工程2)>
工程2は、工程1で決定したメッキ施工条件にて、金属部材接触面の傷ないしは摩耗による減肉部に対しメッキ皮膜(第一のメッキ皮膜)を成膜し、傷や摩耗部などを埋める工程である。メッキは、筆メッキ法による電解メッキにて施工する。ここで、「筆メッキ法」とは、「めっき液を筆やスポンジなどに吸収させて陽極とし、陰極にした品物の表面をこすってめっきする方法」(JIS H0400:1998 4055)を意味する。
【0043】
図3に施工の模式図を示す。
図3に示すように、めっき液7を筆8などに吸収させて陽極とし、陰極にした金属部材1の表面をこすってめっきすることによって、工程2を実施することができる。
図3において、9は電源装置であって、この電源装置9によって、筆8は陽極として、金属部材1は陰極として、機能するように構成されている。筆メッキ施工時、金属部材1に施した後の余剰のメッキ用薬液が生じた場合、それを回収し、その薬液を再度、循環ポンプ10等によって電極(筆8および金属部材1の表面)に供給することで循環させることができる。
【0044】
上記のような筆メッキ法を採用する本発明の実施形態においては、比較的大型の金属部材であっても、薬液を回収し、循環させる機構を設けることで、容易に施工可能であり、発電プラント内でも実施可能である。さらに、本手法では、筆8が接触した部位に選択的にメッキ皮膜(第一のメッキ皮膜)が成膜されるために、必要に応じて、部分的なメッキ処理がきわめて容易である。
【0045】
工程2で行われるメッキ皮膜(第一のメッキ皮膜)を成膜条件(例えば、メッキ素材、メッキ液成分、メッキ液濃度および電解メッキ電流値)は、工程2の開始から終了まで常に一定である必要はなく、工程2の途中で変化してもよい。また、メッキ皮膜は、単層である場合のみに限定されず、複層であってもよい。また、メッキ皮膜の内容は、部分的に異なっていてもよい。
【0046】
なお、メッキ皮膜(第一のメッキ皮膜)を成膜させる面積、形状、形態(傷、孔、欠損、摩耗部、深さ等)、その他の条件等に応じて、あるいは、上記工程1で選定された各メッキ条件等に応じて、筆8の大きさ、材質(例えば、毛、化学繊維、フエルト等)、形態(例えば、繊維状物、スポンジ状物等)を、必要に応じて適宜定めることができる。また、必要に応じて、金属部材にマスキングなどを施しておくことができる。
【0047】
具体例を
図4に示す。
図4は、鋼材製の平板11に設けた深さ0.4mm、直径8mm程度の窪み12に対してメッキ皮膜(第1のメッキ皮膜)を成膜した例を示しており、深さ0.4mmの窪み12に対し、膜厚0.5mm程度のメッキ皮膜を成膜することで、上記窪み12を埋めている。また、メッキ範囲は、窪みの周囲から5mm程度までの領域に収まっている。
【0048】
<メッキ皮膜表面を成形する工程(工程3)>
工程3では、工程2にて成膜したメッキ皮膜表面に機械加工ないしは研磨を施し、周囲の接触面と滑らかにつながるようにメッキ表面を成形することができる。メッキ領域周囲の接触面に機械加工を施さないことで、部材寸法を変化させることなく補修することが好ましい。また、接触面に溶射皮膜ないしはメッキ皮膜(第二のメッキ皮膜)が形成されていた場合、メッキ領域周囲のこれらの皮膜を残存させることで、耐摩耗性などの特性を維持したまま減肉部位を補修することができる。
【0049】
図5に示す実施例では、
図4に示したNiメッキ成膜部分を表面研磨にて仕上げることで滑らかな表面を形成している。本実施例でのNiメッキ皮膜はHV420程度であり、Niメッキ皮膜の硬度がHV400以上ある場合、切削加工によって割れが発生する懸念がある。このような場合、
図4に示すように表面研磨で仕上げることで、割れなく仕上げ可能である。なお、仮に他のメッキ素材や施工条件の採用により、皮膜硬度が変化し、加工による割れの懸念が無い場合は、切削加工による仕上げも採用可能である。
以上が第一の実施形態である。
【0050】
<メッキ皮膜の評価>
ついで、第一の実施形態で成膜したNiメッキ皮膜を評価した。
図6は、Niメッキ皮膜の硬さ計測結果である。メッキ施工中にメッキ液濃度を変化させることで、メッキ皮膜硬度を調整し、HV320~420の皮膜硬度が得られた。鋼材の硬度はHV250程度であり、この部材に対して補修部位表面にHV70~170の硬度差を持たせ、表面を硬化させた。一般的に幅広く使用される構造用炭素鋼鋼材では200HV程度、鋳鋼材では150~200HV程度のため、このNiメッキによって、120~270HV程度の硬度差が得られる見込みがある。
【0051】
なお、上記の第一の実施形態は、Niメッキで施工した例であるが、本発明ではメッキ素材をNiに限るものではない。Niメッキより更に硬度を上げたい場合は、Ni-Wメッキ、Crメッキ、軟化させたい場合はCuメッキやZnメッキ、Snメッキを選定し、かつメッキ施工条件を選定することで幅広い硬度のメッキ皮膜を形成可能となる。例えばCuメッキではHV140程度、ZnメッキではHV40程度の硬度が得られることがある。したがって、鋼材製の金属部材に第一のメッキ皮膜を成膜することによって、鋼材自体の表面硬度(例えば、250HV程度)に対し、表面硬度(例えば、CuメッキのHV140程度~Znメッキの40HV程度)の第一のメッキ皮膜を成膜した場合には、HV110~210程度の硬度差が得られる見込みがある。
【0052】
本発明の実施形態によれば、単一の金属部材において、金属部材自体の表面硬度とその表面の第一のメッキ皮膜の表面硬度との間で、硬度差を制御できる。
さらに、本発明の実施形態によれば、ある金属部材の表面硬度と他の部材の表面硬度との間で、硬度差の制御を行うことができる。例えば、ある金属部材が摺動部材であるときは、その摺動面と、対になる他の摺動部材の摺動面との両摺動面同士の間で、硬度差の制御を行うことができる。例えば、好ましくは、金属部材の、他の部材との摺動面に形成された第一のメッキ皮膜の表面硬度と、前記他の部材側に存在する摺動面の表面硬度との差を250HV以上とすることができる。
【0053】
先述のように摺動部材間に硬度差を持たせるため、摺動面の一方にNiメッキやNi-Wメッキ、Crメッキを施す例は多い。これらは対となる鉄鋼材料製の摺動部材との間にHV250~800程度の硬度差を持たせることで摺動性を向上させている。
【0054】
筆メッキによる表面硬度調整においても、摺動面に施したメッキ皮膜と、対となる摺動部材間に同程度の硬度差を持たせることで摺動性向上が期待できる。例えば、対となる摺動部材がHV150程度の鋳鋼材の場合、NiメッキによってHV270程度の硬度差を持たせることができる。また、被メッキ部材がHV200程度の鉄鋼材料、対となる摺動部材にHV650程度のNi-Wメッキが施されていた場合、被メッキ部材にHV140程度のCuメッキを施すことで、硬度差をHV510まで大きくし、更に摺動性を向上させることも期待できる。
【0055】
したがって、第一の実施形態において、第一のメッキ皮膜の硬度は、前記金属部材の表面の硬度よりも、70HV以上高いことが好ましく200HV以上高いことが特に好ましい。なお、本発明において「金属部材の表面硬度」とは、「メッキ層ないしは金属部材の仕上げ面における硬度、もしくはそれらの断面において表面から深さ0.5mm程度までの位置にて計測した硬度」をいう。また、本実施形態では硬度値をビッカース硬さ(HV)で示しているが、硬度計測方法をビッカース硬さ計測に限るものではない。ヌーブ硬さなど他の硬度計測手法によって計測し、ビッカース硬度へ換算した値でもよい。
【0056】
このように筆メッキ法によって成膜したメッキ皮膜によって接触する部材間の硬度差を確保することで、耐摩耗性に一定の効果が期待でき、摺動面の補修方法として優れた効果が期待できる。
【0057】
〔第二の実施形態〕
本発明の実施形態によれば、金属部材の表面の接触面にメッキ皮膜を成膜し、部材を所定の寸法形状に調整することができる。
【0058】
例えば、
図7に示すように、本発明の第二の実施形態によれば、フランジ1’を有する金属部材1の表面(他の部材10との接触面を包含する)に第一のメッキ皮膜6を成膜し、金属部材1を所定の寸法形状に調整することができる。この時、第一のメッキ皮膜6の硬度を調整し、表面(接触面)に硬度差を持たせることで、密着時には一方の接触面(具体的には、金属部材1の接触面である第一のメッキ皮膜6)を変形させ密着性を確保することが容易になる。
【0059】
これを実現する第二の実施形態は、
図8に示すように、
・補修対象の金属部材と異なるメッキ硬度となるようにメッキ施工条件を選定する工程(工程1)と、
・寸法調整が必要な接触面に対し、所定の仕上がり寸法以上となるように、筆メッキによってメッキ皮膜を成膜する工程(工程2)と、
・機械加工ないしは研磨により、メッキ皮膜表面を成形し、所定寸法形状に仕上げる工程(工程3)
を採用することで、構成することができる。
以下に、各工程に対して詳細に説明する。
【0060】
<メッキ施工条件を選定する工程(工程1)>
工程1では、接触面の寸法形状を調整する金属部材と異なるメッキ硬度を選定し、そのメッキ硬度の条件を満たすように、メッキ素材およびメッキ液の成分・濃度、電解メッキの電流値を決定する工程である。本工程の目的は、メッキ硬度を調整することで補修後の金属部材接触面の密着性を向上させることである。配管継手フランジ面のメタルタッチ部などの金属部材同士の密着面では、対となる接触面間に硬度差を持たせることで、接触時には低硬度の接触面が、対となる高硬度の接触面形状に合わせて変形することで、密着性向上が期待できる。
【0061】
<接触面にメッキ皮膜を成膜する工程(工程2)>
工程2は、工程1で決定したメッキ施工条件にて、寸法形状を調整する金属部材接触面に対し、仕上がり寸法以上となるまでメッキ皮膜を成膜する工程である。メッキは筆メッキ法による電解メッキにて施工する。実施例を
図9a(上面図)および
図9b(断面図)に示す。
図9は、低合金鋼製の平板13の一部分にNiメッキ皮膜6を形成した例である。平板13上に高さ0.4mmの凸部を形成するため、この仕上がり寸法以上となる0.5mm厚のNiメッキ皮膜を形成している。
【0062】
<メッキ皮膜を成形し、所定寸法形状に仕上げる工程(工程3)>
工程3では、工程2にて成膜したメッキ皮膜表面に機械加工ないしは研磨を施し、部材表面が所定寸法形状となるように仕上げる工程である。
図10a(上面図)、
図10b(断面図)、
図10c(
図10bの部分拡大図)に示す実施例では、
図9に示したNiメッキ皮膜に機械加工を施すことによって低合金鋼製の平板13上に高さ0.4mmの凸部を形成している。本実施例でのNiメッキ皮膜はHV320程度であったため切削加工を選択したが、Niメッキ皮膜の硬度がHV400程度ある場合、切削加工によって割れが発生する懸念がある。仮に他の施工条件やメッキ素材の採用により、硬度が変化し、加工による皮膜割れ発生が懸念される場合は、研磨による仕上げも採用可能である。
【0063】
本発明の第二の実施形態において、第一のメッキ皮膜の硬度は、前記金属部材の表面の硬度よりも、110HV以上低いことが好ましい。
以上が、第二の実施形態である。
【0064】
〔金属部材の表面形状の調整方法(まとめ)〕
一般的に、金属部材接触面では摩耗などの減肉による寸法変化や、ゆがみによって、接触面の密着性が低下するため、寸法形状の調整が必要となる。また、接触面間の硬度差も密着性に影響する。この課題に対し、本発明の実施形態によれば、金属部材接触面に筆メッキ法によって皮膜形成することで接触面の寸法および形状を調整するとともに、皮膜硬度も調整することで、接触面の密着性の維持ないしは向上が可能な表面形状ならびに寸法の調整を可能とした。
【0065】
なお、本事例では、Niメッキで施工した例であるが、本発明ではメッキ素材をNiに限るものではない。なお、メッキ皮膜は、一定の厚さ以上まで成膜すると皮膜内部に蓄積したひずみによって、割れが発生することがある。施工条件にもよるが、一般的には、Niメッキ皮膜では割れなく、容易に成膜可能な膜厚は0.5~1mm程度である。この膜厚は、メッキ素材によって異なることがあって、例えばCuメッキでは膜厚2~3mm程度であれば、割れなく成膜可能である。つまりメッキ条件を選定することによって、寸法形状差3mm以内の寸法調整を容易に実施できる。
【0066】
したがって、好ましい実施形態によれば、本調整方法を実施する前と、本調整方法を実施した後との金属部材の表面の形状差が3mm以内である、金属部材の表面形状の調整方法を提供できる。
【0067】
さらに、好ましい実施形態によれば、本調整方法を実施する前の金属部材の表面と、本調整方法を実施した後との金属部材の表面とが、連続的になめらかにつながっている金属部材の表面形状の調整方法を提供できる。
【0068】
本発明の実施形態は、数々の金属部材、例えば各種機械ないしは構造物で用いられる金属材料部材の表面形状の調整に適用することができる。好ましくは、例えば発電プラント機器の少なくとも一部を構成する金属部材、特に好ましくは、摺動面を有する金属部材や、メタルタッチ面を有する金属部材(例えば、流体の漏洩防止用の接合面を有する金属部材)等に適用することができる。
【0069】
以上、本発明のいくつかの実施形態による金属部材の表面形状の調整方法を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定するものではない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更あるいは付加等を行うことができる。これらの実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1:金属部材、2:メッキ皮膜(第二のメッキ皮膜)、3:摺動面、4:傷、5:減肉部位、6:メッキ皮膜(第一のメッキ皮膜)、7:めっき液、8:筆、9:電源装置、10:循環ポンプ、 11:鋼材製の平板、12:窪み、13:低合金鋼製の平板