(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】高所作業車
(51)【国際特許分類】
B66F 9/06 20060101AFI20240729BHJP
B66F 11/04 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
B66F9/06 K
B66F11/04
(21)【出願番号】P 2020200794
(22)【出願日】2020-12-03
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】桑原 嘉男
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 健
(72)【発明者】
【氏名】山崎 章浩
(72)【発明者】
【氏名】金子 淳一
(72)【発明者】
【氏名】杉田 良平
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-095548(JP,A)
【文献】特開2013-014418(JP,A)
【文献】特開2002-241099(JP,A)
【文献】米国特許第04179010(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00-11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な車体と、
前記車体上に少なくとも起伏動自在に設けられたブームと、
前記ブームの先端部に、前記ブームの起伏面に沿って上下に揺動自在に枢結された中間リンク部材と、
前記中間リンク部材の先端部に、前記ブームの起伏面に沿って上下に揺動自在に枢結されたジブと、
前記ジブの先端部に配設された作業台と、
前記ブームに対して前記中間リンク部材を揺動させる第1油圧シリンダと、
前記中間リンク部材に対して前記ジブを揺動させる第2油圧シリンダと、
前記第1油圧シリンダ及び第2油圧シリンダを伸縮作動させることによって、前記ジブが前記ブームと略平行となるまで折り畳まれた状態となる格納位置から前記ジブが最大限に展開した状態となる全展開位置までの範囲内で前記ジブを揺動作動させる油圧シリンダ作動制御装置と、を備え、
前記油圧シリンダ作動制御装置は、
前記格納位置から前記中間リンク部材が第1角度となる範囲内において、前記第1油圧シリンダによって前記中間リンク部材を揺動作動し、
前記中間リンク部材が前記第1角度になっている状態で、前記第2油圧シリンダが全縮小状態から全伸長状態となるまでの範囲内において前記第2油圧シリンダによって前記ジブを揺動作動し、
前記第2油圧シリンダが全伸長状態となっている状態で、前記第1角度から前記全展開位置までの範囲内において前記第1油圧シリンダによって前記中間リンク部材を揺動作動し、
前記第1角度は、前記第2油圧シリンダの全縮小状態から全伸長状態となるまでの範囲内において前記第2油圧シリンダが前記ジブに対して発生する駆動モーメントが、前記ジブにおいて前記第2油圧シリンダの作動によって回転する方向と逆方向に発生する負荷モーメントを上回ることとなる角度であることを特徴とする高所作業車。
【請求項2】
前記ブームの対地角度を検出するブーム対地角度検出装置と、
前記ジブの対地角度を検出するジブ対地角度検出装置と、
前記ブームに対するジブの角度を検出するジブ相対角度検出装置と、を備え、
前記油圧シリンダ作動制御装置は、前記ブーム対地角度検出装置、前記ジブ対地角度検出装置及び前記ジブ相対角度検出装置の検出値に基づいて前記負荷モーメントを算出し、算出した負荷モーメントに基づいて前記第1角度を算出することを特徴とする請求項1記載の高所作業車。
【請求項3】
走行可能な車体と、
前記車体上に少なくとも起伏動自在に設けられたブームと、
前記ブームの先端部に、前記ブームの起伏面に沿って上下に揺動自在に枢結された中間リンク部材と、
前記中間リンク部材の先端部に、前記ブームの起伏面に沿って上下に揺動自在に枢結されたジブと、
前記ジブの先端部に配設された作業台と、
前記ブームに対して前記中間リンク部材を揺動させる第1油圧シリンダと、
前記中間リンク部材に対して前記ジブを揺動させる第2油圧シリンダと、
前記第1油圧シリンダ及び第2油圧シリンダを伸縮作動させることによって、前記ジブが前記ブームと略平行となるまで折り畳まれた状態となる格納位置から前記ジブが最大限に展開した状態となる全展開位置までの範囲内で前記ジブを揺動作動させる油圧シリンダ作動制御装置と、を備え、
前記油圧シリンダ作動制御装置は、
前記格納位置から前記ジブが第2角度となる範囲内において、前記第2油圧シリンダによって前記ジブを揺動作動し、
前記ジブが前記第2角度になっている状態で、前記第1油圧シリンダが全縮小状態から全伸長状態となるまでの範囲内において前記第1油圧シリンダによって前記中間リンク部材を揺動作動し、
前記第1油圧シリンダが全伸長状態となっている状態で、前記第2角度から前記全展開位置までの範囲内において前記第2油圧シリンダによって前記ジブを揺動作動し、
前記第2角度は、前記第1油圧シリンダの全縮小状態から全伸長状態となるまでの範囲内において前記第1油圧シリンダが前記中間リンク部材に対して発生する駆動モーメントが、前記中間リンク部材において前記第1油圧シリンダの作動によって回転する方向と逆方向に発生する負荷モーメントを上回ることとなる角度であることを特徴とする高所作業車。
【請求項4】
前記ブームの対地角度を検出するブーム対地角度検出装置と、
前記ジブの対地角度を検出するジブ対地角度検出装置と、
前記ブームに対するジブの角度を検出するジブ相対角度検出装置と、を備え、
前記油圧シリンダ作動制御装置は、前記ブーム対地角度検出装置、前記ジブ対地角度検出装置及び前記ジブ相対角度検出装置の検出値に基づいて前記負荷モーメントを算出し、算出した負荷モーメントに基づいて前記第2角度を算出することを特徴とする請求項3記載の高所作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体上に起伏動自在に設けられたブームの先端にリンク部材を介してジブ機構を設けた高所作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業車の一例として、走行可能な車体と、車体上に起伏動自在に設けられたブームと、ブームの先端に揺動可能に設けられたジブと、ジブの先端部に配設された作業台とを備えた高所作業車がある。例えば、特許文献1に記載された高所作業車は、車体上に起伏動自在に設けられたブームの先端部と、先端に作業台が配設されたジブの基端部との間に中間リンク部材を連結した二関節式ジブ機構を備えている。また、この二関節式ジブ機構は、ブームに対して中間リンク部材を揺動させる第1油圧シリンダと、中間リンク部材に対してジブを揺動させる第2油圧シリンダとを備えている。このように、ブームとジブとの間に中間リンク部材が介在し、2つの油圧シリンダによってブームに対してジブを展開するジブ機構を二関節式ジブ機構という。二関節式ジブ機構は、ブームに対してジブを180度以上に展開するように構成できるため、作業範囲を広くすることができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、ベースとなる構造物(以下、「ベース構造物」と称する)と揺動させる構造物(以下、「被揺動構造物」と称する)とを枢結し、ベース構造物と被揺動構造物との間に跨設した油圧シリンダによって被揺動構造物を回転させる場合、回転中心と油圧シリンダの軸線との距離(より詳細には、被揺動構造物の回転中心を通る油圧シリンダの軸線の垂線上において回転中心と油圧シリンダの軸線との距離)は、油圧シリンダの伸縮に応じて変化する。一般的には、油圧シリンダの全縮小状態からシリンダロッドが伸長していくにつれて被揺動構造物が回転していくとともに、油圧シリンダの軸線と回転中心との距離が徐々に大きくなって行く。そして、シリンダロッドが或る伸長量を超えると油圧シリンダの軸線と回転中心との距離がシリンダロッドの伸長に応じて再び徐々に小さくなって行き、油圧シリンダが全伸長状態に至るまで相互の距離は縮まっていく。油圧シリンダによって被揺動構造物を回転させる力(モーメント)は、(油圧シリンダの推力)×(油圧シリンダの軸線と回転中心との距離)で求められるため、被揺動構造物に作用するモーメントは油圧シリンダの全縮小状態と全伸長状態の付近において小さくなる。また、このような傾向は被揺動構造物を回転させる角度が100度を超えるとより顕著となる。
【0005】
これにより、前述した二関節式ジブ機構において油圧シリンダの全縮小状態及び全伸長状態の近傍におけるモーメントの減少を補うには、油圧シリンダの推力を大きくするか、ジブ機構及び中間リンク部材の揺動範囲内における油圧シリンダの軸線と回転中心との距離を離す必要がある。しかしながら、油圧シリンダの推力を大きくする場合、油圧シリンダ本体が大型化して重量が増加する要因となる。また、油圧シリンダの軸線と回転中心との距離を大きくする場合は、回転中心の位置と油圧シリンダの軸線の位置とを遠ざけるために周辺の部材(例えばブームヘッドなど)が大型化し、また、油圧シリンダのストロークが長くなるため、やはり重量が増加する要因となる。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、二関節式ジブ機構に設けられた2つの油圧シリンダを効率よく作動制御することにより油圧シリンダを小型化するなどして二関節式ジブ機構の軽量化を図ることができる高所作業車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る高所作業車は、走行可能な車体(例えば、実施形態における車体2)と、前記車体上に少なくとも起伏動自在に設けられたブーム(例えば、実施形態におけるブーム10)と、前記ブームの先端部に、前記ブームの起伏面に沿って上下に揺動自在に枢結された中間リンク部材(例えば、実施形態における中間リンク部材20)と、前記中間リンク部材の先端部に、前記ブームの起伏面に沿って上下に揺動自在に枢結されたジブ(例えば、実施形態におけるジブ30)と、前記ジブの先端部に配設された作業台(例えば、実施形態における作業台50)と、前記ブームに対して前記中間リンク部材を揺動させる第1油圧シリンダ(例えば、実施形態における第1油圧シリンダ21)と、前記中間リンク部材に対して前記ジブを揺動させる第2油圧シリンダ(例えば、実施形態における第2油圧シリンダ26)と、前記第1油圧シリンダ及び第2油圧シリンダを伸縮作動させることによって、前記ジブが前記ブームと略平行となるまで折り畳まれた状態となる格納位置から前記ジブが最大限に展開した状態となる全展開位置までの範囲内で前記ジブを揺動作動させる油圧シリンダ作動制御装置(例えば、実施形態におけるコントロールユニット70)と、を備え、前記油圧シリンダ作動制御装置は、前記格納位置から前記中間リンク部材が第1角度(例えば、実施形態における切替角度θ1a)となる範囲内において、前記第1油圧シリンダによって前記中間リンク部材を揺動作動し、前記中間リンク部材が前記第1角度になっている状態で、前記第2油圧シリンダが全縮小状態から全伸長状態となるまでの範囲内において前記第2油圧シリンダによって前記ジブを揺動作動し、前記第2油圧シリンダが全伸長状態となっている状態で、前記第1角度から前記全展開位置までの範囲内において前記第1油圧シリンダによって前記中間リンク部材を揺動作動し、前記第1角度は、前記第2油圧シリンダの全縮小状態から全伸長状態となるまでの範囲内において前記第2油圧シリンダが前記ジブに対して発生する駆動モーメントが、前記ジブにおいて前記第2油圧シリンダの作動によって回転する方向と逆方向に発生する負荷モーメントを上回ることとなる角度である。
【0008】
なお、上記構成の高所作業車において、前記ブームの対地角度を検出するブーム対地角度検出装置(例えば、実施形態におけるブーム対地角度検出器62)と、前記ジブの対地角度を検出するジブ対地角度検出装置(例えば、実施形態におけるジブ対地角度検出器66)と、前記ブームに対するジブの角度を検出するジブ相対角度検出装置(例えば、実施形態におけるジブ相対角度検出器67)と、を備え、前記油圧シリンダ作動制御装置は、前記ブーム対地角度検出装置、前記ジブ対地角度検出装置及び前記ジブ相対角度検出装置の検出値に基づいて前記負荷モーメントを算出し、算出した負荷モーメントに基づいて前記第1角度を算出することが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る高所作業車は、走行可能な車体(例えば、実施形態における車体2)と、前記車体上に少なくとも起伏動自在に設けられたブーム(例えば、実施形態におけるブーム10)と、前記ブームの先端部に、前記ブームの起伏面に沿って上下に揺動自在に枢結された中間リンク部材(例えば、実施形態における中間リンク部材20)と、前記中間リンク部材の先端部に、前記ブームの起伏面に沿って上下に揺動自在に枢結されたジブ(例えば、実施形態におけるジブ30)と、前記ジブの先端部に配設された作業台(例えば、実施形態における作業台50)と、前記ブームに対して前記中間リンク部材を揺動させる第1油圧シリンダ(例えば、実施形態における第1油圧シリンダ21)と、前記中間リンク部材に対して前記ジブを揺動させる第2油圧シリンダ(例えば、実施形態における第2油圧シリンダ26)と、前記第1油圧シリンダ及び第2油圧シリンダを伸縮作動さ
せることによって、前記ジブが前記ブームと略平行となるまで折り畳まれた状態となる格納位置から前記ジブが最大限に展開した状態となる全展開位置までの範囲内で前記ジブを揺動作動させる油圧シリンダ作動制御装置(例えば、実施形態におけるコントロールユニット70)と、を備え、前記油圧シリンダ作動制御装置は、前記格納位置から前記ジブが第2角度(例えば、実施形態における切替角度θ2a)となる範囲内において、前記第2油圧シリンダによって前記ジブを揺動作動し、前記ジブが前記第2角度になっている状態で、前記第1油圧シリンダが全縮小状態から全伸長状態となるまでの範囲内において前記第1油圧シリンダによって前記中間リンク部材を揺動作動し、前記第1油圧シリンダが全伸長状態となっている状態で、前記第2角度から前記全展開位置までの範囲内において前記第2油圧シリンダによって前記ジブを揺動作動し、前記第2角度は、前記第1油圧シリンダの全縮小状態から全伸長状態となるまでの範囲内において前記第1油圧シリンダが前記中間リンク部材に対して発生する駆動モーメントが、前記中間リンク部材において前記第1油圧シリンダの作動によって回転する方向と逆方向に発生する負荷モーメントを上回ることとなる角度である。
【0010】
なお、上記構成の高所作業車において、前記ブームの対地角度を検出するブーム対地角度検出装置(例えば、実施形態におけるブーム対地角度検出器62)と、前記ジブの対地角度を検出するジブ対地角度検出装置(例えば、実施形態におけるジブ対地角度検出器66)と、前記ブームに対するジブの角度を検出するジブ相対角度検出装置(例えば、実施形態におけるジブ相対角度検出器67)と、を備え、前記油圧シリンダ作動制御装置は、前記ブーム対地角度検出装置、前記ジブ対地角度検出装置及び前記ジブ相対角度検出装置の検出値に基づいて前記負荷モーメントを算出し、算出した負荷モーメントに基づいて前記第2角度を算出することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る高所作業車によれば、車体上に起伏動自在に設けられたブームと、ブームの起伏面に沿って上下に揺動自在にブームの先端部に枢結された中間リンク部材と、ブームの起伏面に沿って上下に揺動自在に中間リンク部材の先端部に枢結されたジブと、を備え、第1油圧シリンダによってブームに対して中間リンク部材を揺動し、第2油圧シリンダによって中間リンク部材に対してジブを揺動させる。そして、油圧シリンダ作動制御装置は、格納位置から中間リンク部材が第1角度となる範囲内においては第1油圧シリンダによって中間リンク部材を揺動作動し、中間リンク部材が第1角度になっている状態で、第2油圧シリンダが全縮小状態から全伸長状態となるまでの範囲内においては第2油圧シリンダによってジブを揺動作動し、第2油圧シリンダが全伸長状態となっている状態で、第1角度から全展開位置までの範囲内において第1油圧シリンダによって中間リンク部材を揺動作動する。ここで、第1角度は、第2油圧シリンダの全縮小状態から全伸長状態となるまでの範囲内において第2油圧シリンダがジブに対して発生する駆動モーメントが、ジブにおいて第2油圧シリンダの作動によって回転する方向と逆方向に発生する負荷モーメントを上回ることとなる角度である。これにより、第2油圧シリンダによって発生されるモーメントが負荷モーメントを下回る範囲内では第1油圧シリンダによって中間リンク部材(延いてはジブ)を揺動し、第2油圧シリンダによって発生されるモーメントが負荷モーメントを上回る範囲内では第2油圧シリンダによってジブを揺動することが可能となるため、第1油圧シリンダ及び第2油圧シリンダを効率よく作動制御することができ、これにより各油圧シリンダを小型化するなどして二関節式ジブ機構の軽量化を図ることができる。
【0012】
また、上記の構成の高所作業車において、好ましくは、ブームの対地角度を検出するブーム対地角度検出装置と、ジブの対地角度を検出するジブ対地角度検出装置と、ブームに対するジブの角度を検出するジブ相対角度検出装置と、を備え、油圧シリンダ作動制御装置は、ブーム対地角度検出装置、ジブ対地角度検出装置及びジブ相対角度検出装置の検出
値に基づいて負荷モーメントを算出し、算出した負荷モーメントに基づいて第1角度を算出する。これにより、ブームの対地角度が変動したことにより負荷モーメントが変化したとしても、変化後の負荷モーメントに適応した第1角度を算出することが可能となる。
【0013】
また、本発明に係る高所作業車によれば、車体上に起伏動自在に設けられたブームと、ブームの起伏面に沿って上下に揺動自在にブームの先端部に枢結された中間リンク部材と、ブームの起伏面に沿って上下に揺動自在に中間リンク部材の先端部に枢結されたジブと、を備え、第1油圧シリンダによってブームに対して中間リンク部材を揺動し、第2油圧シリンダによって中間リンク部材に対してジブを揺動させる。そして、油圧シリンダ作動制御装置は、格納位置からジブが第2角度となる範囲内においては第2油圧シリンダによってジブを揺動作動し、ジブが第2角度になっている状態で、第1油圧シリンダが全縮小状態から全伸長状態となるまでの範囲内においては第1油圧シリンダによって中間リンク部材を揺動作動し、第1油圧シリンダが全伸長状態となっている状態で、第2角度から全展開位置までの範囲内においては第2油圧シリンダによってジブを揺動作動する。ここで、第2角度は、第1油圧シリンダの全縮小状態から全伸長状態となるまでの範囲内において第1油圧シリンダが中間リンク部材に対して発生する駆動モーメントが、中間リンク部材において第1油圧シリンダの作動によって回転する方向と逆方向に発生する負荷モーメントを上回ることとなる角度である。これにより、第1油圧シリンダによって発生されるモーメントが負荷モーメントを下回る範囲内では第2油圧シリンダによってジブを揺動し、第1油圧シリンダによって発生されるモーメントが負荷モーメントを上回る範囲内では第1油圧シリンダによって中間リンク部材(延いてはジブ)を揺動することが可能となるため、第1油圧シリンダ及び第2油圧シリンダを効率よく作動制御することができ、これにより各油圧シリンダを小型化するなどして二関節式ジブ機構の軽量化を図ることができる。
【0014】
また、上記の構成の高所作業車において、好ましくは、ブームの対地角度を検出するブーム対地角度検出装置と、ジブの対地角度を検出するジブ対地角度検出装置と、ブームに対するジブの角度を検出するジブ相対角度検出装置と、を備え、油圧シリンダ作動制御装置は、ブーム対地角度検出装置、ジブ対地角度検出装置及びジブ相対角度検出装置の検出値に基づいて負荷モーメントを算出し、算出した負荷モーメントに基づいて第2角度を算出する。これにより、ブームの対地角度が変動したことにより負荷モーメントが変化したとしても、変化後の負荷モーメントに適応した第2角度を算出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る高所作業車の外観を示す側面図である。
【
図4】上記高所作業車のブームが起立・伸長した状態を示す図である。
【
図5】上記高所作業車が備えるジブおよび中間リンク部材がブームに対してほぼ一直線に伸びた状態を示す図である。
【
図6】上記高所作業車が備える中間リンク部材を下方から見上げたときの斜視図である。
【
図7】上記高所作業車の作動制御に関する機能ブロック図である。
【
図8】上記高所作業車が備えるジブが格納状態になっていることを示す側面図である。
【
図9】上記高所作業車が備える第1油圧シリンダ及び第2油圧シリンダが発生するモーメントと負荷モーメントとの関係を示す図である。
【
図10】上記高所作業車が備えるジブを格納状態から全伸長状態までの範囲内で揺動させる際の第1油圧シリンダ及び第2油圧シリンダの作動範囲を示す図である。
【
図11】上記高所作業車が備える第1油圧シリンダ及び第2油圧シリンダが発生するモーメントと負荷モーメントとの関係を示す図である。
【
図12】上記高所作業車が備えるジブを格納状態から全伸長状態までの範囲内で揺動させる際の第1油圧シリンダ及び第2油圧シリンダの作動範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。本実施形態に係る高所作業車1を
図1~
図3に示している。この高所作業車1は、前輪3a及び後輪3bを有して走行可能であり、前部に運転キャブ2aを有したトラック車両をベースに構成される。このトラック車両の車体2の上に図示しない旋回モータ(油圧モータ)により駆動されて水平旋回可能に構成された旋回台5が配設されている。また、車体2の前後左右の四カ所に下方に伸縮自在なアウトリガ6が設けられており、高所作業を行うときには、アウトリガ6を下方に張り出して車体2を持ち上げ支持できるようになっている。
【0017】
旋回台5には基端部が枢結されたブーム10が取り付けられており、このブーム10は起伏シリンダ7により起伏作動するようになっている。なお、本実施形態において、ブーム10を起伏作動させたときのブーム10の軌跡を含む平面を、ブーム10の起伏面と称することにする。ブーム10は、
図4に示すように、基端ブーム11、第1中間ブーム12、第2中間ブーム13、および先端ブーム14を入れ子式に組み合わせて、内蔵する伸縮シリンダ(図示せず)により伸縮作動可能に構成されている。先端ブーム14は先端部にブームヘッド15を有し、このブームヘッド15の先端部には、中間リンク部材20がブーム10の起伏面に沿って上下に揺動自在に連結される。さらに、中間リンク部材20の先端部には、ジブ30がブーム10の起伏面に沿って上下に揺動自在に連結される。
【0018】
中間リンク部材20は、
図5に示すように、左右の側部が先端ブーム14およびジブ30と連結される枠板状に形成される。中間リンク部材20の底面側には、
図6に示すように、第1油圧シリンダ21および第2油圧シリンダ26が、中間リンク部材20の左右方向に互いに並列で、中間リンク部材20の側方から見て互いに交差するように配設される。
【0019】
ブームヘッド15の上方先端部には、ブーム側リンク連結部16が形成されており、不図示の連結ピン等を用いて、ブーム側リンク連結部16の内側に中間リンク部材20の基端部が連結される。ブームヘッド15の下方先端部には、ブーム側第1シリンダ連結部17が形成されており、不図示の連結ピン等を用いて、第1油圧シリンダ21のシリンダチューブ22側の端部が回転自在に連結される。なお、詳細な図示を省略するが、ブーム側リンク連結部16の近傍に位置する中間リンク部材20の基端部には、第2油圧シリンダ26のピストンロッド28側の端部が回転自在に連結されるブーム側第2シリンダ連結部が形成される。
【0020】
ジブ30は基端部にジブベース31を有し、このジブベース31に中間リンク部材20等が連結される。ジブベース31の揺動中心側基端部には、ジブ側リンク連結部32が形成されており、不図示の連結ピン等を用いて、ジブ側リンク連結部32の外側に中間リンク部材20の先端部が連結される。ジブベース31におけるジブ側リンク連結部32の内側近傍には、ジブ側第1シリンダ連結部33が形成されており、第1油圧シリンダ21のピストンロッド23側の端部が回転自在に連結される。ジブベース31の揺動内周側基端部には、ジブ側第2シリンダ連結部34が形成されており、図示の連結ピン等を用いて、第2油圧シリンダ26のシリンダチューブ27側の端部が回転自在に連結される。
【0021】
第1油圧シリンダ21は、第1シリンダチューブ22と、第1ピストンロッド23とを有し、油圧力を利用して第1ピストンロッド23を第1シリンダチューブ22に対して出入させることにより、伸縮可能に構成される。第1ピストンロッド23の端部は、ジブベ
ース31のジブ側第1シリンダ連結部33に、ジブ30の揺動軸と同軸上で回転自在に連結される。一方、第1シリンダチューブ22の端部は、ブームヘッド15のブーム側第1シリンダ連結部17に、中間リンク部材20の揺動軸と平行な軸上で回転自在に連結される。これにより、第1油圧シリンダ21の伸縮によってブーム10に対して中間リンク部材20を揺動作動させることができる。
【0022】
第2油圧シリンダ26は、第2シリンダチューブ27と、第2ピストンロッド28とを有し、油圧力を利用して第2ピストンロッド28を第2シリンダチューブ27に対して出入させることにより、伸縮可能に構成される。第2ピストンロッド28の端部は、中間リンク部材20のブーム側第2シリンダ連結部(図示せず)に、中間リンク部材20の揺動軸と同軸上で回転自在に連結される。一方、第2シリンダチューブ27の端部は、ジブベース31のジブ側第2シリンダ連結部34に、ジブ30の揺動軸と平行な軸上で回転自在に連結される。これにより、第2油圧シリンダ26の伸縮によって中間リンク部材20に対してジブ30を揺動作動させることができる。
【0023】
図5に示すように、ジブ30の先端部には支持部材40がブーム10の起伏面に沿って上下に揺動自在に枢結される。この支持部材40は垂直ポスト部41を有し、レベリング装置42により支持部材40の揺動制御が行われ、ブーム10の起伏角度位置、ブーム10に対する中間リンク部材20の揺動角度位置、および中間リンク部材20に対するジブ30の揺動角度位置に拘らず、垂直ポスト部41が常に垂直に延びて位置するように支持部材40が揺動制御される。なお、レベリング装置42は、一端がジブ30の中間部に枢結されたレベリングシリンダ43と、レベリングシリンダ43の伸縮作動に応じて支持部材40(垂直ポスト部41)を上下に揺動させるリンク機構44とを有して構成される。リンク機構44は、両端がジブ30と支持部材40とに枢結されるとともに、中間部がレベリングシリンダ43の他端に枢結される。
【0024】
このように常時垂直に保持される垂直ポスト部41に水平旋回自在に(首振り自在に)作業台50が取り付けられており、垂直ポスト部41の内部に設けられた首振りモータ83(
図7参照)によって作業台50を首振り作動させることができる。また、作業台50は、上述したブーム10の起伏角度位置、中間リンク部材20の揺動角度位置、およびジブ30の揺動角度位置に拘らず、常に水平に保持される。さらに、作業台50には上部操作装置51が配設されている。また、旋回台5には下部操作装置8が配設されている。
【0025】
次に、
図7に示す機能ブロック図を参照して本実施形態の高所作業車の作動制御を行う各部の概要構成について説明する。この図に示すコントロールユニット70は、上部操作装置51又は下部操作装置8に設けられた各種操作レバーや操作スイッチの操作に基づいて、前述した起伏シリンダ7、第1油圧シリンダ21、第2油圧シリンダ26、旋回モータ81、伸縮シリンダ81及び首振りモータ83などの各種アクチュエータの作動を制御する。上述した各種アクチュエータは油圧で作動しており、油圧ユニット80内に、上述した各種アクチュエータに対応して電磁比例制御弁を配設し、コントロールユニット70によって各種油圧アクチュエータに対応する電磁比例制御弁のバルブ開度を制御することで、各油圧アクチュエータの作動を制御している。
【0026】
上述した油圧ユニット80には、油圧ポンプPよって作動油タンクT内の作動油が供給されており、油圧ポンプPは、車体2を走行させるエンジンEの駆動力によって作動する。より詳細には、エンジンEのトランスミッションにはPTO(パワーテイクオフ機構)が組み込まれており、運転キャブ2a内にあるPTO操作レバー18がオフからオンに操作されるとパワーテイクオフ機構PTOの機構部が作動し、エンジンEの駆動力が車体2の駆動輪から油圧ポンプPに伝達されるようになる。また、PTO操作レバー18がオンからオフに操作されると、エンジンEの駆動力は油圧ポンプPから車体2の駆動輪に伝達
されるようになる。
【0027】
コントロールユニット70には、ブーム10及びジブ30の姿勢や作業台50の荷重などを検出する検出装置60からの検出値も入力されている。検出装置60は、車体2に対する旋回台5の旋回角度位置を検出する旋回角度検出器61、ブーム10の対地角度を検出するブーム対地角度検出器62、ブーム10の伸長量を検出する伸長量検出器63、作業台50の首振り角度を検出する首振角度検出器64、作業台50の荷重を検出する荷重検出器65、ジブ30の対地角度を検出するジブ対地角度検出器66及びブーム10に対するジブ30の相対角度を検出するジブ相対角度検出器67を有して構成されている。
【0028】
コントロールユニット70は、上述したブーム対地角度検出器62、ジブ対地角度検出器66及びジブ相対角度検出器67によって検出された各検出値に基づいて、第1油圧シリンダ21がブーム側リンク連結部16(
図6参照)における連結ピンを軸として中間リンク部材20を回転させる際の負荷となる負荷モーメントを算出する。例えば、
図5に示す状態において第1油圧シリンダ21を伸長させると、中間リンク部材20が押し上げられて、ブーム側リンク連結部16の連結ピンを軸として中間リンク部材20が反時計回りに回転する。一方、中間リンク部材20の自重やジブ30、支持部材40及び作業台50などの重量により、第1油圧シリンダ21による押し上げに対して押し返そうとする力が働いて、ブーム側リンク連結部16の連結ピンを軸として時計回りのモーメントが発生し、これが負荷モーメントとなる。この負荷モーメントの大きさは、
図5に示すように中間リンク部材20及びジブ30が水平になっているときが最大となり、中間リンク部材20及びジブ30が水平状態から離れるにつれて小さくなっていく。
【0029】
さらに、コントロールユニット70は、算出した負荷モーメントに基づいて第1油圧シリンダ21及び第2油圧シリンダ26の作動範囲を切り替えているが、この切替制御について後に詳しく説明する。
【0030】
以上のような構成の高所作業車1において、移動時にはブーム10の伸長量を縮小させて車体2上に倒伏させ、ジブ30がブーム10に対して折り重なる状態にして格納する。このとき、第1油圧シリンダ21が縮小作動して、ブーム10とのなす角度が90度近傍となる位置まで中間リンク部材20が揺動するとともに、第2油圧シリンダ26が縮小作動して、中間リンク部材20とのなす角度が90度近傍となる位置までジブ30が揺動する。これにより、
図8に示すようにジブ30は、ブーム10とほぼ平行となるようにブーム10側に折り畳まれた状態となる。以下、この状態となるジブ30の位置を「格納位置」とも称する。
【0031】
次に
図9及び
図10を参照して、ブーム10の起伏角度が水平になっている状態で、ジブ30を上述した格納位置P
0から全展開位置P
3まで展開させる場合における第1油圧シリンダ21及び第2油圧シリンダ26の作動範囲について説明する。ここで、全展開位置P
3は、第1油圧シリンダ21及び第2油圧シリンダ26を各々全伸長状態まで伸長させたときのジブ30の位置とする。
図9は、ジブ30を格納位置からP
0から全展開位置P
3まで展開させたときの負荷モーメントN
Lの変化(
図9中、実線で示す)と、第1油圧シリンダ21が発生する駆動モーメントN
C1(
図9中、一点鎖線で示す)及び第2油圧シリンダ26が発生する駆動モーメントN
C2(
図9中、二点鎖線で示す)の変化とを示す図である。なお、
図9における駆動モーメントN
C1は、第1油圧シリンダ21の全縮小状態における駆動モーメントN
C1minから全伸長状態における駆動モーメントN
C1maxまでの変化を示している。また、駆動モーメントN
C2は、第2油圧シリンダ26の全縮小状態における駆動モーメントN
C2minから全伸長状態における駆動モーメントN
C2maxまでの変化を示している。
【0032】
図10は、ジブ30が格納位置P
0から全展開位置P
3まで展開する間の中間リンク部材20及びジブ30の変位と、第1油圧シリンダ21及び第2油圧シリンダ26の作動が切り替わる角度とを示す模式図である。なお、
図10においては、ブーム10の図示を輪郭のみとし、中間リンク部材20及びジブ30の図示を明確にするために第1油圧シリンダ21及び第2油圧シリンダ26の図示を省略している。
【0033】
図9(a)は、ジブ30が格納位置にあるときの、駆動モーメントN
C1及びN
C2の変化と負荷モーメントN
Lの変化との関係を示している。ここで、駆動モーメントN
C1及びN
C2のピーク値N
C1pk及びN
C2pkはいずれも負荷モーメントN
Lのピーク値N
Lpkを超えているが、各油圧シリンダが全縮小状態から全伸長状態になるまでの間に、各駆動モーメントが負荷モーメントN
Lのピーク値N
Lpkよりも小さくなる領域がある。ただし、負荷モーメントN
Lがピーク値N
Lpkとなるジブ展開位置と、駆動モーメントN
C1及びN
C2がピーク値N
C1pk及びN
C2pkとなるジブ展開位置とが一致したときは、各油圧シリンダが全縮小状態から全伸長状態になるまでの間に、各駆動モーメントが負荷モーメントN
Lよりも下回る領域は存在しない。
【0034】
格納位置にあるジブ30を回転させる場合、コントロールユニット70は、まず第2油圧シリンダ26を全縮小状態にしたまま、第1油圧シリンダ21のみを作動して中間リンク部材20を回転させる。また、コントロールユニット70は、
図7に示したブーム対地角度検出器62、ジブ対地角度検出器66及びジブ相対角度検出器67によって検出された各検出値に基づいて負荷モーメントN
Lを算出する。そして、算出した負荷モーメントN
Lに基づいて、負荷モーメントN
Lのピーク値N
Lpkに対して駆動モーメントN
C2のピーク値N
C2pkが一致することとなるジブ展開角度θ
J1になるまで第1油圧シリンダ21を作動させる(
図9(b)参照)。すなわち、コントロールユニット70は、
図10に示すように格納位置P
0における中間リンク部材20の角度に対して切替角度θ
1aとなるまで第1油圧シリンダ21を作動させ、ジブ30を第1中間位置P
1まで回転させる。
【0035】
なお、上述したように負荷モーメントNLのピーク値NLpkと駆動モーメントNC2のピーク値NC2pkとを必ずしも一致させる必要はなく、第2油圧シリンダ26が全縮小状態から全伸長状態になるまでの間に、駆動モーメントNC2が負荷モーメントNLよりも下回る領域が存在しないジブ展開角度になるまで、第1油圧シリンダ21を作動させればよい。
【0036】
次にコントロールユニット70は、第1中間位置P
1を超えてジブ30を展開させる場合は、中間リンク部材20の角度を切替角度θ
1aに維持したまま第2油圧シリンダ26を全縮小状態から全伸長状態まで作動させる。すなわち、
図10に示すように、第1中間位置P
1におけるジブ30の角度に対して切替角度θ
2となるまで第2油圧シリンダ26を作動させ、ジブ30の展開角度を第2中間位置P
2まで回転させる。このとき、
図9(b)に示すように、駆動モーメントN
C2は第2油圧シリンダ26の全縮小状態から全伸長状態に至るまで負荷モーメントN
Lを凌駕しているため、ジブ30の作動に支障を来すことはない。
【0037】
さらにコントロールユニット70は、第2中間位置P
2を超えてジブ30を展開させる場合は、第2油圧シリンダ26の全伸長状態を維持したまま第1油圧シリンダ21を全伸長状態まで作動させる。すなわち、
図10に示すように、中間リンク部材20の角度が切替角度θ
1aになっている状態から最大限展開した角度θ
1bになるまで第1油圧シリンダ21を作動させ、ジブ30を全展開位置P
3まで回転させる。この場合においても、
図9(c)に示すように、駆動モーメントN
C1は第1油圧シリンダ21が全伸長状態に至るまで負荷モーメントN
Lを凌駕しているため、ジブ30の作動に支障を来すことはない
。
【0038】
以上のように、コントロールユニット70は、格納位置P0から第1中間位置P1までの間は第1油圧シリンダ21によって中間リンク部材20(延いてはジブ30)を揺動させ、第1中間位置P1から第2中間位置P2までの間は第2油圧シリンダ26によってジブ30を揺動させ、第2中間位置P2から全展開位置P3までの間は再び第1油圧シリンダ21によって中間リンク部材20(延いてはジブ30)を揺動させる。このように、第1油圧シリンダ21及び第2油圧シリンダ26が全縮小状態から全伸長状態までに発生するモーメントのうち、ジブ等による負荷モーメントを下回る領域があったとしても、第1油圧シリンダ21と第2油圧シリンダ26とを切り替えて作動することによってジブ等を支障なく揺動作動させることができる。
【0039】
なお、上述した例ではブーム10の起伏角度が水平になっていたが、ブーム10の起伏角度が変動した場合は、
図9において実線で示した負荷モーメントの特性が横軸(ジブ展開角度)方向にシフトすることとなる。したがって、このような場合は格納位置P
0から第1中間位置P
1までの範囲を調整して、第2油圧シリンダが全縮小状態から全伸長状態になるまでの間に、駆動モーメントN
C2が負荷モーメントN
Lよりも下回る領域が存在しないジブ展開角度になるまで、第1油圧シリンダ21を作動させるとよい。
【0040】
上述した例では、格納位置P
0から第1中間位置P
1までの間は第1油圧シリンダ21を作動し、第1中間位置P
1から第2中間位置P
2までの間は第2油圧シリンダ26を作動し、第2中間位置P
2から全展開位置P
3までの間は再び第1油圧シリンダ21していたが、これとは異なる手順で第1油圧シリンダ21及び第2油圧シリンダ26を作動させる場合について、
図11及び
図12を参照して説明する。ここで、
図9及び
図10に示した内容と同様のものについては、同一の符号を付して詳しい説明を省略する。なお、
図12においても、ブーム10の図示を輪郭のみとし、第1油圧シリンダ21及び第2油圧シリンダ26の図示を省略している。
【0041】
図11(a)は、ジブ30が格納位置にあるときの、駆動モーメントN
C1及びN
C2の変化と負荷モーメントN
Lの変化との関係を示しており、
図9(a)と同じ状態である。この状態からジブ30を回転させる場合、コントロールユニット70は、まず第1油圧シリンダ21を全縮小状態にしたまま、第2油圧シリンダ26のみを作動してジブ30を回転させる。また、コントロールユニット70は、
図7に示したブーム対地角度検出器62、ジブ対地角度検出器66及びジブ相対角度検出器67によって検出された各検出値に基づいて負荷モーメントN
Lを算出する。そして、算出した負荷モーメントN
Lに基づいて、負荷モーメントN
Lのピーク値N
Lpkに対して駆動モーメントN
C1のピーク値N
C1pkが一致することとなるジブ展開角度θ
J1’になるまで第2油圧シリンダ26を作動させる(
図11(b)参照)。すなわち、コントロールユニット70は、
図12に示すように格納位置P
0におけるジブ30の角度に対して切替角度θ
2aとなるまで第2油圧シリンダ26を作動させ、ジブ30を第1中間位置P
1’まで回転させる。
【0042】
なお、上述したように負荷モーメントNLのピーク値NLpkと駆動モーメントNC1のピーク値NC1pkとを必ずしも一致させる必要はなく、第1油圧シリンダ21が全縮小状態から全伸長状態になるまでの間に、駆動モーメントNC1が負荷モーメントNLよりも下回る領域が存在しないジブ展開角度になるまで、第2油圧シリンダ26を作動させればよい。
【0043】
次にコントロールユニット70は、第1中間位置P
1’を超えてジブ30を展開させる場合は、ジブ30の角度を切替角度θ
2aに維持したまま第1油圧シリンダ21を全縮小状態から全伸長状態まで作動させる。すなわち、
図12に示すように、第1中間位置P
1
’における中間リンク部材20の角度に対して切替角度θ
1となるまで第1油圧シリンダ21を作動させ、ジブ30の展開角度を第2中間位置P
2’まで回転させる。このとき、
図11(b)に示すように、駆動モーメントN
C1は第1油圧シリンダ21の全縮小状態から全伸長状態に至るまで負荷モーメントN
Lを凌駕しているため、ジブ30の作動に支障を来すことはない。
【0044】
さらにコントロールユニット70は、第2中間位置P
2’を超えてジブ30を展開させる場合は、第1油圧シリンダ21の全伸長状態を維持したまま第2油圧シリンダ26を全伸長状態まで作動させる。すなわち、
図12に示すように、ジブ30の角度が切替角度θ
2aになっている状態から最大限展開した角度θ
2bになるまで第2油圧シリンダ26を作動させ、ジブ30を全展開位置P
3まで回転させる。この場合においても、
図11(c)に示すように、駆動モーメントN
C2は第2油圧シリンダ26が全伸長状態に至るまで負荷モーメントN
Lを凌駕しているため、ジブ30の作動に支障を来すことはない。
【0045】
以上の例では、コントロールユニット70は、格納位置P0から第1中間位置P1’までの間は第2油圧シリンダ26によってジブ30を揺動させ、第1中間位置P1’から第2中間位置P2’までの間は第1油圧シリンダ21によって中間リンク部材20(延いてはジブ30)を揺動させ、第2中間位置P2’から全展開位置P3までの間は再び第2油圧シリンダ26によってジブ30を揺動させる。このように、第2油圧シリンダ26及び第1油圧シリンダ21が全縮小状態から全伸長状態までに発生するモーメントのうち、ジブ等による負荷モーメントを下回る領域があったとしても、第2油圧シリンダ26と第1油圧シリンダ21とを切り替えて作動することによってジブ等を支障なく揺動作動させることができる。
【0046】
なお、ブーム10の起伏角度が変動したことによって負荷モーメントの特性がシフトした場合は、格納位置P0から第1中間位置P1’までの範囲を調整して、第1油圧シリンダが全縮小状態から全伸長状態になるまでの間に、駆動モーメントNC1が負荷モーメントNLよりも下回る領域が存在しないジブ展開角度になるまで、第2油圧シリンダ26を作動させるとよい。
【0047】
また、上述した実施形態では、高所作業車としてトラック式の高所作業車1を例に説明したが、これに限られるものではなく、例えば、ホイール式の高所作業車やクローラ式の高所作業車であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 高所作業車
2 車体
10 ブーム
15 ブームヘッド
16 ブーム側リンク連結部
20 中間リンク部材
21 第1油圧シリンダ
26 第2油圧シリンダ
30 ジブ
31 ジブベース
32 ジブ側リンク連結部
50 作業台
60 検出装置
62 ブーム対地角度検出器
66 ジブ対地角度検出器
67 ジブ相対角度検出器
70 コントロールユニット