(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】制御装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20240729BHJP
【FI】
G05D1/43
(21)【出願番号】P 2020211854
(22)【出願日】2020-12-21
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 彩代
(72)【発明者】
【氏名】浅利 幸生
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-219799(JP,A)
【文献】国際公開第2012/164691(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/013337(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/016925(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両と接続可能な接続部と、
ゴール位置までの走行経路が、当該走行経路上での各位置と当該位置を通過する際の車両の姿勢とを規定する複数のパスで表された走行パスに基づいて、前記接続部に接続された前記車両を前記パスの配列順に走行させ、前記パス間の走行中又は走行先の前記パスに到達した際の前記車両の位置及び姿勢と、当該パスに規定された位置及び姿勢との偏差が閾値を超える場合、前記接続部に接続された前記車両の現在位置と走行先の前記パスとを結ぶ線分上に第1の補正点を設定し、当該第1の補正点に向けて前記接続部に接続された前記車両を走行させる制御部と、を備え
、
前記制御部は、前記接続部に接続された前記車両の現在位置が、走行先の前記パスに規定された位置と略同等となった場合、当該パスに到達したと判定し、
走行先の前記パスに到達したと判定した場合で、且つ前記車両の姿勢と走行先の前記パスの姿勢との偏差が閾値を超える場合、当該姿勢を略同等とするための前記第1の補正点を設定し、設定した前記第1の補正点に基づいて前記接続部に接続された前記車両を制御する、
制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記接続部を介して前記車両の周辺環境の状態を取得し、前記接続部に接続された前記車両の走行経路上に障害物を検出した場合、前記接続部に接続された前記車両の現在位置と走行先の前記パスとを結ぶ線分から外れた位置に第2の補正点を設定し、当該第2の補正点に向けて前記接続部に接続された前記車両を走行させる、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記接続部に接続された前記車両を前記第2の補正点に向けて走行させた後、前記障害物が検出されなくなったことを条件に、前記接続部に接続された前記車両の現在位置と走行先の前記パスとを結ぶ線分上に前記第1の補正点を設定し、当該第1の補正点に向けて前記接続部に接続された前記車両を走行させる、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、間隙を有して対向配置された2平面の間に走行先の前記パスが設定された場合、当該パスから伸ばした前記2平面と平行な線分に対する、前記接続部に接続された前記車両の現在位置及び姿勢のずれ量に基づいて、前記車両の現在位置と走行先の前記パスとを結ぶ線分上に前記第1の補正点を設定し、当該第1の補正点に向けて前記接続部に接続された前記車両を走行させる、請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記接続部に接続された前記車両の走行に先駆けて、前記第1の補正点までの移動により当該車両が前記2平面の何れかと干渉する可能性の有無を判定し、干渉する可能性が有ると判定した場合には、前記第1の補正点と前記車両の現在位置との間に新たな第1の補正点を設定する、請求項
4に記載の制御装置。
【請求項6】
車両と接続可能な接続部を備えたコンピュータを、
ゴール位置までの走行経路が、当該走行経路上での各位置と当該位置を通過する際の前記車両の姿勢とを規定する複数のパスで表された走行パスに基づいて、前記接続部に接続された前記車両を前記パスの配列順に走行させる第1制御手段と、
前記パス間の走行中又は走行先の前記パスに到達した際の前記車両の位置及び姿勢と、当該パスに規定された位置及び姿勢との偏差が閾値を超える場合、前記接続部に接続された前記車両の現在位置と走行先の前記パスとを結ぶ線分上に第1の補正点を設定し、当該第1の補正点に向けて前記接続部に接続された前記車両を走行させる第2制御手段と、して機能させ
、
前記第2制御手段は、前記接続部に接続された前記車両の現在位置が、走行先の前記パスに規定された位置と略同等となった場合、当該パスに到達したと判定し、
走行先の前記パスに到達したと判定した場合で、且つ前記車両の姿勢と走行先の前記パスの姿勢との偏差が閾値を超える場合、当該姿勢を略同等とするための前記第1の補正点を設定し、設定した前記第1の補正点に基づいて前記接続部に接続された前記車両を制御する、
ためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両が自律的に走行する自律走行車(AGV:Automated Guided Vehicle)に関する技術が提案されている。自律走行車では、カメラ等を用いて取得した周囲環境の状態やマップ等を基に自車両の位置や姿勢を認識し、指定された目的地までの走行経路を算出する。そして、自律走行車は、算出した走行経路を基に舵角度や回転量を制御することで自律走行を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、実際の自律走行車の動作では、タイヤと地面との摩擦の影響等により、ずれが生じるため、走行経路通りに走行することは困難である。このような場合、ずれを修正することができないまま走行を続けると、自律走行車の周辺に存在する建物等と干渉する可能性がある。そのため、自律走行車の走行制御については更なる改善が求められている。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、走行経路に対する追従性を向上させることが可能な制御装置及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の制御装置は、車両と接続可能な接続部と、制御部とを備える。制御部は、ゴール位置までの走行経路が、当該走行経路上での各位置と当該位置を通過する際の車両の姿勢とを規定する複数のパスで表された走行パスに基づいて、前記接続部に接続された前記車両を前記パスの配列順に走行させ、前記パス間の走行中又は走行先の前記パスに到達した際の前記車両の位置及び姿勢と、当該パスに規定された位置及び姿勢との偏差が閾値を超える場合、前記接続部に接続された前記車両の現在位置と走行先の前記パスとを結ぶ線分上に第1の補正点を設定し、当該第1の補正点に向けて前記接続部に接続された前記車両を走行させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る自律走行システムの構成の一例を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る走行パスの一例を模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る制御装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る自律走行車10の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施形態の制御装置が実行する走行制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施形態に係る補正点生成部の動作を説明するための図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る補正点生成部の動作を説明するための図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る目標パス管理部の動作を説明するための図である。
【
図10】
図10は、変形例2に係る自律走行システムの構成の一例を模式的に示す図である。
【
図11】
図11は、変形例2に係る自律走行車及び上位システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、変形例3に係る自律走行車の機能構成の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、変形例3に係る自律走行車の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、変形例3の制御装置が実行する走行制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、変形例3に係る制御装置の動作を説明するための図である。
【
図16】
図16は、変形例4に係る自律走行システムの構成の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態に係る制御装置及びプログラムを、図面を参照して説明する。
【0009】
図1は、実施形態に係る自律走行システムの構成の一例を模式的に示す図である。
図1に示すように、自律走行システム1は、自律走行車10と、上位システム20とを有する。ここで、自律走行車10と上位システム20とは、無線ネットワーク等を介して通信可能に接続される。なお、上位システム20に接続される自律走行車10の台数は1台に限らず、複数台であってもよい。
【0010】
自律走行車10は、所謂AGV(Automated Guided Vehicle)である。本実施形態の自律走行車10は、上位システム20から提供される走行環境の地図データ等に基づき、図示しないワークを所定の搬送先(目的地)へと自動搬送する。
【0011】
図1に示すように、自律走行車10は、通信部11と、記憶部12と、撮像部13と、認識部14と、駆動部15と、センサ部16と、駆動制御部17と、走行計画部18と、制御装置19とを備える。
【0012】
通信部11は、上位システム20と通信を行うための通信装置である。通信部11は、制御装置19の制御の下、上位システム20との間で各種データの授受を行う。
【0013】
例えば、通信部11は、自律走行車10が走行する走行環境の地図を示した地図データを上位システム20から受信する。地図データは、例えば、自律走行車10が走行可能なエリアと、走行不可能なエリアとを示す座標データである。走行不可能なエリアは、例えば、走行環境に存在する建屋の壁面、柱の位置、走行環境内に設置された什器の位置等を意味する。
【0014】
記憶部12は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。記憶部12は、制御装置19によって読み出されて実行される各種機能に対応するプログラムを記憶する。また、記憶部12は、自律走行車10の動作に係る各種のデータを記憶する。
【0015】
例えば、記憶部12は、通信部11が上位システム20から受信した地図データ等を記憶する。また、記憶部12は、走行計画部18が生成する後述する走行パス等を記憶する。
【0016】
なお、記憶部12は、HDDやSSD等以外にも、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体であってもよい。
【0017】
撮像部13は、自律走行車10の周辺環境を撮像する視差カメラ等の撮像装置である。例えば、撮像部13は、自律走行車10の進行方向の前方、後方及び側方を撮像できるように1台以上設置される。撮像部13は、撮像により生成される撮像データを認識部14に出力する。なお、撮像部13は、LiDAR(Light Detection And Ranging、Laser Imaging Detection And Ranging)等のイメージング装置であってもよい。
【0018】
認識部14は、撮像部13で取得された撮影データに基づいて、自律走行車10の周辺環境の状態を認識する。例えば、認識部14は、自律走行車10周辺の環境状態として走行環境の壁、柱、固定の棚などを認識する。
【0019】
具体的には、認識部14は、撮像部13の撮像データが2次元で表される場合には、撮像データから直線や曲線を検出して抽出する。また、認識部14は、撮像部13の撮像データが3次元で表される場合には、撮像データから面や曲線面を検出して抽出する。そして、撮像部13は、抽出した線群や面群をクラスタリング等することで、自律走行車10の周辺に存在する物体の配置位置や形状、大きさ等を認識する。
【0020】
駆動部15は、自律走行車10を移動(走行)させるための駆動装置である。駆動部15は、例えば各種の駆動モータや独立駆動のステアリングホイール等(何れも図示せず)を有し、駆動制御部17から指示された操舵角及び速度(回転速度)で自律走行車10を走行させる。なお、
図1では、自律走行車10が4つの可動輪WHを備えた例を示している。ここで、可動輪WHの各々は駆動源を有しておらず、駆動輪及び操舵輪として機能する駆動部(ステアリングホイール)の動作に応じて可動するようになっている。
【0021】
センサ部16は、駆動部15の操舵角および回転速度を計測する。また、センサ部16は、駆動部15の計測値を駆動制御部17へ出力する。
【0022】
駆動制御部17は、制御装置19の制御の下、駆動部15の操舵角及び回転速度を制御する。具体的には、駆動制御部17は、制御装置19が指示した位置及び姿勢へ自律走行車10を移動させるための駆動部15の操舵角及び回転速度を導出する。また、駆動制御部17は、センサ部16により計測された駆動部15の現状値(操舵角、回転速度)を取得する。そして、駆動制御部17は、導出した操舵角及び回転速度と、センサ部16で計測された現状値とに基づいて、駆動部15を動作させるための制御指令値を生成し、当該制御指令値を駆動部15に出力する。
【0023】
走行計画部18は、制御装置19の制御の下、自律走行車10の走行経路を示した走行パスを生成する。具体的には、走行計画部18は、記憶部12に記憶された地図データを用いることで、スタート位置からゴール位置までの走行経路を導出する。走行経路は、上述した地図データとともに、例えば自律走行車10の寸法データを用いることで、自律走行車10の車体が、走行環境に存在する建屋の壁面や柱、什器等に干渉しない経路を示すものとなる。また、走行計画部18は、導出した走行経路に基づき、自律走行車10を通過させる各位置と、当該位置を通る際の自律走行車10の姿勢とを規定した走行パスを生成する。走行計画部18で生成された走行パスは、制御装置19の制御の下、記憶部12へ記憶(保存)される。なお、自律走行車10の姿勢とは、後述する地図データ上の座標系における自律走行車10の車体の角度を意味する。
【0024】
図2は、走行パスの一例を模式的に示す図である。
図2に示すように、走行パスは、スタート位置STからゴール位置GAまでを複数のパスPで表したものである。より具体的には、走行パスは、ゴール位置GAまでの走行経路が、当該走行経路上での各位置と当該位置を通過する際の自律走行車10の姿勢とを規定する複数のパスで表されたものとなる。
【0025】
ここで、スタート位置は、例えば自律走行車10の現在位置である。ゴール位置は、上位システム20から指示される形態としてもよいし、予め設定される形態としてもよい。パスPの各々には、座標等の位置と当該位置を通る際の自律走行車10の姿勢とが設定される。
図2では、パスPの各々に設定された自律走行車10の姿勢を、自律走行車10を模した矩形SCの角度(傾き)で表している。
【0026】
なお、パスPの配列間隔や個数は特に問わず、一定の間隔で配列されてもよいし、走行経路の形状や自律走行車10の速度等に応じた間隔で配列されてもよい。また、パスPは、変曲点等の動きの変化が大きい部位に配置することが好ましい。また、本実施形態の場合、走行経路の形状のうち直線で区分できる区間をパスPで区分することが好ましい。また、走行経路及び走行パスの導出及び生成方法は特に問わず、公知の技術を用いることができる。
【0027】
図1に戻り、制御装置19は、制御装置の一例である。制御装置19は、自律走行車10の各部と協働することで、自己の自律走行車10(以下、自車両ともいう)をゴール位置まで自律走行させる。具体的には、制御装置19は、走行パスに規定された各パスの位置及び姿勢に基づき、当該走行パスの沿った走行経路で自律走行車10をゴール位置まで自律走行させる。
【0028】
一方、上位システム20は、例えば、プロセッサ等の制御装置を備えたサーバ装置である。上位システム20は、自律走行車10の各々の走行状態を管理する。
【0029】
例えば、上位システム20は、図示しない記憶装置に地図データを保持しており、自律走行車10の走行環境に応じた地図データを自律走行車10の各々に提供(送信)する。また、上位システム20は、自律走行車10から送信される当該自律走行車10の現在位置に基づいてゴール位置を決定し、決定したゴール位置を自律走行車10に提供(送信)したりする。
【0030】
なお、上位システム20は、1台のサーバ装置によって構成されてもよいし、複数台のサーバ装置によって構成されるクラウドシステム等であってもよい。
【0031】
次に、
図3を参照して、制御装置19のハードウェア構成について説明する。
図3は、制御装置19のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0032】
図3に示すように、制御装置19は、プロセッサ191と、メモリ192と、入出力インタフェース193とを備える。
【0033】
プロセッサ191は、制御部の一例であり、例えばCPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって実現される。
【0034】
メモリ192は、プロセッサ191が実行する各種のプログラムや設定情報等を記憶する。メモリ192は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の主記憶装置、半導体メモリ素子やハードディスク等の補助記憶装置によって実現される。プロセッサ191は、メモリ192に記憶されたプログラムを実行し、自律走行車10の各部を制御することで自律走行を実現させる。なお、メモリ192と、記憶部12とは、同一の記憶装置であってもよい。
【0035】
入出力インタフェース193は、接続部の一例である。制御装置19は、入出力インタフェース193を介して、自律走行車10と接続される。
【0036】
具体的には、入出力インタフェース193は、記憶部12、通信部11、認識部14、駆動制御部17及び走行計画部18等を接続するためのインタフェースである。
【0037】
次に、
図4を参照して、制御装置19の機能構成について説明する。
図4は、制御装置19の機能構成の一例を示す図である。
【0038】
図4に示すように、制御装置19は、データ取得部1911と、位置推定部1912と、目標パス管理部1913と、障害物認識部1914と、補正点生成部1915とを機能部として備える。
【0039】
これら機能部の一部又は全ては、プロセッサ191が、メモリ192に記憶されたプログラムを実行することで実現されるソフトウェア構成であってもよい。また、これら機能部の一部又は全ては、プロセッサ191等が備える専用回路によって実現されるハードウェア構成であってもよい。
【0040】
データ取得部1911は、制御装置19の外部から各種のデータを取得する。例えば、データ取得部1911は、上位システム20から送信された地図データを、通信部11を介して取得する。そして、データ取得部1911は、取得した地図データを記憶部12に記憶する。また、例えば、データ取得部1911は、走行計画部18で生成された走行パスを、走行計画部18から取得する。そして、データ取得部1911は、取得した走行パスを記憶部12に記憶する。
【0041】
位置推定部1912は、自車両の現在の位置及び姿勢を推定する。具体的には、位置推定部1912は、認識部14から周辺環境の認識結果を取得するとともに、駆動制御部17を介して取得したセンサ部16の計測結果から自車両の現状値を抽出する。また、位置推定部1912は、記憶部12に記憶された地図データを参照し、抽出した各データ値に対応する位置を地図データ上から特定することで、自車両の現在の位置及び姿勢を推定する。なお、自律走行車10の位置及び姿勢の推定方法は、公知の技術を用いてもよい。
【0042】
目標パス管理部1913は、第1制御手段の一例である。目標パス管理部1913は、走行パスに設定されたパスに基づき、自車両の移動先となるパス(以下、目標パスともいう)を管理する。具体的には、目標パス管理部1913は、位置推定部1912で推定された自車両の位置及び姿勢に基づき、記憶部12の走行パスに含まれた複数のパスの中から、移動先となる目標パスを設定する。設定された目標パスは、駆動制御部17に出力される。
【0043】
また、目標パス管理部1913は、自車両が目標パスに到達したか否かを判定し、到達したと判定した場合には、次のパスに目標パスを切り替えて設定する。
【0044】
具体的には、目標パス管理部1913は、目標パスに設定された位置及び姿勢と、位置推定部1912が推定した自車両の位置及び姿勢とを比較し、比較結果に基づいて目標パスに到達したか否かの判定を行う。
【0045】
例えば、比較の結果、位置又は姿勢の差分(偏差)が閾値以下となる場合、つまり目標パスに設定された位置及び姿勢の項目のうち、何れか一方の項目が自車両の位置及び姿勢とが略同等となる場合、目標パス管理部1913は、自車両が目標パスに到達したと判定する。ここで、目標パスに設定された位置及び姿勢の両項目が、自車両の位置及び姿勢とが略同等となった場合、目標パス管理部1913は、次のパスに目標パスを切り替える。
【0046】
また、比較の結果、位置及び姿勢の何れか一方の差分が閾値を超えるような場合、目標パス管理部1913は、走行パスの走行経路からずれが生じたと判定する。この場合、目標パス管理部1913は、閾値を超えた項目について、その差分を閾値以下とすることを指示した修正指示を補正点生成部1915に出力する。
【0047】
障害物認識部1914は、認識部14の認識結果に基づいて自車両の走行経路上に存在する障害物を認識する。ここで、障害物は、地図データ上に登録されていない物体であり、自律走行車10が走行パスに沿って走行することで衝突する可能性のある物体を意味する。例えば、障害物は、自律走行車10の前方や側方から走行してくる他の自律走行車10や作業員、一時的に設置された地図データ上には記載のない棚等である。
【0048】
障害物認識部1914は、認識部14の認識結果から物体検出に係るデータを抽出し、走行経路上に物体(障害物)が存在することを検出した場合には、当該障害物の存在位置や移動速度、寸法等を認識する。そして、障害物認識部1914は、障害物の認識結果を補正点生成部1915に出力する。なお、障害物の認識方法は特に問わず、物体認識等の公知の技術を用いることができる。
【0049】
補正点生成部1915は、第2制御手段の一例である。補正点生成部1915は、自車両が走行パス(目標パス)の走行経路からずれたような場合に、走行経路に復帰するための補正点を生成する。具体的には、補正点生成部1915は、目標パス管理部1913から修正指示が入力されると、位置推定部1912で推定された自車両の現在の位置及び姿勢と、目標パスに設定された位置及び姿勢とに基づき補正点を生成する。
【0050】
ここで、補正点生成部1915が生成する補正点には、走行パスに規定されたパスと同様に、移動先となる位置と当該位置を通過する際の姿勢とが設定される。なお、補正点の位置は、自装置の位置と目標パスとを繋ぐ線上であり、自装置の現在の位置から、1又は数回の制御サイクルで到達可能な範囲内に設定することが好ましい。例えば、補正点生成部1915は、駆動部15が一回の駆動信号で自律走行車10を移動させることが可能な距離の範囲内に、補正点を位置付ける。そして、補正点生成部1915は、生成した補正点を駆動制御部17へ出力する。
【0051】
また、補正点生成部1915は、障害物認識部1914で障害物が認識された場合には、当該障害物を回避するための補正点を生成する。具体的には、補正点生成部1915は、障害物認識部1914で障害物が認識されると、障害物を避けるために、自装置の位置と目標パスとを繋ぐ線分から逸れた位置に補正点を生成する。
【0052】
駆動制御部17では、目標パス管理部1913や補正点生成部1915から目標パスや補正点が入力されると、当該目標パスや補正点で指示された位置及び姿勢に、自律走行車10を移動させるための操舵角および回転速度を導出し、駆動部15を駆動させる。これにより、自律走行車10は、制御装置19の制御の下、ゴール位置への自律走行が実現される。
【0053】
以下、自律走行車10の動作例について説明する。
図5は、自律走行車10の動作の一例を示すフローチャートである。
【0054】
まず、データ取得部1911は、通信部11を介して上位システム20から走行環境の地図データを取得する(ステップS11)。データ取得部1911は、上位システム20から地図データを取得すると、取得した地図データを記憶部12に記憶させる(ステップS12)。
【0055】
続いて、位置推定部1912は、地図データ、認識部14の認識結果及びセンサ部16の計測結果に基づいて、自車両の現在の位置及び姿勢を推定する(ステップS13)。また、位置推定部1912は、ステップS13で推定した位置及び姿勢を、通信部11を介して上位システム20に通知する(ステップS14)。次いで、データ取得部1911は、上位システム20から返信されたゴール位置を、通信部11を介して取得すると、当該ゴール位置を記憶部12の地図データに設定する(ステップS15)。
【0056】
続いて、制御装置19は、地図データとともに、自車両の現在位置及びゴール位置を走行計画部18に入力することで、現在位置からゴール位置までの走行経路を示した走行パスを生成させる(ステップS16)。データ取得部1911は、ステップS16で生成された生成された走行パスを走行計画部18から取得すると、その走行パスを記憶部12に記憶させる(ステップS17)。
【0057】
続いて、制御装置19は、走行パスに基づいて、自車両をゴール位置まで走行させるための走行制御処理を実行する(ステップS18)。そして、自車両がゴール位置に到達すると、制御装置19は、自車両を停止させ、ゴール位置に到達したことを上位システム20に通知する(ステップS19)。
【0058】
次に、
図6~
図9を参照して、上述したステップS18の走行制御処理について説明する。
【0059】
図6は、本実施形態の制御装置19が実行する走行制御処理の一例を示すフローチャートである。なお、
図6の走行制御処理は、
図5で説明したステップS18の走行制御処理に対応するものである。
【0060】
まず、位置推定部1912は、地図データ、認識部14の認識結果及びセンサ部16の計測結果に基づいて、自車両の現在の位置及び姿勢を推定する(ステップS21)。以下では、位置を(x,y)で表し、姿勢をθで表す。また、位置及び姿勢を(x,y,θ)で表す。なお、前回の処理で自車両の位置及び姿勢を推定している場合、位置推定部1912は、その前回分の位置及び姿勢も用いて、現在の位置及び姿勢(x,y,θ)を推定してもよい。
【0061】
続いて、目標パス管理部1913は、現在の目標パスに設定された位置及び姿勢と、ステップS21で推定された自車両の位置及び姿勢(x,y,θ)とを比較し、自車両が目標パスに到達したか否かを判定する(ステップS22)。なお、目標パスが未設定の場合には、目標パス管理部1913は、走行パスに含まれたパスのうち、自車両の位置に最も近いパスを目標パスに設定した後、ステップS22の処理を実行する。
【0062】
上述したように、目標パスに到達したか否かの判定は、自車両の位置及び姿勢(x,y,θ)と、目標パスに設定された位置及び姿勢(x,y,θ)との差分の閾値判定により行われる。例えば、目標パスの位置及び姿勢(x,y,θ)から自車両の位置及び姿勢(x,y,θ)を差し引いた差分値(偏差)が(Δx,Δy,Δθ)であるとする。
【0063】
この場合、目標パス管理部1913は、目標パスまでの距離が閾値Th以下(つまり、|Δx|≦閾値Th、|Δy|≦閾値Th)で且つ、姿勢の偏差が閾値φ以下(つまり、|Δθ|≦閾値φ)となったとき、略同等と判定し、目標パスに到達したと判定する(ステップS22;Yes)、この場合、後述するようにステップS27に移行する。
【0064】
一方、位置及び姿勢の何れか一方又は両方が閾値を超えている場合(ステップS22;No)。障害物認識部1914は、認識部14の認識結果を取得して、自車両の走行経路上に障害物が存在するか否かを判定する(ステップS23)。
【0065】
ステップS23で障害物が存在しないと判定された場合(ステップS23;No)、補正点生成部1915は、目標パスに向かうための補正点(以下、第1の補正点)を生成する(ステップS24)。ここで、
図7を参照して、ステップS24の動作例について説明する。
【0066】
図7は、補正点生成部1915の動作を説明するための図である。
図7において、点P11は、前回の目標パスの位置を意味する。また、点P12は、現在の目標パスの位置(x12,y12)を意味し、姿勢θ12が設定されているものとする。また、点P13は、位置推定部1912で推定された自律走行車10の現在の位置(x13,y13)を意味し、姿勢θ13の状態にあるものとする。
【0067】
この場合、補正点生成部1915は、自律走行車10の位置及び姿勢(x13,y13,θ13)と目標パスの位置及び姿勢(x12,y12,θ12)との偏差(Δx,Δy,Δθ)を算出する。ここで、例えば偏差(Δx,Δy,Δθ)の何れもが閾値を超えていた場合、補正点生成部1915は、算出した偏差(Δx,Δy,Δθ)を基に、点P12と点P13とを結ぶ線分L1上に、第1の補正点P14を生成する。
【0068】
具体的には、補正点生成部1915は、自律走行車10の位置及び姿勢(x13,y13,θ13)と、各項目の生成パラメータαx、αy、αθ(但し、0≦αx,αy≦1、0≦αθ≦1)とに基づき、第1の補正点P14の位置及び姿勢(x13+αxΔx,y13+αyΔy,θ13+αθΔθ)を設定する。また、補正点生成部1915は、点P13から第1の補正点P14までの移動量αxΔx,αyΔy,αθΔθを設定する。
【0069】
ここで、第1の補正点P14は、上述したように、駆動部15の制御サイクルの1~数サイクルで到達可能な範囲内で位置付けられる。この場合、例えば、1~数回の制御サイクルで移動可能な範囲に第1の補正点P14が設定されるように、生成パラメータαx、αy、αθを設計してもよい。生成パラメータの値を小さくすると、その移動方向の自律走行車10の動作が遅くなり、慎重な走行制御を行うことができる。
【0070】
このように、補正点生成部1915は、走行パスに設定されたパス間を自車両が走行する際に、自車両の現在の位置と目標パスとを結ぶ線分上に第1の補正点を順次設定する。これにより、制御装置19では、第1の補正点に基づき自律走行車10を制御することで、目標パスまでの走行経路から逸脱することなく、自律走行車10を目標パスに向けて走行させることができる。
【0071】
なお、上述の例では、位置及び姿勢の両方の項目を補正する形態を説明したが、補正点生成部1915は、閾値を超えた項目について補正点の生成を行うものとする。例えば、位置が閾値を超えた場合には、αθ=0を設定することで、従前の姿勢を維持することができる。また、例えば、姿勢が閾値を超えた場合には、(αx、αy)=(0、0)を設定することで、従前の位置を維持することができる。
【0072】
図6に戻り、ステップS23で障害物が存在すると判定された場合(ステップS23;Yes)、補正点生成部1915は、障害物を回避するための補正点(以下、第2の補正点)を生成する(ステップS25)。
図8を参照して、ステップS25の動作について説明する。
【0073】
図8は、補正点生成部1915の動作を説明するための図である。
図8において、点P21は、前回の目標パスの位置を意味する。また、点P22は、現在の目標パスの位置(x22,y22)を意味し、姿勢θ22が設定されているものとする。また、点P23は、位置推定部1912で推定された自律走行車10の現在の位置(x23,y23)を意味し、姿勢θ23の状態にあるものとする。さらに、
図8では、点P23から見て、点P22(走行経路)の先に他の自律走行車10が障害物OBとして存在している。
【0074】
この場合、補正点生成部1915は、障害物認識部1914による障害物の認識結果(障害物の位置、走行速度、幅寸法等)を取得して、自車両の位置(点P23)と目標パス(点P22)とを結ぶ線分L2から離れた位置に第2の補正点P25を生成する。
【0075】
具体的には、補正点生成部1915は、障害物認識部1914の認識結果に基づき、障害物OBの幅を表すベクトル(2Δxw,2Δyw)と、自車両に対する障害物OBの相対角度Δθwとに基づき、障害物OBを回避するのに必要な回避移動量(Δxw,Δyw,Δθw)を算出する。ここで、障害物OBの幅方向の回避移動量は(Δxw,Δyw)、少なくとも障害物OBの幅(2Δxw,2Δyw)×1/2+自律走行車10の幅×1/2以上の値であればよい。なお、自律走行車10の幅は、設定情報としてメモリ192に予め記憶されているものとする。
【0076】
また、補正点生成部1915は、上述した第1の補正点P14の生成と同様に、点P22と点P23とを繋ぐ線分L2上に、第1の補正点P24(x23+αxΔx,y23+αyΔy,θ23+αθΔθ)を生成する。
【0077】
続いて、補正点生成部1915は、生成した第1の補正点P24に、回避移動量を反映した第2の補正点P25((x23+αxΔx)+βxΔxw,(y23+αyΔy)+βyΔyw,(θ23+αθΔθ)+βθΔθw)を設定する。
【0078】
ここで、生成パラメータβx、βy、βθは、生成パラメータαx、αy、αθと同様に回避移動の動作を刻むためのパラメータであり、0≦βx,βy≦1、0≦βθ≦1の範囲で設定される。βx、βyは、1に近いほど急な回避動作となり、0に近いほど滑らかな回避動作となる。例えば、補正点生成部1915は、自車両と障害物との間の距離や、障害物の走行速度に応じて生成パラメータβx、βy、βθの値を決定(変更)してもよい。なお、障害物との間の距離が小さいほど、又は障害物の走行速度が大きいほど、生成パラメータβx、βyの値を大きくすることが好ましい。
【0079】
また、障害物が他の自律走行車10の場合、幅方向の寸法が同じの自律走行車10同士で上記の回避動作を行う場合には、予め左右方向の何れか一方に回避するかを定めておくことが好ましい。これにより、上述した回避移動量を(Δxw/2,Δyw/2,Δθw)等と少なくすることができるため、回避移動動作を効率的に行うことができ、本来の走行経路からの逸脱も小さくすることができる。
【0080】
なお、補正点生成部1915は、障害物を回避させた後は、上述した第1の補正点の生成方法を用いることで、自車両を目標パス(P22)に向けて走行させる。
【0081】
図6に戻り、制御装置19は、ステップS24又はステップS25で生成された補正点を駆動制御部17に出力することで、自車両を補正点に向けて移動させる(ステップS26)。そして、制御装置19は、ステップS21に処理を戻す。
【0082】
駆動制御部17では、制御装置19から入力された補正点と、センサ部16で計測される駆動部15の現状値とに基づき、補正点に向かうための駆動部15の動作に係る目標値と、駆動量(舵角度、回転量)とを算出する。そして、駆動制御部17は、算出した目標値及び駆動量を基に、駆動部15への指令値を生成する。
【0083】
一方、ステップS22で目標パスに到達したと判定した場合(ステップS22;Yes)、目標パス管理部1913は、到達した目標パスがゴール位置か否かを判定する(ステップS27)。ここで、到達した目標パスがゴール位置と判定した場合には(ステップS27;Yes)、目標パス管理部1913は、
図4のステップS19に移行することで、自車両の停止と上位システム20への通知とを実行する。
【0084】
一方、到達した目標パスがゴール位置でない場合(ステップS27;No)、目標パス管理部1913は、目標パスを次のパスに切り替えた後(ステップS28)、ステップS21に処理を戻す。
【0085】
図9は、目標パス管理部1913の動作を説明するための図である。
図9において、点P31は、前回の目標パスの位置を意味する。また、点P32は、現在の目標パスの位置を意味する。また、点P33は、点P31の次のパスを意味する。また、点P34は、自律走行車10の現在位置を意味する。
【0086】
上述したように、目標パス管理部1913は、現在の位置(点P34)から目標パス(P32)までの距離が閾値Th以下で且つ、姿勢の相違が閾値φ以下の場合に、目標パス管理部1913は、点P32を次の目標パスに設定する。
【0087】
なお、自車両の位置及び姿勢のうち、位置のみが閾値の条件を満たした場合には、目標パス管理部1913は、目標パスに到達したと判定し(見なし)、次の目標パスに切り替える形態としてもよい。但し、この場合には、目標パス管理部1913は、補正点生成部1915と協働することで、自車両の姿勢が目標パスに設定された閾値φの条件を満たすまで、自車両を旋回動作させることが好ましい。
【0088】
例えば、
図9のように、点P31~点P33にかけて略90度旋回するような走行経路であった場合、補正点生成部1915は、自車両が点P32の位置に到達した後、自車両が旋回動作のみを行うように、第1の補正点の位置を自装置の現在位置(又は点P32の位置)とした後、直進動作に係る補正点の生成パラメータα
x、α
yを0に設定する。そして、制御装置19は、旋回動作のみを指示した第1の補正点を駆動制御部17に出力することで、点P32に設定された姿勢と略同等となるまで自車両を旋回動作させる。
【0089】
これにより、制御装置19は、走行パスの走行経路に沿って自律走行車10を移動させることできるとともに、次の目標パスへの移動を円滑に行うことができる。
【0090】
以上のように、本実施形態の制御装置19は、ゴール位置までの走行経路が、当該走行経路上での各位置と当該位置を通過する際の前記車両の姿勢とを規定する複数のパスで表された走行パスに基づいて、自律走行車10をパスの配列順に走行させる。また、制御装置19は、自律走行車10がパス間の走行中又は走行先のパス(目標パス)に到達した際の自律走行車10の位置及び姿勢と、当該パスに規定された位置及び姿勢との偏差が閾値を超える場合、自律走行車10の現在位置と走行先の前記パスとを結ぶ線分上に第1の補正点を設定し、当該第1の補正点に向けて自律走行車10を走行させる。
【0091】
これにより、制御装置19は、自律走行車10が走行パスを走行する間、自律走行車10の位置及び姿勢と目標パスの位置及び姿勢との間の偏差(ずれ量)を修正するように自律走行車10を制御することができる。したがって、制御装置19は、自律走行車10の走行精度を向上させることができるとともに、走行経路に対する追従性を向上させることができる。
【0092】
また、制御装置19は、自律走行車10の走行経路上に障害物を検出した場合、自律走行車10の現在位置と走行先のパス(目標パス)とを結ぶ線分から外れた位置に第2の補正点を設定し、当該第2の補正点に向けて前記車両を走行させる。また、制御装置19は、第2の補正点に向けて車両を走行させた後、障害物が検出されなくなったことを条件に、自律走行車10の現在位置と目標パスとを結ぶ線分上に第1の補正点を設定し、当該第1の補正点に向けて前記車両を走行させる。
【0093】
これにより、制御装置19は、障害物回避用の走行経路を再導出することなく、自律走行車10を障害物からの回避させることができるため、障害物からの回避動作を迅速に行うことができる。また、制御装置19は、障害物が認識されなくなった場合も、走行経路を再導出することなく、自律走行車10を目標パスに走行させることができるため、回避動作からの復帰を迅速に行うことができる。
【0094】
また、制御装置19は、自律走行車10の現在位置が、走行先のパス(目標パス)に規定された位置と略同等となった場合、当該パスに到達したと判定する。また、制御装置19は、走行先のパスに到達したと判定した場合で、且つ自律走行車10の姿勢と走行先のパスの姿勢との偏差が閾値を超える場合、当該姿勢を略同等とするための第1の補正点を設定し、設定した第1の補正点に基づいて自律走行車10を制御する。
【0095】
これにより、制御装置19は、自律走行車10の移動速度を落とすことなく、次の目標パスにスムーズに移行させることができるため、走行経路を走行する時間の短縮化を図ることができる。また、制御装置19は、例えば、自律走行車10の姿勢のみが目標パスの条件と異なるような場合に、自律走行車10の姿勢を修正した後、次の目標パスに向け合わせることができるため、走行経路に対する追従性を向上させることができる。
【0096】
以上説明した実施形態は、上述の各装置が有する構成又は機能の一部を変更することで、適宜に変形して実施することも可能である。そこで、以下では、上述した実施形態に係るいくつかの変形例を他の実施形態として説明する。なお、以下では、上述した実施形態と異なる点を主に説明することとし、既に説明した内容と共通する点については詳細な説明を省略する。また、以下で説明する変形例は、個別に実施されてもよいし、適宜組み合わせて実施されてもよい。
【0097】
(変形例1)
上述の実施形態では、認識部14及び走行計画部18を制御装置19と別体とする構成としたが、これに限らず、制御装置19が認識部14及び走行計画部18の何れか一方又は両方を備える構成としてもよい。この場合、制御装置19は、認識部14及び走行計画部18の何れか一方又は両方を、ソフトウェア又はハードウェア構成の機能部として備えることで、上述した実施形態と同様の効果を奏することができる。なお、制御装置19が認識部14を備える場合には、撮像部13は制御装置19に接続されるものとする。
【0098】
(変形例2)
上述の実施形態では、自律走行車10が走行計画部18を備える構成としたが、これに限らず、自律走行車10の外部に走行計画部18を設ける形態としてもよい。例えば、上位システム20が、走行計画部18の機能を備えてもよい。
【0099】
図10は、変形例2に係る自律走行システムの構成の一例を模式的に示す図である。
図10に示すように、本変形例2に係る自律走行システム1aは、自律走行車10aと、上位システム20aとを有する。
【0100】
図10に示すように、自律走行車10aは、
図1で説明した自律走行車10の構成から走行計画部18を取り除いたものとなっている。また、上位システム20aは、
図1で説明した上位システム20の構成に加えて、走行計画部18と同様の機能を有する走行計画部18aを備えている。
【0101】
上記構成の自律走行システム1aにおいて、自律走行車10aは、自律走行を開始するにあたり、位置推定部1912で推定された自車両の現在位置を上位システム20aに通知する。
【0102】
一方、上位システム20aの走行計画部18aは、自律走行車10から通知された現在位置と、当該現在位置に応じて決定したゴール位置とに基づき走行計画を行うことで、ゴール位置までの走行パスを生成する。また、上位システム20aは、生成した走行パスを自律走行車10に送信する。そして、自律走行車10aは、上位システム20aから送信された走行パスに基づき自律走行制御を行う。
【0103】
図11は、変形例2に係る自律走行車10a及び上位システム20aの動作の一例を示すフローチャートである。なお、ステップS31~S34は、
図5で説明したステップS11~S14と同様であるため説明を省略する。
【0104】
上位システム20aでは自律走行車10aから通知された現在位置を受信すると、走行計画部18aは、その現在位置と、地図データと、現在位置に応じて定めたゴール位置とに基づき、現在位置からゴール位置までの走行経路を示した走行パスを生成する(ステップS41)。次いで、上位システム20aは、ステップS41で生成された走行パスを自律走行車10aに送信する(ステップS42)。
【0105】
自律走行車10aでは、データ取得部1911が、上位システム20aから送信された走行パスを、通信部11を介して取得すると(ステップS35)、当該走行パスを記憶部12に記憶させる(ステップS36)。
【0106】
続いて、制御装置19は、走行パスに基づき、自車両をゴール位置まで走行させるための走行制御処理を実行する(ステップS37)。なお、ステップS37の走行制御処理は、
図6で説明した走行制御処理と同様である、そして、ゴール位置に自車両が到達すると、制御装置19は、自車両を停止させるとともに、ゴール位置に到達したことを上位システム20aに通知する(ステップS38)。
【0107】
以上のように、本変形例の構成では、自律走行車10aと上位システム20aとが協働して走行パスを生成する。このような構成とすることで、上述の実施形態と同様の効果を奏することができる。また、本変形例の構成では、自律走行車10に走行計画部18が不要となるため、自律走行車10を安価に提供することができる。また、上位システム20は、各自律走行車10の走行パスを生成して提供するため、自律走行車10の管理を効率的に行うことができる。
【0108】
(変形例3)
上述の実施形態では、自律走行車10のパスやゴール位置が、障害物等の存在しない開かれた場所に設定される例を説明したが、これに限るものではない。本変形例では、対向する2枚の壁面で構成される車庫等の位置に、パスやゴール位置を設定する場合の形態について説明する。
【0109】
図12は、変形例3に係る自律走行車の機能構成の一例を示す図である。
図12に示すように、本変形例に係る自律走行車10bの制御装置19bは、データ取得部1911bと、位置推定部1912bと、目標パス管理部1913bと、障害物認識部1914bと、補正点生成部1915bとを機能部として備える。
【0110】
データ取得部1911bは、上述したデータ取得部1911と同様の機能を備える。また、データ取得部1911bは、通信部11を介して上位システム20から送信された車庫への進入/退出指示を取得する。ここで、進入指示は、車庫の位置をゴール位置として指示したものであってもよいし、自律走行車10の現在位置から車庫の位置までの走行経路を示した走行パスの形態で送信されてもよい。
【0111】
位置推定部1912bは、上述した位置推定部1912と同様の機能を有する。また、位置推定部1912bは、走行パスに設定された走行経路と自車両の位置及び姿勢(角度)とのずれ量を推定する。
【0112】
目標パス管理部1913bは、上述した目標パス管理部1913と同様に、自車両の現在位置等に基づいて、自車両の移動先となる目標パスを管理する。また、目標パス管理部1913bは、自車両の進行方向に対する相対的な移動距離の設定値に基づいて、目標パスを設定する。また、目標パス管理部1913は、進行方向の壁面との離間距離が閾値未満となった場合、ゴール位置に到達したと判定する。
【0113】
障害物認識部1914bは、上述した障害物認識部1914と同様の機能を有する。また、障害物認識部1914bは、自車両の走行を開始する前に、認識部14の認識結果等に基づいて、自車両が現在位置から補正点まで移動した場合に、自車両が壁面に干渉(衝突)する可能性があるか否かを判定する。なお、障害物認識部1914bは、干渉する可能性があると判定した場合は、生成パラメータを小さくし、旧補正点と自車両の現在位置との間に新たな補正点を生成し直すよう、補正点生成部1915bに指示する。
【0114】
補正点生成部1915bは、上述した補正点生成部1915と同様に、自車両が走行パス(目標パス)の走行経路からずれた場合に、走行経路に復帰するための補正点を生成する。また、補正点生成部1915bは、障害物認識部1914bからの指示に応じて、生成パラメータを小さくすることで、旧補正点と自車両の現在位置との間に新しい補正点を生成する。
【0115】
なお、本変形例に係る自律走行車10bでは、自律走行車10が走行可能な間隙を有して対向配置された2壁面(2平面)の間に、パスやゴール位置が予め設定されているものとする。また、制御装置19bは、通信部11が上位システム20から受信した車庫への進入/退出指示に応じて、自車両の動作を制御する。また、認識部14は、撮像部13の撮像結果に基づき、自車両の側面にある壁面や、進行方向にある壁面を認識し、その認識結果を制御装置19bに出力する。
【0116】
次に、本変形例に係る自律走行車10bの動作例について説明する。
図13は、自律走行車10bの動作の一例を示すフローチャートである。なお、本処理の前提として、地図データは記憶部12に予め記憶されているものとする。また、車庫への進入指示は、走行パスの形態で上位システム20から送信されるものとする。
【0117】
まず、データ取得部1911bは、通信部11を介して上位システム20から車庫への進入指示を取得する(ステップS51)。
【0118】
続いて、制御装置19bは、ステップS51で取得された進入指示に基づき、自車両を車庫内(ゴール位置)まで走行させるための走行制御処理を実行する(ステップS52)。そして、ゴール位置に自車両が到達すると、制御装置19bは、自車両を停止させるとともに、ゴール位置に到達したことを上位システム20に通知する(ステップS53)。
【0119】
次に、
図14及び
図15を参照して、上述したステップS52の走行制御処理について説明する。
【0120】
図14は、本変形例の制御装置19bが実行する走行制御処理の一例を示すフローチャートである。なお、
図14の走行制御処理は、
図13で説明したステップS52の走行制御処理に対応するものである。
【0121】
また、
図15は、制御装置19bの動作を説明するための図である。ここで、
図15は、自律走行車10bのゴール位置となる車庫周辺の状態を模式的に示している。なお、
図15において、点P41は自律走行車10の現在の位置を意味する。また、
図15では、自律走行車10bの収納先となる車庫Gの両側の壁面を、壁面G1、G2で表しており、車庫G内にゴール位置となる点P42のパス(Lx,0,0)が設定されている。
【0122】
まず、位置推定部1912bは、走行パスに設定された走行経路と自車両の現在位置とを比較し、そのずれ量を推定する(ステップS61)。
【0123】
具体的には、認識部14は、撮像部13から撮影データを取得することで、車庫Gの両側の壁面G1、G2を認識し、その認識結果を制御装置19bへ出力する。位置推定部1912bは、認識部14の認識結果から壁面G1と壁面G2とに平行な、壁面G1と壁面G2との間の中心線LCを導出する。また、位置推定部1912bは、中心線LCと自車両の中心線MCとを比較することで、幅方向(図中Y方向)のずれ量dと、中心線LCと中心線MCとのずれ量(成す角)dθを算出する。そして、位置推定部1912bは、位置及び姿勢のずれ量d、dθを導出する。
【0124】
続いて、目標パス管理部1913bは、現在の目標パスと、自車両の現在の位置及び姿勢とを比較し、目標パスに自車両が到達したか否かを判定する(ステップS62)。
【0125】
なお、目標パスが未設定、つまり自車両の走行制御を開始する前の状態の場合には、目標パス管理部1913bは、走行パスに含まれたパスのうち、現在位置から最も近いパスを目標パスに設定した後、ステップS62の処理を実行する。具体的には、目標パス管理部1913bは、
図15に示した自律走行車10bの進行方向(X方向)において、点P41から最も近い点P42のパス(Lx,0,0)を目標パスに設定する。
【0126】
ステップS62で目標パスに到達していないと判定された場合(ステップS62;No)、補正点生成部1915bは、目標パスに向かうための補正点(第1の補正点)を、点P41と点P42とを結ぶ線分上に生成する(ステップS63)。
【0127】
具体的には、補正点生成部1915bは、現在の位置及び姿勢のずれ量(0,d,dθ)に基づき、現在位置から目標パスまでの偏差(Δx,Δy,Δθ)=(Lx,-d,-dθ)を算出する。ここで、偏差(Lx,-d,-dθ)は、位置及び姿勢のずれ量を減少させるものとなる。そして、補正点生成部1915bは、生成パラメータαx、αy、αθを用いて、補正点を設定する。
【0128】
次いで、障害物認識部1914bは、補正点P43までの移動により、自車両が壁面に干渉する可能性があるか否かを判定する(ステップS64)。干渉する可能性有と判定した場合(ステップS64;Yes)、障害物認識部1914bは、補正点の生成パラメータを小さくし、旧補正点と自車両の現在位置との間に新たな補正点を生成し直すよう、補正点生成部1915bに指示する(ステップS65)。
【0129】
ステップS65の指示に伴い、補正点生成部1915bは、ステップS63において、補正点の生成パラメータを小さくすることで、旧補正点と自車両の現在位置との間に新たな補正点を生成する。
【0130】
また、ステップS64で干渉する可能性無と判定された場合には(ステップS64;No)、制御装置19bは、ステップS63で生成された補正点を駆動制御部17に出力することで、自車両を補正点に向けて移動させる(ステップS66)。そして、制御装置19ば、ステップS61に処理を戻す。
【0131】
一方、ステップS62で目標パスに到達したと判定した場合には(ステップS62;Yes)、目標パス管理部1913は、到達した目標パスがゴール位置か否かを判定する(ステップS67)。
【0132】
ここで、目標パス管理部1913bは、認識部14の認識結果等に基づき、自車両と車庫Gの奥行き方向の壁面との離間距離が閾値以下となった場合に、目標パスに到達したと判定してもよい。また、目標パス管理部1913bは、補正点生成部1915bが、補正点を生成できない状態となった場合に、目標パスに到達したと判定してもよい。
【0133】
到達した目標パスがゴール位置でない場合には(ステップS67;No)、目標パス管理部1913は、目標パスを次のパスに切り替えた後(ステップS68)、ステップS61に処理を戻す。
【0134】
また、到達した目標パスがゴール位置と判定した場合には(ステップS67;Yes)、目標パス管理部1913は、
図14のステップS53に移行することで、自車両の停止と上位システム20への通知とを実行する。
【0135】
以上のように、本変形例の制御装置19bは、車庫やトンネル等の対向する2平面に囲まれた建造物内に自律走行車10を入れるような場合であっても、自律走行車10の走行を精度よく行うことができる。
【0136】
(変形例4)
第1の実施形態では、自律走行車10の各々が制御装置19を備えることで、自律走行車10が個別に自律走行を行う形態を説明した。本変形例では、上位システム20が制御装置19を備えることで、一又は複数の自律走行車10の自律走行を統括的に制御する構成について説明する。
【0137】
図16は、変形例4に係る自律走行システムの構成の一例を模式的に示す図である。
図15に示すように、自律走行システム1cは、自律走行車10cと、上位システム20cとを有する。
【0138】
自律走行車10cは、
図1で説明した自律走行車10の構成から走行計画部18を取り除いたものとなっている。また、自律走行車10cは、制御装置19に代えて、制御装置19cを備える。制御装置19cは、例えば
図4で説明した制御装置19の機能構成から、データ取得部1911、位置推定部1912及び障害物認識部1914以外の機能部を取り除いたものであり、スタンドアロン型の自律走行機能が無効化された状態となっている。
【0139】
一方、上位システム20cは、制御装置19dと、走行計画部18cとを備える。制御装置19dは、例えば
図4で説明した制御装置19の機能構成のうち、目標パス管理部1913及び補正点生成部1915等の機能部を備えたものである。また、走行計画部18cは、変形例2で説明した走行計画部18aと同様であり、自律走行車10cから通知される現在位置に基づいて走行パスを生成する。
【0140】
以下、本変形例に係る自律走行車10c及び上位システム20cの動作例について説明する。
【0141】
まず、自律走行車10cでは、位置推定部1912により自車両の現在位置(位置及び姿勢)が推定されると、制御装置19cは、その推定結果を上位システム20cに通知する。また、制御装置19cは、障害物認識部1914により障害物の存在が検出された場合、その検出結果を上位システム20cに通知する。なお、制御装置19cは、センサ部16の計測結果や、障害物認識部1914の認識結果等を上位システム20cに通知してもよい。
【0142】
一方、上位システム20cでは、自律走行車10cから現在位置が通知されると、走行計画部18cは、通知された現在位置に基づき、当該自律走行車10cの走行パスを生成する。また、上位システム20cの制御装置19dの、目標パス管理部1913及び補正点生成部1915は、走行計画部18cが生成した走行パス、自律走行車10cから通知される現在位置名等に基づき、自律走行車10の目標パスを切り替えたり、補正点を生成したりする。そして、上位システム20cは、目標パスや補正点を自律走行車10に送信することで、自律走行車10の自律走行を制御する。
【0143】
このような構成とすることで、上位システム20cは、各自律走行車10の自律走行を制御及び管理することができる。また、上位システム20cは、上述の実施形態で説明した制御装置19と同様の方法で自律走行車10を自律走行させるため、上述の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0144】
以上、本発明のいくつかの実施形態(変形例)を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0145】
1 自律走行システム
10 自律走行車
11 通信部
12 記憶部
13 撮像部
14 認識部
15 駆動部
16 センサ部
17 駆動制御部
18 走行計画部
19 制御装置
191 プロセッサ
192 メモリ
193 入出力インタフェース
1911 データ取得部
1912 位置推定部
1913 目標パス管理部
1914 障害物認識部
1915 補正点生成部
20 上位システム