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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】不織布構造
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/51 20060101AFI20240729BHJP
   A61F 13/475 20060101ALI20240729BHJP
   A61F 13/494 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
A61F13/51
A61F13/475
A61F13/494
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020219278
(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公開番号】P2022104210
(43)【公開日】2022-07-08
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人クオリオ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100164345
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】衣笠 由彦
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 吉彦
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-142498(JP,A)
【文献】特開2020-081476(JP,A)
【文献】特開2001-245927(JP,A)
【文献】特開2009-006065(JP,A)
【文献】特開2018-149029(JP,A)
【文献】特開2008-161303(JP,A)
【文献】米国特許第05810800(US,A)
【文献】特表平11-514551(JP,A)
【文献】特開2008-055110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布シートを用いた不織布構造であって、
前記不織布シートは、該不織布シートの表裏面にある外面繊維層と、前記表裏面の外面繊維層間に配在し、繊維が前記不織布シートの厚み方向に配向している複数の連結部とを備え、前記表裏面の一方の面に、前記連結部と前記表裏面の外面繊維層とからなる凹凸構造を有しており、
前記不織布シートが前記凹凸構造を有する面を内側にして折り返されてなる、前記不織布シート同士が接合された合掌積層部と前記不織布シート同士が非接合にされた折り返し端部とを有し、
前記折り返し端部の外形が凸曲面を含
前記不織布構造に外力を付加しない自然状態で、前記折り返し端部の内側に、該折り返し端部の断面に示される環状形状の全体において、対向する前記凹凸構造同士が離間した筒状空間を有し、
前記折り返し端部の断面に示される環状形状において、前記凹凸構造が凹部と凸部とを交互に配して、前記筒状空間の外壁として環状にされている、不織布構造。
【請求項2】
前記折り返し端部の外形が連続した凸曲面で構成される、請求項1記載の不織布構造。
【請求項3】
前記筒状空間は、前記折り返し端部の延出する方向に沿って連続している、請求項1又は2記載の不織布構造。
【請求項4】
前記不織布シートの目付が50g/m以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の不織布構造。
【請求項5】
前記不織布シートの目付が10g/m以上である、請求項1~のいずれか1項に記載の不織布構造。
【請求項6】
前記不織布シートがエアスルー不織布である、請求項1~のいずれか1項に記載の不織布構造。
【請求項7】
前記不織布シートにおける前記表裏面間の厚みが2mm以上である請求項1~のいずれか1項に記載の不織布構造。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の不織布構造を、着用者の股下周辺の肌面に当接させる立体ギャザー部に用いた吸収性物品。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載の不織布構造を、着用者の胴回りの肌面に当接させるウエストギャザー部に用いた吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は不織布構造に関する。
【背景技術】
【0002】
おむつや生理用ナプキンなどの吸収性物品には、肌に触れる部分に、不織布を折り返して丸みを持たせた部材が用いられることがある。また、該不織布を折り返した部材に糸状の弾性部材を配してギャザー部としたものがある。例えば、おむつにおいて、着用者の胴回りの肌面に当接させるウエストギャザー部が挙げられる。また、おむつやナプキンにおいて、着用者の股下周辺の肌面に当接させる立体ギャザー部等が挙げられる。
例えば、特許文献1には、吸収体の左右両側部に、左右一対の立体ギャザーを配したおむつが記載されている。この立体ギャザーは表面シートの裏面側に弾性部材を配して形成されている。
特許文献2には、表面シートの肌当接面側に一対の立体ギャザーを備えたおむつが記載されている。一対の立体ギャザーは、サイドシートを長手方向にそって折り返して弾性体を挟持した自由端を有する。
特許文献3には、使用面側の両側部に起立する立体ギャザーを備えた生理用ナプキンが記載されている。この立体ギャザーは、断面が中空のループ状のものと、該ループ状部分の幅方向外側にて起立する自由端状部分とから構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-83999号公報
【文献】特表2017-118962号公報
【文献】特開2012-205638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の不織布を折り返した部材は、弾性部材によるギャザーを備えるものであっても、折り返しの丸み部分が潰れやすく、その立体感を維持することが難しく、その点で改善する余地があった。また、潰れにより、折り返し内部での通気性や肌への良好なフィット性が低減しかねず、更なる改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、使用時の潰れやすさを軽減して立体形状が維持されやすい不織布構造に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、不織布シートを用いた不織布構造であって、前記不織布シートは、該不織布シートの表裏面にある外面繊維層と、前記表裏面の外面繊維層間に配在し、繊維が前記不織布シートの厚み方向に配向している複数の連結部とを備え、前記表裏面の一方の面に、前記連結部と前記表裏面の外面繊維層とからなる凹凸構造を有しており、前記不織布シートが前記凹凸構造を有する面を内側にして折り返されてなる、前記不織布シート同士が接合された合掌積層部と前記不織布シート同士が非接合にされた折り返し端部とを有し、前記折り返し端部の外形が凸曲面を含む、不織布構造を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の不織布構造は、折り返し端部がつぶれ難く立体形状が維持されやすい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る不織布構造の好ましい一実施形態を模式的に示す図面であり、(A)図は拡大斜視断面図であり、(B)図は(A)図におけるA部拡大断面図である。
図2】本発明に係る不織布構造を構成する不織布シートの好ましい一実施形態(形態例1)を模式的に示す斜視断面図である。
図3】本発明に係る不織布構造を構成する不織布シートの好ましい一実施形態(形態例2)を模式的に示す斜視断面図である。
図4】本発明に係る不織布構造を構成する不織布シートの好ましい一実施形態(形態例3)を模式的に示す斜視断面図である。
図5】本発明に係る不織布構造を構成する不織布シートの好ましい一実施形態(形態例4)を模式的に示す斜視断面図である。
図6】本発明の不織布構造を適用したおむつの具体例を模式的に示す斜視図である。
図7】本発明の不織布構造を適用したおむつの具体例を模式的に示す部分切欠き斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る不織布構造の好ましい実施形態について、図1(A)及び(B)を参照しながら以下に説明する。なお、(A)図において、不織布シート11の凸部4及び凹部5((B)図参照)の図示は省略した。
【0010】
図1(A)及び(B)に示すように、本実施形態の不織布構造10は、不織布シート11により構成される。
不織布シート11は、該不織布シート11の表裏面を構成する外面繊維層1、2と、該表裏面の外面繊維層1、2間に配在され、繊維が不織布シート11の厚み方向に配向している複数の連結部3とを備える。該表裏面の一方の面に、連結部3と表裏面の外面繊維層1、2とからなる凹凸構造12を有する。凹凸構造12は、不織布シート11のシート面の面方向において、凸部4と凹部5とが交互に配された構造である。
凸部4と凹部5との交互配置は、不織布シート11のシート面の面方向における少なくとも一方向にあることが好ましく、面方向における互いに交差する異なる複数の方向にあることがより好ましい。例えば、不織布シート11が長手方向と短手方向とを有する場合、長手方向及び短手方向の少なくとも一方向において凸部4と凹部5とが交互に配されていることが好ましく、長手方向及び短手方向の両方向において凸部4と凹部5とが交互に配されていることがより好ましい。
【0011】
不織布構造10は、不織布シート11が凹凸構造12を有する面を内側にして折り返されてなる。不織布構造10は、この折り返しにより、不織布シート11同士が接合された合掌積層部15と不織布シート11同士が非接合にされた折り返し端部13とを備える。なお、凹凸構造12が不織布シート11の両面にある場合、どちらの面を内側にしてもよい。
【0012】
不織布構造10は、折り返し端部13及び合掌積層部15が延出する方向W、折り返し端部13の折り返し方向J、折り返し端部13の厚み方向T、折り返し端部13の高さ方向Hを有する。前記の折り返し方向Jは、湾曲方向Jともいう。さらに、不織布構造10は、折り返し端部13の内側中心に向かう方向Sを有する。
【0013】
合掌積層部15は、折り返された不織布シート11のシート端部を重ね合わせて、融着又は接着等による接合がされて形成されている。これにより、不織布構造10は、折り返された状態で一体化されている。合掌積層部15は、高さ方向Hにおける長さを、適用する部材に応じて適宜決定することができる。
【0014】
折り返し端部13は、折り目を付けずに不織布シート11が曲げられ、非接合の状態にされている。「曲げられ」ているとは、例えば、折り返し端部の断面が丸くなるように曲げられていることが挙げられる。折り返し端部13は、その環状の断面を先端部131(合掌積層部15から最も離れた部分)、中間部132、付け根部133(合掌積層部15に接続している部分)に3等分して区分することができる。
【0015】
折り目を付けずに曲げられた折り返し端部13の外形は、凸曲面を含むものとなっている。
これは、折り返し端部13の内側に向けられた凹凸構造12による。すなわち、折り返し端部13の内側において、不織布シート11が非接合にされた状態で、凹凸構造12の凸部4及び凹部5が交互に隣接しながら配列されている。そのため、折り返し端部13の内側において、隣接する凸部4及び凹部5の連続列、特に隣接する凸部4,4同士が支え合いながらその形状を保持しようとする作用が生じ、折り返し端部13の外形が凸曲面を有するものとなる。これにより、折り返し端部13は環状ないし筒状の形状となってその形状が保持されやすくされている。
【0016】
「折り返し端部13の外形」とは、折り返し端部13の最外表面を繋げてできる輪郭形状をいう。不織布シート11が両面に凹凸構造を有する場合、折り返し端部13の外表面に配される凹凸構造において、最外表面に相当する凸部の頂部を繋げてできる輪郭形状を「折り返し端部13の外形」とする。
「凸曲面」とは、上記外形が外側に凸状に湾曲している面をいう。この凸曲面は、前述の輪郭形状において曲面の連続性を損なうような角部がないことが好ましい。この角部としては、例えば不織布シート11の線状の折り目や点状の突起部又は窪み部などが挙げられる。
【0017】
このような凸曲面を含む折り返し端部13は、その外形が丸みを帯び、肌に優しい柔らかい肌触りを有するものとなる。そして、折り返し端部13の内側では、前述のとおり、外力に対して凹凸構造12の凸部4、4同士が互いに支え合うように作用し、かつ、凹部5が凸部4、4同士を引き離す反発作用をして、外力に対する抗力が働く。
特に、先端部131及び付け根部133において最も凸部4、4同士が接近しやすく、これによる抗力が働きやすい。中でも、先端部13の頂部13P、付け根部133の底部13Mは、凸部4,4同士が最初に接近しやすい部分であり、前記抗力が外力に対して迅速に働きやすい。そのため、特に、先端部13の頂部13P及び付け根部133の底部13Mの凸曲面が外力に対して維持されやすい。また、先端部131及び付け根部133における抗力が、折り返し端部13の環状の凹凸構造12の全体に波及しやすく、中間部132のアーチを支える力となり得る。
これにより、本実施形態の不織布構造10は、折り返し端部13の凸曲面が潰れ難く、環状の立体形状が維持されやすくされている。その結果、折り返し端部13の丸みを帯びた外形による肌に優しい柔らかい肌触りが保持されやすくなる。加えて、不織布構造10は、肌面に対して追従性がよくなってフィット性が向上する。
【0018】
折り返し端部13の外形は連続した凸曲面で構成されることが好ましい。すなわち、折り返し端部13全体の外側の輪郭部分が、角部を有さない連続した凸曲面であることが好ましい。これにより、折り返し端部13全体が丸みを帯びた外形を備えることとなり、不織布構造11における、前述の肌に優しい柔らかい肌触りがより高められる。
【0019】
また、不織布構造11は、折り返し端部13の内側に、対向する凹凸構造12同士が離間した筒状空間14があることが好ましい。
筒状空間14とは、不織布構造11に外力を付加しない自然状態において、折り返し端部13の内部に配され、対向する位置にある凸部4、4同士が接触しないように離間した状態にした区間があることをいう。この筒状空間14は、前述の凹凸構造12による外力に対する抗力の作用で、変形しながらも保持されやすくされる。
ここで「対向する位置にある」とは、筒状空間14の外壁をなす環状形状の凹凸構造12において、上記の自然状態で互いに向かい合う位置にあることを意味する。これは厳密な位置関係に限定されるものでなく、例えば、先端部131、中間部132及び付け根部133における厚み方向Tに向かい合う位置関係を「対向する位置」にあるとする。また、先端部131と付け根部133の向かい合う位置関係を「対向する位置」にあるとする。
凸部4,4同士の離間した配置は、折り返し端部13の断面に示される環状形状の全体がそのようになっていてもよく、一部がそのようになっていてもよい。少なくとも、中間部132において、上記の自然状態で凸部4、4同士の離間した配置があることが好ましい。
【0020】
筒状空間14は、上記の自然状態で、折り返し端部13の延出する方向Wに沿って連続していることが好ましい。この筒状空間14が連続する状態は、前述の凹凸構造12による外力に対する抗力の作用で、変形しながらも保持されやすくされる。
この「連続している」とは、筒状空間14が、空気等の流体の流通性が得られる状態で連通していることを意味する。流通性が得られる限り、筒状空間14の大きさは、折り返し端部13の延出する方向Wに沿って必ずしも同じでなくてもよい。例えば、凹凸構造12の変形によって部分的に筒状空間14が変化していてもよい。また、流通性が得られる限り、筒状空間14は、折り返し端部13の延出する方向Wに沿って、直線状でなくてもよく、蛇行していてもよい。
【0021】
本実施形態の不織布構造10は、折り返し端部13に上記のような筒状空間14があることで、折り返し端部13における通気性が確保されやすくなる。
【0022】
次に、不織布シート11の好ましい実施形態について説明する。
不織布シート11は、前述の図1(B)に示すように、繊維がシート面の面方向に配向した、第1面側1A及び該第1面側1Aとは反対側の第2面側1Bに外面繊維層1、2を有する。外面繊維層1、2は、第1面側1A及び第2面側1Bそれぞれの側において不織布シート11の表裏面の最表面をなしており、平坦な部分を有する。図1(B)において、第1面側1Aが不織布構造10及び折り返し端部13における内側となる。第1面側1A及び第2面側1Bの外面繊維層1、2における繊維が配向するシート面の面方向は、図1(A)に示す不織布構造10の折り返し端部13における折り返し方向Jに対応する。
加えて、不織布シート11は、第1面側1Aの外面繊維層1と第2面側1Bの外面繊維層2との間に配在し、繊維が不織布シート11の厚み方向に配向した複数の連結部3を有する。連結部3における繊維が配向する厚み方向は、図1(B)に示す不織布構造10の折り返し端部13の内側中心に向かう方向Sに対応する。
不織布シート11は、連結部3が第1面側1A及び第2面側1Bの外面繊維層1、2を連結して支えることで厚み方向に対して回復力のある厚みのあるものとなっている。この厚みは、後述する見かけ厚みを意味し、外面繊維層1,2や連結部3のみの局所の厚みを意味するものでなく、不織布シート11全体の賦形された形状における表裏面間の厚みを意味する。
【0023】
不織布シート11は、第1面側1Aに、第1面側1Aの外面繊維層1及び連結部3によって構成される凸部4と凸部4、4間の凹部5とを交互に配した凹凸構造12を有する。第2面側1Bの外面繊維層2が凹部5の底部をなしている。
凸部4は、第1面側1Aの外面繊維層1からなる平坦な頂部と、連結部3からなる壁面とを有する柱状の凸構造を有する。すなわち、不織布シート11における連結部3は、外面繊維層1及び2と直交するように連結しており、これにより凸部4は、断面外形が矩形の形状を有する。凹部5は外面繊維層2を底部(凹部底部)とし、連結部3を壁面とする第1面側1Aに開放された箱型の空間部分である。
【0024】
このような不織布シート11は、連結部3の繊維が厚み方向に配向していることで、連結部3によって荷重を厚み方向に支えることができる。この不織布シート11は、厚み保持性(耐圧縮性)が高められ押圧を受けても潰されにくく、凹凸構造12の厚みが回復しやすく、クッション性が良くなる。
また、この不織布シート11からなる不織布構造10において、折り返し端部13の外形をなす凸曲面がより潰れ難く、環状の立体形状がより維持されやすくなる。これにより、不織布構造10は、柔らかい肌触りが維持されると共に、肌面に対して追従性が更に良くなりフィット性が向上する。さらに折り返し端部13による筒状空間14が保持されやすくなり、折り返し端部13における通気性が更に確保されやすくなる。
【0025】
不織布シート11は、図1(B)に示すように、第1面側1Aの凹凸構造に加え、第1面側1Bに凹凸構造があることが好ましい。第2面側1Bの凹凸構造は、図1(B)に示すように、外面繊維層2及び連結部3によって構成された凸部6、連結部3及び内面繊維層1によって構成された凹部7を交互に配した構造であることが好ましい。この場合、第1面側1Aの凹凸構造と第2面側1Bの凹凸構造とが表裏の関係にあることが好ましい。具体的には、第2面側1Bにおける凸部6は第1面側1Aにおける凹部5となり、第2面側1Bにおける凹部7が第1面側1Aにおける凸部4となることが好ましい。このとき第1面側1Aの凸部4は第2面側1Bに開放された中空部を有し、通気性を高める観点から好ましい。
不織布シート11が表裏面において上記の凹凸構造を備えることで、不織布シート11から構成された不織布構造10は、前述した外力に対する抗力がより高められる。これにより、折り返し端部13の外形をなす凸曲面が潰れ難く、環状の立体形状がより維持されやすくなる。
【0026】
不織布シート11の第1面側1A及び第2面側1Bの外面繊維層1、2において「繊維が平面方向に配向している」とは、後述する測定方法によって得られる、繊維の縦配向率が45%未満であることを意味する。繊維の縦配向率を45%未満とすることで、繊維が平面方向に十分に並び、フラットな形状を保つことができる。平面方向に配向している外面繊維層1、2は、不織布シート11の形状保持や強度保持の観点から、繊維の縦配向率を30%以上とすることがより好ましい。また、第1面側1A及び第2面側1Bの外面繊維層1、2の繊維の縦配向率を40%未満とすることが通常のフラット不織布と同様平面と接地しやすいので好ましく、38%以下とすることがより好ましく、37%以下とすることが更に好ましい。
【0027】
連結部3において「繊維が厚み方向に配向している」とは、後述する測定方法によって得られる、繊維の縦配向率が60%以上であることを意味する。連結部3が、この範囲の繊維の縦配向率を有することによって、不織布シート11の厚み方向に垂直に配置されていると言える。連結部は、繊維の縦配向率を60%以上とし、かつ繊維同士の一部融着を有していることによって、まるで柱のような状態で起立したものとなる。連結部3の繊維の縦配向率は、立体形状を維持されやすくする観点から、63%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、67%以上が更に好ましい。その上限には特に制限は無いが、繊維同士の交点を作って融着点を形成し、繊維同士で柱状になって、力に耐える構造を作る観点から、縦配向率は90%以下が好ましく、85%以下がより好ましく、80%以下が更に好ましい。
【0028】
第1面側1A及び第2面側1Bの外面繊維層1、2並びに連結部3は、それぞれ繊維の縦配向率が上記範囲にある領域として区分される部分である。連結部3は、第1面側1A及び第2面側1Bの外面繊維層1,2と端部において継ぎ目なく接続されているため、その部分においては、平面方向に配向した繊維と厚み方向に配向した繊維とが混在する。なお、平面方向に配向した繊維と厚み方向に配向した繊維とが混在する部分においては、繊維の縦配向率が45%以上60%以下の斜め配向を示すようにされていることが好ましく、繊維の縦配向率が45%から少しずつ縦配向していき60%以下の十分な縦配向に移行していくことがより好ましい。
【0029】
(第1面側1A及び第2面側1Bの外面繊維層1、2並びに連結部3の繊維の縦配向率の測定方法)
第1面側1A及び第2面側1Bの外面繊維層1、2並びに連結部3の繊維の縦配向率は、下記(1)及び(2)に基づいて測定することができる。
(1)不織布シート11の断面の作製
第1面側1A及び第2面側1Bの外面繊維層1、2を通る、不織布シート11の断面(縦断面)であって、連結部3が平面方向に延出する方向に直交し、該延出する長さの中央を通る位置における厚み方向の断面を作製する。または、第1面側1A及び第2面側1Bの外面繊維層1、2を通る、不織布シート11の断面(縦断面)であって、凹部5の中心を通る位置における厚み方向の断面を作製する。なお、上記断面は、測定対象の不織布シート11を5mm×5mm以上切り取るものとする。
(2)第1面側1A及び第2面側1Bの外面繊維層1、2並びに連結部3の繊維の縦配向率の測定
前記不織布シート11の断面において、第1面側1A及び第2面側1Bの外面繊維層1、2並びに連結部3それぞれの断面部分をSEM(日本電子株式会社製JCM-6000Plus)で35倍に拡大して観察する。観察画像に基準線として0.5mm×0.5mmの正方形の線を作製する。正方形の各辺(基準線)は、不織布シート11の断面における厚み方向及び平面方向それぞれと直交する辺とする。
正方形の各辺からなる基準線に繊維が通過する延べ本数をそれぞれ数える。不織布シート11の平面方向に直交する正方形の基準線を通る繊維を「横繊維本数」、不織布シート11の厚み方向に直交する正方形の基準線を通る繊維を「縦繊維本数」と定義する。縦配向率として、(縦繊維本数)/(横繊維本数+縦繊維本数)×100=縦配向率(%)として算出する。それらを各4点測定し、平均したものを縦配向率の値とする。外面繊維層1、2および連結部3をそれぞれ切出し測定する。
【0030】
不織布シート11の目付は、50g/m以下が好ましく、45g/m以下がより好ましく、40g/m以下が更に好ましい。このような目付とすることによって、不織布コストが低減され、吸収性物品用不織布として用いられやすい。
不織布シート11の目付は、10g/m以上が好ましく、13g/m以上がより好ましく、15g/m以上が更に好ましい。このような目付とすることによって、不織布として十分な形態を保つことができる。
【0031】
(目付の測定方法)
測定対象の不織布シート11を10cm×10cmに切りだす。10cm×10cmがとれない場合はできるだけ大きな面積に切ることが好ましい。秤(例えば、天秤)を用いて、質量を測定し、その測定値を測定対象の不織布シート11の面積で割って、目付を求める。
【0032】
不織布シート11における表裏面間の厚みは、第1面側1Aの凹凸構造における起伏の大きさ、すなわち凹部5の深さをより大きくする観点から、2mm以上であることが好ましい。
不織布シート11の前記厚みは、着用者の肌に触れた際の柔軟性とクッション性に優れたものとする観点から、2.3mm以上が好ましく、2.5mm以上がより好ましく、2.8mm以上がさらに好ましい。また、不織布シート11の前記厚みの上限は特に制限されるものでは無いが、立体形状を維持されやすくする観点から、10mm以下が好ましく、8mm以下がより好ましく、6mm以下が更に好ましい。
【0033】
上記の「表裏面間の厚み」とは、外面繊維層1及び2や連結部3のみの局所の厚みを指すものでなく、不織布全体の賦形された形状における表裏面間の見かけ厚みを意味する。より具体的には、前記「表裏面間の厚み」とは、不織布シート11の折り返しを解いて展開した状態で、水平面に静置したときに、該水平面と、該水平面に接する不織布シート11の一方の面とは反対面の側の最も外側の部位に接する仮想平面(水平板)との間の、該水平面に対する鉛直方向の距離を意味する(以下、この水平面に対する鉛直方向を単に「鉛直方向」ということがある)。前記「表裏面間の厚み」は、例えば不織布シート11が両面に凹凸形状を有する場合、一方の面側の凸部の頂部の位置と他方の面側の凸部の頂部の位置との間の垂直方向の距離である。この「表裏面間の厚み」を見かけ厚みともいう。
この「表裏面間の厚み」は、水平板を用いて0.05kPa荷重を第1面側1Aから付加した状態における厚みを意味する。具体的には、下記方法により測定され得る。ここで「0.05kPa荷重」とは、不織布シート11の表面の毛羽立ちなどを抑える程度の荷重を意味し、不織布シート11の見かけ厚みを適正に測定するために必要な軽微な荷重(不織布シート11の厚みを潰すような圧縮力に値しない軽微な荷重。)である。0.05kPaの荷重は、水平板、例えば、直径2.5cm、質量2.45gの円形平面プレートを不織布シート11の第1面側1Aに載置することで不織布シート11に加えられる。
【0034】
(0.05kPa荷重下の不織布シート11の表裏面間の厚みの測定方法)
測定対象の不織布シート11を10cm×10cmに裁断し、測定試料を作製する。レーザー厚さ計(オムロン株式会社製、高精度変位センサZS-LD80(商品名)。本明細書で用いられるレーザー厚さ計は全てこれである。)を使用し、前記測定試料に対して、水平板を用いて0.05kPaの荷重を第1面側1Aに加え、その状態で厚みを測定する。3箇所測定し、平均値を測定対象の不織布シート11の見かけ厚みとする。
なお、測定対象の不織布シートが製品に組み込まれている場合は、コールドスプレー等の冷却手段を用いて接着剤等の接着力を弱め、製品から不織布シートを取り出して上記の測定を行う。
測定対象の不織布シートとして10cm×10cmの大きさを取り出せない場合には、なるべく大きいサイズで取り出すことが好ましい。
【0035】
本実施形態の不織布構造10において、不織布シート11は、第1面側1Aの凹凸構造について種々のパターンを取り得る。また、第1面側1Aの凹凸構造において、凸部4の内部が中空であってもよく、中実であってもよい。更に、第2面側1Bが凹凸の無い平坦面であってもよく、凹凸構造を有する面であってもよい。
不織布シート11における第1面側1Aの凹凸構造として、例えば、下記の不織布シート60(形態例1)、不織布シート70(形態例2)、不織布シート80(形態例3)、不織布シート90(形態例4)それぞれが有する第1面側1Aの凹凸構造が挙げられる。これらの凹凸構造を有する不織布シート60、70、80、90において、前述した要件等を適宜組み込むことができる。
以下、これらの凹凸構造の好ましい具体例について説明する。
【0036】
不織布シート60(形態例1)は、図2に示すように、第1面側1Aにおいて、Y方向に延出し、Y方向と交差するX方向に離間して複数配される第1外面繊維層61Aを有する。更に、第1外面繊維層61A、61A間を繋ぎX方向に延出する第2外面繊維層61Bを有する。第1外面繊維層61Aの端部に、厚み方向に垂直に延出する第1連結部63Aが連結している。これにより、第1面側1Aに突出し、Y方向に長さを有する第1凸部64Aが形成されている。第1凸部64Aにおいて、第1連結部63Aは、Y方向に延出し、X方向に向けられた壁面をなしている。また、第2外面繊維層61Bの端部に、厚み方向に垂直に延出する第2連結部63Bが連結している。これにより、第1面側1Aに突出し、X方向に長さを有する第2凸部64Bが形成されている。第2凸部64Bにおいて、第2連結部63Bは、X方向に延出し、Y方向に向けられた壁面をなしている。第1凸部64A及び第2凸部64Bはいずれも断面が矩形であり、柱状の立体凸構造を有する。
なお、X方向とY方向とは、不織布シート60の平面の任意の方向を取り得るものである。特に、Y方向が不織布シート60の長手方向で、X方向が不織布シート60の前記長手方向に直交する短手方向であることが好ましい。前記長手方向と前記短手方向とは、不織布シート60の製造時の機械流れ方向(Machine Direction、MD)と該機械流れ方向に直交する幅方向(Cross Direction、CD)であることが好ましい。また、Y方向が不織布構造10における折り返し端部13及び合掌積層部15が延出する方向Wであることが好ましい。このX方向及びY方向に関する事項は、以下の形態例についても当てはまる。
【0037】
不織布シート60の第1面側1Aからの平面視において、前述のように延出方向が互いに異なる2種類の凸部が交差して格子状に配置されている。格子状であることで、厚み方向の潰れだけでなく平面方向への倒れが防止され、凹凸形状がより保持されやすくなっている。
上記の2種類の凸部で囲まれた部分が第1面側1Aの凹部65となっている。凹部65の底部には、第2面側1Bの方形の外面繊維層62が配されている。第2面側1Bの外面繊維層62の4つの端部に対し、2つの第1連結部63Aと2つの第2連結部63Bが垂直に連結している。この凹部65は第1面側1Aに開放された箱型の空間部分をなし、平面方向に複数点在している。凹部65では、箱型の空間部分を4つの連結部が囲み、連結部同士が互いに直角に連結しているので、押圧に対して潰れ難くされている。
第1面側1Aの第1外面繊維層61A及び第2外面繊維層61B並びに第2面側1Bの外面繊維層62では繊維が平面方向に配向している。第1連結部63A及び第2連結部63Bではそれぞれ壁面の向けられた方向(面する方向)が異なるものの、いずれにおいても繊維が厚み方向に配向している。これにより、前述の格子状の凸部の構造が加わり、厚みがより潰れ難くなる。
更に、不織布シート60において、第1面側1Aの延出方向が異なる第1外面繊維層61Aと第2外面繊維層61Bとが、繊維の平面方向における配向方向が異なることが好ましい。第1外面繊維層61Aはその延出する方向(Y方向)に繊維が配向し、第2外面繊維層61Bはその延出する方向(X方向)に繊維が配向していることがより好ましい。これにより格子状に組まれた凸部及び凸部に囲まれた凹部の潰れ難さがより高められる。
【0038】
加えて、不織布シート60の第2面側1Bは、第1面側1Aの凹凸構造に対応する凹凸構造を有する。すなわち、第1面側1Aの凹部65に対応する凸部66が外面側1Bに配され、第1面側1Aの凸部64(第1凸部64A及び第2凸部64B)に対する凹部67(第1凹部67A及び第2凹部67B)が第2面側1Bに配されている。この第2面側1Bの凹部67の存在により、第1面側1Aの凸部64が第2面側1Bに開放された中空部となる。これにより、この不織布シート60からなる不織布構造10において、折り返し端部13の凸曲面を潰れ難くし、環状の立体形状をより維持されやすくすることができる。
【0039】
不織布シート70(形態例2)においては、図3に示すように、第1面側1Aの方形の外面繊維層71の4つの端部に対して、4つの連結部(2つの第1連結部73Aと2つの第2連結部73B)が厚み方向に垂直に連結している。これにより、第1面側1Aに突出する柱状の凸部74が形成されている。柱状の凸部74は、平面方向に複数点在している。
柱状の凸部74、74間が、第1面側1Aの凹部75(Y方向に延出する第1凹部75A及びX方向に延出する第2凹部75B)となっている。凹部75の底部には、第2面側1Bの外面繊維層72(Y方向に延出する第1外面繊維層72A及びX方向に延出する第2外面繊維層72B)が配されている。第2面側1Bの外面繊維雄72の端部に対し、厚み方向に垂直に延出する前述の連結部(第1連結部73A及び第2連結部73B)が連結されている。
第1面側1Aの第1外面繊維層71及び第2面側1Bの外面繊維層72(第1外面繊維層72A及び第2外面繊維層72B)では繊維が平面方向に配向している。第1連結部73A及び第2連結部73Bではそれぞれ壁面の向けられた方向(面する方向)が異なるものの、いずれにおいても繊維が厚み方向に配向している。これにより、厚みがより潰れ難くなる。
【0040】
加えて、不織布シート70の第2面側1Bは、第1面側1Aの凹凸構造に対応する凹凸構造を有する。すなわち、第1面側1Aの凹部75(第1凹部75A及び第2凹部75B)に対応する凸部76(第1凸部76A及び第2凸部76B)が第2面側1Bに配され、第1面側1Aの凸部74に対応する凹部77が第2面側1Bに配されている。この第2面側1Bの凹部75の存在により、第1面側1Aの凸部74が第2面側1Bに開放された中空部となる。これにより、不織布シート70は、不織布シート60の場合と同様に、折り返し端部13の凸曲面を潰れ難くし、環状の立体形状をより維持されやすくすることができる。
【0041】
不織布シート80(形態例3)においては、図4に示すように、第1面側1Aにおいて、第1面側1Aに突出する縦畝状の第1凸部84AがY方向に延出し、Y方向と交差するX方向に離間して複数配されている。縦方向に延びる畝状の第1凸部84Aは、第1面側1AのY方向に延出する第1外面繊維層81Aと該第1外面繊維層81Aの端部に連結し厚み方向に延出する第1連結部83Aとからなる。第1連結部83Aと第1外面繊維層81Aとの連結部分が曲面状にされている。縦畝状の第1凸部84Aにおいて、第1連結部83Aは、Y方向に延出し、X方向に向けられた壁面をなしている。加えて、第1面側1Aに突出しX方向に延出する横畝状の第2凸部84Bが、縦畝状の第1凸部84Aを繋いで配されている。第2凸部84Bは、第1凸部84Aよりも厚み方向の高さが低く、頂部が第2面側1Bに湾曲した形状を有する。この第2凸部84Bは、第1面側1AのX方向に延出する第2外面繊維層81Bと該第2外面繊維層81Bの端部に連結し厚み方向に延出する第2連結部83Bとからなる。第2連結部83Bと第2外面繊維層81Bとの連結部分が曲面状にされている。横畝状の第2凸部84Bにおいて、第2連結部83Bは、X方向に延出し、Y方向に向けられた壁面をなしている。
【0042】
不織布シート80の第1面側1Aからの平面視において、前述の不織布シート60と同様に、上記の2種類の畝状の凸部が格子状に配置されている。格子状であることで、厚み方向の潰れだけでなく、平面方向への倒れが防止されて形状がより保持されやすくなっている。
また、不織布シート80では、前述の不織布シート60と同様に、上記の2種類の凸部で囲まれた部分が第1面側1Aの凹部85となっている。凹部85の底部には、第2面側1Bの外面繊維層82が配されている。第2面側1Bの外面繊維層82の4つの端部に対し、2つの第1連結部83Aと2つの第2連結部83Bが厚み方向に連結している。第1連結部83A及び第2連結部83Bと第2面側1Bの外面繊維層82との連結部分が曲面状にされている。この凹部85は第1面側1Aに開放された錐体状の空間部分をなし、平面方向に複数点在している。凹部85では、錐体状の空間部分を4つの連結部が囲み、押圧に対して潰れ難くされている。
第1面側1Aの第1外面繊維層81A及び第2外面繊維層81B並びに第2面側1Bの外面繊維層82では繊維が平面方向に配向している。第1連結部83A及び第2連結部83Bではそれぞれ壁面の向けられた方向(面する方向)が異なるものの、いずれにおいても繊維が厚み方向に配向している。これにより、前述の格子状の凸部の構造が加わり、厚みがより潰れ難くなる。
更に、不織布シート80において、第1面側1Aの延出方向が異なる第1外面繊維層81Aと第2外面繊維層81Bとが、繊維の平面方向における配向方向が異なることが好ましい。第1外面繊維層81Aにおいてはその延出する方向(Y方向)に繊維が配向し、第2外面繊維層81Bにおいてはその延出する方向(X方向)に繊維が配向していることがより好ましい。これにより格子状に組まれた凸部の潰れ難さがより高められる。
【0043】
加えて、不織布シート80の第2面側1Bは、第1面側1Aの凹凸構造に対応する凹凸構造を有する。すなわち、第1面側1Aの凹部85に対応する凸部86が第2面側1Bに配され、第1面側1Aの凸部84(第1凸部84A及び第2凸部84B)に対する凹部87(第1凹部87A及び第2凹部87B)が第2面側1Bに配されている。この外面側1Bの凹部87の存在により、内面側1Aの凸部84が外面側1Bに開放された中空部となる。これにより、不織布シート80は、不織布シート60の場合と同様に、折り返し端部13の凸曲面を潰れ難くし、環状の立体形状をより維持されやすくすることができる。
【0044】
不織布シート90(形態例4)においては、図5に示すように、第1面側1Aにおいて、第1面側1AのY方向に延出し、かつY方向と直交するX方向に離間して並ぶ複数の筋状の凸部94が配されている。筋状の凸部94は、第1面側1AのY方向に延出する外面繊維層91と該外面繊維層91の端部に連結し厚み方向に延出する連結部93とからなる。連結部93と外面繊維層91との連結部分が曲面状にされており、筋状の凸部94は角に丸みを帯びた畝状である。第1面側1Aの外面繊維層91は、厚み方向の高さがY方向に沿って緩やかに上下しながら尾根状に連なった形状を有する。また、筋状の凸部94は、平面視において、X方向の幅がY方向に沿って緩やかに波打つ(幅広の部分と幅狭の部分とが交互に連なっている)形状を有する。
また、不織布シート90は、筋状の凸部94、94間が、第1面側1Aの筋状の凹部95となっている。凹部95の底部には、第2面側1BにてY方向に延出する外面繊維層92が配されている。第2面側1Bの外面繊維層92に対し、Y方向に延出しX方向に向けられた壁面をなす連結部93が厚み方向に連結している。連結部93と第2面側1Bの外面繊維層92との連結部分は、曲面状にされており、角に丸みのある形状にされている。
第1面側1Aの外面繊維層91及び第2面側1Bの外面繊維層92では繊維が平面方向に配向している。連結部93では繊維が厚み方向に配向している。これにより、厚みがより潰れ難くなる。
【0045】
加えて、不織布シート90の第2面側1Bは、第1面側1Aの凹凸構造に対応する凹凸構造を有する。すなわち、第1面側1Aの凹部95に対応する凸部96が第2面側1Bに配され、第1面側1Aの凸部94に対応する凹部97が第2面側1Bに配されている。この第2面側1Bの凹部95の存在により、第1面側1Aの凸部94が第2面側1Bに開放された中空部となる。これにより、不織布シート90は、不織布シート60の場合と同様に、折り返し端部13の凸曲面を潰れ難くし、環状の立体形状をより維持されやすくすることができる。
【0046】
不織布シート60及び70の凹凸構造は、特開2019-44319号公報の段落[0049]~[0057]に記載の方法によって製造することができる。
不織布シート80及び90の凹凸構造は、特開2019-44320号公報の段落[0059]~[0065]に記載の方法によって製造することができる。
また、不織布シート11に関し、どのような凹凸構造であっても、上記文献に記載の製造方法に基づいて、繊維が厚み方向に配向した連結部を良好に形成することができる。すなわち、繊維交点の融着による不織布化の処理を行う前の繊維ウエブに対し支持体雄材及び支持体雌材による機械的な押込み処理を行うことにより、繊維が厚み方向に配向した連結部を良好に形成することができる。
【0047】
本実施形態の不織布構造10において、不織布シート11は、上記の凹凸構造を損なわない限り、様々な形態のものを用いることができる。その中でも、不織布シート11は、熱可塑性繊維を有し、繊維同士の融着点を繊維交点に有するものが好ましい。これにより、前述の連結部3における柱のような起立状態が保持されやすく、圧縮後に回復されやすくなる。前記融着点は、交差する繊維同士の接点において、繊維同士が繊維自身の熱可塑性樹脂成分の融着によって結着している部分である。より具体的には、前記融着点は、不織布シートの製造過程において、例えば熱処理によって熱可塑性繊維の表面が溶融し、繊維同士が融着したものである。このような不織布シートとしては、例えばサーマルボンド不織布が挙げられ、より具体的にはエアスルー不織布(熱風処理により前記融着点を形成した不織布。主に60mm以下の短繊維が用いられる。)やスパンボンド不織布(溶融状態にある樹脂を紡糸しながらそのまま不織布化したもので、エンボス処理によって前記融着点を形成した不織布。主に100mm以上の長繊維が用いられる。)が挙げられる。特に肌触りや凹凸の高さを確保する観点から、エアスルー不織布が好ましい。
【0048】
熱可塑性繊維としては、不織布の素材として通常用いられるものを特に制限なく採用できる。例えば、単一の樹脂成分からなる繊維や、複数の樹脂成分からなる複合繊維などであってもよい。複合繊維としては、例えば芯鞘構造、サイドバイサイド構造などがある。
熱可塑性繊維として低融点成分及び高融点成分を含む複合繊維(例えば鞘が低融点成分、芯が高融点成分である芯鞘構造の複合繊維)を用いる場合、製造工程において繊維ウエブに吹き付ける熱風の温度は、低融点成分の融点以上で、かつ高融点成分の融点未満であることが好ましい。より好ましくは、低融点成分の融点以上高融点成分の融点より10℃低い温度であり、さらに好ましくは、低融点成分の融点より5℃以上高く高融点成分の融点より20℃以上低い温度である。また弾力性の観点から、芯鞘構造の複合繊維の中でも、高融点成分である芯が多いほど弾力性が高い。そのため断面面積比で芯成分が大きいほうが好ましい。鞘が低融点成分、芯が高融点成分である芯鞘構造の複合繊維の具体例としては、鞘がポリエチレン樹脂(以下、PEともいう)、芯がポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、PETともいう)である芯鞘構造の複合繊維が挙げられる。
また、芯鞘構造の複合繊維において、芯の樹脂成分よりも鞘の樹脂成分の方が、ガラス転移点が低い場合(以下、低ガラス転移点樹脂という)(例えば、芯の樹脂成分がPETで鞘の樹脂成分がPE)、低ガラス転移点樹脂成分の質量比を小さくすることで、不織布の厚みの回復性をより高められる。
【0049】
このような本実施形態の不織布構造10は、吸収性物品における種々の部材として用いることができる。例えば、着用者の股下周辺の肌面に当接させる立体ギャザー部や着用者の胴回りの肌面に当接させるウエストギャザー部などに本実施形態の不織布構造10を用いることができる。
上記の吸収性物品には、着用者の排泄液を吸収保持する種々の物品が含まれる。例えば、おむつ、生理用ナプキン、パンティーライナー、尿取りパッドなどが挙げられる。吸収性物品は、典型的には液透過性の表面シート、裏面シート、それらに挟まれた吸収体を有する。
【0050】
次に、図6を参照して、本実施形態の不織布構造10をパンツ型おむつ100(以下、単におむつ100ともいう)のウエストギャザー部として用いた場合の好ましい一例について以下に説明する。なお、パンツ型おむつ100においても、後述の立体ギャザー部を備えるものとすることができる。
なお、図6において、不織布構造10に配されている凹凸構造の図示は省略しており、該凹凸構造の詳細については、前述したように図1~5を参照して説明した通りである(図7においても同様)。
【0051】
図6に示すように、おむつ100は、外装体101とその肌面に配される吸収性本体102とを備えている。外装体101は、おむつ100の外形を成している。外装体101は、前側外装体101Fと後側外装体101Rを有する。
【0052】
おむつ100は、装着時において、着用者の腹側に配される腹側部F、着用者の背側に配される背側部R、および腹側部Fと背側部Rとの間に位置する股下部Cを有する。腹側部Fと背側部Rとが股下部Cを折り返し軸として向かい合わせにされている。また両側のサイドシール部103、103で接合されて環状の胴回り部Dを成す。この構成により、おむつ100は、胴回り部Dの上端が開放されたウエスト開口部104と、胴回り部Dの下方の股下部Cの両側が開放された一対のレッグ開口部105、105とを有する。サイドシール部103は、ヒートシール、超音波シール等の方法により形成される。
【0053】
本実施形態の不織布構造10は、胴回り部Dの端部にある、ウエスト開口部104を囲むウエストギャザー部110に適用することができる。この場合、不織布構造10は、折り返し端部13が延出する方向Wをおむつ100の胴回り方向に向けて配置することができる。不織布構造10の折り返し端部11をウエストギャザー部110の肌面に当たる端部とし、合掌積層部15を、胴回り部Dを構成するように配置することができる。その際、弾性部材は不織布構造10の不織布シート11に複数本配される。該弾性部材は、合掌積層部15における不織布シート11間に挟持されていることが好ましい。不織布構造10における合掌積層部15の大きさは、外装体101の胴回り部Dに合わせて適宜設定することができる。
【0054】
このとき、ウエストギャザー部110は、不織布構造10の折り返し端部13の外形の凸曲面が潰れ難く、環状の立体形状が維持されやすくされている。これにより、肌面に対し柔らかい肌触りとなり、加えて肌面へのフィット性が向上され、着用感を高めることができる。また、折り返し端部13の内側に筒状空間14があると、この筒状空間14による通気性を向上させることができる。
【0055】
次に、図7を参照して、本実施形態の不織布構造10をテープ型おむつ200(以下、単におむつ200ともいう)の立体ギャザー部として用いた場合の好ましい一例について以下に説明する。同図に示したテープ型おむつ200は平面に展開した状態のおむつを多少曲げて内側(肌当接面側)からみた状態で示している。
【0056】
図7に示すように、おむつ200は長手方向Y及び該長手方向Yに直交する短手方向Xを有する。ここで、おむつ200の長手方向Yとは、吸収性物品を装着した状態における着用者の体の部位に対応した腹側部F、股下部C及び背側部Rを繋ぐ方向に対応する。おむつ200の短手方向Xは、長手方向Yに直交する方向であり、着用者の股下における左右の足を繋ぐ方向に対応する。おむつ200の厚み方向における相対的な位置関係を示す用語として、着用者の肌に接触する側を肌面側ないし肌当接面側あるいは表面側といい、これと反対側を非肌面側ないし非肌当接面側あるいは裏面側という。
【0057】
おむつ200は、肌当接面側に配置される液透過性の表面シート201と、非肌当接面側に配置される液難透過性の裏面シート202と、表面シート201と裏面シート202との間に介在される液保持性を有する吸収体203とを含む。おむつ200は、着用者の胴回りに止着するためのファスニングテープ207を背側部Rの両側に一対備えている。
【0058】
おむつ200において、表面シート1の長手方向Yの両側にサイドシート205がなす第1立体ギャザー部206、206が配される。さらにレッグ開口部209、209には第2立体ギャザー210、210が配されている。第1立体ギャザー部206は、着用者の股下の両側の肌面に当接するようにされている。第2立体ギャザー部210は、着用者の股下外方の脚の付け根に当たる鼠径部付近の肌面に当接するようにされている。
【0059】
本実施形態の不織布構造10は、第1立体ギャザー部206及び第2立体ギャザー部210に適用することができる。この場合、不織布構造10は、折り返し端部13が延出する方向Wをおむつ200の長手方向Yに向けて配置することができる。不織布構造10の折り返し端部11を自由端部として肌面に当接させるようにし、合掌積層部15をおむつ200の固定端部とするように配置することができる。その際、弾性部材は不織布構造10の不織布シート11に複数本配される。該弾性部材は、合掌積層部15における不織布シート11間に挟持されていることが好ましい。不織布構造10における合掌積層部15の大きさは、第1立体ギャザー部206及び第2立体ギャザー部210に合わせて適宜設定することができる。
【0060】
このとき、第1立体ギャザー部206及び第2立体ギャザー部210は、不織布構造10の折り返し端部13の外形の凸曲面が潰れ難く、環状の立体形状が維持されやすくされている。これにより、肌面に対し柔らかい肌触りとなり、加えて肌面へのフィット性が向上され、着用感を高めることができる。
【実施例
【0061】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳しく説明するが、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。なお、本実施例において「部」および「%」は、特に断らない限りいずれも質量基準である。下記表1中における、「-」は、項目に該当する値を有さないこと等を意味する。
【0062】
(実施例1)
(1)不織布シート試料の作製
繊維径1.8dtexの芯鞘型(ポリエチレンテレフタレート(PET)(芯):ポリエチレン(PE)(鞘)=5:5(質量比))の熱可塑性繊維を用いた目標目付30g/mの繊維ウエブを作製した。該繊維ウエブの短手方向の中央に対して、特開2019-44320号公報の段落[0059]~[0065]の記載に基づき、支持体雄材及び支持体雌材を用いた押込み賦形処理を行った。このときの、凹凸賦形の形状は前述の図4に示すものとした。次いで、繊維ウエブ全体に対して、上記の同公報の同段落[0059]~[0065]に示す熱風を用いたエアスルー法により不織布化した。このときの熱風による吹き付け処理は、温度163℃、風速6m/s、吹き付け時間2sの条件で行った。
得られた不織布を長手方向400mm、短手方向200mmの大きさに裁断し、一枚の不織布で構成された実施例1の不織布シート試料を作製した。
【0063】
不織布シート試料の目付は32.8g/mであった。また、不織布シート試料の見かけ厚みは5.2mmであった。
不織布シート試料は図4に示す凹凸形状を有し、第1面側1Aの外面繊維層1、第2面側の外面繊維層2及び両繊維層の間に配在された連結部3を有する。連結部3の繊維は不織布シート試料の厚み方向に配向しており、縦配向率は63%であった。
【0064】
次いで、不織布シート試料の短手方向に沿って折り返し、筒状空間を含む折り返し端部と合掌積層部とを備えた不織布構造試料S1を作製した。筒状の端部から5cmのところで合掌積層部をつくり、不織布シート11、11同士をホットメルトによって接合した。
【0065】
(比較例1)
市販のベビー用おむつ「メリーズさらさらエアスルーLサイズ」(2020年花王株式会社製)の立体ギャザーに使われているSMS不織布を取り出し(凹凸部がないので、縦配向なし)、実施例1と同様の方法で筒状空間を作り、比較例1の不織布構造試料C1とした。
【0066】
(比較例2)
実施例1のウエブを用いて、通常のエアスルー処理のみ(温度145℃、風速2m/s、吹き付け時間3s)をすることでフラットなエアスルー不織布シートを得た(凹凸部がないので、縦配向無し)。それを実施例1と同様の方法で筒状空間を作り、比較例2の不織布構造試料C2とした。
【0067】
(比較例3)
特開2012-136791号公報の図1に示す形状の凹凸不織布シートを、実施例1の繊維径1.8dtexの熱可塑性繊維を用い、同文献の明細書の段落[0031]に記載の製造工程を含むエアスルー製造方法によって作製した。これを比較例3の不織布シート試料とした。第1の熱風W1による吹き付け処理は、温度160℃、風速54m/s、吹き付け時間3sの条件で行った。第2の熱風による吹き付け処理は、温度160℃、風速6m/s、吹き付け時間3sの条件で行った。比較例3の不織布シート試料では、第1面側の第1突出部及び第2面側の第2突出部はともに、頂部に丸みのある円錐台形状又は半球状であった。第1面側の第1突出部及び第2面側の第2突出部、並びに第1突出部と第2突出部との間に介在する環状の壁部について、縦配向率は52%であった。
その後実施例1と同様の方法で筒状空間を作り、比較例3の不織布構造試料C3とした。
【0068】
各実施例及び各比較例のおむつ試料に対して下記の試験を行った。
(1)折り返し端部の環状形状の大きさの測定
筒状空間を作った各不織布構造試料を断面から観察し、筒状端部と合掌積層部の中間(筒状端部から2.5cmの場所)において定規を用いて、筒状を構成する不織布の一方の内側面からもう一方の不織布の内側面までの長さ(厚み方向Tの長さ)を測定した。すなわち2枚の不織布からなる、環状の空間部分を測定した。その際、完全な円弧になる場合は理論上3.2cmになる。空間が1.0cm以上で立体形状維持に優れ、1.6cm以上でより優れる。
(2)風合い試験
筒状空間を作った各不織布構造試料を平面に置き、筒状部分の風合いついて評価をおこなった。比較例1のメリーズテープタイプおむつの立体ギャザーを1点として、5点満点で相対評価をおこなった。3点以上で風合いを強く感じ、4点以上で風合いをより強く感じるとする。
【0069】
【表1】
【0070】
表1より、実施例1は環状形状の大きさが比較例に比べて大きく、空間の空いた形状を保持できていることがわかる。これにより風合いが大きく向上しており、立体ギャザーやウエストギャザーに好適であるといえる。また、空間の大きさは通気性やフィット性につながり、これらにおいても吸収性物品の立体ギャザーやウエストギャザーに適している。
【符号の説明】
【0071】
10 不織布構造
11、60、70、80、90 不織布シート
12 凹凸構造
13 折り返し端部
131 折り返し端部の先端部
132 折り返し端部の中間部
133 折り返し端部の付け根部
13P 折り返し端部の先端部の頂部
13M 折り返し端部の付け根部の底部
14 筒状空間
15 合掌積層部
1、2 外面繊維層
3 連結部
4 凸部
5 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7