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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】ブレスレットの長さ調節用装置
(51)【国際特許分類】
   A44C 5/20 20060101AFI20240729BHJP
   A44C 5/24 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
A44C5/20 B
A44C5/24
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020543532
(86)(22)【出願日】2019-02-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-03
(86)【国際出願番号】 EP2019053281
(87)【国際公開番号】W WO2019158471
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】18157057.3
(32)【優先日】2018-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599091346
【氏名又は名称】ロレックス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】ROLEX SA
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スラン, ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン, マーティン
【審査官】村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01908366(EP,A1)
【文献】特開2000-279217(JP,A)
【文献】実開昭55-102810(JP,U)
【文献】特開2005-212461(JP,A)
【文献】実公昭47-027964(JP,Y1)
【文献】実開昭51-018168(JP,U)
【文献】実開昭48-039968(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第00081616(EP,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1616374(KR,B1)
【文献】特開2001-204518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 5/20
A44C 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
留め金カバー(21)に対して可動である少なくとも1つの調節組立体(1、2)を含み、前記調節組立体(1、2)と前記カバー(21)にはそれぞれ、異なるブレスレット長へ誘導可能ないくつかの位置に従ったそれぞれの締結のための第1及び第2締結要素(23、35’)が設けられた、ブレスレット延長装置であって、前記調節組立体(1、2)と前記カバー(21)にはさらに、第1及び第2割出し要素(15、35)がそれぞれ設けられ、
前記第1及び第2割出し要素(15、35)で位置決めされる各位置は、前記第1及び第2締結要素(23、35’)の各締結位置のピッチと同一のピッチに応じて分布され、前記第1及び第2割出し要素(15、35)によって規定される前記カバー(21)に対する前記調節組立体(1、2)の各位置は、対応する前記第1及び第2締結装置(23、35’)による前記カバー(21)に対する前記調節組立体(1、2)の締結位置となるように構成され
前記第1及び第2割出し要素(15、35)は、前記調節組立体の締結には十分ではない、前記調節組立体の適切な位置を可能にする調節操作を補助する、予備位置決め要素を形成する、ブレスレット延長装置。
【請求項2】
前記調節組立体(1、2)は第1案内要素(10)を含み、前記留め金カバー(21)は第2案内要素(30)を含み、前記調節組立体(1、2)と前記カバー(21)は、それぞれの案内要素(10、30)の協働により互いに可動に連結され、前記第1割出し要素(15)は、前記第1案内要素(10)上に配置される、
請求項1に記載のブレスレット延長装置。
【請求項3】
前記第1案内要素(10)と前記第1割出し要素(15)は、一体構造組立体を形成する、
請求項2に記載のブレスレット延長装置。
【請求項4】
前記第1割出し要素(15)は、前記第1案内要素(10)とは別個であり、とりわけ前記第1案内要素(10)上へとりわけ打ち込みまたはオーバーモールドにより追加され、またはとりわけ前記調節組立体(1、2)のバー3の端部に位置する円筒状受け入れ要素(4)の端部に形成される、
請求項1または2に記載のブレスレット延長装置。
【請求項5】
前記第1割出し要素(15)は前記第1案内要素(10)の素材以外の素材製である、または前記第1割出し要素(15)は前記第1案内要素(10)の被膜の素材とは異なる素材の被膜を有する、
請求項4に記載のブレスレット延長装置。
【請求項6】
前記調節組立体(1、2)と前記第1案内要素(10)は、2つの別個の要素である、または前記調節組立体(1、2)は、少なくとも1つのリンク(2)を含み、前記第1案内要素(10)は前記リンク(2)と一体構造組立体を形成する、
請求項1から5のいずれか一項に記載のブレスレット延長装置。
【請求項7】
前記調節組立体(1、2)は、前記第1割出し要素(15)に対して第2割出し要素(35)に向かう弾性推力を発揮し、前記ブレスレットの前記長さの調節段階において前記第1及び第2割出し要素(15、35)の解放を可能にするために、前記第1割出し要素(15)と協働するばね(34)を含む、
請求項1から6のいずれか一項に記載のブレスレット延長装置。
【請求項8】
前記調節組立体(1、2)は、前記調節組立体のバー(3)の前記端部に配置された第1案内要素(10)及びまたは第1割出し要素(15)を含み、前記ばね(34)は、前記第1案内要素(10)及びまたは前記第1割出し要素(15)に対して前記カバー(21)に向かう弾性推力を発揮するよう、バー(3)上に配置される、
請求項7に記載のブレスレット延長装置。
【請求項9】
前記第1割出し要素(15)及び前記第2割出し要素(35)はそれぞれ、少なくとも1つの突起と空洞切り込みの形状を取り、または反対に、少なくとも1つの空洞切り込みと突起の形状を取る、
請求項1から8のいずれか一項に記載のブレスレット延長装置。
【請求項10】
前記第1及び第2締結要素(23、35’)は、一方では調節組立体のリンク(1)上に配置された歯の形状を取り、他方では前記留め金の前記カバー(21)の内面に配置された歯の形状を取る、
請求項1から9のいずれか一項に記載のブレスレット延長装置。
【請求項11】
前記留め金カバー(21)の前記第2締結要素(35’)と前記留め金カバー(21)の前記第2割出し要素(35)は、前記カバー(21)の2つの異なる区域、とりわけ前記カバー(21)の2つの異なるまたは整列されていない面上に配置される、
請求項1から10のいずれか一項に記載のブレスレット延長装置。
【請求項12】
前記調節組立体(1、2)は第1案内要素(10)を含み、前記留め金カバー(21)は第2案内要素(30)を含み、前記調節組立体(1、2)及び前記カバー(21)はそれぞれの案内要素(10、30)の協働により互いに可動に連結され、
前記第1案内要素(10)は、前記第2案内要素(30)と少なくとも部分的に接触する案内面を含み、前記案内面は、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)族に属するポリマー素材を含み、及びまたは、
前記第1割出し要素(15)及びまたは前記第2割出し要素(35)及びまたは前記第2案内要素(30)は、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)族に属するポリマー素材を含む、
請求項1から11のいずれか一項に記載のブレスレット延長装置。
【請求項13】
前記調節組立体(1、2)と前記カバー(21)の、前記2つのそれぞれの案内要素(10、30)は、とりわけ並進または実質的に並進の運動により、2つの案内要素の相対スライドを可能にする、
請求項12に記載のブレスレット延長装置。
【請求項14】
前記第1案内要素は、スライド、案内路、切欠き、穴または溝の形状を取る前記第2案内要素と協働する、ローラまたはランナまたはボールの形状を取る、
請求項13に記載のブレスレット延長装置。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載のブレスレット延長装置を含む、ブレスレット用展開留め金。
【請求項16】
請求項15に記載の展開留め金を含む、ブレスレット。
【請求項17】
請求項1から14のいずれか一項に記載のブレスレット延長装置または請求項15に記載の展開留め金または請求項16に記載のブレスレットを含む、時計、とりわけ腕時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレスレットの2つの端部間に延長装置が設けられた及びまたは展開留め金が設けられた、腕時計用ブレスレットに特に適した、ブレスレット用の特定の案内及び接続システムを含む、ブレスレットの長さ調節用装置に関する。本発明はまた、当該ブレスレットの長さ調節用装置を組み込んだ留め金及びブレスレット自体に、及び当該装置を含む腕時計自体に関する。
【背景技術】
【0002】
小型時計ブレスレットの2つのバンドを装着者の手首周りで結合するよう設計された従来技術の展開留め金は、第1閉鎖位置と、ブレードがもはや結合しておらずブレスレットの挿入または除去を可能とする第2開放位置とを取ることができる、複数の関節接合されたブレードを含む。このような留め金は、一般的には、従来の調節部と呼ばれる、ブレスレットに対する位置決めの第1調節部が設けられる。しかしながら、最終的に得られる長さは、多くの場合、最適ではない。
【0003】
このため、既存の留め金は、第1の従来調節部を補完するための、快適調節と呼ばれることもある、ブレスレットの長さの第2調節を実施することを可能にする解決策が設けられる。特許文献1は、旋回して2つの異なるブレスレット長に誘導する2つの安定位置を取ることができる調節リンクに依拠する、一解決策を開示する。短い位置は、ブレスレットの端部リンクの切り込みにより維持され、その短い位置において、調節リンクに対して接続され、弾性的に係止される。特許文献2は、ブレスレットの調節リンクが当該ブレスレットの留め金カバーに対向して変位可能な他の解決策を開示し、ここで調節リンクは切り込みによりカバーに固定される。これら既存の解決策は、ブレスレットの長さを調節する際に、ブレスレットの所望の長さに対応してその位置が変化する締結装置を形成する可動要素を、例えば切り込みに対する適切な位置決めへ到達させなければならず、ユーザによる慎重な操作を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】欧州特許出願公開第0819391号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1908366号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の全体的な目的の一つは、ブレスレットの長さの調節の簡便さまたは使いやすさをさらに改善することである。
【0006】
より具体的には、本発明は、作業が確実であり操作が直感的で使いやすい、ブレスレットの長さ調節用解決策を提案する。
【0007】
加えて、時計装置の、特にブレスレットの長さ調節用装置の可動部品は、
- 部品の変位を案内する機能における機械的ストレス、
- 落下、衝撃、断裂、ねじり等の特定の事象時の、並外れた機械的ストレス、
- さびの発生や酸化といった劣化を発生させる可能性のある、汚染やユーザの汗といった環境的ストレス、
を含む、多数の制約が課せられる案内要素が設けられる。
【0008】
本発明の第2の目的は、上述のストレスに対して最大限対応することを可能とする解決策を提供することである。
【0009】
とりわけ本発明の第2の目的は、案内要素の摩耗を制限し、その摩擦を減少させ、急停止や発錆の危険性を減少し、案内要素内の埃の堆積及びまたは蓄積を制限または防止することを可能にする、時計装置の可動部品の案内解決策を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このため本発明は、留め金カバーに対して可動である少なくとも1つの調節組立体を含み、前記調節組立体と前記カバーにはそれぞれ、異なるブレスレット長へ誘導可能ないくつかの位置に従ったそれぞれの締結のための第1及び第2締結要素が設けられた、ブレスレット延長装置であって、前記調節組立体と前記カバーにはさらに、第1及び第2割出し要素がそれぞれ設けられた、ブレスレット延長装置に基づく。
【0011】
本発明は、請求項によってさらに具体的に定義される。
【0012】
本発明の目的、特徴及び有利点は、添付した図面を参照して以下に開示される特定の実施例の非限定的な記載によって詳細に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施形態にかかるブレスレットの長さ調節用装置を包含する留め金カバーの、斜視図である。
図2図2は、本発明の実施形態にかかるブレスレットの長さ調節用装置を包含する留め金カバーの、縦断面に沿った断面図である。
図3図3は、本発明の実施形態にかかるブレスレットの長さ調節用装置の高さでの、留め金カバーの横断面に沿った断面図である。
図4図4は、調節装置のリンクの操作段階における、本発明の実施形態にかかるブレスレットの長さ調節用装置を包含する留め金カバーの斜視図である。
図5図5は、本発明の実施形態にかかるブレスレットの長さ調節用装置の案内要素の斜視図である。
図6図6は、本発明の実施形態にかかるブレスレットの長さ調節用装置の案内要素の、第1変形実施形態の断面図である。
図7図7は、本発明の実施形態にかかるブレスレットの長さ調節用装置の案内要素の、第2変形実施形態の断面図である。
図8図8は、本発明の実施形態にかかるブレスレットの長さ調節用装置のサブパーツの、変形実施形態を示す図である。
図9図9は、本発明の実施形態にかかるブレスレットの長さ調節用装置のサブパーツの、他の変形実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態にかかる、留め金内のブレスレットの長さ調節用装置について説明する。
【0015】
当該ブレスレットの長さ調節用装置は、バー3周りに配置された2つの横延長リンク2と、当該バー3周りに回転可動に搭載されたリンク1とを含む。2つの横延長リンク2は、留め金カバー21に対して可動である。バー3上に配置されたリンク1と2つの横リンク2を含む当該組立体は、ブレスレットの長さ調節用装置の調節組立体を形成する。変形例として、調節組立体は当該実施形態の形状以外の形状を取ってもよい。調節組立体は、単一の部品であっても一体構造であってもよく、または有利にはいくつかの部品からなる組立体を含んでもよい。
【0016】
カバー21は、それぞれが案内路を含む2つの側壁22を含む。各案内路は、バー3の端部に位置される第1案内要素10と協働する、第2案内要素30を形成する。このため、調節組立体はまた、第1案内要素10を含む。
【0017】
当該実施形態において、第1案内要素10は、有利には、ランナまたはローラまたはボールの形状を取り、第2案内要素30は、当該ランナまたは当該ローラまたは当該ボールを受けるよう適合された案内路またはスライドまたは穴または切欠きまたは溝の形状を取る。バー3のそれぞれの端部に配置されたランナまたはローラまたはボールは、このため、並進に実質的に対応する運動により、それぞれの対向する案内路内で、平行にスライドする。
【0018】
当該実施形態において、第1案内要素10は、リンク1、2とは別個の要素の形状を取る。この特定の構成において、わずかに弧をなす輪郭の2つのランナは、2つの横リンク2の両側にそれぞれ配置され、バー3により横リンク2に組付けられる。このために、ランナは、特に図3で示すように、バー3の端部の円筒状受け入れ要素4周りにランナを位置するために設けられる、中央穴11を含む。
【0019】
バー3は、環状中央部分33を含み、バー3の端部に位置する円筒状受け入れ要素4に、そして間接的に第1案内要素10に、カバー21に向かう、より具体的にはカバー21の側壁22に向かう弾性推力を発揮するばね34が、環状中央部分33の中に配置される。
【0020】
当該実施形態において、第1案内要素10は、すなわちランナまたはローラまたはボールは、一体構造である。更に、ランナまたはローラまたはボールは、ポリアリールエーテルケトン (PAEK)族に属する高性能ポリマー、とりわけポリエーテルエーテルケトン (PEEK)によって全体的に構成される。
【0021】
出願人による研究によって、当該ポリマーは、摩耗と摩損へのより良い耐性を有する上、部品の信頼性と耐久性を最適化するという利点をとりわけ有することがわかった。具体的には、ポリアセタール族のポリマーに比べ、すべりと耐性に関する性能が優れている。
【0022】
代替的に、第1案内要素10は単に、ポリアリールエーテルケトン (PAEK)族に属する高性能ポリマー製、とりわけPEEKからなる一部分を含んでもよい。 とりわけ、当該部分は、第2案内要素30と、すなわち案内路またはスライドと接触することが意図される、案内表面の高さにあってもよい。このため、当該部分は、接触区域または摩擦区域の表面被覆の形態を取ってもよい。とりわけ、PEEKでの構造は、ランナ周りに形成されても、とりわけランナ上にオーバーモールドされてもよい。例として、第1案内要素10は、案内表面の全部または一部を形成する、PEAK族に属するポリマー素材を含む被覆により覆われたコアを含んでもよい。
【0023】
他の変形例として、案内要素10は、他の素材、例えば金属製であってもよい。
【0024】
図8は、第1案内要素10が横リンク2へ直接固定される、変形実施形態を図示する。当該変形例において、横延長リンク2の穴へ打ち込まれるための固定ブロック12が第1案内要素10の側面に設けられる。当該固定は、例えば、打ち込み、リベット止め、接合、溶接、またはろう付けにより実施されてもよい。案内要素10は、その第2側面上に、案内表面13を含む。
【0025】
代替的に、横リンク2は、ランナの役割を果たす突起を、とりわけ円形または楕円形突起を含んでもよい。当該突起は、リンク2の側壁上に形成され、調節組立体の案内要素10を形成する。この特定の例の場合、リンク2は一体構造である。リンクは、高性能ポリマー、特に、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)族に属するポリマー素材、とりわけPEEK製であってもよい。代替的に、突起は、横リンク2の側壁上にオーバーモールドされてもよい。他の代替策として、突起は、その表面全体または一部にわたり、PEAK、例えばPEEKで被覆されてもよい。
【0026】
もちろん、カバー21の案内要素30もまた、ポリアリールエーテルケトン (PAEK)族に属する素材を含んでもよい。換言すれば、2つの案内要素10、30のいずれか一つが、その案内面の全部または一部にわたり、ポリアリールエーテルケトン (PAEK)族に属する素材を含んでよい。代替的に、2つの案内要素は、当該素材またはその他の素材を含んでもよい。
【0027】
第2案内要素30は、鋼または金や白金といった貴金属製であってもよい。代替的に、第2案内要素30は、セラミック製であってもよい。より具体的には、第2案内要素は、セラミックまたは鋼または金や白金といった貴金属製のカバーを有する、一体構造であってもよい。上述のように、変形例として、第2案内要素30は、高性能ポリマー、特に、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)族に属するポリマー素材、とりわけPEEK製であってもよい。より具体的には、第2案内要素は、全体がPEEK製の留め金カバーを有する、一体構造製であってもよい。代替的に、第2案内要素30は、好みで鋼または金や白金といった貴金属製のカバーに追加されてもよい。他の代替案として、第2案内要素30は、セラミック製のカバー上に追加されてもよい。
【0028】
例として、留め金カバーには、当該カバーの両側に形成された側壁上に配置された、スライダが設けられる。この特定の例の場合、カバーは一体構造である。カバーは、全体的に高性能ポリマー、とりわけPEEKから構成されてもよい。代替的に、スライダのみが、その表面の全部または一部にわたり、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)族に属するポリマー素材、とりわけPEEK素材で覆われてもよい。他の代替案として、カバーの全部が、他の素材、例えば金属製であってもよい。
【0029】
ポリアリールエーテルケトン(PAEK)族において、選択された素材は、充填されてもされなくてもよい。フィラーにより、特に部品の摩擦学的及び機械的特性を最適化することができる。例として、フィラーは、少なくとも補強用繊維及びまたは潤滑剤及びまたは黒鉛を含んでもよい。変形例として、フィラーは、とりわけ部品の着色の目的のための、少なくとも1つの顔料を含んでもよい。
【0030】
例示的実施形態によれば、選択された素材はPEAK、とりわけPEEK、ポリエーテルエーテルエーテルケトン(PEEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、または後者のコポリマー及びまたはポリマーの混合物である。また、当該ポリマー素材は、有利には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の、硫化モリブデンの、二硫化タングステンの、六方晶窒化ホウ素の、炭素繊維の、アラミド繊維の、ガラス繊維の、黒鉛の、グラフェンの、カーボンナノチューブの、ポリイミドの、硫化ポリフェニレンの、ダイヤモンドナノ粒子の、ポリシルセスキオキサンの、ホウ素繊維の、または後者の2つ以上の組み合わせの、少なくとも1つの充填剤を含んでもよい。もちろん、上記のリストは非限定的なものである。
【0031】
具体的な例示的実施形態によれば、素材は、20%のPTFE、例えばVictrex(登録商標)450FE20を含む、PEEKである。他の実施形態によれば、素材は、30%の添加物を、とりわけ炭素繊維及びまたは黒鉛及びまたはPTFEを含む、PEEKである。他の実施形態によれば、素材は、30%の炭素繊維と、追加的な添加物を、とりわけ黒鉛及びまたはPTFEを含む、PEEKである。炭素繊維の代替としてまたは追加的に、PEEKに含まれる繊維は、アラミド繊維またはホウ素繊維であってもよい。使用可能なPEAKまたはPEEKの例として、特に、Victrex(登録商標)PEEK 450FC30、Ketron(登録商標)HPV、Tekapeek(登録商標)PVX、KetaSpire(登録商標)KT-820 SL30、AKROTEK(登録商標)PEAK CF30、AvaSpire(登録商標)AV-651 CF30、 AvaSpire(登録商標)AV-722 SL30、AvaSpire(登録商標)AV-755 SL45が挙げられる。全ての場合において、そしてとりわけ説明した全ての実施形態において、PEEKポリマーは、PEAK族のその他のポリマーで代替可能であることを注記する。
【0032】
具体的な例示的実施形態によれば、部品は、65%のPEEK、15%の炭素繊維、10%のPTFE、8%のカーボンナノチューブ及び2%のナノダイヤモンドを含む。
【0033】
ポリアリールエーテルケトン(PAEK)族に属する素材製の要素または要素の一部分は、当業者に既知のあらゆる方法または方法の組み合わせにより製造される。変形実施形態によれば、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)族に属する素材製の部品または部品の一部の表面は、とりわけPEAK製の表面の摩擦学的及びまたは摩耗挙動をさらに最適化するために第1要素を成形するために、または潤滑剤をよりよく分配するために、構造化、特に微細構造化されてもよい。当該構造化は、パーツの鋳造中に直接、またはその後の機械加工またはマイクロマシニングにより、例えばレーザ表面テクスチャリング(またはLST)または化学エッチングにより、得られてもよい。構造化または微細構造化を得るために、その他の技術または技術の組み合わせを実施してもよい。
【0034】
本発明の具体的な実施形態によれば、案内要素またはポリマーまたは金属製の一部分であってもよい案内要素の一部分は、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)族に属する素材、とりわけPEEKを含む被覆により少なくとも部分的に覆われる。当該実施形態において、被覆は、従来の散布噴霧技術、静電式噴霧技術またはオーバーモールドを用いて塗布することができる。被覆はまた、例えばDLC被覆またはその他の適切な被覆技術により、当該部品の表面の微細構造化があってもなくても、前述の実施形態の1つにかかる要素に塗布されてもよい。表面の微細構造化は、被覆の塗布後に実施されてもよい。
【0035】
加えて、実施形態によれば、留め金に対するリンク1と横延長リンク2の、すなわち留め金に対する調節組立体の、相対変位は、留め金に対する調節組立体の特定の相対安定位置決めを予め定めることを可能にする、割り出し装置を含む。当該割り出し装置は、一方では調節組立体の、または他方では留め金の、それぞれの割り出し要素を介して実施される。
【0036】
このため、実施形態によれば、第1案内要素10は第1割り出し要素15を含む。例として、図5は、案内要素上に、とりわけ一体構造ランナ上に、直接形成されたいくつかの突起の形状を取る割り出し要素15を含む、案内要素10を図示する。これら突起は、半球状構成を有してもよい。代替的に、これら突起は、長方形及びまたは細長い形状といったその他の形状を有してもよい。これら突起は、図1及び2に示すように、留め金カバーの第2案内要素30を形成する案内路内に配置された、連続した切込みの形状を取る、第2割り出し要素35と協働するために設けられる。当該実施形態において、組立体が一体部品である場合、突起は第1案内要素の素材、例えばPEAK、とりわけPEEK製である。代替的に、突起は他の素材製であってもよく、とりわけ少なくとも一部がPEAK製またはPEAKで覆われたランナ上に形成されてもよい。
【0037】
例示的実施形態として、図6は、案内要素とは別個の割り出し要素15が有利には打ち込みにより搭載される、円筒形開口部を含む、ランナの形状を有する案内要素10を図示する。円筒形開口部11は、バー3の端部に案内要素を搭載するために設けられた開口部の延長であってもよく、別個の開口部であってもよい。
【0038】
図7は、ランナの形状を有する案内要素10が、案内要素とは別個の割り出し要素15周りに形成された、とりわけオーバーモールドされた、他の変形例を図示する。この結果は図6に示すものと同様である。
【0039】
代替的に、割り出し要素15は、図9に示すように、バー3の円筒状受け入れ要素4、とりわけバー3の円筒状受け入れ要素4の端部により、実施されてもよい。このため、円筒状受け入れ要素4は、第2割り出し要素35と協働するため、とりわけ案内要素の位置決めのために設けられた中央穴11を通過して、案内要素10を貫通する。このため、第1割り出し要素15は、案内要素10と別個でもよい。具体的には、第1割り出し要素15は、バー3により実施されてもよい。
【0040】
上述の割り出し装置は、留め金カバーに対するブレスレットリンクの補完的割り出し装置と組み合わせられてもよいこと、すなわち図1及び2に示すようにとりわけ歯35’を実施するバー割り出しシテムまたはボール割り出しシステムといった、従来の割り出しシステムを補完してもよいことを注記する。この従来の割り出し装置は、実際、ブレスレットの長さ調節用装置の調節組立体の、留め金の長手方向に変位可能な、締結装置の機能を充足する。このため、当該変位可能な締結装置は、異なるブレスレット長を引き起こすことができる。当該締結装置は、リンク1上に配置され、カバーの対応する歯35’に対して歯23を維持する力を発揮するばね24にさらされた歯23を含むことができる。当該実施形態において、歯35’は、カバー21の上壁の内面上で、調節組立体の第2案内装置30と第2割り出し要素35とを含む側壁22に対して直角に、配置される。歯23と歯35’は、締結装置の、それぞれ調節組立体とカバーの、締結要素を形成する。当該実施形態において、留め金カバー21の第2締結要素35’と、留め金カバー21の第2割り出し要素35は、カバー21の2つの異なる面上に配置されることが明らかである。その他の配置も、好ましくはカバーの2つの異なる区域に配置された第2締結要素35’と第2割り出し要素35に関して、予期できる。
【0041】
このため、本発明は、第1案内要素10を含むリンクと、第2案内要素30を含む留め金カバー21とを含む、ブレスレット延長装置に関し、リンクとカバーは、それぞれの案内要素10、30の協働により互いに可動に連結され、リンクは、カバー21の第2割出し要素35と協働する第1割出し要素15を含む。
【0042】
第2割出し要素を形成する切り込みは、従来技術から既知の切り込みを、例えば締結装置を形成する図2で特に可視の切り込み35’を、補完する。このため割出し要素は、とりわけ締結装置へ適切に作用するよう、調節組立体の適切な位置を可能にすることによってユーザによる調節を補助する、予備位置決め要素を形成する。当該割出し装置は、調節を可能にするよう様々な切り込みから簡単に抜け出せるため、調節組立体の締結には十分ではない。割出し装置は、締結機能を充足しない。上述のように、割出し装置は、別個の締結装置を補完する。
【0043】
割出し要素は、案内要素と、または案内要素の近傍でまたは介して配置された別個の要素と一体構造組立体を形成してもよい。更に、割出し要素は、ばねにより弾性的に戻されるボールを含むボールラチェットといった組立体の形状をとってもよく、ここでばねは、図3で特に可視のバー3のばね34を補完または代替してもよい。
【0044】
本実施形態によれば、ばね34は、第2割出し要素35へ向かう弾性推力を第1割出し要素15へ発揮し、当該ブレスレットの長さ調節の段階において第1及び第2割出し要素15、35の開放を可能にするよう、第1割出し要素15と協働する。
【0045】
これら割出し要素は、案内要素が受けるストレスと酷似するストレスを受けているようである。このため、割出し要素も、有利には、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)族に属するポリマー素材を含んでもよい。加えてまたは代替的に、割出し要素は、他の素材を含んでもよい。
【0046】
変形例として、第1割出し要素15は、第1案内要素10とは独立して実施されてもよい。
【0047】
このため、本発明はまた、留め金カバーに連結された少なくとも1つのリンクを含む、ブレスレット延長装置に関し、リンクは第1割出し要素15を含み、留め金のカバー21は第2割出し要素35を含み、2つの部品は互いに可動に連結され、第1割出し要素15及びまたは第2割出し要素35は、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)族に属するポリマー素材を含む接触面を含む。
【0048】
ブレスレットの長さを調節するにあたり、ユーザは、歯23を留め金の切り込み35’の切り込みから解放するために、調節組立体のリンク1を回転させはじめ、これにより調節組立体の締結装置を開放する。当該動作は、適切な方向へブレスレットリンクを引くことでも実施可能である。これにより、組立調節体は、上述のように案内要素10、30を介して、組立調節体を留め金に対して長手方向に変位可能にする開放位置を取る。この変位において、組立調節体は、割出し要素により予め定義された様々な安定位置に自動的に連続して位置決めされる。これら割出し要素は、有利には、締結装置のピッチに等しいピッチで、従って各割出し要素が締結位置に対応するよう、分布される。この場合、調節組立体は、その長手方向変位の際、様々な規定の長さ設定に対応する様々な長手方向位置において組立体の位置決めを容易にする、調節組立体の弾性要素の影響下で、割出し要素により予め定義された位置に、自動的に位置される。このように、ブレスレットの長さの調節は、補助され、非常に使い勝手が良くなる。ユーザが調節を継続したい場合、ユーザは調節組立体の変位を継続し、ユーザが発揮する力は、調節組立体の弾性要素の力に対抗して、遭遇した中間割出し要素からの解放を可能にする。
【0049】
本発明はまた、上述のブレスレット延長装置を包含する、ブレスレット及びまたは留め金及びまたは腕時計に関する。
【符号の説明】
【0050】
1、2 リンク
3 バー
10 第1案内要素
15 第1割出し要素
21 留め金カバー
30 第2案内要素
35 第2割出し要素
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9