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特許7527964多面整形外科アライメントのためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】多面整形外科アライメントのためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/44 20060101AFI20240729BHJP
   A61B 34/10 20160101ALI20240729BHJP
【FI】
A61F2/44
A61B34/10
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020550591
(86)(22)【出願日】2018-12-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 US2018063530
(87)【国際公開番号】W WO2019112917
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】62/594,510
(32)【優先日】2017-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/207,116
(32)【優先日】2018-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520197435
【氏名又は名称】カールスメッド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】コルドニアー マイケル ジェイ
【審査官】大橋 俊之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0252107(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0294265(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0296433(US,A1)
【文献】特表2016-540610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/44
A61B 34/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータシステムによって実行される、患者固有のインプラントを設計するための方法であって、
患者の脊椎の関心領域の画像データを取得することと、
前記画像データに基づいて、前記関心領域における患者の解剖学的構造の調整可能な三次元画像を生成することと、
前記調整可能な三次元画像のユーザの操作を介して、前記患者の解剖学的構造に対する1つ以上の調整をユーザから受け取ることであって、前記患者の解剖学的構造の前記1つ以上の調整は、前記患者の解剖学的構造の所望の外科的修正に対応する、受け取ることと、
調整された前記三次元画像から、調整された前記患者の解剖学的構造の一または二以上の形状特性を測定することと、
前記一または二以上の形状特性のうち少なくとも一つについて取得された測定値と特定の形状特性に関連付けられた数学的規則とを比較することと、
前記一または二以上の形状特性のうち少なくとも一つの前記測定値が前記関連付けられた数学的規則に適合する場合に三次元インプラント形状データを生成することであって、前記インプラント形状データは付加的な製造オペレーションを誘導するように構成される、生成することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記一または二以上の形状特性のうち少なくとも一つの前記測定値が前記関連付けられた数学的規則に適合しない場合に前記一または二以上の形状特性のうち前記少なくとも一つに対する修正値を作成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記一または二以上の形状特性の測定値または修正値の所定のセットまたはサブセットの各々が前記関連付けられた数学的規則に適合する場合に三次元インプラント形状データを生成することであって、前記インプラント形状データは付加的な製造オペレーションを誘導するように構成される、生成することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記一または二以上の形状特性は骨盤の傾斜を含む、請求項1-3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
骨盤の傾斜に関連付けられた前記数学的規則は0度から20度の間の骨盤傾斜角(PT)により定められる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記一または二以上の形状特性は矢状面アライメントを含む、請求項1-3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
矢状面アライメントに関連付けられた前記数学的規則は5cm未満の絶対値を有するC7 sagittal vertebral axis(SVA)により定められる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記一または二以上の形状特性は腰椎前彎を含む、請求項1-3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
腰椎前彎に関連付けられた前記数学的規則は10度未満の骨盤形態角と腰椎前彎との間の差の絶対値により定められる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記画像データはコンピュータ断層撮影(CT)データを含む、請求項1-3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
前記画像データは磁気共鳴画像法(MRI)データを含む、請求項1-3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
前記画像データはX線データを含む、請求項1-3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
前記インプラント形状データにより誘導される付加的な製造オペレーションにおいて患者固有のインプラントを形成することをさらに含む、請求項1-3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
前記形成することのステップが、患者の情報によりさらに誘導される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記患者の情報は患者の年齢、患者の体重、および先行して行われた患者の手術履歴のうち一または二以上を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記患者固有のインプラントはチタン、チタン合金、チタン-6Al-4V、タンタル、およびPEEKから成るリストから選択される材料を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記患者固有のインプラントは生体材料をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記付加的な製造オペレーションは、三次元プリント、ステレオリソグラフィ(SLA)、選択的レーザ溶融法(SLM)、パウダーベッドプリント(PP)、選択的レーザ焼結法(SLS)、選択的熱焼結法(SHM)、溶融堆積モデリング(FDM)、直接金属レーザ焼結法(DMLS)、積層造形製造(LOM)、熱可塑性プリント、直接材料堆積(DMD)、デジタル光処理(DLP)、インクジェットフォトレジンマシニング、および電子ビーム溶解(EBM)から成るリストから選択される工程を含む、請求項1-3のいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は概して患者固有の整形外科インプラントを含む患者固有のインプラントならびにそれらを設計および生産するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
整形外科インプラントは様々な異なる病気を修正する(correct)ために使用される。整形外科インプラントを用いる整形外科手術は手の手術、肩および肘の手術、全関節再建(関節形成術)、頭蓋骨再建、小児整形外科、足および足首の手術、脊椎の手術、筋骨格腫瘍学、外科スポーツ医学、および整形外科的外傷を含むいくつかの専門分野のうち一つを含み得る。脊椎の手術は頸部、胸部、腰椎、または仙骨のうち一または二以上を包含してもよく、脊椎の変形もしくは変性、または関連する背中の痛み、脚の痛み、もしくは他の体の痛みを治療することもある。不規則な脊椎の湾曲は脊柱側彎症、脊柱前彎症、または脊柱後彎症(ハイパーまたはハイポ)が含まれる場合があり、また不規則な脊椎の変位は脊椎すべり症が含まれる場合がある。他の脊椎の障害は変形性関節症、腰椎変性椎間板疾患または頸部変性椎間板疾患、腰部脊椎管狭窄症または頸部脊柱管狭窄症を含む。
【0003】
脊椎固定手術は脊椎に及ぼされる意図した変更を設定し、保持するために行われ得る。脊椎固定処置は、PLIF(posterior lumbar interbody fusion)、ALIF(anterior lumbar interbody fusion)、TLIF(transverse or transforaminal lumbar interbody fusion)、またはDLIF(direct lateral lumbar interbody fusion)もしくはXLIF(extreme lateral lumbar interbody fusion)を含むLLIF(lateral lumbar interbody fusion)を含む。
【0004】
椎体間固定の一つの目的は、出ている神経根を含む神経要素のために十分な空間を提供する位置で空間的な関係をつかむ(例えば、固定する)ために椎骨間で骨を成長させることである。椎体間インプラントデバイス(椎体間デバイス、椎体間インプラント、椎体間ケージ、固定ケージ、または脊椎ケージ)は、椎骨の相対的な位置を維持し、適切な孔の高さおよび出ている神経の除圧を確立するために脊椎固定処置において使用される人工補綴物である。各患者は個々の、または特有の疾患特性を有し得るが、大部分のインプラントによる解決策は標準の大きさまたは形状(在庫インプラント)を有するインプラント(例えば、椎体間インプラント)を含む。
【発明の概要】
【0005】
本開示の一実施形態では、患者固有のインプラントを設計するための方法は、患者の脊椎の関心領域の画像データを取得すること、画像データから関心領域の一または二以上の形状特性を測定すること、一または二以上の形状特性のうち少なくとも一つについて取得された測定値と特定の形状特性に関連付けられた数学的規則とを比較すること、および一または二以上の形状特性のうち少なくとも一つの測定値が関連付けられた数学的規則に適合する場合に三次元インプラント形状データを生成することであって、インプラント形状データは付加的な(additive)製造オペレーションを誘導するように構成される、生成すること、を含む。
【0006】
本開示の別の実施形態では、患者固有のインプラントを設計するための方法は、患者の脊椎の関心領域の画像データを取得すること、画像データから関心領域の一または二以上の形状特性を測定すること、一または二以上の形状特性のうち少なくとも一つについて取得された測定値と特定の形状特性に関連付けられた数学的規則とを比較すること、および一または二以上の形状特性のうち少なくとも一つの測定値が関連付けられた数学的規則に適合する場合に三次元インプラント形状データを生成することであって、インプラント形状データは除去的な(subtractive)製造オペレーションを誘導するように構成される、生成することと、を含む。
【0007】
本開示のさらに別の実施形態では、患者固有のインプラントを設計するための方法は、患者の脊椎の関心領域の画像データを取得すること、画像データから関心領域の一または二以上の形状特性を測定すること、一または二以上の形状特性のうち選択された群の各要素について取得された測定値と特定の形状特性に関連付けられた数学的規則とを比較すること、関連付けられた数学的規則に適合しない一または二以上の形状特性のいずれかに対する修正値を作成すること、および付加的な製造オペレーションを誘導するように構成された三次元インプラント形状データを生成すること、を含む。
【0008】
本開示のまた別の実施形態では、患者固有のインプラントを設計するための方法は、患者の脊椎の関心領域の画像データを取得すること、画像データから関心領域の一または二以上の形状特性を測定すること、一または二以上の形状特性のうち選択された群の各要素について取得された測定値と特定の形状特性に関連付けられた数学的規則とを比較すること、関連付けられた数学的規則に適合しない一または二以上の形状特性のいずれかに対する修正値を作成すること、および除去的な製造オペレーションを誘導するように構成された三次元インプラント形状データを生成すること、を含む。
【0009】
本開示のさらに別の実施形態では、患者固有のインプラントを設計するための方法は、対象の脊椎からコンピュータ断層撮影(CT)データを取得することまたはアップロードすること、コンピュータ断層撮影(CT)データを三次元画像に変換すること、外科的な修正を適用するために脊椎の選択されたセグメントを選択することまたは表示すること、脊椎の選択されたセグメントに対して一または二以上の修正ガイドラインを適用すること、脊椎の選択されたセグメントが一または二以上の修正ガイドラインに適合するかどうかを決定すること、およびインプラントを生産するように構成された自動化された製造オペレーションを誘導するように構成された三次元インプラント形状データを生成すること、を含む。
【0010】
本開示のまた別の実施形態では、患者固有のインプラントを設計するためのコンピュータシステムは非一時的な信号である少なくとも一つのコンピュータメモリを含み、少なくとも一つのコンピュータメモリは、患者の脊椎の関心領域の画像データを取得し、画像データから関心領域の一または二以上の形状特性を測定し、一または二以上の形状特性のうち少なくとも一つについて取得された測定値と特定の形状特性に関連付けられた数学的規則とを比較し、一または二以上の形状特性のうち少なくとも一つの測定値が関連付けられた数学的規則に適合しない場合に三次元インプラント形状データを生成し、インプラント形状データは付加的な製造オペレーションを誘導するように構成される、ための少なくとも一つのプロセッサにより実行可能な命令を含む。
【0011】
本開示のさらに別の実施形態では、患者固有のインプラントを設計するためのコンピュータシステムは非一時的な信号である少なくとも一つのコンピュータメモリを含み、少なくとも一つのコンピュータメモリは、患者の脊椎の関心領域の画像データを取得し、画像データから関心領域の一または二以上の形状特性を測定し、一または二以上の形状特性のうち選択された群の各要素について取得された測定値と特定の形状特性に関連付けられた数学的規則とを比較し、関連付けられた数学的規則に適合しない一または二以上の形状特性のいずれかに対する修正値を作成し、付加的な製造オペレーションを誘導するように構成された三次元インプラント形状データを生成する、ための少なくとも一つのプロセッサにより実行可能な命令を含む。
【0012】
本開示のまた別の実施形態では、患者固有のインプラントを設計するためのコンピュータシステムは非一時的な信号である少なくとも一つのコンピュータメモリを含み、少なくとも一つのコンピュータメモリは、対象の脊椎からコンピュータ断層撮影(CT)データを取得することまたはアップロードし、コンピュータ断層撮影(CT)データを三次元画像に変換し、外科的な修正を適用するために脊椎の選択されたセグメントを選択または表示し、脊椎の選択されたセグメントが一または二以上の修正ガイドラインに適合するかどうかを決定し、インプラントを生産するように構成された自動化された製造オペレーションを誘導するように構成された三次元インプラント形状データを生成する、ための少なくとも一つのプロセッサにより実行可能な命令を含む。
【0013】
本開示のさらに別の実施形態では、患者固有のインプラントは、患者の脊椎の関心領域の画像データを取得すること、画像データから関心領域の一または二以上の形状特性を測定すること、一または二以上の形状特性のうち少なくとも一つについて取得された測定値と特定の形状特性に関連付けられた数学的規則とを比較すること、および一または二以上の形状特性のうち少なくとも一つの測定値が関連付けられた数学的規則に適合しない場合に三次元インプラント形状データを生成することであって、インプラント形状データは付加的な製造オペレーションを誘導するように構成される、生成すること、を含む工程により製造される。
【0014】
本開示のまた別の実施形態では、患者固有のインプラントは、患者の脊椎の関心領域の画像データを取得すること、画像データから関心領域の一または二以上の形状特性を測定すること、一または二以上の形状特性のうち選択された群の各要素について取得された測定値と特定の形状特性に関連付けられた数学的規則とを比較すること、関連付けられた数学的規則に適合しない一または二以上の形状特性のいずれかに対する修正値を作成すること、および付加的な製造オペレーションを誘導するように構成された三次元インプラント形状データを生成すること、を含む工程により製造される。
【0015】
本開示のさらに別の実施形態では、患者固有のインプラントは、対象の脊椎からコンピュータ断層撮影(CT)データを取得することまたはアップロードすること、コンピュータ断層撮影(CT)データを三次元画像に変換すること、外科的な修正を適用するために脊椎の選択されたセグメントを選択することまたは表示すること、脊椎の選択されたセグメントに対して一または二以上の修正ガイドラインを適用すること、脊椎の選択されたセグメントが一または二以上の修正ガイドラインに適合するかどうかを決定すること、およびインプラントを生産するように構成された自動化された製造オペレーションを誘導するように構成された三次元インプラント形状データを生成すること、を含む工程により製造される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示の実施形態による、椎体およびスペーサ、骨プレート、ピン、ダボ等として構成される様々なインプラントを例示する。
図2】本開示の実施形態による、椎体およびスペーサ、骨プレート、ピン、ダボ等として構成される様々なインプラントを例示する。
図3】本開示の実施形態による、椎体およびスペーサ、骨プレート、ピン、ダボ等として構成される様々なインプラントを例示する。
図4】本開示の実施形態による、椎体およびスペーサ、骨プレート、ピン、ダボ等として構成される様々なインプラントを例示する。
図5】本開示の実施形態による、椎体およびスペーサ、骨プレート、ピン、ダボ等として構成される様々なインプラントを例示する。
図6】本開示の実施形態による、椎体およびスペーサ、骨プレート、ピン、ダボ等として構成される様々なインプラントを例示する。
図7】本開示の実施形態による、椎体およびスペーサ、骨プレート、ピン、ダボ等として構成される様々なインプラントを例示する。
図8】本開示の実施形態による、椎体およびスペーサ、骨プレート、ピン、ダボ等として構成される様々なインプラントを例示する。
図9】本開示の実施形態による、椎体およびスペーサ、骨プレート、ピン、ダボ等として構成される様々なインプラントを例示する。
図10】本開示の実施形態による、椎体およびスペーサ、骨プレート、ピン、ダボ等として構成される様々なインプラントを例示する。
図11】本開示の実施形態による、椎体およびスペーサ、骨プレート、ピン、ダボ等として構成される様々なインプラントを例示する。
図12】本開示の実施形態による、椎体およびスペーサ、骨プレート、ピン、ダボ等として構成される様々なインプラントを例示する。
図13】本開示の実施形態による、椎体およびスペーサ、骨プレート、ピン、ダボ等として構成される様々なインプラントを例示する。
図14】本開示の実施形態による、椎体およびスペーサ、骨プレート、ピン、ダボ等として構成される様々なインプラントを例示する。
図15】本開示の実施形態による、椎体およびスペーサ、骨プレート、ピン、ダボ等として構成される様々なインプラントを例示する。
図16】本開示の実施形態による、椎体およびスペーサ、骨プレート、ピン、ダボ等として構成される様々なインプラントを例示する。
図17】本開示の実施形態による、椎体およびスペーサ、骨プレート、ピン、ダボ等として構成される様々なインプラントを例示する。
図18】本開示の実施形態による、椎体およびスペーサ、骨プレート、ピン、ダボ等として構成される様々なインプラントを例示する。
図19】本開示の実施形態による、椎体およびスペーサ、骨プレート、ピン、ダボ等として構成される様々なインプラントを例示する。
図20】本開示の実施形態による、椎体およびスペーサ、骨プレート、ピン、ダボ等として構成される様々なインプラントを例示する。
図21】本開示の実施形態による、椎体およびスペーサ、骨プレート、ピン、ダボ等として構成される様々なインプラントを例示する。
図22】本開示の実施形態による、椎体およびスペーサ、骨プレート、ピン、ダボ等として構成される様々なインプラントを例示する。
図23】本開示の実施形態による、一体型インプラント挿入器具およびインプラントの遠位端を例示する。
図24】本開示の実施形態によるシステムを用いる方法のフローチャートである。
図25】骨盤が中立状態の患者の側面図である。
図26】骨盤が前傾状態の患者の側面図である。
図27】骨盤が後傾状態の患者の側面図である。
図28】脊椎における骨盤傾斜角(PT)の側面図である。
図29】脊椎におけるC7 sagittal vertebral axis(SVA)の側面図である。
図30】脊椎における腰椎前彎(LL)および骨盤形態角(PI)の側面図である。
図31】患者の二つの椎骨の間に埋め込まれた椎体間デバイスの側面図である。
図32】本開示の実施形態による、コンピュータシステムの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
患者固有のインプラントおよび患者固有のインプラントを生産する効率的な方法が本明細書の実施形態において説明される。本明細書に記載の実施形態による患者固有のインプラントは、形状および大きさを含む患者の特定の生体構造と一致させるためだけでなく患者に特定のタイプの修正を加えるために特注の椎体間デバイスを含むことがある。本明細書で使用されるように、「椎体間デバイス(interbody device)」という用語は一般に任意の椎体間インプラントデバイス(椎体間デバイス、椎体間インプラント、椎体間ケージ、固定ケージ、または脊椎ケージ)を指す。椎体間デバイスは典型的に二つの椎体の間に配置されることが意図されている。しばしば、椎間板は椎体間デバイスを配置する前に除去される。椎体間デバイスの下側は第一の椎体の上側の少なくとも一部(エンドプレート)に接することが意図され、椎体間デバイスの上側は第二の椎体の下側の少なくとも一部(エンドプレート)に接することが意図される。
【0018】
椎体と椎体間デバイスとの間の不十分な接触および荷重伝達により、ケージを定着させるかまたは沈降させるために椎体に導くことのできる特定の位置において過度な荷重伝達が発生する可能性がある。さらに、椎体間デバイスと椎体との間の不十分な接触面積または圧力差により、沈降を増加させ、椎間板腔から椎体間デバイスを排出させる可能性のあるマイクロモーションおよび/またはマクロモーションが発生する可能性がある。この不十分な接触面積は、椎骨レベルごと、および患者ごとの椎骨エンドプレートの湾曲における解剖学的な可変性に一部起因するものと信じられている。加えて、低い骨密度指数またはエンドプレートが過度に剥がれることにより、エンドプレートの強度および一つの椎体から別の椎体まで荷重を伝達する能力が低減する可能性がある。これらのリスクを低減または排除するために、椎体エンドプレート上の椎体間デバイスの接触面積を最大化するように外科医らは慎重に対向する椎骨エンドプレートを用意し、可能な限り大きなフットプリント(カバー面積)を有する椎体間デバイスを挿入することを試みている。適切な場合、外科医は脊椎伸延に対して可能な限り多くのサポートおよび荷重伝達を提供するために、骨端リングに椎体間デバイスを配置し、一方で椎体間デバイスが椎間板腔内部で確実に入れ子になることも保証する。
【0019】
術前計画ソフトウェアは手術のためにインプラントを決定または生産するために用いられ得る。二つのタイプの術前計画ソフトウェアがあり、デバイスに固有のものと、デバイスに依存しないものとがある。デバイス固有の術前計画ソフトウェアは典型的に、CT(コンピュータ断層撮影)スキャンデータ、MRI(磁気共鳴誘導)データ、またはX線データのような画像データを二次元または三次元データに変換するための方法を提供する。変換されたデータは次に整形外科の課題(例えば、脊椎の変形)の測定結果を取得するため、および患者を治療するための一または二以上の在庫または標準モデルのインプラントを推奨するために使用される。この戦略の一つの課題は、患者の治療が医療機器製造業者により現在提供されているデバイスのモデルまたは大きさのみに限定されることである。しばしば、利用可能なモデルまたは大きさがいずれも特定の患者および手術計画に対して適切でない。脊椎の複雑または大きな修正は典型的に、在庫インプラントおよびデバイス固有の術前計画ソフトウェアにおける当該技術分野の現在の状態では可能でない。
【0020】
デバイスに依存しない術前計画ソフトウェアは典型的に単一の患者にカスタムインプラントによる解決策を提供するために医療専門家の医療機器製造業者により使用される。このタイプのソフトウェアはしばしば画像データ(例えば、CTスキャン等)を整形外科の課題(例えば、脊椎の変形)を測定するために使用することのできる三次元データに変換するための方法を提供する。典型的に、医療専門家は患者を治療するためのカスタムデバイスを開発するために医療機器製造業者および該当する規制機関または管理組織(FDA、IRB等)と共に働く。この工程はパーソナライズされたインプラントによる解決策を提供するものの、大部分の患者、医療専門家、または病院のペイヤーシステムには実現可能でない高額で時間のかかる工程である。
【0021】
本明細書に記載のシステムおよび方法は、脊椎が冠状面、矢状面、および軸平面における適切な操作を受けると、脊椎のネガティブスペースに合わせるために理想的なインプラントを表す三次元形状を提供するように構成される。換言すると、インプラントのカスタム形状は脊椎に対する所望の修正を少なくとも部分的に提供および維持することになる。したがって、脊椎の冠状面、矢状面、および軸平面の変形は修正され、脊椎の解剖学的な機能の復元が可能になる。修正は自由度に従う回転および/または線形変位の両方を含み得る。例えば、x軸に沿った正の変位、x軸に沿った負の変位、x軸の周りの正の回転、x軸の周りの負の回転、y軸に沿った正の変位、y軸に沿った負の変位、y軸の周りの正の回転、y軸の周りの負の回転、z軸に沿った正の変位、z軸に沿った負の変位、z軸の周りの正の回転、z軸の周りの負の回転である。本明細書に記載のシステムおよび方法は検証され、規制をクリアしたパラメータの範囲内での適合を確認するように構成されたソフトウェアを用いる。椎体間デバイスの特定の設計のソフトウェア検証の際、ソフトウェアは次に処方箋(prescription)を完成させ、三次元形状および処方箋データを医療機器製造業者に伝送するために、患者固有のデータを取り込むように構成される。いくつかの実施形態では、ソフトウェアを用いる病院または医療施設はそれ自体が医療機器製造業者になり得る。本明細書に記載のシステムおよび方法はさらに、例えば三次元プリントのような付加的な製造技術により、あるいはCNC製造のような除去的な製造技術により、ソフトウェア提供の処方箋により定められる詳細にしたがってインプラントの製造を提供する。したがって、提供されているインプラントは患者に固有のものであるが、所要時間および費用は従来の在庫インプラントのそれらと同様である。患者は従来のプライスポイントおよび短いリードタイムでパーソナライズされたインプラント治療の結み合わせた利益を有する。柔軟性と簡潔性とが組み合わされている。患者の理想的な解剖学的な修正は処方箋にコード化されて理想的なデバイスの形状は製作のために医療機器製造業者に送られるか、または病院もしくは他の医療現場、もしくは遠く離れた現場の研究室により製作され得る。
【0022】
図1-22は本開示のいくつかの実施形態による、本明細書に記載のシステムおよび方法により生産され得る様々なインプラントを例示している。図1はそれらが接触することになる椎骨エンドプレートの湾曲に一致するように構成される椎間インプラント処理両凸表面237を例示している。両凸表面237はそれぞれ横に(左から右に)湾曲してもよく、または前後に湾曲してもよく、あるいは横および前後の両方(例えば、半球または他の三次元凸形状)に湾曲してもよい。図2-6は、図2-3のオーバルフットプリント、図4-5の六角形のフットプリント、または図6の八角形のフットプリントを含む、椎体間での使用に好適なインプラントの様々な図を示している。いくつかの実施形態では、他の多角形のフットプリントが用いられ得る。いくつかの実施形態では、フットプリントは互いの長さに等しい側部を備えてもよく、または他の実施形態では、側部の全ては互いの長さに等しくてもよく、または他の実施形態では、互いの長さに等しい側部が無くてもよい。図7は隣接する頸部椎骨の固定のための頸部骨プレートを示している。骨プレートは二またはそれよりも多くの椎骨に及ぶが、必ずしも二つの椎骨エンドプレートの間のスペースを埋めるものではない。スクリュー用の孔の位置を含む図7の骨プレートの大きさおよび形状は、互いに対する特定の関係で頸部椎骨を維持するように構成され得る。図8は、その設置を容易にするために鍵(図示されていない)をかけることのできる円柱状のピンまたはダボを例示している。図9は、椎間腔への挿入後にインプラントが外れないように、例えば、粗面加工、ローレット加工、畝等のテクスチャを有する表面241を有する椎体インプラント240を例示している。表面241は好適な前彎の角度を有する前傾構成を提供するために一か所に集中していてもよく、または表面は本質的に平坦であってもよい。インプラントの外形242は、要件により示唆されるように、丸、オーバル、正方形、ダイヤモンド型、八角形、六角形等とすることができる。インプラントは骨形成/骨誘導材料を受け取るための開口部243および/または強度を追加するための硬い補強部材244を有するように設けることができる。インプラントの壁部には挿入具の一端と嵌合するための一対の挿入器具インタフェース243a(一つだけ示されている)がある。図10は前方または後方の椎間インプラントとしての使用に好適なオープンな、またはケージのような構造245を描写している。インプラントの一または二以上の側部にある筋交い246により、完全に開いた構成の強度に比べて構造的な強度が増加する。オープンスペースは骨形成/骨誘導材料で充填される。テクスチャを有する表面、例えば畝247は、インプラントが設置された後に外れないようにするために提供される。挿入インタフェース248はインプラント挿入具の遠位端(作用端)を受けることが意図されている。図11は位置を保持するためのテクスチャを有する表面250(畝)および空隙構造を有する内部と通じるオリフィスのパターンのある椎間インプラント249を例示している。それらの一端におけるインプラントの側部は、挿入器具が掴むことが意図されるインプラント挿入インタフェース252の一致する対を有する。インプラントの一端には、それを通じて骨形成/骨誘導材料をインプラントのチャネルと通じる内部間隙に導入することのできるオリフィス249aを有する。
【0023】
図12-15は、椎間腔への挿入のためのインプラントの様々な追加の構成を示している(図12は前傾インプラント、図13は後傾インプラント、図14は頸部スペーサ、図15は一端にアールが設けられた凹部を含む頸部スペーサである)。図16-18は、椎間ダボとして構成される様々なインプラントを示している。図16のインプラントは骨形成/骨誘導材料を受け取るための貫通孔を備える固体構造である。図17のインプラントは骨形成/骨誘導材料を詰めることのできるオープンな、またはケージのような構造を有する。図18のインプラントはその長手の表面上に椎間腔内部の回転変位を防ぐ少なくとも一つの翼状構造253を有する。インプラント16-18の各々は挿入具の遠位端を受け取るためのスロットおよび中央の孔を有する。図19はtransverse or transforaminal lumbar interbody fusion(TLIF)インプラントおよびそのサブユニットから組み立てたものを例示している。図19のインプラントは、あるいはposterior lumbar interbody fusion(PLIF)インプラントとして使用され得る。図20は内部と通じる開口部を備える凸状前方椎間傾斜材(a convex anterior interbody ramp)を描写している。図21は後方椎間インプラントの別の実施形態を示している。図22はインプラント-椎間エンドプレート接触のための大きな表面積を示す固体前方椎体インプラントを示している。
【0024】
図23は一体型、または結合したインプラント挿入器具およびインプラント256の遠位端257を平面図で概略的に例示しており、インプラント部258、具体的には、椎間インプラント(258)は弱った、または離れたアタッチメント259の位置を通じて器具部分の遠位端257に結合される。椎間腔への椎間インプラントの挿入後、インプラント挿入器具の鋭い上向きまたは下向きの動きが適用されることにより、所定の位置に留まるインプラントから明確に離れ、区別される器具の遠位端がもたらされることとなる。あるいは、アタッチメント259の位置は、遠位端257がクランプ、接着剤、エポキシ、またはホットメルト接着剤、磁気接続、スナップ、ねじ取付け、テーパー取付け、ばね取付け、およびこれらの取付け機能のうち任意の二またはそれよりも多くの組合せを含むが、これらに限定されない、インプラント258を着脱可能につかみ、または維持することを可能にする任意の機構を備え得る。カスタム器具でさえも本明細書に記載のシステムおよび方法により生産され得る。例えば、特定の患者はオフザシェルフ器具において利用可能でない特定の角度を有する器具が必要な変形を有することがある。
【0025】
図24は患者固有のインプラントを生産するためのシステムを用いるための方法100を例示している。ステップ102においてスキャンデータは患者のCTスキャン、例えば、患者の脊椎、または少なくとも脊椎内の関心のある部分を含むCTスキャンから取得される。他の実施形態では、スキャンデータはMRIスキャンデータまたはX線データを含み得る。ステップ104において、CTスキャンデータはデータのソフトウェアの操作を通じて三次元画像に変換される。典型的に、CTスキャンデータはDICOMフォーマットで示され、イメージングデータの個々のスライスを含む。一般的なスライドの厚さは1mmであるが、0.25mm、0.5mm、1.5mm、2.0mm、2.5mm、3.0mmおよびさらに大きな厚さ等の、他の厚さを使用してもよい。ステップ106において、脊椎セグメントが分析のために選択され得る。例えば、一時的な信号でなく、また少なくとも一つのプロセッサにより実行可能な命令を含む少なくとも一つのコンピュータメモリに関連付けられたユーザインタフェースが関心領域を選択するために用いられ得る。いくつかのケースでは、関心領域は特定の数の連続した椎骨およびそれらの周辺の軟組織を含む、脊椎の病気になったかまたは変形した部分であり得る。いくつかのケースでは、脊椎の全体が選択され得る。いくつかのケースでは、仙骨および腰椎椎骨ならびにそれらの周辺の軟組織のみが選択される。いくつかのケースでは、腰椎および胸部椎骨ならびにそれらの周辺の軟組織のみが選択される。いくつかのケースでは、頸部椎骨およびそれらの周辺の軟組織のみが選択される。
【0026】
図32に移ると、メモリ332およびプロセッサ334を含むシステム330は、任意の数のカスタムスタンドアロンデバイス、またはiPhone(登録商標)、スマートフォン、iPAD(登録商標)、スマートウォッチ、ラップトップもしくはデスクトップコンピュータ等の、任意のモバイルデバイスを含み得る。システム330はユーザインタフェース336も含み得る。システム330は、例えばインターネットブラウザアクセスまたは他の無線手段338を介して、メモリ332に遠隔でアクセスするようにも構成され得る。三次元画像は疾患(例えば、脊椎疾患)に関連する解剖学的な変形を測定するためにユーザが操作することのできるようなフォーマットに変換することができる。情報は次に、修正された脊椎の最適化された形状を設計するために、医療専門家が、または医療専門家と共に、もしくは彼らと協力することで技術者もしくは工学専門家が使用することができ、したがってインプラントの設計により特定の疾患または病気を治療することが可能になる。
【0027】
ステップ108において、コンピュータメモリは予測修正ガイドラインを脊椎もしくは脊椎の選択された部分、またはそれらの少なくとも一つのセクションに適用するために用いられる。いくつかの予測修正ガイドラインが用いられ得るが、一実施形態では、骨盤の傾き110、矢状面アライメント112、および腰椎前彎114に関連する、三つの予測ガイドラインのセットが適用される。立っている患者140の脚142および胴体144が図25に示されている。患者140は水平線148に関して中立な状態の骨盤146を有する。図26は湾曲した矢印および水平線148に関して角度を有する線150により表示される骨盤146が前方に回転した状態の骨盤前傾を有する、立っている患者141を例示している。図27は湾曲した矢印および水平線148に関して角度を有する線151により表示される骨盤146が後ろに回転した状態の骨盤後傾を有する、立っている患者143を例示している。患者の脊椎149が図28に示されている。骨盤傾斜角PTは垂直軸158と仙骨エンドプレートの中心点(154)から両大腿骨の中心156まで延びる線152とにより成される角度である。骨盤の傾き110に関する予測ガイドラインは式により定められ、骨盤傾斜角PTは20度未満である(PT<20°)。いくつかの実施形態では、骨盤の傾き110に関する予測ガイドラインは式0°<PT<20°により定められ得る。
【0028】
図29は正のC7 sagittal vertebral axis SVAを有する脊椎149を例示している。C7 sagittal vertebral axis SVAはC7椎骨の中心から落ちる鉛直線160から上側の仙骨エンドプレート表面164の後側の端部162までの距離である。C7 sagittal vertebral axis(SVA)112に関する予測ガイドラインは式により定められ、C7 sagittal vertebral axis(SVA)は5cm未満である(SVA<5cm)。いくつかの実施形態では、C7 sagittal vertebral axis(SVA)に関する予測ガイドラインは式により定められ、C7 sagittal vertebral axis(SVA)の絶対値は5cm未満である(|SVA|<5cm)。
【0029】
図30は骨盤形態角PIおよび腰椎前彎LLが表示された脊椎149を例示している。骨盤形態角PIは骨盤に関する仙骨の傾きの角度である。より具体的には、骨盤形態角PIは上側の仙骨エンドプレート表面164の中心点170に対する直交線168と中心点170と両大腿骨ヘッドの中心156との間の線172との間の角度である。腰椎前彎LLはL1とS1との間の角度である。腰椎前彎114に関する予測ガイドラインは式により定められ、骨盤形態角PIと腰椎前彎LLとの間の差の絶対値はおよそ10度未満である。より具体的には、腰椎前彎114に関する予測ガイドラインは式により定められ、骨盤形態角PIと腰椎前彎LLとの間の差の絶対値はおよそ9度未満である。いくつかの実施形態では、代替のまたは追加の正確なガイドラインを策定するために他のパラメータが使用され得る。例えば、C2-C7角は、頸部前彎の角度を評価するものであり、C2椎骨の上側エンドプレート表面とC7椎骨の下側エンドプレート表面との間の角度である;胸部脊椎後彎症T1-T12角は、T1椎骨の上側エンドプレート表面とT12椎骨の下側エンドプレート表面との間の角度である;胸部脊椎後彎症T4-T12角は、T4椎骨の上側エンドプレート表面とT12椎骨の下側エンドプレート表面との間の角度である;C7傾斜角は、頸部前彎および胸部脊椎後彎症を予測するものであり、水平線とC7椎骨の上側エンドプレート表面との間の角度である;仙骨傾斜は、水平線と上側の仙骨エンドプレート表面の傾斜との間の角度である。仙骨傾斜SSはSS≒PI-PTとなるような、骨盤形態角PIと骨盤傾斜PTとの間の相関を有し得る。
【0030】
決定ポイント116において、三次元画像により提供される脊椎の現在の状態において予測ガイドライン110、112、114が達成されたかどうかを決定するために、コンピュータメモリが用いられる。予測ガイドライン110、112、114のうち一または二以上が選択された脊椎セグメントについて真(true)でない場合、次に、ユーザはステップ118に示されるように脊椎アライメントを調整するためにユーザインタフェースを用い得る。例えば、骨盤の傾きが20°またはそれよりも大きいと決定される場合、ユーザは骨盤の傾きを20°未満に到達させるために修正の量を変更する調整を入力するかまたは切り替え得る。予測ガイドラインが全て達成されたこと(ユーザ調整が要求されたか否か)が決定される場合、ステップ120においてシステムは三次元形状を生成する。三次元形状は、いくつかのケースでは単一の椎体デバイスを定めてもよく、または他のケースではいくつかの椎体デバイスを定めてもよい。いくつかのケースでは、三次元形状は脊椎の単一のレベルに対して一または二以上の椎体デバイスを定めてもよく、または他のケースでは脊椎の二またはそれよりも多くのレベルから一または二以上の椎体デバイスを定めてもよい。いくつかの実施形態では、DICOMデータによりポイントクラウドマップが作成され、これは次に表面メッシュを作成するために複数の相互接続された三角形に変換される。骨と組織との間の既知の密度の相違に基づいて、三次元メッシュ表面は骨表面データについて解析され、体積を有する三次元画像に変換される。変換されたデータは.STL、.OBJのような可読フォーマット、または他のCAD(computer-aided design)可読ファイルフォーマットでメモリにセーブされる。このCAD可読ファイルフォーマットにおいて、個々の脊椎の椎体は区別され、また軸平面、冠状面、および矢状面において操作することができる。
【0031】
三次元形状が生成された後、システムは決定ポイント122において特定の修正がクリアしたパラメータの範囲内にあるかどうかを調べる。例えば、規制当局の認可の下で承認された特定の量の修正の範囲内、またはIRBにより制御されるかもしくはFDAにより制御される臨床試験の下で承認された特定の量の修正の範囲内である。修正の量に加えて、またはそれに代えて、他のパラメータは決定ポイント122においてクリアしたパラメータの範囲内で三次元形状が実行されるかどうかを決定し得る。例えば、インプラント(複数含む)の全体の体積または全体の質量は、必ず特定の範囲内にあるように、または必ず患者の単位重量あたり所定の量を下回るように制御され得る。修正(または他のパラメータ)がクリアした範囲内にない場合、ユーザが開始した入力はステップ118と同じように実行され得る。いくつかの実施形態では、システムは脊椎アライメントの各パラメータを調整するために量を提案することができ、ユーザがこの提案を受け入れること、または異なる変更の値を選ぶことが可能になる。いくつかのケースでは、例えば、所定の処置がインプラントベースの規制上の制限を有しない場合は、ステップ122は必ずしも必要ではないことがある。修正のクリアした量を検証する特定の方法は、最大の材料状態および最小の材料状態の両方において脊椎インプラントの三次元エンベロープ(envelope)を調べることである。例えば、一または二以上の患者の兆候(indication)において、FDA当局の認可はこれらの状態の両方を考慮に入れ得る。
【0032】
三次元形状がユーザに受け入れられ、またステップ122の限定により適用できる場合、患者の処方箋がステップ124において作成され得る。患者の処方箋は、.AMF、.X3D、.Collada(Collaborative Design Activity)、.STL、.STP、.STEP、または、.OBJを含むが、これらに限定されない、付加的な製造において使用される一または二以上の三次元ファイルを含み得る。患者の処方箋はあるいは、.IGS、.STP、.STEP、.3ds、.blend、.dae、.ipt、.skp、.fbx、.lwo、.off、.ply.、.sldprt、.sldasm、および、.X_Tを含むが、これらに限定されない、一または二以上の三次元ファイルを含み得る。いくつかのケースでは、患者の処方箋は例えば、外科治療を計画または誘導するため、または各インプラントの活用を計画するために、一または二以上の二次元ファイルも含み得る。二次元ファイルは、.dwg、.dwf、.dxf、.pdf、または、.acisを含み得るが、これらに限定されない。手術はステップ126において予定することができ、パーソナライズされたインプラントはステップ128においてオーダーすることができる。
【0033】
ステップ128は一または二以上の付加的な製造方法または除去的な製造方法を使用してインプラントを製造するために三次ファイルを使用することを含み得る。付加的な製造方法は、三次元プリント(three-dimensional printing)、ステレオリソグラフィ(stereolithography)(SLA)、選択的レーザ溶融法(selective laser melting)(SLM)、パウダーベッドプリント(powder bed printing)(PP)、選択的レーザ焼結法(selective laser sintering)(SLS)、選択的熱焼結法(selective heat sintering)(SHM)、溶融堆積モデリング(fused deposition modeling)(FDM)、直接金属レーザ焼結法(direct metal laser sintering)(DMLS)、積層造形製造(laminated object manufacturing)(LOM)、熱可塑性プリント(thermoplastic printing)、直接材料堆積(direct material deposition)(DMD)、デジタル光処理(digital light processing)(DLP)、インクジェットフォトレジンマシニング(inkjet photo resin machining)、および電子ビーム溶解(electron beam melting)(EBM)を含むが、これらに限定されない。除去的な製造方法はCNCマシニング、EDM(electrical discharge machining)、研削加工、レーザカッティング、ウォータージェットマシニング、および手動マシニング(フライス加工、旋盤/旋削)を含むが、これらに限定されない。
【0034】
インプラントの製造後、一または二以上の椎骨の固定のために骨に負担の少ない足場が
作成される。インプラントは以下の材料:チタン、チタン合金、チタン-6AL-4V、タンタル、およびPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)のうち一または二以上を含み得る。インプラントはまた生体材料を含み得る/生体材料によりコーティングされ得る。潜在的な生体材料の例は、ハイドロキシアパタイト(hydroxylapetite(hydroxyapetite))、組換えヒト骨形成タンパク質(recombinant human bone morphogenic proteins(rhBMP-2、rhBMP-7))、生理活性ガラス(bioactive glass)、β-リン酸三カルシウム(beta tri-calcium phosphate)、ヒト同種移植(human allograft)(皮質(cortical)および/または海綿骨(cancellous bone))、異種移植(xenograft)、他の同種移植(allograft)、多血小板血漿(platelet rich plasma)(PRP)、幹細胞(stem cells)、および他の生体材料を含むが、これらに限定されない。加えて、骨形成特性を有する合成セラミックが用いられ得る。インプラントの製造は、患者の年齢、患者の体重、または先行して行われた患者の手術履歴を含む患者の情報によりさらに誘導され得る。例えば、BMI(ボディマス指数(body mass index))が高い患者は(例えば、機械的な特性を有する)異なる材料で作られたインプラントおよび/またはより厚い材料断面寸法を有するインプラント等の、より硬いかまたはより強いインプラントを要求することができる。インプラントを形成する格子構造は、安定のために患者の生体力学的な要求に一致させるため、最適化することができる。加えて、BMIが低い患者および/または骨粗しょう症の骨または骨減少症の患者はより低い硬さ(より高い柔軟性)を有するインプラントから恩恵を受けることができ、したがって沈降のリスクを低減することの助けとなる。さらに、以前に固定に失敗している患者は隣接するレベルの椎間板疾患および/または近位関節後彎症のリスクに晒され得る。インプラントはこの特定の状況を緩和するために調整することができる。
【0035】
図31は第一の椎骨302および第二の椎骨304を含む脊椎300の一部を例示している。使用の際、本明細書に記載の実施形態を使用して製造される患者固有の椎体デバイス306はユーザにより脊椎300のネガティブスペース308に配置され、また第一の椎骨302の下側エンドプレート表面310と第二の椎骨304の上側エンドプレート表面312との間に嵌合される。椎体デバイス306の上側表面311は第一の椎骨302の下側エンドプレート表面310を嵌合し、椎体デバイス306の下側表面313は第二の椎骨304の上側エンドプレート表面312を嵌合する。椎体デバイス306は第一の椎骨302と第二の椎骨304との間、より具体的には、(例えば、Z軸に沿って)第一の椎骨302の下側エンドプレート表面310と第二の椎骨304の上側エンドプレート表面312との間の距離を維持するように構成される。椎体デバイス306は第一の椎骨302と第二の椎骨304との間のX軸および/またはY軸の位置(図示されていない)を維持するように構成されてもよく、また例えば、X軸、Y軸、および/またはZ軸に関して、第一の椎骨302および第二の椎骨304の両方のうち一つの回転方向を維持するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、椎弓根スクリュー314、316およびロッド318はさらに所定の位置で方向をロックするために使用され得る。他の実施形態では、プレート320およびスクリュー322、324はさらに所定の位置で方向をロックするために使用され得る。図31においてロッド318およびプレート320の両方が第一の椎骨302および第二の椎骨304に結合して示されているが、所定の状況において両方を組み入れることが可能であるにもかかわらず、一般に二つのうち一つのみが使用され得る。骨移植326または他の生体材料はさらに第一の椎骨302および第二の椎骨304の固定を容易にするために使用されてもよく、ネガティブスペース308の内部に埋め込まれてもよい。
【0036】
本明細書に記載のシステムおよび方法は患者固有のインプラントを要求する他の生理的な病気を修正するために用いられ得る。例えば、脊椎内のくさび状骨切り術を維持するためのくさび形インプラント、または関節炎状態または非関節炎状態の臀部、顎(jaw)、顎先(chin)または膝等の他の整形外科分野は本開示の教示を用いて設計され得る。特定の処置は高脛骨骨切り術(脛骨)、大腿骨遠位骨切り術(大腿骨)、Evans wedgeまたはCotton wedge(足および足首)を含む。
【0037】
本明細書で開示される範囲はまた、重複、副範囲、およびそれらの組合せのいずれかおよび全てを網羅する。「最大で(up to)」、「少なくとも(at least)」、「よりも多い(greater than)」、「よりも少ない(less than)」、「間(between)」等のような言語は列挙される数を含む。本明細書で使用されるような「約(approximately)」、「およそ(about)」、および「実質的に(substantially)」等の用語が先行する数は、列挙される数(例えば、およそ10%=10%)を含み、またさらに所望の固定を実行するかまたは所望の結果を達成する言及された量に近い量も表す。例えば、「約(approximately)」、「およそ(about)」、および「実質的に(substantially)」という用語は言及された量の10%未満、5%未満、1%未満、0.1%未満、0.01%未満である量を指す可能性がある。
【0038】
実施形態を示し、説明してきたが、本明細書で開示される発明の概念の範囲から逸脱することなく様々な修正がなされ得る。
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