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特許7527983マイクロ流体ポンプまたはバルブの計測の精確性を向上させる方法、ならびにこの方法を実行するための溶接装置及び緊張装置
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  • 特許-マイクロ流体ポンプまたはバルブの計測の精確性を向上させる方法、ならびにこの方法を実行するための溶接装置及び緊張装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】マイクロ流体ポンプまたはバルブの計測の精確性を向上させる方法、ならびにこの方法を実行するための溶接装置及び緊張装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 43/02 20060101AFI20240729BHJP
   F04B 43/14 20060101ALI20240729BHJP
   C12M 1/00 20060101ALN20240729BHJP
   C12M 1/38 20060101ALN20240729BHJP
   C12M 3/00 20060101ALN20240729BHJP
【FI】
F04B43/02 C
F04B43/14
C12M1/00 D
C12M1/00 A
C12M1/38 Z
C12M3/00 Z
【請求項の数】 36
(21)【出願番号】P 2020571804
(86)(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-09
(86)【国際出願番号】 DE2019000306
(87)【国際公開番号】W WO2020125829
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】102018009860.6
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510093440
【氏名又は名称】エム2ピー-ラブス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】フリッシュ,ニクラス
(72)【発明者】
【氏名】クレマーズ,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ヒルデンブランド,カールハインツ
(72)【発明者】
【氏名】ペトリー,クリストフ
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0322100(US,A1)
【文献】特開2012-130939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 43/02
F04B 43/14
C12M 1/00
C12M 1/38
C12M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性の隔膜(4)及び少なくとも1つのバルブトラフ(5、6、7)を伴うバルブ本体(8)を有する、マイクロ流体ポンプ(1、2、3)またはバルブの、投与の精確性を向上させるため方法であって、可撓性の前記隔膜(4)は、前記バルブトラフ(5、6、7)を被覆するために前記バルブ本体(8)に装着され、ここで前記方法は、前記バルブトラフ(5、6、7)に面した前記隔膜(4)の表面(9)が、レーザビームを用いて加熱され、前記レーザービームをx-y方向に誘導する誤差は、1ミリメートル未満であり、前記バルブ本体のポリマーは、プラスチック中またはプラスチック表面上において追加の吸収材を使用することなく、精確に確定されたポイントにおいてそれらの軟化点を超えた、集束したレーザービームによって加熱されるため、溶接プロセスが大きい面積にわたり行われずに、線上で行われることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記隔膜(4)は、前記レーザビームによって前記バルブ本体(8)に溶接されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記隔膜(4)または前記バルブ本体(8)には、加熱によって活性化される接着剤が提供されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記レーザビームを使用して、前記隔膜(4)の前記バルブ本体(8)への装着を、前記バルブトラフ(5、6、7)の縁部に沿った継目として生成することを特徴とする、請求項1~3のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記バルブトラフ(5、6、7)に面した前記隔膜(4)の前記表面は、前記隔膜(4)に影響を及ぼす放射によって加熱されることを特徴とする、請求項1~4のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記放射は、前記隔膜(4)を通って前記表面(9)に影響を及ぼすことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記放射は、前記バルブ本体(8)を通って前記表面(9)に影響を及ぼすことを特徴とする、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記バルブ本体(8)の前記表面(9)は、装着前に研磨されることを特徴とする、請求項1~7のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記バルブ本体(8)の前記表面(9)は、装着前にプラズマエッチングされることを特徴とする、請求項1~8のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記バルブ本体(8)の前記表面(9)は、装着前にイオンビームを用いてエッチングされることを特徴とする、請求項1~9のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記バルブ本体(8)の前記表面(9)は、装着前に化学修飾によって平滑化されることを特徴とする、請求項1~10のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記バルブ本体(8)の前記表面(9)は、装着前に親水性化されることを特徴とする、請求項1~11のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記バルブ本体(8)の前記表面(9)は、前記バルブトラフ(5、6、7)の周りに装着される前に、100nm未満の粗さの平均値(Ra値)を有することを特徴とする、請求項1~12のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記バルブ本体(8)の前記表面(9)は、前記バルブトラフ(5、6、7)の周りに装着される前に、50nm未満の粗さの平均値(Ra値)を有することを特徴とする、請求項1~12のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記バルブ本体(8)の前記表面(9)は、前記バルブトラフ(5、6、7)の周りに装着される前に、20nm未満の粗さの平均値(Ra値)を有することを特徴とする、請求項1~12のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ポンプは、0.01μL/h~1mL/hの流量で液体を送達するよう設計されることを特徴とする、請求項1~15のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
ポンプは、0.01~100μL/hの流量で液体を送達するよう設計されることを特徴とする、請求項1~15のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
ポンプは、0.1~80μL/hの流量で液体を送達するよう設計されることを特徴とする、請求項1~15のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
液体を送達するポンプは、5nL/ストローク~1μL/ストロークの範囲の、ストローク毎のポンプ容量で動作することを特徴とする、請求項1~18のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
液体を送達するポンプは、25~500nL/ストロークの範囲の、ストローク毎のポンプ容量で動作することを特徴とする、請求項1~18のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
液体を送達するポンプは、75~250nL/ストロークの範囲の、ストローク毎のポンプ容量で動作することを特徴とする、請求項1~18のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記レーザビームをx-y方向に誘導する誤差は、0.05マイクロメートルより大きく1ミリメートル未満であることを特徴とする、請求項1~21のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記レーザビームをx-y方向に誘導する誤差は、0.05マイクロメートルより大きく50マイクロメートル未満であることを特徴とする、請求項1~21のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記レーザビームをx-y方向に誘導する誤差は、0.05マイクロメートルより大きく5マイクロメートル未満であることを特徴とする、請求項1~21のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
様々な透過性範囲を有する様々なポリマーが、前記隔膜(4)及び前記バルブトラフ(5、6、7)のために使用され、UVレーザ、可視光レーザビーム、または赤外線レーザを用いて溶接されることを特徴とする、請求項1~24のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記レーザビームの波長範囲は、0.1~1000マイクロメートルであることを特徴とする、請求項1~25のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記レーザビームの波長範囲は、0.4~50マイクロメートルであることを特徴とする、請求項1~25のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記レーザビームの波長範囲は、0.78~3マイクロメートルであることを特徴とする、請求項1~25のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記レーザビームのパワーは、0.01~1000ワットであることを特徴とする、請求項1~28のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記レーザビームのパワーは、0.1~100ワットであることを特徴とする、請求項1~28のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記レーザビームのパワーは、3~50ワットであることを特徴とする、請求項1~28のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
幅が20マイクロメートル~3ミリメートルの線にわたって装着が実施されることを特徴とする、請求項1~31のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
幅が30~500マイクロメートルの線にわたって装着が実施されることを特徴とする、請求項1~31のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
幅が50~300マイクロメートルの線にわたって装着が実施されることを特徴とする、請求項1~31のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
請求項1~34のうちいずれか一項に記載の方法に従った方法を実行するための、溶接装置であって、レーザ、及びコンピュータ制御された前記レーザの運動のためのデバイスを用い、かつ前記隔膜(4)を全ての前記バルブトラフ(5、6、7)の周囲で溶接するために、運動の開始座標及び終了座標を自動的に記録するためのデジタルカメラを用いた、溶接装置。
【請求項36】
しわを作ることなく被覆フィルム/隔膜(4)を緊張するために、請求項1~35のうちいずれか一項に記載のプロセスを実行するための、緊張装置であって、均等の溶接継目を実現するために、予め正確に伸長させ、バルブの上側と同一面にし、それによって前記バルブの上側の前記フィルムによって加えられた圧力を、全ての位置で同じにする、緊張装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
遺伝子を組み換えられた微生物によって、活性物質、ビタミン、ペプチド、またはタンパク質を技術的に生産することは、過去30年にわたり膨大な経済的重要性を得てきた。これらの物質の工業生産において、生成する細胞システムは、多くの立方メートル体積を保持できるバイオリアクタで培養される。これによって、pH値、栄養素濃度、溶剤の酸素含有量、ならびに細胞の成長及び代謝に関するいくつかの他のパラメータを制御することによって、細胞が最適に生成できるのを保証する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、微生物培養または細胞培養における重要パラメータを制御することは、好適な計測方法を使用して、これらのパラメータをリアルタイムで計測するか、少なくとも適宜計測することを必要とする。目標値から重要パラメータが逸脱すると、次に適切な介入が必要となる。これは、全自動、またはオペレータによる手動で実施することができる。両方の事例において、対応した重要パラメータを、好適な薬剤を投与することで、その目標値に調整する試みが成される。例えば、細胞培養中に低下するpH値は、通常は適量の好適な塩基を投与することによって修正され、上昇するpH値は、適切に酸を追加することによって修正される。微生物または細胞のエネルギー供給は、グリコース溶剤であることが多い好適な炭素源を、制御して追加することで一般的に実現される。必要な薬剤が精確に計測された量で追加されることが、ここでは重要となることが多い。薬剤の過不足は、バイオテクノロジーで生産された物質の製品品質を損なう場合があり、生産を完全に停止させるか、または少なくとも空自収率を低下させる。
【0003】
工学規模において、すなわち細胞が、数百またはさらに数千リットルの培養液中で培養される場合、薬剤投与が、通常は完全な無菌状態で実行される必要があるという事実を別にすれば、培養条件を調整するための薬剤投与は特に問題とはならない。必要な薬剤量が、数ミリリットルから数リットルの範囲である場合、薬剤を高精度かつ精確に計測して投与する様々な技術が存在する。
【0004】
しかし、バイオテクノロジー生産のための培養条件を初めに確立する、上述の方法は、生産を進行中に他の技術を必要とし、そこでは生産中に使用される重要パラメータが初めに決定されなければならない。最適化プロセス中に、無作為の変異誘発または目標とする遺伝子操作によって生成された、好適である可能性のある有機体が、初めにスクリーニングされる。最も有望な有機体が選択され、次のステップにおいて、初めに大まかなステップで、次に次第に細かいステップで、培養条件が変更される。数千リットル、数百リットル、またはほんの数リットルの規模でさえ、このような最適化を実行することに意味がないことは、全ての者に明白である。各個々の最適化実験のためのコストは、実質的のその規模に比例する。薬剤、器具、実験室内の必要空間のためのコストは、培養体積に大きく相関する。オペレータが個々の培養に専念する必要のある時間も、かなりの程度までその体積に依拠する。
【0005】
したがって、数百または数千の異なる実験を必要とすることが多い、細胞または微生物の培養及びバイオテクノロジー的生産を最適化する科学者が、これらの実験をできるだけ並行して、可能な最小規模すなわち小さい体積で実行するために努力するのは、驚くべきことではない。
【0006】
このため、並行式マイクロバイオリアクタが、バイオテクノロジーにおいてより頻繁に使用されている。リアクタ容器は、マイクロタイタープレートの形態で配置されることが多く、したがってこれは、小さいか、または非常に小さい容積のリアクタのアレイをもたらす。これは、標準的な128×85mmフォーマットであることが多い、たった1枚のマイクロタイタープレートで、6、24、48、96、384、または1536個の培養でさえ、同時に行うことを可能にする。この微量で最適化された反応条件は、比較的小さい適合で巨視的なフォーマットに移行できることが多い。マイクロタイタープレート上のリアクタの数を変化させることによって、作業体積はそれに応じて大幅に変化する。10mL未満の規模でも一般にマイクロリアクタと呼ばれるが、1mL未満、500μL未満、100μL、またはさらに10μL未満の、容積のさらなる減少は、かなりの時間及びコストを節約させる。特に、実験を並行して実行する可能性のために、いくつかの操作された変数を用いて、培養条件を最適化するときはそうである。しかし、ここでは対照薬剤と呼ぶことが多い、培養条件を目標範囲内に維持する必要がある薬剤の投与は、しばしば大きな難点を提起する。1mL未満の容積を有するリアクタにおいて、対照薬剤は一般に、より大きいリアクタにおける条件と比較して、実験の精度及び信頼性に関する要件を大幅に低下させることなく、μLまたはさらにはnL単位の遅い投与を必要とする。
【0007】
したがって多くの製造者は、中規模で対照薬剤を追加するための技術を発展させるとき、シリンジまたは蠕動ポンプなどの実績のある技術を使用することを好む。これらの技術は、少なくともμL規模、特定の制限と共にさらにnL規模の、安定かつ再現性のある送達量を可能にする。しかし、マイクロバイオプロセス技術における、これらのポンプは、チューブ及びシリンジが使用前に完全に洗浄及び殺菌されるか、またはチューブ及びシリンジが適切に準備された使い捨て物品である場合でなければ、一般的に無菌条件を保証できないという欠点を有する。特に並行化の程度が、12回または24回よりも多い同時培養に関わる場合、1回のみの実験を設定することは、かなりのコスト及び時間と関連付けられる。マクルロバイオリアクタの他の製造者は、高精度投与バルブ(Applikon)を使用して、液体を反応チャンバの中に供給する。ここでやはり、液体はバルブの部品と接触することになり、したがってこれらは使用する前に、洗浄及び殺菌しなければならない。加えて、このような投与は、マイクロタイタープレートの蓋を通して行わなくてはならず、そのため無菌バリアを破る可能性がある。マイクロタイタープレートの底部を通して送達する、コスト効率が良くて使用が容易な使い捨てシステムは、このためマイクロバイオリアクタの使用者には大きな利益となる。
【0008】
マイクロバイオリアクタにおいて、高度な並行化で対照薬剤を送るための興味深い方法が、欧州特許第3055065号明細書に記載されている。約100μmの径のチャネル、ならびにこれらチャネルの中に統合されたポンプ及びバルブから構成されたマイクロ流体システムによって、対照薬剤を、マイクロタイタープレートに統合されたリザーバから、マイクロタイタープレートの底部を通してマイクロリアクタの中に、ポンプで送り込むことができる。マイクロ流体バルブ及びポンプの使用は、多くの個々のマイクロバイオリアクタの、マイクロバイオリアクタシステムの中への良好な統合を保証し、それによって多くの並行実験を比較的小さい設定空間内で可能にする。多くの数のバルブ、ポンプ、及びチャネルによって、各々が2つの投与経路を伴う32個までの反応チャンバを、同時に制御することができ、それによって高いスループットのプロセスを行うことができる。概ね2000まで、またはそれより多い数の反応チャンバも、この技術を用いて実現することができる。
【0009】
チップの中に統合されたポンプ及びバルブの機能は、チャネルに接続された円形のトラフの多くが、可撓性フィルムまたは隔膜によって封止されるという事実に基づいている。空圧によって、フィルムをトラフの中に押圧することができ、それがチャネルを遮断させ、液体をトラフから押し出す。互いの関連におけるこれらのトラフ/バルブの配置に依拠し、かつフィルムがこれらのトラフ/バルブの中に押圧されるシーケンス、及び持続時間に依拠して、液体を画定された方向に、原則として画定された流量で、ポンプで送り込むことができる。
【0010】
このようなマイクロ流体バルブ及びポンプ(隔膜ポンプ)は、ライフサイエンス分野において現在一般的に使用されている。なぜなら、それらは圧縮空気を使用して、簡単かつ比較的安価で作動させることができるからである。ポンプチャンバが2つのバルブの間に設置された場合、液体の蠕動運動を、特定の切り替えシーケンスによって実現することができ、それは、ポンプ性能に顕著な影響を有する液体の物理特性なしで、液体の準連続運動を可能にする。低流量におけるポンプの送達のみが、明らかに不連続となる。なぜなら、ポンプチャンバの容積は、単位時間で動かすことができる液体の最小の個別の体積だからである。この技術の難点は、バルブトラフを可撓性隔膜で被覆することである。広範な方法がここで使用される。それらは、間接的接続技術(接着接続または締め付け)、及び直接的接続技術(接着結合、溶剤系接合、熱溶接、または超音波溶接)(2008年のTsaoらによる)に、原則的に分割することができる。
【0011】
バルブトラフを被覆する最も一般的な方法は、高温または超音波、及び圧力によって、主本体に隔壁を熱溶融または熱溶接することである。この方法は、漏洩して細胞に有害となり得る、任意の他の添加物を必要としない。締め付けの前に、いかなる機械的補助も必要としないという利点を有する。熱溶接において、基体はそれらのガラス転移温度に近づけられ、押圧パンチを用いて共に押圧される。圧力と温度との相互作用は、十分なポリマーのフローを生成し、個々の層のポリマー鎖の間に相互拡散を作り出し、それによって基材の結束力のある接続強さと同様の強い接続を作り出す。しかし熱溶融の主な難点は、構造変形の低下である。バルブまたはポンプチャンバを可撓性隔膜で精確に被覆するために、バルブは、隔膜が結合される画定された縁部を有しなければならない。これは、フィルム上に加熱及び押圧することによって生じる顕著な構造的変形を回避するため、これらのバルブまたはポンプチャンバが、比較的深くなければならないことを意味する。低送達量を可能にするため、バルブの外形の設計は、一般に比較的高い深さ、したがって高いデッドボリュームを伴う小さい断面積を基本とするため、バルブを封止するのをさらに困難にする。他方で、低いデッドボリュームを伴う低い漏洩量を実現するために、バルブにおける深さに対する幅の比を大きくすることが役立つ。バルブの幅が広いほど、被覆フィルムを動作中のバルブの中に押圧し、したがってバルブを封止もしくは充填するため、またはポンプの場合は全容量を送るために必要な空気圧は小さい。残念ながら、被覆フィルムをこれらの幅広で平坦なバルブトラフの上に熱溶接することは、上述の深いトラフを有する場合よりも、かなり困難である。隔膜フィルムの可撓性及びそれ自体の重さのため、隔膜フィルムをバルブの中に横たえ、そこに固着させる場合もある。これは、不均一に被覆されたバルブ及びポンプチャンバをもたらす。この結果、ポンプチャンバの容積に大きい変動を有するポンプバルブとなる。これはポンプからポンプへのポンププロセスの再現性に、悪影響を与える。ポンプの送達体積がチャンバの容積に正比例するため、変化するチャンバ容積は、投与プロセスの低い再現性、またはポンプからポンプへの低い送達精度を直接的に意味する。
【0012】
可撓性フィルムを平坦なバルブ(大きい径で浅い深さ)の上に熱溶接するために、高温かつ高圧を特徴とし、バルブ及びポンプチャンバの空洞の位置において凹部を有する加熱したパンチの助力を伴う溶接プロセスの実施が、役立つことが判っている。これは、バルブトラフの中への熱伝達を低減させる。それは、バルブトラフの可撓性フィルムが共に容易に固着せず、バルブトラフの縁部が容易に変形しないことを意味する。しかし実際には、ポンプチャンバへの熱伝達は、チャンバの可撓性フィルムの固着が完全に除去されない程度まで、常に低減されるわけではないことが判っている。他方で、接合パンチにおけるバルブの凹部は、パンチをバルブトラフに対して非常に精確に整合させる必要がある。互いに対する2つの構成要素の機械的整合に全体的に関連付けられた課題にも関わらず、接合パンチの僅かな不均一な加熱でさえ、異なる方向の異方性拡張をもたらす場合がある。その結果、マイクロ流体チップのバルブトラフ及び接合パンチの凹部は、完全な機械的整合でさえ、常には同心円状にならない。部分的に接着剤が付いた被覆隔膜を伴うバルブと同様に、これも、ポンプチャンバの容積にかなりの変動をもたらす場合がある。さらにここで、ポンプ性能は、ポンプによってかなりの変動を示す。
【0013】
可撓性被覆フィルムを伴うマイクロ流体ポンプシステムが、原則的に上述の理由(優れた並行化機能、容易な殺菌機能、低コスト、単一使用物品/使い捨てにおける簡易な使用)のためにマイクロバイオリアクタに使用するよう良好に適応されても、現在の先行技術に従った、同一設計の異なるポンプにおける送達量の高い変動は、システムが培養条件の僅かな変化に対して敏感に反応する場合、有機体のスクリーニングまたは細胞培養の条件を最適化するために使用することが、可能ではないことを意味する。これらのシステムは、より精確な投与システムを必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】欧州特許第3055065号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、隔膜と呼ばれる可撓性被覆フィルム、及び請求項1に記載のバルブトラフに基づく、マイクロ流体ポンプならびに/またはバルブの、投与精度を向上させるための方法に関する。
【0016】
有利な改善は、従属請求項の主題である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
したがって、隔膜がレーザビームによってバルブ本体に溶接されると、有利である。さらに、隔膜またはバルブ本体に、熱活性接着剤を提供することができる。ビームを使用して、隔膜をバルブトラフの縁部に沿った継目として、バルブ本体に装着することは、意味を成す。バルブトラフに面した隔膜の表面を、隔膜に影響を及ぼす放射によって加熱することができる。これは、放射が隔膜を通して表面に影響を及ぼす場合、特に容易である。しかし放射を、バルブ本体を通して表面に当てることもできる。隔膜が接触する、特に平滑な表面を実現するために、装着前にバルブ本体の表面を磨くことができる。バルブ本体の表面は、装着前にプラズマエッチングされ、イオンビームを用いてエッチングされ、化学修飾によって平滑化され、及び/またはバルブ本体の表面は、装着前に親水性にされ得る。ここでの目的は、バルブ本体の表面は、バルブトラフの周りに装着される前に、100nm未満、好ましくは50nm未満、さらに好ましくは20nm未満の粗さの平均値(Ra値)を有する。この計測値を判定するために、表面は、規定された計測距離にわたって走査され、表面の高さ及び深さの全ての差が記録される。計測距離にわたるこの粗さ曲線の定積分を計算した後、結果は計測距離の長さによって分割される。
【0018】
ポンプは、1mL/h未満の流量、しかし特に100μL/h未満の流量、さらには特に0.01~80μL/hの範囲の流量で液体をポンプで送り込むために使用されるべきである。ポンプが、5nL/ストローク~1μL/ストローク、しかし特に25~500nL/ストロークのポンプ容量、さらには特に75~250nL/ストロークの範囲における、ポンプストローク毎のポンプ容量で、液体を送達するために使用される場合、やはり有利である。加熱した接合パンチを用いた熱溶融によって生産されたポンプと比べた、送達量におけるポンプ毎の変動の減少は、レーザビームを使用して、バルブトラフの上側を可撓性隔膜と溶接することによって実現される。x-y方向におけるレーザビームの誘導の誤差は、1ミリメートル未満、好ましくは50マイクロメートル未満、さらに好ましくは5マイクロメートル未満であるべきである。ポンプ内またはポンプの周りのスペクトルにおける、異なる部分の光学的計測を可能にする、透明ポリマーで作られたバルブトラフの上に、同様に透明ポリマーで作られた被覆フィルム/隔膜も溶接するのを可能にするために、UVレーザ、可視レーザビーム、または赤外線レーザを用いて溶接される、様々な透過範囲の様々なポリマーを使用することができる。このようなレーザの好ましい波長範囲は、0.1~1000マイクロメートル、好ましくは0.4~50マイクロメートル、さらに好ましくは0.78~3マイクロメートルである。このスペクトル範囲(近赤外線)において、多くのポリマーは特有の吸収帯を有し、そのため、プラスチック中またはプラスチック表面上において追加の吸収材を使用することなく、精確に画定されたポイントにおいてそれらの軟化点を超えた、集束したレーザビームによって加熱することができる(吸収材不要の透過溶接)。可視光に対して高い透明性を有する、ポリスチレンまたはエチレン-ノルボルネンコポリマー(COCまたはCOP)などのプラスチックは、吸収材がなくても溶接することができる。レーザビームのパワーは、0.01~1000ワット、好ましくは0.1~100ワット、さらに好ましくは3~50ワットである。
【0019】
接合パンチを用いて熱接合する代わりに、レーザを用いて隔膜フィルム及びバルブトラフを溶接する利点は、レーザが、加熱した接合パンチよりも良好に調整できること、ならびに、溶接プロセスが大きい面積にわたり行われずに、継目の線に限定されることである。継目の外形及び進路は、x-yの3μm未満の誤差であるレーザを的確に誘導することによって確定させることができる。ここでの溶接継目の幅は、1ミリメートル未満、好ましくは250~20マイクロメートルである。幅が20マイクロメートル~3ミリメートル、好ましくは30~500マイクロメートル、特に好ましくは50~300マイクロメートルの線にわたって装着が実施される場合に、有利である。レーザの精確な誘導及び小さい継目の幅により、バルブトラフ及び溶接した隔膜フィルムと溶接していない隔膜フィルムとの間の境界の偏心、ならびに意図的ではない溶接による、バルブトラフにおける隔膜フィルムの固着は、回避される。これは、接合パンチを用いた熱接合の事例では回避することが困難である、
【0020】
しかし、溶接継目の精確な誘導、及びバルブトラフの中への得られた低熱入力は、隔膜フィルム及びバルブトラフの非熱接合を、常に防止するわけではない。これは、バルブフィルムの厚さが、バルブトラフの深さよりも大きい場合、またはフィルムの厚さ及びトラフの深さが、少なくとも類似の大きさ水準である場合に、特に当てはまる。この事例において、予め緊張させたフィルムを、強い溶接に好ましいプラスチックチップ上に押圧することで、隔膜フィルムもバルブトラフの中へ押圧させることができる。レーザビームの精確で局所的な誘導、及びそのパワーの精確な投与は、バルブトラフにおけるフィルムの溶接を確実に防止し、プラスチックチップにおけるバルブトラフの少ない極性表面、及び隔膜フィルムの同様に少ない極性表面における親水性の相互作用により、フィルム及びチップを互いに接着させることができる。小さい導電性の表面における可能な帯電も、このような付着性を促進することができる。さらに、好適な倍率の顕微鏡を用いて観察すると、不均等なサンドペーパのように見える場合があるバルブトラフの表面の粗さは、バルブトラフのこの微小な粗さの上に溶接するために押圧される場合、比較的柔らかい隔膜フィルムをそれらのサンドペーパ状の構造と絡ませることができる。単独または組み合わせた上記の全ての影響は、隔膜フィルムとバルブトラフとの間の相互作用に導く場合があり、ポンププロセスが妨害される。これは、低下したポンプ性能または隔膜ポンプの故障をもたらす場合がある。上述の加熱した金属パンチを用いた熱接合/溶接の事例において、頻出する副次的影響である、バルブトラフ及び隔膜フィルムの偶発的な熱溶接とは対照的に、レーザ溶接の事例で説明した隔膜とフィルムとの間の相互作用は、少なくとも部分的に逆にできる。したがってそれらは、ポンププロセス中に部分的に逆にできる。それにもかかわらず、隔膜フィルム及びバルブトラフが相互作用できる強度は大きくなることがあるので、好適な対策を取らなければならない。
【0021】
バルブトラフの微小な粗さに起因する場合がある、チップと隔膜フィルムとの間の機械的な相互作用を減少させるための、基本的に簡単な方法は、バルブトラフの表面を平滑化することである。バルブトラフを伴うチップは、好ましくは射出成形によって生成されるため、原則的に容易に近付くことができる凸状構造を代表する、射出成形金型におけるバルブトラフを、研磨によって平滑にすることは特に好適である。このように、粗さを数ナノメートルの細かさに低減させることができる。隔膜フィルムとバルブトラフとの間の相互作用は、チップによって生成された相互作用と比べて、大幅に減少させることができる。チップの対応した射出成形金型は、ミリング及び平滑化されるのみである。原則的に非常に簡単であるが、時として硬質な金属で作られた射出成形金型の細かい研磨を、ナノメートル範囲で手動で行うことに対する要求は、非常に大きい。チップ本体上のバルブトラフを平滑化することの、技術的な要求は小さい。より軟質である、ここで使用する材料、一般にポリスチレン、ポリオレフィン、または別のプラスチックのために、バルブトラフを研磨することは、1つのみの成形金型ではなく、全ての単一の射出したチップを再作業するために必要となる金額という点で、射出成形金型を研磨するよりも容易である。研磨とは別に、チップのバルブトラフにおける表面も、化学的に平滑化することができる。ここで、チップが作られるポリマーを、限定した範囲まで侵食する溶剤を使用するのが好ましい。それによって、バルブトラフの微粒など、細かい構造を平らにすることができる。ポリオレフィンチップのために、水を含むテトラヒドロフラン(THF)の混合物(好ましくは5~70%のTHF含有量)、または水を含むメチルエチルケトン(MEK)の混合物(好ましくは5~25%のMEK含有量)が使用される。ポリスチレンのために、水と混合したイソプロパノールが推奨される。一般的に、バルブトラフが作られるポリマーを侵食する溶剤と、バルブトラフが抵抗する溶剤との混合物を使用するべきである。これは、バルブトラフが比較的抵抗力があるが、不活性ではない混合物を生成するのを可能にする。このように、バルブトラフの粗さを生じさせる非常に細かい構造を、チップのチャネル及びバルブトラフの空洞に相当する、より粗い構造を大幅に損ねることなく、平滑化することができる。水と混ざらない成分を含有する溶剤混合物も、バルブトラフを平滑化するために使用することができる。クロロホルム、または、エタノールもしくはイソプロパノールを伴うジクロロメタンなど、塩素系溶剤の混合物は、ポリオレフィンの表面を平滑化するために、特に好適である。プラズマエッチングなどの物理化学的方法も、射出成形後のバルブトラフ、または個々にミリングしたチップ及びバルブを、平らにするために使用することができる。ここで、バルブを伴うチップは、真空中(0.001~0.1mbar)で、酸素プラズマまたは高電圧で生成された空気プラズマに露出される。このプロセスにおいて、細かい粗さは酸的に侵食され、それによって平滑化される。加えて、プラズマは、ポリマーの表面上に酸素ラジカルの堆積、及びポリマーの酸化生成物の形成を生じさせる。詳細には、カルボン酸、アルコール、アルデヒド、ケトン、エポキシド、オキセタン、過酸化物、及びあまり特徴のない活性酸素アダクトが形成される。これら全ての化合物は、バルブ空洞の表面における可能な平滑化に加えて、表面の極性を大幅に増加させる。これは、隔膜フィルムとバルブ空洞との間の疎水性相互作用を減少させ、それによってバルブとフィルムとの間の付着性を大幅に減少させる。
【0022】
バルブ空洞とフィルムとの間の相互作用を減少させる、別の非常に良好な方法は、バルブの内側を極性化学化合物でコーティングすることである。洗浄剤は、この目的には特に好適である。なぜならそれらは、バルブトラフのポリマー面に、それらの親油性の部分的構造及びそれらの極性頭基を伴ってしっかりと結び付き、バルブフィルムのバルブトラフに対する付着性をほぼゼロまで減少させるからである。アニオン性、カチオン性、及び中性の洗浄剤は、この目的のために好適である。特に、これらの洗浄剤は、0.001~1%の濃度の洗浄剤の水溶液から適用される。そうするために、バルブトラフを伴うチップは一時的に(少なくとも約1秒)洗浄剤の水溶液に浸される。洗浄剤の親油性の端部は、自動的にそれら自体でチップ/バルブトラフの表面に適応され、高密度層を形成し、洗浄剤の極性頭基はそれら自体で水媒体の方向に順応され、そこから洗浄剤は、溶剤からチップ/バルブトラフに向けて拡散する。この目的のための好適な洗浄剤は、従来の石鹸、すなわち高カルボン酸のアルカリ塩であるが、特にポリアクリレートなどの高分子カルボン酸(Sigma-Aldrich)である。これは、高い親和力によって、チップまたはバルブトラフの表面に、よりしっかりと固着する。同様に好適なのは、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS、Sigma-Aldrich)またはそれらの高分子類似物などの、硫酸またはスルホン酸である。レシチンまたは化学的に精製されたレシチン状化合物(例えばphospholipon G90、Lipoid AG、Cologne)などの、高分子天然物質も、特に好適であることが判っている。これらの化合物のアニオン性機能は、リン酸基に代表される。好適なカチオン性ポリマーは、テトラデシルトリアンモニウム塩化物(tetradecyltriammonium chloride)などの、少なくとも1つの高アルキルラジカル(逆性石鹸)を伴う第4級アンモニウム塩である。アニオン性ポリマーと同様に、チップ/バルブトラフにおける吸着を、ポリマー構造を使用することによって、ここで増加させることもできる。ポリエチレンイミン(Sigma-Aldrich)、及び第4級アンモニウム基を伴うかまたは伴わない高分子ポリアミンは、特に好適であることが判っている。中性洗浄剤も、チップ表面/バルブトラフの親和性コーティングに非常に好適である。Tween20(Sigma-Aldrich)などの低分子化合物に加えて、Surfynol類(例えばSurfynol 61、Surfynol 104、Surfynol AD01、Surfynol AS5020、Surfynol AS5040、Surfynol AS5060、Surfynol AS5080、Surfynol AS5180)、ならびにTegoprene(Tegoprene 5840、Tegoprene5860、Tegoprene5885)は、好適であることが判っている。上述のSurfynol及びTegopreneは、エッセンのEvonikから入手可能である。これらの化合物のうちのいくつかは、水溶性である。いくつかの事例において、初めにイソプロパノール中で約10%の濃度の中性ポリマーの保存液を準備するため、及び次に0.001~1%の目標濃度に水で希釈するために、マイクロ流体チップのコーティングが推奨される。
【0023】
隔膜フィルムが溶接されることになるバルブ縁部の、洗浄剤のコーティングは、溶接継目の安定性の低下をもたらす場合があるので、バルブ縁部のコーティングを避けること、もしくはコーティングの厚さを減少させること、または隔膜フィルムの溶接をせずに代わりに熱接着させることが、推奨される。いずれの事例においても、エネルギー入力の非常に良好な投与機能、及びレーザの位置付け精度も、接着接合に使用されるべきであり、それによって熱接着プロセスは、従来の接着接合よりも望ましくなる。
【0024】
バルブ本体の内側への洗浄剤コーティングを制限する実用的な方法、すなわち、チップ表面全体を親水的にコーティングしない方法は、チップ上のバルブ領域を接着テープで被覆することである。この接着テープは、バルブトラフの位置で穴が開けられる。このように、チップのプラズマ処理中に、バルブトラフの内側のみが酸素または空気プラズマに露出され、その一方でバルブ縁部は接着テープで保護される。このようにして準備されたチップを、上述の洗浄液のうちの1つの中に浸すと、バルブトラフの内側のみに親水性コーティングが生じ、その一方でバルブ縁部の親水性コーティングは、保護接着テープを剥ぎ取ることによって取り除かれる。したがって後続の溶接が、いかなる問題もなく可能となる。表面のプラズマ活性部に好ましく結び付くが、元のままの部分には結び付かない洗浄剤の使用は、プラズマ活性化のすぐ後で保護接着テープが取り除かれ、次にチップ全体が洗浄液で処理されるのを可能にする。Tegoprene 5840は、このタイプの処理には特に好適である。これは主に、チップのプラズマ活性化部分のみに結び付くので、保護接着テープを取り除いた後のチップの洗浄処理を、後続のレーザ溶接の強度に影響を与えることなく可能にする。このTegoprene 5840、さらにはSurfynole AS50xxの特性は、プラズマ活性化中にバルブ縁部を被覆するときに、接着テープを省略すること、及び、硬質被覆マスクを代わりに使用することを可能にする。硬質被覆マスクは、位置付けは容易であるが、洗浄液内のチップと一緒では、部分的にしか処理できないか、または全く処理できない。Phospholipon G90など、他の洗浄剤は、プラズマ活性化されたもの、ならびにプラズマ活性化されなかったものに、同様に良好に固着し、そのため、プラズマ活性化しなくても親水性コーティングを可能にする。
【0025】
チップを熱接着するために、熱活性接着剤をコーティングされたフィルムが使用されるべきである。チップ本体を接着剤のみでコーティングすることは、コーティングプロセスを可能な限り少なくする場合に意味を成すが、好ましくは、接着剤はバルブトラフに貫入できない。これは、チップ本体に直接、可能な接着剤を利用するが、比較的複雑である。したがって接着剤を用いてフィルムをコーティングするには、一般にチップ本体にコーティングするのが好ましい。隔膜フィルム及びチップの、レーザ活性化された熱接着のために、市販の熱接着フィルム(例えばアイルランド国ダブリンのAdhesive Researchの、MH-92824、93025、または92804)、またはポリウレタン系熱接着でコーティングしたポリオレフィンフィルム(フィルム:オーストリア国MaderのDenz BioMedical有限責任会社、接着剤:両方ともLeverkusenのCovestro AGの、7.5%のDesmodur Ultra DA-LでブレンドしたDispercoll U53)を使用することができる。接合するために、隔膜フィルムは30~300μmの厚さを有するべきである。約100μmが好ましい。接着層の厚さは、2~100μmが実用的である。約7μmの厚さが好ましい。レーザ補助の熱接着後の、Dispercoll及びDesmodurの後架橋性のために、接着継目は、最終的強度に達する前に少なくとも12時間養生するべきである。
【0026】
さらに本発明は、開始及び終了座標が、被覆フィルム/隔膜が全てのバルブ及びポンプの近傍で正確な位置で封止されるように、デジタルカメラによって自動的に記録されるコンピュータ制御の手段で、レーザが動かされる装置に関する。加えて、本発明は緊張装置に関する。この緊張装置は、バルブの上側のフィルムによって加えられた圧力が、均一の溶接継目を実現するよう全ての箇所で同じになるように、正確に事前に引き延ばしてバルブ上側と同一面で、しわを作ることなく被覆フィルム/隔膜を緊張する。複数または多量のバルブトラフが、マイクロ流体チップに統合される事例において、本発明による緊張装置は、チップ表面上のフィルムによって加えられた圧力が、均一の封止を実現するよう全ての箇所で同じになるように、正確に事前に引き延ばしてチップ表面と同一面で、しわを作ることなく蓋フィルム/隔膜を緊張することができる。
【0027】
さらに本発明は、マイクロリアクタ、及びマイクロタイタープレートなどのマイクロリアクタのアレイにおいて、少量の液体またはガスを個々に投与または放出するための、説明したポンプ及びバルブを使用するための方法、ならびに装置に関する。
【0028】
実施形態は図に示され、以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】複数のバルブ及び空のバルブトラフを伴う、マイクロ流体ポンプを示す図である。
図2】充填された2つのバルブトラフを伴う、図1に示されたポンプを示す図である。
図3】充填された1つのバルブトラフを伴う、図1に示されたポンプを示す図である。
図4】隔膜を適用するための緊張装置を示す図である。
図5】溶接装置の側面図である。
図6図5に示された溶接装置の平面図である。
図7図5に示された溶接装置における調整ネジの位置を示す図である。
図8図7に示された調整ネジの位置を示す平面図である。
図9図5に示された溶接装置における、力センサ及び位置付けピンを示す図である。
図10】ガラス真空チャンバを示す図である。
図11図10に示された真空チャンバの断面図である。
図12】溶接継目のないバルブの輪郭を示す図である。
図13】溶接輪郭を示す図である。
図14】溶接継目のあるバルブの輪郭を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1図3は、複数のマイクロ流体ポンプ1、2、3のポンプシーケンスを示し、それらにおける可撓性隔膜4が、バルブ本体8のバルブトラフ5、6、7を被覆する。可撓性隔膜4をバルブ本体8に装着するために、バルブトラフ5、6、7に面した隔膜4の表面9は、レーザビームで加熱された。本事例において、複数のバルブトラフ5、6、7が互いの隣に位置されるので、隔膜4は、縁部領域10のみがバルブ本体8に装着される。
【0031】
実施形態において、バルブ本体8はマイクロ流体チップ11であり、その上方にはマイクロタイタープレート12が配置される。このマイクロタイタープレート12は、リザーバ13及びウェル14を包含する。マイクロタイタープレート12は、振動アレイ15によって動かされ、振動アレイ15において、隔膜に作用する空気圧システムのチャネル16、17、18が配置される。
【0032】
図2は、いかにして流体が、リザーバ13からバルブトラフ5及び6の中に流れるかを示し、図3は、いかにしてバルブトラフ7の中の液体が、ウェル14に接続されるかを示す。
【0033】
図4は、ピストンテーブル20を、その上に位置付けテーブル21を伴って示し、その上で隔膜22が緊張される。隔膜22はポリマー主本体23の上に載り、磁石24及び25によって両側部が保持される。磁石24及び25は、レールに沿って矢印26、27の方向に動かすことができ、隔膜22を緊張する。
【0034】
バルブトラフまたはポンプトラフ、及び被覆フィルム/被覆隔膜を溶接するための装置の完全なシステムが、図5に示される。溶接装置30は、放射線源31(例えばツリウムファイバレーザ)及び軸32及び33を伴う軸システムを包含する。軸システムは、画定された位置に溶接継目を生成するために、緊張装置を面内で、しかし少なくとも一つの方向にレーザの影響下で動くのを可能にする。緊張装置自体は、少なくとも1つのバルブトラフ、通常はチップ/ポリマー本体37に統合された2つ以上のバルブトラフまたはポンプトラフを、可動軸システムに装着するのを可能にする。透明の可撓性隔膜38も、ポリマー主本体37の上で緊張される。緊張装置は、ピストンテーブル40を伴うシリンダ39、位置付けテーブル36、少なくとも4つの調整ネジ41、及び少なくとも4つの力センサ42から構成される。力センサ42は、緊張カラー34の補助を伴い、フィルムを等方性方法で緊張させる。ポリマー主本体及び緊張された隔膜を伴う緊張装置は、ピストンテーブルを上昇させることによって、ガラスプレート35に対して押圧される。それによって、ガラスプレートは、チップを用いてポリマー主本体に圧力を加える。レーザのエネルギーを、ガラスプレートを通してポリマー主本体の上で緊張された隔膜に導入することによって、隔膜及びポリマー主本体の両方は、熱で軟化されるか、または溶解される。ガラスプレートとポリマー主本体との間の圧力は、隔膜とポリマー主本体との間における材料のフローを誘導し、それは、溶融ポリマーの固化後に、狭くて、正確に位置付けられた、機械的に非常に耐久性のある溶接継目をもたらす。
【0035】
ポリマー主本体は、例えば主本体の対応した取付穴の中に嵌合する2つの位置付けピン43で構成された、センタリング装置によって、位置付けテーブル上に精確に整合され、それによって主本体は固定位置に持ってこられる(図9)。位置付けテーブルは4つの力センサ42の上に載り、それらはピストンテーブルに埋め込まれ、シリンダにしっかりと接続される。4つの力センサは、位置付けテーブルが、ポリマー主本体を、その上で緊張されたフィルムを伴って、ガラスプレート35に対して下方から押圧するとき、矩形の位置付けテーブルの4つの隅部に加えられた力を計測する。力の配分は、ネジ山を介して位置付けテーブル36において固定された、4つのネジ41a、41b、41c、41dによって、隅部で調整することができる(図7)。ネジは、位置付けテーブルとピストンテーブルとの間の距離を増減させ、それによってその位置における接触圧が増減され、したがってポリマー主本体全体の上で、確実に接触圧は均等に配分される。
【0036】
放射線源31は、チップ37に平行な平面における特定の焦点位置を伴う距離に位置付けられ、それによって、レーザの焦点は、ポリマー主本体及びフィルムによって拡がる面の上か、または近くにある。レーザの焦点がこの面に近いほど、溶接継目は狭くなり、レーザのビームパワーを低くすることができる。焦点位置は、溶接されることになる位置における、ポリマー本体及び隔膜フィルムの中へのエネルギー入力も決定し、それによって溶接プロセスの精度も決定する。焦点位置は、軸32及び軸33を伴う軸システムを介して、固定または可変で調整させることができる。それによって、フィルムを伴うポリマー主本体の配置に対して、レーザを垂直に動かすのを可能にする。
【0037】
ポリマー本体37及び隔膜44は、下方からシリンダ39を介してガラスプレート35に対して押圧される。ガラスプレート35は、レーザの波長範囲において高いスペクトル透過性を有する。特に1940nmの波長範囲において、ガラスは、ポリマー本体を隔膜フィルムに対して押圧するための材料として、非常に好適である。なぜならガラスは、3μm未満の波長範囲の近赤外線における電磁放射を最小限しか吸収しないからである。このガラスプレートは、フレームまたは緊張カラー34によって固定され、放射線源31に対して平行に向けられる。距離も、ポリマー本体37におけるレーザの焦点位置によって決定される。
【0038】
軸32及び33を伴う軸システムによって、放射線源31をポリマー主本体37に対して平行に動かすことができ、それによって溶接することになる輪郭を移動する。進行するレーザのパワー及び量を、可変的に調整することができる。
【0039】
放射線源31に対するシリンダ39の動きは、少なくとも2つの軸32及び33を介して実現される。軸32及び33は、移動テーブル45を介したシリンダ39、または放射線源31のいずれかを空間において動かす。
【0040】
可撓性隔膜44は、引締装置によってマイクロ流体主本体37の上を平行に緊張させることができる。
【0041】
可撓性隔膜は、様々な方法で緊張させることができる。ガラスプレート上におけるフィルムの平行平面の適用を、可能な限り最良に実現するために、マイクロチャネル46を、選択的レーザエッチング(2016年、Meinekeらによる)を介して、ガラスプレート35(ガラスで作られた真空チャンバ47を伴う図10)の中にエッチングすることが可能である。それによって、マイクロ流体主本体がガラスプレート(図11)に押圧される前に、接続された真空ポンプによってこれらのチャネルに真空を作り出し、可撓性隔膜をカラスプレート(図11)に対して吸引することを可能にする。これは、可撓性隔膜の不均等性を低減させる。
【0042】
別の緊張の選択として、ピストンテーブルに埋め込まれた磁石を使用する。フィルムは、主本体の上で手によって予め緊張され、次に別の反対の極性の磁石によって所定の位置に保持される。磁石は可撓性レール上に取り付けられる。この可撓性レールは、隔膜フィルムをさらに伸長し、次に所望の位置に固定できるように、1つの方向に動かすことができる(図4)。これは、緊張の精確性を向上させる。
【0043】
可撓性隔膜を緊張するための他の方法は、空気圧シリンダである。ここで、隔膜は一方の側に(例えば磁石を用いて)固定され、次に主本体の上で緊張させて、空気圧シリンダを用いて反対側に固定される。このシリンダは、直角に取り付けられた別のシリンダの上に固定され、それによって、規定の力の発生を伴い、シリンダをx方向に延ばすことによって、隔膜をさらに伸長または緊張させることができる。これは、全ての溶接領域にわたり、均質な緊張をもたらす。
【0044】
ポリマー主本体は、その全体が隔膜フィルムと相互作用する複数のポンプ及びバルブシステムを形成する、微小構造を包含する。多くのバルブ、ポンプチャンバ、及びチャネル、ならびに入口及び出口は、マイクロ流体のアレイを作り出し、これは液体またはガスを、流体入口から個々にマイクロリアクタに搬送するのを可能にする。
【0045】
このようなアレイは、欧州特許第3055065号明細書に記載されているような、アクチュエータ端子ブロックと、統合されたマイクロ流体チップを伴うマイクロリアクタのアレイとから構成することができる。マイクロ流体チップは、同軸ライン封止部を伴う球形セグメント及び可撓性隔膜から成る、バルブから構成される。マイクロチャネルは、バルブの中央、及び球形セグメントの周囲に続く。可撓性隔膜は、アクチュエータを介して動かすことができ、開閉することができる。
【0046】
個々の隔膜バルブの制御は、様々な方法で実現させることができる。とりわけ、ここでは空気圧制御チャネルが考えられるが、任意選択で、熱式、液圧式、電気機械式、または磁力式で作動されるスイッチを、流体チャネルの制御にも使用することができる。
【0047】
1つの可能性は、蠕動運動を作り出すことであり、ここで流体はまず入口を通過して、開いた入口バルブ及び開いたポンプチャンバの中に入る。その後入口バルブを閉じることによって、精確な体積の流体が、ポンプチャンバ内に閉じ込められる。出口バルブを開け、ポンプチャンバを閉じることによって、ポンプチャンバの容積をチャネル出口の方向に送ることができる(図1図3)。送られる体積は、ポンプチャンバの精確性によって主に決定され、その精確性は、ポリマー本体及び隔膜フィルムによる被覆の構造から生じる。この技術を用いて、1つの入口及び1つのポンプチャンバを介して、複数の流体チャネルを制御することも可能である(図11)。
【0048】
説明した発明は、バルブ被覆の精確性を大幅に向上させる。それは主に、バルブトラフ及び被覆フィルムによって包囲された容積における体積の変動を低減させ、したがって投与プロセスの精確性を改善する。このための機械学的理由は、レーザ透過溶接が、溶接縁部または溶接継目のより精確な形状を可能にするためである。これは、厳格に局所的に制限されたエネルギー入力によって実現され、それによって精確に画定されたポイント、または精確に確定された継目に沿ってのみ、基体を軟化させる。画定された領域外における、意図しない関連の熱伝達、特にポンプ/バルブトラフの中へのエネルギー入力は、これによってほぼ完璧に回避される。
【0049】
ポリマー本体(Baesweilerのm2p-labs有限責任会社の、Topas(登録商標)からのMTP-MF32-BOH1)は、説明した位置付けテーブル上に固定され、隔膜フィルム(Topas(登録商標)ELASTOMER E-140、厚さ100μm)は、溶接されることになる領域の上で緊張される。溶接前のバルブの輪郭の例が、図12に示される。CADプログラム(例えばAutodeskのAutoCAD)を使用して、対応した溶接輪郭が作り出される(例えば図13の溶接輪郭)。この溶接輪郭は、次に溶接プログラムにロードすることができる。個々のポイントにおける移動速度、ビームパワー、ならびにレーザを作動及び停止させる位置も設定できる。溶接されることになる本体は、次にシリンダ(FestoのADN-100-60-A-P-A)を介して、0.1~5bar、好ましくは0.75barの圧力で、ガラスプレート35に対して押圧される。高すぎる圧力は、隔膜フィルムを変形させ、かつバルブの中に押圧させる。低すぎる圧力は、溶接継目内の材料のフローを減速させ、それによって溶接継目の強度を低下させる。力センサ(ME-MesstechnikのKM26)を読み出すことによって、力の配分が均等であることを保証するか、または調整ネジを介して再調整しなければならない。不均等な力の配分は、レーザの不均等な合焦をもたらす。
【0050】
溶接のために、1940nmの波長の「IPG Laser」社のツリウムファイバレーザを使用することができる。この波長は、使用するポリマー(COC、シクロオレフィンコポイマー;ノルボルネン及びエテンのコポリマー)がこの波長範囲における吸収材であるため、好適である。20mmの焦点距離を有する、対応した光学システムが、レーザビームを合焦させる。進行速度に依拠して、2~50Wのレーザパワーが、溶接プロセスのために必要とされる。10~2000mm/minのレーザの進行速度において、5~25ワットが好ましい。200mm/minの供給速度において、8ワットが特に好ましい。要求される適度のレーザパワーは、Keopsysのツリウムファイバレーザ(CW Laser CTFL-TERA)またはIPGレーザ(TLM-200 Thulium CW Fiber Laser Module)など、多数のレーザ間の選択を可能にする。
【0051】
しかし、ここで説明した方法はCOC(Topas(登録商標))だけではなく、赤外線範囲で吸収する他のポリマーも使用できる。例として、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンなどがある。
【0052】
放射線源は、個々のバルブ、チャネル、及びポンプの輪郭を、例えば概ね8Wのレーザパワーで200mm/minの速度で動かすために、軸システム(例えばBosch Rexroth linear systems)を介してx、y、及びz方向に、溶接領域の上で動かすことができる。レーザビームは、ここでは指定された輪郭でのみ作動されるので、不要のエネルギー入力を回避する。20mmの焦点距離で、放射線源は、ポリマー本体の表面に対して概ね17mmの高さに位置付けられる。この高さは、焦点距離を変えることによって調整されなければならない。増加した局所的なエネルギー入力によってチャネルを溶かさないよう、溶接輪郭は、チャネルから概ね0.3mmの精確な距離で生成されなければならない。図14は、溶接継目を伴うバルブの輪郭を示す。
【0053】
可撓性隔膜は、レーザビームが貫入するポイントでのみ軟化され、熱溶融によって主本体に接続される。放射線源の高い移動速度のために、バルブまたはチャネルの輪郭の溶融は防止され、溶接継目は画定される。ビームパワーの変動は、この継目にさらに影響する場合がある。バルブの輪郭の高い精確性は、軸システムの十分な精度によって実現させることができる。これは、投与プロセスの精確性に直接的に反映される。
【0054】
フローの精確性を計測するために、マイクロ流体チップは、気密かつ液密の方法で、48個のウェルにおけるマイクロタイタープレートの底部として、接着接合される。マイクロタイタープレートは、オービタルシェーカの上に設置される。オービタルシェーカは、マイクロタイタープレートの内側の液体を、1500rpm(回転/分)までで混合する。ポリマー底部またはマイクロ流体チップの透明性は、各個々の反応チャンバの内側における液体の、光学的計測を可能にする。例えば、緑色蛍光たんぱく質の蛍光信号、蛍光色素、またはリボフラビンを検出することができる。このような計測の設定は、独国Baesweilerの、m2p-labs有限責任会社からのBioLector Proで実施される。
【0055】
流量を計測するために、欧州特許第3055065号明細書に記載されているマイクロ流体チップのチャネル入口を介して、50mMの水性緩衝液(K2HPO4)の混合物が、70μMの蛍光色素で充填された。436nmの励起波長及び540nmの検出波長を伴う、光導波路及び対応した光フィルタと、m2p-labsからのBioLector Proの評価電子機器とを使用して、マイクロ流体プレートの上方の反応チャンバにおける、蛍光の最小の変化でさえ検出することができる。蛍光包含緩衝液は、リザーバウェルのチャネル入口から、反応チャンバのチャネル出口まで、説明したポンププロセスのアクチュエータを介して送られる。反応チャンバにおいて、50mMのK2HPO4から成る800μLの緩衝液が供給される。BioLector Proは、16個のリザーバウェル及び32個の反応チャンバを有する。各リザーバウェルから、溶剤を、マイクロ流体プレートの底部を通して、4つの反応チャンバの中に送ることができる。同じ蛍光包含緩衝液が、全てのリザーバウェルに充填され、かつマイクロ流体チップにおける全てのポンプ及びバルブが、同じ方法で制御される場合、蛍光液は、同じ方法で32個の全ての反応チャンバの中に送られる。このように、この装置は、蛍光液をリザーバウェルから反応容器へ送達する全てのポンプ及びバルブが、同じ方法かつ均一に蛍光液を送るかどうか確認することを可能にする。これは、リザーバウェルから反応チャンバの中にポンプで送り込まれた蛍光色素の蛍光性の強さを、全ての反応チャンバにおいて一定間隔で計測することによって、及び経時的な蛍光性の変化を判定することによって、定量化することができる。この計測は、BioLector Proにおいて、完全自動化でも実施することができる。0.5barの空気圧で、液体は、入口バルブ及びポンプチャンバを介してマイクロ流体チャネルの中に、出口バルブへポンプで送り込まれる。入口バルブは2barで閉じる。出口バルブを開けることによって、蛍光液を対応した関連の反応チャンバに入れる。ポンプチャンバを2.5barで閉じることによって、液体は対応した反応チャンバの中に送られる。次に、出口バルブも1.5barの圧力で空圧式に閉じられる。このポンププロセスは、32個の全ての反応チャンバで連続して繰り返され、反応チャンバ当たり5μL/hのフローをもたらす。
【0056】
約20時間にわたり、マイクロタイタープレートの32個の全ての反応チャンバにおける蛍光信号の変化が、記録される。計測完了後、32個の全ての計測値の蛍光信号における変化の平均値、及び対応した標準偏差、ならびに相対標準偏差が決定される。チップにおける全てのマイクロ流体ポンプは、同じ方法で制御された場合、32個の全ての反応チャンバの中への同一の流量が予想され、したがって標準偏差はゼロである。高い標準偏差は、ポンプまたはそれらの制御間の差を表わし、流量の変動をもたらす。
【0057】
隔膜フィルムが熱溶融によって適用されたマイクロ流体チップと、隔膜フィルムがレーザ溶接によってポリマー主本体に接続されたマイクロ流体チップとの両方を用いて、試験が数回行われる。熱溶融接合によって製造されたマイクロ流体チップと比較された、レーザ溶接によって製造されたマイクロ流体チップの結果が、ポンププロセスの精確性の大幅な向上、またはむしろ蛍光信号の傾度における標準偏差の大幅な減少を示した。経時的な蛍光信号の変化の相対標準偏差は、熱溶融接合によって生成されたチップの事例において、平均12%であった。レーザ溶接されたチップでは、平均7%未満であった。
【0058】
上述の構成要素、ならびに本発明に従って使用される実施形態において主張かつ説明された構成要素は、それらのサイズ、形状、設計、材料選択、及び技術的コンセプトに関して、任意の特別な例外条件の対象にはならず、したがって適用分野で公知の選定基準を、限定なく適用することができる。
図1
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図11
図12
図13
図14